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審決分類 |
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 B66B 審判 全部申し立て 2項進歩性 B66B 審判 全部申し立て 特174条1項 B66B |
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管理番号 | 1370019 |
異議申立番号 | 異議2020-700277 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-04-21 |
確定日 | 2020-12-23 |
異議申立件数 | 2 |
事件の表示 | 特許第6671059号発明「表示装置および防犯支援プログラム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6671059号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
1 手続の経緯 特許第6671059号の請求項1?8に係る特許についての出願は、平成30年3月1日に出願され、令和2年3月5日にその特許権の設定登録がされ、令和2年3月25日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年4月21日に特許異議申立人鈴木亮(以下、「特許異議申立人A」という。)より全請求項に対し特許異議の申立てがされ、令和2年5月14日に特許異議申立人福元博之(以下、「特許異議申立人B」という。)より全請求項に対し特許異議の申立てがされたものである。 2 本件発明 特許第6671059号の請求項1?8の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、それぞれ、「本件発明1」?「本件発明8」という。)。 「【請求項1】 エレベーターの乗員に対して画像を表示する表示装置であって、 画像を表示する表示画面を有するCPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末と、 前記タブレット端末を支持する支持部材と、 を備え、 前記支持部材は、前記表示画面が前記乗員側に向くように、かつ、前記乗員の視線の高さよりも上側になるように、前記エレベーターのかごの内壁面に設置され、 前記支持部材が設置された際に、前記表示画面の上辺が前記内壁面から離間するように、当該表示画面を前記内壁面に対して所定の角度で傾斜させることを特徴とする表示装置。 【請求項2】 前記タブレット端末は、前記表示画面と同一面に、前記かご内を撮影する撮像部を有することを特徴とする請求項1に記載の表示装置。 【請求項3】 前記撮像部は、前記画像が表示されている間だけ撮影することを特徴とする請求項1又は2に記載の表示装置。 【請求項4】 前記タブレット端末は、前記かごの照度を測定し、所定の照度以上になった場合に、前記画像を表示することを特徴とする請求項1?3のいずれか一つに記載の表示装置。 【請求項5】 前記タブレット端末は、前記画像に関する情報を無線通信によって受信することを特徴とする請求項1?4のいずれか一つに記載の表示装置。 【請求項6】 前記支持部材は、前記内壁面に対して磁力を用いて固定することを特徴とする請求項1?5のいずれか一つに記載の表示装置。 【請求項7】 前記画像は、広告情報または管理情報であることを特徴とする請求項1?6のいずれか一つに記載の表示装置。 【請求項8】 エレベーターのかご内に設置されたCPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末に、 前記エレベーターの乗員に対して画像を表示する第1の処理と、 前記第1の処理によって表示される画像を見ている乗員を撮影する第2の処理と、 前記第2の処理によって撮影された情報を記憶する第3の処理と、 を実行させることを特徴とする防犯支援プログラム。」 3 申立理由の概要 (1)特許異議申立人Aは、以下の文献1?4を提出し、請求項1?8に係る特許は、文献1を主たる引用例とし、文献2?4を従たる引用例とし、特許法第29条第2項に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張する。 また、請求項1?8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものであるとともに、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨も主張する。 (2)特許異議申立人Bは、以下の文献5?11を提出し、請求項1?7に係る特許は、文献5を主たる引用例とし、文献6?11を従たる引用例とし、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張し、請求項8に係る特許は、文献10を主たる引用例とし、文献6?9を従たる引用例とし、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨主張する。 また、請求項3?7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものである旨も主張する。 文献1:特開2003-199090号公報 文献2:特開2003-73057号公報 文献3:特開平3-31177号公報 文献4:特開2006-137589号公報 文献5:特開2006-193276号公報 文献6:特開2016-197174号公報 文献7:特開2014-35507号公報 文献8:特開2015-125468号公報 文献9:富士通株式会社、FUJITSU Tablet ARROWS Tab Q584/K 製品ガイド、2015.1、p.1?6、p.13、p.132?133 文献10:特開2005-47689号公報 文献11:特開2009-171167号公報 (文献1?4は、それぞれ、特許異議申立人Aの提出した甲第1号証?甲第4号証であり、また、文献5?11は、それぞれ、特許異議申立人Bの提出した甲第1号証?甲第7号証である。) 4 文献の記載 (1)文献1 文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同様。)。 (1a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、画像情報配信システムに係わり、特に、商業施設、公共施設などで、不特定の人々に画像情報を表示するとき、効果的に表示および/または放音を行う画像情報配信システム及び画像情報表示端末並びに画像情報配信装置に関するものである。」 (1b)「【0005】本発明の目的は、防犯対策をして、人の安全性に配慮した画像情報配信システム及び画像情報表示端末並びに画像情報配信装置を提供することにある。」 (1c)「【0018】 【発明の実施の形態】以下、本発明による画像情報配信システムの実施の形態である、エレベータの乗りかご監視システムについて、図1および図2に基づいて説明する。図1は本実施の形態のシステム構成を示し、図2は本実施の形態のシステムの信号ブロック構成を示す。 【0019】図1のシステム構成において、画像情報表示端末1は、画像表示を行う液晶モニター2、乗りかご内の状況を撮影するビデオカメラ3、音声を収録するマイク4を設けてなる。この画像情報表示端末1はエレベータの乗りかご5の上部に設置されている。