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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C12G 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 C12G 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 C12G |
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管理番号 | 1370043 |
異議申立番号 | 異議2020-700694 |
総通号数 | 254 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-02-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-09-14 |
確定日 | 2021-01-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6664900号発明「粉末酒および粉末酒の味質改善方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6664900号の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6664900号(以下、「本件特許」という。)の請求項1?13に係る特許についての出願は、平成27年7月30日に出願され、令和2年2月21日にその特許権の設定登録がされ、同年3月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許の全請求項に対し、令和2年9月14日付けで特許異議申立人 冨永 道治(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1?13に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 以下、本件特許の請求項1?13に係る発明を、請求項順にそれぞれ、「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などといい、これらをまとめて「本件特許発明」ともいう。 「【請求項1】 アルコール粉末および脂質を含む粉末酒であって、 当該粉末酒は、塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムおよびアセスルファムカリウムから選択される一種または二種以上のカリウム塩を含み、 前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%以下のとき、 前記粉末酒中のカリウム元素の含有量が前記粉末酒全体に対して0.015質量%以上2.0質量%以下であり、 前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%超過のとき、 前記粉末酒中のカリウム元素の含有量が前記粉末酒全体に対して0.39質量%以上2.0質量%以下である粉末酒。 【請求項2】 請求項1に記載の粉末酒において、 前記粉末酒中の前記カリウム元素の含有量に対するアルコールの含有量の比が10以上1800以下である粉末酒。 【請求項3】 請求項1または2に記載の粉末酒において、 前記粉末酒中のアルコールの含有量が、前記粉末酒全体に対して1質量%以上60質量%以下である粉末酒。 【請求項4】 請求項1乃至3いずれか一項に記載の粉末酒において、 前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して0.01質量%以上である粉末酒。 【請求項5】 請求項1乃至4いずれか一項に記載の粉末酒において、 液体に溶解させて飲料を作製するために用いられる粉末酒。 【請求項6】 請求項1乃至5いずれか一項に記載の粉末酒において、 前記粉末酒を液体に溶解して飲用する際のアルコール濃度が1体積%以上20体積%以下である粉末酒。 【請求項7】 請求項1乃至6いずれか一項に記載の粉末酒において、 チューハイ、カクテル、梅酒、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料および梅酒テイスト飲料から選択される飲料の粉末である粉末酒。 【請求項8】 アルコール粉末および脂質を含む粉末酒の味質改善方法であって、 前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%以下のとき、 前記粉末酒中のカリウム元素の含有量を前記粉末酒全体に対して0.015質量%以上2.0質量%以下に調整し、 前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%超過のとき、 前記粉末酒中のカリウム元素の含有量を前記粉末酒全体に対して0.39質量%以上2.0質量%以下に調整し、 塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムおよびアセスルファムカリウムから選択される一種または二種以上のカリウム塩により前記粉末酒中の前記カリウム元素の含有量を調整する粉末酒の味質改善方法。 【請求項9】 請求項8に記載の粉末酒の味質改善方法において、 前記粉末酒中の前記カリウム元素の含有量に対するアルコールの含有量の比を10以上1800以下に調整する粉末酒の味質改善方法。 【請求項10】 請求項8または9に記載の粉末酒の味質改善方法において、 前記粉末酒中のアルコールの含有量が、前記粉末酒全体に対して1質量%以上60質量%以下である粉末酒の味質改善方法。 【請求項11】 請求項8乃至10いずれか一項に記載の粉末酒の味質改善方法において、 前記粉末酒中の前記脂質の含有量を前記粉末酒全体に対して0.01質量%以上に調整する粉末酒の味質改善方法。 【請求項12】 請求項8乃至11いずれか一項に記載の粉末酒の味質改善方法において、 前記粉末酒を液体に溶解して飲用する際のアルコール濃度が1体積%以上20体積%以下である粉末酒の味質改善方法。 【請求項13】 請求項8乃至12いずれか一項に記載の粉末酒の味質改善方法において、 チューハイ、カクテル、梅酒、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料および梅酒テイスト飲料から選択される飲料の粉末である粉末酒の味質改善方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として以下の甲第1号証?甲第21号証(以下、それぞれ「甲1」、「甲2」などという。)を提出し、以下の申立理由を主張している。 1 理由 (1)理由1(進歩性) 本件特許発明1?13は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の甲1に記載された発明並びに甲2?11、20、21に記載の周知技術に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許発明1?13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当するから取り消すべきものである。 (2)理由2(サポート要件) 本件特許発明1?13に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当するから取り消すべきものである。 (3)理由3(実施可能要件及び委任省令要件) 本件特許発明1?13に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に適合するものではないから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当するから取り消すべきものである。 2 証拠方法 (1)甲1:特開昭60-237942号公報 (2)甲2:食品成分データベース,“し好飲料類/コーヒー/浸出液”, 文部科学省,[令和2年9月1日出力],インターネット<U RL:https://fooddb.mext.go.jp /result/result_top.pl?USER_I D=12661> (3)甲3:特開平10-262642号公報 (4)甲4:特開2009-195125号公報 (5)甲5:特開2003-93036号公報 (6)甲6:国際公開第2015/030253号 (7)甲7:特開2015-80418号公報 (8)甲8:特開2015-33387号公報 (9)甲9:特開2015-96057号公報 (10)甲10:特開2015-65918号公報 (11)甲11:特開2015-65917号公報 (12)甲12:平成27年(行ケ)第10026号の判決文 (13)甲13:特開2014-80518号公報 (14)甲14:特開2014-5447号公報 (15)甲15:特開2015-128421号公報 (16)甲16:特開2003-38119号公報 (17)甲17:食品成分データベース,“し好飲料類/(緑茶類)/玉露 /茶”他,文部科学省,[令和2年9月5日出力],イン ターネット<URL:https://fooddb.m ext.go.jp/result/result_to p.pl?USER_ID=18319> (18)甲18:食品成分データベース,“果実類/アセロラ/10%果汁 入り飲料”他,文部科学省,[令和2年9月5日出力], インターネット<URL:https://fooddb .mext.go.jp/result/result_ top.pl?USER_ID=18276> (19)甲19:食品成分データベース,“乳類/(液状乳類)/普通牛乳 ”,文部科学省,[令和2年9月5日出力],インターネ ット<URL:https://fooddb.mext .go.jp/result/result_top.p l?USER_ID=18244> (20)甲20:食品成分データベース,“よくある質問とその答え”の“ 10.