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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1370301
審判番号 不服2019-7102  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-30 
確定日 2021-01-12 
事件の表示 特願2017- 36869号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月25日出願公開、特開2017- 87079号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成23年12月26日に出願した特願2011-283772号の一部を平成29年2月28日に新たな特許出願(特願2017-36869号)としたものであって、同年4月6日に手続補正書が提出され、平成30年3月12日付けで拒絶の理由が通知され、同年5月11日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月19日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月21日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、平成31年3月4日付け(謄本送達日:同年同月14日)で、平成30年11月21日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、令和1年5月30日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされた。
その後、当審において、令和2年1月31日付けで拒絶の理由が通知され、同年3月10日に意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、当審において、同年5月19日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年6月17日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 令和2年6月17日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
本件補正は、特許請求の範囲を補正する内容を含んでおり、本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
(補正前:令和2年3月10日付け手続補正)
「【請求項1】
遊技媒体が流下可能な遊技領域を有し、透過性を有する遊技パネルと、 前記透過性を有する遊技パネルの後方に設けられるパネル裏装飾手段と、 を備え、
前記透過性を有する遊技パネルの面部には、所定の絵柄が視認可能な装飾面と、前記絵柄のない透明面とが設けられ、前記装飾面と前記透明面のいずれについても、その前面側を遊技媒体が流下可能であり、
前記パネル裏装飾手段は、第1の装飾部と、第2の装飾部とを有しており、
前記第1の装飾部は、前記透明面を通して視認可能に設けられ、
前記第2の装飾部は、
発光部を有しており、前記装飾面が前方に位置する待機状態と、該待機状態に比べて遊技者に視認容易となる移動状態とに変化可能に設けられ、
前記第2の装飾部が前記待機状態にある状況下で前記発光部を発光させると、前記待機状態にある前記第2の装飾部の前方に位置する前記装飾面を、後方から発光装飾しうるものであり、
さらに、前記透過性を有する遊技パネルの前方には、パネル前装飾手段が設けられ、
前記パネル前装飾手段は、前記透過性を有する遊技パネルの面部と重なる特定部位が透過性を有するように構成されてなり、
さらに、前記装飾面は、所定の絵柄が施された絵柄層が前記透過性を有する遊技パネルの面部に設けられた部位であり、
前記透明面は、何らの絵柄も施されていない透明層が前記透過性を有する遊技パネルの面部に設けられた部位であり、
前記絵柄層と前記透明層は、前記透過性を有する遊技パネルの同一の面側に設けられる
ことを特徴とする遊技機。」
から、
(補正後:本件補正である令和2年6月17日付け手続補正)
「【請求項1】
A 遊技媒体が流下可能な遊技領域を有し、透過性を有する遊技パネルと、B 前記透過性を有する遊技パネルの後方に設けられるパネル裏装飾手段と 、
を備え、
C 前記透過性を有する遊技パネルの面部には、所定の絵柄が視認可能な装飾面と、前記絵柄のない透明面とが設けられ、前記装飾面と前記透明面のいずれについても、その前面側を遊技媒体が流下可能であり、
D 前記パネル裏装飾手段は、第1の装飾部と、第2の装飾部とを有しており、
D1 前記第1の装飾部は、前記透明面を通して視認可能に設けられ、
D2 前記第2の装飾部は、前記透過性を有する遊技パネルの裏面に略平行とされる面部を有し、該面部に複数のLEDを配置しており、
D3 前記装飾面が前方に位置する待機状態と、該待機状態に比べて遊技者に視認容易となる移動状態とに変化可能に設けられ、
D4 前記第2の装飾部が前記待機状態にある状況下で前記面部に配置された前記複数のLEDを面状に発光させると、前記待機状態にある前記第2の装飾部の前方に位置する前記装飾面を、後方から発光装飾しうるものであり、
E さらに、前記透過性を有する遊技パネルの前方には、パネル前装飾手段が設けられ、
E1 前記パネル前装飾手段は、前記透過性を有する遊技パネルの面部と重なる特定部位が透過性を有するように構成されてなり、
F1 さらに、前記装飾面は、所定の絵柄が施された絵柄層が前記透過性を有する遊技パネルの面部に設けられた部位であり、
F2 前記透明面は、何らの絵柄も施されていない透明層が前記透過性を有する遊技パネルの面部に設けられた部位であり、
F3 前記絵柄層と前記透明層は、前記透過性を有する遊技パネルの同一の面側に設けられる
G ことを特徴とする遊技機。」
に補正された(下線は、補正箇所を明示するために当審で付した。また、A?Gは、当審にて分説して付した。)。

