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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H03H
管理番号 1369949
審判番号 不服2019-17752  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-02-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-27 
確定日 2021-01-26 
事件の表示 特願2017-558879「マルチプレクサ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 7月 6日国際公開、WO2017/115579、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年(2016年)11月17日(優先権主張 平成27年12月28日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和元年 5月27日付け:拒絶理由通知
令和元年 8月 5日 :意見書、手続補正書の提出
令和元年10月 1日付け:拒絶査定(原査定)
令和元年12月27日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出
令和2年 7月21日付け:拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」 という。)
令和2年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出


第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月 1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
「この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A.特表2009-508417号公報
B.特開平11-46101号公報
C.特開2008-67413号公報(周知技術を示す文献)」


第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
「この出願の請求項1?5に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2014-146995号公報(新たに引用された文献)
2.特開平11-46101号公報(拒絶査定時の引用文献B)」


第4 本願発明
本願請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、令和2年 9月28日にされた手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?5は以下のとおりの発明である。
「 【請求項1】
複数のフィルタを有するマルチプレクサであって、
前記マルチプレクサをアンテナに接続するためのアンテナ端子と、
一端が前記アンテナ端子に接続され、他端が前記複数のフィルタの入力または出力が合流する点である合成点に接続されるアンテナ用配線と、
前記合成点と前記複数のフィルタのそれぞれとを結ぶ配線であって、前記アンテナ用配線を除いた配線である合成配線と、
前記アンテナと前記マルチプレクサとのインピーダンス整合を図る整合素子を接続するための整合端子と、
一端が前記整合端子に接続され、他端が前記合成配線に接続される整合用配線とを有し、
前記アンテナ用配線の他端と前記整合用配線の他端とは、前記合成配線の略同一の位置に接続される
マルチプレクサ。
【請求項2】
前記アンテナ用配線と前記整合用配線とは、基板に設けられ、当該基板の平面視において前記合成配線に対して互いに反対側に配置される
請求項1に記載のマルチプレクサ。
【請求項3】
前記アンテナ用配線及び前記整合用配線は、前記基板の平面視において前記合成配線に略直交して配置される
請求項2に記載のマルチプレクサ。
【請求項4】
さらに、前記整合端子に接続された整合素子を有する
請求項1?3のいずれか1項に記載のマルチプレクサ。
【請求項5】
前記整合素子は、前記整合端子とグランド電位との間に接続されたインダクタであり、
前記インダクタは、電気長に応じたインダクタンスを有する前記整合用配線との合成インダクタンスによって、前記アンテナ端子でのインピーダンスを所定のインピーダンスにするようなインダクタンスを有する
請求項4に記載のマルチプレクサ。」


第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
当審拒絶理由通知において引用した、特開2014-146995号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付与。以下同じ。)。

(1)「【0014】
まずデュプレクサを用いるモジュールについて説明する。図1はモジュール1000を例示する回路図である。図1に示すように、モジュール1000は、アンテナ10及び20、スイッチ12及び22、4つのフィルタ16、4つのデュプレクサ26、4つのパワーアンプ(Power Amplifier:PA)30及びIC(Integrated Circuit:集積回路)32を備える。デュプレクサ26は受信フィルタ26a及び送信フィルタ26bを含む。IC32はローノイズアンプ(Low Noise Amplifier:LNA)32a及び32bを含む。
【0015】
フィルタ16は受信フィルタであり、一端は入力端子14を介してスイッチ12と接続され、他端は出力端子18を介してLNA32aと接続されている。受信フィルタ26a及び送信フィルタ26bそれぞれの一端はアンテナ端子24に共通して接続され、アンテナ端子24を介してスイッチ22と接続されている。受信フィルタ26aの他端は受信端子28aを介してLNA32bと接続されている。送信フィルタ26bの他端は送信端子28bを介してPA30と接続されている。
【0016】
アンテナ10及び20はRF(Radio Frequency)信号を受信及び送信する。スイッチ12は、4つのフィルタ16から1つを選択し、アンテナ10と接続する。フィルタ16は、アンテナ10が受信した受信信号をフィルタリングし、LNA32aは受信信号を増幅する。IC32は受信信号をダウンコンバートしベースバンド信号とする。スイッチ22は、4つのデュプレクサ26から1つを選択し、アンテナ20と接続する。受信フィルタ26aはアンテナ20が受信した受信信号をフィルタリングする。LNA32bは受信信号を増幅する。IC32はベースバンド信号をアップコンバートし送信信号を生成する。PA30は送信信号を増幅し、送信フィルタ26bは送信信号をフィルタリングする。アンテナ20は送信信号を送信する。
【0017】
デュプレクサ26の通過帯域は、フィルタ16の通過帯域と異なる周波数に位置する。受信フィルタ26aの通過帯域は、送信フィルタ26bの通過帯域と異なる周波数に位置する。」

