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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G01N 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 G01N 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 G01N 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 G01N |
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管理番号 | 1370002 |
異議申立番号 | 異議2020-700280 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-04-21 |
確定日 | 2020-11-20 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第6595743号発明「血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6595743号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12、14-17〕、〔13、18-27〕について訂正することを認める。 特許第6595743号の請求項1ないし9、13、15、17ないし27に係る特許を維持する。 特許第6595743号の請求項10ないし12、14、16に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6595743号の請求項1?17に係る特許についての出願は、2018年(平成30年)12月25日(優先権主張 平成29年12月27日)を国際出願日とする出願であって、令和元年10月4日にその特許権の設定登録がされ、同月23日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和2年4月21日:特許異議申立人日本ペイント・インダストリアル コーティングス株式会社(以下「申立人」という 。)による請求項1?17に係る特許に対する特 許異議の申立て 同年7月6日付け:取消理由通知書 同年8月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同年9月7日付け:通知書 上記通知書は、申立人に、取消理由通知の写し、訂正請求書並びにこれに添付された訂正特許請求の範囲及び明細書の副本、取消理由通知に対応する特許権者の意見書の副本を送付し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたものである。 しかし、申立人は、これに対し応答しなかった。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 本件訂正請求書による請求の趣旨は、特許請求の範囲及び明細書を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおりに訂正することを求めるものであり、その内容は、以下のとおりである。 (1)訂正事項について ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1の「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下である」を「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり」(下線は訂正箇所である。以下同様。)に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?9、15及び17も同様に訂正する)。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1の「血清または血漿分離用組成物」を「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」に訂正する(請求項1の記載を引用する請求項2?9、15及び17も同様に訂正する)。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2?9の「血清または血漿分離用組成物」を「血漿分離用組成物」に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項10、11、12、14及び16を削除する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項13である「請求項1?10のいずれか1項に記載の血清または血漿分離用組成物が、血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物。」を「(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物。」に訂正する(請求項13の記載を引用する請求項18?27も同様に訂正する)。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項15の「請求項12又は13」を「請求項1?9のいずれか1項」に訂正する。 キ 訂正事項7 「前記シリコーンオイルがポリエーテル変性ポリアルキルシロキサンである、請求項13に記載の血漿分離用組成物。」を請求項18とする。 ク 訂正事項8 「前記シリコーンオイルのHLB値が、1以上10以下である、請求項13又は18に記載の血漿分離用組成物。」を請求項19とする。 ケ 訂正事項9 「前記シリコーンオイルの含有量が、0.10重量%以上2.00重量%以下である、請求項13、18又は19のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。」を請求項20とする。 コ 訂正事項10 「前記微粉末シリカが、親水性シリカを含む、請求項13及び18?20のいずれかの1項に記載の血漿分離用組成物。」を請求項21とする。 サ 訂正事項11 「前記親水性シリカの含有量が、0.3重量%以上2.20重量%以下である、請求項21に記載の血漿分離用組成物。」を請求項22とする。 シ 訂正事項12 「前記微粉末シリカが、親水性シリカと疎水性シリカとを含む、請求項21又は22に記載の血漿分離用組成物。」を請求項23とする。 ス 訂正事項13 「前記親水性シリカと前記疎水性シリカとの合算含有量が、1.40重量%以上4.0重量%以下である、請求項23に記載の血漿分離用組成物。」を請求項24とする。 セ 訂正事項14 「微粉末シリカとは異なる無機粉末を含み、前記無機粉末の比重が、3以上である、請求項13及び18?24のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。」を請求項25とする。 ソ 訂正事項15 「血液採取容器本体と、請求項13及び18?25のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物とを備え、前記血液採取容器本体内に、前記血漿分離用組成物が収容されている、血液採取容器。」を請求項26とする。 タ 訂正事項16 「請求項26に記載の血液採取容器を用いた血漿の分離方法であって、前記血液採取容器本体内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血漿の分離方法。」を請求項27とする。 チ 訂正事項17 明細書の【発明の名称】の「血清または血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血清または血漿の分離方法」を「血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法」に訂正する。 (2)一群の請求項について 訂正前の請求項2?17は請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1?17は一群の請求項であり、上記訂正事項1?16はいずれも、その一群の請求項においてなされたものであるから、特許法第120条の5第4項で規定する当該一群の請求項ごとに請求されているものである。 また、訂正事項17は、明細書の【発明の名称】に係る訂正であり、明細書の訂正に係る請求項を含む一群の請求項の全てについて行うものであるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するものである。 そして、訂正後の請求項13及び18?27については、特許権者は、本件訂正が認められるときには、請求項1?12及び14?17とは別の訂正単位として扱われることを求めているものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について ア 目的の適否 訂正事項1は、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体」を「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであ」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書には、(メタ)アクリル酸エステル系重合体について、 「【0056】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合することにより得られる。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を有する。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体の単独重合体であってもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよく、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体との共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0057】 上記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。」 「【0059】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上である。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率の上限は特に限定されない。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率は、100重量%(全量)であってもよく、100重量%未満であってもよく、90重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が上記下限以上であると、血清または血漿分離用組成物の粘度をより一層良好にすることができ、隔壁の強度をより一層高めることができる。」(下線は当審において付与した。以下同様。)と記載されていることから、訂正事項1は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2について ア 目的の適否 訂正事項2は、「血清または血漿分離用組成物」を「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無 本件特許明細書には、血漿分離用組成物について、 「【0045】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記白血球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.095以下、より好ましくは1.085以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から白血球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ白血球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。例えば、血液中の各白血球成分の組成比率と同等の組成比率で白血球を回収することができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。」と記載されていることから、訂正事項2は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項3について ア 目的の適否 訂正事項3は、「血清または血漿分離用組成物」を「血漿分離用組成物」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項3は、選択肢を削除するものであるから、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、請求項の削除は、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項5について ア 目的の適否 訂正事項5は、「請求項1?10のいずれか1項」の記載を引用する請求項の記載を、請求項1の「(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であ」ることを記載することにより、当該他の請求項の記載を引用しないものとするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものである。 そして、さらに、「(メタ)アクリル酸エステル系重合体」を「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであ」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものでもある。 イ 新規事項の有無 「前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであ」るものについては、上記(1)イで述べたとおり、本件特許明細書に記載されているものであるから、訂正事項5は、本件明細書に記載した事項の範囲内においてしたものである。 ウ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項6について ア 目的の適否 訂正事項6は、請求項15の「請求項12又は13」を「請求項1?9のいずれか1項」に訂正するものであるところ、これは、請求項15が引用する「請求項12又は13」のうち請求項13を削除し、さらに、「請求項12」が引用する請求項1?10のうち請求項10を削除して「請求項1?9のいずれか1項」としたものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項6は、引用する請求項を削除するものであるから、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項7について ア 目的の適否 訂正事項7は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項2」(請求項2は訂正前の請求項1を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項18とするものであるところ、その請求項13は、上記訂正事項5によって、訂正前の請求項1の特定事項を記載することにより、他の請求項の記載を引用しないものとするものとされ、さらに限定が加えられるものであることから、請求項18をその請求項13を引用する形式で記載するものである。 