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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1370382
審判番号 不服2019-12937  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-30 
確定日 2021-01-14 
事件の表示 特願2015-252834「不動産取引支援システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月29日出願公開、特開2017-117248〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年12月25日を出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 4月23日付け:拒絶理由通知書
平成31年 5月14日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 7月 9日付け:拒絶査定
令和 1年 9月30日 :審判請求書、手続補正書の提出


第2 令和1年9月30日にされた手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和1年9月30日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「不動産の購入希望者と販売希望者との取り引きを支援する不動産取引支援システムであって、 通信端末から入力された購入希望者の購入条件を当該購入希望者の連絡先に関連づけて登録する購入条件登録手段と、 販売希望者から提供された物件情報を当該販売希望者の連絡先に関連づけて登録する物件情報登録手段と、 前記物件情報登録手段内に購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されているか否かを判定する物件情報判定手段と、 購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されていたマッチング時に、当該物件情報を購入希望者と関連づけた特定物件情報として記憶する特定物件情報記憶手段と、 マッチング時に前記特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後に、特定物件情報記憶手段に記憶された特定物件情報を販売希望者の連絡先とともに購入希望者の連絡先に連絡する連絡手段と、を備え、 マッチング時以外には、購入希望者に対して販売希望者の物件情報を表示および通知せず、 マッチング時以外には、販売希望者に対して購入希望者の購入条件を表示および通知せず、 物件情報は、それを入力した販売希望者以外の販売希望者には表示および通知しない 不動産取引支援システム。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、平成31年5月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「 不動産の購入希望者と販売希望者との取り引きを支援する不動産取引支援システムであって、
通信端末から入力された購入希望者の購入条件を当該購入希望者の連絡先に関連づけて登録する購入条件登録手段と、
販売希望者から提供された物件情報を当該販売希望者の連絡先に関連づけて登録する物件情報登録手段と、
前記物件情報登録手段内に購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されているか否かを判定する物件情報判定手段と、
購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されていたマッチング時に、当該物件情報を購入希望者と関連づけた特定物件情報として記憶する特定物件情報記憶手段と、
特定物件情報記憶手段に記憶された特定物件情報を購入希望者の連絡先に連絡する連絡手段と、を備え、
マッチング時以外には、購入希望者に対して販売希望者の物件情報を表示および通知せず、
マッチング時以外には、販売希望者に対して購入希望者の購入条件を表示および通知せず、
物件情報は、それを入力した販売希望者以外の販売希望者には表示および通知しない
不動産取引支援システム。」

2 補正の適否
本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「連絡手段」について、連絡するタイミング及び連絡する情報に、「マッチング時に前記特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後に」及び「販売希望者の連絡先とともに」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

(1)本件補正発明
本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。

(2)引用文献の記載事項
ア 引用文献1
(ア)原査定の拒絶の理由で引用された本願の出願日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明を記載した引用文献である、特開2001-256300号公報(平成13年9月21日出願公開。以下「引用文献1」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

a 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、不動産物件に関する情報を顧客に提供するための不動産情報提供システム、および、不動産情報提供方法に関するものである。」

