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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1369812
審判番号 不服2019-14771  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-11-05 
確定日 2021-01-26 
事件の表示 特願2016-553552「目標とする高い洗浄性能を得るためのこぶの比率」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月27日国際公開、WO2015/127301、平成29年 5月25日国内公表、特表2017-513210、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2014年2月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成28年10月25日 :手続補正書の提出
平成30年 2月20日 :手続補正書の提出
平成30年12月21日付け:拒絶理由通知書(起案日)
平成31年 4月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 6月25日付け:拒絶査定(起案日)(以下、「原査定」という。)
令和 元年11月 5日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 6月29日付け:拒絶理由通知書(起案日)(以下、この拒絶理由通知書による拒絶理由を「当審拒絶理由」という。)
令和 2年 9月30日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
本願請求項1-10に係る発明は、本願優先日前に頒布された以下の引用文献A、Bに基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A.米国特許第6299698号明細書
B.特開2000-246187号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1 本願請求項1-3、6、7、10に係る発明は、本願優先日前に頒布された以下の引用文献1、2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2 本願請求項1-10に係る発明は、本願優先日前に頒布された以下の引用文献1-4に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.特開昭59-6974号公報(当審において新たに引用した文献)
2.特開2009-66527号公報(当審において新たに引用した文献)
3.米国特許第6299698号明細書(原査定で引用された引用文献A)
4.特表2013-520803号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、令和 2年 9月30日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-10は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシであって、
発泡材でできており、回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり、こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、
各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、
隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である、
ことを特徴とするブラシ。
【請求項2】
請求項1に記載のブラシであって、発泡材がポリビニルアルコールか、ポリビニルアセタールか、ポリウレタンかのいずれか1種類の材料からなることを特徴とするブラシ。
【請求項3】
請求項1に記載のブラシであって、均一な形状で均一に離間する複数のこぶが各々実質的に円柱形であることを特徴とするブラシ。
【請求項4】
請求項1に記載のブラシであって、2つの端部を有し、その2つの端部のうち少なくとも1つの端部において周方向に並んだ細長いこぶの列が配置されていることを特徴とするブラシ。
【請求項5】
請求項1に記載のブラシであって、ブラシの回転軸に対して垂直な平面によってブラシが第一の側と第二の側とに分かれており、ブラシの第一の側にあるこぶの配置が、ブラシの第二の側にあるこぶの配置と異なることを特徴とするブラシ。
【請求項6】
CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシであって、発泡材でできており、回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びている複数のこぶとを有する円柱形であり、こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶの平均ピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、
各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、
隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である、
ことを特徴とするブラシ。
【請求項7】
請求項6に記載のブラシであって、こぶがそれぞれ実質的に円柱形であることを特徴とするブラシ。
【請求項8】
請求項6に記載のブラシであって、2つの端部を有し、その2つの端部のうち少なくとも1つの端部において周方向に並んだ細長いこぶの列が配置されていることを特徴とするブラシ。
【請求項9】
請求項6に記載のブラシであって、ブラシの回転軸に対して垂直な平面によってブラシが第一の側と第二の側とに分かれており、ブラシの第一の側にあるこぶの配置がブラシの第二の側にあるこぶの配置と異なることを特徴とするブラシ。
【請求項10】
CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシであって、発泡材でできており、2つの端部と回転軸のある基部と、この基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり、複数のこぶは、基部の2つの端部のそれぞれに隣接する箇所から延びており、こぶはそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、
各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、
隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である、
ことを特徴とするブラシ。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1の記載事項
ア 当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付加したもの。以下同じ。)
イ 「本発明は金属、ガラス等で極めて精度の高い仕上げを要する物品の製造加工工程において、切削表面研磨後表面に付着した切削屑、研磨屑、砥粒、その他塵埃等の粒子を被洗浄体を損傷する事なく、しかも完全に除去、洗浄する方法に関する。」(第1頁右下欄第7行-第12行)
ウ 「上述の目的は表面仕上加工工程中に被処理物の表面に付着した切削屑、研磨屑、砥粒等を洗浄するに際して、気孔率85?95%、平均気孔径10?200μ及び乾燥重量に対し100%の水分を含んだ状態での30%圧縮応力が15?150g/cm^(2)のポリビニルアセタール系多孔質弾性体の層を表面に有する洗浄用ロールにて被洗浄体の表面を擦過することにより達成される。」(第2頁右上欄第6行-第14行)
エ 「またPVAt系多孔質弾性体層の表面形状は、次の形態であると好適な結果が得られる。
イ、表面にロールの軸線に対して0?90°の角度で溝状の切込を多数平行に刻設しロール断面の歯の頂部の長さ(a)と底(b)の比率(a/b)が5以下、円筒の半径(c)に対する歯の高さ(d)の比率が0.8以下である例えば第1図?第4図に示す形態。
口、表面に円形、楕円形、長円形、矩形、菱形等各種形状の突起部分を突設し突起部分の表面積が円筒の総表面積の15?65%の範囲にある例えば第5図?第6図に示す形態。そして(a/b)又は(d/c)がこの範囲外の場合は、歯の構造か弱すぎて使用時に屈曲し、洗浄用ロールとしての機能を果たし難くなる傾向にある。更に前記形状の突起は被洗浄体と接触しうる部分の面積が円筒全表面積の15?65%の範囲であるのが好ましく、これを越えると摩擦力の軽減が、一方これを下回ると、洗浄力の点で支障を来たすことがある。」(第2頁右下欄第4行-第3頁左上欄第2行)
オ 「該ロールを用いて洗浄するには、例えば多量の水あるいはその他の洗浄液を供給しつつ洗浄用ロールを、好ましくは20g/cm^(2)以下の接圧にて被洗浄体に接触させ適度な回転数にて回動させる等により、十分に行いうるものであり、しかもそのすぐれた柔軟性及び弾性により被洗浄体の表面を損傷する心配がない。また洗浄ブラシの中芯に水又はその他の洗浄液を圧入し、ブラシ表面に穿設した小孔から洗浄液を供給しつつブラシを被洗浄体に圧着回転し洗浄してもよい。」(第3頁右上欄第12行-左下欄第2行)
カ 「実施例2
洗浄用ロールとして下記のものを用いる以外は実施例1と同様にして実験を行った。結果を第1表に示す。
供試洗浄用ロール:
材質・・・実施例1のものに同じ
形態・・・第5及び第6図に図示しだもの 突起の底部より頂部までの高さ=4mm 突起の直径=8mm 突起の面積=0.5cm^(2) 突起部分の総面積が円筒の全表面積に対し占める割合=35% 配列=規則的な千鳥状の配列」(第4頁左上欄第4行-第15行)
キ 第5図、第6図は、以下のとおりのものである。



