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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01B
管理番号 1369808
審判番号 不服2019-13882  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-18 
確定日 2021-01-06 
事件の表示 特願2017-145091「三次元の対象の積層造形的製造の為の装置の為の粉末モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 2月 1日出願公開、特開2018- 17735〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この審判請求に関する出願(以下「本願」という。)は、平成29年7月27日を出願日とする特許出願(パリ条約による優先権主張、外国庁受理2016年7月29日、ドイツ連邦共和国)であって、平成31年2月8日付けで特許請求の範囲についての補正がされ、令和元年5月23日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ(原査定の謄本の送達日:同年6月18日)、これに対して、同年10月18日付けで拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願に係る発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成31年2月8日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「三次元の対象の積層造形的な製造の為の装置の為の粉末モジュール(1)であって、粉末形状の構成材料により充填可能である粉末空間を画成する粉末チャンバー(2)、粉末空間(3)内に設けられ、粉末空間(3)を底部側で画成し、粉末チャンバー(2)に対して相対的に移動可能に支承されるキャリア(4)と、キャリア(4)の位置の検出の為に設けられている位置検出装置(6)を有する粉末モジュールにおいて、
位置検出装置(6)がケーブルセンサーとして形成されているか、少なくとも一つのケーブルセンサーを有することを特徴とする粉末モジュール。」

第3 原査定の請求項1についての拒絶の理由の概要
本願発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び周知技術(引用文献2ないし引用文献4参照。)に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

1.特開2015-155188号公報
2.特開平7-26760号公報
3.実願平2-25017号(実開平3-117712号)のマイクロフィルム
4.特開平9-119831号公報