そうすると、引用する請求項13が、上記(5)で述べたとおり、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであるから、訂正事項7についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項7は、訂正事項5と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (8)訂正事項8について ア 目的の適否 訂正事項8は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項3」(請求項3は訂正前の請求項1又は2を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項19とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項19をその請求項13又は訂正前の請求項2に対応する上記請求項18を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項8についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項8は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (9)訂正事項9について ア 目的の適否 訂正事項9は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項4」(請求項4は訂正前の請求項1?3のいずれかを引用している)を引用する請求項13を新たに請求項20とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項20をその請求項13又は訂正前の請求項2及び3に対応する上記請求項18及び19を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項9についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項9は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (10)訂正事項10について ア 目的の適否 訂正事項10は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項5」(請求項5は訂正前の請求項1?4のいずれかを引用している)を引用する請求項13を新たに請求項21とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項21をその請求項13又は訂正前の請求項2?4のいずれかに対応する上記請求項18?20のいずれかを引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項10についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項10は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (11)訂正事項11について ア 目的の適否 訂正事項11は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項6」(請求項6は訂正前の請求項5を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項22とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項22をその請求項13又は訂正前の請求項5に対応する上記請求項21を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項11についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項11は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (12)訂正事項12について ア 目的の適否 訂正事項12は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項7」(請求項7は訂正前の請求項5又は6を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項23とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項23をその請求項13又は訂正前の請求項5又は6に対応する上記請求項21又は22を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項12についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項12は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (13)訂正事項13について ア 目的の適否 訂正事項13は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項8」(請求項8は訂正前の請求項7を引用している)を引用する請求項13を新たに請求項24とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項24をその請求項13又は訂正前の請求項7に対応する上記請求項23を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項13についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項13は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (14)訂正事項14について ア 目的の適否 訂正事項14は、訂正前の請求項13が「請求項1?10のいずれか1項」を引用していたもののうち、「請求項9」(請求項9は訂正前の請求項1?8のいずれかを引用している)を引用する請求項13を新たに請求項25とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項25をその請求項13又は訂正前の請求項2?8のいずれかに対応する上記請求項18?24のいずれかを引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項14についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項14は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (15)訂正事項15について ア 目的の適否 訂正事項15は、訂正前の請求項15が「請求項12又は13」を引用していたもののうち、「請求項13」(請求項13は訂正前の請求項1?10のいずれかを引用している)を引用する請求項を新たに請求項26とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項26をその請求項13又は訂正前の請求項2?9のいずれかに対応する上記請求項18?25のいずれかを引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項15についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項15は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (16)訂正事項16について ア 目的の適否 訂正事項16は、訂正前の請求項13を引用する請求項15をさらに引用する請求項17を新たに請求項27とするものであるところ、その請求項13は、上記(7)で述べたとおりであることから、請求項27を訂正前の請求項13を引用する請求項15に対応する上記請求項26を引用する形式で記載するものである。 そうすると、上記(7)で述べたとおり、訂正事項16についても、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とする、及び、同項ただし書第4号に掲げる事項を目的とするものであるといえる。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項16は、訂正事項7と同様に、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 (17)訂正事項17について ア 目的の適否 明細書の【発明の名称】を「血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法」に訂正することは、訂正特許請求の範囲の記載に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 イ 新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項17は、新規事項を追加するものでもなく、特許請求の範囲を実質上拡張し、又は変更するものではない。 3 小括 上記のとおり、訂正事項1?17に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号又は第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。 そして、訂正後の請求項13及び18?27については、特許権者は、本件訂正が認められるときには、請求項1?12及び14?17とは別の訂正単位として扱われることを求めているものであるから、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-12、14-17〕、〔13、18-27〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正請求により訂正された請求項1?27に係る発明(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」等と記載し、まとめて記載する場合には「本件発明」と記載する。ただし、請求項10、11、12、14及び16は削除された。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?27に記載されたとおりのものであり、そのうち、本件発明1及び13を記載すると、以下のとおりである。 「【請求項1】 (メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、 血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、 25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物。」 「【請求項13】 (メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、 血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、 25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物。」 第4 取消理由の概要 令和2年7月6日付け取消理由通知書の取消理由の概要は、次のとおりである。 取消理由1(新規性) 本件訂正前の請求項1?5、7?11、14及び16に係る発明は、本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 取消理由2(進歩性) 本件訂正前の請求項1?17に係る発明は、本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 取消理由3(サポート要件) 本件特許は、その特許請求の範囲の下記の請求項に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 ●取消理由1(新規性)及び取消理由2(進歩性)について 新規性については、甲第1号証に記載された発明であること、進歩性については、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであることを説示している。 甲第1号証:特開平6-201682号公報 甲第2号証:国際公開第2007/029525号 甲第3号証:特開2007-101322号公報 甲第4号証:ポリウレタンフォーム用シリコーン整泡剤、東レ・ダウコーニング株式会社 甲第5号証:日本アエロジル株式会社 製品案内 甲第7号証:酸化チタン(ナノ酸化チタンを含む)の安全性等について、日本酸化チタン工業会(URL:http://www.sankatitan.org/sankatitan/2016.12ansen.pdf) 甲第8号証:製品説明書「セルリッチ」、ニプロ株式会社 なお、甲第6号証(特開2009-286905号公報)は、取消理由では提示しなかったが、以下の第6の判断では、これを含めて判断することとする。 以下、甲第1?8号証は「甲1」?「甲8」という。 ●取消理由3(サポート要件) (メタ)アクリル酸エステル系重合体には、種々のモノマーから得られる多種多様な重合体が包含されているところ、電子線やγ線等を照射した際の発泡を抑制でき、かつ保存中の相分離の発生を抑制できるという課題を解決したものとして実施例に記載されているものは、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させたものだけであり、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体以外の、種々のモノマーから得られる多種多様な(メタ)アクリル酸エステル系重合体のすべてにおいても、訂正前の請求項1で特定する「重量平均分子量が15000以上100000以下」ということだけで、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。 また、その余の請求項において、その余の条件を追加しても、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体以外の、種々のモノマーから得られる多種多様な(メタ)アクリル酸エステル系重合体すべてにおいて、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。 よって、訂正前の請求項1?17に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものとはいえないことから、特許請求の範囲の請求項1?17に係る記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 第5 甲号証の記載について 1 甲1について (1)記載事項 甲1は、発明の名称は「血清分離用シーラント」であり、以下の事項が記載されている。なお、下線は当審において付与したものである(以下同様)。 (1ア)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は血清分離用シーラントに関し、更に詳しくは、流動特性と比重特性とのバランスに優れかつ貯蔵安定性に優れた血清分離用シーラントに関する。 【0002】 【従来の技術】近年、微量の目的生化学物質を検出する臨床分析技術が著るしい進歩を遂げている。このためには、全血液をその構成成分である血清と血球に分離する技術の改良が要求されている。かかる分析技術は血清部分に臨床治験データに影響を及ぼすおそれのある赤血球が混入しないことが要求されている。 【0003】本発明は、かかる血清(又は血漿)の分離のために血液を採取する試験管中に充填されるチキソトロピー性ゲル状材料を使用することに関する。ゲル状材料は、遠心力を付加することで比重差によって試験管内で血清(又は血漿)からなる上層と血球からなる下層との間の領域に移動し、二層間に隔壁を形成する。この血清(又は血漿)はその後臨床検査用に使用される。血液構成成分を分離し、血球が拡散して血清中に混入するのを防止するのに有効な隔壁を形成するのが、分離剤の主たる作用である。このような材料は遠心力の作用下にのみ流動し、遠心力解除後には血清層と血球層との間の位置を保持しなければならない。例えば、試験管を傾斜させた場合には、分離剤はその配置を保持し、血球部分が流動せず、又経日で隔壁のくずれが生じないことが望まれる。このことは試験管がそのような位置をとるおそれのある輸送又は貯蔵時に特に重要である。」 (1イ)「【0013】 【課題を解決するための手段】本発明に従えば、(A)式(I) 【0014】 【化3】 ![]() 【0015】(式中、R^(1)はH又はCH_(3)であり、R^(2)は炭素数1?18のアルキル基を示す)を有するアルキルアクリレート又はアルキルメタクリレートに由来する、20℃における比重が0.94?1.06で粘度が10?140Pa・Sのポリマー100重量部、(B)シリカ及びベントナイトより選ばれた少なくとも一種の成分0.5?10重量部(C)(C-1)フルオロカーボン系界面活性剤、(C-2)ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤及び(C-3)ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤の中から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤0.01?2重量部を主成分とし、20℃における比重が1.035?1.065、粘度が100?400Pa・Sで降伏値が100?400dyne/cm^(2 )の範囲内である血清分離用シーラントが提供される。 【0016】本発明に従った血清分離用シーラントは、前述の如く、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を必須の構成成分とする。本発明において(A)成分として使用されるポリマーは式(I)のアルキルアクリレート及び/又はアルキルメタアクリレートを重合して成るポリマー(以下、単にアクリルポリマーという)であり、20℃における比重が0.94?1.06、好ましくは1.030?1.045であり、粘度が10?140Pa・S、好ましくは50?100Pa・Sである。なお、前記ポリマーの数平均分子量(Mn)は4000?12000であるのが好ましい。かかるアクリルポリマーはモノマーが容易に入手でき、低コストであるという利点も有する。更に、このアクリルポリマーは比重及び粘度の調節が容易であるため、使用者のニーズに合致した広範囲の粘度-比重の組合せを達成することができ、しかも、従来のものに比較してより均一な樹脂を複雑な操作を必要とすることなく、しかも分離血清上に浮遊物を生成することもない。」 (1ウ)「【0020】本発明に従った血清分離用シーラントのB成分として用いられるシリカ及び/又はベントナイトは、ゲルの網目形成剤及び/及び比重調整剤として使用される。使用するシリカ及びベントナイトの種類には特に限定はないが、例えば、デクッサ社のアエロシル(Aerosil)(商標)などのヒュームドシリカを好適に用いることができ、その粒子径には特に限定はないが、好ましくは50mμ(nm)以下で、より好ましくは5?40mμである。一方、ベントナイトにも特に限定はなく、例えば、NL Chemicals社より市販のベントン(BENTONE)(商標)(スメクタイト/ヘクトライト)などを用いることができる。シリカ及び/又はベントナイトは前記アクリルポリマー(A)100重量部に対し0.5?10重量部、好ましくは1?5重量部の範囲で使用する。0.5重量%未満では構造粘性が出ず、自由移動性が高くなり、10重量部を超えると、比重が高くなって反転性が低下する 【0021】本発明に従った血清分離用シーラントの(C)成分としては、(C-1)フルオロカーボン系界面活性剤、(C-2)ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤及び(C-3)ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤の中から選ばれた少なくとも一種の界面活性剤を前記アクリルポリマー(A)100重量部に対し、0.01?2重量部、好ましくは0.05?1.8重量部配合する。0.01重量部未満では必要とする粘性が得られにくく、自由移動性が高くなり、2重量部を超えると粘性が上がり、反転性が低下する。」 (1エ)「【0045】例3?16(実施例) 本発明に従った各種血液分離用シーラントを製造した。これらのシーラントの構成組成(重量部)は表2及び表3に示す通りであり、(A)成分としてNBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマーを用いた。ポリマーの粘度及び比重は表2及び表3に示す通りであった。(B)成分としてはアエロジル(AEROSIL: 登録商標)(デグッサ社)R805、R812、R972、A130、及びOX50のシリカ並びにベントン(NL Chemicals社市販のB-38)を表2及び表3に示す量(重量部)で用い、(C)成分としてはSH190(東レ・ダウコーニングシリコン社製ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、BYK370(BYK CHEMIE社製ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、F144、F177(大日本インキ化学工業(株)社製フルオロカーボン系界面活性剤)及びFC170C(住友3M社製フルオロカーボン系界面活性剤)を表2及び表3に示 す量で用いた。更に、任意的な(D)成分としては、炭酸カルシウム(CaCO_(3))及び二酸化チタン(TiO_(2))を用い、(E)成分としてチタンカップリング剤プレンアクトKRTTS、KR-9S及びKR-12(味の素(株)製)を表2及び表3に示す量(重量部)で用いた。 【0046】前述の如く、シリカ及び/又はベントンは網目形成剤であり、アルキルポリシロキサン及び/又はフルオロカーボン系界面活性剤はシーラントの粘性を高める作用をし、これによってシーラント中の網目形成剤の含量を著しく(例えば最大30部から12部未満まで)低下させることができる。この濃度低下は製造プロセスを著しく容易にすることができ、例えばロールミル操作を2回通し以下又はロールミル操作をなくすことができる。チタンカップリング剤を上記配合に組み入れることによっても網目形成剤/充填剤含量の分散性が一層改良される。アクリルポリマーの製造は、一般に適当な溶剤(例えば、キシレン、トルエンなど)30?60部(重量)にモノマー成分を滴加することによって行うことができる。モノマーの滴加完了後、混合物は完全反応のために熟成し、溶媒を蒸発除去する。得られた血清分離用シーラントの配合、諸物性などを表2及び表3に示す。ゲルの性状における粘度の単位はPa・S、降伏値の単位はdyne/cm^(2)である。」 【表2】 ![]() 【表3】 ![]() 」 (1オ)「【0053】実際の試験前に、ゲル1.8mlを含む試験管材料を60℃で1ヶ月間貯蔵した(通常温度の1年間貯蔵の促進テスト)。各試験管に約8mlの血液を収集し、1時間以内で凝血させた。次に試料を800Gで10分間遠心分離した。通常の方法では、1300G以上で10分間遠心分離するのが隔壁形成の確実性を得るために普通であるが、より厳しい遠心操作標準条件として本評価試験では800G×10分間を選定した。評価試験結果を表4に示す。」 (2)甲1発明について 甲1に記載されている発明を、摘記(1エ)に記載されている実施例から認定すると、以下のとおりであり、ここで表2及び表3は、摘記(1エ)の上記【表2】及び【表3】である。 なお、摘記(1ア)に「血清(又は血漿)の分離」との記載もあるが、上記摘記した記載以外の特許請求の範囲及び明細書の部分においても血漿を分離することについて一切記載されておらず、また、血清と血漿は成分的に同じものではなく(血漿には凝固因子であるフィブリノゲンが含まれるが血清には含まれない)、その分離手法も異なる(血漿の場合には抗凝固剤を入れるが、血清の場合には入れないため、血清は血餅との分離となる)ことを考慮するに、「血清(又は血漿)の分離」だけの記載をもってして、「血漿分離用シーラント」を読み取ることはできない。 「血清分離用シーラントであって、 シーラントの構成組成(重量部)は表2及び表3に示す通りであり、 (A)成分としてNBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマーを用い、ポリマーの粘度及び比重は表2及び表3に示す通りであり、 (B)成分としてはアエロジル(AEROSIL: 登録商標)(デグッサ社)R805、R812、R972、A130、及びOX50のシリカ並びにベントン(NL Chemicals社市販のB-38)を表2及び表3に示す量(重量部)で用い、 (C)成分としてはSH190(東レ・ダウコーニングシリコン社製ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、BYK370(BYK CHEMIE社製ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)、F144、F177(大日本インキ化学工業(株)社製フルオロカーボン系界面活性剤)及びFC170C(住友3M社製フルオロカーボン系界面活性剤)を表2及び表3に示す量で用い、 更に、任意的な(D)成分としては、炭酸カルシウム(CaCO_(3))及び二酸化チタン(TiO_(2))を用い、(E)成分としてチタンカップリング剤プレンアクトKRTTS、KR-9S及びKR-12(味の素(株)製)を表2及び表3に示す量(重量部)で用い、 得られた血清分離用シーラントの配合、諸物性(ゲルの性状)などを表2及び表3に示す、 血清分離用シーラント。」(以下「甲1発明」という。) 2 甲2について 甲2には、以下の事項が記載されている。 「[0047] 血液分離剤組成物は、前記血液分離剤用重合体及びシリカを含有することから、 血液分離剤用重合体の前記効果を発揮することができる。 実施例 [0048] 以下に、製造例、実施例、及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明の範囲はそれらの実施例に限定されるものではない。 (共重合体Αの製造方法) オイルジャケットを備えるとともに容量が 1リットルである加圧式攪拌槽型反応器に おけるオイルジャケットの温度を 180°Cに保った。次いで、アクリル酸ブチル(以下、 BAと略記する) 50g、アクリル酸-2-エチルへキシル(以下、 HAと略記する) 30g、アクリル酸シクロへキシル 20g、及びメチルエチルケトン 15gからなる原料に、ラジカル 重合開始剤としてジターシャリーへキシルバーオキサイド(以下、DTHPと略記する)0.1gを配合した後、原料を原料タンクに仕込んだ。そして、一定の供給速度で原料タンク力も反応器に原料を連続供給し、反応器内の質量が580gで一定になるように、反応物を反応器出口から連続的に抜き出した。このときの原料の供給速度は48g/分であり、原料の反応器中での滞留時間は12分であった。更に、反応器内の温度を180°Cに保った。そして、減圧度を30kPaに保つとともに温度を250°Cに保った薄膜蒸発器を用いて、抜き出した反応物から揮発成分を連続的に分離し、該揮発成分をほとんど含まない共重合体Aを回収した。 [0049] 原料の供給開始後、反応器内の温度が安定してから更に36分後にほぼ平衡状態に達したと判断し、該時間が経過したときを薄膜蒸発後の共重合体Aの回収開始点とした。そして、回収開始点から60分間、原料の供給を継続した結果、約2000gの共重合体Aを回収した。得られた共重合体Aについて、ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフ(GPC)より求めたポリスチレン換算による共重合体Aの重量平均分子量(以下、Mwという)は20,000であり、数平均分子量(以下、Mnという)は4,600であり、分子量分布Mw/Mnは4.6であった。」 3 甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【実施例】 【0043】 以下に実施例および比較例で本発明を詳細に説明する。 (重合体Aの製造)オイルジャケットを備えた容量1リットルの加圧式攪拌槽型反応器のオイルジャケット温度を、180℃に保った。 アクリル酸ブチル75質量部、アクリル酸2エチルヘキシル25質量部、イソプロピルアルコール3質量部、メチルエチルケトン25質量部、および重合開始剤としてジターシャリーヘキシルパーオキサイド0.1質量部からなる単量体混合液を原料タンクに仕込んだ。単量体混合液を一定の供給速度(48g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給し、反応器内の混合液質量が約580gで一定になるように重合反応液を反応機出口から連続的に抜き出した。その時の反応器内温は約155℃に保たれた。 抜き出した重合反応液を減圧度20kPa、温度250℃に保った薄膜蒸発機で連続的に揮発成分を分離し、揮発成分をほとんど含まない重合体Aを回収した。 単量体混合物の供給開始後、反応器内部の温度が安定してからさらに36分後をほぼ平衡状態に達したと判断し、薄膜蒸発後の重合体Aの回収開始点とし、それから約300分間、原料の供給を継続した結果、約10kgの重合体Aを回収した。 ゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下GPC)より求めたポリスチレン換算による重合体Aの重量平均分子量(以下Mw)は37400、数平均分子量(以下Mn)は7400、分子量分布Mw/Mnは5.1であった。また加熱残分から求めた重合体の固形分は99.8%であった。重合体Aは室温で流動性があり液状であった。25℃での粘度はE型粘度計で測定したところ71Pa・sであった。20℃での比重は1.032であった。重合体Aを目視で確認したところ、黄変等の問題もなく、色調の優れたものであった。」 4 甲4について 甲4は、ポリウレタンフォーム用シリコーン整泡剤について記載したものであり、その4頁の「軟質スラブ及びホットモールフォーム用シリコーン整泡剤一覧」の表には、製品名「SH 190」のHLBが7であることが記載されている。 5 甲5について 甲5は、アエロジル(AEROSIL)についての製品案内であり、その6頁の「表面処理の種類と特徴」の表には、製品名「AEROSILOX50」と「AEROSIL130」が親水性であることが、「AEROSILR972」が疎水性であることが記載されている。 6 甲6について 甲6には、以下の事項が記載されている。 「【0197】 -硬化性溶液1- まず、架橋スルホン酸変性ポリアクリル酸ナトリウム(「日本触媒製、アクアリックcs7s、中心粒径7μmにボールミル粉砕したもの/吸水性樹脂粒子」に対し、親水化処理を施したシリカ粒子エアロジルA130(日本エアロジル製、粒径16nm)を2質量%となるようサンプルミルで混合外添し、表面にシリカが付着した吸水性樹脂粒子を得た。」 7 甲7について 甲7は、酸化チタンについて記載したものであり、その「代表的な酸化チタンの物理特性」の表1には、密度について、ルチル金鉱石の場合には4.27g/cm^(3)、アナターゼ鋭錐石の場合には3.90g/cm^(3)、ブルカイト板チタン石の場合には4.13g/cm^(3)であることが記載されている。 8 甲8について 甲8は、製品名「セルリッチ」について紹介したものであり、 【形状・構造及び原理等】の欄に 「1.形状・構造 本品は、全血等を分取する「採取ユニット」、遠心分離により各種の血液成分に分離する「分離ユニット」及び「回収ユニット」により構成される。」と記載され、 【使用方法等】の欄に 「以下に、全血から赤血球層、白血球・血小板、血漿層を分離する方法を示します。 1.採取方法 1)薬液採取針を付けた採取容器に、別途用意した抗凝固剤(ACD-A液)を採取します。 2)あらかじめ遠沈管等に用意した血液を採取容器内に吸引して、抗凝固剤(ACD-A液)と混ざるよう軽く転倒混和します。 2.分離方法 1)十分攪拌した後、採取容器から薬液採取針を取り外し、採取容器の先端(ロックコネクタ)に遠心キャップをしっかりと取り付けます。 2)ネジを緩める要領で採取容器の押子をガスケットから取り外します。遠心キャップ側を下にして遠心分離機にセットし、目的の遠心条件にて採取容器内の血液を遠心分離します。なお、採取容器の遠心キャップ側に分離される「赤血球層」を回収する際に必要となるため、取り外した押子は捨てずに取っておきます。 3)遠心分離後、「赤血球層」と「白血球・血小板含有血漿層」とに分離されます。採取容器のガスケットに採取容器用のガイドを取り付けます。」と記載されている。 第6 当審の判断 1 取消理由1及び2について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)(メタ)アクリル酸エステル系重合体について アクリレートはアクリル酸エステルであるから、甲1発明の「(A)成分としてNBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマー」は、本件発明1の「(メタ)アクリル酸エステル系重合体」に相当する。 また、本件発明1における「常温で流動性を有」するとは、本件特許明細書の【0050】に「上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有する。本明細書において、「常温」とは、25℃の温度である。また、本明細書において、「常温で流動性を有する」とは、25℃において、粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下であることを意味する。」と記載されており、甲1発明の「得られた血清分離用シーラントの」「諸物性(ゲルの性状)」の「表2及び表3に示す」「粘度(Pa・S)」の値は、10?500を満たしており、それは摘記(1イ)の【0015】の記載を参照すると20℃における値であるから、本件発明1の「常温で流動性を有」することに相当するものである。 (イ)シリカについて 甲1発明の「アエロジル(AEROSIL: 登録商標)(デグッサ社)R805、R812、R972、A130、及びOX50のシリカ」は、摘記(1イ)の【0020】に記載されているとおり、微粉末シリカであるから、本件発明1の「微粉末シリカ」に相当する。 (ウ)シリコーンオイルについて 本件発明1の「シリコーンオイル」は、本件特許明細書の【0128】に「<シリコーンオイル> ポリエーテル変性シリコーンオイル1(東レ・ダウコーニング社製、商品名・・・、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン)」と記載されているものであるから、甲1発明の「SH190(東レ・ダウコーニングシリコン社製ポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤)」は、本件発明1「シリコーンオイル」に相当する。 (エ)比重について 甲1発明の「表2及び表3に示す」「得られた血清分離用シーラントの」「諸物性(ゲルの性状)」の「比重」の値は、1.050?1.065の範囲にあるところ、それは摘記(1イ)の【0015】の記載を参照すると20℃における値である。しかしながら、20℃と25℃とでは主成分である(メタ)アクリル酸エステル系重合体の比重に格別差異がないことを考慮すると、本件発明1の「25℃での比重が、1.060以上1.095以下」とは、「25℃での比重が、1.060以上1.065以下」の範囲で共通するといえる。 (オ)血漿分離用組成物について 甲1発明の「血清分離用シーラント」と、本件発明1の「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物」とは、「血液を分離するために用いられる」「分離用組成物」という上位概念で共通する。 