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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1369867
審判番号 不服2020-2492  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-02-25 
確定日 2021-01-26 
事件の表示 特願2016- 72005「同軸ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日出願公開,特開2017-183194,請求項の数(2)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は,特許すべきものとする。

理 由
第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2016年(平成28年) 3月31日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

令和 1年10月31日付け:拒絶理由通知書
令和 1年12月19日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 1月21日付け:拒絶査定(原査定)
令和 2年 2月25日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 2年 8月31日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知」という。)
令和 2年 9月15日 :意見書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 2年 1月21日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項1-3に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A 実願昭55-021356号(実開昭56-123413号)のマイクロフィルム

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由1 この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
理由2 この出願は,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
理由3 本願請求項1-2に係る発明は,以下の引用文献1に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2009-170113号公報(当審において新たに引用した文献)

第4 本願発明
本願請求項1-2に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明2」という。)は,令和 2年 9月15日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-2に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
中心導体と,中心導体の外周を被覆している絶縁層と,絶縁層の外周を被覆している導電性ペーストからなるシールド層と,シールド層の外周を被覆しているシースとを有する同軸ケーブルであって,
前記絶縁層と前記シールド層との間に,ガラス転移点が15℃以下であり,無水マレイン酸変性ポリプロピレン,及び/又はスチレン・ブタジエン共重合体である樹脂成分からなるアンカー層を有し,
前記アンカー層が,前記絶縁層と前記シールド層とに直接接していることを特徴とする,同軸ケーブル。」

なお,本願発明2は,概略,本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)令和 2年 8月31日付けの当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【0006】
したがって,本発明の課題は,金属メッキ層をシールド層とするシールド電線に改善された耐剥離性を付与することにある。」

「【0010】
以下,本発明を同軸ケーブルの場合について,添付図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1は,本発明に係る同軸ケーブルの一例を示す側面図である。該図において,(1)は内部導体,(2)は内部導体(1)の外周面に配された絶縁樹脂層(誘電体層),(3)は絶縁樹脂層(2)の外周面に配された接着層,(4)は接着層(3)の外周面に形成された無電解金属メッキ層,そして,(5)は無電解金属メッキ層(4)の外周に配されたシース層である。
【0012】
この同軸ケーブルに特徴的なことは,フッ素樹脂誘電体層(2)と無電解金属メッキ層(4)との間に,アルコキシ基とトリアジンジチオール基とを有する分子接着剤を適用し,両層に対して化学結合した接着層(3)を介在させたことにある。こうすることにより,絶縁樹脂層(2)と接着層(3)と無電解金属メッキ層(4)とが三位一体的に化学接着されるので,繰返し曲げに対する無電解金属メッキ層の剥離問題が解消される。」

「【0030】
また,シールド電線の耐屈曲性のさらなる向上を意図して,被覆電線の絶縁樹脂層(2)と無電解金属メッキ層(4)との間に弾性体層を設けてもよい。このような弾性層としては,そのガラス転移点が室温以下の三次元弾性体,例えば,シリコーンゴムやフッ素ゴムが用いられる。
【0031】
図3には,この態様における接着モデルが示されている。ここでは,被覆電線の絶縁樹脂層(2)と接着層(3)の界面は,図2の場合と同様に,エーテル結合で化学接着され,接着層(3)と弾性層の内側との界面は接着層(3)のチオール基と弾性体層の架橋中に生成した炭素ラジカルと反応して,接着層(3)と弾性体層との間に化学結合が形成される。弾性層の外周には追加的接着層(3)が配される。まず,弾性体層の外表面に周知のコロナ放電,テトラエッチ処理やSA処理を施して,表面OH基を生起させる。さらに,前記表面OH基と分子接着剤のアルコキシ基とを反応させる。このとき,まずアルコキシ基が加水分解され,ついで該表面OH基との脱水縮合反応でエーテル結合が生じる。この追加的接着層(3)と無電解金属メッキ層(4)の界面は,図2の場合と同様に,イオン結合で化学接着される。」