第4 引用文献に記載された発明等
1 引用文献1に記載された発明
(1)引用文献1には、以下の記載がある。下線は当審で付した。

「【0001】
本発明は、粉末を繰り返し層状に形成することによって三次元造形物を製造する三次元造形装置に関する。」

「【0016】
本実施形態の三次元造形装置1は、材料供給部としてのエネルギービーム照射部2と、材料供給部としての粉末供給部3と、造形物載置部4と、を備える。エネルギービーム照射部2、粉末供給部3、及び造形物載置部4は、支持フレーム11に支持される。また、支持フレーム11の中間部分には、支持フレーム11の一部としての基準フレーム12が形成されている。(中略)
【0018】
ビーム発生部21は、レーザ光又は電子ビーム等を発生するものが好ましい。エネルギービームEBが光の場合、ビーム走査部22は、レンズ等の光学素子を移動させて、光を後述するテーブル上の金属粉末Mに集光させると共に、テーブル41上を2次元走査する。一例として、エネルギービーム照射部2は、特許文献1に記載されたレーザ照射ユニットのような構成でよい。また、エネルギービームEBが電子ビームの場合、ビーム走査部22は、電子ビームを電磁場の制御によってフォーカスさせると共に、テーブル41上を2次元走査する。一例として、エネルギービーム照射部2は、特許文献2に記載された電子線を照射し案内させる装置のような構成でよい。
【0019】
粉末供給部3は、金属粉末Mを一時的に貯留する粉末貯留部31と、金属粉末Mをテーブル上で均す均し部32と、外枠部33と、を有する。
(中略)
【0021】
均し部32は、粉末貯留部31から排出された金属粉末Mをテーブル41上でスクレーパ等の部材を移動させることによって可能な限り高さが均等な平面を形成する部分である。なお、金属粉末Mを均す高さは調整できることが好ましい。
【0022】
外枠部33は、支持フレーム11に支持され、後述するテーブル41の外周に設置される。外枠部33には、均し部32が均した後の余分な金属粉末Mが移動してくる。これらの金属粉末Mは、粉末貯留部31に戻す図示しない循環部によって循環されることが好ましい。
(中略)
【0025】
図2は、本実施形態の三次元造形装置の造形載置部を示す拡大図である。図3は、本実施形態の三次元造形装置の駆動伝達部の配置を示す概略図である。図4は、本実施形態の三次元造形装置の造形載置部を示す概略斜視図である。
【0026】
造形物載置部4は、テーブル41と、スライダ42と、ボールねじ43と、減速部44と、テーブル駆動部45と、磁気センサ46と、磁気スケール47と、ロッド48と、リミットスイッチ49と、を有する。
【0027】
テーブル41は、スライダ42に支持される。テーブル41の上面は、平面で形成され、上面に図1に示した金属粉末Mが排出され、載置される。造形物は、テーブル41の外形よりも小さい造形領域41aに形成されることが好ましい。
【0028】
スライダ42は、上面でテーブル41を支持する。下方では、ボールねじ43に支持される。ボールねじ43は、減速部44を介して駆動部45に連結される。駆動部45は、サーボモータ又はその他のアクチュエータ等からなり、駆動部45が駆動することで、ボールねじ43が回転し、ボールねじ43の回転によってスライダ42が上下することで、テーブル41も上下する。ボールねじ43は、基準フレーム12を貫通することが好ましい。
(中略)
【0032】
スライダ42の下方には、第1磁気センサ46a、第2磁気センサ46b、第3磁気センサ46c、及び第4磁気センサ46dが、第1ボールネジ43a、第2ボールネジ43b、第3ボールネジ43c、及び第4ボールネジ43dの支持位置に対応してそれぞれ取り付けられている。
【0033】
なお、磁気センサ46は、測定部の一例である。測定部としては、この例の他に、スライダ42又は支持フレーム11の一方に発光部、他方に受光部を取り付けて距離を検出する光学的位置センサ又は超音波センサ等でもよい。特に、一方を基準フレーム12、他方をスライダ42に取り付けることが好ましい。また、これらのセンサは、第1ボールネジ43a、第2ボールネジ43b、第3ボールネジ43c、及び第4ボールネジ43dの支持位置に対応してそれぞれ取り付けられることが好ましい。または、図示しないモータエンコーダー等によってモータの回転角度をストローク量に換算し、磁気センサ46と共に用いて詳細に位置を検出してもよい。
【0034】
そして、スライダ42の側方の支持フレーム11には、第1磁気センサ46a、第2磁気センサ46b、第3磁気センサ46c、及び第4磁気センサ46dに対向して、磁気目盛が付与された第1磁気スケール47a、第2磁気スケール47b、第3磁気スケール47c、及び第4磁気スケール47dが配設されている。
(中略)
【0038】
図5に示すように、本実施形態の三次元造形装置1は、入力部51、第1磁気センサ46a、第2磁気センサ46b、第3磁気センサ46c、第4磁気センサ46d、及び記憶部52から入力されたそれぞれの信号を制御部50が第1駆動部45a、第2駆動部45b、第3駆動部45c、及び第4駆動部45dを独立制御するものである。
【0039】
入力部51は、成形形状、成形圧力、成形速度等の情報を予め入力する。記憶部52は、入力部51から入力された情報及び造形工程等を記憶しており、制御部50にそれらの情報を出力する。それぞれの第1磁気センサ46a、第2磁気センサ46b、第3磁気センサ46c、及び第4磁気センサ46dは、対向する第1磁気スケール47a、第2磁気スケール47b、第3磁気スケール47c、及び第4磁気スケール47dの目盛りからそれぞれの変位又は速度等を測定し、制御部50に出力する。」

「【0043】
本実施形態の三次元造形装置1では、まず、図4に示した各駆動部45を駆動し、図6に示すように、テーブル41を下方に移動する。テーブル41の指示移動量は、図5に示した入力部51にあらかじめ入力し、記憶部52に記憶しておけばよい。」

「【0046】
続いて、粉末貯留部31の排出部31bから金属粉末Mをテーブル41上に排出する。次に、均し部32によって金属粉末Mをテーブル41上で表面が水平になるように均等に均す。続いて、図1に示したエネルギービーム照射部2がエネルギービームEBを照射し、図7に示すように、金属粉末Mを焼結し、造形物M’の一部を形成する。」
【0047】
次に、再び図4に示した各駆動部45を駆動し、図8に示すように、テーブル41を下
方に移動する。テーブル41の移動量は、図5に示した入力部51にあらかじめ入力し、
記憶部52に記憶しておけばよい。」