(2)「【0029】
図7(a)はインピーダンス部21を介さずにインダクタL2をデュプレクサ26と接続する例を示すブロック図である。図7(a)に示すように、デュプレクサ26とインピーダンス部21との間のノードにインピーダンス部23の一端が接続されている。インダクタL2の一端はインピーダンス部23の他端に接続され、インダクタL2の他端は接地されている。インピーダンス部23は、例えばデュプレクサ26とインダクタL2とを接続する長さ2mmの配線により生成され、50Ωを有する。インダクタL2のインダクタンス値は2.6nHとしてシミュレーションを行った。
【0030】
図7(b)はデュプレクサ26のアンテナ端子24から見たインピーダンスを例示するスミスチャートである。図7(b)の円A4に示すように、インピーダンスはスミスチャートのほぼ中央、つまり50Ωになる。インピーダンス部21を介さずに、デュプレクサ26がインダクタL2に接続される。このため、図5(b)に示したようなインピーダンスの変化が抑制される。すなわち、図4(b)の円A1に位置するインピーダンスを、インダクタL2により矢印の方向に回転させる。この結果、図7(b)に示すようなインピーダンス整合が可能となる。以上の知見に基づく実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
実施例1は基板50を用いる例である。図8は実施例1に係るモジュール100を例示する断面図である。図9(a)は基板50の絶縁層51を例示する平面図である。図9(b)は絶縁層52を例示する平面図である。図10(a)は絶縁層53を例示する平面図である。図10(b)は絶縁層53を透視した平面図である。なお、基板50には、図1に示したような複数のデュプレクサ及びフィルタが実装されている。1つのデュプレクサに注目して説明する。
【0032】
図8に示すように、モジュール100は基板50、デュプレクサ60、チップ部品62及び64を備える。基板50は、多層基板50aとプリント基板50bとを貼り合わせたものである。図8から図10(b)に示すように、多層基板50aは、絶縁層51、52、及び53、導体層54、55、56及び57を含む。上から順に絶縁層51?53が積層されている。絶縁層51の上面に導体層54が設けられ、絶縁層51及び52間に導体層55が設けられている。絶縁層52及び53間に導体層56、絶縁層53の下面に導体層57が設けられている。絶縁層53の下面にプリント基板50bが接着されている。図8に示すように、プリント基板50bの下面に導体層58が設けられている。
【0033】
図8に示すように、導体層54はアンテナパッド54a、パッド54b及び54c、並びに複数の接地パッド54dを含み、さらに不図示の受信パッド及び送信パッドを含む。図8及び図9(b)に示すように、導体層55はアンテナ配線55a(第1配線)、送信配線55b、及び受信配線55cを含む。図8及び図10(a)に示すように、導体層56は配線56a(第2配線)を含む。図10(b)に示すように、導体層57はベタパターンであり、接地端子として機能する。
【0034】
導体層間は、絶縁層を厚さ方向に貫通するビア配線59により電気的に接続されている。導体層54のアンテナパッド54aは、ビア配線59を介して、導体層55のアンテナ配線55a、及び導体層56の配線56aと接続されている。アンテナ配線55aはスイッチを介してアンテナと接続される。なおスイッチ及びアンテナは図8から図10(b)では図示していない。配線56aは、ビア配線59を介して導体層54のパッド54bと接続されている。パッド54cは送信配線55bを介して不図示のICと接続される。受信配線55cはICと接続される。接地パッド54dは導体層57と接続されている。
【0035】
図8及び図9(a)に示すように、デュプレクサ60はパッケージとして形成されており、基板50にフリップチップ実装されている。なお、デュプレクサ60が備える受信フィルタ及び送信フィルタは例えばSAWフィルタである。デュプレクサ60の下面には、アンテナパッド60a、送信パッド60b、受信パッド60c、及び6つの接地パッド60dが設けられている。これらの端子は半田バンプ61を介して導体層54と電気的に接続されている。アンテナパッド60aは導体層54のアンテナパッド54a、送信パッド60bは導体層54の送信パッドと接続されている。受信パッド60cは導体層54の受信パッドと接続されている。接地パッド60dは導体層54の接地パッド54dと接続されている。なお、アンテナパッド60aは図1に示したアンテナ端子24、送信パッド60bは送信端子28b、受信パッド60cは受信端子28aにそれぞれ対応する。
【0036】
チップ部品62は図7(a)に示したインダクタL2を含み、チップ部品64はインダクタL3を含む。チップ部品62及び64は半田63を介して導体層54と電気的に接続されている。チップ部品62の一端はパッド54bと接続され、他端は接地パッド54dと接続されている。チップ部品64の一端はパッド54cと接続され、他端は接地パッド54dと接続されている。
【0037】
アンテナパッド54aに2つの配線(アンテナ配線55a及び配線56a)が接続されている。配線56aはビア配線59を介してアンテナ配線55aと接続されており、例えばアンテナ配線55aの途中から分岐するような配線ではない。従って、デュプレクサ60はアンテナ配線55aを介さずに、チップ部品62と接続される。アンテナ配線55aは図7(a)のインピーダンス部21に対応し、配線56aはインピーダンス部23に対応する。つまりモジュール100は図7(a)と同様の構成を有する。従って、実施例1によれば、図7(b)に示したようなインピーダンス整合が可能となる。」