イ 一致点・相違点 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、 (一致点) 「(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有する、 血液を分離するために用いられる組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.065以下である、分離用組成物。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 (相違点1) (メタ)アクリル酸エステル系重合体が、本件発明1では、「重量平均分子量が15000以上100000以下」であり、その(メタ)アクリル酸エステル系重合体「100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数1以上20以下であるアルキル基を有する」ものであるのに対し、 甲1発明では、「NBA(n-ブチルアクリレート)、EHA(エチルヘキシルアクリレート)及びEGDM(エチレングリコールジメタクリレート)から表2及び表3に示す組成で重合した各種ポリマー」が、それらを満たすものかどうか不明である点。 (相違点2) 血液を分離するために用いられる組成物が、本件発明1では「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用」組成物であるのに対し、甲1発明では「血清分離用シーラント」である点。 ウ 判断 (ア)事案に鑑み、相違点2について検討する。 a 上記第5の1(2)でも述べたように、血清と血漿は成分的に同じものではなく(血漿には凝固因子であるフィブリノゲンが含まれるが血清には含まれない)、その分離手法も異なる(血漿の場合には抗凝固剤を入れるが、血清の場合には入れないため、血清は血餅との分離となる)ものであるから、「血清分離用シーラント」を「血漿分離用組成物」として用いる動機はない。ましてや、本件発明1は、血液から血漿だけを分離するものではなく、血液から「白血球含有血漿」を分離するものであるから、白血球が含有されていない「血清」を分離するためのシーラントを、「白血球含有血漿」を分離するものために用いることは阻害要因があるともいえる。 b また、甲8には「赤血球層」と「白血球・血小板含有血漿層」とに分離する製品について記載されているが、それにどのような分離用組成物を用いるのか記載されていない。そして、その余の甲2?7についても、血液から「白血球含有血漿を分離する」ために用いられる血漿分離用組成物について何ら記載されていない。 c してみれば、相違点2は、甲2?8の記載を参照しても、甲1発明から当業者が容易になしえたものとはいえない。 (イ)小括 よって、本件発明1は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 (2)本件発明13について ア 対比、一致点・相違点 本件発明13は、本件発明1の「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」の下線部を「血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物」の下線部とした発明であり、その余の発明特定事項は両者とも同じである。 本件発明13の比重は「1.060以上1.085以下」であるが、上記(1)ア(エ)で述べたとおり、本件発明1の「25℃での比重が、1.060以上1.095以下」とは、「25℃での比重が、1.060以上1.065以下」の範囲で共通するといえる。 そうすると、本件発明13と甲1発明とは、上記(1)イで記載した(一致点)で一致し、上記(相違点1)及び以下の(相違点3)で相違することになる。 (相違点3) 血液を分離するために用いられる組成物が、本件発明13では「血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用」組成物であるのに対し、甲1発明では「血清分離用シーラント」である点。 イ 判断 相違点3について検討する。 a 上記(1)ウ(ア)aでも述べたように、血清と血漿は成分的に同じものではなく(血漿には凝固因子であるフィブリノゲンが含まれるが血清には含まれない)、その分離手法も異なる(血漿の場合には抗凝固剤を入れるが、血清の場合には入れないため、血清は血餅との分離となる)ものであるから、「血清分離用シーラント」を「血漿分離用組成物」として用いる動機はない。ましてや、本件発明1は、血液から血漿だけを分離するものではなく、血液から「単核球含有血漿」を分離するものであるから、単核球が含有されていない「血清」を分離するためのシーラントを、「単核球含有血漿」を分離するものために用いることは阻害要因があるともいえる。 b また、甲8には「赤血球層」と「白血球・血小板含有血漿層」とに分離する製品について記載され、単核球は白血球の1種といえるとしても、上記分離にどのような分離用組成物を用いるのか記載されていない。そして、その余の甲2?7についても、血液から「単核球含有血漿を分離する」ために用いられる血漿分離用組成物について何ら記載されていない。 c してみれば、相違点3は、甲2?8の記載を参照しても、甲1発明から当業者が容易になしえたものとはいえない。 (イ)小括 よって、本件発明13は、相違点1について検討するまでもなく、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 (3)本件発明2?9並びに本件発明15及び17?27について 本件発明2?9は本件発明1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明1と同様に、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 本件発明15及び17?27は本件発明13を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件発明13と同様に、甲1発明ではなく、そして、甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものでもない。 (4)まとめ したがって、本件発明1?9並びに本件発明13、15及び17?27に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものでもなく、そして、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものものでもないことから、取消理由1及び2によって、本件発明1?9並びに本件発明13、15及び17?27に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由3について (1)請求項の記載 本件発明1及び13は、本件訂正により、上記第3で記載したとおりの発明となり、前者は「血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物」の発明、後者は「血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物」の発明となっている。 (2)本件特許明細書の記載 本件特許明細書には、上記請求項の記載に関連して、 「【0045】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記白血球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.095以下、より好ましくは1.085以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から白血球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ白血球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。例えば、血液中の各白血球成分の組成比率と同等の組成比率で白血球を回収することができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。 【0046】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(単核球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記単核球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.085以下、より好ましくは1.080以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から単核球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ単核球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。」 「【0053】 滅菌時の発泡を抑制する観点及び隔壁を良好に形成させる観点から、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、15000以上100000以下である。上記重量平均分子量が15000未満であると、滅菌時に発泡しやすい。上記重量平均分子量が100000を超えると、血清または血漿分離用組成物の粘度が高くなるため、隔壁を形成しないことがある。」と記載されている。 そして、実施例として、 「【0131】 (実施例1) (メタ)アクリル酸エステル系重合体の作製: アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得た。得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表1に示す。なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重は上述した方法により測定した。 【0132】 血清または血漿分離用組成物の作製: 表1に記載の配合割合で、得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体と親水性シリカと疎水性シリカとを混合し、得られた混合液に、ポリエーテル変性シリコーンオイルを添加し、更に混合することにより、血清または血漿分離用組成物を作製した。 【0133】 (実施例2?4及び比較例1?3) 常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、血清または血漿分離用組成物を作製した。 【0134】 (実施例5?25及び比較例4?6) 常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表2,3のように変更したこと、並びに、配合成分の種類及び配合量を表2,3のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、血清または血漿分離用組成物を作製した。」 「【0147】 実施例19?22で得られた血漿分離用組成物では、下記式により、赤血球の除去率、白血球の回収率、顆粒球の除去率、及び単核球の回収率をそれぞれ算出し、また、下記の判定基準により白血球の回収を評価した。実施例23?25で得られた血漿分離用組成物では、下記の判定基準により白血球の回収を評価した。 ・・・ 【0153】 組成及び結果を下記の表1?3に示す。」と記載され、表1?3として以下の表が記載されている。 【表1】 ![]() 【表2】 ![]() 【表3】 ![]() 「【0157】 表1から明らかなように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が15000以上である場合には、滅菌時の発泡が効果的に抑制されている。 【0158】 表2から明らかなように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、微粉末シリカ、シリコーンオイルの全てが含まれている場合には、血清または血漿分離用組成物の相分離が効果的に抑制されている。特に、シリコーンオイルのHLBが1以上10以下であると、血清または血漿分離用組成物の相分離がより効果的に抑制されている。また、シリコーンオイルの含有量が0.10重量%以上2.00重量%以下であると、血清または血漿分離用組成物の相分離が更に効果的に抑制されている。 【0159】 表3から明らかなように、血漿分離用組成物の比重を調整することにより、赤血球を除去することができかつ白血球を回収することができている。また、実施例19,20では、赤血球及び顆粒球を除去することができ、かつ、単核球を回収することができている。 【0160】 なお、実施例1?4で得られた血清または血漿分離用組成物では、相分離の発生が抑えられていた。また、実施例5?18で得られた血清または血漿分離用組成物では、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が15000以上であり、滅菌時の発泡が抑えられていた。また、実施例19?25で得られた血漿分離用組成物では、滅菌時の発泡及び相分離の発生が抑えられていた。」 (3)判断 上記第4で記載したように、取消理由通知書の取消理由3では「電子線やγ線等を照射した際の発泡を抑制でき、かつ保存中の相分離の発生を抑制できるという課題を解決したものとして実施例に記載されているものは、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させたものだけであり、アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体以外の、種々のモノマーから得られる多種多様な(メタ)アクリル酸エステル系重合体のすべてにおいても、「重量平均分子量が15000以上100000以下」ということだけで、上記課題を解決できると認識できるとはいえない。」ことを指摘したが、本件訂正により、「重量平均分子量が15000以上100000以下」との発明特定事項の他に、血漿分離用組成物の「25℃での比重が、1.060以上1.095以下」又は「25℃での比重が、1.060以上1.085以下」との比重に関する発明特定事項も追加されている。 そして、上記(2)で摘記したように、比較例においてもアクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、「重量平均分子量」が本件発明1及び13で特定される範囲を満たさないもの、血漿分離用組成物の「比重」が本件発明1及び13で特定される範囲を満たさないものを作製して、実施例との比較を行っていることから、本件発明1及び13において(メタ)アクリル酸エステル系重合体がどのような作製方法により作成されたかは本件発明の課題を解決するうえで本質的なことではなく、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の「重量平均分子量」及び血漿分離用組成物の「25℃での比重」の範囲を特定することが本件発明の課題を解決するうえで本質的なことといえる。 さらに、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の「重量平均分子量」及び血漿分離用組成物の「25℃での比重」の範囲を特定することにより、発泡を抑制できかつ保存中の相分離の発生を抑制できるという課題を解決するのみならず、白血球又は単核球を良好に回収することができるという効果も得ている。 そうすると、本件発明の課題を解決し、本件発明の効果を得るうえで、(メタ)アクリル酸エステル系重合体が「アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ」て得たアクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルの重合体でなければならないということではないから、これが特定されていないからといって、本件発明1及びそれを引用する本件発明2?9並びに本件発明13及びそれを引用する本件発明15及び17?27が発明の詳細な説明に記載したものではないとはいえない。 よって、訂正された特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていないとはいえない。 (4)まとめ したがって、本件特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定にする要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえないことから、取消理由3によって、本件発明1?9並びに本件発明13、15及び17?27に係る特許を取り消すことはできない。 第7 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立理由(実施可能要件) 申立人は、特許異議申立書で、以下の申立理由も主張している。 本件発明において、どのような重合体を用いた場合に本件発明の効果が得られるのか把握することができないことから、本件発明を実施するには過度の試行錯誤が強いられる。 よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないことから、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 当審の判断 上記第5の2(2)で摘記した本件特許明細書(特に表1?3参照)には、本件発明の効果が得られる重合体及びそれを含有する血漿分離用組成物の実施例が、作製方法、用いる原料の商品名とともに、多数記載されており、本件発明を実施するために過度の試行錯誤が強いられることはない。 よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されており、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではないから、上記申立理由によって本件発明1?9並びに本件発明13、15及び17?27に係る特許取り消すことはできない。 第8 むすび 以上のとおりであるから、請求項1?9、13、15及び17?27に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に請求項請求項1?9、13、15及び17?27に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 一方、請求項10?12、14及び16に係る特許は、上記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項10?12、14及び16に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、血清または血漿分離用組成物、及び血液採取容器本体内に該血清または血漿分離用組成物が収容されている血液採取容器に関する。また、本発明は、上記血液採取容器を用いた血清または血漿の分離方法に関する。 【背景技術】 【0002】 臨床検査において、血液サンプルを採取するために血液採取容器が広く用いられている。血清または血漿分離用組成物が内部に収容されている血液採取容器では、該分離用組成物の比重を適切に調整することで、比重差を利用して遠心分離により全血から血清あるいは血漿を分離することができる。 【0003】 被採血者への細菌感染を防止する観点から、血液採取容器の内部は、ISO、及びJISの規格に準拠した滅菌状態であることが要求される。血液採取容器を滅菌するために、製造工程において電子線やγ線等が照射される。 【0004】 下記の特許文献1には、(A)特定の構造を有するアクリルコポリマーと、(B)シリカ又はベントナイトと、(C)フルオロカーボン系界面活性剤、ポリエステル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤又はポリエーテル変性アルキルポリシロキサン系界面活性剤とを主成分とする血清分離用シーラントが開示されている。 【0005】 下記の特許文献2には、血清または血漿分離用組成物中に、0.2重量%以上かつ5重量%以下となるように1-アルキル-2-ピロリドンを含有させて、電子線を照射することを特徴とする、血清または血漿分離用組成物の滅菌方法が開示されている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0006】 【特許文献1】特開平6-201682号公報 【特許文献2】特開2013-61283号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 特許文献1に記載のような従来の分離用組成物では、血液採取容器の内部の滅菌を目的として電子線やγ線等を照射した際に、分離用組成物が発泡することがある。分離用組成物が発泡すると、採血後、血清と血餅とを分離するために遠心分離をした際に分離用組成物がちぎれ、血清中に油滴や油膜が発生することがある。自動分析装置の検体吸引ノズルにこれらの油滴や油膜が付着したり、蓄積したりすると、ノズルの狭窄や閉塞が発生し、正確な検体吸引が妨げられることがある。 【0008】 特許文献2に記載の分離用組成物では、血液採取容器の内部の滅菌を目的として電子線を照射しても、分離用組成物の発泡をある程度抑制することができる。しかしながら、特許文献2に記載の分離用組成物でも発泡抑制効果は十分ではなく、更なる発泡率の低減が求められている。また、特許文献2に記載の分離用組成物では、保存中に粘度の低い成分が分離し流れ出る、相分離という現象が発生することがある。流れ出た成分も、採血後の遠心分離時に血清又は血漿中に油膜として浮遊する場合があり、上記と同様の課題が生じることがある。 【0009】 本発明の目的は、滅菌時の発泡を抑制でき、かつ保存中の相分離の発生を抑制できる血清または血漿分離用組成物を提供することである。また、本発明は、上記血清または血漿分離用組成物を収容した血液採取容器及び上記血液採取容器を用いた血清または血漿の分離方法を提供することも目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明の広い局面によれば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下である、血清または血漿分離用組成物が提供される。 【0011】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記シリコーンオイルがポリエーテル変性ポリアルキルシロキサンである。 【0012】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記シリコーンオイルのHLB値が、1以上10以下である。 【0013】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記シリコーンオイルの含有量が、0.10重量%以上2.00重量%以下である。 【0014】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記微粉末シリカが、親水性シリカを含む。 【0015】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記親水性シリカの含有量が、0.3重量%以上2.20重量%以下である。 【0016】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記微粉末シリカが、親水性シリカと疎水性シリカとを含む。 【0017】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記親水性シリカと前記疎水性シリカとの合算含有量が、1.40重量%以上4.0重量%以下である。 【0018】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、前記血清または血漿分離用組成物は、微粉末シリカとは異なる無機粉末を含む。 【0019】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、25℃での比重が、1.038以上1.095以下である。 【0020】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物のある特定の局面では、25℃での比重が、1.038以上1.050以下である。 【0021】 本発明の広い局面によれば、上述した血清または血漿分離用組成物が、血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.06以上1.095以下である、血漿分離用組成物が提供される。 【0022】 本発明の広い局面によれば、上述した血清または血漿分離用組成物が、血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物が提供される。 【0023】 本発明の広い局面によれば、血液採取容器本体と、上述した血清または血漿分離用組成物とを備え、前記血液採取容器本体内に、前記血清または血漿分離用組成物が収容されている、血液採取容器が提供される。 【0024】 本発明の広い局面によれば、血液採取容器本体と、上述した血漿分離用組成物とを備え、前記血液採取容器本体内に、前記血漿分離用組成物が収容されている、血液採取容器が提供される。 【0025】 本発明の広い局面によれば、上述した血液採取容器を用いた血清または血漿の分離方法であって、前記血液採取容器本体内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血清または血漿の分離方法が提供される。 【0026】 本発明の広い局面によれば、上述した血液採取容器を用いた血漿の分離方法であって、前記血液採取容器本体内に血液を採取する工程と、前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血漿の分離方法が提供される。 【発明の効果】 【0027】 本発明に係る血清または血漿分離用組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下である。本発明に係る血清または血漿分離用組成物では、上記の構成が備えられているので、滅菌時の発泡を抑制でき、かつ保存中の相分離の発生を抑制できる。 【発明を実施するための形態】 【0028】 以下、本発明を詳細に説明する。 【0029】 本発明の血清または血漿分離用組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下である。 【0030】 本発明の血清または血漿分離用組成物では、上記の構成が備えられているので、滅菌時の発泡を抑制でき、かつ保存中の相分離の発生を抑制できる。その結果、本発明の血清または血漿分離用組成物では、安定した血清または血漿分離性能を長期に渡って維持することができる。 【0031】 上記の特許文献1,2に記載のような従来の分離用組成物では、滅菌時の発泡及び保存中の相分離の発生を抑制することは困難である。本発明者らは、血清または血漿分離用組成物において、滅菌時の発泡及び保存中の相分離の発生を抑制することができる構成を見出した。また、本発明者らは、上記血清または血漿分離用組成物において、血液から白血球等の特定の血球成分を含む血漿を分離することができる構成も見出した。 【0032】 本発明の血清または血漿分離用組成物は、血液から血清または血漿を分離するために用いられる。本発明の血清または血漿分離用組成物は、血液から血清を分離するために用いられてもよく、血液から血漿を分離するために用いられてもよい。 【0033】 本明細書において、血液から血清を分離するために用いられる血清または血漿分離用組成物を、「血清分離用組成物」と記載することがあり、血液から血漿を分離するために用いられる血清または血漿分離用組成物を、「血漿分離用組成物」と記載することがある。 【0034】 したがって、本発明の血清または血漿分離用組成物は、血液から血清を分離するために用いられる場合には、血清分離用組成物であることが好ましく、血液から血漿を分離するために用いられる場合には、血漿分離用組成物であることが好ましい。上記血清または血漿分離用組成物では、血清と血餅、又は、血漿と血球成分とを分離することができる。 【0035】 本発明の血清または血漿分離用組成物は、比重を調整することにより、血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物としても用いることができる。上記白血球含有血漿とは、白血球(顆粒球及び単核球)を含む血漿である。 【0036】 本明細書において、血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる上記血漿分離用組成物を、「白血球含有血漿分離用組成物」と記載することがある。上記白血球含有分離用組成物は、血液から血漿を分離したときに、分離した血漿において、以下の(1A)と(2A)との双方を満足する。 【0037】 (1A)分離した血漿中に含まれる赤血球数の、分離前の血液中に含まれる赤血球数に対する割合(分離した血漿中に含まれる赤血球数/分離前の血液中に含まれる赤血球数×100)が10%以下である。 (2A)分離した血漿中に含まれる白血球数の、分離前の血液中に含まれる白血球数に対する割合(分離した血漿中に含まれる白血球数/分離前の血液中に含まれる白血球数×100)が25%以上である。 【0038】 したがって、上記血漿分離用組成物は、白血球含有血漿分離用組成物であることが好ましい。上記白血球含有血漿分離用組成物では、白血球含有血漿と赤血球とを分離することができる。 【0039】 本発明の血清または血漿分離用組成物は、比重を調整することにより、血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物としても用いることができる。上記単核球含有血漿とは、単核球(リンパ球及び単球)を含む血漿である。 【0040】 本明細書において、血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる上記血漿分離用組成物を、「単核球含有血漿分離用組成物」と記載することがある。上記単核球含有分離用組成物は、血液から血漿を分離したときに、分離した血漿において、以下の(1B)?(3B)の全ての条件を満足する。 【0041】 (1B)分離した血漿中に含まれる赤血球数の、分離前の血液中に含まれる赤血球数に対する割合(分離した血漿中に含まれる赤血球数/分離前の血液中に含まれる赤血球数×100)が10%以下である。 (2B)分離した血漿中に含まれる顆粒球数の、分離前の血液中に含まれる顆粒球数に対する割合(分離した血漿中に含まれる顆粒球数/分離前の血液中に含まれる顆粒球数×100)が50%以下である。 (3B)分離した血漿中に含まれる単核球数の、分離前の血液中に含まれる単核球数に対する割合(分離した血漿中に含まれる単核球数/分離前の血液中に含まれる単核球数×100)が50%以上である。 【0042】 したがって、上記血漿分離用組成物は、単核球含有血漿分離用組成物であることが好ましい。上記単核球含有血漿分離用組成物では、単核球含有血漿と赤血球及び顆粒球とを分離することができる。 【0043】 後述するように、特定の比重を有する上記血清または血漿分離用組成物が収容されている血液採取容器に血液を採取し、遠心分離することで、上記血清または血漿分離用組成物による隔壁が形成され、該隔壁の上方に血清又は血漿が分離される。上記白血球含有血漿分離用組成物又は上記単核球含有血漿組成物では、該隔壁の上方に白血球含有血漿又は単核球含有血漿が分離される。 【0044】 上記血清または血漿分離用組成物の25℃での比重は、例えば分離する血液成分の種類によって適宜調整することができる。上記血清または血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.038以上、より好ましくは1.040以上、好ましくは1.095以下、より好ましくは1.060以下、更に好ましくは1.050以下、特に好ましくは1.045以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。血液から血球成分の混入量の少ない血清または血漿を良好に分離する観点からは、上記血清または血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.038以上、より好ましくは1.040以上、好ましくは1.050以下、より好ましくは1.045以下である。 【0045】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記白血球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.095以下、より好ましくは1.085以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から白血球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ白血球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。例えば、血液中の各白血球成分の組成比率と同等の組成比率で白血球を回収することができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。 【0046】 本発明の血清または血漿分離用組成物が血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(単核球含有血漿分離用組成物)である場合に、上記単核球含有血漿分離用組成物の25℃での比重は、好ましくは1.060以上、より好ましくは1.070以上、好ましくは1.085以下、より好ましくは1.080以下である。上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、血液から単核球含有血漿を良好に分離することができ、赤血球の混入量が少なくかつ単核球の含有量が多い血漿を良好に得ることができる。また、上記比重が上記下限以上及び上記上限以下であると、低温下や、遠心力が低い場合でも、良好な強度を有する隔壁を形成することができる。また、上記比重が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をかなり抑えることができる。 【0047】 上記血清または血漿分離用組成物の25℃での比重は、血清または血漿分離用組成物1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により測定される。 【0048】 以下、本発明の血清または血漿分離用組成物に含まれる成分の詳細などを説明する。 