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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 B60C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60C
管理番号 1369831
審判番号 不服2020-3964  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-03-24 
確定日 2021-01-07 
事件の表示 特願2015-198695「空気入りタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月13日出願公開、特開2017- 71271〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成27年10月6日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 1年 7月26日付け:拒絶理由通知書
令和 1年10月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年12月24日付け:拒絶査定
令和 2年 3月24日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 補正の却下の決定
[結論]
令和2年3月24日にされた手続補正を却下する。

[理由]
1 令和2年3月24日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容

本件補正は、特許請求の範囲を変更する補正であって、本件補正の前後における特許請求の範囲の請求項1の記載は、それぞれ以下のとおりである。

(1)本件補正前
「回転軸を中心に回転する空気入りタイヤであって、
トレッドゴムを含むトレッド部と、
前記トレッド部のタイヤ幅方向両側に設けられサイドゴムを含むサイド部と、を備え、
前記トレッド部は、タイヤ幅方向に複数設けられそれぞれがタイヤ周方向に延在する周方向主溝と、前記周方向主溝によって区画され路面と接触する接地面を有する複数の陸部と、を有し、
前記陸部は、複数の前記周方向主溝のうち前記トレッド部の接地端に最も近いショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側に配置され前記接地端を含むショルダー陸部を含み、
前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面は、前記サイド部の表面と接続され、
前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面においてタイヤ周方向に設けられた複数の凹部を備え、
前記回転軸を通る前記トレッド部の子午断面において前記接地面を通る第1仮想線と、
前記ショルダー主溝の底部を通り前記第1仮想線と平行な第2仮想線と、
前記第2仮想線と前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面との交点と、
前記回転軸と直交しタイヤ幅方向において前記トレッド部の中心を通るタイヤ赤道面と、が規定され、
タイヤ幅方向における前記タイヤ赤道面と前記交点との距離をA、
前記ショルダー主溝の溝深さをB、
タイヤ幅方向における前記タイヤ赤道面と前記接地端との距離をC、としたとき、
0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15、
の条件を満足し、
タイヤ周方向における前記凹部の寸法をU、
タイヤ周方向において隣り合う前記凹部の間の寸法をV、としたとき、
0.10 ≦ U/V ≦ 0.60、
の条件を満足し、
5[mm] ≦ U ≦20[mm]、
の条件を満足し、
前記ショルダー陸部に設けられ、前記凹部と接続されるラグ溝を備え、
前記ラグ溝の溝深さをX、としたとき、
2[mm] ≦ X ≦ 28[mm]、
の条件を満足し、
タイヤ周方向に設けられた前記凹部の数をY、としたとき、
35 ≦ Y ≦60、
の条件を満足する、
空気入りタイヤ。」

(2)本件補正後(下線部は、補正箇所である。)
「回転軸を中心に回転する空気入りタイヤであって、
トレッドゴムを含むトレッド部と、
前記トレッド部のタイヤ幅方向両側に設けられサイドゴムを含むサイド部と、を備え、
前記トレッド部は、タイヤ幅方向に複数設けられそれぞれがタイヤ周方向に延在する周方向主溝と、前記周方向主溝によって区画され路面と接触する接地面を有する複数の陸部と、を有し、
前記陸部は、複数の前記周方向主溝のうち前記トレッド部の接地端に最も近いショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側に配置され前記接地端を含み縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下であるショルダー陸部を含み、
前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面は、前記サイド部の表面と接続され、
前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面においてタイヤ周方向
に設けられた複数の凹部を備え、
前記回転軸を通る前記トレッド部の子午断面において前記接地面を通る第1仮想線と、
前記ショルダー主溝の底部を通り前記第1仮想線と平行な第2仮想線と、
前記第2仮想線と前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面との交点と、
前記回転軸と直交しタイヤ幅方向において前記トレッド部の中心を通るタイヤ赤道面と、が規定され、
タイヤ幅方向における前記タイヤ赤道面と前記交点との距離をA、
前記ショルダー主溝の溝深さをB、
タイヤ幅方向における前記タイヤ赤道面と前記接地端との距離をC、としたとき、
0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15、
の条件を満足し、
タイヤ周方向における前記凹部の寸法をU、
タイヤ周方向において隣り合う前記凹部の間の寸法をV、としたとき、
0.10 ≦ U/V ≦ 0.60、
の条件を満足し、
5[mm] ≦ U ≦20[mm]、
の条件を満足し、
前記ショルダー陸部に設けられ、前記凹部と接続されるラグ溝を備え、
前記ラグ溝の溝深さをX、としたとき、
2[mm] ≦ X ≦ 28[mm]、
の条件を満足し、
タイヤ周方向に設けられた前記凹部の数をY、としたとき、
35 ≦ Y ≦60、
の条件を満足する、
空気入りタイヤ。」