検索結果で表示される特殊な記号の意味はなんです か?”,文部科学省,[令和2年9月9日出力],インタ ーネット<URL:https://fooddb.me xt.go.jp/help.html> (21)甲21:“エタノール水溶液の容量%と重量%との換算表”,一般 社団法人アルコール協会,[令和2年9月9日出力],イ ンターネット<URL:http://www.alco hol.jp/expert/expert_table /10suiyouekikanzan.pdf> なお、甲1?21のうち、甲2、17?21はいずれも、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった電子的技術情報を紙出力したものであるが、甲2、17?19には「出典:日本食品標準成分表2015年版(七訂)」と記載され、甲20には「『日本食品標準成分表2015年版(七訂)』には下記のように記載されております。」とあるところ、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」は、文部科学省のHPによると、公表日が本件特許の出願日(平成27年7月30日)より後の「平成27年12月25日(金曜日)(書籍及びウェブサイト)」であり、甲21は、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった日時が不明である。 また、甲12は、本件特許の出願日より後の「平成27年11月24日判決言渡」の判決である。 第4 甲号証に記載された事項 1 甲1について 甲1には、以下の事項が記載されている。 (甲1a)「(1)酒類とデキストリンを主成分とする糖質との混合溶液を噴霧乾燥して得られる粉末酒を10ないし90重量%含み、残部が凍結乾燥粉末コーヒーからなる粉末コーヒー。」(1ページ左欄5?8行) (甲1b)「〔産業上の利用分野〕 本発明は、改良された粉末コーヒーに関するものであり、より詳しくは、新規な酒類入りの粉末コーヒーに関するものである。 〔従来技術〕 一般に、コーヒー液に少量のブランデーやウィスキー等の酒類を入れれば、風味が引き立つことは、よく知られている。 しかしながら、粉末コーヒーにおいて、これらの酒類を入れたもので香味の優れたものはまだ市販されていない。 〔発明が解決しようとする問題点〕 このように、粉末コーヒーにおいて、ブランデーやウィスキー等の酒類を入れたもので香味の優れたものが市販されていない一つの理由は、ブランデー等の酒類を入れたコーヒー液を、そのまま乾燥して粉末化しようとすると、アルコールが蒸発して、その風味を維持することがきわめて困難になることにある。 その対策として、コーヒー液を粉末にしてから、その粉末にブランデー等を噴霧する方法もあるが、この場合でも、保存中にアルコールが蒸発して、通常のブランデー等を入れたコーヒー液の風味を与えることは困難であった。 ・・・ 本発明者らが解決しようとする問題点は、単に湯に溶かしただけで、いれたてのコーヒーにブランデーやウィスキー等の酒類を入れたコーヒーと同様な風味を有するコーヒー液を作ることができる粉末コーヒーを提供することにある。」(1ページ左欄18行?2ページ左上欄最下行) (甲1c)「〔作用〕 本発明は、その作用との関連において、次のような特徴を有している。 第一の特徴は、ブランデーやウィスキー等の酒類入りのコーヒーを粉末にするのではなく、粉末コーヒーと粉末酒とを混合することにより、アルコールの保持を可能にしたことである。」(2ページ右上欄10行?16行) (甲1d)「〔実施例〕 (1) ブランデー入りコーヒー 出来上がったコーヒーの濃度とブランデーのアルコール濃度が一定になるようにして、次のようなA、B、Cのコーヒーと、D、E、Fのブランデーを準備し、No.1?12のサンプルを調製し、6名のパネラーで、香り、味について、5段階の採点識別試験法で評価を行い、第1表のような結果を得た。 A.通常のレギュラーコーヒー コロンビア産のエキセルソグレードのコーヒー豆をミディアムローストした焙煎豆を粉砕(細挽き)し、その50gを98℃の熱湯600mlでドリップ式抽出器で抽出したもの。1杯分120ml B.凍結乾燥コーヒー コロンビア産のエキセルソグレードのコーヒー豆をミディアムローストした焙煎豆を粉砕(細挽き)し、濃厚に抽出し、凍結乾燥して粉末化したもの。1杯分1.4g ・・・ D.通常のブランデー 特級ブランデー(アルコール度数43°)1杯分2.65g E.非環状デキストリン粉末ブランデー Dと同一のブランデーと非環状デキストリンを用い噴霧乾燥した粉末ブランデー。1杯分3.80g ・・・ サンプルNo.8 凍結乾燥粉末コーヒー(B)1.4gと粉末ブランデー(E)3.80gとを一緒に熱湯120mlに溶かす。」(2ページ右下欄16行?3ページ左下欄18行) (甲1e)「本発明の粉末コーヒーは、上述のような特性を有するので、本発明の実施により、単に粉末を熱湯に溶かすだけで、いれたてのコーヒーにブランデー等の酒類を入れたコーヒーと同様な風味を有する優れた風味のブランデー、ウィスキー等の酒類入りの紅茶を提供することができる。」(5ページ右下欄1?7行) 2 甲2について 甲2は、食品成分「し好飲料類/コーヒー/浸出液」の可食部100g当たりに含まれる脂質、水分、カリウムなどの量を示したものである。 3 甲3について 甲3には、以下の事項が記載されている。 (甲3a)「【要約】 【課題】ボディ感や味の幅があり、爽快で、のどの渇きをいやし、かつ、アルコール飲料の持つ良さと水が持つのどの渇きをいやす効果を併せ持つようなアルコール飲料を提供する。 【解決手段】アルコール濃度が0.1?12v/v%であり、かつ、苦味物質及び塩類を含有することを特徴とするアルコール飲料。苦味物質の例には、カフェイン、ナリンジン、ニガヨモギ抽出物、β-グルコオリゴ糖及びホップ由来の苦味物質の群から選択された1種以上を含有するものがある。塩類の好適な例には、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムがある。」 (甲3b)「【0005】・・・すなわち、アルコール濃度0.1?12v/v%、苦味物質及び塩類を含有させることにより、アルコール飲料でありながら水感覚でのどの渇きをいやす効果を持ち、ボディ感や味の幅があり、爽快な品質特性の飲料を得ることが可能となった。 ・・・ 【0008】・・・使用する塩類は、飲食可能な塩類であればよく、例えばカリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩及び/又はマグネシウム塩が挙げられる。嗜好の観点からは塩化カリウム、塩化ナトリウムが好適である。」 4 甲4について 甲4には、以下の事項が記載されている。 (甲4a)「【0009】 本発明は、アルコールの刺激を低減させた高アルコール飲料において、酒類の好ましいエステル様香味が増強された、アルコール飲料を提供することを目的とする。 ・・・ 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ぶどう風味の高アルコール飲料において、該飲料中のカリウムイオンの含有量を特定の範囲とすることで、酒類の好ましい爽やかなエステル様香味と、成熟したぶどう果実のような濃厚でまろやかな味わいを増強することができることを見出した。」 (甲4b)「【0017】 本発明で用いるカリウムイオンは、生体の必須ミネラルのひとつで、野菜、果実に豊富に含まれており、特にグレープフルーツ、スイカ、メロン等の果実に多量に含まれている。本発明におけるカリウムイオンとしては、カリウム塩を利用することができる。カリウム塩は、食品衛生法上許容されるものであれば特に制限されないが、具体的には、塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸カリウム、リンゴ酸カリウム等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を併用して用いることができる。」 5 甲5について 甲5には、以下の事項が記載されている。 (甲5a)「【0008】本発明者らは、みりん類における前記従来技術の問題点を解決するため鋭意検討を重ねた結果、みりん類のカリウム、マグネシウムなどのミネラル含有量を高めることにより、塩分を少なくして調理した場合でも、食品素材の本来の風味が引き出されて料理がおいしく、従来とは異なった優れた調理効果を示すみりん類が得られることを見出し、本発明を完成させた。」 (甲5b)「【0011】本発明のみりん類について、該みりん類中のカリウム及び/又はマグネシウムの含有量を調整する方法については特に限定はないが、例えば、みりん類の製造工程中の少なくとも一時期にカリウム及び/又はマグネシウムの塩などを添加することによってカリウム及び/又はマグネシウムの含有量が高いみりん類を得ることができる。・・・添加するカリウム及び/又はマグネシウムの形態には制限はないが、例えばカリウムでは、塩化カリウム、酸性リン酸カリウムなどの化学的合成品の食品添加物が対象となる。」 6 甲6について 甲6には、以下の事項が記載されている。 (甲6a)「[0019] 本発明の別の好ましい態様の一例として、アセスルファムカリウムを含む乳入りコーヒー飲料が挙げられる。アセスルファムカリウム独特の苦味や後口のキレが、乳加熱臭と相俟ってコーヒー風味を低下させることがあるが、本発明のコーヒー飲料では、乳加熱臭を低減させるだけでなく、アセスルファムカリウム特有の苦味や後口のキレの悪さも改善することができる。アセスルファムカリウムは、飲料全体に対し0.005質量%以上、好ましくは0.01質量%以上添加することが望ましい。尚、日本の食品衛生法でコーヒー飲料に対するアススルファムカリウムの使用基準が0.035質量%以下と定められている。」 7 甲7について 甲7には、以下の事項が記載されている。 (甲7a)「【0013】 そこで、本発明は、適度な甘みとボディ感で高い嗜好性を有し、かつ香味の経時安定性に優れるコーヒー飲料を提供する。 ・・・ 【0015】 そして、本発明者は、原料由来の微量成分が事後的に生じることを抑制できる設計指針について鋭意検討した。