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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A61B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61B
管理番号 1370011
異議申立番号 異議2019-700638  
総通号数 254 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2019-08-09 
確定日 2020-12-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第6471227号発明「磁気共鳴画像法用途のためのナノ粒子」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6471227号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕及び〔6-10〕について訂正することを認める。 特許第6471227号の請求項1、2、6、7に係る特許を維持する。 特許第6471227号の請求項3-5及び8-10に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第6471227号の請求項1?10に係る特許についての出願は、平成27年9月10日に出願され、平成31年1月25日にその特許権の設定登録がされ、同年2月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和元年8月9日に特許異議申立人 白井 雅恵(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、令和元年10月24日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である令和2年1月28日に意見書の提出及び訂正の請求を行い、その訂正の請求に対して、申立人は、同年3月9日に意見書を提出した。当審は、同年3月27日付けで取消理由(決定の予告)を通知し、同年8月27日に特許権者より意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)がされ、同年9月2日付けでその訂正の請求を申立人に通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人からは何ら応答がなかったものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「該ナノ粒子の無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、
該ナノ粒子が、5nm未満の流体力学的直径を有し、かつ
該ナノ粒子が、超常磁性である、」
と記載されているのを、
「該ナノ粒子の無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、
該ナノ粒子が、5nm未満の流体力学的直径を有し、
該ナノ粒子が、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ
該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDsリガンドを含む」
に訂正する。
そして、請求項1に係る発明を引用する請求項2?5に係る発明も同様に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3?5を削除する。

(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項6に
「該ナノ粒子が、2.5?4nmの無機コアを有し、5nm未満の流体力学的直径を有し、かつ超常磁性である、」
と記載されているのを、
「該ナノ粒子が、2.5?4nmの無機コアを有し、5nm未満の流体力学的直径を有し、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDsリガンドを含む」
に訂正する。
そして、請求項6に係る発明を引用する請求項7?10に係る発明も同様に訂正する。

(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項8?10を削除する。

なお、訂正前の請求項1?5は、請求項2?5が訂正の対象である請求項1を引用するものであるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
また、訂正前の請求項6?10は、請求項7?10が訂正の対象である請求項6を引用するものであるから、訂正前において一群の請求項に該当するものである。
したがって、上記訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び3について
訂正事項1及び3は、訂正前の請求項1及び6に係る発明の「該ナノ粒子」が、「超常磁性である」ことを特定していたところ、訂正後の「該ナノ粒子」が、「超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDsリガンドを含む」ものである旨限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的としている。
また、本願明細書の発明の詳細な説明には、(下線は、当審にて付した。以下同様。)

「【0012】
ある実施態様において、前記無機コアは、2.5?3.5nmのサイズを有し得る。前記ナノ粒子の表面は、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンドを含み得る。前記ナノ粒子の表面は、ドーパミンスルフォネート(「DS」)リガンドを含み得る。前記ナノ粒子は、酸化鉄を含み得る。」

「 【0017】
r_(2)/r_(1)比は、造影剤の評価において重要な値である。すなわち、低い(高い)r_(2)/r_(1)比は、良好なT_(1)(T_(2))強調MR画像をもたらす。r_(2)は、飽和磁化(「M_(s)」)及び流体力学的直径(「HD」)の増加とともに増大し得る。故に、高品質のT_(1)強調MRIのために低いr_(2)/r_(1)比を達成するには、磁性コアは、低いM_(s)を確保するために小さい必要があり、かつシェルを被覆するリガンドは、小さいr_(2)のためには、薄いものである必要がある。疎水性及び親水性のGd系キレート及び酸化ガドリニウムナノ粒子は、診療所においてT_(1)造影剤として用い得るとともに、これらの高いr_(1)及び低いr_(2)(すなわち、低いr_(2)/r_(1)比)のために、高いT_(1)コントラストを有し得る。しかしながら、最近、Gd系化合物が、高齢の成人及び腎機能が不十分な患者に対する長期的かつ重篤な毒性を示した。例えば、それぞれその全体が引用により組み込まれる、Bruns, O. T.らの文献(Nature Nanotechnology 2009, 4, 193);Penfield, J. G.らの文献(Nat. Clin. Pract. Nephrol. 2007, 3, 654)を参照されたい。これらの症例において、ガドリニウムは、腎性全身性線維症と関連付けられている。例えば、その全体が、引用により組み込まれている、Bennett, Charles L.;らの文献(Clin Kidney J 2012, 5, 82 82)を参照されたい。また、このガドリニウムの高い毒性は、それを、造影剤が人体に延長された期間残存するインビボでの特異的ターゲティングに用いることを不可能とする。r_(2)/r_(1)比及び毒性が無いことに加えて、腎クリアランスもまた、臨床的使用において造影剤の利益となり得る重要な性質である。造影剤の腎クリアランスは、迅速な尿中排泄を可能とし得るために、造影剤への人体の曝露の最小化及び非特異的造影剤としてのより効率的なインビボでの特異的ターゲティングを可能とすることがクリアされる。」

「 【0019】
超常磁性酸化鉄ナノ粒子(SPION)は、そのサイズが、数ナノメートルから数十ナノメートルである単一ドメイン磁性酸化鉄粒子である。例えば、それぞれその全体が、引用により組み込まれている、Harisinghani, M. G.; Barentsz, J.; Hahn, P. F.; Deserno, W. M.; Tabatabaei, S.; van de Kaa, C. H.; de la Rosette, J.; Weissleder, R.の文献(New Engl. J. Med. 2003, 348, 2491); Hyeon, T.; Lee, S. S.; Park, J.; Chung, Y.; Bin Na, H.の文献(J. Am. Chem. Soc. 2001, 123, 12798); Jun, Y. W.; Lee, J. H.; Cheon, J.の文献(Angewandte Chemie-International Edition 2008, 47, 5122)を参照されたい。酸化鉄磁性ナノ粒子(例えば、マグネタイト及びマグヘマイト)は、合成における単分散性、有機溶媒及び水性媒体に対する優れた安定性、高い飽和磁気モーメント、及び生動物に対する明確な無毒性により知られている。例えば、その全体が、引用により組み込まれているLatham A. H.; Williams, M. E.の文献(Accounts of Chemical Research 2008, 41, 411)を参照されたい。その結果、酸化鉄ナノ粒子系のFeridex(商標)及びResovist(商標)は、双方とも、臨床的に承認された商業的に入手可能なT_(2)造影剤であり、Feraheme(商標)は、臨床的に承認された商業的に入手可能な鉄サプリメントである。従って、依然として、酸化鉄ナノ粒子系T_(1)造影剤の開発の必要性がある。3nmの無機コア直径及び15nmのHDを有し、かつ3Tでr_(2)/r_(1)=6.1であるポリエチレングリコール(PEG)により被覆された酸化鉄ナノ粒子を製造し得る。更に、4nmの無機コア直径及び7nmのHDを有し、かつ1.5Tでr_(2)/r_(1)=2.1であるクエン酸塩により被覆された超常磁性酸化鉄ナノ粒子(VSOP)を製造し得る。例えば、その全体が、引用により組み込まれているSchnorr, J.らの文献(Cardiac Magnetic Resonance 2012, 184, 105 105)を参照されたい。しかしながら、これらの酸化鉄ナノ粒子は、ナノ粒子が腎臓で除去される閾値である5.5nmを超えるHDを有している。例えば、その全体が、引用により組み込まれているChoi, H. S.; Liu, W.; Misra, P.; Tanaka, E.; Zimmer, J. P.; Kandapallil, B.; Bawendi, M. G.; Frangioni, J. V.の文献(Nature Biotechnology 2007, 25, 1165)を参照されたい。
【0020】
酸化鉄は、ガドリニウム系又はマンガン系材料よりも生体適合性が高い。これは、これらの鉄の種が、ヒトの血液に豊富に存在するためである。理想的なT1造影剤は、高いr_(1)値及び低いr_(2)/r_(1)比を有することで、T1コントラスト効果を最大化するべきである。5つの不対電子を有する第二鉄(Fe^(3+))イオンは、r_(1)値を増加させるものの、固有の高い磁気モーメント由来の酸化鉄ナノ粒子の高いr_(2)が、それらのT1造影剤としての利用のための妨げとなる。この問題は、磁性ナノ粒子のサイズを減少させることにより解決し得る。磁性ナノ粒子の磁気モーメントは、サイズが減少するにつれて急速に減少する。この小サイズの酸化鉄ナノ粒子は、T1造影剤として用い得る。磁気共鳴画像法用のT1造影剤は、その無機コアが2?4nmのサイズを有し、5nm未満の流体力学的直径を有し、かつ磁性を有するナノ粒子を含み得る。」

旨記載されていることから、これら訂正は、新たな技術的事項を導入するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2及び4について
訂正事項2及び4は、いずれも特許請求の範囲の請求項3?5及び8?10を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、これらの訂正が、新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないことは明らかである。

3 小括
したがって、上記の訂正請求による訂正事項1?4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕、〔6-10〕について訂正することを認める。