(3)「【0043】
実施例2は同一の導体層に配線を設ける例である。図12(a)は絶縁層52を例示する平面図である。図12(b)は絶縁層53を例示する平面図である。
【0044】
図12(a)に示すように、導体層55はアンテナ配線55a及び配線55fを備える。アンテナ配線55a及び配線55fは、複数のビア配線59のうち1つのビア配線59aを介して導体層54のアンテナパッド54aに接続されている。つまりアンテナ配線55a及び配線55fはビア配線59aから延びる。ただし、配線55fはアンテナ配線55aと交叉しない。配線55fは、ビア配線59及びパッド54bを介してチップ部品62の一端に接続されている。このため、デュプレクサ60はアンテナ配線55aを介さずにチップ部品62に接続される。配線55fは図7(a)のインピーダンス部23に対応する。すなわち、実施例2によればインピーダンス整合が可能となる。図12(b)に示すように、導体層56は配線56aを備えていない。
【0045】
デュプレクサ60はSAWフィルタ以外に、例えば弾性境界波フィルタ、ラブ波フィルタ、圧電薄膜共振器(Film Bulk Acoustic Wave:FBAR)フィルタなどの弾性波フィルタを含んでもよい。図4(a)に示すように、IDTを備える弾性波フィルタは容量として機能する。従って、インダクタL2を接続することで、インピーダンス整合を取ることが重要となる。
【0046】
チップ部品62及び64はインダクタ以外に、例えばキャパシタ及び抵抗など、他の受動素子を含んでもよい。所望のインピーダンスが得られるようなチップ部品を用いればよい。基板50が備える絶縁層及び導体層の数は変更可能である。また一層の基板を用いてもよい。例えば一層の基板の上面に、実施例2のようにアンテナ配線55aと配線55fとを設けてもよい。これによりモジュールの構成が単純化するため、低コスト化が可能である。デュプレクサ60は例えば基板50の内部に埋め込まれてもよい。」

(4)「【図1】



(5)「【図7】



(6)「【図8】



(7)「【図12】




上記記載より、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 パッケージとして形成されたデュプレクサ60が基板50にフリップチップ実装され、デュプレクサ60の下面にはアンテナパッド60aが設けられ、デュプレクサ60は受信フィルタ及び送信フィルタを備え(【0035】)、
デュプレクサ60のアンテナパッド60aはアンテナ端子24に対応するものであって(【0035】)、受信フィルタ及び送信フィルタそれぞれの一端はアンテナ端子24に共通して接続されており(【0035】、【0015】、図1)、
アンテナパッド60aは導体層54のアンテナパッド54aと接続され(【0035】)、アンテナパッド54aは、ビア配線59aを介して、アンテナ配線55a及び配線55fに接続され(【0044】)、
アンテナ配線55aは、ビア配線59aから延びて、スイッチを介してアンテナと接続され(【0034】?【0035】、【0044】)、
配線55fは、ビア配線59aから延びて、インダクタL2を含むチップ部品62と接続される(【0044】、【0036】)、モジュール。」


