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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1369798
審判番号 不服2018-16652  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-12-13 
確定日 2021-01-06 
事件の表示 特願2015-526994「センサシステムのための自動ジェスチャ認識」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月27日国際公開、WO2014/029691、平成27年 8月27日国内公表、特表2015-524977〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)8月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2012年8月16日(米国)、2013年8月14日(米国))を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成28年 8月10日 :手続補正書の提出
平成29年 5月23日付け:拒絶理由通知書
同 年 8月15日 :意見書、手続補正書の提出
同 年12月14日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成30年 3月 6日 :意見書、手続補正書の提出
同 年 8月15日付け:平成30年3月6日の手続補正についての補正の却下の決定、
拒絶査定
同 年12月13日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 4月28日付け:平成30年12月13日の手続補正についての補正の却下の決定、
拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
同 年 7月 7日 :意見書、手続補正書の提出

第2 令和2年7月7日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年7月7日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由](補正の適否の判断)
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(なお、下線部は、補正箇所を示す。)

「 非接触ジェスチャ認識のための方法であって、
関連付けられている複数の検出センサを使用して、1つ以上のジェスチャ関連信号を検出することと、
自動認識技法を使用して、前記1つ以上のジェスチャ関連信号から検出される前記非接触ジェスチャを評価することにより、前記非接触ジェスチャが所定の組のジェスチャのうちの1つに対応するかどうかを決定することと
を含み、
前記ジェスチャの開始を決定することにおいて、開始は、標的物体と少なくとも1つのセンサとの間の距離が減少し、前記標的物体と少なくとも別のセンサとの間の距離が増加し、かつ、所定の複数の信号サンプルにわたる短期間変動または同等の評価尺度が閾値より大きい場合に決定され、
前記検出された1つ以上のジェスチャ関連信号は、15Hz?20Hz以下の最大周波数を有するように低域通過フィルタにかけられる、方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成29年8月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。

「 非接触ジェスチャ認識のための方法であって、
関連付けられている複数の検出センサを使用して、1つ以上のジェスチャ関連信号を検出することと、
自動認識技法を使用して、前記1つ以上のジェスチャ関連信号から検出される前記非接触ジェスチャを評価することにより、前記非接触ジェスチャが所定の組のジェスチャのうちの1つに対応するかどうかを決定することと
を含み、
前記ジェスチャの開始を決定することにおいて、開始は、標的物体と少なくとも1つのセンサとの間の距離が減少し、前記標的物体と少なくとも別のセンサとの間の距離が増加し、かつ、所定の複数の信号サンプルにわたる短期間変動または同等の評価尺度が閾値より大きい場合に決定される、方法。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「1つ以上のジェスチャ関連信号」について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条6項において準用する同法126条7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献・引用発明
ア 引用文献1について
(ア)引用文献1の記載事項
当審拒絶理由で引用された本願の優先日前に頒布された引用文献である、国際公開第2011/098496号(2011年(平成23年)8月18日公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
なお、当審訳には、原則として、引用文献1の日本語による公表公報である特表2013-519933号公報の記載を用いた。

a 「The invention relates to a system and a method for the contactless detection and recognition of gestures in a three-dimensional movement space, which are carried out by movements of at least one object in the three-dimensional movement space.」(第1ページ第8?10行)
[当審訳]
「本発明は、3次元移動空間における少なくとも1つの物体の移動によって実行される、3次元移動空間におけるジェスチャの非接触検出および認識のためのシステムおよび方法に関する。」

b 「The object of the invention is therefore to provide a method and a system for contactless detection and recognition of gestures, which on the one hand allow a detection and recognition of spatial gestures and on the other hand are also suitable for theuse in mobile devices or systems.」(第2ページ第11?16行)
[当審訳]
「したがって、本発明の目的は、一方では、空間ジェスチャの検出および認識を可能にし、他方では、また、携帯用デバイスまたはシステムにおいて使用するために好適である、ジェスチャの非接触検出および認識の方法ならびにシステムを提供することである。」

c 「In a first step 100, by means of anelectrode system an electrical near-field is generated, which is formed preferably as a quasistatic alternating electrical field which defines a movement space relative to a reference surface, for example a screen or a tablet PC.」(第11ページ第24?27行)
[当審訳]
「第1のステップ100では、電極システムによって、好ましくは、基準表面、例えば、画面またはタブレットPCに対する移動空間を規定する準静的交流電場として形成される、電気近接場が生成される。」

d 「For the generation of the quasistatic alternating electrical field, which in the following will be called electrical near-field, several electrodes distanced among each other may be provided, at which each time an alternating electrical field is emitted. An electrical alternating signal supplied to the respective electrodes, which is provided by one or several generators, is set in such a way that the electrical alternating fields emitted at the electrodes jointly may span the movement space around the electrodes relative to the reference surface.
In the movement space, in a next step 200 deformations of the lines of force of the electrical alternating field arerecognized, which are produced for example by movements of at least one object in the movement space. For example a deformation of the lines of force may becaused by movements of a finger or several fingers in the movement space. The deformations of the lines of force may be recognized at the electrodes, at which the electrical alternating fields are emitted, by determining a change of the load at the respective generators coupled with the electrodes. Deformations of the lines of force of the electrical alternating fields are called in the following deformations of the electrical near-field. Further embodiments for the generation of the electrical alternating fields and for recognizing deformations of the lines of force of the electrical near-field are indicated in regard to Fig. 2.
From the recognized deformations in a next step 300 a movement path is generated, which corresponds to the movement, for example of a finger, in the movement space. Thus according to the invention also several movement paths may be generated, if for example several fingers are moved in the movement space.」(第12ページ第27行?第13ページ第21行)
[当審訳]
「以下、電気近接場と呼ばれる、準静的交流電場の生成のために、各々、交流電場が放出される、相互に離間されたいくつかの電極が提供され得る。1つまたはいくつかの発生器によって提供される、それぞれの電極に供給される、電気交流信号は、電極において放出される電気交流電場が、結合して、電極基準表面に対して、電極の周囲の移動空間に及び得るように設定される。
移動空間では、次のステップ200において、例えば、移動空間内の少なくとも1つの物体の移動によって生成される、電気交流電場の力線の変形が認識される。例えば、力線の変形は、移動空間内の1本の指または数本の指の移動によって生じ得る。力線の変形は、電極と連結されたそれぞれの発生器における負荷の変化を決定することによって、電気交流電場が放出される、電極において認識され得る。電気交流電場の力線の変形は、以下、電気近接場の変形と呼ばれる。電気交流電場の生成および電気近接場の力線の変形の認識のためのさらなる実施形態は、図2に関連して示される。
認識された変形から、次のステップ300では、例えば、移動空間内の指の移動に対応する、移動経路が生成される。したがって、本発明によると、また、例えば、数本の指が、移動空間内で移動する場合、いくつかの移動経路が、生成され得る。」