b 「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来は、人が、電話などにより顧客に通知を行う必要があったため、通知に手間や人件費がかかるといった問題があった。また、顧客の希望条件に合致する不動産物件があるかどうかを、不動産物件のリストの中から検索するのは、非常に手間がかかり面倒であるといった問題があった。さらに、顧客が希望する予算や広さなどといった希望条件の詳細を顧客取扱者や不動産情報管理業者が把握するのは、大変時間がかかる作業であるという問題があった。また、取り扱い不動産物件、即ち、販売や賃貸が可能な不動産物件に関する情報は、流動的なものであり、この情報を管理し続け、かつ、新たに出てきた情報の中に、顧客の希望に添うものがあるかどうかを常に監視するのは非常に手間暇がかかるといった問題があった。
【0005】加えて、特願平7-169258号公報に示すような技術では、顧客が駅に出向いて端末を操作する必要があるため、面倒であるという問題があった。
【0006】本発明の目的は上記事情に鑑みてなされたもので、不動産物件に関する情報の顧客に対する提供作業を、システムにより行うことによって、上記の各課題を解決可能とすることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の発明は、例えば、図2等に示すように、不動産物件に関する情報を顧客に提供するための不動産情報提供システム(例えば、土地情報提供テレホンサービスシステム1)であって、不動産物件についての顧客の希望条件に関する希望条件データ53と、顧客の連絡先に関する顧客連絡先データ54aと、を少なくとも含む顧客データ52、…が格納された顧客データベース51と、取り扱い不動産に関する不動産データ57、…が格納された不動産データベース56と、顧客毎に前記希望条件データ53と前記不動産データ57、…とを照合することにより、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があるかどうかを判定する合致物件有無判定手段11と、前記合致物件有無判定手段11により、前記合致不動産物件があると判定された場合に、該合致不動産物件に関するデータを、前記顧客連絡先データ54aに基づき、当該顧客に対し通知する顧客宛通知手段(例えば、顧客宛通知制御手段12、音声応答サーバ20等により構成される)と、を備えることを特徴としている。
【0008】請求項1記載の不動産情報提供システムにおいては、顧客毎に、顧客データベース51の顧客データ52の希望条件データ53と、不動産データベース56の不動産データ57、…とを照合することにより、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があるかどうかを判定する合致物件有無判定手段11を備えているので、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件の存在を自動的に検索することができる。さらに、合致物件有無判定手段11による照合によって、合致不動産物件があると判定された場合に、該合致不動産物件に関するデータを、顧客データベース51の顧客データ52の顧客連絡先データ54aに基づき、当該顧客に対し通知する顧客宛通知手段12、20を備えているので、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件の存在(ならびに、場合によっては、合致不動産物件と判定された不動産物件に関する不動産データの内容)を、顧客に対し自動的に通知することができる。つまり、従来は、極めて手間がかかる作業であった希望条件データ53と不動産データ57、…との照合作業と、顧客に対する通知作業とをシステムにより自動化でき、手間がかからない。」