2 引用文献2について
当審拒絶理由通知及び原査定の拒絶の理由において引用した、特開平11-46101号公報(以下、「引用文献2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0017】
【発明の実施の形態】本発明による高周波スイッチ装置の一実施の形態の構成を図1に示す。この実施の形態の高周波スイッチ装置はデジタルコードレス電話機のアンテナスイッチとして用いられ、デプレッション型FET11、インダクタ21およびキャパシタ25からなる第1のフィルタ回路と、デプレッション型FET12、インダクタ22およびキャパシタ26からなる第2のフィルタ回路と、抵抗31、32、33とを備えている。第1及び第2のフィルタ回路は直列に接続されており、この共通接続点8にアンテナ端子2が接続されている。また第1のフィルタ回路の他端には送信側端子3が接続され、第2のフィルタ回路の他端には受信側端子4が接続されている。
【0018】一方、FET11のゲートには高抵抗値(例えば数kΩ)のゲート抵抗31を介してゲート信号入力端子5が接続され、FET12のゲートには高抵抗値(例えば数kΩ)のゲート抵抗33を介してゲート信号入力端子7が接続されている。また、共通接続点8には高抵抗値(例えば数kΩ)の抵抗32を介して基準電位入力端子6が接続されている。」

(2)「【図1】



上記記載より、引用文献2には、「複数のフィルタを配線により共通接続する構成において、当該配線から複数の端子へ接続するための配線を、平面視において、互いに反対側、かつ、略直交するように配置する」との技術的事項が記載されている。


3 引用文献Aについて
原査定の拒絶の理由において引用した、特表2009-508417号公報(以下、「引用文献A」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0041】
図1Aは、送信経路TXとして設計されている第1の信号経路および受信経路RXとして設計されている信号経路を有する回路を示す。経路RX,TXは1つの共通のアンテナ経路ANTに統合されている。
【0042】
送信経路TX内には送信フィルタとして設計されている第1のフィルタF1が配置されており、また受信経路RX内には受信フィルタとして設計されている第2のフィルタF2が配置されている。第1のフィルタF1と第2のフィルタF2との間には適合回路網が配置されており、この適合回路網は図1Aに示したヴァリエーションにおいては第1の適合回路MA1および第2の適合回路MA2を包含する。
【0043】
第1の適合回路MA1はアースに対する横断分岐を有し、この横断分岐は経路TX,RXおよびANTの共通のノードをアースに接続する。横断分岐内には並列インダクタンスLが配置されている。第2の信号経路においては、第2のフィルタF2と経路TX,RXおよびANTの共通のノードとの間に第2の適合回路MA2が配置されており、この第2の適合回路MA2は直列分岐内に配置されている直列キャパシタンスC2を包含する。第1の信号経路TX内にも原理的には直列キャパシタンスを配置することができる。
【0044】
図1Aに示されているヴァリエーションにおいては、インダクタンスLが第1のフィルタF1のアンテナ側のゲートに接続されている。原理的には、フィルタF1,F2のインピーダンスに応じて直列キャパシタンスC2を省略することができる。この場合インダクタンスLはフィルタF1,F2のアンテナ側のゲートに直接的に接続されている。
【0045】
フィルタF1,F2および適合回路MA1,MA2は一緒にデュプレクサDUを形成する。デュプレクサはアンテナ入力側ANT、送信入力側TX-INおよび受信出力側RX-OUTを有する。送信経路TXはアンテナ入力側ANTと送信入力側TX-INとの間に配置されている。受信経路RXはアンテナ入力側ANTと受信出力側RX-OUTとの間に配置されている。
【0046】
図1Bには別の実施形態が示されている。第1の適合回路MA1の横断分岐には、インダクタンスLおよび第1のキャパシタンスC1からなる直列回路が配置されている。この直列回路はアンテナ経路に接続されている。その他の点に関しては図1Aの説明が当てはまる。
【0047】
有利なヴァリエーションにおいては、フィルタが電気音響的な共振器、例えばSAW共振器および/またはBAW共振器を有する。これらのフィルタは図3に示されているヴァリエーションにおいてそれぞれフィルタチップCH1,CH2において実現されている。送信フィルタF1はフィルタチップCH1において実現されており、また受信フィルタF2はフィルタチップCH2において実現されている。ここでフィルタチップCH1,CH2はフリップチップモジュールとして支持基板SU上に固定されている。
【0048】
1つのヴァリエーションにおいては、送信フィルタも受信フィルタも一緒に1つのチップにおいて実現することができる。別のヴァリエーションにおいては、フィルタチップの代わりに、送信フィルタと受信フィルタのコンポーネント、殊にBAW共振器が支持基板SU上に配置されている。
【0049】
第1のキャパシタンスC1および/または第2のキャパシタンスC2は支持基板SUの異なる金属化平面内に配置されており、有利には相互に水平または垂直に対向して配置されている導電性の面を有することができる。1つのヴァリエーションにおいては、第1のキャパシタンスC1および/または第2のキャパシタンスC2を電気音響的な共振器の実効キャパシタンスによって実現することができ、この電気音響的な共振器をフィルタチップ内または支持基板SU上に配置することができる。」