【0049】 <(メタ)アクリル酸エステル系重合体> 本発明の血清または血漿分離用組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体を含む。本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸とメタクリル酸との一方又は双方を意味する。 【0050】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有する。本明細書において、「常温」とは、25℃の温度である。また、本明細書において、「常温で流動性を有する」とは、25℃において、粘度が10Pa・s以上500Pa・s以下であることを意味する。 【0051】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の25℃での粘度は、好ましくは30Pa・s以上、好ましくは200Pa・s以下、より好ましくは150Pa・s以下である。上記粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の流動性を良好にし、血清または血漿分離用組成物の流動性が高められ、隔壁の強度を高めることができる。 【0052】 上記25℃における粘度は、E型粘度計(例えば、東機産業社製「TVE-35」)を用いて、25℃及びせん断速度1.0秒^(-1)の条件で測定される。 【0053】 滅菌時の発泡を抑制する観点及び隔壁を良好に形成させる観点から、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、15000以上100000以下である。上記重量平均分子量が15000未満であると、滅菌時に発泡しやすい。上記重量平均分子量が100000を超えると、血清または血漿分離用組成物の粘度が高くなるため、隔壁を形成しないことがある。 【0054】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは19000以上、より好ましくは20000以上、好ましくは40000以下、より好ましくは30000以下である。上記重量平均分子量が上記下限以上であると、滅菌時の発泡をより一層抑制することができる。上記重量平均分子量が上記上限以下であると、血清または血漿分離用組成物の粘度をより一層良好にすることができ、隔壁をより一層良好に形成することができる。 【0055】 上記重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算での重量平均分子量を示す。 【0056】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体を重合することにより得られる。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体に由来する構造単位を有する。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体に由来する構造単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体の単独重合体であってもよく、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体の共重合体であってもよく、少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル単量体と(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体との共重合体であってもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0057】 上記(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、例えば、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ポリアルキレングリコールエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、(メタ)アクリル酸フェノキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸イソボルニルエステル、及び(メタ)アクリル酸アルコキシシリルアルキルエステル等が挙げられる。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0058】 上記(メタ)アクリル酸エステル単量体は、2種以上を用いることが好ましい。2種以上の(メタ)アクリル酸エステル単量体を用いた場合には、異なる分子構造を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有比率を調整することができるので、得られる(メタ)アクリル酸エステル系重合体の比重及び粘度を調整しやすい。 【0059】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、更に好ましくは70重量%以上である。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率の上限は特に限定されない。上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率は、100重量%(全量)であってもよく、100重量%未満であってもよく、90重量%以下であってもよく、80重量%以下であってもよい。上記(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が上記下限以上であると、血清または血漿分離用組成物の粘度をより一層良好にすることができ、隔壁の強度をより一層高めることができる。 【0060】 上記(メタ)アクリル酸エステル単量体以外の単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル単量体とラジカル共重合可能なラジカル重合性単量体等が挙げられる。 【0061】 上記ラジカル重合性単量体としては、例えば、芳香族系ビニル単量体、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、ビニルピロリドン、及び(メタ)アリルエーテル類等が挙げられる。上記ラジカル重合性単量体は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0062】 上記芳香族系ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、o-メトキシスチレン、2,4-ジメチルスチレン、クロロスチレン、及びブロモスチレン等が挙げられる。 【0063】 上記ビニルエステル類としては、例えば(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルジアルキルアミド、及び酢酸ビニル等が挙げられる。 【0064】 上記ラジカル重合性単量体は、上記芳香族系ビニル単量体であることが好ましい。上記芳香族系ビニル単量体は、比重が大きくかつ疎水性が高いので、血清または血漿分離用組成物の血清または血漿分離性能を維持しつつ、血中薬物の血清または血漿分離用組成物への吸着をより一層抑制することができる。さらに、上記芳香族ビニル系単量体と上記(メタ)アクリル酸エステル単量体との共重合により得られた共重合体では、上記芳香族ビニル系単量体に由来する構造を有さない(メタ)アクリル酸エステル系重合体と比較して、電子線やγ線による滅菌時に、分子鎖の再重合に伴う分子量増大が起こりにくい。このため、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の粘度を良好に維持することができる。 【0065】 血中薬物の血清または血漿分離用組成物への吸着を更により一層抑制する観点及び(メタ)アクリル酸エステル系重合体の粘度をより一層良好に維持する観点からは、上記芳香族系ビニル単量体は、スチレン又はα-メチルスチレンであることが好ましい。 【0066】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、通常のラジカル重合法により得ることができる。ラジカル重合法としては、溶液重合法、塊状重合法、分散重合法、及びリビングラジカル重合法等が挙げられる。 【0067】 上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の25℃での比重は、好ましくは1.030以上、好ましくは1.070以下、より好ましくは1.050以下、更に好ましくは1.035以下である。上記比重が上記上限以下であると、血清または血漿分離用組成物の比重が高くなりすぎず、隔壁を良好に形成できる。上記比重が上記下限以上であると、微粉末シリカを大量に添加することなく、血清または血漿分離用組成物の比重を良好に調整することができる。微粉末シリカを大量に添加すると、経時的な微粉末シリカ同士の凝集等によって血清または血漿分離用組成物の流動性が低下して、隔壁を良好に形成できなくなることがある。 【0068】 上記25℃での比重は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により測定される。 【0069】 <微粉末シリカ> 本発明の血清または血漿分離用組成物は、微粉末シリカを含む。微粉末シリカは二酸化ケイ素を主体とする粉末成分である。微粉末シリカは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0070】 微粉末シリカとしては、天然シリカ及び合成シリカが挙げられる。合成シリカとしては、親水性シリカ及び疎水性シリカが挙げられる。品質が安定していることから、微粉末シリカは、合成シリカであることが好ましく、気相法により作製された合成シリカであることがより好ましい。 【0071】 親水性シリカは、粒子表面の水酸基同士が水素結合することにより、血清または血漿分離用組成物にチクソトロピー性を付与すると共に、比重を調整する作用を有する。一方、疎水性シリカは、粒子表面の水酸基がメチルシラン等の疎水性基で置換されているために水素結合せず、単に比重を調整する作用のみを有する。 【0072】 血清または血漿分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方を共に好適な範囲に維持する観点からは、上記微粉末シリカは、親水性シリカを含むことが好ましい。 【0073】 血清または血漿分離用組成物100重量%中、親水性シリカの含有量は、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、更に好ましくは0.7重量%以上、好ましくは2.20重量%以下、より好ましくは2.00重量%以下である。上記親水性シリカの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血清または血漿分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方をより一層好適な範囲に維持することができる。 【0074】 上記親水性シリカのみで、血清または血漿分離用組成物の比重とチクソトロピー性との双方を共に好適な範囲に維持できない場合、血清または血漿分離用組成物のチクソトロピー性と比重とを好適な範囲に調整するために、血清または血漿分離用組成物は、親水性シリカに加え、疎水性シリカを含むことが好ましい。すなわち、血清または血漿分離用組成物は、親水性シリカと疎水性シリカとを含むことが好ましい。 【0075】 血清または血漿分離用組成物100重量%中、親水性シリカと疎水性シリカとの合算含有量(親水性シリカの含有量と疎水性シリカの含有量との総和)は、好ましくは1.40重量%以上、より好ましくは1.50重量%以上、好ましくは4.0重量%以下、より好ましくは3.5重量%以下、更に好ましくは2.50重量%以下、上記合算含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、血清または血漿分離用組成物の比重とチクソトロピー性とを良好にすることができる。上記合算含有量を上記の好ましい範囲内とするための方法としては、血清または血漿分離用組成物のチクソトロピー性が好適な範囲となるよう親水性シリカの含有量を定め、その含有量で血清または血漿分離用組成物の比重が好適な範囲を下回る場合に、不足する含有量に相当する疎水性シリカを更に含有させる方法が挙げられる。チクソトロピー性の評価方法として、種々の公知の方法が知られているが、血清または血漿分離用組成物におけるチクソトロピー性の評価では、後述する流れの評価が好適である。 【0076】 上記微粉末シリカの平均粒子径は、特に限定されない。上記微粉末シリカの平均粒子径は、1nm以上であってもよく、10nm以上であってもよく、500nm以下であってもよく、100nm以下であってもよい。 【0077】 上記微粉末シリカの平均粒子径は、体積基準で測定される平均径であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法、画像解析法、コールター法、及び遠心沈降法等により測定可能である。上記微粉末シリカの体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法又は画像解析法による測定により求めることが好ましい。 【0078】 上記親水性シリカの市販品としては、例えば、アエロジル(登録商標)90G、130、200、300、200CF、300CF等のアエロジルシリーズ(日本アエロジル社製)、レオロシール(登録商標)QS-10、QS-20、QS-30等のレオロシールシリーズ(トクヤマ社製)、WACKER HDK S13、N20、T30等のWACKER HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン社製)等が挙げられる。上記親水性シリカの市販品は、気相法により作製された親水性シリカであり、使用し易い。 【0079】 上記疎水性シリカの市販品としては、例えば、アエロジルR972、R974、R805、R812等のアエロジルシリーズ(日本アエロジル社製)、レオロシールMT-10、DM-30S、HM-30S、KS-20S、PM-20等のレオロシールシリーズ(トクヤマ社製)、WACKER HDK H15、H18、H30等のWACKER HDKシリーズ(旭化成ワッカーシリコーン社製)等が挙げられる。上記疎水性シリカの市販品は、気相法により作製された疎水性シリカであり、使用し易い。 【0080】 <シリコーンオイル> 本発明の血清または血漿分離用組成物は、シリコーンオイルを含む。血清または血漿分離用組成物がシリコーンオイルを含むことにより、チクソトロピー性及び微粉末シリカの分散性を良好にすることができ、また、相分離の発生を抑制できる。シリコーンオイルは、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0081】 上記シリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、メタクリレート変性シリコーンオイル、及びアルコキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。 【0082】 上記ジメチルシリコーンオイルの市販品としては、例えば、BY16-873、及びPRX413(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0083】 上記メチルフェニルシリコーンオイルの市販品としては、例えば、SH510-100CS、SH510-500CS、SH550、及びSH710(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0084】 上記メチルハイドロジェンシリコーンオイルの市販品としては、例えば、SH1107等(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0085】 上記アルキル変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、SH203、SH230、SF8416、及びBY16-846(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0086】 上記フッ素変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、FS1265-300CS、FS1265-1,000CS、及びFS1265-10,000CS(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0087】 上記ポリエーテル変性シリコーンオイルとしては、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン等が挙げられる。