第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1?10に係る発明(以下「本件発明1?10」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1?10に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「 【請求項1】
ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤であって、
該ナノ粒子の無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、
該ナノ粒子が、5nm未満の流体力学的直径を有し、
該ナノ粒子が、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ
該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む、
前記T1造影剤。
【請求項2】
前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する、請求項1記載のT1造影剤。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のための方法であって、
ナノ粒子を含むT1造影剤が導入された対象の画像信号を生成することであって、該ナノ粒子が、2.5?4nmの無機コアを有し、5nm未満の流体力学的直径を有し、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む、前記方法。
【請求項7】
前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)」

第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1?4及び6?9に係る特許に対して、当審が令和2年3月27日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
(1)訂正前の請求項1?4及び6?9に係る発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、または、引用文献1に記載された発明より当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)訂正前の請求項1、2、6及び7は、引用文献2または3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、同法第29条第1項の規定に違反してされたものであるか、または、引用文献2または3に記載された発明より当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

引用文献1:Zhou et al., Engineered Iron-Oxide-Based Nanoparticles as Enhanced T_(1) Contrast Agents for Efficient Tumor Imaging, ACS Nano, vol. 7, no. 4, pp. 3287-3296(甲1号証)
引用文献2:国際公開第2013/019090号(甲4号証)
引用文献3:国際公開第2012/018240号(甲5号証)
引用文献4:古林孝夫 他、「微粒子の磁性?超常磁性と粒子問相互作用?」、まてりあ、公益社団法人 日本金属学会、1999年8月20日発行、第38巻、第8号、638-644頁(甲3号証)

2 引用文献の記載
(1)引用文献1について
ア 引用文献1に記載された事項
取消理由通知において引用した引用文献1には以下の事項が記載されている。

(引1a)「The design and synthesis of various types of magnetic nanomaterials have attracted tremendous research interest in the areas of magnetic separation, drug delivery, and contrast agents for magnetic resonance imaging (MRI) in biomedical and clinical applications.^(1-7) MRI is one of the most powerful noninvasive diagnosis techniques with superior resolution, permitting indepth anatomical details in the diagnosis of many diseases.^(8) Magnetic nanomaterials are employed as MRI contrast agents to improve the sensitivity and reliability because they are able to alter the relaxation time of nearby water protons to generate great contrast effects under external magnetic fields.^(9,10) On the basis of the different models of longitudinal (T_(1)) and transverse (T_(2)) relaxations, there are two types of MRI contrast agents: positive (T_(1)) and negative (T_(2)). Generally speaking, superparamagnetic nanomaterials (e.g., Fe_(3)O_(4), MnFe_(2)O_(4)) are typically T_(2) contrast materials,^(11-13) and paramagnetic nanomaterials (e.g., MnO, Gd_(2)O_(3)) are prevailing T_(1) contrast materials.^(14-16) Despite much progress in the development of T_(1) contrast agents to minimize the toxicity issues of Mn^(2+) or Gd^(3+) by efficientmetal chelation strategy,^(17-20) they still suffer from poor biodistribution and potential release by demetalation or transmetalation with other ions such as Zn^(2+) in blood circulation, which results in increased risk of nephrogenic systemic fibrosis with renal dysfunction to patients.^(21,22)
Ultrasmall (<3 nm) iron oxide (IO) nanoparticles are able to generate T_(1) enhanced images owing to low magnetization by a strong surface spin-canting effect.^(23-26) However, because of the high surface energy of suchsmall particles, ultrasmall IOnanoparticles are likely to be rapidly dissolved and oxidized into Fe^(3+) ions in aqueous solution, leading to their instability in biological media. Therefore, IO-based nanoparticles with high stability and strong T_(1) contrast effect are desirable as T_(1) contrast agents. Normally, the spincanted layer in IO nanoparticles is known to be 0.5-0.9 nm thick below the surface.^(27,28) As depicted in Figure 1a, IO nanoparticles with a diameter of about 5 nm are considered to have a double-layer of core (spin-oriented)-shell (spin-canted) format. The spinoriented core with high susceptibility would produce a high T_(2) shortening effect, which may disturb and diminish the T_(1) effect induced by the spin-canted shell. As a result, IO nanoparticles with a size larger than 5 nm usually show a strong T_(2) contrast effect, while their T_(1) effect was negligible. Herein, we introduce the novel small-sized (approximately 5 nm) gadolinium-embedded iron oxide (GdIO) nanoparticles as stable and improved T_(1) contrast agents. The embedded Gd species can influence the long-range order of spins in iron oxide nanoparticles and induce an inner spin-canting effect, resulting in a fully spin-canted structure in GdIO nanoparticles (Figure 1b). Moreover, the collection of Gd species in GdIO nanoparticles (especially near the surface) may further lead to a great enhancement of T_(1) contrast effects.^(15)
For in vivo applications, nanoparticles are still struggling due to their metabolic fate and related toxicity issues, although we may control the interactions between nanoparticles and biological systems by tuning the properties of nanoparticles such as size, shape, and surface chemistry.^(29-33) One would expect that nanoparticles with long circulation half-lives and the lowest likelihood of toxicity in vivo promise potential clinical translation.^(34) The poor surface coating of nanoparticles usually suffers from a high uptake of macrophages and rapid accumulation in the mononuclear phagocyte system (MPS; e.g., liver and spleen),^(35) resulting in a short circulation half-life and long-term toxicity issues. The ideal surface coating of T_(1) contrast nanomaterials should ensure an effective water-exchange ratio on the nearby surface of nanoparticles, a decrease in the nonspecific binding to plasma proteins in biological media, and an increase in the possibility of renal clearance. ^(36-38) Small zwitterion molecules may be the potential candidates to achieve such water-soluble nanoparticles by a ligand-exchange process.^(39) The surface coating of nanoparticles using small zwitterion molecules as ligands may maintain the compact and small size of the nanoparticles, reduce nonspecific adsorption of proteins and interparticle agglomeration, increase the possibility of rapid renal clearance, lead to a potentially long circulation half-life in vivo,^(40,41) and possibly deliver the host nanoparticles to leaky vascular tumors by a passive targeting strategy. We used the zwitterionic dopamine sulfonate (ZDS)^(39) molecule as an effective binding ligand to modify the surface of small-sized GdIO nanoparticles (Figure 1c). The ZDS-coated GdIO nanoparticles (GdIO@ZDS) showed a small hydrodynamic diameter (HD), low nonspecific binding to proteins, renal clearance, and most importantly, high passive tumor targeting for T_(1) MRI imaging in living subjects.」(3287頁左欄下から20行-3288頁左欄25行、当審訳:「様々な種類の磁性ナノ材料の設計と合成は、生物医学的および臨床的応用における磁気共鳴画像法(MRI)のための磁気分離、薬物送達、および造影剤の分野において多大な研究関心を集めている。^(1-7)MRIは、優れた解像度を有する最も強力な非侵襲的診断技術の1つであり、多くの疾患の診断において徹底した解剖学的な細部を可能にする。^(8)磁性ナノ材料は、近くの水プロトンの緩和時間を変えて外部磁場の下で大きな造影効果を生み出すことができるため、感度と信頼性を向上させるためのMRI造影剤としで使用されている。^(9,10 )縦緩和(T_(1))と横緩和(T_(2))の異なるモデルに基づいて、MRI造影剤にはポジティブ(T_(1))とネガティブ(T_(2))の2種類がある。一般的に言って、超常磁性ナノ材料(例えば、Fe_(3)O_(4)、MnFe_(2)O_(4))は、典型的には、T_(2)造影材料であり、^(11-13) 常磁性ナノ材料(例えば、MnO、Gd_(2)0_(3))は、T_(1)造影材料である。^(14-16) 効率的な金属キレート化戦略によってMn^(2+)またはGd^(3+)の毒性問題を最小限に抑えるためのT_(1)造影剤の開発における大きな進歩にもかかわらず、^(17-20 )それらは依然として不十分な生体内分布および血流中のZn^(2+)のような他のイオンとの脱金属化またはトランスメタル化による潜在的放出に苦しんでおり、その結果、腎機能障害を伴う腎性全身性線維症のリスクが高まる。
超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子は、強い表面スピン傾斜効果による低磁化のためにT_(1)が増強された画像を生成することができる。^(23-26 )しかしながら、そのような微細粒子の高い表面エネルギーのために、超微細IOナノ粒子は水溶液中で速やかに溶解し、酸化されてFe^(3+)イオンになり易く、そのことはそれらを生物学的媒体中で不安定にする。したがって、高い安定性および強いT_(1)造影効果を有するIOベースのナノ粒子はT_(1)造影剤として望ましい。通常、10ナノ粒子中のスピン傾斜層は、表面下0.5?0.9nmの厚さであることが知られている。^(27.28)図1aに示されるように、約5nmの直径を有するIOナノ粒子は、二層のコア(スピン配向)-シェル(スピン傾斜)形式を有すると考えられる。高い磁化率を有するスピン配向コアは、高いT_(2)短縮効果を生じ、それはスピン傾斜シェルによって誘発されるT_(1)効果を乱しそして減少させうる。結果として、5nmより大きいサイズのIOナノ粒子は通常強いT_(2)造影効果を示すが、それらのT_(1)効果は無視できるほどであった。ここでは、安定で改良されたT_(1)造影剤として、新規の微細(約5nm)ガドリニウム埋め込み酸化鉄(GdIO)ナノ粒子を紹介する。埋め込まれたGd種は、酸化鉄ナノ粒子中のスピンの長距離秩序に影響を及ぼし、内部スピン傾斜効果を引き起こし、その結果、GdIOナノ粒子中で完全にスピン傾斜した構造になる(図1b)。さらに、GdIOナノ粒子(特に表面近く)におけるGd種の収集はさらに、T_(1)造影効果の大幅な増強をもたらし得る。^(15)
生体内用途では、サイズ、形状、および表面化学などのナノ粒子の特性を調整することによってナノ粒子と生物系との間の相互作用を制御することができるが、ナノ粒子は依然としてその代謝運命および関連する毒性の問題により苦労している。^(29-33)循環半減期が長く生体内での毒性の可能性が最も低いナノ粒子が潜在的な臨床的実用化を約束すると予想されるであろう。^(34)ナノ粒子の不十分な表面コーティングは通常、マクロファージの高い取り込みおよび単核食細胞系(MP S;例えば、肝臓および脾臓)^(35)における急速な蓄積を被り、その結果、循環半減期が短くなり、長期の毒性問題が生じる。T_(1)造影ナノ材料の理想的な表面被覆は、ナノ粒子の近表面上の有効な水交換比、生物学的媒体中の血漿タンパク質への非特異的結合の減少、および腎臓クリアランスの可能性の増加を確実にするはずである。^(30-38)小さな双性イオン分子は、配位子交換プロセスによってそのような水溶性ナノ粒子を達成するための潜在的な候補であり得る。^(39)リガンドとして小さな双性イオン分子を使用するナノ粒子の表面被覆は、コンパクトな微小ナノ粒子を維持し、タンパク質の非特異的吸着および粒子間凝集を減少させ、急速な腎クリアランスの可能性を高め、生体内で潜在的に長い循環半減期をもたらす。^(40,41)そしておそらく受動的なターゲット戦略によって宿主ナノ粒子を漏出性血管腫瘍に送達する。我々は、双性イオンドーパミンスルホン酸(ZDS)^(39)分子を微細GdIOナノ粒子の表面を修飾するための有効な結合リガンドとして使用した(図1C)。ZDS被覆GdlOナノ粒子(GdIO@ZDS)は、小さい流体力学的直径(HD)、タンパク質への低い非特異的結合、腎臓クリアランス、および最も重要なことには、生きている被験者におけるT_(1)MRIイメージングのための高い受動腫瘍ターゲティングを示した。」)

