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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1369777
審判番号 不服2020-13014  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-16 
確定日 2021-01-04 
事件の表示 特願2020- 67941「USBコンセント」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 7月27日出願公開、特開2020-113790〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年2月13日を出願日とする特願2013-025256号の一部を、平成29年7月20日に新たな特許出願とした特願2017-141292号の一部を、平成31年3月11日に新たな特許出願とした特願2019-044242号の一部を、令和2年4月3日更に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯の概略は以下のとおりである。

令和 2年 4月15日付け:拒絶理由通知書
令和 2年 5月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 2年 6月 9日付け:拒絶査定
令和 2年 9月16日 :審判請求書の提出

第2 本願発明について

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年5月21日に提出された手続補正書の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。

「USBソケットが実装される第1プリント配線板と、
前記第1プリント配線板の中央部に当接する当接部と、を備え、
前記当接部は、前記第1プリント配線板の前記USBソケットが実装される面とは反対面に当接する、USBコンセント。」

第3 原査定の拒絶の理由の概要

原査定の拒絶の理由の概要は、「(進歩性)この出願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、請求項1に係る発明に対して、以下の引用文献が引用されている。

1.登録実用新案第3153794号公報
2.実願平3-97062号(実開平5-46080号)のCD-ROM
3.特開2000-261160号公報
4.特開平10-65362号公報
5.特開2007-317968号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明

原査定で引用された引用文献1には、図面ともに以下の事項が記載されている。下線は、当審で付与した。

「【0002】
公知の壁上のスイッチ構造は、筐体と、スイッチと、少なくとも1つのACソケットとの組み合わせからなる。しかしながら、前記スイッチ制御ACソケットは、AC電気製品には使用可能であるが、DC電源を必要とするその他の製品で使用可能なDC電源出力はない。DC電源を必要とする場合は、ACをDCに変換する電源アダプタを使用する必要がある。かつ、抜き差しを繰り返す必要があり、使用は不便であり、かつ抜き差しを繰り返すため、配線が複雑になりやすく、面倒である。そのため、実際の使用において、使用者の需要に適合せず、かつこうした総合機能製品は市販されていない。
(省略)
【0010】
図1?3に示すとおり、本考案はスイッチ型充電器構造である。前記スイッチ型充電器構造は、少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット開口部111が設けてある筐体10と、筐体10内に対応して結合した少なくとも1つの回路板20(本実施例では、3枚の回路板20を採用する)と、筐体10下方に結合し、かつ少なくとも1つの回路板20と接続し、電源の入力制御または延伸を行う2つの電極線コネクタ30と、筐体10のユニバーサル・シリアル・バス・ソケット開口部111に対応して結合し、かつ少なくとも1つの回路板20と電気的に接続する少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット40と、筐体10上に配置され、少なくとも1つの回路板20と電気的に接続し、電源のオンオフ状態を示し、LEDランプとすることができ、少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット40の通電が正常になった後に点灯する電源ランプ50と、を含む。
【0011】
筐体10には、上筐体11と下筐体12とが設けてある。上筐体11と下筐体12とは相互に結合する。2つの電極線コネクタ30は、下筐体12の下方に結合する(AC電源線に並列接続し、2本の電極線コネクタ30の中に入れて固定する)。筐体10上の少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット開口部111は、上筐体11上に設けられ、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しできるようにする。上筐体11上の少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット開口部111には、保護用の保護カバー13がさらに設けてある。上筐体11上には、電源ランプ50を露出させるための円孔部112がある。また、上筐体11と下筐体12とは、2本の金具留め具60で相互に結合し、本来のスイッチボックスの中に固定することができ、取り外しと固定に便利である。
【0012】
また、使用時に、筐体10は、スイッチボックス70上にさらに結合可能である(図1?9参照)。スイッチボックス70上には、スイッチ71が設けてあり、かつスイッチ71は、筐体10の少なくとも1つの回路板20と電気的に接続し、電源ランプ50のオンオフを制御し、電源のオンオフ状態を示すことができるようにする。スイッチ71が入っているときに、電源ランプ50は点灯し、少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット40が電源出力を有することを示す。保護カバー13を開くと、USB類の電源を必要とする製品を接続して使用することができる。使い終わった後は、ケーブルを抜き、保護カバー13を閉じ、スイッチ71を切ることができる。このとき、電源ランプ50は消え、少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット40の出力電源が切られる。かつ、使用時に、スイッチボックス70上に電源ソケット72を増設することも、スイッチボックス70上に、保護カバー13が設けてあるスイッチ型充電器構造をさらに増設することもできる。
【0013】
前記構造を介して、スイッチ型充電器構造を構成する。図1?9に示すとおり、本考案の特徴は、筐体10と、少なくとも1つの回路板20と、2つの電極線コネクタ30と、少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット40と、電源ランプ50との組み合わせにより設計されることである。前記スイッチ型充電器構造の筐体10の仕様は一般のスイッチボックス70の電源ソケットの仕様の大きさに適合しているため、本来の壁上のスイッチボックス70に追加機能をもたせることができ(DC給電を追加し、ACまたはDC電源を同時に提供することも、DCまたはAC電源のみを提供することもでき、任意に組み合わせて使用可能であり、本来の壁上のスイッチボックスに多くの機能をもたせることにより、使用の全体的な便利さを大幅に向上させる。)、使いやすさを増加させることにより、使用の全体的な便利さを大幅に向上させる。本考案の組み合わせによる設計は、ACをDCに変換する電源アダプタを必要とせず、その他の電源変換コードおよび電源アダプタの抜き差しの繰り返しによる破損を防止することができる。繁雑なコードの整理も必要なく、その使用寿命を増進することにより、使用の全体的な実用性を大幅に向上させる。本考案は、本来の壁上のスイッチボックスにDC給電機能を追加し、使いやすく使用寿命が長いなどの効果をもたせ、全体的な実用性および便利さを増加する。」