(2)「【図1A】



上記記載より、引用文献Aには、次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。

「フィルタF1,F2を有するデュプレクサであって(【0045】)、
前記デュプレクサは、アンテナ入力側ANTを有し(【0045】)、
アンテナ入力側ANTと送信入力側TX-INとの間に送信経路TXが配置され、アンテナ入力側ANTと受信出力側RX-OUTとの間に受信経路RXが配置され(【0045】)、
第1の適合回路MA1はアースに対する横断分岐を有し、横断分岐内には並列インダクタンスLが配置され(【0043】)、
経路RX,TXは1つの共通のアンテナ経路ANTに統合されている(【0041】)、デュプレクサ。」


4 引用文献Cについて
原査定の拒絶の理由において引用した、特開2008-67413号公報(以下、「引用文献C」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

(1)「【0010】
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるSAW分波器の構成例を概略的に示したブロック図である。図1において、SAW分波器100は、アンテナ端子101、送信端子103及び受信端子104を備えている。アンテナ端子101にはインピーダンス整合用LC回路102が接続されており、インピーダンス整合用LC回路102と送信端子103との間には送信側分波線路(以下、Tx-分波線路という。)105及び送信用SAWフィルタ108が、インピーダンス整合用LC回路102と受信端子104との間には受信側分波線路(以下、Rx-分波線路という。)106及び受信用SAWフィルタ109がそれぞれ接続されている。送信用SAWフィルタ108及び受信用SAWフィルタ109は、周波数通過帯域特性が互いに異なる。また、Tx-分波線路105及びRx-分波線路106で分波回路107を構成しているが、Tx-分波線路105は必ずしも設けなくてもよく、設計に応じて適宜設けるようにすればよい。」

(2)「【図1】



上記記載より、引用文献Cには、「マルチプレクサ内に整合素子を設ける」との技術的事項が記載されている。


第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(1-1)引用発明の「モジュール」は、デュプレクサ60を基板50にフリップチップ実装し、全体としてデュプレクサとしての動作を行うものであり、デュプレクサは、マルチプレクサに含まれるから、本願発明1の「マルチプレクサ」に対応する。

(1-2)引用発明の「インダクタL2を含むチップ部品62」は、本願発明1の「インピーダンス整合を図る整合素子」に相当する。

(1-3)引用発明の「ビア配線59aから延びて、スイッチ介してアンテナと接続」する「アンテナ配線55a」と、本願発明1の「一端が前記アンテナ端子に接続され、他端が前記複数のフィルタの入力または出力が合流する点である合成点に接続されるアンテナ用配線」とは、「アンテナ用配線」の一端及び他端の接続を除いて、「前記マルチプレクサをアンテナに接続するアンテナ用配線」である点で共通する。

(1-4)引用発明の「ビア配線59aから延びて、インダクタL2を含むチップ部品62と接続」する「配線55f」と、本願発明1の「一端が前記整合端子に接続され、他端が前記合成配線に接続される整合用配線」とは、「整合用配線」の一端及び他端の接続を除いて、「前記アンテナと前記マルチプレクサとのインピーダンス整合を図る整合素子を接続する整合用配線」である点で、共通する。

(1-5)引用発明の「アンテナ配線55a」及び「配線55f」は、いずれも「ビア配線59a」から延びることから、これらの配線が接続されている位置は、略同一の位置といえる。

したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「 複数のフィルタを有するマルチプレクサであって、
前記マルチプレクサをアンテナに接続するアンテナ用配線と、
前記アンテナと前記マルチプレクサとのインピーダンス整合を図る整合素子と接続される整合用配線とを有し、
前記アンテナ用配線の他端と前記整合用配線の他端とは、略同一の位置に接続される
マルチプレクサ。」

(相違点1)本願発明1は、「アンテナに接続するためのアンテナ端子」を有し、「前記マルチプレクサをアンテナに接続するアンテナ用配線」の一端が「前記アンテナ端子に接続され」るのに対して、引用発明は、「アンテナ端子」を有していることは明記されておらず、アンテナ配線55aの一端は「スイッチを介してアンテナと接続され」る点。