e 「In the generation of the movement path,each point of the movement path is assigned a number of movement characteristics, so that from the movement accomplished in the movement space one or more gestures may be reliably extracted. Such movement characteristic may be for example the position of the object, for example the fingertip of a forefinger relative to the reference surface, the orientation of the hand or the forefinger relative to the movement space, the speed of the fingertip, the acceleration of the fingertip or a combination thereof. As is described in more detail in regard to Figs. 4 to 6, these movement characteristics may also be used for the determination of the beginning of a gesture and the end of a gesture of one or several gestures.」(第14ページ第23行?第15ページ第2行)
[当審訳]
「移動経路の生成において、移動空間内で達成された移動から、1つ以上のジェスチャが確実に抽出され得るように、移動経路の各点は、いくつかの移動特性が割り当てられる。そのような移動特性は、例えば、基準表面に対する、物体、例えば、人指し指の指先の位置、移動空間に対する手または人指し指の配向、指先の速度、指先の加速度、またはそれらの組み合わせであり得る。図4から6に関連してより詳細に説明されるように、これらの移動特性はまた、1つまたはいくつかのジェスチャの、ジェスチャの開始およびジェスチャの終了の決定のために使用され得る。」

f 「In one step 400 one or more gestures are extracted from the generated movement path. According to the invention discrete gestures and/or continuous gestures may be extracted.
A discrete gesture is characterized by a gesture start, a gesture end and a movement between a gesture start and agesture end. A continuous gesture is characterized by a gesture start and a movement following the gesture start, whereas a continuous gesture must not necessarily have a gesture end.
When extracting a gesture from the movement path, at first a gesture start is determined in the movement path, both for adiscrete gesture and for a continuous gesture. The gesture start is determined during the generation of the movement path. As soon as the gesture start has been determined, a gesture may be extracted, beginning with the gesture start.Concrete methods for recognizing the gesture start are described in more detail referring to the Figures 4 to 6.」(第15ページ第4?18行)
[当審訳]
「ステップ400では、1つ以上のジェスチャが、生成された移動経路から抽出される。本発明による離散ジェスチャおよび/または連続ジェスチャが、抽出され得る。
離散ジェスチャは、ジェスチャ開始、ジェスチャ終了、およびジェスチャ開始とジェスチャ終了との間の移動によって、特徴付けられる。連続ジェスチャは、ジェスチャ開始およびジェスチャ開始後の移動によって、特徴付けられるが、連続ジェスチャは、必ずしも、ジェスチャ終了を有していなければならないわけではない。
移動経路からジェスチャを抽出する時、最初に、離散ジェスチャおよび連続ジェスチャの両方に対して、移動経路において、ジェスチャ開始が決定される。ジェスチャ開始は、移動経路の生成中に決定される。ジェスチャ開始が決定されるとすぐに、ジェスチャ開始を発端に、ジェスチャが抽出され得る。ジェスチャ開始を認識するための具体的方法は、図4から6を参照して、より詳細に説明される。」

g 「With the help of a pattern recognition,the extracted gestures may be recognized. For the pattern recognition for example Hidden Markov models, a Viterbi algorithm and/or Bayesian networks may be used. Another recognition method according to the invention is described in more detail in regard to Fig. 7.」(第15ページ第20?23行)
[当審訳]
「パターン認識の支援によって、抽出されたジェスチャが、認識され得る。パターン認識のために、例えば、隠れマルコフモデル、ビタビアルゴリズム、および/またはベイジアンネットワークが使用され得る。本発明による別の認識方法は、図7に関して、より詳細に説明される。」

h 「For recognizing continuous and discrete gestures, reference gestures are provided, which are used for a pattern comparison with the movement path fed by the pattern recognition. Reference gestures may be gestures which for example are admissible in a certain user context of a device. If in a user context for example only the input of determined letters is admissible, the reference gestures include gestures which are representative for the allowed letters.
The pattern comparison may be carried outin such a way that single segments of the movement path are compared with corresponding partial gestures of the reference gestures. A partial gesture is a segment of a reference gesture. If the single segments of the movement path coincide each time with the partial gestures of a reference gesture, the movement path may be interpreted as a recognized gesture.」(第16ページ第6?17行)
[当審訳]
「連続および離散ジェスチャを認識するために、基準ジェスチャが提供され、パターン認識によってフィードされた移動経路とのパターン比較のために使用される。基準ジェスチャは、例えば、デバイスのあるユーザ文脈(user context)において許容可能である、ジェスチャであり得る。ユーザ文脈において、例えば、決定された文字の入力のみ、許容可能である場合、基準ジェスチャは、許容された文字を表す、ジェスチャを含む。
パターン比較は、移動経路の個々のセグメントが、基準ジェスチャの対応する部分的ジェスチャと比較されるように、実行され得る。部分的ジェスチャは、基準ジェスチャのセグメントである。移動経路の個々のセグメントが、各々、基準ジェスチャの部分的ジェスチャと一致する場合、移動経路は、認識されたジェスチャとして、解釈され得る。」