(引1b)「



Figure 1. Schematic illustration of spin phenomena in small-sized (a) IO and (b) GdIO nanoparticles. The gadolinium species (Gd_(2)O_(3) nanoclusters) in GdIO nanoparticles (?5 nm in diameter) cause an inner spin-canting effect, while the IO nanoparticles (?5 nm in diameter) contain a spin-canted surface and spin-oriented core. (c) Structure of GdIO nanoparticles coated with zwitterionic dopamine sulfonate (ZDS) molecules.」(3288頁、当審訳:「図1.微小(a)IOおよび(b)GdIOナノ粒子のスピン現象の模式図。GdIOナノ粒子(直径約5nm)中のガドリニウム種(Gd_(2)O_(3)ナノクラスター)は内部スピン傾斜効果を引き起こし、一方、IOナノ粒子(直径約5nm)はスピン傾斜表面およびスピン配向コアを含む。(c)双性イオンドーパミンスルホネート(ZDS)分子で被覆されたGdIOナノ粒子の構造。」)

(引1c)「RESULTS AND DISCUSSION
Preparation of Zwitterionic Small-Sized GdIO Nanoparticles.
The synthesis of monodisperse GdIO nanoparticles with various small sizes is simple and straightforward: we employed iron(III) acetylacetonate and gadolinium-(III) 2,4-pentanedionate hydrate as precursors to undergo a co-decomposition procedure in phenyl ether containing 1,2-hexadecanediol, oleyl amine, and oleic acid.^(42) The sizes are easily tunable by reaction time without a size selection process. Particularly, GdIO nanoparticles with diameters of 2.8 ± 0.5, 3.5 ± 0.8, and 4.8 ± 0.6 nm were obtained in the reaction times of 20, 30, and 50 min, respectively. We also obtained monodisperse IO nanoparticles with a diameter of 4.9 ± 0.4 nm by similar procedures but without the Gd precursor for comparison. For simplicity, we used 2.8, 3.5, 4.8, and 4.9 nm to represent the average diameters of these nanoparticles (denoted as 2.8 nm GdIO, 3.5 nm GdIO, 4.8 nm GdIO, and 4.9 nm IO, respectively). The transmission electron microscopy (TEM) and highresolution TEM (HRTEM) images showed that the assynthesized GdIO and IO nanoparticles are nearly monodispersed with good crystallinity (Figure 2). The energy-dispersive X-ray spectroscopy (EDS) analysis and the XRD pattern of 4.8 nm GdIO nanoparticles indicated the presence of Gd_(2)O_(3) nanoclusters (Figure S1). The electron spin resonance (ESR) spectra of 4.8 nm GdIO nanoparticles showed an obvious decrease ofΔH_(pp) (from 928 to 689 G) and g-value (from 2.47 to 2.32) compared to those of 4.9 nm IO nanoparticles (Figure S2). This may be attributed to the weak magnetic moments for 4.8 nm GdIO nanoparticles caused by embedded Gd species.^(43) Inductively coupled plasma atomic emission spectroscopy (ICP-AES) was used to quantify the percentages of embedded Gd^(3+) in all the samples. The results revealed that the Gd^(3+) percentage increased with the size of the GdIO nanoparticles (4.8 ± 1.1%, 6.5 ± 0.9%, and 7.2 ± 1.4% of Gd^(3+) in GdIO nanoparticles with diameters of 2.8, 3.5, and 4.8 nm, respectively).」(3288頁右欄6行-3289頁左欄12行、当審訳:「結果と議論
双性イオン微細GdIOナノ粒子の調整
さまざまな小さいサイズの単分散GdIOナノ粒子の合成は、単純で直接的である。1、2-ヘキサデカンジオール、オレイルアミン、オレイル酸を含有するフェニルエーテル中で共分解法を行うために、前駆体として鉄(III)アセチルアセトネートおよびガドリニウム-(III)2、4?ペンタンジオネート水和物を使用した。^(42)サイズはサイズ選択プロセスなしで反応時間によって容易に調整できる。特に、2.8±0.5、3.5±0.8、および4.8±0.6nmの直径を有するGdIOナノ粒子が、それぞれ20、30、および50分の反応時間で得られた。比較のためにGd前駆体を用いないこと以外は同様の手順によって直径4.9±0.4nmの単分散IOナノ粒子も得た。簡単にするために、これらのナノ粒子の平均直径を表すために2.8、3.5、4.8、および4.9nmを使用した(それぞれ2.8nmGdIO、3.5nmGdIO、4.8nmGdIOおよび4.9nmIOとして示される)。透過型電子顕微鏡(TEM)および高解像度TEM(HRTEM)画像は、再合成されたGdIOおよびIOナノ粒子がほぼ単分散で良好な結晶性であることを示した(図2)。エネルギー分散型X線分光法(EDS)分析および4.8nmGdIOナノ粒子のXRDパターンは、Gd_(2)O_(3)ナノクラスターの存在を示した(図S1)。4.8nmGdIOナノ粒子の電子スピン共鳴(ESR)スペクトルは、4.9nmIOナノ粒子のものと比較して、ΔH_(pp)(928?689G)およびg値(2.47?2.32)の明らかな現象を示した(図S2)。これは、埋め込まれたGd種によって引き起こされる4.8nmGdIOナノ粒子についての弱い磁気モーメントに起因しうる。誘導結合プラズマ原子発光分析法(ICP-AEC)を用いて、全試料中に埋め込まれたGd^(3+)の百分率を定量した。その結果、Gd3+の割合はGdIOナノ粒子のサイズとともに増加することが明らかになった(4.8±1.1%、6.5±0.9%、および7.2±1.4%のGd^(3+)(それぞれ2.8、3.5、および4.8nmの直径を有するGdIOナノ粒子中のGd^(3+)))。」)