またこの画像情報表示端末1は画像情報配信装置6と電話回線7で接続されている。 【0020】画像情報配信装置6は、電話回線7を介して図示していないインターネット等からの画像データを記憶し記憶した画像データを選択したり新たな画像データを作成する入力部8、前記画像データとともに画像情報表示端末1からの映像と音声を記録する記録部9、前記画像データを画像情報表示端末1に送信するとともに画像情報表示端末1からの映像や音声を受信する通信部10、画像情報表示端末1から送信されてきた映像を表示するモニター11及び音声を再現するスピーカ12、これらを制御する中央制御部13にて構成され、図1に示す画像情報表示端末1の他、図示していないが別なエレベータの乗りかごの画像情報表示端末と電話回線7で接続することも可能である。 【0021】図2の信号ブロック構成図において、画像情報表示端末1は、画像情報配信装置6から配信された画像データを受信する通信部14、配信された画像情報データを記憶する記憶部15、画像情報データを表示する液晶モニター2と、これを駆動する表示制御部16、更に、エレベータの乗りかご内を撮影するビデオカメラ3と、撮影した映像をMPEG2にエンコードし画像認識により情報を抽出する画像処理部17、エレベータ内の音声を収録するマイク4と、収録した音声をMPEG2にエンコードし画像認識により情報を抽出する音声処理部18、ビデオカメラ3の映像とマイク4の音声を送信する前記通信部14、これらを制御する中央制御部19で構成される。」 (1d)「【0026】画像情報配信装置6から配信された画像データやスケジュールデータは、電話回線7を経由して、画像情報表示端末1の通信部14で受信されて、中央制御部19によって記憶部15に格納される。中央制御部19は、記憶部15に格納されているスケジュールデータを読み取り、そのスケジュールに従って画像データを記憶部15から読み出し、表示制御部16に送る。表示制御部16では、これらのエンコードされたデータを元の画像データにデコードする処理を行い、液晶モニター2で表示する。画像情報表示端末の数が多い場合は、画像情報表示端末をグループ分けし、画像情報配信装置6からグループごとに画像データやスケジュールデータを配信する。 【0027】液晶モニター2で、記憶部9に記憶したスケジュールに沿った画像データを表示している間、画像情報表示端末1のマイク4で収録された音声は、音声処理部18に取り込まれ、MPEG2にエンコードされるとともに、音声認識により情報の抽出を行う。 【0028】ここで、例えば、マイク4で収録する音量が通常より異常に大きく、エレベータの乗りかご5で犯罪等の異常事態が発生している危険がある場合は、通常の場合に比べ大きな音声情報であることを、音声処理部18における音声認識により抽出する。すると中央制御部19では、その音声情報より犯罪等の異常事態が発生している危険があると判断し、記憶部9から出力していた画像データを、今までのスケジュールに沿った画像データから、記憶部9に記憶の警告画面データに切り換えて出力する。この警告画面データが表示駆動部16により液晶モニター2に表示され、脅威を与えた人に警告を自動的に与え、脅威を受けた人に安心を与えることができる。」 また、文献1の記載から、文献1には、次の事項が記載されているといえる。 (1e)段落【0019】及び【図1】の記載から、文献1の画像情報表示端末1は、エレベータの乗りかご5の上部に、画像表示を行う液晶モニター2が乗員側に向くように、かつ、乗員の視線の高さよりも上側になるように設置されているといえる。 (1f)段落【0026】の記載から、文献1の画像情報配信システムは、中央制御部19によって、エレベータの乗員に対して画像情報を表示する処理を実行しているといえる。 (1g)段落【0021】及び【0031】の記載から、文献1の画像情報配信システムは、エレベータの乗りかご内を撮影する処理を実行しているといえる。 文献1の記載事項及び認定事項より、文献1には、次の2つの発明(以下、「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 [引用発明1] 「エレベータの乗員に画像情報を表示する画像情報配信システムであって、 画像表示を行う液晶モニター2、中央制御部19、記憶部15及び乗りかご5内の状況を撮影するビデオカメラ3を設けてなる、画像情報表示端末1を備え、 画像情報表示端末1は、エレベータの乗りかご5の上部に、画像表示を行う液晶モニター2が乗員側に向くように、かつ、乗員の視線の高さよりも上側になるように設置されている画像情報配信システム。」 [引用発明2] 「エレベータのかご内に設置された、中央制御部19、記憶部15及び乗りかご5内の状況を撮影するビデオカメラ3を設けてなる、画像情報表示端末1に、 エレベータの乗員に対して画像情報を表示する処理と、 エレベータの乗りかご5内を撮影する処理と、 撮影した映像から画像認識による情報の抽出する処理と、 を実行させる画像情報配信システム。」 (2)文献2 文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 (2a)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、乗客を乗せて建物などの昇降路内を昇降する乗りかご内に、画像を表示するためのエレベータ乗りかごの画像表示器に関する。」 (2b)「【0012】本実施形態の画像表示器1を有したエレベータの乗りかご2は、図1に示すように、正面側に開口部を有する箱状に形成され、その開口部を開閉する開閉扉2aを有している。この乗りかご2は、開口部の両側に配置されている側板2b,2bの一方に操作盤3が設けられている。そして、乗りかご2は、側板2b,2bに交差した側板2c,2cの一方の上部に設けられた凹部4内に画像表示器1が配置されている。なお、凹部4は、一方の側板2cに設けられているが、例えば、他方の側板2cや側板2b,2bなどに設けてもよく、乗りかご2の内面であればよい。本実施形態では、画像表示器1が配置される高さが成人男性の平均身長よりも高い位置とする。 【0013】凹部4は、図2に示すように、側板2cに裏面側で固定された箱体からなり、側方に設けられた開口が側板2cに形成された貫通孔を介してその側板2cの表面上に配置されている。したがって、凹部4は、側板2cの表面から外側に形成されたこととなっている。この凹部4は、図3(a)に示すように、幅方向に対向する内面4a,4aからそれぞれ外側に向けて形成され、相互に対向した係合溝5が設けられている。また、凹部4は、内面4a,4aの一方に駆動手段であるモータ6が横に固定されている。」 (2c)「【0017】前述した画像表示器1は、図2および図3(a),(b)に示すように、乗りかご2内に画像を表示するための表示部8と、この表示部8を乗りかご2に変位可能に支持させるための支持手段9とを備えている。 【0018】表示部8は、図2に示すように、箱状の枠体8aの表面に液晶などが組み込まれて形成されており、凹部4内に収容されている。この表示部8は、図1に示すように、側板2cに沿った起立状態で枠体8aの表面が側板2cの表面と面一となり、枠体8aの裏面が凹部4の内面4bとの間に所定寸法の空間を形成する。また、表示部8は、図3(a)に示すように、枠体8aの幅方向の寸法が凹部4の開口の幅方向の寸法と略同一か若干小さい寸法に形成され、枠体8aの上下方向の寸法が凹部4の開口の上下方向の寸法よりも小さく形成されている。