引用文献1の第5図及び第6図から、洗浄用ロールは、円筒と、円筒の外面から外向きに延びる均一な形状で規則的な千鳥状に配列する複数の突起とを備える円柱形であり、円筒の外面の直径は、洗浄用ロールの長手方向の長さ全体にわたって一定であることが見てとれる。

(2)引用発明1
ア 引用文献1の上記(1)イ、ウ、オ、カの記載から、切削表面研磨後の被洗浄体を洗浄する洗浄用ロールが開示されていると理解できる。
イ 引用文献1の上記(1)ウ、エ、オの記載から、洗浄用ロールは、ポリビニルアセタール系多孔質弾性体の層を表面に有し、表面に円形の突起部分を突設したものと理解できる。
ウ 引用文献1の上記(1)オの記載から、洗浄用ロールは、回転させられるものと理解できる。
エ 上記(1)の記載及び上記ア-ウによれば、引用文献1には以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「被洗浄体の表面を擦過することで、切削表面研磨後の被洗浄体を洗浄する洗浄用ロールであって、
ポリビニルアセタール系多孔質弾性体の層を表面に有し、PVAt系多孔質弾性体層の表面形状は、表面に円形等各種形状の突起部分を突設し突起部分の表面積が円筒の総表面積の15?65%の範囲にあり、
円筒と、円筒の外面から外向きに延びる均一な形状で規則的な千鳥状に配列する複数の突起とを備える円柱形であり、円筒の外面の直径は、洗浄用ロールの長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
突起の底部より頂部までの高さ=4mm、突起の直径=8mmであり、
回転させられる、
洗浄用ロール。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2の記載事項
ア 当審拒絶理由に引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
イ 「【0002】
従来、半導体装置の製造工程では、半導体ウェハの表裏面に異物が付着することがある。例えば、半導体装置のCMP工程では、スラリーや、研磨くず、研磨パッドの粉等の異物が半導体ウェハの表面に付着することがある。
次の製造工程に異物を持ち込まないためには、半導体ウェハの表面を洗浄する必要がある。
従来の半導体ウェハの洗浄装置として、様々な装置が使用されている(特許文献1?4)。
図4には、特許文献1に開示された洗浄装置900のローラ901を示す。
このローラ901は、円柱状ブラシ本体902と、この円柱状ブラシ本体902の外周面に螺旋状に形成された洗浄毛903を有する。洗浄毛903は、円柱状ブラシ本体902の外周面中央から端部に向かって螺旋状に形成されている。」
「【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
(第一実施形態)
まず、図1,2を参照して、本実施形態の洗浄装置2の洗浄用ローラ1の概要について説明する。
この洗浄用ローラ1は、円柱状のロール体11と、このロール体11の外周面に設けられた複数の突起部12とを有する。
各突起部12は、平面楕円形状である。
複数の突起部12は、前記楕円の長軸が、ロール体11の中央部を通り、円柱状のロール体11の中心軸Bと直交する軸線Aに対し一方向に傾斜するとともに、千鳥状に配置された第一の突起部群13と、
軸線Aに対し、前記一方向とは異なる他の一方向に沿って前記楕円の長軸が傾斜するとともに、千鳥状に配置された第二の突起部群14とで構成されている。
第一の突起部群13の傾斜方向である前記一方向と、第二の突起部群14の傾斜方向である前記他の一方向とは、前記軸線Aを挟んで対称である。
ここで、第一の突起部群13の突起部12の傾斜方向である一方向と、第二の突起部群14の突起部12の傾斜方向である他の一方向とが、円柱状のロール体11の中心軸Bと直交する軸線Aを挟んで対称であるとは、完全に対称であることのみならず、たとえば、軸線Aに対する第一の突起部群13の傾斜方向である一方向と、軸線Aに対する第二の突起部群14の傾斜方向である他の一方向との傾斜角度の差が15°以下であってもよい。
また、各突起部群13,14において、各突起部12の楕円の長軸の傾斜は10°程度ずれていてもよい。
【0010】
次に、洗浄装置2および洗浄用ローラ1の構造について詳細に説明する。
洗浄装置2は、被洗浄物となる半導体ウェハWの表裏面の洗浄を行うものであり、図1,2に示すように一対の洗浄用ローラ1と、半導体ウェハWを回転駆動する図示しない回転駆動部とを有するものである。一対の洗浄用ローラ1間に半導体ウェハWを挟み、半導体ウェハW、一対の洗浄用ローラ1を回転させて、半導体ウェハW表裏面を洗浄する。一対の洗浄用ローラ1は、互いに反対方向に回転している(図1矢印参照)。
半導体ウェハWを洗浄する際には、図示しないノズルから半導体ウェハW表裏面に洗浄液が供給される。例えば、半導体ウェハW中央部に洗浄液が供給される。
【0011】
洗浄用ローラ1は、前述したように、円柱状のロール体11を有する。
このロール体11は、内部が中空になっており、内部に図示しない回転軸が挿入される。
ロール体11の外周面には、複数の突起部12が所定の間隔を開けて設けられている。
【0012】
突起部12は、ロール体11の外周面から、ロール体11の中心軸Bに対し垂直に突出している。突起部12は、弾性を有する多孔質体で構成されており、たとえば、ポリビニルアセタール系の多孔質体(いわゆるスポンジ)で構成されている。突起部12を、弾性を有する多孔質体で構成することで、突起部12を弾性変形させて、半導体ウェハWの表裏面に追従させ、半導体ウェハWの異物を除去することができる。
突起部12は、楕円柱であり、中心軸Bに対し直交する方向から見た際に、平面楕円形状であり、角部を有しない平面形状となっている。突起部12の楕円の長軸の長さは、楕円の短軸の長さの2倍以下、たとえば、1.5倍である。
ロール体11の外周面に対する突起部12の割合は、20%以上、95%以下である。突起部12の割合を20%以上とすることで、異物を確実に除去することができる。また、突起部12の割合を95%以下とすることで、異物の移動効率を高めることができる。
突起部12の高さ寸法は、例えば、1.0mm以上、4.0mm以下、突起部12の短軸の長さは、2.0mm以上、6.0mm以下、長軸の長さ寸法は、3.0mm以上、8.0mm以下であることが好ましい。」
「【0029】
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
第一実施形態と略同様の洗浄用ローラを製造した。
突起部は、PVAt系多孔質体で構成した。突起部の高さ寸法は、3.0mm、短軸の長さ寸法は、4.0mm、長軸の長さ寸法は、7.0mmとした。ロール体の径は、50mmである。突起部の楕円の長軸は、円柱状のロール体の中心軸に直交する軸線に対し45°傾斜している。
また、突起部の配列軸C1,C2,C3のロール体の中心軸に対する傾斜角度θ1,θ2,θ3は、60°、60°、0°である。」
「【0032】
(比較例2)
突起部の形状を円柱形状とした。突起部の径は6.0mmである。他の点は、実施例1と同じである。」
ウ 【図2】は、以下のとおりのものである。
「【図2】