2 補正の目的
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ショルダー陸部」について、上記のとおり「縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下である」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題(トレッドゴムの破損を防止することができるとともに、チェーン掛り性能を向上することができる空気入りタイヤを提供すること)が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件違反の有無について
上記2のとおりであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下、検討する。

3-1 特許法第36条第6項第2号について
本件補正後の請求項1においては、「ショルダー陸部」について、「縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下である」と規定されている。
そして、発明の詳細な説明には、「反り返り量」の測定方法について、以下の記載がある。
「【0149】
本発明者は、評価試験用タイヤとして、上述の特徴点を満足するタイヤと満足しないタイヤとを作成し、その評価試験用タイヤを車両に装着して、縁石に乗り上げさせる評価試験を実施した。図8は、評価試験を説明するための模式図である。図8に示すように、車両に装着された評価試験用タイヤの車両外側のショルダー陸部23を縁石に乗り上げさせた。各評価試験用タイヤについて、車両外側のショルダー陸部23を縁石に乗り上げさせたときのショルダー陸部23の変形量を測定した。図8に示すように、タイヤの構造によっては、ショルダー陸部23がめくれるように変形し、ショルダー陸部23の接地面33が反り返る現象が発生する。ショルダー陸部23の変形量として、縁石の上面と反り返った接地面33の接地端Tとの鉛直方向の距離SHを測定した。なお、縁石の上面は水平面と実質的に平行である。以下の説明においては、縁石の上面と反り返った接地面33の接地端Tとの鉛直方向の距離SHを、反り返り量SH、と称する。」
「【図8】図8は、本実施形態に係るタイヤの反り返りを説明するための模式図である。」
「【図8】


以上の記載からすれば、ショルダー陸部の縁石に乗り上げたときの反り返り量は、断面略長方形状の縁石の角部が、ショルダー主溝12の側部に接した状態(縁石に乗り上げた状態)で、縁石の上面と反り返った接地面33の接地端Tとの鉛直方向の距離を測定することで、求めることとなる。
しかしながら、ショルダー陸部の反り返り量は、縁石に対するタイヤの乗り上げ位置に応じて、変わるものである。例えば、図8において、ショルダー主溝12の側部のうち、ショルダー主溝12の底部近傍に、縁石の角部が位置している場合と、ショルダー主溝12の側部のうち、ショルダー陸部23の接地面33近傍に、縁石の角部が位置している場合とでは、縁石からタイヤに加わる力の位置が異なるため、縁石の上面と反り返った接地面33の接地端Tとの鉛直方向の距離が、それぞれ異なるものとなることは明らかである。
さらに、車両の重量、縁石の形状等の条件に応じて、タイヤにおける陸部の変形量が変わることが本願出願時の技術常識であるから、ショルダー陸部の反り返り量が上記条件に応じて変わることが明らかであるといえるところ、段落【0149】、図8のほか本願明細書には上記条件についての記載がない。
したがって、これらの記載を参酌しても、ショルダー陸部の反り返り量を明確に測定することができない。
よって、本件補正発明は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に適合していないので、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。

3-2 特許法第29条第1項第3号について
本件補正は、上記3-1で述べたことを理由として却下すべきものであると判断されるが、仮に、本件補正発明が、特許法第36条第6項第2号に適合するといえるとした場合について、以下検討する。