(引1d)「To achieve water-soluble nanoparticles, we introduced a simple method to prepare ZDS or meso-2,3-dimercaptosuccinic acid (DMSA)^(46) solely coated nanoparticles through an inhomogeneous phase transfer process. Briefly, ZDS molecules in water and the nanoparticles in hexane were mixed to form a double-layer system, which then underwent a ligand-exchange process. Because the chelation capability of the dopamine moiety to the IO surface is much stronger than that of the original carboxyl or amine groups, the nanoparticles were gradually transferred into water by replacing oleic acid or oleyl amine with ZDS molecules. DMSA-coated nanoparticles were obtained with similar procedures. Finally, the aqueous samples were stored at 4 ℃ for further use.」(3289頁右欄11-24行、当審訳:「水溶性ナノ粒子を得るために、我々は不均一相関移動プロセスを介してZDS又はメソ-2、3-ジメルカプトコハク酸(DMSA)^(46)のみで被覆されたナノ粒子を調整するための簡単な方法を導入した。簡単に説明すると、水中のZDS分子とヘキサン中のナノ粒子とを混合して二層系を形成し、次いでこれを配位子交換プロセスにかけた。IO不要面に対するドーパミン部分のキレート化能力は基のカルボキシル基又はアミノ基のそれよりはるかに強いので、オレイン酸又はオレイルアミンをZDS分子で置き換えることによってナノ粒子を徐々に水中に移動した。DMSA被覆ナノ粒子を同様の手順で得た。最後に、水性試料をさらなる使用のために4℃で貯蔵した。」)

(引1e)「


Figure 3. Magnetic properties and MRI measurements of 4.9 nm IO, 4.8 nm GdIO, 3.5 nm GdIO, and 2.8 nm GdIO nanoparticles. Fielddependent magnetization curves (MH) at (a) 300 K and (b) 5 K, respectively. Plots of (c) 1/T_(1) and (d) 1/T_(2) against concentrations of total metal ions (Fe + Gd). (e) Comparison of r_(1) and r_(2) values obtained from the slopes in (c) and (d), togetherwith the r_(2)/r_(1) values. (f) T_(1) phantom images of 4.8, 3.5, and 2.8 nm GdIO nanoparticles with different concentrations of total metal ions (Fe + Gd).」(3290頁、当審訳:「図3. 4.9nmIO、4.8nmGdIO、3.5nmGdIOおよび2.8nmGdIOナノ粒子の磁気特性とMRI測定値。それぞれ(a)300Kおよび(b)5Kにおける磁場依存曲線(M-H)。全金属イオン濃度(Fe+Gd)に対する(c)1/T_(1)および(d)1/T_(2)のプロット。(e)(c)と(d)の傾きから得られたr_(1)とr_(2)の値の比較とr_(1)/r_(2)の値。(f)異なる濃度の全金属イオン(Fe+Gd)を有する4.8、3.5および2.8nmGdIOナノ粒子のT_(1)ファントム画像。」)

(引1f)「In Vitro and in Vivo Behavior Studies. To investigate the size changes of ZDS- or DMSA-coated GdIO nanoparticles in a biological solution, we used gel filtration chromatography (GFC) to determine the hydrodynamic diameters (HDs) of nanoparticles in biological media because this system allows online and fullspectrum analysis with high reliability and repeatability. The GFC profiles indicated the sizes of nanoparticles are inversely related to the retention times. We first tested a group of protein standards as markers to calibrate the HDs, for example, blue dextran (M1, 6.9 min, 29.5 nm HD), thyroglobulin (M2, 10.9 min, 18.8 nm HD), alcohol dehydrogenase (M3, 14.8 min, 10.1 nm HD), ovalbumin (M4, 16.0 min, 6.1 nm HD), and vitamin B12 (M5, 20.5 min, 1.5 nm HD). Under the same conditions, the various ZDS-coated nanoparticles with different sizes were nearly monodisperse with sharp peaks of retention time (Figure 4a, iiv). These results showed that the HDs of ZDS-coated samples were in the range from 1.5 to 6.1 nm (e.g., the HD of 4.8 nm GdIO@ZDS nanoparticles is approximately 5.2 nm), indicating the extremely thin surface coating layer (<1 nm) on the nanoparticles. The dynamic light scattering (DLS) results showed comparable HDs of about 4.18, 5.61, 6.50, and 7.13 nm for 2.8, 3.5, and 4.8 nm GdIO@ZDS and 4.9 nm IO@ZDS nanoparticles, respectively (Figure S4), which is consistentwith theGFC analysis.」(3291頁左欄13行-右欄7行、当審訳:「体外及び体内での挙動の研究 生物学的溶液中のZDS又はDMSAでコーティングされたGdIOナノ粒子のサイズ変化を調べるために、我々は生物学的媒体中のナノ粒子の流体力学的直径(HD)を決定するためにゲル濾過クロマトグラフィー(GFC)を用いた。このシステムは、信頼性と再現性の高いオンラインおよびフルスペクトル分析を可能にするからである。GFCプロファイルは、ナノ粒子のサイズが保持時間に反比例することを示した。我々は最初に、HDを較正するためのマーカーとして一群のタンパク質標準、例えばブルーデキストラン(M1、1.9分、29.5nmHD)、チログロブリン(M2、10.9分、18.8nmHD)、アルコールデヒドロゲナーゼ(M3、14.8分、10.1nmHD)オボアルブミン(M4、16.6分、6.1nmHD)、及びビタミンB12(M5、20.5分、1.5nmHD)を試験した。同じ条件下で、異なるサイズを有する様々なZDS被覆ナノ粒子は、保持時間の鋭いピークを伴ってほぼ単分散であった(図4a、i?iv)。これらの結果は、ZDS被覆サンプルの1.5?6.1nmの範囲内であることを示し(例えば、4.8nmGdIO@ZDSナノ粒子のHDは約5.2nmである)、ナノ粒子上の極めて薄い表面被服層(<1nm)を示している。動的散乱(DLS)の結果は、2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSおよび4.9nmIO@ZDSナノ粒子について、それぞれ約4.18、5.61、6.50及び7.13nmの匹敵するHDを示した(図S4)。これはGFC分析と一貫している。」)

イ 引用文献1に記載された発明
(ア)上記(引1a)より引用文献1には、「超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子は」、「T_(1)が増強された画像を生成することができ」、「高い安定性および強いT_(1)造影効果を有するIOベースのナノ粒子はT_(1)造影剤として望まし」く、「新規の微細(約5nm)ガドリニウム埋め込み酸化鉄(GdIO)ナノ粒子」が、「安定で改良されたT_(1)造影剤」である旨記載され、「双性イオンドーパミンスルホン酸(ZDS)分子を」表面を修飾するための有効な結合リガンドとして使用した「微細GdIOナノ粒子」である「ZDS被覆GdlOナノ粒子(GdIO@ZDS)は、小さい流体力学的直径(HD)、タンパク質への低い非特異的結合、腎臓クリアランス、および最も重要なことには、生きている被験者におけるT_(1)MRIイメージングのための高い受動腫瘍ターゲティングを示した」旨記載されている。

(イ)上記(引1f)より、「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSおよび4.9nmIO@ZDSナノ粒子について、それぞれ約4.18、5.61、6.50及び7.13nmの匹敵するHDを示した」旨記載されていることから、引用文献1において、「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSおよび4.9nmIO@ZDSナノ粒子について」実施した点が読み取れる。そして、上記(ア)において、「双性イオンドーパミンスルホン酸(ZDS)分子を」表面を修飾するための有効な結合リガンドとして使用した「微細GdIOナノ粒子」である「ZDS被覆GdlOナノ粒子(GdIO@ZDS)は、小さい流体力学的直径(HD)、タンパク質への低い非特異的結合、腎臓クリアランス、および最も重要なことには、生きている被験者におけるT_(1)MRIイメージングのための高い受動腫瘍ターゲティングを示した」旨記載され、上記(引1c)より、実際に特性を調べるためのナノ粒子として「2.8±0.5、3.5±0.8、および4.8±0.6nmの直径を有するGdIOナノ粒子」と、「比較のためにGd前駆体を用いないこと以外は同様の手順によって直径4.9±0.4nmの単分散IOナノ粒子」を得た旨記載されていることから、上記(引1f)の「4.9nmIO@ZDSナノ粒子」は、比較のために作成された粒子であるから、引用文献1において評価される粒子は「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDS」「ナノ粒子」であるといえる。
そうすると引用文献1において「T_(1)が増強された画像を生成することができ」、「高い安定性および強いT_(1)造影効果を有するIOベースのナノ粒子」である「超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子は」、「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDS」「ナノ粒子」であるといえる。

(ウ)上記(引1c)の磁場依存曲線(図3(a)および(b))より、4.8nmGdIO、3.5nmGdIOおよび2.8nmGdIOナノ粒子は、残留磁化がない点及び、磁気ヒステリシスを示さない点が、また。GdIOナノ粒子においては、粒子径が小さくなるほど比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示す点が見て取れる。

(エ)上記(ア)?(ウ)を踏まえると、(引1a)?(引1f)より引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「T1が増強された画像を生成することができる、高い安定性および強いT1造影効果を有するIOベースの超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子からなるT_(1)造影剤であって、
双性イオンドーパミンスルホン酸(ZDS)分子を、表面を修飾するための有効な結合リガンドとして使用した微細GdIOナノ粒子であるZDS被覆GdlOナノ粒子(GdIO@ZDS)は、小さい流体力学的直径(HD)、タンパク質への低い非特異的結合、腎臓クリアランス、および最も重要なことには、生きている被験者におけるT_(1)MRIイメージングのための高い受動腫瘍ターゲティングを示し、
残留磁化がなく、磁気ヒステリシスを示さず、GdIOナノ粒子においては、粒子径が小さくなるほど比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示し、
2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSナノ粒子は、それぞれ約4.18、5.61及び6.50nmの匹敵するHDを示す
IOナノ粒子からなるT_(1)造影剤。」

(2)引用文献2について
ア 引用文献2に記載された事項
引用文献2には、以下の事項が記載されている。

(引2a)「[86] Dispersion was prepared by dispersing 100 mg of iron oxide (Fe_(3)0_(4)) having oleic acid adhered to the surface thereof and a size of 3 nm in 8 ml of tetrahydrofuran (THF). A solution was prepared by dissolving 200 mg of glucose 6-phosphate sodium salt in 2 ml of distilled water (DIW). The dispersion and the solution were mixed. The mixture was agitated and heated at 60℃ for 4 hours, followed by settling and cooling the reaction product. The top THF layer was removed, resulting in a composition including hydrophilic iron oxide. Adding DIW to the composition, a colloidal solution was prepared. The colloidal solution was left at room temperature for six (6) months, a change in turbidity was not observed to demonstrate excellent long term stability.