引用文献2の【図2】から、円柱状のロール体11の直径は、ロール体11の長手方向の長さ全体にわたって一定であることが見てとれる。

(2)上記(1)の段落【0012】、【0029】、【0032】の記載から、引用文献2には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「洗浄用ローラ1において、突起部12の高さ寸法は、例えば、1.0mm以上、4mm以下、突起部12の短軸の長さは、2.0mm以上、6.0mm以下、長軸の長さ寸法は、3.0mm以上、8.0mm以下であること」
「洗浄用ローラ1において、突起部の形状を円柱形状とした場合、突起部の径は6.0mmであること、ロール体11の外周面に対する突起部12の割合は、20%以上、95%以下であること」

(3)引用発明2
ア 引用文献2の段落【0002】、【0009】の記載から、CMP工程後の半導体ウェハを洗浄するための洗浄用ローラ1が開示されていると理解できる。
イ 引用文献2の段落【0029】、【0032】の記載から、比較例2において、突起部の形状を円柱形状とし、高さ寸法は、3.0mm、径は、6.0mmであり、突起部の配列軸C1,C2,C3のロール体の中心軸に対する傾斜角度θ1,θ2,θ3は、60°、60°、0°であると理解できる。
ウ 上記(1)の記載及び上記ア、イによれば、引用文献2には比較例2として、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「CMP工程後の半導体ウェハを洗浄するための洗浄用ローラ1であって、
円柱状のロール体11と、このロール体11の外周面に設けられた複数の突起部12とを有し、ロール体11は内部に回転軸を有し、複数の突起部12は所定の間隔を開けて設けられ、突起部12は、ポリビニルアセタール系の多孔質体(いわゆるスポンジ)で構成され、ロール体11の外周面に対する突起部12の割合は、20%以上、95%以下にあり、
円柱状のロール体11の直径は、ロール体11の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
突起部の形状を円柱形状とし、高さ寸法は、3.0mm、径は、6.0mmであり、突起部の配列軸C1,C2,C3のロール体の中心軸に対する傾斜角度θ1,θ2,θ3は、60°、60°、0°である、
洗浄用ローラ1。」