(1)検討対象とする本件補正発明
本件補正発明を、上記1(2)に記載したとおりのものと認める。

(2)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献である、特開2014-201166号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の記載がある。なお、下線については、当審において付与した。
「【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の重荷重用空気入りタイヤのトレッド部の展開図である。
【図2】図1のA1-A1断面図である。
【図3】図1のクラウンブロック列の拡大図である。
【図4】図1の内側ミドルリブ及び外側ミドルブロック列の拡大図である。
【図5】図4のA2-A2断面図である。
【図6】図1のショルダーブロック列の拡大図である
【0021】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。 図1及び図2に示されるように、本実施形態の重荷重用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」ということがある)1は、例えばトラック・バス等の重荷重車両に好適に使用される。
【0022】
トレッド部2には、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも3本、本実施形態では6本の主溝3が設けられている。本実施形態の主溝3には、タイヤ赤道Cの両側をのびる一対のクラウン主溝3A、3A、クラウン主溝3Aの外側に配された一対のミドル主溝3B、3B、及び、ミドル主溝3Bの外側に配された一対のショルダー主溝3C、3Cが含まれる。
【0023】
また、本実施形態のトレッド部2には、主溝3、3間又は主溝3とトレッド端2tとの間をのびる横溝4が設けられている。本実施形態の横溝4には、一対のクラウン主溝3A、3A間をのびるクラウン横溝4A、ミドル主溝3Bとショルダー主溝3Cとの間をのびる外側ミドル横溝4B、及び、ショルダー主溝3Cとトレッド端2tとの間をのびるショルダー横溝4Cが含まれる。
【0024】
本明細書において、「トレッド端2t」は、外観上、明瞭なエッジによって識別しうるときには当該エッジとするが、識別不能の場合には、正規状態のタイヤ1に正規荷重を負荷してキャンバー角0゜でトレッド部2を平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側で平面に接地する接地端がトレッド端2tとして定められる。
【0025】
「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば表 TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES に記載の最大値、ETRTOであれば LOAD CAPACITY とする。
【0026】
さらに、トレッド部2には、主溝3と横溝4とによって区分された複数個のブロック5が、タイヤ周方向に並ぶ少なくとも一つのブロック列6が設けられる。また、トレッド部2には、クラウン主溝3Aとミドル主溝3Bとの間に、タイヤ周方向に連続する内側ミドルリブ7が設けられている。
【0027】
本実施形態のブロック列6には、クラウン主溝3Aとクラウン横溝4Aとで区分されるクラウンブロック5Aがタイヤ周方向に並ぶクラウンブロック列6A、並びに、ミドル主溝3B、ショルダー主溝3C及び外側ミドル横溝4Bで区分された外側ミドルブロック5Bがタイヤ周方向に並ぶ外側ミドルブロック列6Bが含まれる。さらに、ブロック列6には、ショルダー主溝3C、トレッド端2t及びショルダー横溝4Cで区分されたショルダーブロック5Cがタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック列6Cが含まれる。」
「【0030】
また、トレッド部2は、一つのブロック5と、これに隣り合う一つの横溝4とからなる単位模様であるピッチP1が40?50個含まれている。さらに、各ピッチP1において、横溝4のタイヤ周方向の溝幅W1が、ブロック5のタイヤ周方向の長さL6の5?15%に限定される。これにより、タイヤ1は、各ブロック5の周方向剛性を高めつつ、タイヤ軸方向のエッジ成分、及び、トレッド部2の溝容積を確保することができる。従って、タイヤ1は、燃費性能を維持しつつ、ウエット性能を向上することができる。」
「【0037】