また、表示部8は、図示しないが、枠体8aの裏面上縁と凹部の開口縁上部との間が伸縮自在なカバー部により覆われている。」 (3)文献5 文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 (3a)「【0001】 本発明は、情報配信源から配信されてくる各種の表示情報を、エレベータのかご内又は乗り場のうちの少なくともいずれかに設置された表示パネルに表示させる表示制御装置を備えたエレベータの情報表示システムに関するものである。」 (3b)「【0002】 産業流通市場では、各企業が自己の商品やサービスについてあらゆる場を利用してできるだけ効果的に宣伝広告することが重要である。そして、エレベータは不特定多数の乗客が利用する公共的な設備であり、宣伝広告を行うのに好適な場である。そのため、従来からエレベータのかご内や乗り場に表示パネルが設けられ、この表示パネルの画面に宣伝広告などの各種表示情報を表示させるエレベータの情報表示システムが提案されてきている。また、近時は携帯電話などの携帯端末が急速に普及しており、この携帯端末でインターネットにおける各広告主のホームページに簡単にアクセスすることが可能になっている。したがって、各企業は携帯端末を保有する消費者を意識した宣伝広告に力を注ぐようになってきている(例えば、特許文献1参照)。」 (3c)「【0008】 図7(a)において、かご側ドア11の側方及び上方にはそれぞれかご内操作盤12及びかご位置表示盤13が配置されている。そして、かご内操作盤12の上方であってかご位置表示盤13の側方の位置、すなわち天井部14付近の高さ位置にかご内表示パネル7が設置されている。このように、表示パネルを高い位置に設置しているのは、かご内のどの位置に立っている乗客も表示内容が見られるようにするためである。」 (3d)「【0026】 図1は、本発明の第1の実施形態に係るエレベータの情報表示システムの構成図である。この図において、インターネット1に情報配信源2(例えば、広告情報配信サービス会社等のサーバ)が接続されている。このインターネット1には、また、エレベータシステム内に設置されている表示制御装置3が接続されている。そして、この表示制御装置3は、表示情報蓄積手段4、プログラム変更手段5、及び2次元コード変換手段6を有しており、インターネット1を介して情報配信源2から配信されてくる各種の表示情報を取り込むようになっている。 【0027】 表示情報蓄積手段4は、情報配信源2から取り込んだ表示情報を蓄積するものであり、HDD(ハードディスク)などの充分な記憶容量を有する不揮発性メモリにより構成されている。」 (3e)「【0033】 図2は、図1の表示パネル7,8の配置状態を示す説明図であり、(a)はかご内における表示パネル7の配置例、(b)は乗り場における表示パネル8の配置例を示している。図2(a),(b)が図7(a),(b)と異なる点は、かご内表示パネル7及び乗り場表示パネル8が、それらのパネル面が下方に傾斜して取り付けられていることである。そのため、これらの図中では、本来は長方形の表示パネル7,8の上辺側が下辺側よりもやや長い台形形状として図示されている。 【0034】 図3は、図2のように表示パネル7,8を配置したことに基づく作用効果についての説明図であり、(a)は、パネル面が下方に傾けて取り付けられたかご内表示パネル7(又は乗り場表示パネル8)に対して携帯端末10のカメラを向け、表示された2次元コードの情報を読み取ろうとしている状態を示し、(b)は、(a)における携帯端末10が認識する2次元コード画像を示している。 【0035】 図3(a)において、かご内表示パネル7は上端部が寸法Tだけ突出した状態で取付座19を介して壁面に取り付けられており、そのパネル面が角度θ_(0)だけ下方に傾いた状態で配置されている。そして、乗客Mは携帯端末10のカメラを2次元コード表示位置Pに向け、携帯端末10に2次元コードの変換動作を行わせようとしている。この状態では、携帯端末10のカメラの軸線Sが2次元コード表示位置Pを通る垂線上にあるため、携帯端末10が認識する2次元コード画像は図3(b)に示すように、ほとんど歪みのない理想的な画像となり、携帯端末10のカメラと2次元コードの各部位までの距離はどれもほぼ等しくなる。したがって、乗客Mは携帯端末10のフォーカス合わせを容易且つ正確に行うことができ、携帯端末10の2次元コード変換動作を円滑に行わせることができる。」 (3f)「【0038】 また、本実施形態では、かご内表示パネル7の背面側に取付座19(又は表示パネルの筐体)を固着しているのでかご内表示パネル7の壁面に対する傾斜角θ_(0)は固定値となっているが、取付座19に角度調節機能を付加するなどして、この傾斜角θ_(0)を可変とすることも可能である。 【0039】 次に、図1における乗客Mの動作例を図4のフローチャートを参照しつつ説明する。まず、利用者はかごに乗車する(ステップ1)。すると、かご内に設置されている人感センサ(図示せず)が、かご内の乗客Mの存在を検知し、この検知信号に基づき、表示制御装置3は表示情報蓄積手段4に蓄積されている表示情報をかご内表示パネル7及び乗り場表示パネル8に表示させる。」 (3g)「【0042】 上記のメッセージにより、乗客Mは基本情報に興味を覚え、詳細情報を得るべく画面に表示されている2次元コード9を自己の持っている携帯端末10で撮影し、2次元コード9に含まれる文字情報を携帯端末10の画面に表示させる(ステップ3)。このとき、かご内表示パネル7は、図2(a)に示したように、天井部14付近の高い位置に設置されているので、かご内に乗客M以外の者が複数居たとしても、これら他の乗客の陰になって乗客Mが画面を見られないというような事態は生じない。」 (3h)「【0049】 上述したように、本発明の第1の実施形態では、かご内表示パネル又は乗り場表示パネルをそのパネル面が下方に傾いた状態となるように配置し、携帯端末が認識する2次元コード画像がほとんど歪みのない理想的な画像となるようにしているので、乗客は携帯端末のフォーカス合わせを容易且つ正確に行うことができ、携帯端末の2次元コード変換動作を円滑に行わせることができる。」 また、文献5の記載から、文献5には、次の事項が記載されているといえる。 (3i)段落【0042】及び【0049】並びに【図2】(a)及び【図3】(a)の記載より、取付座19は、かご内表示パネル7のパネル面が下方に傾いた状態となるように、かつ、天井部14付近の高い位置で、かご壁面に設置されており、また、取付座19により、かご内表示パネル7のパネル面が下方に傾斜して、かご壁面に取り付けられているといえる。 文献5の記載事項及び認定事項より、文献5には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されているといえる。 [引用発明3] 「エレベータの乗客に対して各種情報を表示させるエレベータの情報表示システムであって、 かご内表示パネル7と、 かご内表示パネル7をエレベータの壁面に取り付ける取付座19と、 を備え、 取付座19は、かご内表示パネル7のパネル面が下方に傾いた状態となるように、かつ、天井部14付近の高い位置で、かご壁面に設置され、 取付座19により、かご内表示パネル7のパネル面が下方に傾斜して、かご壁面に取り付けられているエレベータの情報表示システム。」 (4)文献6 文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。 (4a)「【請求項2】 筐体と、 前記筐体に収容され、表示画面を有した表示パネルと、 前記表示画面に面した第1面と、該第1面とは反対側に位置して外部に露出した第2面と、前記第2面の少なくとも一辺に沿って設けられて前記表示パネルの厚さ方向で前記第2面よりも前記筐体の内側に位置した係止面とを有した光透過性の前面パネルと、 前記筐体に設けられて前記表示パネルの厚さ方向で前記係止面に外側から面する支持部と、 を備えた電子機器。」 (4b)「【0001】 本発明の実施形態は、医療用モニター、電子機器及び映像表示ユニットに関する。」 (4c)「【0009】 (第1実施形態) 図1は、第1実施形態に係る映像表示ユニット1を示す。図2に示すように、映像表示ユニット1は、映像表示機器2と、該映像表示機器2に取り付けられる保護カバー3とを含む。映像表示機器2は、例えばモニターである。なお本実施形態が適用可能な映像表示機器は、上記に限らず、デジタルサイネージや、タブレット端末(多機能携帯端末)、スマートフォン、またはテレビジョン受像機のような種々の電子機器が幅広く該当する。 【0010】 図2に示すように、映像表示機器2は、筐体11と、スタンド12とを有する。スタンド12は、例えば筐体11の背面に取り付けられ、筐体11を鉛直状の姿勢に保持する。なお、映像表示機器2は、スタンド12を有しない壁掛けタイプでもよい。」 (4d)「【0092】 (第3実施形態) 図16は、第3実施形態に係る電子機器91を示す。図16に示すように、電子機器91は、タブレット端末(多機能携帯端末)である。本実施形態では、係止面22c及び支持部61は、第1辺51及び第2辺52のそれぞれに沿って設けられる。なお、係止面22c及び支持部61は、前面パネル22の4辺51,52,53,54のそれぞれに沿って設けられてもよい。」 (5)文献10 文献10には、図面とともに次の事項が記載されている。 (5a)「【0001】 本発明は、エレベータかご内の防犯映像を撮影するエレベータ用防犯カメラシステムに関する。」 (5b)「【0002】 従来、乗りかご内にカメラが取付けられ、また乗りかご上部にハードディスクなどの記録装置が設置され、カメラで撮影されたかご内の映像を記録装置に記録し、また、乗りかご内に表示機を取付け、カメラで撮影された映像を記録装置に記録し、また表示機に表示することにより、乗りかご内における犯罪抑止効果を図っている。」 (5c)「【0007】 本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、乗客の顔を確実に撮影し、事件発生時に人物の特定を可能にし、犯罪抑止効果を高めるエレベータ用防犯カメラシステムを提供することを目的とする。」 (5d)「【0008】 (1) 上記課題を解決するために、本発明は、エレベータかご内を撮影する人物撮影用カメラと、この人物撮影用カメラで撮影された映像を記録する記録装置と、前記かご内の映像を表示する表示機とを有するエレベータ用防犯カメラシステムにおいて、 前記表示機内部もしくは表示機付近に前記人物撮影用カメラを設置し、当該表示機に表示される映像を見ている乗客の少なくとも顔画像を撮影する構成である。」 (5e)「【0020】 図1は本発明に係るエレベータ用防犯カメラシステムの一実施の形態を示す構成図である。 【0021】 この防犯カメラシステムは、乗りかご1内の状況を撮影するカメラ(以下、人物撮影用カメラと呼ぶ)2と、乗りかご1上部に設置され、人物撮影用カメラ2で撮影された映像を記録する例えばハードディスクレコーダなどの記録装置3と、人物撮影用カメラ2で撮影された映像を直接表示し、又は記録装置3に記録された映像情報を読み出して表示する表示機4とによって構成されている。図中、5,6は乗りかご1内の乗客、7はかごドアである。」 (5f)「【0023】 この人物撮影用カメラ2は、表示機4内部又は表示機4付近に設置するものとする。表示機4内に人物撮影用カメラ2を内蔵する場合、表示機4内にカメラ2が取付けられていることを極力認識させるように取付ける方法もあるが、外部から直接人物撮影用カメラ2と判断されると防犯上好ましくない場合には、表示機4自体の形状、色などに合せ、かつ撮影上支障をきたさない材料で覆うように取付けるものとする。また、表示機4付近に人物撮影用カメラ2を設置する例としては、例えば表示機上部や側部に取付けるとか、或いは表示機4に比較的近い個所の側板などに埋め込んで撮影上支障をきたさない材料で覆うようにすれば、外部から直接人物撮影用カメラ2と容易に判断され難い。勿論、犯罪抑止効果を上げるためには、人物撮影用カメラ2が取付けられていることを積極的に認識させることも重要である。」 (5g)「【0029】 通常、乗客は、乗りかご1内に乗り込んでかごドア7が閉じた後、もしくはかごドア7が閉じた後に行き先階登録ボタンを操作した後、表示機4に表示される映像を意識し、当該映像を見ようとして目線を表示機4の方向に向けた際、表示機4内又は表示機4付近に設置されている人物撮影用カメラ2が乗客5,6の顔画像を撮影する。この撮影された乗客5,6の顔画像は、乗りかご1上部に設置される記録装置3に記録され、また同時に表示機4にも表示される。」 また、文献10の記載から文献10には、次の事項が記載されているといえる。 (5h)段落【0021】、【0029】及び【図1】の記載より、表示機4はエレベータの乗りかご1内に設置されているといえる。 文献10の記載事項及び認定事項より、文献10には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されているといえる。 [引用発明4] 「エレベータの乗りかご1内に設置された表示機4であって、当該表示機4内には人物撮影用カメラ2が設置され、 エレベータの乗客に対して、映像を表示し、 表示機4に表示される映像を見ている乗客の顔画像を撮影し、 撮影された顔画像を記録装置3に記録する、 エレベータ用防犯カメラシステム。」 5 当審の判断 (1)特許法第29条第2項に関して ア 文献1を主たる引用例として (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「エレベータ」、「乗員」、「画像情報」及び「画像情報配信システム」は、それぞれ本件発明1の「エレベーター」、「乗員」、「画像」及び「表示装置」に相当する。 したがって、引用発明1の「エレベータの乗員に画像情報を表示する画像情報配信システム」は、本件発明1の「エレベーターの乗員に対して画像を表示する表示装置」に相当する。 引用発明1の「液晶モニター2」は、本件発明1の「表示画面」に相当するから、引用発明1の「液晶モニター2」「を設けてなる」ことは、本件発明1の「表示画面を有する」ことに相当する。 引用発明1の「乗りかご5内の状況を撮影するカメラ」、「中央制御部19」及び「記憶部15」は、それぞれ、本件発明1の「カメラ」、「CPU」及び「メモリ」に相当する。また、引用発明1の「画像情報表示端末1」は、「画像を表示する手段」である限度で、本件発明1の「タブレット端末」と共通する。 したがって、引用発明1の「画像表示を行う液晶モニター2、中央制御部19、記憶部15及び乗りかご5内の状況を撮影するビデオカメラ3を設けてなる、画像情報表示端末1を備え」ることは、本件発明1の「画像を表示する表示画面を有するCPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイス備えるタブレット端末」「を備え」ることとの対比において、「画像を表示する表示画面を有するCPU、メモリ及びカメラを備える画像を表示する手段」「を備え」るとの限度で共通する。 