3 引用文献3について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに、次の記載がある。
「Preferably both the first and second portions 27, and 31 have a plurality of nodules that contact the wafer during polishing. A first set of nodules 37 is located on the first portion 27 of the brush. The nodules 37 thus define the planar contact surface 25a. These planar nodules 37 are preferably circular for ease of manufacture. Rows of circular planar nodules 37 having a height h_(1) of 0.21 inches, a diameter d_(1) of 0.41 inches, and a spacing x_(1) between adjacent nodules 37 of 0.2 inches have proven effective during testing on roller brushes 23a, 23b having a first outside diameter D1 of 2.72 inches and a second outside diameter D2 of 2.3 inches, as best understood with reference to the side sectional view of FIG. 3B, which is taken along line 3B--3B of FIG. 3A. The test brushes were made of PVA having a tensile strength of between 77-87 psi and an elongation at failure of between 230%-300%.
Similarly a second set of nodules 39 is located on the second portion 31 of the brush. The nodules 39 thus define the profiled contact surface 25b as best shown with reference to FIG. 3C which shows a side sectional view of both the brush of FIG. 3A taken along line 3C--3C, and a side sectional view of a wafer "w". These profiled nodules 39 are preferably elongated, having an elliptical or rectangular shape. A row of elliptical profiled nodules 39 having a height h_(2) along the inside edges thereof of 0.735 inches, a height h_(3) along the outside edges thereof of 0.7908 inches, a width equal to d_(1) (FIG. 3B), a length l_(1) of 0.75 inches, and a spacing between adjacent profiled nodules 39 of 0.58 inches has proven effective during testing on the roller brushes 23a, 23b described above. The profile (e.g., taper) between the inside edge height h_(2) and the outside edge height h_(3) preferably corresponds to the edge profile of the wafer w to be cleaned, as shown in FIG. 3C.」(第3欄第7行-第39行)
(「好ましくは、第1及び第2部分27、31の両方は、研磨中にウェハに接触する複数の小さなこぶを有する。第1の組の小さなこぶ37は、ブラシの第1部分27上に配置されている。小さなこぶ37は平坦な接触面25aを規定する。これらの平坦な小さなこぶ37は、製造を容易にするために円形であることが好ましい。図3Aの線3B--3Bに沿った図3Bの側断面図を参照して最も良く理解されるように、0.21インチの高さh_(1)、0.41インチの直径d_(1)、及び0.2インチの隣接する小さなこぶ37間の間隔x_(1)を有する円形の平坦な小さなこぶ37の列は、2.72インチの第1の外径D1及び2.3インチの第2の外径D2を有するローラブラシ23a、23bでの試験中に効果が実証されている。試験ブラシは、77-87psiの引張強さ及び230%-300%の破壊時の伸びを有するPVAで作製された。
同様に、第2の組の小さなこぶ39は、ブラシの第2部分31上に配置されている。したがって、線3C--3Cに沿った図3Aのブラシ及びウェハ“w”の側断面図の両方の側断面図を示す図3Cを参照して最も良く示されるように、小さなこぶ39は、プロファイルされた接触面25bを規定する。これらのプロファイルされた小さなこぶ39は、好ましくは細長く、楕円形または長方形の形状を有する。0.735インチの内側縁部に沿った高さh_(2)、0.7908インチの外側縁部に沿った高さh_(3)、d_(1)と同じ幅(図3B)、0.75インチの長さl_(1)、及び0.58インチの隣接するプロファイルされた小さなこぶ39間の間隔を有する楕円形のプロファイルされた小さなこぶ39の列は、前述したローラブラシ23a、23b上のテスト中に効果が実証されている。図3Cに示すように、内側縁部の高さh_(2)と外側縁部の高さh_(3)の間のプロファイル(例えば、テーパー)は、好ましくは、洗浄すべきウェハwのエッジプロファイルに対応する。」)(注:翻訳文は合議体による。以下同じ。)




(2)上記記載から、引用文献3には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「ウェハを洗浄するブラシにおいて、小さなこぶ37は高さh_(1)=0.21インチ(約5.3mm)、直径d_(1)=0.41インチ(約10.4mm)を有し、隣接する小さなこぶ37の間隔x_(1)=0.2インチ(小さなこぶ37の中心から測定されるピッチは、隣接する小さなこぶ37の両方の半径が加算され、0.61インチ=約15.5mmである。)で配置されること」