「【図1】



「【図3】



(2)上記(1)の記載から,上記引用文献1には次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 内部導体(1),内部導体(1)の外周面に配された絶縁樹脂層(2),絶縁樹脂層(2)の外周面に配された接着層(3),接着層(3)の外周面に形成された無電解金属メッキ層(4),無電解金属メッキ層(4)の外周に配されたシース層(5)を有する同軸ケーブルであって,
絶縁樹脂層(2)と無電解金属メッキ層(4)との間に,そのガラス転移点が室温以下の三次元弾性体,例えば,シリコーンゴムやフッ素ゴムが用いられる弾性体層を設けること。」

2 その他の文献について
(1)原査定において引用された引用文献Aの第4頁第5行-第7頁第6行,第1,2図の記載を参酌すると,引用文献Aには,「中心導体1上にプラスチック接着層2,プラスチック接着層2の周囲に発砲プラスチック絶縁層(絶縁体)3,絶縁層3の周囲にプラスチックスキン層4,プラスチックスキン層4の周囲に外部導体5,外部導体5の周囲に外部シース6を有する同軸ケーブルにおいて,プラスチックスキン層4が,絶縁層3と外部導体5とに直接接しており,プラスチック接着層2の材質として,発砲プラスチック絶縁体3との熱融着性のよい,例えば低密度ポリエチレンあるいは高密度ポリエチレン等が望ましく,プラスチックスキン層4の材質として,プラスチック接着層2と同様の材質が好適であり,プラスチックスキン層4によって絶縁層3内部の発砲気泡を表面から飛散させることなく絶縁層内部に保有させ高発泡率の絶縁体で被覆された絶縁電線が得られること。」が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「内部導体(1)」,「内部導体(1)の外周面に配された絶縁樹脂層(2)」が,本願発明1の「中心導体」,「中心導体の外周を被覆している絶縁層」に相当することは明らかである。
また,引用文献1の段落0006の「金属メッキ層をシールド層とする」旨の記載を参酌すると,引用発明の「無電解金属メッキ層(4)」が,本願発明1の「シールド層」と,「絶縁層の外周を被覆しているシールド層」である点で一致する。
そして,引用発明の「無電解金属メッキ層(4)の外周に配されたシース層(5)」が,本願発明1の「シールド層の外周を被覆しているシース」に相当する。

イ 引用発明の「弾性体層」は,「そのガラス転移点が室温以下の三次元弾性体」であり,「絶縁樹脂層(2)」と「無電解金属メッキ層(4)」との間に設けられるから,本願発明1の「アンカー層」と,「前記絶縁層と前記シールド層との間に,ガラス転移点が所定の温度以下であるアンカー層」である点で一致する。

ウ 引用発明の「同軸ケーブル」が,本願発明1の「同軸ケーブル」に対応する。

(2)一致点・相違点
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「 中心導体と,中心導体の外周を被覆している絶縁層と,絶縁層の外周を被覆しているシールド層と,シールド層の外周を被覆しているシースとを有する同軸ケーブルであって,
前記絶縁層と前記シールド層との間に,ガラス転移点が所定の温度以下であるアンカー層を有している,同軸ケーブル。」

(相違点)
(相違点1)シールド層に関して,本願発明1は,「導電性ペーストからなる」のに対して,引用発明は,そのように特定されていない点。
(相違点2)アンカー層に関して,本願発明1は,そのガラス転移点が「15℃以下」であり,材質が「無水マレイン酸変性ポリプロピレン,及び/又はスチレン・ブタジエン共重合体である樹脂成分からな」り,かつ,「前記絶縁層と前記シールド層とに直接接している」のに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点2について
事案に鑑みて上記相違点2について先に検討する。
引用文献1の段落0031及び図3を参照すると,引用発明における「弾性体層」の内側は「接着層(3)」と化学結合が形成され,「弾性体層」の外周は「追加的接着層(3)」とエーテル結合されており,「弾性体層」は「絶縁樹脂層(2)」と「無電解金属メッキ層(4)」とに直接接しているものではない。