図1


図2

図3


引用文献1の上記記載及び図面から、次のことがいえる。

1 段落【0010】、【0013】、及び、図1ないし図3によれば、スイッチ型充電器構造は、少なくとも1つの回路板と電気的に接続するユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケットを、を備える。

2 段落【0011】によれば、ユニバーサル・シリアル・バス・ソケットは、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しできる。

3 段落【0012】、【0013】によれば、ユニバーサル・シリアル・バス・ソケットは、DC電源を出力するといえる。

したがって、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「少なくとも1つの回路板と電気的に接続され、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しでき、DC電源を出力するユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット、を備えるスイッチ型充電器構造。」

第5 対比・判断

1 本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット」は、本願発明の「USBソケット」に相当する。
ここで、引用発明の「少なくとも1つの回路板」は「ユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット」と電気的に接続されており、引用文献1の図2及び図3にはユニバーサル・シリアル・バスソケット40の下面及び側面それぞれに回路板20が直接接して配置することが図示されていることからすれば、引用発明において、「少なくとも1つの回路板」に「ユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット」が実装されているといえる。
よって、引用発明のユニバーサル・シリアル・バスソケットと電気的に接続される「少なくとも1つの回路板」は、本願発明の「USBソケットが実装される第1プリント基板」に相当する。
したがって、引用発明の「少なくとも1つの回路板と電気的に接続され、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しでき、DC電源を出力するユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット」は、本願発明の「USBソケットが実装される第1プリント配線板」に相当する。

(2)本願発明は「USBコンセント」からの出力を限定するものではないものの、本願明細書の段落【0002】の「従来から、USBプラグが挿入接続されるUSBソケットを有するUSBコンセントが提供されている」、同段落【0013】の「本実施形態は、外部の交流電源から入力された交流電力を所定電圧の直流電力に変換してUSBソケット1を介して上記のUSBプラグに出力するAC-DCコンバータを備える。」との各記載からすれば、本願発明のUSBコンセントは、USBプラグが挿入接続されるUSBソケットを有し、USBソケットから直流電力が出力されるものを含むといえる。
よって、引用発明の「ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しでき、DC電源を出力するユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット」を備える「スイッチ型充電器構造」は、本願発明の「USBコンセント」に含まれる。

(3)以上から、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「USBソケットが実装される第1プリント配線板、を備えるUSBコンセント。」