その結果、乳固形分、アセスルファムカリウムおよびステビア抽出物の含有量がそれぞれ特定の条件を満たすように制御すること。」 8 甲8について 甲8には、以下の事項が記載されている。 (甲8a)「【請求項1】 少なくとも1つのミネラルと、 少なくとも1つの高甘味度甘味料と、 少なくとも1つの甘味改善組成物と、 を含む機能性甘味料組成物。 ・・・ 【請求項4】 前記少なくとも1つのミネラルが、カルシウム、塩素、マグネシウム、リン、カリウム、ナトリウム、及び硫黄、又はこれらの組合せを含む大量ミネラルを含む、請求項1に記載の機能性甘味料組成物。 ・・・ 【請求項7】 前記少なくとも1つの高甘味度甘味料が、スクラロース、アセスルファムカリウム又は他の塩類・・・及びこれらの組合せからなる群から選択される合成高甘味度甘味料を含む、請求項1に記載の機能性甘味料組成物。 ・・・ 【請求項61】 前記少なくとも1つの無機燐酸塩が、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、又はリン酸マグネシウムを含む、請求項60に記載の機能性甘味料入り組成物。 ・・・ 【請求項63】 記少なくとも1つの無機塩化物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、又は塩化マグネシウムを含む、請求項62に記載の機能性甘味料入り組成物。 ・・・ 【請求項77】 前記甘味料入り組成物が、食品、飲料、薬品、タバコ、機能性食品、口腔衛生品、又は化粧品である、請求項40に記載の機能性甘味料入り組成物。 ・・・ 【請求項88】 前記飲料が、コーヒーである、請求項78に記載の機能性飲料。」 9 甲9について 甲9には、以下の事項が記載されている。 (甲9a)「【0009】 そこで、本発明は、品質の経時安定性に優れたコーヒー飲料を提供する。 ・・・ 【0012】 本発明によれば、塩基性アミノ酸、ナトリウムおよびカリウムを含むコーヒー飲料であって、 当該コーヒー飲料中の前記塩基性アミノ酸の濃度をx1、 当該コーヒー飲料中の前記ナトリウムの濃度をx2、 当該コーヒー飲料中の前記カリウムの濃度をx3としたとき、 前記ナトリウムの濃度x2と、前記塩基性アミノ酸の濃度x1との比、x2/x1の値が0.15以上0.85以下であり、 前記カリウムの濃度x3と、前記塩基性アミノ酸の濃度x1との比、x3/x1の値が0.3以上1.5以下であるコーヒー飲料が提供される。」 (甲9b)「【0038】 本実施形態に係るコーヒー飲料におけるカリウムは、コーヒー飲料の原料に由来するカリウムを指し、コーヒー豆由来のカリウム、水由来のカリウム、乳分由来のカリウムが主である。また、本実施形態においては、カリウム源を別途添加してもよい。こうしたカリウム源としては、特に限定されないが、たとえば、アセスルファムカリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。なお、これらの成分は、当該コーヒー飲料に対して甘味成分またはpH調整剤として添加されるものである。」 10 甲10について 甲10には、以下の事項が記載されている。 (甲10a)「【請求項5】 飲料100gあたり0.2?0.9gの脂質を含む、請求項1?4のいずれかに記載のコーヒー飲料。」 11 甲11について 甲11には、以下の事項が記載されている。 (甲11a)「【0002】 乳を含むコーヒー飲料は、コーヒーの風味と乳の風味の両方を味わうことができる飲料として愛飲されている。乳に含まれる乳脂肪は、コーヒーの胃に対する刺激を和らげるとともに、口当たりをマイルドにする、飲料に乳の風味や食感を付与するなど風味上の大切な役割をもっており、乳を含む飲料は、一般的に乳脂肪と無脂乳固形成分とを両方含む飲料が好まれている。最近は、乳脂肪の安定性、価格等の観点から、乳脂肪の一部又は全部を植物油脂に代替したコーヒー飲料も開発されている(特許文献1、2)。」 12 甲12について 甲12は、発明の名称が「回転角検出装置」である特許出願の無効審判事件に関する判決である。 13 甲13について 甲13には、以下の事項が記載されている。 (甲13a)「【0002】 近年、澱粉加工技術や酵素技術の発達に伴って、多種多様な澱粉分解物が開発、上市されている。中でも分岐デキストリンは・・・様々な分岐構造や特性をもった分岐デキストリンが開示されている。 ・・・ 【0007】 これら分岐デキストリンは・・・最近の加工食品全般のトレンドとなっている「濃厚感」、「風味の保持、発現」、「味質改善」、「マスキング」、「安定性の付与」などの複合的な課題を解決する飲食品の味質改善のための飲食品添加材としては、満足のいけるものとはなっておらず、更なる改良が課題となっているところである。」 (甲13b)「【0033】 ・・・粘度、及び重合度の比が上記の値を外れてしまうと十分な濃厚感が得られないか、若しくは、濃厚感を通り越して重い糊感を感じてしまう。更に付随して風味の保持や発現、味質改善、マスキング効果においてもバランスが悪くなり、風味は保持されているがマスキングが強すぎて味質や風味の発現が悪くなったり、味質は良いが風味やマスキングが弱いといった現象が生じる。」 (甲13c)「【0048】 【表5】 【実施例4】 【0049】 [コーヒー飲料での比較] 表5のデキストリンを用いて、実施例1の効果の確認試験の表2の処方により、コーヒー飲料を試作した。得られたコーヒー飲料についても、実施例1と同様にパインデックス#1を基準(評価3.0)として評価した。評価結果の平均値を表6に示す。 【0050】 【表6】 ・・・ 【実施例6】 【0055】 [チューハイでの比較] 表5のデキストリンを用いて、表9の処方でレモンチューハイを調製した。具体的には水に、各種デキストリンを溶解した後、濃縮還元レモン透明果汁、各種甘味料、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、フレーバー、及び焼酎を添加し、炭酸水で100部に調整した。容器に充填後、殺菌して、レモンチューハイを調製した。 【0056】 【表9】 【0057】 得られたレモンチューハイについて、実施例4と同様に評価した。評価結果の平均値を表10に示す。 【0058】 【表10】 ・・・ 【実施例10】 【0071】 [粉末酢での比較] 表5のデキストリン(ファイバーソル2は除く)を用いて、粉末酢を調製した。具体的には、酸度15%の醸造酢75部に、上記のデキストリン52部を混合、溶解してスプレー供給液を調製した後、ニロPM-10型スプレードライヤーに入口温度160℃、出口温度95℃、アトマイザー回転数16000rpmの条件で供給して粉末酢を得た。得られた粉末酢について、5質量%水溶液を調製し、パネラー5名で、濃厚感、風味、及び味質について、調製直後と保存2か月後に評価した。結果を表17に示す。 【0072】 【表17】 」 14 甲14について 甲14には、以下の事項が記載されている。 (甲14a)「【0002】 飲料類、ソース・タレ類、ペースト類、菓子類、ベーカリー類をはじめとする様々な加工食品において、甘味の付与、澱粉の老化防止(保水性向上)、粘度の調整、浸透圧の調整、照り・ツヤ感の付与、ボディ感・コク味の付与、食品の増量、不快味のマスキング等を目的として種々の澱粉分解物が添加されている。澱粉分解物とは澱粉を酸または酵素で加水分解することで得られるα-1,4結合したグルコースポリマーを主鎖としたものであり、そのグルコース重合度組成(糖組成)によりデキストリンとマルトオリゴ糖・水飴に大別される。澱粉分解物の味質・物性はその重合度組成に左右され、重合度の高い澱粉分解物を主成分とするデキストリンは低甘味でありボディ感・コク味の付与効果が高いが、高分子特有のデキストリン臭・糊臭を有しているため食品の風味に悪影響を及ぼす可能性や粘度が高く、作業性や食感に悪影響を及ぼす可能性がある。一方で、重合度の低い澱粉分解物を主成分とするマルトオリゴ糖は高分子に由来する糊臭等の異味・異臭がなく、粘度が低いため作業性に優れるが、甘味度が高いため食品の味質に影響を及ぼす可能性があり、ボディ感・コク味の付与効果もデキストリンと比べると低い。 【0003】 上記通り澱粉分解物は種々の性質を有し、その性質は重合度組成に大きく依存しているため、数多くの特殊な重合度組成の澱粉分解物が開発されている。・・・ 【0004】 また、近年、食品に対する嗜好性が多様化しており、低甘味でありボディ感・コク味の付与効果が高くかつ低粘度、後味の良い澱粉分解物が求められる傾向にある。上記目的を達成するために種々の澱粉分解物が開発されており、特許文献9?11には特定重合度の糖組成物を有し、高分子を減じた澱粉分解物(マルトデキストリン)が開示されている。 ・・・ 【0008】 上記特許文献9?11に記載の澱粉分解物は、重合度14?20程度の糖組成物を含んでおり、当該糖組成物由来の異味・異臭を排除することはできず、食品自体の風味をマスキングしてしまうことから、風味の点において依然として問題があった。」 (甲14b)「【0020】 本発明の澱粉分解物の(1)?(5)のファクターについて説明する。 (1)重合度6?7の糖(G6-G7)含量/重合度4?5の糖(G4-G5)含量=0.75?1.25、 (1)の比率は、「味質のバランス」に関係する。G6-G7含量またはG4-G5含量のどちらかが少なくなることで(1)が0.75?1.25の範囲を外れると、後述の実施例に示すように、その他物性(甘味の立ち、切れ、コク味等)のバランスが崩れ偏った味質となり、味質のバランスが悪化する。その結果、総合的な風味に悪影響を及ぼす。ただ、必ずしも(1)のファクターだけで味質のバランスが決まるわけではなく、その他ファクターが複合的に組み合わされて味質のバランスは決まる。・・・ ・・・ 【0023】 (2)重合度14以上の糖(G14以上)含量が5重量%以下 (2)のファクターは、「甘味のキレの速さ」、「雑味の無いクリアーな味」、「デキストリン臭」に関係する。G14以上含量が5重量%を超えると、甘味のキレが悪くなり、雑味が増え、高分子由来のデキストリン臭が生じ、食品の風味にも悪影響を与える。・・・ 【0024】 (3)重合度1?3の糖(G1?G3)含量が45重量%以下 (3)のファクターは、「甘さの好ましさ」、「甘味の立ちの速さ」に影響する。