上記のような作用を効果的に発揮させるために、クラウン主溝3Aの溝幅W2aは、トレッド端2t、2t間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TW(図1に示す)の2?4%程度が望ましい。また、クラウン主溝3Aの最大溝深さD2a(図2に示す)は、トレッド幅TWの5?8%程度が望ましい。さらに、内側頂点3Ai、3Ai間のタイヤ周方向のジグザグピッチP2aは、トレッド幅TWの25?35%程度が望ましい。また、内側頂点3Ai及び外側頂点3Ao間のジグザグ幅S2aは、トレッド幅TWの1?3%程度が望ましい。」
「【0062】
ショルダー横溝4Cは、図2及び図6に示されるように、クラウン主溝3Aの最大溝深さD2aの15?70%の深さD5cを有する浅底部21を含む。このような浅底部21は、タイヤ周方向で隣り合うショルダーブロック5C、5C間を連結して、ショルダーブロック5Cの変形を小さくすることができる。従って、浅底部21は、ショルダーブロック列6Cでのエネルギーロスを小さくでき、燃費性能を向上することができる。」
「【0084】
[実施例]
図1に示す基本構造をなし、表1に示す内側ミドル横溝を有するタイヤが製造され、それらが評価された。なお、共通仕様は以下の通りである。
タイヤサイズ:275/80R22.5 151/148J
リムサイズ:22.5×7.5
トレッド幅TW:248mm
クラウン主溝:
溝幅W2a:6mm、W1a/TW:2.4%
最大溝深さD2a:16mm、D1a/TW:6.5%
ジグザグピッチP2a:80mm、P2a/TW:32.3%
ジグザグ幅S2a:2mm、S2a/TW:0.8%
ミドル主溝:
溝幅W2b:5mm、W2b/TW:2.0%
ジグザグピッチP2b:80mm、P2b/TW:32.3%
ジグザグ幅S2b:8mm、S2b/TW:3.2%
ショルダー主溝:
溝幅W2c:10mm、W2c/TW:4.0%
最大溝深さD2c:16mm、D2c/TW:6.5%
ジグザグピッチP2c:80mm、P2c/TW:32.3%
ジグザグ幅S2c:2mm、S2c/TW:0.8%
クラウン横溝:
角度α2a:65度
最大溝深さD2a:10mm、D2a/TW:4.0%
外側ミドル横溝:
角度α2b:65度
ショルダー横溝:
角度α2c:80度
最大溝深さD2c:16mm、D2c/TW:6.5%
内側ミドルリブ:
幅W9:26mm、W9/TW:10.5%
内側ミドルラグ溝:
角度α2d:65度
溝幅W8:8mm、W8/TW:3.2%
クラウンブロック:
長さL6a:80mm、L6a/TW:32.3%
幅W6a:30mm、W6a/TW:12.1%
外側ミドルブロック:
長さL6b:74mm、L6b/TW:29.8%
幅W6b:28mm、W6b/TW:11.3%
ショルダーブロック:
長さL6c:70mm、L6c/TW:28.2%
幅W6c:37mm、W6c/TW:14.9%
クラウン横溝の浅底部:
長さL5a:25mm、L5a/W6a:83.3%
ショルダー横溝の浅底部:
長さL5c:3mm、L5c/W6c:8.1%
深さD5c:6.4mm、D5c/D2a:40%
テスト方法は、次のとおりである。
【0085】
<燃費性能(転がり抵抗)>
転がり抵抗試験機を用い、下記の条件において、タイヤの転がり抵抗を測定した。評価は、転がり抵抗の測定値の逆数を、実施例1を100とする指数で評価した。数値が大きいほど転がり抵抗が小さく燃費性能に優れる。
内圧:900kPa
荷重:33.83kN
速度:80km/h
【0086】
<ウエット性能>
各供試タイヤを上記リムにリム組みし、内圧900kPa充填して、10トン積みのトラック(2-D車)の全輪に装着し、5mmの水膜を有するウエットアスファルト路面において、2速-1500rpm固定でクラッチを繋いだ瞬間から10m通過したときのタイムを測定した。評価は、各タイムの逆数を、実施例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど良好である。
【0087】
<ノイズ性能>
下記条件で上記リム装着された各試供タイヤを、直径1.7mのISO路を有したドラム上を時速40km/hにて走行させ、タイヤ半径方向の中心から後方に0.2m、高さ0.32m及びタイヤトレッド端よりもタイヤ軸方向外側に1.0m離間した位置において、マイクロホンにより騒音レベルdB(A)を測定した。結果は、騒音レベルdB(A)の逆数を、実施例1を100とする指数で表示した。数値が大きいほど、通過騒音が小さく良好である。
内圧:900kPa(正規内圧)
タイヤ縦荷重:23.8kN(正規荷重の70%)
測定場所:無響室
【0088】
テストの結果を表1に示す。
【0089】
【表1】