i 「The context information assigned to the extraction step 400 may also include a set of reference gestures, which for example indicates which gestures are admissible in the context.
This is for example advantageous when a input device expects an input of numbers. The context information may include in this respect the digits "0" until "9" as reference gestures. A movement of the forefinger in the movement space which for example would correspond to the letter "A" can then be recognized by the method according to the invention as a not allowed gesture. By using the reference gestures, which define the gestures allowed in a respective context, the probability of misinterpretations in the recognizing of gestures can be considerably decreased.」(第17ページ第21行?第18ページ第2行)
[当審訳]
「抽出ステップ400に割り当てられる文脈情報はまた、例えば、どのジェスチャが、文脈において許容可能であるかを示す、一式の基準ジェスチャを含み得る。
これは、例えば、入力デバイスが、数字の入力を予測する時、有利である。文脈情報は、この点において、基準ジェスチャとして、数字「0」から「9」を含み得る。したがって、例えば、文字「A」に対応するであろう、移動空間内の人指し指の移動は、本発明による方法によって、許容されていないジェスチャとして、認識されることができる。それぞれの文脈において許容されるジェスチャを規定する、基準ジェスチャを使用することによって、ジェスチャ認識における誤った解釈の確率を大幅に低下させることができる。」

j 「Fig. 2 typically shows the structure of a system according to the invention for the contactless detection of movements in a movement space with four electrodes of an electric sensor system.
In the area of the four edges of a rectangular reference surface B, which may be for example a display device, each time one electrode is arranged, which is a component of an electric sensor system. The electrodes E extend over the total length of the respective edge of the reference surface B.」(第18ページ第23行?第19ページ第3行)
[当審訳]
「図2は、典型的には、電気センサシステムの4つの電極を伴う、移動空間内の移動の非接触検出のための本発明によるシステムの構造を示す。【0076】例えば、ディスプレイデバイスであり得る、長方形基準表面Bの4つの縁の領域には、各々、電気センサシステムの構成要素である、1つの電極が、配置される。電極Eは、基準表面Bのそれぞれの縁の全長にわたって延在する。電極Eにはそれぞれ、交流電場が照射され、4つの照射された電気交流電場はともに、移動空間10を規定する。」

k 「The movement space may be further subdivided. Inside the movement space 10 a detection space 20 is defined which is smaller than the movement space 10. The detection space 20 inside the movement space 10 is the space which is considered during the generation of the movement path, i.e. only for movements inside the detection space 20 a movement path is generated.」(第20ページ第27行?第21ページ第2行)
[当審訳]
「移動空間はさらに、再分割され得る。移動空間10内側には、移動空間10より小さい、検出空間20が規定される。移動空間10内側の検出空間20は、移動経路の生成中に、考慮される空間である、すなわち、検出空間20内側の移動に対してのみ、移動経路が生成される。」

l 「In the following it is described in more detail in regard to Figs.4 to 6, how according to the invention a gesture start and a gesture end in the movement path may be determined. In order to feed a movement detected in the movement space to a pattern recognition, it is at first necessary to detect at least a gesture start. Basically also movements which take place before the gesture start could be led to the pattern recognition, which however would have the disadvantage that movements before the gesture start could lead to a defective gesture recognition if the pattern recognition is not designed for leaving unconsidered movements not belonging to a gesture. For the case that a complete gesture of the pattern recognition is to be conducted, it is also necessary to detect the gesture end in the movement path.
During a movement of for example a fingertip in the movement space, one or several movement characteristics are detected with the help of the electric sensor electronics in predetermined time intervals, for example in time intervals of 5ms, and assigned to the corresponding point of the movement path. The time intervals may be also selected greater or smaller, which depends on the concrete case of application.The movement characteristics may be for example:
- position of the fingertip relative to the reference surface, for example of an input surface of a touch-sensitive display; the position may be indicated by the X, Y, and/or Z coordinate relative to the input surface;
- orientation of the finger or the hand relative to the movement space;
- speed of the movement of the finger;
- acceleration during the movement of the finger;
- and/or a combination thereof.」(第23ページ第16行?第24ページ第10行)
[当審訳]
「以下では、本発明に従って、移動経路内のジェスチャ開始およびジェスチャ終了が、どのように決定され得るかについて、図4から6に関してより詳細に論じられる。移動空間内で検出された移動をパターン認識にフィードするために、最初に、少なくとも、ジェスチャ開始を検出する必要がある。基本的には、また、ジェスチャ開始前に生じる移動も、パターン認識にもたらされ得るが、しかしながら、パターン認識が、ジェスチャに属さない移動を考慮しないように設計されていない場合、ジェスチャ開始前の移動は、不完全なジェスチャ認識につながり得るという不利点を有するであろう。パターン認識の完全なジェスチャが考慮されるべき場合、また、移動経路内のジェスチャ終了を検出する必要がある。例えば、移動空間内の指先の移動中に、1つまたはいくつかの移動特性が、所定の時間間隔、例えば、5msの時間間隔において、電気センサ電子機器の支援によって、検出され、移動経路の対応する点に割り当てられる。時間間隔はまた、用途の具体例に応じて、より大きくまたはより小さく選択され得る。移動特性は、例えば、以下であり得る。
-基準表面、例えば、タッチセンサ式ディスプレイの入力表面に対する指先の位置、すなわち、位置は、入力表面に対するX、Y、および/またはZ座標によって、示され得る。
-移動空間に対する指または手の配向
-指の移動の速度
-指の移動の際の加速度
-および/またはそれらの組み合わせ
ジェスチャ開始またはジェスチャ終了を決定するために、これらの移動特性のいくつかまたはそれらの組み合わせのいずれかが、使用され得る。」

m 「Fig. 5 shows a second threshold value method according to the invention for determining a gesture start and a gesture end of a finger movement in a movement space. As movement characteristic the speed of the fingertip relative to the reference surface is used, in Fig. 5 being shown the time course of the speed of the finger movement in X direction.
In the example shown in Fig. 5 also the speed course of the fingertip in X direction is evaluated as a feature for the gesture start or the gesture end, wherein exceeding a predetermined speed (threshold value) defines the gesture start and falling below of the predetermined threshold value defines the gesture end. Like according to thethreshold value method according to Fig. 4, also here the point 50a of the movement path 50 may be assigned a gesture start mark and the point 50b may be assigned a gesture end mark. The movement path between gesture end and gesture start may be fed again to a pattern recognition.」(第26ページ第12?25行)
[当審訳]
「図5は、移動空間内の指の移動のジェスチャ開始およびジェスチャ終了を決定するための本発明による第2の閾値法を示す。移動特性として、基準表面に対する指先の速度が使用され、図5では、X方向における指の移動の速度の時間の推移が示される。
図5に示される実施例では、また、X方向における指先の速度の推移が、ジェスチャ開始またはジェスチャ終了の特徴として、評価され、所定の速度(閾値)超過は、ジェスチャ開始を規定し、所定の閾値未達は、ジェスチャ終了を規定する。同様に、図4による閾値法に従って、また、ここでも、移動経路50の点50aは、ジェスチャ開始マークが割り当てられ、点50bは、ジェスチャ終了マークが割り当てられ得る。ジェスチャ終了とジェスチャ開始との間の移動経路は、再び、パターン認識にフィードされ得る。」