G1?G3含量が45重量%を超えると、甘味の立ちが速くなるが、甘味が強すぎて甘さの好ましさの評価が低くなる。一方、G1?G3含量が低くなると、甘味が弱いため甘さの好ましさの評価は高くなるが、甘味の立ちが遅くなる場合がある。・・・ ・・・ 【0026】 (4)甘味度が25以下 (4)のファクターは、「甘味の好ましさ」に影響する。甘味度が25を超えると甘味が強すぎて甘さの好ましさの評価が低くなる。甘味度は、好ましくは24以下である。・・・ ・・・ 【0029】 本発明の澱粉分解物においては、上記(1)?(5)のファクターに加えて、重合度8?13の糖(G8?G13)含量が3?10重量%であることが好ましい。G8?G13含量は、「コク味」、「甘味の立ち」に影響する。また、「甘味のキレの速さ」にも若干影響する。・・・ 【0030】 本発明の澱粉分解物においては、上記(1)?(5)のファクターに加えて、さらに、DEが25?35であることが好ましい。DEが上記範囲であることで、低甘味かつ低粘度で雑味やデキストリン臭の無い好ましい澱粉分解物が得られる。」 15 甲15について 甲15には、以下の事項が記載されている。 (甲15a)「【0012】 I.デキストリン 本発明で用いるデキストリンは、以下の性質(a)?(c)を有することを特徴とする; (a)馬鈴薯を原料とする。 本発明が対象とするデキストリンは、馬鈴薯由来のデキストリンである。例えば、馬鈴薯澱粉を分解して得られるデキストリンである。 デキストリンの原料としては、馬鈴薯の他、とうもろこし、甘藷、小麦、米、サゴ、及びタピオカなどの各種澱粉が存在するが、馬鈴薯以外を原料とするデキストリンを用いた場合は、本願発明の効果を得ることができない。例えば、一般的に市場に流通しているデキストリンの原料は、とうもろこし(コーン、ワキシーコーン)が主流であるが、とうもろこしを原料とするデキストリンを用いた場合は、固体状可食性組成物の酸味、苦味及び渋味からなる群から選択される1種以上の呈味をマスキングできない。本原理は明らかではないが、原料により澱粉構造が異なるため、結果として得られるデキストリンの構造に影響が及ぶことに起因すると推測される。 【0013】 (b)DEが2以上6以下である。 ・・・ 【0014】 ・・・ しかし、デキストリンのDEが6を大きく超える場合には、固体状可食性組成物における酸味、苦味及び渋味からなる群から選択される1種以上の呈味を十分にマスキングすることができない。 ・・・ 【0016】 ・・・当該粘度が150mPa・sを超えると、固体状可食性組成物における酸味、苦味及び渋味からなる群から選択される1種以上の呈味をマスキングすることができず、デキストリンの種類によっては、固体状可食性組成物の呈味がかえって悪化する、食感がざらつく場合もある。 ・・・ 【0018】 本発明で用いるデキストリンの好ましい平均粒子径(d)は、15μm以下であり、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。当該粒子径を有するデキストリンを用いることで、より一層顕著に固体状可食性組成物における酸味、苦味及び渋味からなる群から選択される1種以上の呈味をマスキングすることができる。」 16 甲16について 甲16には、以下の事項が記載されている。 (甲16a)「【請求項1】澱粉分解物が有する50質量%水溶液の粘度値に50質量%換算水溶液の浸透圧を乗じた特性値が20000以下であり、且つ、分子量10000以上の区分が20質量%以下である澱粉分解物を粉末化基剤の主成分とする粉末化食品。」 (甲16b)「【0003】例えばアルコールの粉末化には、特開昭57-099187号では、アミロペクチンまたはアミロペクチンを主体とする澱粉をαアミラーゼで分解したDE1?10の澱粉分解物を酒精と混合し、噴霧乾燥して粉末化する方法が、特開昭57-122788号では、低酒精醸造酒類を20?50w/wの濃縮物とし、これに低甘味、低粘性の水溶性多糖類、好ましくはDE12?30の澱粉分解物を生化学的、化学的に処理し、甘味性少糖類を除去もしくは他の化合物に変換した処理部を濃縮物の水分量の70%以上になるように混合溶解し、噴霧乾燥する低酒精醸造酒類の製造法が、特開昭58-94387号では、グルコース重合度8以下のオリゴ糖類が50%以上で、かつグルコース重合度2以下の糖類が10%以下の澱粉分解物を、含アルコール水溶液に添加混合し、噴霧乾燥する含アルコール粉末の製造法などが開示され、・・・」 (甲16c)「【0010】本発明でいう粉末化食品とは、液状乃至半固形状の食品に粉末化基剤を添加して製造される食品を総称し、具体的には・・・清酒、ワインなどの醸造酒、ウィスキー、ブランディ、ラム、焼酎などの蒸留酒などの酒類から製造される粉末酒、・・・などが例示される。」 (甲16d)「【0035】 【表1】 【0036】 【実施例1】参考例1?3の澱粉分解物を用いて、酢酸の粉末化試験を行った。スプレー供給液の調製は、酢酸と澱粉分解物の比率が1:5、スプレー供給液の粘度が25℃において60?70mPa・Sになるように酢酸、澱粉分解物、水を表2の割合に調整した。 ・・・ 【0038】 【表2】 【0039】得られた粉末酢を酢酸保持率,粉末の安定性、粉末の溶解性、溶解時の匂いの発現について下記の基準で評価し、結果を表3に記載した。 ・・・ 【0043】<匂いの発現性>粉末酢20gを30℃に保温した水100mlに溶解し、匂いの強さを官能検査し、5点法で評価した。 5点:非常に強い匂いを示す。 4点:強い匂いを示す。 3点:普通。 2点:ややマスキングされている。 1点:マスキングして匂いが弱い。 【0044】 【表3】 」 17 甲17?19について 甲17?19は、それぞれ、食品成分「し好飲料類/(緑茶類)/玉露/茶」などの茶類、食品成分「果実類/アセロラ/10%果汁入り飲料」などの果実類、及び食品成分「乳類/(液状乳類)/普通牛乳」の可食部100g当たりに含まれる脂質やカリウムなどの量を示したものである。 18 甲20について 甲20は、「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」にある「Tr」に関する説明を示したものである。 19 甲21について 甲21は、エタノール水溶液の容量%と重量%の換算表を示したものである。 第5 当審の判断 1 理由1(進歩性)について (1)甲1に記載された発明 ア 甲1は、酒類とデキストリンを主成分とする糖質との混合溶液を噴霧乾燥して得られる粉末酒を10ないし90重量%含み、残部が凍結乾燥粉末コーヒーからなる粉末コーヒーの発明に関する(上記(甲1a))。 そして、その具体例を示した実施例の(1)ブランデー入りコーヒーは、できあがったコーヒーの濃度とブランデーのアルコール濃度が一定になるようにして、A?CのコーヒーとD?Fのブランデーを準備し、No.1?12のサンプルを調製したものであるところ、そのうちのサンプルNo.8からみて(上記(甲1d))、甲1には次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されていると認める。 甲1発明A: 「コロンビア産のエキセルソグレードのコーヒー豆をミディアムローストした焙煎豆を粉砕(細挽き)し、濃厚に抽出し、凍結乾燥して粉末化した凍結乾燥コーヒー1.4gと、特級ブランデー(アルコール度数43°)と非環状デキストリンを用い噴霧乾燥した粉末ブランデー3.80gからなる粉末コーヒー。」 イ さらに、甲1は、改良された粉末コーヒーに関し(上記(甲1b))、具体的には、お湯に溶かしただけで、いれたてのコーヒーにブランデー等の酒類を入れたコーヒーと同様な風味を有するコーヒー液を作ることができる粉末コーヒーを提供することを目的としていることから(上記(甲1b))、実施例のサンプルNo.8からみて、甲1には次の発明(以下、「甲1発明B」という。)が記載されていると認める。 甲1発明B: 「コロンビア産のエキセルソグレードのコーヒー豆をミディアムローストした焙煎豆を粉砕(細挽き)し、濃厚に抽出し、凍結乾燥して粉末化して、凍結乾燥コーヒー1.4gを調製し、特級ブランデー(アルコール度数43°)と非環状デキストリンを用い噴霧乾燥して、粉末ブランデー3.80gを調製し、これらを混合する、粉末コーヒーの風味の改善方法。」 (2)本件特許発明1について ア 対比 本件特許発明1と甲1発明Aとを対比する。 甲1発明Aの「特級ブランデー(アルコール度数43°)と非環状デキストリンを用い噴霧乾燥した粉末ブランデー3.80g」は、本件特許明細書【0031】の「(アルコール粉末)・・・アルコール粉末とは、食用のエチルアルコールを含む粉末である。」との記載、【0032】の「アルコール粉末は、特に限定されないが、たとえばアルコールの水溶液と粉末化基材を混合溶解させて得られる溶液を、可及的速やかに低温化で乾燥することによって作製することができる。・・・粉末化基材は、たとえばデキストリン・・・を含むことができる。」との記載からみて、本件特許発明1の「アルコール粉末」に相当する。 そして、甲1発明Aの「粉末コーヒー」と、本件特許発明1の「粉末酒」とは、「アルコール粉末を含む飲料用粉末」である点で共通する。 また、甲1発明Aが「コロンビア産のエキセルソグレードのコーヒー豆をミディアムローストした焙煎豆を粉砕(細挽き)し、濃厚に抽出し、凍結乾燥して粉末化した凍結乾燥コーヒー1.4g」を含むことは、本件特許明細書【0042】の「粉末酒は、上述の各成分以外に、他の添加物を含んでいてもよい。・・・上記他の添加物としては、たとえばインスタントコーヒー・・・を含むことができる。」との記載や、実際にインスタントコーヒーを含む実施例9?14からみて、本件特許発明1に包含され、相違点とはならない。 よって、両発明は次の一致点及び相違点A1及びA2を有する。 一致点: 「アルコール粉末を含む飲料用粉末。」である点。 相違点A1: 本件特許発明1は、「アルコール粉末」、「脂質」及び「塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムおよびアセスルファムカリウムから選択される一種または二種以上のカリウム塩」を含む「粉末酒」であるのに対し、甲1発明Aは、「凍結乾燥コーヒー」と「粉末ブランデー」を含む「粉末コーヒー」である点。 