[87] Hydrodynamic diameter of the nanoparticle composition in the colloidal solution was measured using Malvern Zetasizer Nano ZS. The hydrodynamic diameter was about 3.8 nm, which is substantially similar to the core size(3nm). After 6 months, the hydrodynamic diameter was 3.9 nm.」(当審訳:「 [86]オレイン酸が表面に付着された3nmサイズの酸化鉄(Fe_(3)O_(4))100mgを8mlのTHF(Tetrahydrofuran)に分散させて分散液を製造し、グルコース6‐リン酸ナトリウム塩200mgを蒸留水(DIW(Distilled water))2mlに溶解させて溶液を製造して、前記分散液と前記溶液とを混合した。その混合物を60℃で4時間撹拌及び加熱した後、その反応生成物を静置及び冷却させた。上層のTHF層を除去して、親水性酸化鉄を含む組成物を得た。この組成物にDIWを添加してコロイド溶液を製造した。このコロイド溶液を室温で6ヵ月間放置したが、濁度変化が見られず、優れた長期安定性を示した。
[87] マルバーン ゼータサイザー(Malvern Zetasizer) Nano ZSを用いてコロイド溶液中のナノ粒子組成物の流体力学的径を測定した。その流体力学的径は、コアサイズ(3nm)とほぼ類似した3.8nmであった。6ヶ月後、流体力学的径は3.9nmであった。」)

(引2b)「[104][TABLE 1]
[105]


[106] * PO-Glu: Glucose 6-phosphate, PO-Man: Mannose 6-phosphate, PO-Fru: Fructose- 6-phosphate

[107] [EXAMPLE 7-1] Magnetic resonance T1 imaging experiment with composition including glucose 6-phosphate-bonded 3 nm core iron oxide nanoparticles

[108] Using a wrist coil in MRI scanner (Trio 3.0T, Siemens), the colloidal solution containing iron oxide nanoparticles dispersed and hydrophilized therein was subjected to evaluation of in vivo T1 imaging performance, as shown in Table 1.

[109] The evaluation of in vivo T1 imaging performance was executed with rat F-344. The rat weighed 200 to 300 g. After anesthetizing, the rat was placed horizontally in the MRI scanner and cross-sections thereof were observed. MRI images of the rat were taken before, immediately after, 2 hours after and 24 hours after injection of a contrast agent, respectively, in order to observe and compare blood vessels of the rat before and after the injection of the contrast agent. Adding 5% glucose solution (Joong-wea (JW) Pharmaceutical) to the colloidal solution of 3 nm core iron oxide nanoparticles shown in Table 1, the contrast agent was prepared. Iron content was analyzed through ICP- AES and an administration dose was calculated in consideration of the weight of mouse, to prepare a contrast agent with a total volume of 1 ml. The contrast agent was injected through a tail vein of the rat in an amount of 5.2 mg Fe/kg (rat).

[110] Determination of in vivo T1 relaxation performance was executed using 3D SPGR sequence (TR/TE: 25/5.1, Flip angle: 25°), a scan time was 12 minutes, an image thickness was 1 mm, the number of lattices was 256x146 and FOV was 65x110 mm.

[111] In order to quantify T1 contrast imaging effects of the prepared contrast agent, one was selected among cross-sections of the highest visible parts, that is, the aorta, subclavian vein, right atrium and axillary vein, and a bright part thereof was selected as ROI (Region of Interest) in order to measure signal intensity thereof. Since an overall signal intensity of the acquired MRI images is altered whenever it is measured, relative signal intensity (SNR: Signal to Noise Ratio) was determined using saline as a noise. Comparing SNR before and after using the contrast agent, T1 signal enhancement ratio (ΔRl) was calculated and results thereof are illustrated by the graphs in the figure. The following Equation 1 is a method for calculation of T1 signal enhancement ratio (ΔRl),

[112] [Equation 1]

[113] T1 signal enhancement ratio (ΔRl) = 100 x [1 - (SNR_(t)/SNR_(0))]

[114] SNR_(0) (SNR before administration of contrast agent) = [Signal intensity of ROI_(0)/Signal intensity of muscle_(0)]

[115] SNR_(t) (SNR after administration of contrast agent) = [Signal intensity of ROI_(t)/Signal intensity of muscle_(t) ]
[116] Figure 4 is an MRI T1 angiographic image of a rat taken by injecting a contrast agent into a rat, wherein the contrast agent includes colloids formed by dispersing a composition, which includes core iron oxide nanoparticles having a size of 3 nm hy- drophilized therein, in water. It can be confirmed the blood vessels of the rat is observed as white highlighted part (positive contrast) and the contrast agent resides in vivo for 2 hours or more. For existing gadolinium contrast agent, since in vivo retention time is very short such as less than 1 minute, MRI scan time for imaging cannot be extended, thus not acquiring high resolution images. In contrast, the iron oxide contrast agent prepared according to the present invention has a relatively long in vivo retention time, thus enabling imaging while elongating the scan time. Therefore, it is confirmed that high resolution images may be obtained and even micro-vascular parts can be observed.

[117] Figure 5 illustrates MR signal intensities and demonstrates that brightness is increased by 4 times at the maximum, compared to before injection of the contrast agent. Moreover, it was confirmed that even the subclavian vein having a size of 0.2 mm can be clearly observed.」(当審訳:「[104][表1]
[105]


[106]*PO-Glu:グルコース6-リン酸、PO-Man:マンノース6-リン酸、PO-Fru:フルクトース6-リン酸
[107][実施例7‐1]グルコース6‐リン酸が付着された3nmのコア酸化鉄ナノ粒子を含む組成物の磁気共鳴T1画像の分析
[108] 磁気共鳴画像診断装置(Trio 3.0T、シーメンス(Simens))で手首コイル(wrist coil)を用いて、表1に示すように分散及び親水化された酸化鉄ナノ粒子のコロイド溶液の体内(in vivo)T1画像性能を評価した。
[109] 体内(in vivo)T1画像性能の評価は、ラットF‐344を用いて行った。ラットの体重は200?300gであった。ラットを麻酔した後、磁気共鳴画像診断装置に水平に入れてその断面を観察した。ラットの磁気共鳴画像は、造影剤注入前、造影剤注入後、造影剤注入2時間後、造影剤注入24時間後に測定して、造影剤注入前と注入後のラットの血管を観察比較した。表1に示した3nmのコア酸化鉄ナノ粒子のコロイド溶液に、5%のグルコース溶液(株式会社チョンウェ(Joong-wea)製薬)を添加して造影剤を製造した。鉄の濃度をICP‐AESにより分析し、ラットの体重を考慮して投与量を計算して、注入される造影剤の総体積が1mlとなるようにした。造影剤は、ラットの尾静脈を介して注入され、注入された量は5.2mg Fe/kg(ラット)であった。
[110] 体内(in vivo)T1緩和性能はSimens社から提供される3D SPGR シークエンス(sequence)(TR/TE:25/5.1、フリップ角度(Flip angle):25゜)を用いて測定し、スキャン時間は12分であり、画像厚さは1mm、格子数は256×146、FOVは65×110mmであった。
[111] 製造された造影剤のT1造影効果を定量的に評価するために、最も明らかに見える部分である大動脈、鎖骨下静脈、右心房、腋窩静脈の1つの断面を選定し、明るい部分をROI(Region of Interest)として選択して、信号強度を分析した。得られた磁気共鳴画像の全体的な信号強度が測定するたびに変わるため、生理食塩水(Saline)をノイズとして用いて、相対的な信号強度(SNR:Signal to Noise Ratio)を求めた。造影剤使用前後のSNRを比較してT1信号増幅比(ΔR1)を計算し、これを図面にグラフで示した。次の数式1は、T1信号増幅比(ΔR1)を計算する方法である。
[112][数式1]
[113] T1信号増幅比(ΔR1)=100×[1-(SNR_(t)/SNR_(0))]
[114] SNR_(0)(造影剤投与前SNR)=ROI_(0)の信号強度/筋肉_(0)(muscle_(0))の信号強度
[115] SNR_(t)(造影剤投与後SNR)=ROI_(t)の信号強度/筋肉_(t)(muscle_(t))の信号強度
[116] 図4は3nmサイズのコア酸化鉄ナノ粒子を親水化させた組成物を水に分散させたコロイドを含む造影剤をラットに注入した後に撮影したMRI T1血管造影画像である。ラットの血管が白く強調された部分(陽性造影)が観察され、体内で2時間以上留まることを確認することができた。従来のガドリニウム造影剤の場合、体内(in vivo)保持時間が1分未満と非常に短いため、MRIスキャン時間を増やして撮影することが不可能であって、高解像度の画像を得ることができない。しかし、本発明により製造された酸化鉄造影剤の場合、体内(in vivo)保持時間が長いため、スキャン時間を増やして撮影することができて、高解像度の画像を得ることができる。したがって、体内の微小血管まで観察が可能であるということが分かる。
[117] また、図5はMR信号強度を示し、造影剤注入前に比べ最大4倍まで明るくなることを確認することができる。また、0.2mmサイズの鎖骨下静脈まで確実な観察が可能であることが分かる。」)