n 「Fig. 6 shows the temporal lapses of the distances between a sensor electrode and the fingertip of a moving finger in a sensor system with four sensor electrodes. For example the course 60a corresponds to the time course of the distance of a fingertip relative to a first sensor electrode. Also here a threshold value is defined, and exceeding or falling below it determines the beginning of a gesture or the end of a gesture.According to the invention a gesture start appears when at least one of the four lapses shown in Fig. 6 falls below the preset threshold value. Therefore a gesture end may exist when all four lapses have again exceeded the corresponding threshold value.」(第28ページ第14?22行)
[当審訳]
「図6は、4つのセンサ電極を伴うセンサシステムにおけるセンサ電極と移動する指の指先との間の距離の時間経過を示す。例えば、推移60aは、第1のセンサ電極に対する指先の距離の時間の推移に対応する。また、ここでは、閾値も、規定され、その超過または未達は、ジェスチャの開始またはジェスチャの終了を決定する。本発明によると、ジェスチャ開始は、図6に示される4つの経過のうちの少なくとも1つが、既定閾値未達となる時、現れる。したがって、ジェスチャ終了は、全4つの経過が、再び、対応する閾値超過となる時、存在し得る。」

o 「Fig.11 shows an example of a gesture which is extracted from two different movement paths (two finger gestures). In the movement space a first movement with the forefinger of the hand HI is carried out. With the forefinger of the second hand H2 a second movement is carried out in the movement space. From both movements each time a firstmovement path BP1 and another movement path BP2 are generated. From each of the two movement paths a gesture is then extracted, which may be interpreted as partial gestures of a composed gesture. If in the extraction of the partial gestures or in the recognizing of the partial gestures the Z coordinate is not taken in consideration, each of both partial gestures represents a segment of acircle, as appears in Fig. 11. The total gestures resulting from the two partial gestures correspond thus to a circle. If two partial gestures are components of a composed gesture or not, this for example can be made dependent of the distance of the gesture start of a first gesture from the gesture end of the second gesture. If the distance is below a predefined threshold, the partial gestures compose a total gesture. If the value does not fall below the threshold, the two partial gestures are interpreted as separated gestures.」(第38ページ第23行?第39ページ第9行)
[当審訳]
「図11は、2つの異なる移動経路(2つの指のジェスチャ)から抽出される、ジェスチャの実施例を示す。移動空間内では、手H1の人指し指による第1の移動が実行される。第2の手H2の人指し指によって、第2の移動が、移動空間内で実行される。両方の移動から、各々、第1の移動経路BP1および別の移動経路BP2が、生成される。次いで、2つの移動経路のそれぞれから、複合ジェスチャの部分的ジェスチャとして解釈され得る、ジェスチャが、抽出される。部分的ジェスチャの抽出または部分的ジェスチャの認識において、Z座標が、考慮されない場合、両方の部分的ジェスチャはそれぞれ、図11に現れるように、円形のセグメントを表す。したがって、2つの部分的ジェスチャから生じるジェスチャ全体は、円形に対応する。2つの部分的ジェスチャが、複合ジェスチャの構成要素であるかどうかについて、これは、例えば、第2のジェスチャのジェスチャ終了からの第1のジェスチャのジェスチャ開始の距離に応じて、判断することができる。距離が、所定の閾値を下回る場合、部分的ジェスチャは、ジェスチャ全体を構成する。値が、閾値を下回らない場合、2つの部分的ジェスチャは、分離ジェスチャとして、解釈され得る。」

p 「

」(FIg.11)
([当審注] 上記図中、長方形ディスプレイの長辺に沿った右向きの矢の先に付されている文字「Z」は「X」の誤記と解される。)

上記(ア)のaないしpから、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(a)引用文献に記載された技術は、非接触ジェスチャの検出および認識方法に関するものであり(上記(ア)a)、特に、携帯デバイスに好適な方法を提供することを課題としたものである(上記(ア)b)。また、前記非接触ジェスチャの例として、指の移動が挙げられている(上記(ア)d)。
(b)前記方法は、長方形ディスプレイの各縁に配置された4つのセンサ電極により、移動空間を規定する交流電場を発生し、前記センサ電極により交流電場内の指の移動によって生じる前記交流電場の力線の変化を検出することにより指の移動を検出し、その移動経路を検出することを含むものである(上記(ア)c、d、j)。
なお、指の移動経路が生成されるのは、移動空間内側の検出空間内側の移動に対してのみとされている(上記(ア)k)ことから、前記の指の移動経路の検出
も、前記検出空間内の移動に対してのみなされるものと解される。
(c)前記方法は、隠れマルコフモデル等のパターン認識手法を使用して、前記指の移動経路と一式の標準ジェスチャとを比較することにより、前記一式の標準ジェスチャのうち一致したものを認識されたジェスチャとして解釈することを含むものである(上記(ア)g、h、i)。
(d)非接触ジェスチャは、ジェスチャの開始を含み、非接触ジェスチャを確実に抽出するために、また、非接触ジェスチャに属さない移動を考慮しないようにするために、指の移動経路中におけるジェスチャの開始を検出する(上記(ア)e、f、l)。
(e)具体的には、5ms時間間隔で前記センサ電極により指の移動についての移動特性を測定し、X方向における指先の速度が所定の閾値を超過している時点を非接触ジェスチャの開始と決定することを含む(上記(ア)l、m、n)。
ここで、X方向とは、上記(ア)o、pからすれば、長方形ディスプレイの長辺に沿った方向と解される。