相違点A2: 本件特許発明1は、「前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%以下のとき、前記粉末酒中のカリウム元素の含有量が前記粉末酒全体に対して0.015質量%以上2.0質量%以下」であり、「前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%超過のとき、前記粉末酒中のカリウム元素の含有量が前記粉末酒全体に対して0.39質量%以上2.0質量%以下」であると特定されているのに対し、甲1発明Aは、脂質及びカリウム塩を含むことも、脂質とカリウム元素の含有量も特定されていない点。 イ 判断 相違点A1及びA2は関連するのでまとめて検討する。 (ア)甲1は粉末酒を含有する粉末コーヒーに関する技術的事項を開示するものであり(上記(甲1a))、コーヒー液に少量のブランデー等の酒類を入れれば、風味が引き立つことはよく知られているが、粉末コーヒーの場合には、酒類を入れたコーヒー液をそのまま乾燥して粉末化する方法や、コーヒー液を粉末にしてからその粉末に酒類を噴霧する方法では、製造中や保存中にアルコールが蒸発して、通常の酒類を入れたコーヒー液の風味を与えることは困難であったことから、湯に溶かしただけで、いれたてのコーヒーにブランデー等の酒類を入れたコーヒーと同様な風味を有するコーヒー液を作ることができる粉末コーヒーを提供することを目的とし、粉末コーヒーと粉末酒とを混合することで、アルコールの保持を可能にし、いれたてのコーヒーにブランデー等の酒類を入れたコーヒーと同様な風味を有する優れた風味のブランデー等の酒類入りのコーヒーを提供することができるというものである(上記(甲1b)、(甲1c)、(甲1e))。 すなわち、甲1発明Aは、粉末コーヒーの風味を改良することを課題とするものである。 (イ)一方、本件特許発明1は、本件特許明細書【0007】?【0011】などに記載のとおり、粉末酒を液体に溶解して飲料とした場合に、酒類特有のアルコール感や香味を感じ難いという課題に基づき、粉末酒中の脂質の含有量及びカリウム元素の含有量を特定することで、得られる飲料のアルコール感や香味を改善したものである。 (ウ)そうすると、甲1発明Aと本件特許発明1とは、解決しようとする課題が異なり、粉末コーヒーの風味の改良に関する甲1発明Aについて、粉末コーヒーに含有される脂質やカリウム塩に着目し、その含有量をも特定して、得られる飲料のアルコール感や香味が改善された粉末酒とする動機付けはない。 そして、本件特許発明1は、相違点A1及びA2に係る発明特定事項を採用することで、粉末コーヒーの風味に関する甲1発明Aとは異なり、甲1発明Aからは予測もし得ないアルコール感や香味という本件特許明細書記載の効果を奏するものである。 (エ)甲2及び20によれば、コーヒー浸出液の可食部100gに含まれる脂質及びカリウムの量が示されているが(前記第4 2及び18)、甲1発明Aの凍結乾燥粉末コーヒーに関する事項を示したものではない。 甲3?9には、アルコール飲料やみりん、或いはコーヒー飲料に、呈味性の改善、安定性の向上、マスキング、ミネラル源付与、甘味付与、pH調整などの種々の目的で、塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸カリウムやアセスルファムカリウムのようなカリウム塩を配合することが記載されている(上記(甲3a)、(甲3b)、(甲4a)、(甲4b)、(甲5a)、(甲5b)、(甲6a)、(甲7a)、(甲8a)、(甲9a)及び(甲9b))。 しかしながら、これらを考慮しても、本件特許の出願時に、甲1発明Aについて、粉末コーヒーに含有される脂質やカリウム塩に着目し、その含有量をも特定して粉末酒とすることが、当業者が容易になし得たこととはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり、相違点A1及びA2は当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、本件特許発明1は、甲1発明A並びに甲2?9、20に示される事項によって、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件特許発明2?3について 本件特許発明2は、本件特許発明1を引用して、「前記粉末酒中の前記カリウム元素の含有量に対するアルコールの含有量の比が10以上1800以下である」ことを更に特定するものである。 本件特許発明3は、本件特許発明1又は2を引用して、「前記粉末酒中のアルコールの含有量が、前記粉末酒全体に対して1質量%以上60質量%以下である」ことを更に特定するものである。 甲21には、エタノール濃度(容量%)と重量%との換算表が示されており(前記第4 19)、本件特許の出願時においても同様であるとしても、甲1発明Aの粉末コーヒーに含まれるアルコールの含有量は推認できるに留まる。 そして、この点を考慮しても、上記(2)で検討した本件特許発明1についての判断に影響はない。 よって、本件特許発明1のすべての発明特定事項を含む本件特許発明2?3についても、上記(2)で検討したのと同様の理由により、甲1発明A並びに甲2?9、20、21に示される事項によって、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件特許発明4?7について 本件特許発明4は、本件特許発明1?3を引用して、「前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して0.01質量%以上である」ことを更に特定するものである。 本件特許発明5は、本件特許発明1?4を引用して、「液体に溶解させて飲料を作製するために用いられる」ことを更に特定するものである。 本件特許発明6は、本件特許発明1?5を引用して、「前記粉末酒を液体に溶解して飲用する際のアルコール濃度が1体積%以上20体積%以下である」ことを更に特定するものである。 本件特許発明7は、本件特許発明1?6を引用して、「チューハイ、カクテル、梅酒、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料および梅酒テイスト飲料から選択される飲料の粉末である」ことを更に特定するものである。 甲1発明Aの粉末コーヒーは、液体に溶解させて飲料を作製するために用いるものであり、液体に溶解して飲用する際のアルコール濃度は適宜調整し得るものであるといえ、また、コーヒーとブランデーとの混合物であるから得られる飲料はカクテルの一種ということができるから、これらの点に関しては、本件特許発明1との間に新たに相違するところはない。 しかしながら、これらの点を考慮しても、上記(2)で検討した本件特許発明1についての判断に影響はない。 よって、本件特許発明1のすべての発明特定事項を含む本件特許発明4?7についても、上記(2)及び(3)で検討したのと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)本件特許発明8について ア 対比 本件特許発明8と甲1発明Bとを対比する。 上記(2)アで検討したのと同様に、甲1発明Bの「特級ブランデー(アルコール度数43°)と非環状デキストリンを用い噴霧乾燥した粉末ブランデー3.80g」は、本件特許発明8の「アルコール粉末」に相当する。 そして、甲1発明Bの「粉末コーヒー」と、本件特許発明8の「粉末酒」とは、「アルコール粉末を含む飲料用粉末」である点で共通し、甲1発明Bの「粉末コーヒーの風味の改善方法」と、本件特許発明8の「粉末酒の味質改善方法」とは、「飲料用粉末の改善方法」である点で共通するといえる。 また、甲1発明Bが「コロンビア産のエキセルソグレードのコーヒー豆をミディアムローストした焙煎豆を粉砕(細挽き)し、濃厚に抽出し、凍結乾燥して粉末化した凍結乾燥コーヒー1.4g」を含むことは、本件特許発明8に包含され、相違点とはならない。 よって、両発明は次の一致点及び相違点B1及びB2を有する。 一致点: 「アルコール粉末を含む飲料用粉末の改善方法。」である点。 相違点B1: 本件特許発明8は、「アルコール粉末」と「脂質」を含む「粉末酒の味質改善方法」であるのに対し、甲1発明Bは、「凍結乾燥コーヒー」と「粉末ブランデー」を含む「粉末コーヒーの風味の改善方法」である点。 相違点B2: 本件特許発明8は、「前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%以下のとき、前記粉末酒中のカリウム元素の含有量を前記粉末酒全体に対して0.015質量%以上2.0質量%以下に調整し」、「前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%超過のとき、前記粉末酒中のカリウム元素の含有量を前記粉末酒全体に対して0.39質量%以上2.0質量%以下に調整し」、「塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムおよびアセスルファムカリウムから選択される一種または二種以上のカリウム塩により前記粉末酒中の前記カリウム元素の含有量を調整する」と特定されているのに対し、甲1発明Bは、脂質及びカリウム塩を含むことも、脂質とカリウム元素の含有量を特定のカリウム塩で調整することも特定されていない点。 イ 判断 相違点B1及びB2は関連するのでまとめて検討する。 上記(2)イで検討したのと同様に、甲1発明Bの風味の改善方法と本件特許発明8の粉末酒の味質改善方法とは、解決しようとする課題が、粉末コーヒーの風味と、得られる飲料のアルコール感や香味の味質で異なっており、甲1発明Bについて、粉末コーヒーに含有される脂質やカリウム塩に着目し、その含有量をも特定して、得られる飲料のアルコール感や香味が改善された粉末酒の味質改善方法とする動機付けはない。 そして、本件特許発明8は、相違点B1及びB2に係る発明特定事項を採用することで、粉末コーヒーの風味の改善方法に関する甲1発明Bとは異なり、甲1発明Bからは予測もし得ないアルコール感や香味という粉末酒の味質改善方法という本件特許明細書記載の効果を奏するものである。 