c 「【0011】本発明にかかる不動産情報提供システム1は、例えば、各種データの管理や、従属する各種装置に対し指令を行う(各種装置を制御する)管理装置(例えば、管理サーバ1)(請求項2、3)、データ入力を行うための入力端末40(請求項2、3)、管理装置の制御下で顧客に対し通知を行う顧客宛通知端末(例えば、音声応答サーバ20)(顧客宛通知手段)、管理装置10の制御下で顧客取扱者に通知を行う取扱者宛通知端末(例えば、FAXサーバ30)(取扱者宛通知手段;請求項6)等を備えて構成されている。このうち、管理装置10は、例えば、顧客データベース51、不動産データベース56、取扱者データベース58、合致物件有無判定手段11等を含むものである。
【0012】また、顧客データベース51の作成の仕方は、例えば、以下のようである。先ず、顧客取扱者が企画したイベント会場などに集客され、又は、顧客取扱者の事業所200に来所した顧客が、所定の記入用紙300などに対し不動産物件の希望条件や、当該顧客の連絡先といった、顧客データ52の元となる内容を記入する。次いで、この記入した結果に基づき、イベント会場や、顧客取扱者の事業所200などに設置された顧客データ入力端末(入力端末40)において(顧客取扱者などが)顧客データ52の元となる内容の入力を行うことで、この入力された内容が、顧客データ52と関連するデータとして、顧客データ入力端末40から管理装置10へと送信される(請求項2)。管理装置10では、各地の顧客データ入力端末40から送信された顧客データ52と関連するデータを、例えば、随時編集することにより、複数の顧客データ52をまとめて格納した顧客データベース51を作成する。ここで、各地の入力端末40からの顧客データ52の送信は、例えば、請求項11記載のように、インターネットを介して行われる。なお、顧客データ入力端末40は、例えば、LAN(local area network)を介して、管理装置10と接続されている構成であっても良く、この場合、例えば、各地のイベント会場や顧客取扱者の事業所などで得られた前記記入用紙300、…を収集して、これら記入用紙300、…の内容を顧客データ入力端末40にて一括して入力するようにすればよい。また、LANを介して管理装置10と接続された顧客データ入力端末40と、各地に設けられた顧客データ入力端末40とを併用するようにしても良い。
【0013】また、顧客データ52のうち、希望条件データ53には、例えば、顧客が希望する予算、顧客が希望する不動産物件の広さ(例えば、不動産物件が土地の場合、坪数など)、顧客が希望する地域(どの地域の物件を希望するか)、顧客が希望する公共の交通機関の路線(どの路線の物件を希望するか)、顧客が希望する(購入などのなど)時期、などといった項目が含まれる。顧客データ52のうち、顧客連絡先データ54aには、顧客の電話番号(顧客と関連する電話機60を介して通知を行う場合)や、顧客の電子メールアドレス(インターネットを介して通知を行う場合)などの項目が含まれる。ここで、顧客と関連する電話機60とは、例えば、顧客の自宅の電話機、顧客が保有する携帯電話、顧客の勤務先の電話機などである。そして、この顧客連絡先データ54aに基づき、合致不動産物件に関するデータが顧客に対し通知される。
【0014】さらに、顧客データ52には、希望条件データ53や顧客連絡先データ54aの他に、例えば、当該顧客が、どの顧客取扱者の紹介によるものかを示すデータ、この顧客取扱者の連絡先に関する取扱者連絡先データ54b、顧客の氏名、年齢、郵便番号、住所、電話で連絡する場合に顧客が希望する連絡時間(例えば、月?金(平日)、土日祭日のうちいずれかの希望、1日のうちの希望する時間帯、いつでも可、などといった希望)などの項目が含まれている。このうち、顧客が、どの顧客取扱者の紹介によるものかを示すデータに基づき、この紹介した顧客取扱者の連絡先に関する取扱者連絡先データ54bを得ることで、請求項6記載のように、顧客からの回答結果を顧客取扱者宛に通知することができる。具体的には、顧客取扱者に関する取扱者データ59、…を、複数の顧客取扱者についてまとめて格納した取扱者データベース58を予め作成しておく。一方で、顧客データ52の元となるデータには、顧客が、どの顧客取扱者の紹介によるものかを示すデータが、予め含まれている。そして、顧客データ52の元となるデータと、取扱者データベース58、…とを照合することで、顧客データ52の元となるデータに含まれる「顧客がどの顧客取扱者の紹介によるものかを示すデータ」に基づき、顧客を紹介した顧客取扱者の連絡先を得ることができ、顧客データ52の元となるデータに、この顧客取扱者の連絡先を加えたデータとして、顧客データ52を得ることができる。また、電話で連絡する場合に顧客が希望する連絡時間に基づき、顧客に対する電話連絡を適当な時間(曜日)に行うことができる。
【0015】また、不動産データベース56の作成の仕方は、例えば、以下のようである。取り扱い(販売や賃貸等)可能な不動産物件は、時間経過とともに流動的に変化するものであるため、新たに取り扱い可能となった不動産物件に関する不動産データ57を不動産データベース56に追加するとともに、成約したために取り扱い不能となった不動産物件に関する不動産データ57は、合致物件有無判定手段11による照合の対象から外す(不動産データベース56から削除してもよいし、未だ不動産データベース56に格納されているものの、照合不能な状態とするのみであってもよい)。不動産データ57、…を入力するための不動産データ入力端末(入力端末40)は、例えば、請求項3記載のように、各顧客取扱者の事業所200、又は各不動産業者の事業所に設けられるといったように各地に設けられ、各地の不動産データ入力端末40、…から、通信により管理装置10に不動産データ57、…を送信して、管理装置10にて不動産データベース56の記憶内容を更新することとしても良いし、不動産データ入力端末40が、例えば、LAN(local area network)を介して、管理装置10と接続されていることとしても良い。あるいは、各地に設けられた不動産データ入力端末40、…と、LANで接続された不動産データ入力端末40とを併用する構成であっても良い。さらに、この不動産データ入力端末40は、顧客データ入力端末40と共通の端末40であっても良い。
【0016】不動産データ57には、例えば、当該不動産物件が、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータ、価格、広さ(不動産物件が土地の場合、坪数)、地域(どの地域の物件であるか)、公共の交通機関の路線(どの路線の物件であるか)、取り扱い可能となる時期、などの項目が含まれる。
【0017】また、合致物件有無判定手段11は、顧客毎に希望条件データ53に含まれる各項目(予算、広さ、地域、路線、時期など)と、不動産データ57、…に含まれる各項目(価格、広さ、地域、路線、時期など)とを照合し、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があるかどうかを判定する。即ち、希望条件データ53の予算と不動産データ57、…の価格との照合、希望条件データ53の広さと不動産データ57、…の広さとの照合、希望条件データ53の地域と不動産データ57、…の地域との照合、希望条件データ53の路線と不動産データ57、…の路線との照合、および希望条件データ53の時期と不動産データ57、…の時期との照合などに基づき、合致不動産物件の有無の判定を行う。ここで、合致不動産物件があるとの判定は、希望条件データ53の各項目と不動産データ57、…の各項目とが完全一致した場合のみに限らず、例えば、請求項4記載のように、希望条件データ53の各項目と、不動産データ57、…の各項目との間に、許容範囲内の誤差がある場合にも、合致不動産物件があると判定することが望ましい。
【0018】また、顧客宛通知手段12、20は、顧客と関連する通信端末(例えば、顧客と関連する電話機60や、顧客と関連し、インターネット接続可能なパソコン、あるいは、顧客と関連するFAXなど)を介して、合致不動産物件に関するデータを、顧客に対し自動通知するものである。即ち、顧客宛通知手段12、20は、顧客と関連する電話機60に対し自動的に電話をかけたり、顧客と関連するパソコンに対し自動的に電子メールを送信したり、顧客と関連するFAXに対し自動的に送信したりするようになっている。
【0019】ここで、顧客に通知されるデータ、即ち、「合致不動産物件に関するデータ」とは、合致不動産物件の不動産データ57に関するものであってもよいが、不動産物件に関する具体的な内容は含まず、単に、合致不動産物件が見つかった旨を顧客に通知する内容のものであってもよい。」