2 補正の適否
(1)本件補正
本件補正は、補正前の請求項1について、発明を特定するために必要な事項である「第2の装飾部」が有する「発光部」について、「前記透過性を有する遊技パネルの裏面に略平行とされる面部を有し、該面部に複数のLEDを配置して」いること、及び、「前記面部に配置された前記複数のLEDを面状に発光させる」ことという限定を加えて書き改めたものである。

(2)補正目的
そして、補正後の請求項1に係る発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(3)新規事項
本件補正は、願書に最初に添付した明細書の【0933】?【0936】の記載からみて新規事項を追加するものではないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。

3 本件補正発明の独立特許要件についての検討
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)先願発明
令和2年5月19日付け拒絶理由通知において引用され、本願の出願日(遡及出願日:平成23年12月26日)前の出願である特願2016-209473号(特許第6391103号、遡及出願日:平成23年10月11日、(以下、「先願」という。))の請求項1に係る発明(以下、「先願発明」という。)は、次のものと認められる(符号a?gは、本件補正発明の分説A?Gに対応させて、当審で分説して付した。)。

先願発明
「【請求項1】
a 遊技媒体が流下可能な遊技領域を有し、透過性を有する遊技パネルと、
b 前記透過性を有する遊技パネルの後方に設けられるパネル裏装飾手段と、
を備え、
c 前記透過性を有する遊技パネルの面部には、所定の絵柄が視認可能な装飾面と、前記絵柄のない透明面とが設けられ、前記装飾面と前記透明面のいずれについても、その前面側を遊技媒体が流下可能であり、
d 前記パネル裏装飾手段は、第1の装飾部と、第2の装飾部とを有しており、
d1 前記第1の装飾部は、前記透明面を通して視認可能に設けられ、
d2 前記第2の装飾部は、
発光部を有しており、
d3 前記装飾面が前方に位置する待機状態と、該待機状態に比べて遊技者に視認容易となる移動状態とに変化可能に設けられ、
d4 前記第2の装飾部が前記待機状態にある状況下で前記発光部を発光させると、前記待機状態にある前記第2の装飾部の前方に位置する前記装飾面を、後方から発光装飾しうるものであり、
e さらに、前記透過性を有する遊技パネルの前方には、パネル前装飾手段が設けられ、
e1 前記パネル前装飾手段は、前記透過性を有する遊技パネルの面部と重なる特定部位が透過性を有するように構成されてなる
g ことを特徴とする遊技機。」

(2)対比
ア 対比
(ア)本件補正発明の構成A?D1、D3、E、E1、Gについて
先願発明の構成a?d1、d3、e、e1、gはそれぞれ、本件補正発明の構成A?D1、D3、E、E1、Gに相当する。

(イ)本件補正発明の構成D2、D4について
本件補正発明の構成D2、D4における「複数のLED」は発光部であるから、先願発明の構成d2と本件補正発明のD2とは、第2の装飾部は、発光部を有しているという点で共通し、先願発明の構成d4と本件補正発明のD4とは、前記第2の装飾部が前記待機状態にある状況下で前記発光部を発光させると、前記待機状態にある前記第2の装飾部の前方に位置する前記装飾面を、後方から発光装飾しうるものであるという点で共通する。

(3)一致点及び相違点
本件補正発明と先願発明とを対比すると、
[一致点]
「A 遊技媒体が流下可能な遊技領域を有し、透過性を有する遊技パネルと、
B 前記透過性を有する遊技パネルの後方に設けられるパネル裏装飾手段と、 を備え、
C 前記透過性を有する遊技パネルの面部には、所定の絵柄が視認可能な装飾面と、前記絵柄のない透明面とが設けられ、前記装飾面と前記透明面のいずれについても、その前面側を遊技媒体が流下可能であり、
D 前記パネル裏装飾手段は、第1の装飾部と、第2の装飾部とを有しており、
D1 前記第1の装飾部は、前記透明面を通して視認可能に設けられ、
D2’ 前記第2の装飾部は、発光部を有しており、
D3 前記装飾面が前方に位置する待機状態と、該待機状態に比べて遊技者に視認容易となる移動状態とに変化可能に設けられ、
D4’ 前記第2の装飾部が前記待機状態にある状況下で前記発光部を発光させると、前記待機状態にある前記第2の装飾部の前方に位置する前記装飾面を、後方から発光装飾しうるものであり、
E さらに、前記透過性を有する遊技パネルの前方には、パネル前装飾手段が設けられ、
E1 前記パネル前装飾手段は、前記透過性を有する遊技パネルの面部と重なる特定部位が透過性を有するように構成されてなる
G 遊技機。」
である点で一致し、次の点で相違する。