また、上記(2)イ(エ)で検討したのと同様に、甲2?9及び20に示される事項を考慮しても、本件特許の出願時に、甲1発明Bについて、粉末コーヒーに含有される脂質やカリウム塩に着目し、その含有量をも特定して粉末酒の味質改善方法とすることが、当業者が容易になし得たこととはいえない。 ウ まとめ 以上のとおり、相違点B1及びB2は当業者が容易になし得たことであるとはいえない。 したがって、本件特許発明8は、甲1発明A並びに甲2?9、20に示される事項によって、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (6)本件特許発明9?10について 本件特許発明9は、本件特許発明8を引用して、「前記粉末酒中の前記カリウム元素の含有量に対するアルコールの含有量の比が10以上1800以下に調整する」ことを更に特定するものである。 本件特許発明10は、本件特許発明8又は9を引用して、「前記粉末酒中のアルコールの含有量が、前記粉末酒全体に対して1質量%以上60質量%以下である」ことを更に特定するものである。 上記(3)で、本件特許発明2?3について検討したのと同様に、甲21に示された事項を考慮しても、上記(5)で検討した本件特許発明8についての判断に影響はない。 よって、本件特許発明8のすべての発明特定事項を含む本件特許発明9?10についても、上記(5)で検討したのと同様の理由により、甲1発明B並びに甲2?9、20、21に示される事項によって、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (7)本件特許発明11?13について 本件特許発明11は、本件特許発明8?10を引用して、「前記粉末酒中の前記脂質の含有量を前記粉末酒全体に対して0.01質量%以上に調整する」ことを更に特定するものである。 本件特許発明12は、本件特許発明8?11を引用して、「前記粉末酒を液体に溶解して飲用する際のアルコール濃度が1体積%以上20体積%以下である」ことを更に特定するものである。 本件特許発明13は、本件特許発明8?12を引用して、「チューハイ、カクテル、梅酒、チューハイテイスト飲料、カクテルテイスト飲料および梅酒テイスト飲料から選択される飲料の粉末である」ことを更に特定するものである。 上記(4)で、本件特許発明4?7について検討したのと同様に、甲1発明Bの粉末コーヒーを、液体に溶解して飲用する際のアルコール濃度は適宜調整し得るものであるといえ、また、コーヒーとブランデーとの混合物であるから得られる飲料はカクテルの一種ということができるから、これらの点に関しては、本件特許発明8との間に新たに相違するところはない。 しかしながら、これらの点を考慮しても、上記(5)で検討した本件特許発明8についての判断に影響はない。 よって、本件特許発明8のすべての発明特定事項を含む本件特許発明11?13についても、上記(5)及び(6)で検討したのと同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (8)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書18ページ下から5行?19ページ2行において、上記(1)で認定した甲1発明Aと同様な甲1発明を認定し、同45ページ10行?50ページ15行において、要するに、甲2及び20(前記第4 2及び18)から、甲1発明の粉末コーヒーには、約65mgのカリウム及び0.01g以上0.05g未満の脂質が含まれるといえるので、本件特許発明との相違点は、甲1発明が「塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムおよびアセスルファムカリウムから選択される一種または二種以上のカリウム塩」を含むのか不明である点だけであるとし、甲3?9に示される周知技術から(上記(甲3a)、(甲3b)、(甲4a)、(甲4b)、(甲5a)、(甲5b)、(甲6a)、(甲7a)、(甲8a)、(甲9a)及び(甲9b))、これらのカリウム塩を配合することは容易である旨主張する。 しかしながら、甲2及び20は、甲1の実施例に記載の凍結乾燥粉末コーヒーについて示したものではなく、仮に、両発明の相違点が申立人の主張する相違点のみであるとして、甲3?9に示された周知技術を考慮しても、当業者が、甲1発明について、粉末コーヒーに含有される脂質やカリウム塩に着目する動機付けとなる根拠は見出せず、当業者が容易に甲1発明に含まれる脂質の含有量に応じて、特定のカリウム塩を特定量で配合するとはいえない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (9)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1?13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第2号により取り消すべきものではない。 2 理由2(サポート要件)について (1)本件特許明細書の記載 ア 背景技術に関する記載 「【0002】 ウィスキー・・・等の酒類を粉末化した「粉末酒」は、軽くて手軽に持ち運びができ、水等で撹拌溶解することで、いつでもどこでも簡単に飲料を作ることが可能であり、今後新形態のお酒として普及することが期待されている。」 イ 発明が解決しようとする課題に関する記載 「【0006】 ここで、揮発性であるアルコールを乾燥粉末化して粉末酒を製造する方法としては、澱粉加水分解物(デキストリン)にアルコール水溶液を適切な割合で混合し、低温下で噴霧乾燥する方法が一般的である。・・・ 【0007】 ところが、本発明者らの検討によれば、上記の粉末酒を液体に溶解して飲料を作った場合、飲料中に残存する大量の澱粉加水分解物がアルコールや揮発性成分の香気をマスキングし、酒類特有のアルコール感や香味を感じ難いということが明らかになった。 【0008】 本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、酒類特有のアルコール感や香味(以後単にアルコール感や香味という)が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒を提供するものである。」 ウ 課題を解決するための手段及び効果に関する記載 「【0009】 本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を重ねた。その結果、粉末酒中にカリウム元素を特定量含有させることで、得られる飲料のアルコール感や香味が改善されるという知見を得て、本発明を完成させた。 ・・・ 【0012】 本発明によれば、アルコール感や香味が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒を提供することができる。」 エ 粉末酒に関する記載 「【0015】 ・・・ ここで、本実施形態において、粉末酒の味質とは、粉末酒を液体に溶解させて飲料とした場合のアルコール感および香味をいう。 ・・・ 【0016】 上述のように、粉末酒については、液体に溶解させて飲料とする場合に、得られる飲料のアルコール感および香味を向上させることが求められている。 本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた。その結果、粉末酒中にカリウム元素を特定量含有させることで、得られる飲料のアルコール感や香味が改善されることを新たに見出し、本実施形態に係る粉末酒を実現するに至った。このように、本実施形態によれば、酒類特有のアルコール感や香味が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒を提供することができる。 ここで、本実施形態において、アルコール感とは飲料を飲んだときに感じる後味の苦さやアルコール自身が持つ甘味等が、口中に広がり、味わいを感じる状態をいう。また、本実施形態において、香味とは、酒類特有の香り立ちやコクをいい、コクとは酒類特有の味が緩やかに減っていき、飲み終わった後も余韻が残る状態をいう。 ・・・ 【0018】 ・・・ また、粉末酒を溶解させる液体は、飲用として用いることができるものであれば特に限定されないが、たとえば水、炭酸水、緑茶、ウーロン茶、ほうじ茶、および麦茶等に例示される茶類、オレンジ果汁やグレープフルーツ果汁に例示される果汁類や果実成分を含有する飲料、牛乳等の乳類等から選択される一種または二種以上を含むことができる。 ・・・ 【0020】 粉末酒の用途は、上述したものに限定されない。本実施形態に係る粉末酒は、たとえばチョコレートやケーキ、飴、錠菓等に例示される製菓類、調味料、および薬品等に添加されてもよい。また、粉末酒は、そのまま食されるものであってもよい。」 オ 脂質及びカリウム元素に関する記載 「【0024】 粉末酒中の脂質の含有量が粉末酒全体に対して1.0質量%以下・・・のとき、粉末酒中のカリウム元素の含有量は粉末酒全体に対して0.015質量%以上2.0質量%以下・・・である。これにより、アルコール感や香味が良好な飲料を得ることができる。 また、粉末酒中の脂質の含有量が粉末酒全体に対して1.0質量%超過・・・のとき、粉末酒中のカリウム元素の含有量は粉末酒全体に対して0.39質量%以上2.0質量%以下・・・である。これにより、アルコール感や香味が良好な飲料を得ることができる。 ・・・ なお、粉末酒中のカリウム元素は、たとえば原子吸光光度計(・・・)を用いて原子吸光光度法により定量することが可能である。 また、粉末酒中の脂質は、たとえばソックスレー抽出器(・・・)を用いてソックスレー抽出法により定量することが可能である。乳成分を含む場合の粉末酒中の脂質は、たとえばマジョニア管(・・・)を用いてレーゼゴットリーブ法により定量することが可能である。 【0025】 粉末酒中のカリウム元素の含有量は、たとえば粉末酒を構成する各成分の種類や配合割合をそれぞれ適切に調製することによって制御することが可能である。