(相違点2)「前記マルチプレクサをアンテナに接続するアンテナ用配線」の他端について、本願発明1は、アンテナ用配線の「他端が前記複数のフィルタの入力または出力が合流する点である合成点に接続される」のに対し、引用発明は、アンテナ配線55aの他端が、「ビア配線59a」に接続される点。

(相違点3)本願発明1は、「前記合成点と前記複数のフィルタのそれぞれとを結ぶ配線であって、前記アンテナ用配線を除いた配線である合成配線」を有するのに対し、引用発明は、「受信フィルタ及び送信フィルタそれぞれの一端はアンテナ端子24に共通して接続され」ることが特定される点。

(相違点4)本願発明1は、「整合素子を接続するための整合端子」を有し、「前記アンテナと前記マルチプレクサとのインピーダンス整合を図る整合素子と接続される整合用配線」の一端が「前記整合端子に接続され」るのに対して、引用発明は、インダクタL2を含むチップ部品62と接続するための「整合端子」を有しているか、明記されてない点。

(相違点5)「前記アンテナと前記マルチプレクサとのインピーダンス整合を図る整合素子と接続される整合用配線」の他端について、本願発明1は、「整合用配線」の「他端が前記合成配線に接続される」のに対し、引用発明は、「配線55f」の他端が、「ビア配線59a」に接続される点。

(相違点6)本願発明1は、前記アンテナ用配線の他端と前記整合用配線の他端とは、「合成配線の」略同一の位置に接続されるのに対して、引用発明は、アンテナ配線55aの他端と配線55fの他端は、ビア配線59aに接続される点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3、5について検討する。
引用発明の「ビア配線59a」は、アンテナパッド54aを介して、「受信フィルタ及び送信フィルタそれぞれ一端」が共通して接続されるアンテナ端子24に対応するアンテナパッド60aに接続されることから、アンテナ端子24より「受信フィルタ及び送信フィルタそれぞれ一端」側において、受信フィルタ及び送信フィルタの入力または出力は、すでに合流しているものである。
そうすると、アンテナ端子24よりアンテナ側である、「ビア配線59a」は、「受信フィルタ及び送信フィルタの入力または出力が合流する点である合成点と前記複数のフィルタのそれぞれとを結ぶ配線であって、前記アンテナ用配線を除いた配線である合成配線」ということはできない。
そして、当該相違点3、5の構成は、引用文献2、引用文献A、Cにも、記載されておらず、本願優先日前において周知技術であるとの合理的理由もない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明、及び引用文献2に基いて、更には、原査定で引用された引用文献A及びCを参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?5について
請求項2?5は、請求項1を直接的あるいは間接的に引用するものであり、本願発明2?5は、本願発明1と同一の構成を備えるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明、及び引用文献2に基いて、更には、原査定で引用された引用文献A及びCを参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第7 原査定についての判断
1 本願発明1について
本願発明1は、令和2年 9月28日にされた手続補正で補正された、上記「第4 本願発明」で示したとおりのものであって、上記「第6 対比・判断」で言及した「前記合成点と前記複数のフィルタのそれぞれとを結ぶ配線であって、前記アンテナ用配線を除いた配線である合成配線」を有し、「「整合用配線」の「他端が前記合成配線に接続される」構成を有するものであり、当該構成については、引用文献A、B、Cのいずれにも記載されていない。
また、当審拒絶理由通知で引用した引用文献1を参酌しても、当該引用文献1には、インダクタL2を含むチップ部品62と接続される配線55fが記載されるが、配線55fは、ビア配線59aから延びるものであるから、送信経路TX及び受信経路RXに整合用配線を接続する構成は、当業者が容易になし得る事項とはいえない。
さらに、当該構成は、本願優先日前において周知技術であるとの合理的理由もない。

したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、引用発明A、及び引用文献B、Cに基いて、更には当審拒絶理由通知で引用した引用文献1を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?5について
請求項2?5は、請求項1を直接的あるいは間接的に引用するものであり、本願発明2?5は、本願発明1と同一の構成を備えるから、本願発明1と同じ理由により、引用発明A、及び引用文献B、Cに基いて、更には当審拒絶理由通知で引用した引用文献1を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。


第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-01-07 
出願番号 特願2017-558879(P2017-558879)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H03H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石田 昌敏  
特許庁審判長 佐藤 智康
特許庁審判官 衣鳩 文彦
谷岡 佳彦
発明の名称 マルチプレクサ  
代理人 吉川 修一  
代理人 傍島 正朗  
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