4 引用文献4について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献4には、図面とともに、次の記載がある。
「【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、中央領域ならびにエッジ領域において、半導体ウェハのような基板にわたって均一な洗浄を生成する改良型方法およびブラシについての継続した必要性が存在する。」
「【0024】
図3A?3Cは、本発明の実施形態による全体が円柱のCMP後の洗浄ブラシまたはフォームローラ100を示す。ブラシ100は、ブラシを回転させるためのブラシコアまたはマンドレル102上に搭載されているのが示され、また、全体が円柱の本体部分101であって、本体部分101から突出する中央ノジュールまたは突出部104および軸方向エッジノジュールまたは突出部106のマトリクス配置構成111を有する、全体が円柱の本体部分101を含む。図を見てわかるように、ブラシ100は、中央ノジュール104が基板108の中央領域に接触し、エッジノジュール106が基板108のエッジ領域112に接触するように基板108に接触する。中央ノジュール104は、ブラシの長さに沿ってギャップによって互いから分離され、ギャップはまた、中央ノジュール104とエッジノジュール106を分離する。基板エッジ領域112に接触するおよそのエッジノジュール106エリアは、中央領域108との中央ノジュール104の接触エリアより大きく、エッジ領域は全て、軸方向エッジノジュール106の全てまたは一部分によって接触される。エッジノジュール106は、あるエッジノジュール106がブラシ100のエッジまでまたはエッジの近くまで延在し、一方、他のエッジノジュール106がブラシ100のエッジからオフセットするように、千鳥状配置構成で設けられうる。両方のタイプのノジュール104、106のオフセットする千鳥状の関係によって、ブラシ100の周りに環状チャネルが全く形成されない。エッジノジュール106および中央ノジュール104は、ほぼ同じ高さを有しているのが示され、中央ノジュール104間の間隔およびエッジノジュール106間の間隔は、実質的に同じである。CMP後の洗浄ブラシ100の外側エッジにおける大きなノジュール占有面積は、図1に示す中央ノジュールまたは標準的ノジュールだけを有するブラシに比較して、基板エッジ部分の洗浄の増大および基板との摩擦またはトルクの増加を実現する。
【0025】
さらに、図3Dを見てわかるように、細長いエッジノジュール106は、基板エッジと、エッジノジュール106の上部または外側ウェハ係合表面107ならびに中央ノジュール104の上部または外側ウェハ係合表面103との完全な接触を可能にする。したがって、基板108と、エッジノジュール106の側部表面109または中央ノジュール104の側部表面105との間の接触は全く存在しない。これは、ウェハエッジ上でのノジュールとの部分的なエッジ接触によって標準的ブラシに関して起こりうるノジュールおよび基板損傷の問題を防止する。詳細に示さないが、本明細書で述べる本発明の実施形態によるエッジノジュールおよび中央ノジュールは全て、こうした側部表面および上部または外側係合表面を有するノジュールを含むこと、および、各実施形態において、基板は、側部表面ではなく、ノジュールの外側ウェハ係合表面だけに係合することが留意されるべきである。」
「【図3A】

【図3B】



(2)上記記載から、引用文献4には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「半導体ウェハを均一に洗浄するために、全体が円柱の本体部分101から突出する中央ノジュールまたは突出部104及び軸方向エッジノジュールまたは突出部106を有し、エッジノジュール106は細長いこと」

5 引用文献Bについて
(1)原査定に引用された引用文献Bには、図面とともに、次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気記録用アルミディスク、半導体シリコンウェハ等の基板の製造工程において、ポリッシング等の加工工程後、砥粒、切削屑、研磨屑等、被洗浄体の表面に付着した微細な粒子を、極めて効率良く、且つ被洗浄体の表面を損傷することなく除去することが可能な洗浄用スポンジローラに関する。」
「【0019】洗浄用スポンジローラ1は、含水状態で弾性を有するポリビニールアセタール系多孔質素材(PVAt系多孔質素材)から成る。PVAt系多孔質素材は、乾燥状態で硬化し、湿潤状態で軟化する。また、吸水性及び保水性に優れ、湿潤時に好ましい柔軟性と適度な反発弾性を示し、耐磨耗性にも優れている。」
「【図1】