本実施形態においては、たとえばアルコール粉末とともに粉末酒を構成し得る・・・各種添加物について、その種類や配合割合を総合的に調製することが、粉末酒中のカリウム元素の含有量を所望の範囲内とするために重要な要素であると考えられている。 【0026】 カリウム元素は、どのような由来のものであっても前述した効果を発揮することが可能であるが、特に、塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムやアセスルファムカリウム等から選択される一種または二種以上のカリウム塩由来のカリウム元素が好ましい。カリウム元素としてカリウム塩由来のものを含むとアルコール感や香味をより効果的に向上させることができる。」 カ アルコール粉末に関する記載 「【0031】 (アルコール粉末) 粉末酒は、上述のとおり、アルコール粉末を含んでいる。 アルコール粉末とは、食用のエチルアルコールを含む粉末である。・・・ 【0032】 アルコール粉末は、特に限定されないが、たとえばアルコールの水溶液と粉末化基材を混合溶解させて得られる溶液を、可及的速やかに低温化で乾燥することによって作製することができる。・・・ 粉末化基材は、たとえばデキストリン、デンプン、プルラン、難消化デキストリン、ポリデキストロース、還元澱粉分解物、還元難消化デキストリン、および加工澱粉から選択される一種または二種以上を含むことができる。 また、乾燥法の種類は問わないが、一般的には噴霧乾燥法が好んで用いられる。」 キ 実施例の記載 「【実施例】 【0044】 以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0045】 (粉末酒の作製) 各実施例および各比較例について、表1および表2に示す配合に従い各原料を混合し、撹拌することにより粉末酒を製造した。なお、表1および表2においては、粉末酒全体に対する各原料の配合割合(質量%)が示されている。 各原料の詳細は、以下のとおりである。 【0046】 ウォッカ粉末:粉末酒ウォッカタイプ(佐藤食品工業(株)製、アルコール含有量30.5質量%) グラニュー糖:ビートグラニュー糖(日本甜菜製糖(株)製) クリーミングパウダー:ND-106M(和光堂(株)製、脂肪含量33%、原材料:デキストリン、植物油脂、乳糖、脱脂粉乳等) インスタントコーヒー:インスタントコーヒー(味の素ゼネラルフーヅ(株)製、コーヒー抽出物含量100%) 植物油脂:MT-N(花王(株)製、中鎖脂肪酸トリグリセライド) レモン粉末果汁:レモン3倍濃縮果汁(小川香料(株)製) 【0047】 各実施例および各比較例は、それぞれ表1に示す規定量(g)を140mlとなるように水に溶解してアルコール度数3.2体積%または5.2体積%のアルコール飲料を作製する粉末酒である。各実施例のいずれにおいても、表1に示す規定量(g)を140mlとなるように水に溶解することにより、良好な風味のアルコール飲料が得られることを確認した。 【0048】 (カリウム元素の含有量) 比較例1、3、5、7について、得られた粉末酒中のカリウム元素は、原子吸光光度計(・・・)を用いて原子吸光光度法により定量した。他の実施例および比較例のカリウム元素は、比較例1、3、5、7の定量値および塩化カリウムの添加濃度から算出した。 【0049】 (脂質の含有量) 脂質含量は原料の脂質含量規格値から算出した。 【0050】 (官能評価) 得られたアルコール飲料について、飲料の開発を担当する熟練したパネリスト4名により、上記アルコール飲料の「香り立ち」、「コク」、「アルコール感」を、以下の基準にて評価した。なお、評価は4名の協議により最終決定した。 <香り立ち> ◎:アルコール飲料として非常に良好な香り立ちを感じる 〇:アルコール飲料として良好な香り立ちを感じる ×:アルコール飲料として香り立ちをあまり感じられない <コク> ◎:アルコール飲料として非常に良好なコクを感じる 〇:アルコール飲料として良好なコクを感じる ×:アルコール飲料としてコクをあまり感じられない <アルコール感> ◎:アルコール飲料として非常に良好なアルコール感を感じる 〇:アルコール飲料として良好なアルコール感を感じる ×:アルコール飲料としてアルコール感をあまり感じられない 以上の結果を表1および表2に示す。 【0051】 【表1】 【0052】 【表2】 【0053】 各実施例で得られた粉末酒は、いずれも「香り立ち」、「コク」、「アルコール感」が良好であった。 一方、各比較例で得られた粉末酒は、いずれも「香り立ち」、「コク」、「アルコール感」があまり感じられなかった。」 (2)本件特許発明の解決しようとする課題 本件特許明細書の記載、特に上記(1)ア及びイからみて、本件特許発明1?7の解決しようとする課題は、「酒類特有のアルコール感や香味が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒の提供」であり、本件特許発明8?13の解決使用とする課題は、「酒類特有のアルコール感や香味が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒の味質改善方法の提供」にあると認める。 (3)判断 本件特許明細書の上記(1)ウ?カの一般記載及び上記(1)キの実施例の記載から、アルコール粉末及び脂質含む粉末酒において、塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウムおよびアセスルファムカリウムから選択される一種または二種以上のカリウム塩を含み、前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%以下のとき、前記粉末酒中のカリウム元素の含有量が前記粉末酒全体に対して0.015質量%以上2.0質量%以下であり、前記粉末酒中の前記脂質の含有量が前記粉末酒全体に対して1.0質量%超過のとき、前記粉末酒中のカリウム元素の含有量が前記粉末酒全体に対して0.39質量%以上2.0質量%以下である粉末酒とすることで、上記(2)の課題をそれぞれ解決できることが理解できる。 したがって、本件特許発明1?13は、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、本件特許発明1?13の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲内のものであるから、本件特許発明1?13が特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満足しないとはいえない。 (4)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書50ページ16行?55ページ最下行において、概略次のように主張する。 (ア)本件特許発明の課題について 本件特許明細書【0007】?【0009】、【0012】、【0015】及び【0016】の記載から、本件特許発明の課題は、「粉末酒を液体に溶解した際に、粉末酒中に多量に存在する澱粉加水分解物(デキストリン)のマスキング作用によって損なわれる酒類特有のアルコール感及び香味を良好にした粉末酒を提供すること」である。 (イ)課題を認識し得ない発明を包含することについて 本件特許発明の課題は、上記アのとおりであり、粉末酒を液体に溶解し、味わうこと(即ち、粉末酒を飲料の形態で使用すること)を前提とするものである。 しかしながら、本件特許発明は使用用途が特定されておらず、本件特許明細書【0020】に「粉末酒は、たとえばチョコレートやケーキ、飴、錠菓等に例示される製菓類、調味料、および薬品等に添加されてもよい。」(上記(1)エ)と記載されているような態様を包含するものであるところ、粉末酒を液体に溶解し、飲料として味わうことを伴わないような用途に用いられる場合は、本件特許発明の課題を認識することはできない。 このように、本件特許発明は、本件特許発明の解決すべき課題を認識し得ない構成を含むものであるため、甲12の判決(前記第4 12)が示す規範に照らし、サポート要件を充足するとはいえない。 (ウ)澱粉加水分解物の種類・量とマスキング作用について 甲13?16に示されるとおり(上記(甲13a)?(甲13c)、(甲14a)、(甲14b)、(甲15a)、(甲16a)?(甲16d))、粉末酒の製造に使用される澱粉加水分解物は多種多様であり、そのマスキング作用は、種々の要因によって大きく異なるというのが本件特許出願時の技術常識である。 本件特許発明が解決すべき課題であるアルコール感や香味の感じ難さ(課題の難易度)に直接影響する重要な要素であるにもかかわらず、本件特許発明は、粉末酒を構成する澱粉加水分解物の種類や量は規定されていない。 また、本件特許明細書の実施例には、澱粉加水分解物の種類や含量はおろか、澱粉加水分解物が含まれることすら記載されていないため、どのような澱粉加水分解物がどの程度使用された粉末酒についてアルコール感が評価されたのかを知ることはできない。 したがって、上記技術常識を踏まえれば、当業者が、任意の粉末化基材を用いて得られた粉末酒について、本件特許発明の構成を満たすことにより、実施例と同様の結果が得られると理解することはできない。 (エ)粉末酒を溶解させる液体の種類について 本件特許発明の課題には、任意の液体に粉末酒を溶解させて得られる飲料についてアルコール感及び香味を改良することが含まれる。 甲17?19に示されるとおり(前記第4 17)、茶類、果汁飲料類及び牛乳といった飲料には、それ自体に相当量の脂質及びカリウムが含まれることが、本件特許出願時の技術常識である。脂質及びカリウムの含量が飲料のアルコール感及び香味を左右するのであれば、粉末酒中の脂質及びカリウム含量に限らず、粉末酒を溶解する液体(飲料)に由来する脂質及びカリウム量も当然にアルコール感や香味に影響すると解される。 ところが、本件特許発明は、粉末酒を溶解する液体に由来する脂質及びカリウムの含量は規定されておらず、粉末酒を溶解して得られる飲料中の脂質及びカリウムの含量も規定されていない。本件特許明細書の実施例も、粉末酒を水に溶解して得られた飲料について評価したものに過ぎず、茶類、果汁飲料類、乳類などの他の液体を採用した場合にどのような評価結果が得られるのかを教示、示唆するものではない。 