上記ポリエーテル変性シリコーンオイルの市販品として、例えば、BY16-201、SF8410、SF8427、SF8428、FZ-2162、SH3746、SH3749、FZ-77、L-7001、Y7006、FZ-2104、FZ-2110、SH8400、SH8410、SH3773M、FZ-2207、FZ-2203、FZ-2222、及びFZ-2208(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0088】 上記アミノ変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、BY16-871、BY16-853U、FZ-3705、SF8417、BY16-849、FZ-3785、BY16-890、BY16-208、BY16-893、FZ-3789、BY16-878、及びBY16-891(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0089】 上記エポキシ変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、BY16-855、SF8411、SF8413、BY16-839、SF8421(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0090】 上記カルボキシ変性シリコーンオイルの市販品としては、例えば、BY16-880(東レ・ダウコーニング社製)等が挙げられる。 【0091】 上記シリコーンオイルは、アルキル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロ変性シリコーンオイル、又はポリエーテル変性シリコーンオイルであることが好ましく、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサンであることがより好ましい。この場合には、チクソトロピー性及び微粉末シリカの分散性をより一層良好にし、また相分離の発生をより一層抑制することができる。 【0092】 上記シリコーンオイルのHLB(Hydrophilc Lipophilc Balance)値は、好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは4以上、特に好ましくは5.5以上、最も好ましくは6以上、好ましくは10以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは7.5以下、特に好ましくは7以下である。上記HLB値が上記下限以上であると、チクソトロピー性を良好にすることができ、血液採取容器の保管時に血清または血漿分離用組成物が流れにくい。上記HLB値が上記上限以下であると、相分離の発生をより一層抑制できる。 【0093】 上記HLB値は、デイビス法によるHLB値を表す。HLB値は、0以上20以下の値をとり、HLB値が小さいほど疎水性(親油性)が強く、HLB値が大きいほど親水性が強い。デイビス法によるHLB値は、下記式により算出される。 【0094】 <HLB値=7+親水基の基数の総和-親油基の基数の総和> なお、基数とは各官能基に定められている固有の数値である。 【0095】 血清または血漿分離用組成物100重量%中、上記シリコーンオイルの含有量は、好ましくは0.10重量%以上、より好ましくは0.15重量%以上、好ましくは2.00重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下である。上記シリコーンオイルの含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、相分離の発生をより一層抑制できる。 【0096】 <無機粉末> 本発明の血清または血漿分離用組成物は、微粉末シリカとは異なる無機粉末を含んでいてもよい。本発明の血清または血漿分離用組成物が、血液から白血球含有血漿又は単核球含有血漿の分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物又は単核球含有血漿分離用組成物)である場合には、上記血漿分離用組成物は、上記無機粉末を含むことが好ましい。上記無機粉末は、比重調整成分として用いられる。上記無機粉末は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0097】 上記無機粉末としては、酸化チタン粉末、酸化亜鉛粉末、アルミナ粉末、ガラス微粉末、タルク粉末、カオリン粉末、ベントナイト粉末、チタニア粉末、及びジルコニウム粉末等が挙げられる。 【0098】 チクソトロピー性と比重とを好適な範囲に維持する観点からは、上記無機粉末は、酸化チタン粉末、又は酸化亜鉛粉末であることが好ましい。 【0099】 上記無機粉末の比重は、上記微粉末シリカの比重よりも大きいことが好ましく、上記微粉末シリカの比重よりも1以上で大きいことが好ましく、2以上で大きいことが好ましい。この場合には、上記血漿分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができるので、白血球含有血漿分離用組成物及び単核球含有血漿分離用組成物として好適に用いることができる。 【0100】 上記無機粉末の比重は、好ましくは3以上、より好ましくは4以上である。上記無機粉末の比重は大きいほどよい。上記比重が上記下限以上であると、上記血漿分離用組成物の比重を効果的に大きくすることができるので、白血球含有血漿分離用組成物及び単核球含有血漿分離用組成物として好適に用いることができる。 【0101】 上記無機粉末の平均粒子径は、特に限定されない。上記無機粉末の平均粒子径は、10nm以上であってもよく、100nm以上であってもよく、10μm以下であってもよく、1μm以下であってもよい。 【0102】 上記無機粉末の平均粒子径は、体積基準で測定される平均径であり、50%となるメディアン径(D50)の値である。上記体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法、画像解析法、コールター法、及び遠心沈降法等により測定可能である。上記無機粉末の体積平均粒子径(D50)は、レーザー回折・散乱法又は画像解析法による測定により求めることが好ましい。 【0103】 本発明の血清または血漿分離用組成物が白血球含有血漿分離用組成物又は単核球含有血漿分離用組成物である場合に、以下を満足することが好ましい。すなわち、上記白血球含有血漿分離用組成物100重量%中又は上記単核球含有血漿分離用組成物100重量%中、上記無機粉末の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、更に好ましくは1重量%以上、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下である。上記無機粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、本発明の効果をより一層効果的に発揮することができる。また、上記無機粉末の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、白血球含有血漿分離用組成物及び単核球含有血漿分離用組成物として好適に用いることができる。 【0104】 <他の成分> 本発明の血清または血漿分離用組成物は、本発明の効果を損なわない限り、上述した成分以外の他の成分を含んでいてもよい。本発明の血清または血漿分離用組成物は、例えば、上記他の成分として、酸化防止剤、及び着色剤等を含んでいてもよい。上記他の成分はそれぞれ、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。 【0105】 <血清または血漿分離用組成物の製造方法> 本発明の血清または血漿分離用組成物の製造方法は特に限定されない。上記血清または血漿分離用組成物は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルと、必要に応じて配合される無機粉末及び他の成分とを混合することにより製造することができる。混合方法については特に限定されず、プラネタリミキサー、ボールミル、ディスパーなどの公知の混練機により混合してよい。 【0106】 チクソトロピー性及び微粉末シリカの分散性をより良好にする観点からは、上記血清または血漿分離用組成物は、(メタ)アクリル酸エステル系重合体と微粉末シリカと必要に応じて配合される無機粉末とを混合した後、得られた混合液にシリコーンオイルと、必要に応じて配合される他の成分とを添加し、更に混合して製造することが好ましい。 【0107】 <血液採取容器> 本発明の血液採取容器は、血液採取容器本体と、上記血清または血漿分離用組成物とを備え、上記血液採取容器本体内に、上記血清または血漿分離用組成物が収容されている。 【0108】 上記血清または血漿分離用組成物が血液から白血球含有血漿又は単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物又は単核球含有血漿分離用組成物)である場合には、本発明の血液採取容器は、血液採取容器本体と、該血漿分離用組成物とを備える。上記血液採取容器本体内に、該血漿分離用組成物が収容されている。 【0109】 上記血液採取容器本体の素材としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、アクリロニトリル-スチレン共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等の熱可塑性樹脂;不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシ-アクリレート樹脂等の熱硬化性樹脂;酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、エチルキチン等の変性天然樹脂;ソーダ石灰ガラス、リンケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩、石英ガラス等のガラスや、これらを組み合わせたもの、あるいはこれらを主成分とするもの等の公知の素材が挙げられる。 【0110】 血液採取容器本体は栓体、又はアルミシール等の密閉部材で密閉されていてもよい。 【0111】 上記血液採取容器の内圧は特に限定されない。上記血液採取容器は、内部が排気された上で、上記密閉部材によって密閉された真空採血管として用いることもできる。真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液採取を簡便に行うことができる。 【0112】 細菌感染を防止する観点から、血液採取容器の内部はISO、及びJISの基準に則って滅菌されていることが好ましい。 【0113】 上記血液採取容器本体の内壁には、血餅付着防止、又は血液凝固促進等の目的に応じて、血餅付着防止成分、及び血液凝固促進剤等の公知の薬剤を付着させてもよい。 【0114】 血液から血漿を分離するために、上記血液採取容器を用いる場合には、上記血液採取容器本体内には、抗凝固剤が収容されていることが好ましい。この場合に、上記抗凝固剤を、上記血液採取容器本体の内壁に付着させていてもよい。なお、上記抗凝固剤は、採取した上記血液に添加されていてもよい。上記抗凝固剤としては、ヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びクエン酸等が挙げられる。 【0115】 血液から血清を分離するために、上記血液採取容器を用いる場合には、上記血液採取容器本体内には、上記抗凝固剤が収容されていないことが好ましい。 【0116】 <血清または血漿の分離方法> 本発明の血清または血漿の分離方法は、上述した血液採取容器を用いた血清または血漿の分離方法である。本発明の血清または血漿の分離方法は、上述した血液採取容器本体内に血液を採取する工程(血液採取工程)と、上記血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離する工程(遠心分離工程)とを備えることが好ましい。 【0117】 上記血清または血漿の分離方法は、血液から血清を分離する方法(血清の分離方法)であってもよく、血液から血漿を分離する方法(血漿の分離方法)であってもよい。上記血液から血漿を分離する方法は、血液から白血球含有血漿を分離する方法(白血球含有血漿の分離方法)であってもよく、血液から単核球含有血漿を分離する方法(単核球含有血漿の分離方法)であってもよい。 【0118】 したがって、上記血清または血漿分離用組成物が血液から白血球含有血漿又は単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物(白血球含有血漿分離用組成物又は単核球含有血漿分離用組成物)である場合には、上記血漿の分離方法は、以下の構成を備えることが好ましい。白血球含有血漿分離用組成物又は単核球含有血漿分離用組成物である血漿分離用組成物が収容された血液採取容器本体内に血液を採取する工程(血液採取工程)と、上記血液が採取された上記血液採取容器を遠心分離する工程(遠心分離工程)。 【0119】 本発明の血清または血漿の分離方法では、簡便かつ高い回収率で血液から血清または特定の血漿を分離して回収することができる。本発明の血清または血漿の分離方法では、分離された血清、血漿、白血球含有血漿及び単核球含有血漿において、特に赤血球の混入量を効果的に少なくすることができる。また、上記白血球含有血漿の分離方法及び上記単核球含有血漿の分離方法では、白血球及び単核球等の損傷を抑えることができる。 【0120】 血清の分離方法: 上記血清の分離方法では、上記血液採取容器本体内に収容されている血清または血漿分離用組成物として、上述した血清分離用組成物が用いられる。 【0121】 上記血清の分離方法における遠心分離条件は、上記血清分離用組成物により隔壁を形成させて、血餅と血清とを分離させることができる限り、特に限定されない。上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下で遠心分離する条件等が挙げられる。上記遠心分離工程において、上記血清分離用組成物により形成された隔壁よりも下方に血餅が位置し、上方に血清が位置する。 【0122】 血漿の分離方法: 上記血漿の分離方法では、上記血液採取容器本体内に収容されている血清または血漿分離用組成物として、上述した血漿分離用組成物が用いられる。上記血液採取工程において、上記血液採取容器本体内に上記抗凝固剤が収容されているか、又は、上記血液採取容器本体内に上記抗凝固剤が添加された血液が採取されることが好ましい。なお、上記血漿分離用組成物として白血球含有血漿分離用組成物を用いる場合には、白血球含有血漿を分離することができ、上記血漿分離用組成物として単核球含有血漿分離用組成物を用いる場合には、単核球含有血漿を分離することができる。 【0123】 上記血漿の分離方法における遠心分離条件は、上記血漿分離用組成物により隔壁を形成させて、血球成分と血漿とを分離させることができる限り、特に限定されない。上記遠心分離条件としては、例えば、400G以上4000G以下で10分間以上120分間以下で遠心分離する条件等が挙げられる。上記遠心分離工程において、上記血漿分離用組成物により形成された隔壁よりも下方に血球成分が位置し、上方に血漿が位置する。なお、上記血漿分離用組成物として上記白血球含有血漿分離用組成物を用いる場合には、上記遠心分離工程において、上記白血球含有血漿分離用組成物により形成された隔壁よりも下方に赤血球を含む血球成分が位置し、上方に白血球含有血漿が位置する。また、上記血漿分離用組成物として上記単核球含有血漿分離用組成物を用いる場合には、上記遠心分離工程において、上記単核球含有血漿分離用組成物により形成された隔壁よりも下方に赤血球及び顆粒球を含む血球成分が位置し、上方に単核球含有血漿が位置する。 【0124】 上記血漿、上記赤血球、上記白血球、上記顆粒球、及び上記単核球の比重は、一般に、以下の通りである。 血漿の比重:1.025?1.030 赤血球の比重:1.090?1.120 白血球の比重:1.055?1.110 顆粒球の比重:1.070?1.110 単核球の比重:1.055?1.080 【0125】 以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。 【0126】 血清または血漿分離用組成物の材料として、以下を用意した。 