引用文献Bの【図1】から、全長において同一の直径を有する洗浄用スポンジローラ1が見てとれる。

(2)上記記載から、引用文献Bには、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「全長において同一の直径を有する洗浄用スポンジローラ1」
「洗浄用スポンジローラ1は、ポリビニールアセタール系多孔質素材(PVAt系多孔質素材)からなること」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1を主引用発明とする場合
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明1の「洗浄用ロール」は、被洗浄体の表面を擦過することで洗浄する洗浄用ロールであるから、本願発明1の「ブラシ」に相当する。
(イ)引用発明1の「ポリビニルアセタール系多孔質弾性体」は、本願発明1の「発泡材」に相当する。
(ウ)本願発明1の「回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり」、「前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり」と、引用発明1の「PVAt系多孔質弾性体層の表面形状は、表面に円形等各種形状の突起部分を突設し突起部分の表面積が円筒の総表面積の15?65%の範囲内にあり」、「円筒と、円筒の外面から外向きに延びる均一な形状で規則的な千鳥状に配列する複数の突起とを備える円柱形であり、円筒の外面の直径は、洗浄用ロールの長手方向の長さ全体にわたって一定であり」、「回転させられる」とを対比する。
引用発明1の「突起」、「円筒」、「規則的な千鳥状に配列する」は、それぞれ、本願発明1の「こぶ」、「基部」、「均一に離間する」に相当するから、本願発明1と引用発明1とは、回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり」、「前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定」である点で一致する。
(エ)本願発明1の「こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5」であることと、引用発明1の「突起部分」の形態及び配列とを対比する。
引用発明1の複数の突起は、上記(ウ)のとおり「規則的な千鳥状に配列する」ものであり、引用文献1の第6図から、ある突起とそれぞれ均一に離間された隣接する6個の突起を備えることが見てとれる。つまり、下記参考図1のように、隣接する3個の突起の中心を結ぶ正三角形の辺の長さは、ピッチ(P)に等しい関係にある。そして、突起部分の総面積が円筒の全表面積に対し占める割合は、1つの正三角形の領域と重なる突起の面積が1つの正三角形の領域の面積に対し占める割合に近似できる。ここで、1つの正三角形の領域と重なる突起(半径r)の面積は、突起の面積(π×r^(2))×角度(60°/360°)×3個=π×r^(2)/2であり、1つの正三角形の領域の面積は、底辺(P)×高さ(√3×P/2)÷2=√3×P^(2)/4である。
引用発明1では、「突起部分の表面積が円筒の総表面積の15?65%の範囲」にあることから、その面積比は、0.15≦(π×r^(2)/2)/(√3×P^(2)/4)≦0.65の不等式で表される。そして、半径rは4mmであり、πを3.14、√3を1.73として計算すると、9.45mm≦P≦19.68mmの関係が得られる。
したがって、引用発明1の「突起部分」の形態及び配列は、突起の直径に対する突起のピッチの比(P/D)が1.18から2.46で、且つ突起の直径に対する突起の高さの比(H/D)が0.5である。つまり、引用発明1のP/D及びH/Dは、本願発明1の「こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5」と数値範囲が重なることから、本願発明1と引用発明1は、「こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.5」である点で一致する。