更に、本件特許明細書には、如何なる作用機序によって、粉末酒中のカリウム元素及び脂質の含量を調整することにより、それを液体に溶解させて得られる飲料のアルコール感及び香味が改善するのかを当業者に理解させる記載はない。 したがって、本件特許出願時の技術常識を踏まえれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、粉末酒を溶解する液体としていかなる液体を用いた場合も本件発明の課題が解決できるとは認識できない。 (オ)カリウム塩の種類について カリウム元素の含有量を調整することにより、どのような作用機序で飲料のアルコール感や香味が向上するのかは一切説明されておらず、塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム及びアセスルファムカリウムといった種類の異なるカリウム塩のいずれを配合した場合にも同様の味質に関する結果が得られるとは直ちに理解できない。特に、アセスルファムカリウムは高甘味度甘味料として用いられる物質であり(上記(甲7a)、(甲8a)、(甲9a)及び(甲9b))、これを配合した粉末酒から得られる飲料の味質が、塩化カリウムを用いて得られる飲料と同様の味質を呈するとは考え難い。 このように、本件特許出願時の技術常識を踏まえれば、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、塩化カリウム、炭酸カリウム、クエン酸三カリウム、グルコン酸カリウム及びアセスルファムカリウムから選択されるいずれであっても、本発明の課題が解決できると理解することはできない。 イ 申立人の上記主張について検討する。 申立人は、上記ア(ア)のとおりの課題を認定し、これを前提に上記ア(イ)?(オ)のとおりの主張している。 しかしながら、本件特許発明の解決しようとする課題は、上記(2)で述べたとおり、「酒類特有のアルコール感や香味が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒の提供」及び「酒類特有のアルコール感や香味が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒の味質改善方法の提供」である。 そして、上記ア(イ)については、本件特許明細書に、本件特許発明の「粉末酒」に関するその他の利用方法が開示されているに過ぎず、それによって、本件特許発明の課題が解決できないとはいえない。(なお、甲12は、前記第4 12のとおり、本件特許発明の属する食品分野についての判決ではないうえ、個別の事案に関するものであって、技術分野を超えた一般的な判断を示すものでない。) 上記ア(ウ)?(エ)については、本件特許発明は、「酒類特有のアルコール感や香味が良好な飲料を得ることが可能な粉末酒」を提供するものであって、粉末酒を液体に溶解して得られる飲料について、粉末酒を構成する加水分解物の種類や量、粉末酒を溶解させる液体の種類などによって生じる課題を解決しようとするものではないから、これらが特定されていなければ、課題を解決できないとはいえない。 また、上記ア(オ)については、本件特許明細書に、必ず作用機序が示されていなければならないことはない。そして、上記(1)キの実施例において、粉末酒中の脂質の含有量が1.0質量%以下のときと、1.0質量%超過のときのそれぞれについて、カリウム元素の含有量を変更した比較例が示されているのであるから、他のカリウム塩であっても、脂質の含有量に応じてカリウム元素の含有量を調整することで、課題が解決できることを当業者が認識できるといえる。 よって、申立人の主張は採用できない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1?13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第4号により取り消すべきものではない。 3 理由3(実施可能要件及び委任省令要件)について (1)実施可能要件ついて 物の発明について実施をすることができるとは、その物を作れ、かつ、その物を使用できるように記載されていればよく、方法の発明について実施をすることができるとは、その方法を使用できるように記載されていればよいといえるところ、本件特許明細書には、上記2(1)エ?カのとおり、粉末酒を構成するアルコール粉末やカリウム塩についての説明、粉末酒中のカリウム塩や脂質の含有量の測定方法、粉末酒を用いて飲料を製造する方法が説明され、上記2(1)キの実施例で、具体的に粉末酒を作製し、味質を改善できたことが確認されている。 よって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1?13について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。 (2)委任省令要件について 出願時の技術水準に照らして発明がどのような技術上の意義を有するかを理解できるように、発明の詳細な説明に記載されており、発明の技術上の意義が理解されるためには、どのような技術分野において、どのような未解決の課題があり、それをどのようにして解決したかという観点からの記載が発明の詳細な説明においてされることが求められるところ、本件特許明細書には、上記2(1)ア?ウにおいて、本件特許発明が酒類を粉末乾燥して粉末酒を製造するものに関し、粉末酒を液体に溶解して飲料を作った場合に、酒類特有のアルコール感や香味を感じ難いという課題があり、これを粉末酒中に含まれる脂質の含有量に応じてカリウム元素を特定量含有させることで解決したことが理解できるように記載されている。 よって、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明1?13について、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項が記載されている。 (3)申立人の主張について ア 申立人は、特許異議申立書56ページ1行から57ページ9行において、概略次のように主張する。 (ア)実施可能要件について 本件特許明細書の実施例には、如何なる澱粉加水分解物がどのような量で配合された粉末酒が使用されたのか記載されておらず、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、それを示唆する記載もないから、実施例の粉末酒ですら再現することができないため、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が、本件特許発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載したものではない。 (イ)委任省令要件について 本件特許発明1は、粉末酒中の脂質含量が、1.0質量%以下の場合と1.0質量%超過の場合に分けて、粉末酒中のカリウム元素の含有量が規定されており、それにより、飲料のアルコール感及び香味を良好にすることが可能であるとされている。 しかし、粉末酒中のカリウム元素の含有量を上記のように調整することで、これらの物質がどのように澱粉加水分解物や他の成分と作用し、アルコール感及び香味といった味質が改善されるのかはなんら具体的に説明されておらず、それを推認させるような技術常識も存在しない。また、粉末酒中の脂質含量が1.0質量%超の場合は、1.0質量%以下の場合よりも多くのカリウム元素が必要であるという規定であるが、如何なる理由により、脂質含量が多いとより多くのカリウム元素が必要となるのかも不明である。 このように、本件特許明細書の発明の詳細な説明及び出願時の技術常識を考慮しても、本件特許発明の規定と解決すべき課題との実質的な関係を理解することはできない。 イ 申立人の上記主張について検討する。 上記ア(ア)については、上記2(1)キのとおり、実施例で作製した粉末酒について、アルコール粉末として「ウォッカ粉末:粉末酒ウォッカタイプ(佐藤食品工業(株)製、アルコール含有量30.5質量%)」を用いたことが記載されている。また、上記2(1)カのとおり、アルコール粉末の作製方法についても説明されており、当業者であれば、本件特許発明の粉末酒を作製できるといえる。 また、上記ア(イ)についても、上記2(1)キに示された本件特許発明の実施例と、カリウム元素の含有量が本件特許発明の規定する脂質の含有量に応じていずれも下限値より少ない比較例の記載から、本件特許発明の課題を解決できることが理解できる。 よって、申立人の主張は採用できない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件特許発明1?13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号の規定に違反してされたものではなく、同法第113条第4号により取り消すべきものではない。 第6 むすび したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1?13に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1?13に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-01-08 |
出願番号 | 特願2015-150584(P2015-150584) |
審決分類 |
P
1
651・
537-
Y
(C12G)
P 1 651・ 536- Y (C12G) P 1 651・ 121- Y (C12G) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 白井 美香保、吉森 晃 |
特許庁審判長 |
村上 騎見高 |
特許庁審判官 |
齊藤 真由美 関 美祝 |
登録日 | 2020-02-21 |
登録番号 | 特許第6664900号(P6664900) |
権利者 | アサヒグループ食品株式会社 アサヒビール株式会社 |
発明の名称 | 粉末酒および粉末酒の味質改善方法 |
代理人 | 速水 進治 |
代理人 | 速水 進治 |
代理人 | 萩原 京平 |