イ 引用文献2に記載された発明
上記(引2a)および(引2b)より引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。

「オレイン酸が表面に付着された3nmサイズの酸化鉄(Fe_(3)O_(4))の流体力学的径は、コアサイズ(3nm)とほぼ類似した3.8nmであり、
グルコース6‐リン酸が付着された3nmのコア酸化鉄ナノ粒子を含む組成物の磁気共鳴T1画像の分析において、3nmのコア酸化鉄ナノ粒子のコロイド溶液に、5%のグルコース溶液を添加して造影剤を製造し、製造された造影剤のT1造影効果を定量的に評価し、
3nmサイズのコア酸化鉄ナノ粒子を親水化させた組成物を水に分散させたコロイドを含む造影剤をラットに注入した後に撮影したMRI T1血管造影画像において、ラットの血管が白く強調された部分(陽性造影)が観察され、
MR信号強度は、造影剤注入前に比べ最大4倍まで明るくなる
造影剤。」

(3)引用文献3について
ア 引用文献3に記載された事項
引用文献3には、以下の事項が記載されている。

(引3a)「<138> EXAMPLE 11

<139> Physico-chemical properties of the prepared iron oxide nanoparticles
<140> Using a vibrating sample magnetometer (VSM), magnetic property of the nanoparticles was measured. FIG. 12 shows magnetization-magnetic field (M-H) graphs of nanoparticles having different sizes of 1.6, 2.3, 3 and 12nm, which were synthesized in the foregoing examples. More particularly, in FIG. 12, (a) shows M-H graphs at 5K and 300K, respectively, of 3nm-size nanoparticles synthesized by the method described in Example 1; (b) shows variation in M-H graph at 300 , of nanoparticles with particle size; (c) shows zero field cooling and field cooling M-T graphs of 2.3nm-size nanoparticles synthesized by the method described in Example 2, respectively; (d) shows an M-T graph of 3nm-size nanoparticles synthesized by a method described in Example 1; (e) shows an M-T graph of 12nm-size nanoparticles synthesized by a method described in Comparative Example 3; (f) shows M-H graphs at 5K and 300K, respectively, of 1.6nm-size nanoparticles synthesized by the method described in Example 6; (g) shows an M-T graph of 1.6nm nanoparticles synthesized by the method described in Example 6; and (h) shows M-H graphs at 5K and 300K, respectively, of 2.3nm-size nanoparticles synthesized by the method described in Example 9.

<141> Referring to FIG. 12, the 12nm-size iron oxide nanoparticles at 5R are ferri magnetic to exhibit coercivity and remanent magnetization. 3nm-size iron oxide nanoparticles are also ferr magnetic to exhibit a little coercivity as well as remanent magnetization. However, the 2.3nm-size nanoparticles neither show such remanent magnetization nor coercivity at the temperature. That is, these nanoparticles remain in a paramagnetic state until the temperature of 5K. This is an unexpected case in magnetic nanoparticles having superparamagnetic properties. The foregoing conditions may be clearly identified from a magnetization-temperature (M-T) graph and, for instance, it can be seen that a blocking temperature is 200K for the 12nm-size nanoparticles and 10K for the 3nm-size nanoparticles, however, the blocking temperature of the 2.5nm nanoparticles is not observed even at 5K. The blocking temperature means a transition temperature, at which physical properties such as superparamagnetic, ferromagnetic and/or ferrimagnetic properties are exchanged, and may be proportional to the volume of particles. Accordingly, when the particle size is decreased, the blocking temperature may also be lowered. For instance, if the particle size is decreased to 3nm or less, the blocking temperature does not appear even at 5K. As a result, it can be seen that the 3nm-size particle is paramagnetic or has paramagnet ic-1ike physical properties. Such characteristic was firstly discovered in iron oxide nanoparticles having a ferrite structure and, since it is similar to paramagnetic property, is referred to as 'pseudo-paramagnetic property' to be distinguishable from super-paramagnetic property. Since the iron oxide nanoparticles having a small size of 3nm or less are mostly superparamagnetic nanoparticles and/or have disordered spins on the surface thereof, these particles may look like paramagnetic. More specifically, although the foregoing nanoparticles are not paramagnetic, they show paramagnetic- like behavior, thus being pseudo-paramagnetic. 」(当審訳:「<138>(実施例11)
<139>製造された酸化鉄ナノ粒子の物理化学的特性
<140>ナノ粒子の磁性を振動試料磁力計(Vibrating Sample Magnetometer;VSM)を用いて測定した。図12は実施例で合成された2.3、3、12nmのナノ粒子の磁化度-磁場(magnetization-magnetic field;M-H)の曲線を示す。図12の(a)は実施例1の方法で合成された3nmのナノ粒子の5K、300KにおけるM-H曲線であり、(b)は大きさによるナノ粒子の300KにおけるM-H曲線の変化を示し、(c)は実施例2の方法で合成された2.3nmのナノ粒子のゼロ磁場冷却(Zero field cooling)と磁場冷却(Field cooling)M-T曲線であり、(d)は実施例1の方法で合成された3nmのナノ粒子のM-T曲線であり、(e)は比較例3の方法で合成された12nmのナノ粒子のM-T曲線であり、(f)は実施例6の方法で合成された1.6nmのナノ粒子の5K、300KにおけるM-H曲線であり、(g)は実施例6の方法で合成された1.6nmのナノ粒子のM-T曲線であり、(h)は実施例9で合成された2.3nmのナノ粒子の5K、300KにおけるM-H曲線である。
<141>図12を参照すると、5Kにおける12nmの酸化鉄ナノ粒子は、保磁力(coercivity)と残留磁気(remanent magnetization)を示すフェリ磁性の性質を有する。3nmの酸化鉄ナノ粒子も若干の保磁力と残留磁気を示すフェリ磁性の性質を有するが、2.3nmのナノ粒子では保磁力と残留磁気が表れない。即ち、5Kまで常磁性の形態で残っている。これは超常磁性を有する磁性体ナノ粒子で非常に異例的な場合である。これは磁化度-温度(magnetization-temperature;M-T)曲線を見ると明確に示されるが、12nmでは閉鎖温度(blocking temperature)が200Kで示され、3nmの粒子は10Kで示されるが2.5nmの粒子は閉鎖温度が5Kまで示されない。閉鎖温度とは超常磁性、強磁及び/又はフェリ磁性の物性が変化する遷移温度であり、粒子の体積に比例するため、粒径が小くなるほど閉鎖温度は低下する。大きさが3nm以下にまで減少すると、閉鎖温度は5Kまで示されず、3nmの粒子は極低温でも常磁性あるいは常磁性と類似した物性を有することが分かる。フェライト(ferrite)構造を有する酸化鉄ナノ粒子でこのような性質が初めて発見されたが、超常磁性と区別するために、常磁性と類似する「擬似常磁性(pseudo-paramagnetic)」とする。3nm以下の小さい酸化鉄ナノ粒子は超常磁性ナノ粒子や表面の配列されていない(disordered)スピンが粒子のほとんどを占めるため、粒子は常磁性を有するように見える。これは厳密に言えば常磁性ではないが常磁性と類似する挙動を示すため、擬似常磁性と言える。」)

(引3c)「<169> EXAMPLE 17

<170> Hydrophilic modification of iron oxide nanoparticles using monosaccharide phosphate and MR in vivo imaging

<171> Iron oxide nanoparticles capped by oleic acid on the surface were prepared by the method of example 1.

<172> 100mg of 3nm iron oxide nanoparticles were dispersed in 8ml of THF(tetrahydrofuran) and mixed with aqueous solution of 200mg of glucose 6- phosphate sodium salt in 2ml of water. The mixed solution was agitated and reacted at 60℃ for 4 hr. After cooling, upper phase of THF of the mixture solution was separated and water was added to the lower phase of iron oxide nanoparticles capped by glucose 6-phosphate on the surface to prepare a stable colloid of iron oxide nanoparticles.