参考図1:突起部分の総面積と円筒の全表面積との関係を理解するために、当審で作成したものである。
(オ)本願発明1の「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である」ことと、引用発明1の「突起部分」の形態及び配列とを対比する。
引用発明1において、「突起の底部より頂部までの高さ=4mm、突起の直径=8mm」であり、上記(エ)のとおり、突起の中心から測定される突起のピッチは、9.45mmから19.68mmの範囲である。つまり、引用発明1の「突起」の高さ、直径、ピッチは、本願発明1の「各こぶの高さ」、「各こぶの直径」と数値範囲が異なるものの、「隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である」ことと数値範囲が重なり、「隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから19.68mmの範囲である」点で共通する。
カ したがって、本願発明1と引用発明1との、一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「ブラシであって、
発泡材でできており、回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり、こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定であり、
隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから19.68mmの範囲である、
ブラシ。」である点。
(相違点)
(相違点1)本願発明1は、「CMP処理後のウエハを洗浄するため」のブラシであるのに対し、引用発明1では、「洗浄用ロール」について、そのような用途の記載がない点。
(相違点2)こぶの高さ及び直径について、本願発明1は、「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であ」るの対し、引用発明1では、「突起の底部より頂部までの高さ=4mm、突起の直径=8mm」であり、数値範囲が異なる点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点2について先に検討する。
引用文献1には、突起の直径に対する突起の高さの比を維持しながら、突起の高さと突起の直径とを選択できることを示唆する記載もなく、引用発明1において、「突起の底部より頂部までの高さ」を「6mmから7.5mmの範囲」とし、且つ「突起の直径」を「12mmから15mmの範囲」とすることが、設計的事項とはいえない。
また、本願発明1の「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であ」るという構成は、上記引用文献2-4、Bには記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用文献2-4、Bに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)引用発明2を主引用発明とする場合
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると、次のことがいえる。
(ア)引用発明2の「洗浄用ローラ1」は、「円柱状のロール体11と、このロール体11の外周面に設けられた複数の突起部12とを有」するものであり、ブラシであるといえるから、引用発明2の「CMP工程後の半導体ウェハを洗浄するための洗浄用ローラ1」は、本願発明1の「CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシ」に相当する。
(イ)引用発明2の「ポリビニルアセタール系の多孔質体(いわゆるスポンジ)」、「ロール体11」、「突起部」は、それぞれ、本願発明1の「発泡材」、「回転軸のある基部」、「こぶ」に相当する。
(ウ)引用発明2の「ロール体11」は、「円柱状」であり、「複数の突起部は所定の間隔を開けて設けられ、」「突起部の配列軸C1,C2,C3のロール体の中心軸に対する傾斜角度θ1,θ2,θ3は、60°、60°、0°である」から、本願発明1の「基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形」に相当する。
(エ)本願発明1の「こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5」であることと、引用発明2の「突起部」の形態及び配列とを対比する。
引用発明2の「突起部」は、「円柱形状」であり、上記(イ)のとおり「配列軸C1,C2,C3のロール体の中心軸に対する傾斜角度θ1,θ2,θ3は、60°、60°、0°」で配列されることから、上記引用発明1に対する上記(1)ア(エ)の参考図1のように、隣接する3個の突起部の中心を結ぶ正三角形の辺の長さは、ピッチ(P)に等しい関係にあり、引用発明1で用いた算出方法が活用できる。
そして、「ロール体11の外周面に対する突起部12の割合は、20%以上、95%以下」であることから、その割合は、0.20≦(π×r^(2)/2)/(√3×P^(2)/4)≦0.95の不等式で表される。そして、半径rは3mmであり、πを3.14、√3を1.73として計算すると、5.86mm≦P≦12.78mmの関係が得られる。