「【図1】


「【図2】


「【図6】



(3)引用文献1に記載された発明
ア 引用文献1(上記3-2(2))の記載から、引用文献1について以下の事実の記載があると認められる。
(ア)図2からは、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に、ショルダーブロック列6Cの表面と接続されたサイド部を備えていることが看取できる。
(イ)図2は図1のA1-A1断面図(段落【0020】)であり、図2においては、ショルダー主溝3C、ショルダー横溝4C等が白抜き部分として示されていることから、このような白抜き部分は、タイヤ構成材料が存在していない空間部分を示していると解される。図2のショルダーブロック列6Cにおける、ショルダー横溝4Cの浅底部21のトレッド端2tよりもタイヤ幅方向外側かつ非接地面側も、白抜き部分として示されていることから、当該白抜き部分も、タイヤ構成材料が存在していない空間部分であると認められ、当該白抜き部分は、ショルダー横溝4Cから、トレッド端2tよりもタイヤ幅方向外側かつ非接地面側に連続しているから、ショルダーブロック列6Cの表面においてタイヤ周方向に設けられた空間部分、すなわち、凹部であると解される。そして、ショルダーブロック5Cの間に、ショルダー横溝4Cが設けられており(図1、図6)、前記凹部は、上述したとおり、ショルダー横溝4Cに連続しているから、タイヤ周方向にショルダー横溝4Cと同数設けられていると認められる。
(ウ)実施例として具体的に示されている実施例1のタイヤとして、表1には、ショルダー横溝の溝幅W1cとショルダーブロックの長さL6cとの比(W1c/L6c)が0.10であり、一つのブロック5と、これに隣り合う一つの横溝4とからなる単位模様であるピッチの個数が45個である点が記載されている。

イ したがって、引用文献1には、実施例として具体的に示されている実施例1のタイヤとして、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。
「重荷重用空気入りタイヤ1であって、トレッド部2と、トレッド部2のタイヤ幅方向両側に設けられたサイド部と、を備え、トレッド部2は、タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも3本の主溝3が設けられ、主溝3には、タイヤ赤道Cの両側をのびる一対のクラウン主溝3A、3A、クラウン主溝3Aの外側に配された一対のミドル主溝3B、3B、及び、ミドル主溝3Bの外側に配された一対のショルダー主溝3C、3Cが含まれ、ショルダー主溝3Cとトレッド端2tとの間をのびるショルダー横溝4Cと、主溝3と横溝4とによって区分された複数個のブロック5がタイヤ周方向に並ぶ少なくとも一つのブロック列6が設けられ、ブロック列6には、ショルダー主溝3C、トレッド端2t及びショルダー横溝4Cで区分されたショルダーブロック5Cがタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック列6Cが含まれ、ショルダーブロック列6Cの表面は、サイド部の表面と接続され、ショルダーブロック列6Cの表面においてタイヤ周方向に設けられた複数の凹部を備え、ショルダー主溝3Cの最大溝深さD2c:16mm、トレッド端2t、2t間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TW:248mm、ショルダーブロックの長さL6c:70mm、ショルダー横溝の溝幅W1cとショルダーブロックの長さL6cとの比(W1c/L6c)が0.10であり、ショルダー横溝4Cの浅底部21の深さD5c:6.4mmであり、一つのブロック5と、これに隣り合う一つの横溝4とからなる単位模様であるピッチP1が45個である、重荷重用空気入りタイヤ1。」