<173> The hydrodynaraic diameter of the nanoparticles having glucose 6- phosphate on the surface was 3.8nm, measured by dynamic light scattering method (Malvern Zetasizer Nano ZS).

<174> MR imaging using the 3nm nanoparticles capped by glucose 6-phosphate was performed according to example 16.

<175> As shown in FIG. 25 blood vessels were brightened on the T1 weighted MR imaging. The bright signal of blood could be maintained for 2 hour, but the bright signal was not shown after 24hours. This means the composition of 3nm nanoparticles capped by glucose 6-phosphate can be a good MR blood pool agent .」(当審訳:「<169>(実施例17)
<170>リン酸モノサッカライドを用いた酸化鉄ナノ粒子の親水化改質及びMR in vivo映像
<171>表面上でオレイン酸でキャッピングされた酸化鉄ナノ粒子を実施例1の方法で製造した。
<172>3nmの酸化鉄ナノ粒子100mgをTHF(テトラヒドロフラン)8ml中に分散した後、水2ml中でグルコース6-リン酸ナトリウム塩200mgの水溶液と混合した。混合した溶液を攪拌させ、60℃で4時間反応させた。冷却した後、混合溶液のTHFの上部の相が分離され、表面上でグルコース6-ホスフェートでキャッピングされた酸化鉄ナノ粒子の下部の相に水を加えて酸化鉄ナノ粒子の安定したコロイドを製造した。
<173>動的光散乱方法(Malvern Zetasizer Nano ZS)を使用して測定された、表面上でグルコース6-ホスフェートを有するナノ粒子の流体力学的径は3.8nmであった。
<174>グルコース6-ホスフェートでキャッピングされた3nmのナノ粒子を使用するMR映像を実施例16によって実行した。
<175>図25に示されたように、血管はT1秤量されたMR映像上で鮮明になった。血液の明るい信号は2時間維持されることができたが、明るい信号は24時間後に示されなかった。これは、グルコース6-ホスフェートでキャッピングされた3nmのナノ粒子の組成物が良好なMR血液プール剤であることができることを意味する。」)

(引3c)「【Figure 12】



(イ) 引用文献3に記載された発明
a 上記(引3c)より、3nmの酸化鉄ナノ粒子は、残留磁化がなく、比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示し、磁気ヒステリシスを示さない点が見て取れる。

b 上記(ア)を踏まえると、上記(引3a)?(引3c)より引用文献3には以下の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。

「表面上でグルコース6-ホスフェートでキャッピングされた3nmの酸化鉄ナノ粒子において、
3nmの酸化鉄ナノ粒子は、残留磁化がなく、比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示し、磁気ヒステリシスを示さず、
表面上でグルコース6-ホスフェートを有するナノ粒子の流体力学的径は3.8nmであり、
グルコース6-ホスフェートでキャッピングされた3nmのナノ粒子を使用するMR映像を実行し、血管はT1秤量されたMR映像上で鮮明になる
グルコース6-ホスフェートでキャッピングされた3nmのナノ粒子の組成物からなる良好なMR血液プール剤。」

エ 引用文献4に記載された事項
引用文献4には、以下の事項が記載されている。

(引4a)「強磁性体微粒子の研究の歴史は古く,粒子サイズを小さくすると磁化曲線にヒステリシスが現れずに常磁性的ふるまいをすることは1960年代から知られている現象である(1).良く知られているように強磁性粒子を小さくしていくと,磁壁の無い単磁区粒子となる.磁化の方向は磁気異方性エネルギーが極小値をとるある方向,すなわち磁化容易方向に固定されている.さらに粒子を小さくして行くと,体積に比例する磁気異方性エネルギーが熱ゆらぎに比べて小さくになり,磁化が自由に回転するようになる.個々の粒子の磁気モーメントがあたかも常磁性体の原子のモーメントと同様に振る舞う.この状態が超常磁性である.」

3 当審の判断
(1)引用発明1との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
a 引用発明1の「高い安定性および強いT1造影効果を有するIOベースの超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子」および「T1が増強された画像を生成することができる」「T_(1)造影剤」は、それぞれ、本件発明1の「ナノ粒子」および「T1造影剤」に相当する。そして、引用発明1の「高い安定性および強いT1造影効果を有するIOベースの超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子からなるT_(1)造影剤」は、「T1が増強された画像を生成することができる」ものであるから、引用発明1の「T1が増強された画像を生成することができる、高い安定性および強いT1造影効果を有するIOベースの超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子からなるT_(1)造影剤」は、本件発明1の「ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤」に相当する。

b 引用発明1は、「IOベースの超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子」に関するものであるものの、実際に製造されたナノ粒子は、「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSナノ粒子」である。
そして、ナノ粒子の無機コアが2.5?4nmの範囲に入る、引用発明1の「2.8」「nmGdIO@ZDSナノ粒子」の「約4.18」「nmの匹敵するHD」を示す。
また、引用発明1の「GdIO@ZDSナノ粒子」は、「粒子径が小さくなるほど比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示し」ていることから、「IOベースの超微細(<3nm)酸化鉄(IO)ナノ粒子」も比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示しているといえるから、引用発明1の「2.8」「nmGdIO@ZDSナノ粒子」は、「残留磁化がなく、磁気ヒステリシスを示さ」ず比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示すことから、超常磁性であることは明らかであるから、「超常磁性酸化鉄ナノ粒子」であるといえる。
そうすると、引用発明1の「約4.18」「nmの匹敵するHD」を示し、「残留磁化がなく、磁気ヒステリシスを示さ」ず比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示す、「2.8」「nmGdIO@ZDSナノ粒子」と、本件発明1の「無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し」、「5nm未満の流体力学的直径を有し」、「超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」、「ナノ粒子」とは、「無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し」、「5nm未満の流体力学的直径を有し」、「超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつ」「表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」「ナノ粒子」である点で共通する。

c 以上a及びbより、本件発明1と引用発明1とは、以下の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
「ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤であって、
該ナノ粒子の無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、
該ナノ粒子が、5nm未満の流体力学的直径を有し、
該ナノ粒子が、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつ
該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む、
前記T1造影剤。」

(相違点1)無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、5nm未満の流体力学的直径を有し、該ナノ粒子が、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む、該ナノ粒子が、本件発明1は「Gd系化合物を含ま」ないものであるの対し、引用発明1は、、「2.8」「nmGdIO@ZDSナノ粒子」であって、「Gd」を含んでいる点。

(イ)判断
上記相違点1について検討する。
引用文献1には、Gd系化合物を含まないナノ粒子として、「4.9nmIO@ZDSナノ粒子」が記載されているが、この粒子の無機コアのサイズは4.9nmであるから、「無機コアが、2.5?4nmのサイズを有」する「該ナノ粒子」ではなく、また、この粒子の流体力学的直径は、7.13nmであるから、「5nm未満の流体力学的直径を有」する「該ナノ粒子」でもない。そして、引用文献1に記載された「4.9nmIO@ZDSナノ粒子」は、「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSナノ粒子」と比較するための粒子である。
また、上記(引1a)より、「微細GdIOナノ粒子の表面を修飾するための有効な結合リガンドとして使用」される「双性イオンドーパミンスルホン酸(ZDS)分子」は、「Gd^(3+)の毒性問題を最小限に抑えるための」「腎臓クリアランス」のためのものである。
そうすると、引用文献1には、「無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し」、「5nm未満の流体力学的直径を有し」、「超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」「ナノ粒子」は記載されていないし、「Gd^(3+)の毒性問題を最小限に抑えるための」「腎臓クリアランス」のための「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSナノ粒子」に関する引用発明1において、Gd系化合物を含まない「4.9nmIO@ZDSナノ粒子」のサイズ及び流体力学的直径を、T1が増強された画像を生成することができる、高い安定性および強いT1造影効果を有するものへすることへの動機付けがあるともいえないから、本件発明1は、引用発明1より当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。
また、引用文献2?4にも、「無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し」、「5nm未満の流体力学的直径を有し、かつ」「超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」「ナノ粒子」は記載されていないから、引用文献2?4に記載された事項を参酌しても、本件発明1は、引用発明1から、当業者が容易に想到できたものであるともいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の「前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する」旨の限定を加えたものであって、引用発明1と対比すると、上記相違点1と同じ点で相違するから、上記アと同様に、本件発明2は、引用文献1?4に記載された事項を参酌しても、引用発明1から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ 本件発明6及び7について
本件発明6は、本件発明1の「ナノ粒子を含むT1造影剤」を導入した「磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のための方法」であり、本件発明7は、本件発明6の「前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する」旨の限定を加えたものであるから、本件発明6及び7と引用発明1とを対比すると、上記相違点1と同じ点で相違するから、上記アと同様に、本件発明2は、引用文献1?4に記載された事項を参酌しても、引用発明1から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(2)引用発明2との対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明2とを対比する。

a 引用発明2の「酸化鉄ナノ粒子」は、本件発明1の「ナノ粒子」に相当する。そして、引用発明2の「酸化鉄ナノ粒子」は、Gd系化合物を含んでいないから、引用発明2の「酸化鉄ナノ粒子」と、本件発明1の「超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まない」「ナノ粒子」とは、「酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まない」「ナノ粒子」である点で共通する。

b 引用発明2の「3nmのコア酸化鉄ナノ粒子のコロイド溶液に、5%のグルコース溶液を添加して造影剤を製造し、製造された造影剤」は、「3nmサイズのコア酸化鉄ナノ粒子を親水化させた組成物を水に分散させたコロイドを含む造影剤をラットに注入した後に撮影したMRI T1血管造影画像において、ラットの血管が白く強調された部分(陽性造影)が観察され、MR信号強度は、造影剤注入前に比べ最大4倍まで明るくなる造影剤」であるから、本件発明1の「ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤」に相当する。

c 引用発明2の「酸化鉄ナノ粒子」の「コアサイズ」は、「3nm」であり、引用発明2の「オレイン酸が表面に付着された3nmサイズの酸化鉄(Fe_(3)O_(4))の流体力学的径」は、「3.8nmであ」るから、引用発明2の「酸化鉄ナノ粒子」と本件発明1の「ナノ粒子」とは、「無機コアが、2.5?4nmのサイズを有」する点およびで「5nm未満の流体力学的直径を有」する点一致する。