「【0050】
続いて、粉末貯留部31の排出部31bから金属粉末Mをテーブル41上に排出する。次に、均し部32によって金属粉末Mをテーブル41上で表面が水平になるように均等に均す。続いて、図1に示したエネルギービーム照射部2がエネルギービームEBを照射し、図9に示すように、金属粉末Mを焼結し、造形物M’の一部を形成する。」

「【0101】
本実施形態の三次元造形装置1によれば、支持フレーム11と、支持フレーム11に支持される材料供給部3と、支持フレーム11に支持され、材料供給部3から供給される材料が載置される造形物載置部4と、を備え、造形物載置部4は、上面に造形物が載置されるテーブル41と、テーブル41を駆動する駆動部45と、テーブル41の位置を測定する測定部46と、測定部46の測定値に基づいて、駆動部45を制御する制御部50と、を有するので、精度及び生産性の高い三次元造形装置を提供することが可能となる。」

「【0104】
駆動部45は、独立して駆動可能な第1駆動部45a及び第2駆動部45bを有し、測定部46は、テーブル41の位置をそれぞれ測定する第1磁気センサ46a及び第2磁気センサ46bを有し、制御部50は、第1磁気センサ46a及び第2磁気センサ46bの各測定値に基づいて、第1駆動部45a及び第2駆動部45bをそれぞれ独立して制御するので、精度及び生産性の高い三次元造形装置を提供することが可能となる。」

「【図1】



「【図6】

【図7】



(2)引用文献1の前記(1)の記載をまとめると、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「粉末を繰り返し層状に形成することによって三次元造形物を製造する三次元造形装置1であって(【0001】、【0016】)、
材料供給部としてのエネルギービーム照射部2と、材料供給部としての粉末供給部3と、造形物載置部4と、を備え、エネルギービーム照射部2、粉末供給部3、及び造形物載置部4は、支持フレーム11に支持され、支持フレーム11の中間部分には、支持フレーム11の一部としての基準フレーム12が形成されており(【0016】)、
粉末供給部3は、金属粉末Mを一時的に貯留する粉末貯留部31と、金属粉末Mをテーブル上で均す均し部32と、外枠部33と、を有し(【0019】)、
均し部32は、粉末貯留部31から排出された金属粉末Mをテーブル41上でスクレーパ等の部材を移動させることによって可能な限り高さが均等な平面を形成する部分であり(【0021】)、
外枠部33は、支持フレーム11に支持され、テーブル41の外周に設置され、外枠部33には、均し部32が均した後の余分な金属粉末Mが移動してくるようになっており(【0022】)、
造形物載置部4は、テーブル41と、スライダ42と、ボールねじ43と、減速部44と、テーブル駆動部45と、テーブル41の位置を測定する磁気センサ46と、磁気スケール47と、ロッド48と、リミットスイッチ49とを有し(【0026】、【0101】)、
テーブル41は、スライダ42に支持され、テーブル41の上面は、平面で形成され、上面に金属粉末Mが排出され、載置され(【0027】)、
駆動部45が駆動することで、ボールねじ43が回転し、ボールねじ43の回転によってスライダ42が上下することで、テーブル41も上下し(【0028】)、
上記磁気センサ46は、第1磁気センサ46a、第2磁気センサ46b、第3磁気センサ46c、及び第4磁気センサ46dとして、スライダ42の下方に取り付けられ(【0032】)、
それぞれの第1磁気センサ46a、第2磁気センサ46b、第3磁気センサ46c、及び第4磁気センサ46dは、対向してスライダ42の側方の支持フレーム11に配設された第1磁気スケール47a、第2磁気スケール47b、第3磁気スケール47c、及び第4磁気スケール47dの目盛りからそれぞれの変位を測定し、制御部50に出力し(【0034】、【0039】)、
上記三次元造形装置1の作動については(【0041】)、
まず、各駆動部45を駆動し、テーブル41を下方に移動し(【0043】)、
続いて、粉末貯留部31の排出部31bから金属粉末Mをテーブル41上に排出し、次に、均し部32によって金属粉末Mをテーブル41上で表面が水平になるように均等に均し、続いて、エネルギービーム照射部2がエネルギービームEBを照射し、金属粉末Mを焼結し、造形物M’の一部を形成し(【0046】)、
次に、再び各駆動部45を駆動し、テーブル41を下方に移動し(【0047】)、
続いて、粉末貯留部31の排出部31bから金属粉末Mをテーブル41上に排出し、次に、均し部32によって金属粉末Mをテーブル41上で表面が水平になるように均等に均し、続いて、エネルギービーム照射部2がエネルギービームEBを照射し、金属粉末Mを焼結し、造形物M’の一部を形成する(【0050】)、
三次元造形装置1。」