(4)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の重荷重用空気入りタイヤは1、当然、回転軸を中心に回転するものである。
(イ)引用発明の「重荷重用空気入りタイヤ1」は、本件補正発明の「空気入りタイヤ」に相当し、以下同様に、「トレッド部2」は「トレッド部」に、「サイド部」は「サイド部」に、「タイヤ周方向に連続してのびる少なくとも3本の主溝3」は「タイヤ幅方向に複数設けられそれぞれがタイヤ周方向に延在する周方向主溝」に、「ショルダー横溝4C」は「ラグ溝」に相当する。
(ウ)通常の重荷重用空気入りタイヤあれば、トレッド部及びサイド部は、特段の事情がない限り、ゴムを含む材料により構成することが、本願出願時の技術常識である。そして、引用文献1には、トレッド部及びサイド部の材料について、特段の事情の記載がないことから、引用発明の「トレッド部2」、「サイド部」は、それぞれ、ゴムを含むものであると認められる。
(エ)引用発明の「ブロック5」の表面は、路面と接触する接地面であることは、タイヤの構造からして自明であるから、引用発明の「主溝3と横溝4とによって区分された複数個のブロック5がタイヤ周方向に並ぶ少なくとも一つのブロック列6」は「周方向主溝によって区画され路面と接触する接地面を有する複数の陸部」に相当する。
(オ)引用発明の「ショルダー主溝3C」は、タイヤ赤道Cの両側をのびる一対のクラウン主溝3Aの外側に配されたミドル主溝3Bの外側に配されていることから、本件補正発明の「トレッド部の接地端に最も近いショルダー主溝」に相当する。
(カ)引用発明の「トレッド端2t及びショルダー横溝4Cで区分されたショルダーブロック5Cがタイヤ周方向に並ぶショルダーブロック列6C」は「トレッド部の接地端に最も近いショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側に配置され接地端を含むショルダー陸部」に相当する。
(キ)引用文献1の図2を参酌すれば、回転軸を通るトレッド部の子午断面において接地面を通る線を定義することが可能であるから、当該線を第1仮想線と定義できる。同様に、ショルダー主溝3Cの底部を通り前記第1仮想線と平行な線を定義することが可能であるから、当該線を第2仮想線と定義でき、前記第2仮想線とトレッド端2tよりもタイヤ幅方向外側のショルダーブロック列6Cの表面との交点を定義できる。
(ク)引用発明の「タイヤ赤道C」は、引用文献1中に説明はないものの、タイヤ赤道とは、回転軸と直交しタイヤ幅方向においてトレッド部の中心を通る面であることが、本願出願時の技術常識であるから、本件補正発明の「回転軸と直交しタイヤ幅方向においてトレッド部の中心を通るタイヤ赤道面」に相当する。
(ケ)引用発明の「トレッド端2t、2t間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TW:248mm」は、タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道Cとトレッド端2tとの距離の2倍であるから、「トレッド端2t、2t間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TW:248mm」の半分の距離である「124mm」となり、本件補正発明における「タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面と接地端との距離」である「C」に相当する(以下、「距離C」という。)。そして、引用発明の「ショルダー主溝3Cの最大溝深さD2c:16mm」は、本件補正発明である「ショルダー主溝の溝深さB」に相当する(以下、「距離B」という。)。
(コ)引用文献1には、本件補正発明の「タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道面と交点との距離」である「A」に相当する距離(タイヤ幅方向におけるタイヤ赤道Cと上記(キ)で定義した交点との距離。以下、「距離A」という。)は、明記されていないが、引用文献1の図2からみれば、トレッド端2t、2t間のタイヤ軸方向距離であるトレッド幅TWの半分の距離である124mmよりも、僅かに大きい距離であることが看取できる。そうすると、仮に、引用発明において、「距離A」が124mmであるとしても、引用発明の「(距離B+距離C)/距離A」は、(16mm+124mm)/124mmであることから、「約1.13」となり、引用発明は、本件補正発明の「0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15」を満足する。そして、上述したとおり、「距離A」が124mmよりも僅かに大きい距離であることに鑑みれば、引用発明の「(距離B+距離C)/距離A」は、上記「約1.13」よりもわずかに小さい値となることは、明らかである。そうすると、引用発明は、本件補正発明の「0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15」を満足する。
(サ)引用文献1には、タイヤ周方向における凹部の寸法である「U」、タイヤ周方向において隣り合う凹部の間の寸法である「V」については、明記されていない。しかし、引用発明において、ショルダーブロックの長さL6cは70mmであって、ショルダー横溝の溝幅W1cとショルダーブロックの長さL6cとの比(W1c/L6c)が0.10(表1における実施例1の列の「ショルダー横溝の溝幅W1cとショルダーブロックの長さL6cとの比(W1c/L6c)」の行を参照。)であることから、ショルダー横溝4Cの溝幅W1cは7mmと計算できる。そして、引用文献1の図1、図6をみると、上記「U」に相当する隣り合うショルダーブロック5C、5C間の長さ(以下、「長さU」という。)は、溝幅W1cよりもやや大きく、上記「V」に相当するショルダーブロック5Cのトレッド端2t部分の長さ(以下、「長さV」という。)は、L6cよりもやや小さいことが看取できる。そうすると、仮に、引用発明の「長さU」が、最小となるショルダー横溝の溝幅W1cと同じ7mm、「長さV」が70mmであるとしても、「長さU」/「長さV」は、0.1となり、引用発明は、本件補正発明の「0.10 ≦ U/V ≦ 0.60」を満足する。そして、上述したとおり、「長さU」は溝幅W1cよりもやや大きく、上記「V」に相当するショルダーブロック5Cのトレッド端2t部分の長さは、L6cよりもやや小さいことから、「長さU」/「長さV」は0.1よりもやや大きくなることは、明らかである。そうすると、引用発明は、本件補正発明の「0.10 ≦ U/V ≦ 0.60」の条件を満足する。
(シ)引用発明において、上記「U」に相当する隣り合うショルダーブロック5C、5C間の長さは、上述したとおり、7mmよりやや大きいものであるから、引用発明は、本件補正発明の「5[mm] ≦ U ≦20[mm]」の条件を満足する。
(ス)引用発明において、本件補正発明の「ラグ溝」に相当する「ショルダー横溝4C」について、「ショルダー横溝4Cの浅底部21の深さD5c:6.4mm」であるから、引用発明は、本件補正発明の「ラグ溝の溝深さをX、としたとき、2[mm] ≦ X ≦ 28[mm]」の条件を満足する。
(セ)引用発明において、「単位模様であるピッチP1が45個である」ことから、ショルダー横溝4Cも45個存在しており、ショルダー横溝4Cに連続している凹部についても、上記3-2(2)のとおり、ショルダー横溝と同数である45個設けられていると認められることから、引用発明は、本件補正発明の「タイヤ周方向に設けられた凹部の数をYとしたとき、35 ≦ Y ≦60」の条件を満足する。