引用発明1の「画像情報表示端末1」は、「エレベータの乗りかご5の上部に、画像表示を行う液晶モニター2が乗員側に向くように、かつ、乗員の視線の高さよりも上側になるように設置されている」から、引用発明1が、画像情報表示端末1をエレベータ乗りかご5の内壁面に支持する支持部材を備えていることは明らかである。 引用発明1の「乗りかご5」は、本件発明1の「かご」に相当するから、引用発明1の「画像情報表示端末1は、エレベータの乗りかご5の上部に、画像表示を行う液晶モニター2が乗員側に向くように、かつ、乗員の視線の高さよりも上側になるように設置されている」ことは、引用発明1が、本件発明1の「前記支持部材は、前記表示画面が前記乗員側に向くように、かつ、前記乗員の視線の高さよりも上側になるように、前記エレベーターのかごの内壁面に設置され」に相当する構成を有することにより実現さているといえる。 以上のとおりであるから、本件発明1と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点1] 「エレベーターの乗員に対して画像を表示する表示装置であって、 画像を表示する表示画面を有するCPU、メモリ及びカメラを備える画像を表示する手段と、 前記画像を表示する手段を支持する支持部材と、 を備え、 前記支持部材は、前記表示画面が前記乗員側に向くように、かつ、前記乗員の視線の高さよりも上側になるように、前記エレベーターのかごの内壁面に設置されている表示装置。」 [相違点1] 画像を表示する手段に関し、本件発明1は、「画像を表示する表示画面を有するCPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末」であるのに対し、引用発明1は、「画像表示を行う液晶モニター2、中央制御部19、記憶部15及び乗りかご5内の状況を撮影するビデオカメラ3を設けてなる、画像情報表示端末1」である、すなわち、タブレット端末ではなく画像情報表示端末であり、GPS受信機、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えているものとは特定されていない点。 [相違点2] 本件発明1は、「前記支持部材が設置された際に、前記表示画面の上辺が前記内壁面から離間するように、当該表示画面を前記内壁面に対して所定の角度で傾斜させる」ようにされているのに対し、引用発明1は、かかる特定がされていない点。 b 判断 相違点1について検討する。 本件発明1は、取り付け及び撤去が簡易なエレベーター内の表示装置を提供することを目的として、エレベーター内の表示装置(画像を表示する手段)として、タブレット端末を用い、当該タブレット端末が、特に、GPS受信機を備えるものである。 そして、タブレット端末を用いることによって、エレベーター内の表示装置として、取り付けおよび撤去を簡易とするという目的を達成すると共に、取り付け及び撤去が簡易なタブレット端末がGPS受信機を備える構成により、タブレット端末が持ち去られるなどによって、タブレット端末の位置が変わった場合であっても、タブレット端末の現在位置を把握することができ、盗難防止の役割を果たすことができることとしたものであると解される(本件特許明細書段落【0006】、【0035】及び【0048】を参照。)。 引用発明1の画像情報表示端末1は、エレベータ内の表示装置であるものの、取り付けおよび撤去を簡易とすることを目的とするものではないから、引用発明1において、画像情報表示端末1の位置が変化しうるので、その位置を把握する必要がある、という課題は存在しないし、かかる課題が当業者にとって自明であるとの証拠もない。 そうしてみると、仮に、画像を表示する手段として、タブレット端末が広く用いられている手段であるとしても(例えば、文献6の段落【0009】及び段落【0092】を参照。)、かかるタブレット端末を引用発明1の画像情報表示端末1に代えて適用する動機付けが存在しない。 しかも、タブレット端末は、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備える携帯端末であるが、GPS受信機を必ず備えているものであるとはいえないことからすれば、仮に、引用発明1の画像情報表示端末1に代えてタブレット端末を用いても、かかるタブレット端末がGPS受信機を備えるものであるとの、本件発明1の構成には至らない。 さらに、文献2?4(及び5?11)においても、エレベーター内における画像を表示する手段として、GPS受信機を備えたタブレット端末を採用することは、記載も示唆もされていない。 したがって、引用発明1において、相違点1に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、文献1に記載された発明及び文献2?11に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2?7について 本件発明2?7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。 したがって、本件発明2?7と引用発明1との間には、少なくとも、上記(ア)aで示した相違点1及び2が存在することとなる。 引用発明1において、相違点1に係る本件発明2?7の構成となすことは、上記(ア)bで説示と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たことではないから、本件発明2?7は、文献1に記載された発明及び文献2?11に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (ウ)本件発明8について a 対比 本件発明8と引用発明2とを対比する。 引用発明2の「エレベータ」、「乗りかご5」、「中央制御部19」、「記憶部15」及び「乗りかご5内の状況を撮影するビデオカメラ3」は、それぞれ、本件発明8の「エレベーター」、「かご」、「CPU」、「メモリ」及び「カメラ」に相当する。また、引用発明2の「画像情報表示端末1」は、「画像を表示する手段」である限度で、本件発明8の「タブレット端末」と共通する。 したがって、引用発明2の「エレベータのかご内に設置された、中央制御部19、記憶部15及び乗りかご5内の状況を撮影するビデオカメラ3を設けてなる、画像情報表示端末1」は、本件発明8の「エレベーターのかご内に設置されたCPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末」との対比において、「エレベーターのかご内に設置されたCPU、メモリ、カメラを備える画像を表示する手段」との限度で共通する。 引用発明2の「画像情報」は、本件発明8の「画像」に相当するから、引用発明2の「画像情報を表示する処理」は、本件発明8の「画像を表示する第1の処理」に相当する。 引用発明2の「エレベータの乗りかご内を撮影する処理」は、本件発明8の「前記第1の処理によって表示される画像を見ている乗員を撮影する第2の処理」との対比において、「かご内を撮影する第2の処理」との限度で共通する。 引用発明2の「撮影した映像から画像認識による情報の抽出する処理」は、撮影された情報を処理するものといえるから、本件発明8の「前記第2の処理によって撮影された情報を記憶する第3の処理」との対比において、「前記第2の処理によって撮影された情報を処理する第3の処理」との限度で共通する。 引用発明2の「画像情報配信システム」が、引用発明2で特定される各処理を実行するプログラムを具備することは明らかである。 