2 引用文献2に記載された事項
(1)引用文献2には、下記の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0002】
【従来の技術】例えば、水泳プールにおいては、図5に示すように、昇降床2を流体圧シリンダ3で昇降することにより、プール1の水深を調整可能とするものが知られている。
【0003】この種のプールにおいては、流体圧シリンダ3のストロークを検出するために、プール底壁1aの支台1b上で流体圧シリンダ3の下端レベルにワイヤを利用するストローク検出装置4が水蜜ボックス5内に位置して付設されている。
【0004】ここで、流体圧シリンダ3のストロークを検出装置4に伝えるワイヤ6は、リコイルスプリング7によって常に巻取り方向へ付勢されているドラム8に巻き取られまたは繰り出されるようになっており、水蜜ボックス5の下端等から外部へ導出される部分を上方へ案内するプーリ9を経て昇降床2に係止されている。
【0005】そして、巻取り時または繰り出し時のドラム8の回転数は、主ケーシング11内に設けたロータリエンコーダ10によって計算され、ストロークが算定されるようになっている。また、主ケーシング11の外側端板を、検出パルス信号を図外の制御室に送るための接続ケーブル12が水蜜の貫通している。」

「【図5】



(2)引用文献2の前記(1)の記載をまとめると、引用文献2には、以下の事項が記載されている。

「昇降床2の位置を検出するために、ワイヤ6の一方を昇降床2に係止し、他方を巻取り方向へ付勢されているドラム8に巻き取られまたは繰り出されるようにし、ワイヤ6の巻取り量または繰り出し量に対応するドラム8の回転数をロータリエンコーダ10によって計算することにより、流体圧シリンダ3のストロークを算定する。」


3 引用文献3に記載された事項
(1)引用文献3には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

(第17行第11行から第18頁第13行)
「変位変換器本体21を不動部材24上の基準箇所に設置し、チュープ固定部材26を被測定対象物20のできるだけ近い不動部材24上に、ガイドチュープ25の先端が被測定対象物20の移動方向に合致するように固定し、ワイヤ23の先端を被測定対象物20に連結する。
この最初に設置した状態における被測定箇所の位置を初期位置とし、このときの可変抵抗器8の抵抗値(またはその出力値)を初期値とする。
上記被測定箇所が基準箇所に対して相対的に変位(移動)すれば、その変位量に応じてワイヤ10がガイドチュープ25の曲り具合に従った直進的あるいは曲進的な動きを示し、渦巻ばね14、すなわち定出力ばねの蓄勢力(または巻締け習性)に抗して引出されまたは該蓄勢力によって巻込まれ、それに応じて回転軸9が共通軸とされたワイヤ巻取りドラム6とばね巻付けドラム7と可変抵抗器8とが一体となって回動する。その結果、被測定箇所の初期位置からの変位量に対応した出力が可変抵抗器8より出力されるので、この出力を電気ケープル19を介して別途準備される変位指示計に導き、該変位指示計をもって変位量を指示あるいは記録せしめる。」
(第22頁第11行から第14行)
「例えば、上述した実施例では、回転角検出器として可変抵抗器を用いているが、回転角に応じたパルスを出力するロータリエンコーダ等を用いることもできる。」

(2)引用文献3の前記(1)の記載をまとめると、引用文献3には、以下の事項が記載されている。

「被測定対象物20の基準箇所に対する相対的な変位を検出するために、ワイヤ10の先端を被測定対象物20に連結し、ワイヤ10の他端をワイヤ巻取りドラム6に巻き取り可能な構造とし、ワイヤ10の引出しまたは巻込みの量に応じたワイヤ巻き取りドラム6の回転角をロータリエンコーダで検出することで、被測定箇所の初期位置からの変位量を検出する。」