イ 引用発明
前記アから、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 携帯デバイスにおいて、指の移動による非接触ジェスチャを検出および認識するための方法であって、
長方形ディスプレイの各縁に配置された4つのセンサ電極により、移動空間を規定する交流電場を発生し、交流電場内の指の移動によって生じる交流電場の力線の変化を検出することにより、前記指の移動経路を検出することと、
なお、前記指の移動経路が検出されるのは、移動空間内側の検出空間内側の移動に対してのみであり、
隠れマルコフモデル等のパターン認識手法を使用して、前記指の移動経路と一式の標準ジェスチャとを比較することにより、前記一式の標準ジェスチャのうち前記指の移動経路と一致したものを認識されたジェスチャとして解釈すること、
を含み、
5ms時間間隔で前記センサ電極により指の移動についての移動特性を測定し、X方向(前記長方形ディスプレイの長辺に沿った方向)における指の移動速度が所定の閾値を超過している時点を前記非接触ジェスチャの開始と決定する、方法。」

(3)周知技術
ア 引用文献2の記載事項
本願の優先日前に頒布された文献である、特開2009-37582号公報(平成21年2月19日出願公開。以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(なお、下線は、強調のために当審が付与した。)

「【0001】
本発明は、ゲームコントローラの技術に関する。」
「【0013】
コントローラ20は、図示しないバッテリにより駆動され、ゲームを進行させるゲーム入力を行うための複数のボタンやキーを有して構成される。ユーザがコントローラ20のボタンやキーを操作すると、そのゲーム操作データが無線により周期的にゲーム装置10に送信される。またコントローラ20は、コントローラ20の3軸方向の加速度を検出する3軸加速度センサと、所定の軸回りの角速度を検出する角速度センサを有して構成される。3軸加速度センサおよび角速度センサは、コントローラ20の動きを検出する動きセンサを構成する。ゲームアプリケーションによっては、各センサの検出値がゲーム操作データとして扱われ、無線により周期的にゲーム装置10に送信される。たとえば、コントローラ20を自動車のハンドルに見立て、ユーザがコントローラ20をハンドルのように動かすことで、ゲーム中の自動車を動かすレーシングゲームにおいては、3軸加速度センサおよび角速度センサの出力値がゲーム操作データとして利用される。
【0014】
…(中略)…コントローラ20は振動子を有し、振動開始信号を受信すると振動子を駆動させ、振動停止信号を受信すると振動子の駆動を停止させる。なおゲーム装置10は、振動子を駆動させるか否かを特定する振動制御信号を、送信フレームごとに送信してもよく、この場合、コントローラ20は、この振動制御信号にしたがって動作する。」
「【0019】
図3は、コントローラの内部構成を示す。コントローラ20は、処理部90を有し、さらに、モータと偏心部材から構成される振動子80a、80bと、無線通信モジュール92とを備える。…(後略)
【0020】
処理部90は、メイン制御部50、入力受付部52、センサユニット56、フィルタユニット60、アナログデジタル変換装置64、平均処理ユニット68、メモリ70、読出部72、通信制御部74および駆動制御部76を備える。…(後略)
…(中略)…
【0023】
センサユニット56は、複数の加速度センサ54および角速度センサ53を有する。…(後略)
【0024】
フィルタユニット60は、複数のローパスフィルタ(LPF)58、57を有する。LPF58は、加速度センサ54の下流に設けられ、加速度センサ54の出力のうち、カットオフ周波数以下の周波数成分を通過させ、カットオフ周波数近傍から、それ以上の周波数成分を減衰させるフィルタである。LPF57は、角速度センサ53の下流に設けられ、角速度センサ53の出力のうち、カットオフ周波数以下の周波数成分を通過させ、カットオフ周波数近傍から、それ以上の周波数成分を減衰させるフィルタである。…(後略)」
「【0032】
本実施例のコントローラ20には、加速度センサ54および角速度センサ53とともに、自らが振動する振動子80が存在している。加速度センサ54などの動きセンサでは、ユーザの動作によるコントローラ20の動きが正確に検出されることが好ましく、動きセンサが、振動子80の振動により筐体に与えられる振動成分を検出することは好ましくない。通常、ユーザがコントローラ20を動かすスピードには限界があるため、2次パッシブフィルタ59のカットオフ周波数を、人間がコントローラ20を動かす限界周波数もしくはそれ以下に設定することで、加速度センサ54がユーザの動作によるコントローラ20の動きを検出できるとともに、振動子80の振動に起因するコントローラ20の振動成分を加速度センサ54の出力から除去することができる。」
「【0039】
ユーザの動作によりコントローラ20に与えられる振動数は、振動子80の振動によりコントローラ20に与えられる振動数よりも一般には低い。既述したように、人間がコントローラ20を動かすスピードには限界があり、通常は15Hzを超えることはないと考えられる。したがって、LPF58のカットオフ周波数を、15Hz以下の所定値、たとえば15Hzに設定すると、LPF58は、ユーザの動きに起因する振動成分を好適に出力できるとともに、振動子80の振動に起因する振動成分を効果的に除去することが可能となる。」

以上より、引用文献2には、以下の事項(以下、「引用文献2記載事項」という。)が記載されていると認められる。
「 ユーザの動作によりゲーム操作データの入力を行うコントローラにおいて、
ユーザの動作によるコントローラの動きを正確に検出するために、コントローラが備えるセンサの出力から、人間がコントローラを動かすスピードの限界である15Hz以下の振動成分を除去すること。」

イ 引用文献3の記載事項
本願の優先日前に頒布された文献である、特開2009-93641号公報(平成21年4月30日出願公開。以下、「引用文献3」という。)には、図面とともに、次の記載がある。
(なお、下線は、強調のために当審が付与した。)