イ してみると、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点はそれぞれ次のとおりである。

・一致点
「回転軸を中心に回転する空気入りタイヤであって、
トレッドゴムを含むトレッド部と、
前記トレッド部のタイヤ幅方向両側に設けられサイドゴムを含むサイド部と、を備え、
前記トレッド部は、タイヤ幅方向に複数設けられそれぞれがタイヤ周方向に延在する周方向主溝と、前記周方向主溝によって区画され路面と接触する接地面を有する複数の陸部と、を有し、
前記陸部は、複数の前記周方向主溝のうち前記トレッド部の接地端に最も近いショルダー主溝よりもタイヤ幅方向外側に配置され前記接地端を含むショルダー陸部を含み、
前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面は、前記サイド部の表面と接続され、
前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面においてタイヤ周方向に設けられた複数の凹部を備え、
前記回転軸を通る前記トレッド部の子午断面において前記接地面を通る第1仮想線と、
前記ショルダー主溝の底部を通り前記第1仮想線と平行な第2仮想線と、
前記第2仮想線と前記接地端よりもタイヤ幅方向外側の前記ショルダー陸部の表面との交点と、
前記回転軸と直交しタイヤ幅方向において前記トレッド部の中心を通るタイヤ赤道面と、が規定され、
タイヤ幅方向における前記タイヤ赤道面と前記交点との距離をA、
前記ショルダー主溝の溝深さをB、
タイヤ幅方向における前記タイヤ赤道面と前記接地端との距離をC、としたとき、
0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15、
の条件を満足し、
タイヤ周方向における前記凹部の寸法をU、
タイヤ周方向において隣り合う前記凹部の間の寸法をV、としたとき、
0.10 ≦ U/V ≦ 0.60、
の条件を満足し、
5[mm] ≦ U ≦20[mm]、
の条件を満足し、
前記ショルダー陸部に設けられ、前記凹部と接続されるラグ溝を備え、
前記ラグ溝の溝深さをX、としたとき、
2[mm] ≦ X ≦ 28[mm]、
の条件を満足し、
タイヤ周方向に設けられた前記凹部の数をY、としたとき、
35 ≦ Y ≦60、
の条件を満足する、
空気入りタイヤ。」