4 引用文献4に記載された事項
(1)引用文献4には、以下の記載がある。下線は、当合議体が付した。

「【0012】同図に示すように、プール可変床1は、水を漲ったプール10内において、その底11に水圧シリンダ15が昇降手段として複数配設されると共にこれら水圧シリンダ15に可変床17が上下動可能に支持されて構成され、水深調節が可能となっている。可変床17は、水圧シリンダ15等の点検保守のために下方空間に作業者が入る開閉部を隅に有し、また、周壁2上で転動する昇降案内ローラ(図示省略)を周辺部に複数備えている。
【0013】プール10には、通常は常に一定レベルまで、例えば、オーバフロー開口位置まで水が漲られている。そのため、水面を基準レベルとすると、そこから可変床17のレベル、即ち、水深を計測することができる。本実施例のプール可変床のレベル検出装置20は、比較的大きな可変床17に対して、各水圧シリンダ15の近傍での昇降量をそれぞれ計測して、複数箇所での水深を求めるものである。
【0014】即ち、各水圧シリンダ15の近傍における可変床17には、非伸縮性の可撓性線材であるステンレスワイヤ21の一方端がそれぞれ取り付けられている。それらの取付部直下におけるプール底11にはシーブ23が竪に搭載され、これらのシーブ23により上記ステンレスワイヤ21の他方端が垂直方向から水平方向へそれぞれ往復動自在に案内されている。
【0015】更に、プール周壁2の近傍にはそれぞれシーブ23が水平に搭載されてこれらのシーブ23により、上記ステンレスワイヤ21の他方端が水平面内で方向転換してそれぞれ往復動自在に案内されている。また、プール側壁底部2Aの近傍には、ステンレスワイヤ21の他方端部分を巻き取り、繰り出し可能なドラム25がそれぞれ配置されている。
【0016】これらのドラム25は、プール側壁底部2Aをシール手段であるシール筒27を介して貫通し、他端側が機械室14に至るドラム軸26の一端側に固定されている。このドラム25の他端側には、ドラム25を常に巻き取り方向に付勢する付勢手段としてゼンマイバネ28が取り付けられると共に可変床17の上下動距離に相当するドラム25の回転数信号をコントロールユニット30へ発信するロータリエンコーダ29が設けられている。
【0017】ゼンマイバネ28は、可変床17が最高レベルに上昇されている時にドラム巻き取り力を最大に保有し、可変床17が最低レベルに下降されても依然として巻き取り力を残存するように一端をドラム軸26に他端をハウジングHに取り付けられている。従って、可変床17の上昇時は勿論、下降時もステンレスワイヤ21にはテンションが掛けられ、弛むことはない。
【0018】ロータリエンコーダ29は、ステンレスワイヤ21の移動距離に相当する回転角度だけパルス信号をコントロールユニット30に発信し、コントロールユニット30において即座に基準レベルからの可変床17の現在のレベルが演算され、デジタル表示される。」

「【図1】

【図2】



(2)引用文献4の前記(1)の記載をまとめると、引用文献4には、以下の事項が記載されている。
「上下動可能に支持された可変床17の、基準レベル(水面)からの現在のレベルを演算するため、ステンレスワイヤ21の一方端を可変床17に取り付け、他方端をドラム25により巻き取り及び繰り出し可能な構造とし、可変床17の上下動距離に相当する当該ドラム25の回転角度をロータリエンコーダ29により検出する。」

第5 対比
1 本願発明と引用発明を対比する。

ア 引用発明は、「粉末を繰り返し層状に形成することによって三次元造形物を製造する三次元造形装置1」であり、「繰り返し層状に形成すること」は、「積層造形」することに他ならないから、引用発明の「粉末を繰り返し層状に形成することによって」「製造」される「三次元造形物」は、本願発明の「積層造形的」に「製造」される「三次元の対象」に相当する。
したがって、引用発明の「三次元製造装置1」は、本願発明の「三次元の対象の積層造形的な製造の為の装置」に相当する。