「【技術分野】
【0001】
本発明は、ポインティングデバイスまたはデジタイザタブレットにより測定および出力される座標を安定させる方法と装置、本装置を含むポインティングデバイスまたはデジタイザタブレット、並びに本方法を実行するコンピュータ可読媒体およびドライバに関する。本発明はまた、ポインティングデバイスまたはデジタイザタブレットのジッターを減らすために有用な高さ依存フィルタにも関する。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タッチタブレットの電極またはグラフィックタブレットのコイルにおける信号強度の検知にはアナログ信号の振幅を測定することが必要であるため、信号は外部ソースからの干渉またはノイズの影響を受けやすい。このノイズは、測定された座標位置における不安定性として出現し、ジッターとして知られる。ジッターは、通常ガウス特性を有するかなり無秩序な分布および任意の与えられた環境に対して予測可能な範囲を有するが、サンプル毎には予測不可能である。
【0006】
ジッターにはサンプリングの時間スケールと同じ時間スケールがあり、一般に約100?200Hzである。ユーザーの動作が一般に20Hz未満の時間スケールであるため、各種の低域通過フィルタを用いて2個の信号を分離すること、すなわち外部ソースにより生じたノイズまたは干渉から座標位置信号を分離することができる。しかし、フィルタリングによるアーチファクトをもたらすことを避けるべく相当の努力をしなければならない。フィルタリングによるアーチファクトは、低域通過フィルタリングが位置信号から実際に根拠のあるユーザー入力データを表わす高周波コンテンツを除去する際に生じる。」

以上より、引用文献3には、以下の事項(以下、「引用文献3記載事項」という。)が記載されていると認められる。

「 ポインティングデバイスまたはデジタイザタブレットにより測定および出力される座標を安定させる方法において、ユーザーの動作が一般に20Hz未満の時間スケールであるため、各種の低域通過フィルタを用いて2個の信号を分離すること、すなわち外部ソースにより生じたノイズまたは干渉から座標位置信号を分離することができること。」

ウ 周知技術
引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項より、本願の優先日前において、以下の事項は周知技術であったと認められる。

「 ユーザーの動作により入力を行う装置又は方法において、入力を正確に行うために、低域通過フィルタを用いてユーザーの動作の上限値である15Hz又は20Hz以下のノイズを入力信号から除去すること。」

(4)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
(い)引用発明は、非接触ジェスチャを検出および認識する方法に係る技術であり、本件補正発明が共通する。また、両者はいずれもジェスチャの開始を決定(検出)するものであり、課題も共通している。
(ろ)引用発明の「指の移動による非接触ジェスチャを検出および認識するための方法」は、後述する相違点に係る構成を除いて、本件補正発明の「非接触ジェスチャ認識のための方法」に相当する。
(は)引用発明の「4つのセンサ電極」は、長方形ディスプレイの各縁に配置されたものであって、配置された位置に対応させて関連付けられたこれら「4つのセンサ電極」が協働して指の移動経路を検出することは明らかであるから、本件補正発明の「関連付けられている複数の検出センサ」に含まれる。
(に)引用発明は、「4つのセンサ電極」により、交流電場を発生し、当該交流電場の力線の変化を検出して、指の移動経路を検出するものである。ここで、検出された交流電場力線の変化は、「信号」といい得るものであり、この「信号」は、非接触ジェスチャを検出および認識するためのものである。
よって、引用発明において、センサ電極によって検出される信号は、本件補正発明の「1つ以上のジェスチャ関連信号」に相当する。
(ほ)前記(は)及び(に)より、引用発明は、本件補正発明の「関連付けられている複数の検出センサを使用して、1つ以上のジェスチャ関連信号を検出すること」に相当する構成を含んでいる。
(へ)引用発明の「隠れマルコフモデル等のパターン認識手法」は、本件補正発明の「自動認識技法」に含まれる。
(と)引用発明において、指の移動経路は、センサ電極により検出された信号により検出されるものであるから、本件補正発明の「前記1つ以上のジェスチャ関連信号から検出される前記非接触ジェスチャ」に相当する。
(ち)引用発明の「指の移動経路と一式の標準ジェスチャとを比較すること」は、本件補正発明の「前記非接触ジェスチャを評価する」ことに相当し、そうすると、引用発明の「前記一式の標準ジェスチャのうち前記指の移動経路と一致したものを認識されたジェスチャとして解釈すること」は、本件補正発明の「前記非接触ジェスチャが所定の組のジェスチャのうちの1つに対応するかどうかを決定すること」に相当する。
(り)前記(へ)ないし(ち)より、引用発明は、「隠れマルコフモデル等のパターン認識手法を使用して、前記指の移動経路と一式の標準ジェスチャとを比較することにより、前記一式の標準ジェスチャのうち前記指の移動経路と一致したものを認識されたジェスチャとして解釈すること」に相当する構成を含んでいる。
(ぬ)引用発明において、「非接触ジェスチャの開始と決定する」ことは、本件補正発明の「前記ジェスチャの開始を決定すること」に相当する。
(る)引用発明の「指」は、本件補正発明の「標的物体」に含まれる。
(を)引用発明において、「指の移動についての移動特性を測定し、X方向(前記長方形ディスプレイの長辺に沿った方向)における指の移動速度が所定の閾値を超過している時点を前記非接触ジェスチャの開始と決定する」ことは、「非接触ジェスチャの開始」(本件補正発明の「ジェスチャの開始」に相当。)を決定するための指の移動についての移動特性として、
・指の移動方向がX方向であること、及び、
・指の移動速度が所定の閾値を超過していること
2条件を規定するものと理解することができる。
(わ)一方、本件補正発明は、「前記ジェスチャの開始を決定することにおいて、開始は、標的物体と少なくとも1つのセンサとの間の距離が減少し、前記標的物体と少なくとも別のセンサとの間の距離が増加し、かつ、所定の複数の信号サンプルにわたる短期間変動または同等の評価尺度が閾値より大きい場合に決定され、」との構成からすれば、「ジェスチャの開始を決定すること」のための標的物体の移動の条件は、
・「標的物体と少なくとも1つのセンサとの間の距離が減少し、前記標的物体と少なくとも別のセンサとの間の距離が増加」すること、及び、
・「所定の複数の信号サンプルにわたる短期間変動または同等の評価尺度が閾値より大きい」こと
2条件であると理解することができる。
(か)前記(を)の「指の移動方向がX方向であること」との条件について
引用発明において、指の移動方向がX方向(前記長方形ディスプレイの長辺に沿った方向)に移動すること、すなわち、「指の移動方向がX方向であること」との条件と、本件補正発明の「『標的物体と少なくとも1つのセンサとの間の距離が減少し、前記標的物体と少なくとも別のセンサとの間の距離が増加』すること」との条件とは、前記(る)を考慮すれば、「標的物体の移動に関する条件」であり、本件補正発明と引用発明とは、「ジェスチャの開始を決定すること」の条件として、「標的物体の移動に関する条件」を満たすことである点において共通する。
(よ)前記(を)の「指の移動速度が所定の閾値を超過していること」との条件について
引用発明において、「指の移動について移動特性」は、「5ms時間間隔で前記センサ電極により指の移動についての移動特性を測定」して得られるものである。
ここで、「指の移動について移動特性」を「5ms時間間隔」で「測定」することは、指の移動に関する複数の信号を前記「5ms時間間隔」でサンプル取得していることに等しく、また、取得された信号を「所定の複数の信号サンプル」と称することは任意である。また、前記「5ms時間間隔」は、ジェスチャが入力される全体の時間からすれば十分に短い期間であり、また、非接触ジェスチャの開始を決定するという目的からすれば、前記「指の移動速度」が取得される時間は「短期間」といい得るものである。さらに、「(指の移動)速度」は「(指の移動した距離の)期間変動」に相当する。
そうすると、引用発明において、ジェスチャの開始を決定することの条件としての「5ms時間間隔で前記センサ電極により指の移動についての移動特性を測定し」「X方向(前記長方形ディスプレイの長辺に沿った方向)における指の移動速度が所定の閾値を超過している時点」は、本件補正発明の「所定の複数の信号サンプルにわたる短期間変動または同等の評価尺度が閾値より大きい場合」に相当する。
(た)前記(を)ないし(よ)より、本件補正発明と引用発明とは、「前記ジェスチャの開始を決定することにおいて、開始は、標的物体の移動に関する条件を満たし、かつ、所定の複数の信号サンプルにわたる短期間変動または同等の評価尺度が閾値より大きい場合に決定され」との構成を備えている。