・相違点
本件補正発明は、ショルダー陸部について、「縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下である」のに対し、引用発明は「縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下である」ことを特定しない点。

(5)判断
以下、相違点について検討する。
本願の発明の詳細な説明の段落【0093】の「<特徴点1> 0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15」、段落【0152】の「図9に示すように、従来例に係るタイヤは、特徴点1の条件を満足せず、(B+C)/Aの値が1.15よりも大きい。実施例A,B,C,D,Eに係るタイヤは、特徴点1の条件を満足する。従来例に係るタイヤの反り返り量SHは、6[mm]よりも大きい。実施例A,B,C,D,Eに係るタイヤの反り返り量SHは、6[mm]以下である。」、段落【0153】の「図8を参照して説明したように、タイヤ1が旋回したり縁石に乗り上げたりして、ショルダー主溝12が拡がるように変形すると、ショルダー主溝12の内面が縁石の上面を接触し、ショルダー陸部23がタイヤ幅方向外側(車両外側)に変位する現象が発生する。溝深さBが深過ぎたり、距離C(接地幅の半値)が大き過ぎたり、距離Aが小さ過ぎたりして、(B+C)/Aの値が大きくなると、ショルダー陸部23が反り返り易くなると考えられる。本発明者は、(B+C)/Aの値を1.15以下とすることにより、ショルダー陸部23の反り返りを抑制できるという知見を得た。」との記載によれば、本願明細書には、「0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15」であれば、「縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下」を満たす旨の記載がある。
そして、引用発明は、上述したとおり、「0.80 ≦ (B+C)/A ≦ 1.15」との条件を満足しているから、本願明細書の上記記載を踏まえると、引用発明のタイヤは、「縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下」を満たすと解される。
そうすると、本件補正発明と引用発明との間に、相違点はない。
したがって、本件補正発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。なお、仮に本件補正発明と引用発明との間に相違点が認定できるとしても、そのような相違点は、引用発明に基いて当業者が容易に想到しうる程度のものである。

4.むすび(補正の却下の決定のむすび)
よって、本件補正は、特許法17条の2第6項において準用する同法126条7項の規定に違反するので、同法159条1項の規定において読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和2年3月24日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和1年10月1日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(1)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1-4に係る発明は、その出願前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、という理由を含むものである。

3 引用文献
原査定の拒絶の理由1で引用された引用文献1の記載事項、及び引用文献1に記載された発明は、前記第2の[理由]3-2(2)、(3)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]3-2で検討した本件補正発明との対比において、「ショルダー陸部」について、「縁石に乗り上げたときの反り返り量が6[mm]以下である」事項を特定しないものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに上記事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]3-2(4)、(5)に記載したとおり、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるから、本願発明も、特許法第29条第1項第3号に該当するものであるといえる。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-10-30 
結審通知日 2020-11-04 
審決日 2020-11-18 
出願番号 特願2015-198695(P2015-198695)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B60C)
P 1 8・ 113- Z (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増田 亮子  
特許庁審判長 大島 祥吾
特許庁審判官 岩田 健一
須藤 康洋
発明の名称 空気入りタイヤ  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
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