ア 相違点1(構成D2、D4)
第2の装飾部における発光部について、本件補正発明は、「前記透過性を有する遊技パネルの裏面に略平行とされる面部を有し、該面部に複数のLEDを配置して」、「前記面部に配置された前記複数のLEDを面状に」発光させるのに対し、先願発明の「発光部」には、そのような特定がない点。

イ 相違点2(構成F1?F3)
本件補正発明は、「さらに、前記装飾面は、所定の絵柄が施された絵柄層が前記透過性を有する遊技パネルの面部に設けられた部位であり、
前記透明面は、何らの絵柄も施されていない透明層が前記透過性を有する遊技パネルの面部に設けられた部位であり、
前記絵柄層と前記透明層は、前記透過性を有する遊技パネルの同一の面側に設けられる」ことという構成を有しているのに対し、先願発明は、そのような構成を有していない点。

(4)判断
上記相違点1及び相違点2について検討する。
ア 相違点1(構成D2、D4)について
(ア)パチンコ機における発光部について、遊技盤を構成する透過性を有するパネルの裏面に略並行とされる面部を有し、該面部に複数のLEDを配置して、当該面部に配置されたLEDを発光させる技術(以下、「周知技術1」という。)は本願出願前に従来周知の技術であって、例えば、特開2010-273826号公報(以下、「周知例1」という。)、特開2006-61707号公報(以下、「周知例2」という。)に示されるとおりである。

(イ)周知技術1の例は、次のとおりである。
・周知例1(特開2010-273826号公報)には、次の事項が記載されている(下線は当審が付した、以下同じ。)。
「【0026】
次に、パチンコ機1に配置された発光装置及び反射部材について説明する。尚、発光装置はLCD、LED、ランプ等の発光源を備えた装置であり、本実施形態のパチンコ機1は発光装置として画像表示装置41、照明装置42を備える。また、反射部材は鏡やメッキ部品等の光を反射する部材であり、本実施形態のパチンコ機1は反射部材として鏡面部43を備える。・・・
・・・
【0028】
一方、照明装置42は、発光源としてLED45を備え、透明遊技盤6の背面側において、透明遊技盤6と一定の間隔を空けて配置される。ここで、照明装置42は図3に示すように、LED基板46と、LED基板46上に配置された複数のLED45と、LED45の前面に配置されLED45から発光された光を拡散させて均一にするLEDレンズ47とから構成される。また、LEDレンズ47はパチンコ機1と関係のある形状(例えば、パチンコ機1と関連する文字やキャラクタの形状)を備える。 そして、照明装置42は図示しない演出制御基板に接続され、・・・尚、発光された光は、透明遊技盤6を介して視認可能となる。」





図3より、LED基板46は、透明遊技盤6の背面側において略並行とされていることが看て取れるから、
周知例1には、パチンコ機1において、透明遊技盤6の背面側において、透明遊技盤6と一定の間隔を空けて配置される照明装置42を備え、照明装置42は、LED基板46と、LED基板46上に配置された複数のLED45と、LED45の前面に配置されLED45から発光された光を拡散させて均一にするLEDレンズ47とから構成され、LED基板46は、透明遊技盤6の背面側において略並行とされている技術(以下、「周知例1に記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

周知例1に記載の技術における「透明遊技盤6」、「背面側」、「LED基板46」、「複数のLED45」は、それぞれ、本件補正発明における「透過性を有するパネル」、「裏面」、「面部」、「複数のLED」に相当し、周知例1に記載の技術において、「LED45の前面に配置され」た「LEDレンズ47」により、「LED45から発光された光を拡散させて均一にする」ことは、本件補正発明において、「当該面部に配置されたLEDを発光させる」ことに相当する。