(5)一致点・相違点
以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

[一致点]
「 非接触ジェスチャ認識のための方法であって、
関連付けられている複数の検出センサを使用して、1つ以上のジェスチャ関連信号を検出することと、
自動認識技法を使用して、前記1つ以上のジェスチャ関連信号から検出される前記非接触ジェスチャを評価することにより、前記非接触ジェスチャが所定の組のジェスチャのうちの1つに対応するかどうかを決定することと
を含み、
前記ジェスチャの開始を決定することにおいて、開始は、標的物体の移動に関する条件を満たし、かつ、所定の複数の信号サンプルにわたる短期間変動または同等の評価尺度が閾値より大きい場合に決定され、
前記検出された1つ以上のジェスチャ関連信号は、15Hz?20Hz以下の最大周波数を有するように低域通過フィルタにかけられる、方法。」

[相違点]
<相違点1>
一致点である「標的物体の移動に関する条件」を満たすことが、本件補正発明は、「標的物体と少なくとも1つのセンサとの間の距離が減少しかつ前記標的物体と少なくとも別のセンサとの間の距離が増加」することであるのに対し、引用発明は、指の移動方向がX方向(前記長方形ディスプレイの長辺に沿った方向)であること、である点。

<相違点2>
「1つ以上のジェスチャ関連信号」について、本件補正発明は、「前記検出された1つ以上のジェスチャ関連信号は、15Hz?20Hz以下の最大周波数を有するように低域通過フィルタにかけられる、」との限定を含むのに対し、引用発明は、当該限定について特定していない点。

(6)判断
ア 相違点1について
引用発明において、指の移動方向がX方向(前記長方形ディスプレイの長辺に沿った方向)に移動するということは、「長方形ディスプレイの各縁に配置された4つのセンサ電極」のうち、前記長方形ディスプレイの向かいあう2つの短辺(Y方向の辺)のそれぞれに配置されている2つのセンサ電極のうち、指(標的物体)と一方のセンサ電極との間の距離が減少し、指(標的物体)と他方のセンサ電極との間の距離が増加していることに等しい。すなわち、引用発明は、ジェスチャの開始を決定することの条件として、本件補正発明の「標的物体と少なくとも1つのセンサとの間の距離が減少しかつ前記標的物体と少なくとも別のセンサとの間の距離が増加」するとの条件を実質的に備えている。
よって、相違点1は、実質的なものではなく、表現上の相違にすぎない。
仮に、請求項1に係る発明が、1つのセンサにより、標的物体と当該センサとの間の距離が減少することを検出し、別のセンサにより、標的物体と当該センサとの間の距離が増加することを検出するものであるとしても、引用文献1には、4つのセンサ電極のそれぞれが標的物体である指との間の距離の時間的推移、すなわち、各センサ電極に対する指の距離の増減を検出することが可能である(上記(2)ア(ア)n及びo参照。)ことが開示されている(以下、これを「引用文献1開示事項」という。)から、当該引用文献1開示事項を参酌すれば、引用発明において、指の移動特性のうち移動方向がX方向であることを検出するにあたり、Y方向に沿って配置されている2つのセンサ電極のうち、一のセンサ電極によって標的物体と当該センサ電極との間の距離が減少し、他方のセンサ電極によって標的物体と当該センサ電極との間の距離が増加することを検出するようにすることによって、指の移動方向がX方向に移動することを判断することは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
(ア)相違点2に係る本件補正発明の技術的意義
上記相違点2に係る本件補正発明の構成である「前記検出された1つ以上のジェスチャ関連信号は、15Hz?20Hz以下の最大周波数を有するように低域通過フィルタにかけられる」(以下、「相違点2構成」という。)に関して、本件出願に係る明細書(本件明細書)の【0021】には、「いくつかの実施形態では、センサシステムは、所定のサンプリングレートf_sで、各センサ電極に対する離散時間測定値を提供する。典型的には、前処理段階で、センサ信号は、用途に応じて、典型的には最大でf_max=<15Hz?20Hzである、手のジェスチャの周波数範囲に合致するために、低域通過フィルタにかけられ、f_s>2*f_maxである。1つ以上の電極に対するこれらの信号を考慮すると、目標は、それぞれ、キーボードまたはアクティブ領域の上で行われる手のジェスチャの確実な自動認識を提供することである。」と記載されている。
この記載からすれば、相違点2構成は、検出すべきセンサ信号の周波数の最大値である「15Hz?20Hz」以下の周波数を、「低域通過フィルタ」によって、前処理段階でセンサ信号から取り除くことにより、「手のジェスチャの確実な自動認識」を実現することに技術的意義があることになる。
しかしながら、本件明細書には、取り除くべきセンサ信号の最大周波数を「15Hz?20Hz」とすべき技術的な根拠について明記されておらず、上記【0021】の「用途に応じて、典型的には」、「手のジェスチャの周波数範囲に合致するために」等の記載からすれば、典型的な(一般的な)用途における「手のジェスチャ」から検出されるセンサ信号の周波数範囲の上限値が「15Hz?20Hz」であることを前提としているものと理解できる。
また、本件補正発明は、方法の発明であるが、相違点2構成は、前記方法の発明を構成するどの段階におけるものであるのか明示されていない。しかしながら、前述した技術的意義を考慮すれば、少なくとも、「自動認識技法を使用して、前記1つ以上のジェスチャ関連信号から検出される前記非接触ジェスチャを評価することにより、前記非接触ジェスチャが所定の組のジェスチャのうちの1つに対応するかどうかを決定すること」よりも前(前処理段階)に「検出センサ」によって検出された「1つ以上のジェスチャ関連信号」に対して実施されるものと理解できる。