したがって、引用発明2の「突起部」の形態及び配列は、突起部の直径に対する突起部のピッチの比(P/D)が0.98から2.13で、且つ突起部の直径に対する突起部の高さの比(H/D)が0.5である。つまり、引用発明2のP/D及びH/Dは、本願発明1の「こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.2から0.5」と数値範囲が重なることから、本願発明1と引用発明2は、「こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.5」である点で一致する。
(オ)本願発明1の「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であり、隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチは、17.4mmから21.75mmの範囲である」ことと、引用発明2の「突起部」の形態及び配列とを対比する。
引用発明2の「突起部」は、高さ3mm、直径6mmであり、上記(エ)のとおり、突起部の中心から測定される突起部のピッチは、5.86mmから12.78mmの範囲である。つまり、引用発明2の「突起部」の高さ、直径、ピッチは、本願発明1の「各こぶの高さ」、「各こぶの直径」、「隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチ」と数値範囲が異なるものである。
(カ)したがって、本願発明1と引用発明2との、一致点と相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「CMP処理後のウエハを洗浄するためのブラシであって、
発泡材でできており、回転軸のある基部と、基部の外面から外向きに延びる均一な形状で均一に離間する複数のこぶとを備える円柱形であり、こぶがそれぞれの中心と、こぶの高さと、こぶの直径を有し、こぶの直径に対するこぶのピッチの比(P/D)が1.2から1.5で、なおかつ、こぶの直径に対するこぶの高さの比(H/D)が0.5であり、
前記外面の直径は、基部の長手方向の長さ全体にわたって一定である、
ブラシ。」である点。
(相違点)
(相違点3)こぶの高さ及び直径について、本願発明1は、「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であ」るの対し、引用発明2の「突起部」は、高さ3mm、直径6mmであり、数値範囲が異なる点。
(相違点4)隣接するこぶ同士の中心から測定されるこぶのピッチについて、本願発明は、「17.4mmから21.75mmの範囲である」のに対し、引用発明2の「突起部」のピッチは、5.86mmから12.78mmの範囲であり、数値範囲が異なる点。

イ 相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
引用文献2には、突起部の直径に対する突起部の高さの比を維持しながら、突起部の高さと突起部の直径とを選択できることを示唆する記載もなく、引用発明2において、「突起部」の高さを「6mmから7.5mmの範囲」とし、且つ「突起部」の直径を「12mmから15mmの範囲」とすることが、設計的事項とはいえない。
また、本願発明1の「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であ」るという構成は、上記引用文献3、4、Bには記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明2、引用文献3、4、Bに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2-10について
本願発明2-10も、本願発明1の「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であ」ると同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、2及び引用文献2-4、Bに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和 2年 9月30日付けの補正により、補正後の請求項1-10は、「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であ」るという技術的事項を有するものとなった。当該「各こぶの高さは、6mmから7.5mmの範囲であり、各こぶの直径は、12mmから15mmの範囲であ」るは、原査定における引用文献A(当審拒絶理由における引用文献3)、Bには記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1-10は、当業者であっても、原査定における引用文献A、Bに基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-05 
出願番号 特願2016-553552(P2016-553552)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 和俊  
特許庁審判長 恩田 春香
特許庁審判官 小川 将之
脇水 佳弘
発明の名称 目標とする高い洗浄性能を得るためのこぶの比率  
代理人 園田・小林特許業務法人  

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