【0127】 <微粉末シリカ> 親水性シリカ(日本アエロジル社製、商品名「200CF」、比重2.2) 疎水性シリカ(日本アエロジル社製、商品名「R974」、比重2.2) 【0128】 <シリコーンオイル> ポリエーテル変性シリコーンオイル1(東レ・ダウコーニング社製、商品名「FZ-2110」、HLB値0、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン) ポリエーテル変性シリコーンオイル2(東レ・ダウコーニング社製、商品名「Y7006」、HLB値2、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン) ポリエーテル変性シリコーンオイル3(東レ・ダウコーニング社製、商品名「FZ-2222」、HLB値4、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン) ポリエーテル変性シリコーンオイル4(東レ・ダウコーニング社製、商品名「L-7001」、HLB値5、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン) ポリエーテル変性シリコーンオイル5(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SF8410」、HLB値6、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン) ポリエーテル変性シリコーンオイル6(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SH8400」、HLB値8、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン) ポリエーテル変性シリコーンオイル7(東レ・ダウコーニング社製、商品名「SH3746」、HLB値16、ポリエーテル変性ポリアルキルシロキサン) 【0129】 <ポリオール> ポリオール1(三洋化成工業社製、商品名「ニューポールPE-71」、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール) ポリオール2(日油社製、商品名「プレミノールS3011」、ポリオキシプロピレングリセリルエーテル) 【0130】 <無機粉末> 酸化チタン粉末(石原産業社製、商品名「A-100」、比重4) 酸化亜鉛粉末(ハクスイテック社製、商品名「Zncox Super F-2」、比重5.6) 【0131】 (実施例1) (メタ)アクリル酸エステル系重合体の作製: アクリル酸-2-エチルヘキシルとアクリル酸ブチルとをアゾ系重合開始剤の存在下で溶液重合法によりラジカル重合させ、常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体を得た。得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表1に示す。なお、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重は上述した方法により測定した。 【0132】 血清または血漿分離用組成物の作製: 表1に記載の配合割合で、得られた(メタ)アクリル酸エステル系重合体と親水性シリカと疎水性シリカとを混合し、得られた混合液に、ポリエーテル変性シリコーンオイルを添加し、更に混合することにより、血清または血漿分離用組成物を作製した。 【0133】 (実施例2?4及び比較例1?3) 常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、血清または血漿分離用組成物を作製した。 【0134】 (実施例5?25及び比較例4?6) 常温で流動性を有する(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量、25℃での粘度、及び25℃での比重を表2,3のように変更したこと、並びに、配合成分の種類及び配合量を表2,3のように変更したこと以外は実施例1と同様にして、血清または血漿分離用組成物を作製した。 【0135】 実施例1?25で得られた血清または血漿分離用組成物は、血液から血清または血漿を分離する性能を有していた。 【0136】 (評価) 実施例1?4及び比較例1?3で得られた血清または血漿分離用組成物では、以下の(1)発泡率の評価を行った。実施例5?18及び比較例4?6で得られた血清または血漿分離用組成物では、以下の(2)比重、(3)流れ(L値)、(4)相分離の評価を行った。実施例19?25で得られた血漿分離用組成物では、以下の(2)比重、(5)血球成分含有血漿の回収の評価を行った。 【0137】 <(1)発泡率> 得られた血清または血漿分離用組成物1.0gを、長さ100mm、開口部の内径14mmのPET有底管(血液採取容器本体)内に収容し、血液採取容器内部を5kPaに減圧し、ブチルゴム栓により密封して血液採取容器を作製した。なお、血液採取容器をそれぞれ80本作製した。これらの血液採取容器それぞれに、10kGyの線量で電子線を照射した。電子線照射直後の血清または血漿分離用組成物を目視で観察し、下記式にて発泡率を算出した。 【0138】 発泡率(%)=(血清または血漿分離用組成物が発泡した血液採取容器の本数)/(電子線を照射した血液採取容器の本数)×100 【0139】 <(2)比重> 得られた血清または血漿分離用組成物1滴を、比重を0.002の間隔で段階的に調整した25℃の食塩水中に順次滴下し、食塩水中における浮沈により比重を測定した。 【0140】 <(3)流れ(L値)> 得られた血清または血漿分離用組成物1.0gを、内径14mm、長さ100mmの透明なPET有底管(血液採取容器本体)の底部に収容し、ブチルゴム栓により栓をして血液採取容器を作製した。続いて、45°の角度を有するアングルローターを用いて3000rpm、5分間、遠心操作を行い、上記PET有底管の長軸方向に対して、血清または血漿分離用組成物の液面が約45°の角度を有する状態に調整した。次いで、PET有底管の管口側を下方にし、かつ血清または血漿分離用組成物の液面が水平に対し約90°の角度となるように血液採取容器をラックに固定した。この保持状態で35℃に保温したオーブン中に5日間静置した。静置前の血清または血漿分離用組成物の液面の上端部の位置と、静置後の血清または血漿分離用組成物の液面の上端部の位置とを比較することにより、静置前後で、血清または血漿分離用組成物が血液採取容器本体の内壁に沿って下方に流れた距離を、ノギスを用いて測定した。 【0141】 <(4)相分離> 得られた血清または血漿分離用組成物1.0gを、内径14mm、長さ100mmの透明なPET有底管(血液採取容器本体)の底部に収容し、ブチルゴム栓により栓をして血液採取容器を作製した。続いて、45°の角度を有するアングルローターを用いて3000rpm、5分間、遠心操作を行い、上記PET有底管の長軸方向に対して、血清または血漿分離用組成物の液面が約45°の角度を有する状態に調整した。次いで、PET有底管の管口側を下方にし、かつ血清または血漿分離用組成物の液面が水平に対し約90°の角度となるように血液採取容器をラックに固定した。この保持状態で35℃に保温したオーブン中に10日間静置した。静置前後で、血清または血漿分離用組成物から滲み出た成分が血液採取容器の内壁に沿って下方に流れた距離を、ノギスを用いて測定した。 【0142】 <(5)血球成分含有血漿の回収> 血液採取容器の作製: 長さ100mm、開口部の内径14mmのPET有底管(血液採取容器本体)を用意した。得られた血漿分離用組成物1.0gを、上記血液採取容器本体内に収容した。また、上記血液採取容器本体の内壁に、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)を付着させ、血液採取容器内部を5kPaに減圧し、ブチルゴム栓により密封した。このようにして、血液採取容器本体内に血漿分離用組成物が収容されている血液採取容器を作製した。 【0143】 3名の血液を用意し、以下の工程を順に行った。 【0144】 血液採取工程: 得られた血液採取容器の上記血液採取容器本体内に血液4mLを採取した。 【0145】 遠心分離工程: 血液採取容器を1500Gで30分間遠心分離した。遠心分離後、上記血漿分離用組成物により形成された隔壁上に位置する血球成分を、該血球成分よりも上方に位置する血漿で縣濁し、血球成分を含む血漿を回収した。 【0146】 多項目自動血球分析装置(シスメックス社製「XE5000」)を用いて、回収液を分析することにより、分離した血漿中の血球成分(赤血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、及び単球)の細胞数を測定した。また、用意した血液(全血サンプル)についても、同様にして、全血サンプル中の血球成分(赤血球、好中球、好酸球、好塩基球、リンパ球、及び単球)の細胞数を測定した。なお、上記血球成分の濃度はそれぞれ用意した3名の血液で評価して得られた結果の平均値である。 【0147】 実施例19?22で得られた血漿分離用組成物では、下記式により、赤血球の除去率、白血球の回収率、顆粒球の除去率、及び単核球の回収率をそれぞれ算出し、また、下記の判定基準により白血球の回収を評価した。実施例23?25で得られた血漿分離用組成物では、下記の判定基準により白血球の回収を評価した。 【0148】 赤血球の除去率(%)=100-[(分離した血漿中に含まれる赤血球の数(個))/(全血サンプルに含まれる赤血球の数(個))×100)] 【0149】 白血球の回収率(%)=(分離した血漿中に含まれる白血球の数(個))/(全血サンプルに含まれる白血球の数(個))×100 【0150】 顆粒球の除去率(%)=100-[(分離した血漿中に含まれる顆粒球の数(個))/(全血サンプルに含まれる顆粒球の数(個))×100)] 【0151】 単核球の回収率(%)=(分離した血漿中に含まれる単核球の数(個))/(全血サンプルに含まれる単核球の数(個))×100 【0152】 [白血球の回収の判定基準] ○:分離した血漿中に含まれる赤血球数の、分離前の全血中に含まれる赤血球数に対する割合が10%以下であり、かつ、分離した血漿中に含まれる白血球数の、分離前の全血中に含まれる白血球数に対する割合が25%以上 ×:分離した血漿中に含まれる赤血球数の、分離前の全血中に含まれる赤血球数に対する割合が10%を超える、又は、分離した血漿中に含まれる白血球数の、分離前の全血中に含まれる白血球数に対する割合が25%未満 【0153】 組成及び結果を下記の表1?3に示す。 【0154】 【表1】 ![]() 【0155】 【表2】 ![]() 【0156】 【表3】 ![]() 【0157】 表1から明らかなように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が15000以上である場合には、滅菌時の発泡が効果的に抑制されている。 【0158】 表2から明らかなように、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、微粉末シリカ、シリコーンオイルの全てが含まれている場合には、血清または血漿分離用組成物の相分離が効果的に抑制されている。特に、シリコーンオイルのHLBが1以上10以下であると、血清または血漿分離用組成物の相分離がより効果的に抑制されている。また、シリコーンオイルの含有量が0.10重量%以上2.00重量%以下であると、血清または血漿分離用組成物の相分離が更に効果的に抑制されている。 【0159】 表3から明らかなように、血漿分離用組成物の比重を調整することにより、赤血球を除去することができかつ白血球を回収することができている。また、実施例19,20では、赤血球及び顆粒球を除去することができ、かつ、単核球を回収することができている。 【0160】 なお、実施例1?4で得られた血清または血漿分離用組成物では、相分離の発生が抑えられていた。また、実施例5?18で得られた血清または血漿分離用組成物では、上記(メタ)アクリル酸エステル系重合体の重量平均分子量が15000以上であり、滅菌時の発泡が抑えられていた。また、実施例19?25で得られた血漿分離用組成物では、滅菌時の発泡及び相分離の発生が抑えられていた。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、 血液から白血球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、 25℃での比重が、1.060以上1.095以下である、血漿分離用組成物。 【請求項2】 前記シリコーンオイルがポリエーテル変性ポリアルキルシロキサンである、請求項1に記載の血漿分離用組成物。 【請求項3】 前記シリコーンオイルのHLB値が、1以上10以下である、請求項1又は2に記載の血漿分離用組成物。 【請求項4】 前記シリコーンオイルの含有量が、0.10重量%以上2.00重量%以下である、請求項1?3のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。 【請求項5】 前記微粉末シリカが、親水性シリカを含む、請求項1?4のいずれかの1項に記載の血漿分離用組成物。 【請求項6】 前記親水性シリカの含有量が、0.3重量%以上2.20重量%以下である、請求項5に記載の血漿分離用組成物。 【請求項7】 前記微粉末シリカが、親水性シリカと疎水性シリカとを含む、請求項5又は6に記載の血漿分離用組成物。 【請求項8】 前記親水性シリカと前記疎水性シリカとの合算含有量が、1.40重量%以上4.0重量%以下である、請求項7に記載の血漿分離用組成物。 【請求項9】 微粉末シリカとは異なる無機粉末を含み、 前記無機粉末の比重が、3以上である、請求項1?8のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。 【請求項10】(削除) 【請求項11】(削除) 【請求項12】(削除) 【請求項13】 (メタ)アクリル酸エステル系重合体と、微粉末シリカと、シリコーンオイルとを含み、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体は、常温で流動性を有し、かつ重量平均分子量が15000以上100000以下であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル系重合体100重量%中、(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有率が、70重量%以上であり、 前記(メタ)アクリル酸エステル単量体が、炭素数が1以上20以下であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、 血液から単核球含有血漿を分離するために用いられる血漿分離用組成物であり、 25℃での比重が、1.060以上1.085以下である、血漿分離用組成物。 【請求項14】(削除) 【請求項15】 血液採取容器本体と、 請求項1?9のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物とを備え、 前記血液採取容器本体内に、前記血漿分離用組成物が収容されている、血液採取容器。 【請求項16】(削除) 【請求項17】 請求項15に記載の血液採取容器を用いた血漿の分離方法であって、 前記血液採取容器本体内に血液を採取する工程と、 前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血漿の分離方法。 【請求項18】 前記シリコーンオイルがポリエーテル変性ポリアルキルシロキサンである、請求項13に記載の血漿分離用組成物。 【請求項19】 前記シリコーンオイルのHLB値が、1以上10以下である、請求項13又は18に記載の血漿分離用組成物。 【請求項20】 前記シリコーンオイルの含有量が、0.10重量%以上2.00重量%以下である、請求項13、18及び19のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。 【請求項21】 前記微粉末シリカが、親水性シリカを含む、請求項13及び18?20のいずれかの1項に記載の血漿分離用組成物。 【請求項22】 前記親水性シリカの含有量が、0.3重量%以上2.20重量%以下である、請求項21に記載の血漿分離用組成物。 【請求項23】 前記微粉末シリカが、親水性シリカと疎水性シリカとを含む、請求項21又は22に記載の血漿分離用組成物。 【請求項24】 前記親水性シリカと前記疎水性シリカとの合算含有量が、1.40重量%以上4.0重量%以下である、請求項23に記載の血漿分離用組成物。 【請求項25】 微粉末シリカとは異なる無機粉末を含み、 前記無機粉末の比重が、3以上である、請求項13及び18?24のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物。 【請求項26】 血液採取容器本体と、 請求項13及び18?25のいずれか1項に記載の血漿分離用組成物とを備え、 前記血液採取容器本体内に、前記血漿分離用組成物が収容されている、血液採取容器。 【請求項27】 請求項26に記載の血液採取容器を用いた血漿の分離方法であって、 前記血液採取容器本体内に血液を採取する工程と、 前記血液が採取された前記血液採取容器を遠心分離する工程とを備える、血漿の分離方法。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2020-11-11 |
出願番号 | 特願2019-520471(P2019-520471) |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(G01N)
P 1 651・ 536- YAA (G01N) P 1 651・ 121- YAA (G01N) P 1 651・ 537- YAA (G01N) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 西浦 昌哉 |
特許庁審判長 |
福島 浩司 |
特許庁審判官 |
三崎 仁 伊藤 幸仙 |
登録日 | 2019-10-04 |
登録番号 | 特許第6595743号(P6595743) |
権利者 | 積水メディカル株式会社 徳山積水工業株式会社 |
発明の名称 | 血漿分離用組成物、血液採取容器、及び血漿の分離方法 |
代理人 | 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所 |
代理人 | 吉田 環 |
代理人 | 特許業務法人宮▲崎▼・目次特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 宮▲崎▼・目次特許事務所 |