したがって、本件発明8と引用発明2との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点2] 「エレベーターのかご内に設置されたCPU、メモリ、カメラを備える画像を表示する手段に、 前記エレベーターの乗員に対して画像を表示する第1の処理と、 かご内を撮影する第2の処理と、 前記第2の処理によって撮影された情報を処理する第3の処理と、 を実行させるプログラム。」 [相違点3] 画像を表示する手段に関し、本件発明8は、「CPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末」であるのに対し、引用発明2は、「中央制御部19、記憶部15及び乗りかご5内の状況を撮影するビデオカメラ3を設けてなる、画像情報表示端末1」である、すなわち、タブレット端末ではなく画像情報表示端末であり、GPS受信機、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えているものとは特定されていない点。 [相違点4] 第2の処理に関し、本件発明8は、「前記第1の処理によって表示される画像を見ている乗員を撮影する」ものであるのに対し、引用発明は、「エレベータの乗りかご5内を撮影する」ものであり、撮影の対象が表示される画像を見ている乗員との特定がされていない点。 [相違点5] 第3の処理に関し、本件発明8は、「前記第2の処理によって撮影された情報を記憶する」処理であるのに対し、引用発明2は、「撮影した映像から画像認識による情報の抽出する処理」である点。 b 判断 相違点3について検討する。 本件発明8のタブレット端末も、引用発明2の画像情報表示端末1もどちらも、画像を表示する表示画面を有するものであるから、相違点3は、実質的には、上記ア(ア)aで示した相違点1と同じである。 したがって、上記ア(ア)bでの説示と同様に理由により、引用発明8において、相違点3に係る本件発明8の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、その余の相違点について検討するまでもなく、本件発明8は、文献1に記載された発明及び文献2?11に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 文献5を主たる引用例として (ア)本件発明1について a 対比 本件発明1と引用発明3とを対比する。 引用発明3の「エレベータ」及び「乗客」は、それぞれ、本件発明1の「エレベーター」及び「乗員」に相当する。 引用発明3の「各種情報」は、「情報表示システム」によって、表示されるものであるから、引用発明3の「各種情報」及び「情報表示システム」は、本件発明1の「画像」及び「表示装置」に相当する。 したがって、引用発明3の「エレベータの乗客に対して各種情報を表示させるエレベータの情報表示システム」は、本件発明1の「エレベーターの乗員に対して画像を表示する表示装置」に相当する。 引用発明3の「かご内表示パネル7」は、各種情報を表示する画像を表示する手段であるから、表示画面を有するものといえ、本件発明1の「画像を表示する表示画面を有するCPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末」との対比において、「画像を表示する表示画面を有する画像を表示する手段」との限度で共通する。 引用発明3の「取付座19」は、「かご内表示パネル7をエレベータの壁面に取り付ける」ものであり、かご内表示パネル7をエレベータの壁面に支持する支持部材であるといえ、本件発明1の「支持部材」に相当する。 引用発明3の「かご壁面」は、本件発明1の「かごの内壁面」に相当する。 引用発明3の「かご内表示パネル7のパネル面が下方に傾いた状態」とは、表示画面たるパネル面が乗客側に向くような状態といえるから、本件発明1の「前記表示画面が前記乗員側に向く」状態に相当する。 引用発明3の「天井部14付近の高い位置」とは、これにより、表示画面たるパネル面が乗客の視線の高さよりも上側になるといえるから、本件発明1の「前記乗員の視線の高さよりも上側になるよう」な状態に相当する。 したがって、引用発明3の「取付座19は、かご内表示パネル7のパネル面が下方に傾いた状態となるように、かつ、天井部14付近の高い位置で、かご壁面に設置され」ることは、本件発明1の「前記支持部材は、前記表示画面が前記乗員側に向くように、かつ、前記乗員の視線の高さよりも上側になるように、前記エレベーターのかごの内壁面に設置され」ることに相当する。 引用発明3の「取付座19により、かご内表示パネル7のパネル面が下方に傾斜して、かご壁面に取り付けられている」は、これにより、取付座19が設置された際に、かご内表示パネル7のパネル面の上辺がかご壁面から離間し、パネル面がかご壁面に対して所定の角度で傾斜された状態となるものといえるから、本件発明1の「前記支持部材が設置された際に、前記表示画面の上辺が前記内壁面から離間するように、当該表示画面を前記内壁面に対して所定の角度で傾斜させること」に相当する。 したがって、本件発明1と引用発明3との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点3] 「エレベーターの乗員に対して画像を表示する表示装置であって、 画像を表示する表示画面を有する画像を表示する手段と、 前記画像を表示する手段を支持する支持部材と、 を備え、 前記支持部材は、前記表示画面が前記乗員側に向くように、かつ、前記乗員の視線の高さよりも上側になるように、前記エレベーターのかごの内壁面に設置され、 前記支持部材が設置された際に、前記表示画面の上辺が前記内壁面から離間するように、当該表示画面を前記内壁面に対して所定の角度で傾斜させる表示装置。」 [相違点6] 画像を表示する手段に関し、本件発明1は、「CPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末」であるのに対し、引用発明3は、「かご内表示パネル7」であり、CPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるか否かは特定されていない点。 b 判断 相違点6について検討する。 上記ア(ア)bで説示のとおり、本件発明1は、タブレット端末であって、GPS受信機を備える点を特徴としているとこころ、引用発明3のかご内表示パネル7は、エレベータ内の表示装置であるものの、取り付けおよび撤去を簡易とすることを目的とするものではないから、引用発明3において、かご内表示パネル7の位置が変化しうるので、その位置を把握する必要がある、という課題は存在しないし、かかる課題が当業者にとって自明であるとの証拠もない。 そうしてみると、仮に、画像を表示する手段として、タブレット端末が広く用いられている手段であるとしても(例えば、文献6の段落【0009】及び段落【0092】を参照。)、かかるタブレット端末を引用発明3のかご内表示パネル7に代えて適用する動機付けが存在しない。 しかも、タブレット端末は、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備える携帯端末であるが、GPS受信機を必ず備えているものであるとはいえないことからすれば、仮に、引用発明3のかご内表示パネル7に代えてタブレット端末を用いても、かかるタブレット端末がGPS受信機を備えるものであるとの、本件発明1の構成には至らない。 