イ 引用発明の「金属粉末M」は、本願発明の「粉末形状の構成材料」に相当する。
引用発明では、「三次元造形装置1」において、「まず」「テーブル41を下方に移動し」、「金属粉末Mをテーブル41上に排出し」「焼結」した後に、「再び」「テーブル41を下方に移動し」、「金属粉末Mを排出し」「焼結」するという「作動」が行われている。すなわち、「金属粉末M」の排出に先立って、「テーブル41」が「下方に移動」することにより、「金属粉末Mを排出可能な空間」が形成されており、当該空間は、本願発明の「粉末形状の構成材料により充填可能である粉末空間」に相当する。
さらに、引用発明において、「均し部32は、粉末貯留部31から排出された金属粉末Mをテーブル41上でスクレーパ等の部材を移動させることによって可能な限り高さが均等な平面を形成する部分であ」るから、引用発明は、本願発明の粉末空間に相当する空間の側方を画定する壁となるような部材を有している、すなわち、「粉末形状の構成材料により充填可能である粉末空間を画成する」ことに相当する機能をする部材を有していることは明らかである。
粉末チャンバーについて、本願の明細書の段落【0008】の記載を参酌すると、「粉末モジュールは、粉末チャンバーを有している。粉末チャンバーは、構成材料によって充填可能な粉末空間を画成する。粉末空間は、少なくとも側方を、通常中空直方体状又は中空円筒体状に形成される粉末チャンバーの壁部(粉末チャンバー壁部)によって画成されている。底部側では、粉末空間はキャリアによって画成されている。」と記載されている。この記載を参酌すると、「粉末チャンバー」とは、「粉末空間の少なくとも側方を画成する壁となる部材を有する部材」であるということができる。
そうすると、引用発明は、本願発明における「粉末形状の構成材料により充填可能である粉末空間を画成する粉末チャンバー(2)」に相当する部材を有しているということができる。

ウ 引用発明において、「テーブル41」が下方に移動することにより、「金属粉末Mを排出可能な空間」が形成されており、「テーブル41」は、前記「空間」の内部に設けられていると認められる。また、「テーブル41の上面は、平面で形成され、上面に金属粉末Mが排出され、載置され」るものであり、当該「上面」は、前記「空間」の底部を形成している。そして、「テーブル41」は、「スライダ42に支持され」、「駆動部45が駆動することで」「スライダ42が上下することで」、前記「空間」の「側方を画定する壁となるような部材」に対して相対的に、「テーブル41も上下」する。よって、引用発明の「テーブル41」は、本願発明の「粉末空間(3)内に設けられ、粉末空間(3)を底部側で画成し、粉末チャンバー(2)に対して相対的に移動可能に支承されるキャリア(4)」に相当する。

エ 引用発明の「磁気センサ46」及び「磁気スケール47」は、「テーブル41の位置を測定」するために設けられた「装置」であり、本願発明の「キャリア(4)の位置の検出の為に設けられている位置検出装置(6)」に相当する。

2 上記1のア?エの対比の結果をまとめると、本願発明と引用発明の一致点及び相違点は、以下のとおりである。

[一致点]
「三次元の対象の積層造形的な製造の為の装置であって、粉末形状の構成材料により充填可能である粉末空間を画成する粉末チャンバーと、粉末空間内に設けられ、粉末空間を底部側で画成し、粉末チャンバーに対して相対的に移動可能に支承されるキャリアと、キャリアの位置の検出の為に設けられている位置検出装置を有する装置。」
[相違点1]
本願発明は、「粉末チャンバー(2)」、「キャリア(4)」、「位置検出装置(6)」を構成要素とする「三次元の対象の積層造形的な製造の為の装置の為の粉末モジュール(1)」であって、特に積層造形的な製造のためのエネルギー照射源を必須の構成要素としていないのに対して、引用発明は、「材料供給部としてのエネルギービーム照射部2と、材料供給部としての粉末供給部3と、造形物載置部4」が「三次元造形装置1」の構成要素であって、これらの構成要素のうち、特定の部分をひとまとまりの機能を持った共通部材(モジュール)として構成しているとはいえない点。

[相違点2]
「位置検出装置」が、本願発明においては、「ケーブルセンサーとして形成されているか、少なくとも一つのケーブルセンサーを有する」のに対して、引用発明においては、「磁気センサ46」及び「磁気スケール47」により形成されている点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。