(イ)周知技術に基づく検討
引用文献1には、さらに以下の記載がある。(下線部は、強調のために当審が付与した。)

「In order to ignore unintentionally movements, for example by a finger in the movement space, in extracting gestures from the movement path, a compensation method is proposed, which during the generation of the movement path (step 300) eliminates those segments from the movement path which correspond to unintentional movements of the finger in the movement space. For this purpose for example the speed and/or the acceleration of the finger in the movement space may be used, wherein exceeding or falling below a preset speed or a preset acceleration may be indicative for an unintentional movement of the finger. By extracting such segments from the movement path also the recognition degree in the extraction of gestures from the movement path in the step 400 is increased.」(第18ページ第12?21行)
[当審訳]
「【0074】
例えば、移動経路からジェスチャを抽出する際、移動空間内の指による、偶発的移動を無視するために、移動経路の生成(ステップ300)中に、移動経路から、移動空間内の指の偶発的移動に対応する、それらのセグメントを排除する、補償方法が提案される。本目的のために、例えば、移動空間内の指の速度および/または加速度が使用されてもよく、既定速度または既定加速度超過または未達は、指の偶発的移動を示し得る。移動経路から、そのようなセグメントを抽出することによって、また、ステップ400における、移動経路からのジェスチャの抽出の認識程度が向上される。」

「Instead of the four stripe-shaped electrodes E shown in Fig. 2, at the edges of the reference surface B each time one punctiform electrode may be arranged, which makes possible an improved recognition of the space coordinates, for example of a fingertip, in the movement space 10. Also at each edge of the reference surface there may be several punctiform electrodes in order to even further increase the recognition precision.」(第19ページ第5?10行)
[当審訳]
「【0077】
図2に示される4つのストライプ形状の電極Eの代わりに、基準表面Bの縁に、各々、1つの点状の電極が、配置されてもよく、これは、空間座標、例えば、移動空間10内の指先の認識を改善させることを可能にする。また、基準表面の各縁には、認識精度をさらに向上させるために、いくつかの点状の電極が存在し得る。」

上記の記載から、引用発明は、指ないし指先の移動の認識を改善することを潜在的な課題とするものといえる。
そして、上記(3)ウで述べたように、本願の優先日前において、「 ユーザーの動作により入力を行う装置又は方法において、入力を正確に行うために、低域通過フィルタを用いてユーザーの動作の上限値である15Hz又は20Hz以下のノイズを入力信号から除去すること。」は周知技術であった。
引用発明は、「指の移動による非接触ジェスチャを検出および認識するための方法」、すなわち、ユーザーの動作により入力を行う方法であることから、引用発明における前記潜在的な課題を解決するための一つの手段として、ユーザーの動作により入力を行う装置又は方法に係る前記周知技術を参酌することにより、4つのセンサ電極によって検出された交流電場力線の変化(本件補正発明の「検出された1つ以上のジェスチャ関連信号」に相当。)を「15Hz?20Hz以下の最大周波数を有するように低域通過フィルタにかけ」することにより「指の移動による非接触ジェスチャ」に基づかない信号(ノイズ)を除去するよう構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

ウ 作用効果についての検討
そして、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び上記周知技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、引用文献1開示事項及び上記周知技術を参酌することにより、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび(補正の却下の決定のむすび)
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
したがって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年7月7日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成29年8月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、上記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 当審拒絶理由
本願発明についての当審拒絶理由の拒絶の理由は、本願発明は、本願の優先権主張の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1(国際公開第2011/098496号)に記載された発明であるか、又は、引用文献1に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条1項3号又は同法同条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

3 引用文献
当審拒絶理由の拒絶の理由で引用した引用文献1に記載された事項は、上記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記検出された1つ以上のジェスチャ関連信号は、15Hz?20Hz以下の最大周波数を有するように低域通過フィルタにかけられる」(相違点2構成)に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに相違点2構成を付加したものに相当する本件補正発明が、上記第2の[理由]2(4)ないし(6)に記載したとおり、引用発明に基づいて、引用文献1開示事項及び周知技術を参酌することにより当業者が容易に発明をすることができたものであって、上記第2の[理由]2(6)アで述べたように、引用文献1開示事項は、本件補正発明と引用発明との間の相違点1が実質的な相違点であると仮定した場合に予備的に参酌したものであり、また、上記周知技術は、本件補正発明と引用発明との間の相違点2に係る容易想到性を判断するために参酌したものである。
そうすると、本願発明は、引用発明であるか、又は、引用発明に基づいて引用文献1開示事項を参酌することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび(結論)
以上のとおり、本願発明は、特許法29条1項3号又は同法同条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-04 
結審通知日 2020-08-05 
審決日 2020-08-24 
出願番号 特願2015-526994(P2015-526994)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
P 1 8・ 575- WZ (G06F)
P 1 8・ 113- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池田 聡史星野 昌幸  
特許庁審判長 ▲吉▼田 耕一
特許庁審判官 小田 浩
林 毅
発明の名称 センサシステムのための自動ジェスチャ認識  
代理人 森下 夏樹  
代理人 山本 秀策  
代理人 山本 健策  
代理人 飯田 貴敏  
代理人 石川 大輔  

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