さらに、文献1?4及び6?11においても、エレベーター内における画像を表示する手段として、GPS受信機を備えたタブレット端末を採用することは、記載も示唆もされていない。 したがって、引用発明3において、相違点6に係る本件発明1の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、本件発明1は、文献5に記載された発明及び文献1?4、6?11に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (イ)本件発明2?7について 本件発明2?7は、本件発明1の発明特定事項を全て含み更に限定したものである。 したがって、本件発明2?7と引用発明3との間には、少なくとも、上記(ア)aで示した相違点6が存在することとなる。 引用発明3において、相違点6に係る本件発明2?7の構成となすことは、上記(ア)bで説示と同様の理由により、当業者が容易に想到し得たことではないから、本件発明2?7は、文献5に記載された発明及び文献1?4、6?11に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 ウ 文献10を主たる引用例として (ア)対比 本件発明8と引用発明4を対比する。 引用発明4の「エレベータ」及び「乗りかご1」は、それぞれ、本件発明8の「エレベーター」及び「かご」に相当する。 引用発明4の「表示機4」は、画像を表示させる手段という点でタブレット端末と機能を共通する。また、引用発明4の「当該表示機4内には人物撮影用カメラ2が設置され」ることは、表示機4が、人物撮影用カメラ2を備えるものであるといえる。 したがって、引用発明4の「エレベータの乗りかご1内に設置された表示機4であって、当該表示機4内には人物撮影用カメラ2が設置され」ることは、本件発明8の「エレベータのかご内に設置されたCPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末」との対比において、「エレベータのかご内に設置された、カメラを備える画像を表示する手段」の限度で共通する。 引用発明4の「エレベータの乗客に対して、映像を表示」することは、本件発明8の「前記エレベータの乗員に対して画像を表示する第1の処理」を実行することに相当する。 引用発明4の「表示機4に表示される映像を見ている乗客の顔画像を撮影」することは、本件発明8の「前記第1の処理によって表示される画像を見ている乗員を撮影する第2の処理」を実行することに相当する。 引用発明4の「撮影された顔画像を記録装置3に記録する」ことは、本件発明8の「前記第2の処理によって撮影された情報を記憶する第3の処理」を実行することに相当する。 引用発明4の「エレベータ用防犯カメラシステム」は、エレベータの防犯を支援するものであり、また、引用発明4で特定される各処理(映像の表示、顔画像の撮影及び撮影した顔画像の記録)を実行するプログラムを具備することは明らかである。 したがって、本件発明8と引用発明4との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点4] 「エレベーターのかご内に設置された、カメラを備える画像を表示する手段に、 前記エレベーターの乗員に対して画像を表示する第1の処理と、 前記第1の処理によって表示される画像を見ている乗員を撮影する第2の処理と、 前記第2の処理によって撮影された情報を記憶する第3の処理と、 を実行させる防犯支援プログラム。」 [相違点7] 画像を表示する手段に関し、本件発明8は、「CPU、メモリ、GPS受信機、カメラ、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えるタブレット端末」であるのに対し、引用発明4は、「人物撮影用カメラ2」を備えるものの、タブレット端末ではなく「表示機4」であり、CPU、メモリ、GPS受信機、スピーカ、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備えているものとは特定されていない点。 (イ)判断 本件発明8は、取り付け及び撤去が簡易なエレベーター内の表示装置の防犯支援プログラムを提供することを目的として、エレベーター内の表示装置(画像を表示する手段)として、タブレット端末を用い、当該タブレット端末が、特に、GPS受信機を備えるものである。 そして、タブレット端末を用いることによって、エレベーター内の表示装置として、取り付けおよび撤去を簡易とするという目的を達成すると共に、取り付け及び撤去が簡易なタブレット端末がGPS受信機を備える構成により、タブレット端末が持ち去られるなどによって、タブレット端末の位置が変わった場合であっても、タブレット端末の現在位置を把握することができ、盗難防止の役割を果たすことができることとしたものであると解される(本件特許明細書段落【0006】、【0035】及び【0048】を参照。)。 引用発明4の表示機4は、エレベータ内の表示装置であるものの、取り付けおよび撤去を簡易とすることを目的とするものではないから、引用発明4において、表示機4の位置が変化しうるので、その位置を把握する必要がある、という課題は存在しないし、かかる課題が当業者にとって自明であるとの証拠もない。 そうしてみると、仮に、画像を表示する手段として、タブレット端末が広く用いられているとしても(例えば、文献6の段落【0009】及び段落【0092】を参照。)、かかるタブレット手段を引用発明4の表示機4に代えて適用する動機付けが存在しない。 しかも、タブレット端末は、入出力デバイス及び通信インターフェイスを備える携帯端末であるが、GPS受信機を必ず備えているものであるとはいえないことからすれば、仮に、引用発明4の表示機4に代えてタブレット端末を用いても、かかるタブレット端末がGPS受信機を備えるものであるとの、本件発明8の構成には至らない。 さらに、文献1?9及び11においても、エレベーター内における画像を表示する手段として、GPS受信機を備えたタブレット端末を採用することは、記載も示唆もされていない。 したがって、引用発明4において、相違点7に係る本件発明8の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことではない。 よって、本件発明8は、文献10に記載された発明及び文献1?9及び11に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)特許法第17条の2第3項に関して 本件特許は、審査過程において、特許請求の範囲の請求項1に記載されていた「情報処理装置」及び請求項8に記載されていた「コンピュータ」を、それぞれ、「タブレット端末」とする補正(令和1年5月10日にされた手続補正)がされているところ、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「タブレット端末」との明示の記載はないことから、この点について検討する。 当初明細書等の段落【0006】、【0019】、【0026】、【0035】及び【0048】の記載によれば、本件特許は、エレベーターのかご内壁面に情報処理装置101を設置し、当該情報処理装置101を、エレベーターのかごの内壁面に設置される支持部材102に装着、取り外しが可能なものとし、取り付け及び撤去が簡易なエレベーター内の表示装置および防犯支援プログラムを提供しているものである。 そうしてみると、当初明細書等には、エレベーター内の情報表示装置として、取り付け及び撤去が簡易である、可搬型の情報処理装置が記載されていたと当業者には理解できる。 