(相違点)
本願発明は、「前記第1プリント配線板の中央部に当接する当接部」を備え、「前記当接部は、前記第1プリント配線板の前記USBソケットが実装される面とは反対面に当接する」のに対し、引用発明はその旨の特定がされていない点。

2 上記相違点について判断する。

上記「第4」の段落【0010】の「少なくとも1つの回路板20(本実施例では、3枚の回路板20を採用する)」、「少なくとも1つの回路板20と電気的に接続する少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス(USB:Universal Serial Bus)ソケット40」、同段落【0011】の「筐体10上の少なくとも1つのユニバーサル・シリアル・バス・ソケット開口部111は、上筐体11上に設けられ、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しできるようにする。」の各記載、及び、図2、図3からすれば、引用発明は、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しする方向(上下方向)に対して直交する方向(水平方向)に配置した回路板の中央にユニバーサル・シリアル・バス・ソケットを実装した構成を含むといえる。
ここで、原査定で引用された引用文献3(段落【0004】を参照)、引用文献5(段落【0113】を参照)に記載されているように、外部コネクタを基板に実装されたコネクタに挿入する際、該基板に力が加わることは技術常識に過ぎず、他の文献にも、例えば、本願優先日前に頒布された刊行物である特開平11-135965号公報(段落【0014】及び図1を参照)、特開2012-70503号公報(段落【0034】、【0035】、図1及び図2参照)、特開平9-306610号公報(段落【0002】、【0003】を参照)、特開2010-183770号公報(段落【0040】、図5を参照)にも、同様な記載が認められる。そして、既に述べたように、引用発明は、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを抜き差しする方向に向けてユニバーサル・シリアル・バス・ソケットを回路板の中央に実装した構成を含むことからして、引用発明においても、ユニバーサル・シリアル・バス・プラグを差し込む際回路板に力が加わることは、当業者が当然予測し得た事項に過ぎない。
さらに、外部コネクタの挿入の際に基板に加わる力に基づく基板の撓みを抑制するために、基板のコネクタが実装された面と反対の面であって、実装されたコネクタに対応する位置に当接する当接部を備えることは、上記引用文献3(段落【0026】、【0027】、【0029】及び図1、図2を参照)、引用文献5(段落【0113】及び図21を参照)に記載されているように慣用的に行われている技術事項であって、例えば上記で挙げた特開平11-135965号公報(段落【0014】及び図1を参照)、特開2012-70503号公報(段落【0034】、【0035】、図1及び図2参照)、特開平9-306610号公報(段落【0014】、【0015】、図4を参照)、特開2010-183770号公報(段落【0040】、図5を参照)にも、同様な技術事項が記載されている。
よって、コネクタの一つであるユニバーサル・シリアル・バス・ソケットを備えた引用発明においても、上記のような慣用的に行われている技術事項を採用し、回路板のユニバーサル・シリアル・バス・ソケットが配置された面と反対の面であって、ユニバーサル・シリアル・バス・ソケットに対応する位置、すわなち回路板の中央部に当接する当接部を備えることは当業者が容易になし得たことである。

なお、上記相違点に関し、請求人は、審判請求書(9頁3?5行)において、「上記相違点に係る本願発明の構成は、引用文献3?6にも何ら記載がないので、本願発明、つまり本願発明1及び本願発明2は、いずれも引用文献1?6に対して進歩性を有するものと思料する。」と主張している。
しかし、上記で述べたように、基板のコネクタが実装された面と反対の面であって、実装されたコネクタに対応する位置に当接する当接部を備えることは引用文献3、引用文献5に記載されているように慣用的に行われている技術事項であって、他の文献にも同様な技術事項が記載されているところ、このような慣用的に行われている技術事項を引用発明に採用し、相違点に係る構成とすることは当業者が容易になし得たことである。
よって、請求人の主張は採用できない。

3 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び慣用的に行われている技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-10-20 
結審通知日 2020-10-27 
審決日 2020-11-10 
出願番号 特願2020-67941(P2020-67941)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 山本 章裕
畑中 博幸
発明の名称 USBコンセント  
代理人 特許業務法人北斗特許事務所  

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