・周知例2(特開2006-61707号公報)には、次の事項が記載されている。
「【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態に係るパチンコ遊技機の一部を示す正面図、・・・
・・・
【0037】
・・・遊技盤20としては、図6に示すように不透光性部材900の開口部920内に透光性部材910が完全に嵌め込まれ、透光性部材910の第1部材910aと組み合わされた第2部材910bの前面が不透光性部材900の前面と面一となるように構成することが好ましい。
【0038】
これにより遊技盤20の表面を流下する遊技球を不透光性部材900と透光性部材910の境目においてもスムーズに流下させることができる。
【0039】
なお、透光性部材910を構成する第1部材910aと第2部材910bは該第1部材910aに複数個設けられた係合穴950と該第2部材910bに複数個設けられた係合ピン940を互いに係合することにより組み合わされる。透光性部材910の第1部材910aの背面側の縁部分が、開口部920の周壁段部920aに当接するとともに、この第1部材910aの背面両側部に設けられた弾性を有するフック部材930が不透光性部材900の背面側の開口縁部分に係合することによって、該第1部材910aが該開口部920内に確実に位置決めされることとなる。
【0040】
また、上記第1部材910aの背面側には、上記各フック部材930の内側に位置する断面矩形の角型部材920bが突設されており、この角型部材920bの上面に各々設けられた係合ピン920cに、複数個のLED960aが取り付けられたLED支持部材960の係合孔が係合されて、上記角型部材920bとLED支持部材960が互いに係合され、複数個のLED960aが上記第1部材920の背面に対向するようにして位置決めされる。」





図6より、LED支持部材960は、透光性部材910の裏面に略並行とされていることが看て取れるとともに、LEDを発光させる制御を行うことは自明であるから、
周知例2には、パチンコ遊技機において、遊技盤20の一部をなす透光性部材910の裏面に略並行とされるLED支持部材960を有し、該LED支持部材960に複数個のLED960aが取り付けられ、当該LED支持部材960に取り付けられた複数個のLED960aを発光させる技術(以下、「周知例2に記載の技術」という。)が記載されていると認められる。

周知例2に記載の技術における「透光性部材910」、「LED支持部材960」、「複数個のLED960a」は、それぞれ、本件補正発明における「透過性を有するパネル」、「面部」、「複数のLED」に相当する。

(ウ)ここで、発光手段として、基板上に複数のLEDを面状に配置した面光源により面状に発光させることは種々の分野で一般に広く行われている慣用技術である。
そうすると、パチンコ遊技機に用いられる光源として、省電力にも関わらず多様な発光態様を実現可能なLEDが多用されていることを鑑みると、先願発明の「発光部」を、「前記透過性を有する遊技パネルの裏面に略平行とされる面部を有し、該面部に複数のLEDを配置して」、「前記面部に配置された前記複数のLEDを面状に」発光させるとする上記相違点1は、
面光源を用いて面状に発光させるという慣用技術を加味した上記周知技術1の単なる付加であって、新たな効果を奏するものではないから、発光部によりその前面に配置された透過性を有する遊技パネルに設けられた装飾部を発光装飾するという課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。

イ 相違点2(構成F1?F3)について
(ア)透明な遊技盤を備えるパチンコ遊技機の分野において、所定の絵柄が施された絵柄層が設けられた部位である装飾面と、何らの絵柄も施されていない透明層が設けられた部位である透明面を、透過性を有する遊技パネルの面部の同一の面側に設ける技術(以下、「周知技術2」という。)は、本願出願前に従来周知の技術であって、例えば、特開2004-160034号公報(弾球遊技機において、透明基板64からなる遊技盤には、表面に絵柄の描かれた絵柄フィルムが、上記絵柄が前方より視認し得るように配設され、絵柄フィルムは、絵柄フィルムに描かれた絵柄と、絵柄のない透過性の部分とからなり、絵柄フィルムに描かれた絵柄は、グラビア印刷等により透明なフィルムに印刷層を形成したものか、又は、上記絵柄の描かれたシール等をフィルムに絵柄の描かれたシールを張付して形成したものである技術が示されている。【0001】、【0028】、【0065】、【0066】を参照。)、特開2008-11946号公報(弾球遊技機において、遊技盤14が有する、樹脂製の透明な基板13の表面に絵柄フィルム15を設け、絵柄フィルム15は、絵柄の描かれていない非絵柄描画領域15aと、絵柄の描かれた絵柄描画領域15bとからなり、全体として、絵柄フィルム15を含む遊技盤14は、液晶パネル32の前方部分が透明となっていて、絵柄フィルム15に描かれた絵柄は、透明なフィルムに印刷層を形成したものか、又は、絵柄の描かれたシールなどをフィルムに貼り付けたものである技術が示されている。【0001】、【0031】、【0034】、【0035】参照。)に示されるとおりである。