そして、「タブレット端末」は、可搬型の情報処理装置又はコンピュータとして、この出願の出願時当業者に広く知られていたものであって、しかも、「情報処理装置」又は「コンピュータ」の下位概念というべきものであることからすれば、出願時の技術常識に照らして、当初明細書等の記載から自明な事項であるといえる。 したがって、「タブレット端末」は、当業者にとって、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項であるから、「情報処理装置」及び「コンピュータ」を「タブレット端末」とする補正は、このようにして導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものではないといえ、上記補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではない。 上記に説示のとおりであるから、特許異議申立人Aの請求項1?8に係る特許が特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものである旨の主張は採用できない。 (3)特許法第36条第6項第1号に関して ア 特許異議申立人Aは、請求項1及び8に記載の「タブレット端末」は、発明の詳細な説明に記載されていたものではないから、請求項1?8に係る特許は、発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定に違反されたものである旨主張する。 また、特許異議申立人Bは、請求項3の「前記画像が表示されている間だけ撮影する」とは、画像を表示するタイミングを認識(検出)して、その認識したタイミングに基づいて、撮影するタイミング(撮影のON/OFF)を制御することで、画像が表示されている間だけ撮影することを意図しているものだとすると、その内容については、発明の詳細な説明にも図面にも記載されていないこととなるから、請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4?7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものである旨主張する。 イ 上記(2)で説示のとおり、請求項1及び8に記載の「タブレット端末」は、発明の詳細な説明に示唆されていた事項であるといえるから、本件特許の請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2?7並びに請求項8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号の規定に違反するものではない。 ウ 本件特許の明細書段落【0071】?【0077】及び【図8】には、表示画面103に画像の表示が開始されれば、カメラ605によるかご内撮影が開始され、画像の表示が停止されれば、かご内撮影が停止される、すなわち、請求項3の「画像が表示されている間だけ撮影する」ことが記載されているといえるから、本件特許の請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4?7に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許法第36条第6項第1号に違反するものではない。 エ したがって、特許法第36条第6項第1号に関する、特許異議申立人Aの主張は採用できず、また、特許異議申立人Bの主張も採用できない。 (4)特許法第36条第6項第2号に関して ア 特許異議申立人Aは、請求項1の「カメラ」と請求項2の「撮像部」との関係及び、請求項1の「カメラ」と請求項3の「前記撮像部」との関係が不明確であるから、請求項2及び3並びに請求項2及び3を直接又は間接的に引用する請求項4?7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである旨主張する。 また、特許異議申立人Bは、請求項3の「前記画像が表示されている間だけ撮影する」は、画像が表示されている間だけ撮影することを意図しているのか、画像を表示するタイミングを認識して、その認識したタイミングに基づいて、撮影するタイミング(撮影のON/OFF)を制御することで、画像が表示されている間だけ撮影するということを意図しているのか、あるいはその両方なのか明確でなく、請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4?7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである旨主張する。 さらに、特許異議申立人Bは、請求項6の「内壁面」の材質が不明確であるから、請求項6及び請求項6を引用する請求項7に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定に違反してされたものである旨も主張する。 イ 本件特許明細書段落【0019】の「撮像部(カメラ)」との記載を参酌すれば、請求項2の「撮像部」と請求項1の「カメラ」の関係、及び、請求項3の「前記撮像部」と請求項1の「カメラ」との関係は不明確であるとまではいえないから、請求項2?7の記載は何ら不明確なものとはいえず、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。 ウ 本件特許の明細書段落【0071】?【0077】及び【図8】の記載からすれば、請求項3の「画像が表示されている間だけ撮影する」とは、表示画面103に画像の表示が開始されれば、カメラ605によるかご内撮影が開始され、画像の表示が停止されれば、かご内撮影が停止されることと当業者は明確に理解ができる。 したがって、請求項3及び請求項3を直接又は間接的に引用する請求項4?7の記載は何ら不明確なものとはいえず、特許法第36条第6項第2号の規定に違反するものではない。 エ 請求項6の「支持部材」は、「前記内壁面に対して磁力を用いて固定する」ものであり、「内壁面」が、磁力による固定作用を発揮できる材質であることは当業者には明らかであるから、請求項6及び請求項6を引用する請求項7に係る発明は明確であるといえる。 オ したがって、特許法第36条第6項第2号に関する、特許異議申立人Aの主張は採用できず、また、特許異議申立人Bの主張も採用できない。 6 むすび 以上のとおりであるので、異議申立人鈴木亮及び福元博之の主張する特許異議の申立て理由及び証拠によっては、請求項1?8に係る特許を取り消すことができない。 また、他に請求項1?8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2020-12-11 |
出願番号 | 特願2018-36635(P2018-36635) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(B66B)
P 1 651・ 55- Y (B66B) P 1 651・ 121- Y (B66B) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 羽月 竜治 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
内田 博之 尾崎 和寛 |
登録日 | 2020-03-05 |
登録番号 | 特許第6671059号(P6671059) |
権利者 | 株式会社東京 |
発明の名称 | 表示装置および防犯支援プログラム |