1 相違点1について
一般に、一定の機能を持った部分の集合体をモジュール化することは、技術分野に依らずに広く用いられる一般的な常套手段である。
ここで、引用発明の「三次元造形装置1」の構成要素の一つである「エネルギービーム照射部2」について、引用文献1の【0018】には、「エネルギービーム照射部2」が、「レーザ照射ユニット」や「電子線を照射し案内させる装置」のような構成でよい旨が記載されている。
そうすると、引用発明の「エネルギービーム照射部2」は「粉末供給部3」とともに「材料供給部として」位置づけられているものの、上述のとおり、「エネルギービーム照射部2」の具体的な態様は、光学的手段や電子的手段等、様々な装置として構成され得ることを考えれば、モジュール化という一般的な手法を選択して採用し、「材料供給部として」位置づけられている「エネルギービーム照射部2」と「粉末供給部3」とを独立な構成要素として切り離して構成することは、当業者にとっては、自明な設計変更にすぎず、格別なこととは認められない。
したがって、引用発明において、様々に装置として構成し得る「エネルギービーム照射部2」を除いて、「粉末供給部3」と「造形物載置部4」をひとまとまりの機能を持った共通部材として認識することにより、これらをモジュール化し、本願発明のごとく「粉末モジュール」として構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

2 相違点2について
引用文献2ないし引用文献4に示されるように、直線上で変位する対象物の位置を検知するために、ワイヤを対象物の一方の端に取り付け、他方の端を巻込みドラムが巻き込む構造とし、ワイヤの繰り出し量に対応する巻込みドラムの回転角度を検出し、当該繰り出し量から対象物の変位量を検出するセンサ(本願発明の「ケーブルセンサー」に相当する)を用いることは周知の技術である。
また、引用文献1の【0033】には、磁気センサ46は測定部の一例であり、この例の他に、光学的位置センサ、超音波センサ、モータエンコーダ等を利用してもよい点が記載されている。上記のように、引用発明の測定部は、特に磁気センサ46に限定されるものではないことを考えれば、引用文献1において、測定部として磁気センサ46の代わりに、上記周知の技術を採用して、本願発明のごとく「ケーブルセンサ-」として構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

3 作用効果について
上記相違点を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明と上記周知の技術の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著な効果が存するとは認められない。

4 判断のまとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 請求人の主張について
審判請求人は、審判請求書において、「粉末状の構成材料を扱う状況で使用される粉末モジュールにおいては、検出性能が粉末により妨げられることがないセンサーを使用する必要があります。磁気センサーは粉末の存在によっては検出性能を妨げられるものではないため、引用文献1に記載の発明においては、磁気センサーを使用しています。したがって、引用文献1に記載の発明のように、粉末状の構成材料を扱う状況においては、粉末により検出性能が妨げられないように意図的に使用している磁気センサーを、他のセンサーと置き換えようとする動機付けは、当業者は持ち得ないものであります。」と主張している。
この点について検討すると、引用文献1の【0033】には、「なお、磁気センサ46は、測定部の一例である。測定部としては、この例の他に、スライダ42又は支持フレーム11の一方に発光部、他方に受光部を取り付けて距離を検出する光学的位置センサ又は超音波センサ等でもよい。特に、一方を基準フレーム12、他方をスライダ42に取り付けることが好ましい。また、これらのセンサは、第1ボールネジ43a、第2ボールネジ43b、第3ボールネジ43c、及び第4ボールネジ43dの支持位置に対応してそれぞれ取り付けられることが好ましい。または、図示しないモータエンコーダー等によってモータの回転角度をストローク量に換算し、磁気センサ46と共に用いて詳細に位置を検出してもよい。」と記載されており、測定部としては、磁気センサに限定されず、光学的位置センサ、超音波センサ、モータエンコーダーを利用したセンサ等を用いても良いとしており、測定部の変更が想定されている。したがって、測定部を磁気センサから変更する動機付けがないとする出願人の主張は、採用することができない。

第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-07-30 
結審通知日 2020-08-04 
審決日 2020-08-20 
出願番号 特願2017-145091(P2017-145091)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河内 悠  
特許庁審判長 岡田 吉美
特許庁審判官 濱野 隆
中澤 真吾
発明の名称 三次元の対象の積層造形的製造の為の装置の為の粉末モジュール  
代理人 中島 淳  

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