(エ)以上のことから、本件発明1と引用発明2との間には、以下の一致点および相違点がある。

(一致点)「 ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤であって、
該ナノ粒子の無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、
該ナノ粒子が、5nm未満の流体力学的直径を有し、
該ナノ粒子が、酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まない
前記T1造影剤。」

(相違点2)該ナノ粒子が、本件発明1は、「超常磁性酸化鉄ナノ粒子」であるのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。

(相違点3)該ナノ粒子の表面が、本件発明1は、「双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」ものであるのに対し、引用発明2は、そのような特定がない点。

(イ)判断
事案に鑑み上記相違点3について検討する。
引用文献1には、表面に「双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド」を含む「4.9nmIO@ZDSナノ粒子」が記載されているものの、このナノ粒子は、「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSナノ粒子」と比較するための粒子である。そして、上記(引1a)より、「微細GdIOナノ粒子の表面を修飾するための有効な結合リガンドとして使用」される「双性イオンドーパミンスルホン酸(ZDS)分子」は、「Gd^(3+)の毒性問題を最小限に抑えるための」「腎臓クリアランス」のためのものであるから、Gd系化合物を含まない引用発明2の「酸化鉄ナノ粒子」の表面に、引用文献1の「双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド」を含む構成を適用する動機付けがあるとはいえないから、引用発明2に引用文献1に記載された技術事項を適用することはできない。また、引用文献3?4にも、「酸化鉄ナノ粒子」の表面が、「双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」構成は、記載されていない。
そうすると、上記相違点3は実質的な相違点であって、当業者が容易に想到できるものであるともいえないから、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、引用発明2であるとはいえず、また、本件発明1は、引用発明2、引用文献1及び3?4に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の「前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する」旨の限定を加えたものであって、引用発明1と対比すると、上記相違点3と同じ点で相違するから、上記アと同様に、本件発明2は、引用発明2であるとはいえず、また、本件発明2は、引用発明2、引用文献1及び3?4に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ 本件発明6及び7について
本件発明6は、本件発明1の「ナノ粒子を含むT1造影剤」を導入した「磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のための方法」であり、本件発明7は、本件発明6の「前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する」旨の限定を加えたものであるから、本件発明6及び7と引用発明1とを対比すると、上記相違点3と同じ点で相違するから、上記アと同様に、本件発明6及び7は、引用発明2であるとはいえず、また、本件発明6及び7は、引用発明2、引用文献1及び3?4に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

(3)引用発明3の対比・判断
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と引用発明3とを対比する。

a 引用発明3の「MR血液プール剤」は、「グルコース6-ホスフェートでキャッピングされた3nmのナノ粒子を使用するMR映像を実行し、血管はT1秤量されたMR映像上で鮮明になる」ものであるから、本件発明1の「ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤」に相当する。

b 引用発明3の「酸化鉄ナノ粒子」は、本件発明1の「ナノ粒子」に相当する。そして、引用発明3の「酸化鉄ナノ粒子」は、「3nm」であり、「表面上でグルコース6-ホスフェートを有するナノ粒子の流体力学的径は3.8nmであ」るから、引用発明3の「流体力学的径は3.8nm」である「3nmの酸化鉄ナノ粒子」は、本件発明1の「無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し」、「5nm未満の流体力学的直径を有」する「ナノ粒子」に相当する。

c 引用発明3の「3nmの酸化鉄ナノ粒子」は、「残留磁化がなく、比較的弱い磁場で磁気飽和の傾向を示し、磁気ヒステリシスを示さない」ことから、超常磁性であることは明らかである。また、引用発明3の「3nmの酸化鉄ナノ粒子」が、Gd系化合物を含まないことも明らかである。
よって、引用発明3の「3nmの酸化鉄ナノ粒子」と本件発明1の「ナノ粒子」とは、「超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まない」点で一致する。

d 上記a?cより、本件発明1と引用発明3との間には、以下の一致点および相違点がある。

(一致点)「 ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤であって、
該ナノ粒子の無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、
該ナノ粒子が、5nm未満の流体力学的直径を有し、
該ナノ粒子が、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まない
前記T1造影剤。」

(相違点4)該ナノ粒子の表面が、本件発明1は、「双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」ものであるのに対し、引用発明3は、そのような特定がない点。

(イ)判断
上記(2)ア(イ)で検討したとおり、引用文献1には、「4.9nmIO@ZDSナノ粒子」が記載されているものの、このナノ粒子は、「2.8、3.5および4.8nmGdIO@ZDSナノ粒子」と比較するための粒子であり、引用文献1は、「微細GdIOナノ粒子の表面を修飾するための有効な結合リガンドとして使用」される「双性イオンドーパミンスルホン酸(ZDS)分子」は、「Gd^(3+)の毒性問題を最小限に抑えるための」「腎臓クリアランス」のためのものであるから、Gd系化合物を含まない引用発明3の「酸化鉄ナノ粒子」の表面に、引用文献1の「双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド」を含む構成を適用する動機付けがあるとはいえないから、引用発明3に引用文献1に記載された技術事項を適用することはできない。また、引用文献2及び4にも、「酸化鉄ナノ粒子」の表面が、「双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む」構成は、記載されていない。
そうすると、上記相違点4は実質的な相違点であって、当業者が容易に想到できるものであるともいえないから、本件発明1は、引用発明3であるとはいえず、また、本件発明1は、引用発明3、引用文献1、2及び4に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

イ 本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の「前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する」旨の限定を加えたものであって、引用発明1と対比すると、上記相違点4と同じ点で相違するから、上記アと同様に、本件発明2は、引用発明3であるとはいえず、また、本件発明2は、引用発明3、引用文献1、2及び4に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

ウ 本件発明6及び7について
本件発明6は、本件発明1の「ナノ粒子を含むT1造影剤」を導入した「磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のための方法」であり、本件発明7は、本件発明6の「前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する」旨の限定を加えたものであるから、本件発明6及び7と引用発明1とを対比すると、上記相違点4と同じ点で相違するから、上記アと同様に、本件発明6及び7は、引用発明3であるとはいえず、また、本件発明6及び7は、引用発明3、引用文献1、2及び4に記載された技術事項から、当業者が容易に想到できたものであるとはいえない。

第5 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1、2、6及び7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2、6及び7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3?5及び8?10に係る特許は、上記のとおり、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項3?5及び8?10に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。

 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子を含む、磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のためのT1造影剤であって、
該ナノ粒子の無機コアが、2.5?4nmのサイズを有し、
該ナノ粒子が、5nm未満の流体力学的直径を有し、
該ナノ粒子が、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ
該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む、
前記T1造影剤。
【請求項2】
前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する、請求項1記載のT1造影剤。
【請求項3】(削除)
【請求項4】(削除)
【請求項5】(削除)
【請求項6】
磁気共鳴画像法又は磁気共鳴血管撮影のための方法であって、
ナノ粒子を含むT1造影剤が導入された対象の画像信号を生成することであって、該ナノ粒子が、2.5?4nmの無機コアを有し、5nm未満の流体力学的直径を有し、超常磁性酸化鉄ナノ粒子であり、かつGd系化合物を含まず、かつ該ナノ粒子の表面が、双性イオンドーパミンスルフォネートリガンド又はDSリガンドを含む、前記生成することを含む、前記方法。
【請求項7】
前記無機コアが、2.5?3.5nmのサイズを有する、請求項6記載の方法。
【請求項8】(削除)
【請求項9】(削除)
【請求項10】(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2020-11-16 
出願番号 特願2017-514658(P2017-514658)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (A61B)
P 1 651・ 113- YAA (A61B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 荒井 隆一伊藤 幸仙  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
福島 浩司
登録日 2019-01-25 
登録番号 特許第6471227号(P6471227)
権利者 マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
発明の名称 磁気共鳴画像法用途のためのナノ粒子  
代理人 石川 徹  
代理人 石川 徹  
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