そして,引用文献A記載事項に記載されているように,「プラスチック絶縁層3」(本願発明1の「絶縁層」に相当すると認められる。)の周囲に「プラスチックスキン層4」(本願発明1の「アンカー層」に対応すると認められる。)を,「プラスチックスキン層4」の周囲に「外部導体5」(本願発明1の「シールド層」に相当すると認められる。)を有する同軸ケーブルにおいて,「プラスチックスキン層4」が,「絶縁層3」と「外部導体5」とに直接接して」いることが周知技術であったとしても,引用発明は,引用文献1の段落0012に記載されているように,「絶縁樹脂層(2)」と「無電解金属メッキ層(4)」との間に,「接着層(3)」を介在させることにより,無電解金属メッキ層の剥離問題が解消されるものであるから,弾性体層」を「絶縁樹脂層(2)」と「無電解金属メッキ層(4)」とに直接接するようにするために,「接着層(3)」を削除することには,阻害要因があるといえる。

また,引用文献A記載事項の「プラスチックスキン層4」は,「絶縁層3内部の発砲気泡を表面から飛散させることなく絶縁層内部に保有させ」るものであり,引用発明の「弾性体層」とも,本願発明1の「アンカー層」とも,その作用・機能及び材質・特性が異なり,引用発明に引用文献A記載事項を適用する動機付けがあるとはいえない。

以上のように,「アンカー層」に関する相違点2についての構成は,上記引用文献1及び引用文献Aには記載されておらず,また,本願出願前において周知技術であるともいえない。
すると,引用発明において,周知技術を適用し,相違点2に係る本願発明1の構成を想到することは,当業者であれば容易になし得たものであるとはいえない。

イ したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明及び引用文献Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2は,本願発明1の全ての構成要素を備える従属請求項であり,上記相違点2に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明及び引用文献Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
令和 2年 9月15日付けの手続補正により,補正後の請求項1-2は,上記「第6 対比・判断」における相違点2に係る構成を有するものとなった。
そして,上記相違点2に係る構成は,原査定における引用文献Aには記載されておらず,本願出願前における周知技術でもないので,本願発明1-2は,当業者であっても,原査定における引用文献Aに基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 理由1について
以下,当審拒絶理由の理由1が解消したか否かについて検討する。
補正前の請求項1には,「絶縁層の外周を被覆しているシールド層」とのみ記載され,「シールド層」に関する内容が反映されておらず,例えばシールド層を,周知の編組や金属テープ巻きで形成された場合に,どのように課題が解決できるのか,出願時の技術常識を考慮しても不明であるため,請求項1の記載は,発明の詳細な説明に記載した範囲を超えているとした拒絶理由は,補正後の請求項1において,「絶縁層の外周を被覆している導電性ペーストからなるシールド層」と補正されることにより,解消した。

2 理由2について
以下,当審拒絶理由の理由2が解消したか否かについて検討する。
補正前の請求項1は「同軸ケーブル」という物の発明であるが,「前記アンカー層が,前記樹脂成分を分散媒に分散又は溶解し,前記樹脂成分の含有量が10?50質量%である樹脂組成物を,前記絶縁層に塗布した後,分散媒を揮発させたものである」と,その物の製造方法が記載されているものと認められる一方,出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか,又はおよそ実際的でないという事情の存在を認めることができないから,請求項1の発明は不明確であるとした拒絶理由は,補正後の請求項1において,「前記アンカー層が,前記絶縁層と前記シールド層とに直接接していることを特徴とする」と補正されることにより,解消した。

3 理由3について
以下,当審拒絶理由の理由3が解消したか否かについて検討する。
本願発明1-2は,上記「第6 対比・判断」における相違点2に係る構成を有するものである。
そして,上記相違点2に係る構成は,上記「第6 対比・判断」の「(3)相違点についての判断」に記載したとおり,当業者であっても,引用発明及び引用文献Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
よって,当審拒絶理由の理由3は解消した。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-01-06 
出願番号 特願2016-72005(P2016-72005)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H01B)
P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小田 浩
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 同軸ケーブル  
代理人 前澤 龍  
代理人 富田 克幸  
代理人 蔦田 正人  
代理人 有近 康臣  
代理人 中村 哲士  
代理人 水鳥 正裕  
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