(イ)先願発明と上記周知技術2とは、透明な遊技盤を備えるパチンコ遊技機の分野において、透明な遊技盤の前面に装飾面及び透明面を設けるという点で共通するので、先願発明の遊技パネルの面部に設けられた「装飾面」及び「透明面」についての上記相違点2は、単に上記周知技術2を付加するものであって、新たな効果を奏するものではないから、透過性を有する遊技パネルの前面に装飾面及び透明面を設けるという課題解決のための具体化手段における微差にすぎない。

ウ 請求人の主張について
(ア)請求人は、相違点1に関し、令和2年6月17日に提出された意見書において、「なお、本願発明は、上記構成により、例えば、待機状態にある状況下で第2の装飾部における複数のLEDを面状に発光させることで、その前方に位置する装飾面を後方から略均一に発光装飾しうることができ、発光装飾効果を一層の向上を図ることが可能になる、という固有の効果を奏することができます。」と主張し、相違点2に関し、同年3月10日に提出された意見書において、「・・・本願発明は、透過性を有する遊技パネルの面部に透明層と装飾層とを遊技パネルの同一の面側に設けることで、遊技球の流下態様や見栄え等に影響を与えうる凹凸がパネル面部に生ずることを抑制でき、上述の装飾面と透明面により得られる遊技効果を一層好適に発揮することが可能になります。」と主張している。

(イ)これらの主張について検討すると、これらの効果は、いずれも、本願出願前において、慣用技術を加味した従来周知の技術乃至従来周知の技術が奏しうるものであるから、新たな効果を奏するものではないとした合議体の判断を左右するものではない。
よって、請求人の上記主張を採用することはきでない。

エ 小括
以上より、上記相違点1及び相違点2は、課題解決のための具体化手段における微差にすぎないから、上記相違点1及び相違点2は実質的な相違点とはいえず、本件補正発明と先願発明とは実質的に同一である。
したがって、本件補正発明は、先願発明と実質的に同一であるから、特許法第39条第1項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 むすび
上記3において検討したとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について

1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、令和2年3月10日付け手続補正書により補正された、上記第2の1で示した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

2 当審において通知した拒絶の理由
当審において通知した令和2年5月19日付けの拒絶の理由は、概略、次のとおりのものである。
(先願)本願発明は、その出願日前の先願(引用文献等1)に係る発明と同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特願2016-209473号(特許第6391103号)

3 先願発明
当審において通知した令和2年5月19日付けの拒絶の理由に引用された先願の請求項1に係る発明(先願発明)は、上記第2の3(1)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記第2の2(1)において検討したとおり、本件補正発明において、発明を特定するために必要な事項である「第2の装飾部」について、「前記透過性を有する遊技パネルの裏面に略平行とされる面部を有し、該面部に複数のLEDを配置して」いること、及び、「前記面部に配置された前記複数のLEDを面状に発光させる」ことという限定を省き、「第2の装飾部」が、「発光部を有して」いると記載を改めたものである。

そうすると、本願発明と先願発明とは、上記の限定を省くとともに記載を改めることにより、上記第2の3(3)において検討した相違点1がなくなり、相違点2の点で相違するものである。
そして、相違点2については、上記第2の3(4)イにおいて検討したように、透過性を有する遊技パネルの前面に装飾面及び透明面を設けるという課題解決のための具体化手段における微差にすぎないから、本願発明は、先願発明と実質的に同一である。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、先願発明と実質的に同一であるから、特許法第39条第1項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-10 
結審通知日 2020-11-11 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2017-36869(P2017-36869)
審決分類 P 1 8・ 4- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 直行  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 太田 恒明
▲吉▼川 康史
発明の名称 遊技機  

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