「【0088】次ぎに、本発明にかかる土地情報提供テレホンサービスシステム1による動作説明を行う。
【0089】先ず、図19に示すステップS1にて、管理サーバ10の合致物件有無判定手段11が、顧客データベース51内の顧客データ52の希望条件データ53と、不動産データベース56の各不動産データ57とを照合することにより、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があるかどうかを判定する。具体的には、合致物件有無判定手段11は、希望条件データ53の土地予算と不動産データ57の土地価格との照合、希望条件データ53の希望する土地の広さと不動産データ57の土地の広さとの照合、希望条件データ53の希望地区(地域)や希望路線と不動産データ57の地域や路線との照合を行う。
【0090】ここで、希望条件データ53の各項目と不動産データ57の各項目との照合の際に、条件が完全一致することが望ましいのは言うまでもないが、完全一致せず所定の許容範囲内の誤差があった場合にも、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があると判定するようにしてもよい。予算と価格や、広さなどのように、数値的な条件の照合の際には、例えば、プラスマイナス何パーセント以内までは、合致すると判定するような設定としてよい。また、地域などの条件の照合の際には、例えば、顧客が希望する地域の周辺の地域であっても合致すると判定するような設定であっても良い。
【0091】本実施例の場合には、土地価格は、土地予算に対し上下(プラスマイナス)20%以内であれば、条件が合致するとする。また、不動産データ57の広さは、希望条件データ53の広さに対し、上限は30%以内、下限は20%以内であれば、条件が合致するとする。さらに、地域および路線に関しては、完全一致した場合のみ、条件が合致するとする。本実施例では、このように、照合すべき各項目のうち、一部(予算と価格、広さ)は、所定の許容範囲を設定した照合とし、他の一部(地域、路線)は、完全一致するかどうかを判定する照合とすることで、適度な照合基準を設定することができる。
【0092】このようにして、上記ステップS1にて、合致物件有無判定手段11により、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件が有ると判定された場合には、ステップS2に移行する。なお、ステップS1にて、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件が無いと判定された場合には、今回の処理を終了する。」

(イ)上記(ア)の摘記事項から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されている。
a 引用文献1に記載の技術は、不動産物件に関する情報を顧客に提供するための不動産情報提供システムであって(【0001】)、従来は、通知に手間や人件費がかかるといった問題、顧客の希望条件に合致する不動産物件があるかどうかを、不動産物件のリストの中から検索するのは、非常に手間がかかり面倒であるといった問題、顧客が希望する予算や広さなどといった希望条件の詳細を顧客取扱者や不動産情報管理業者が把握するのは、大変時間がかかる作業であるという問題、新たに出てきた情報の中に顧客の希望に添うものがあるかどうかを常に監視するのは非常に手間暇がかかるといった問題を、不動産物件に関する情報の顧客に対する提供作業をシステムにより行うことによって解決することを目的としたものある。(【0004】?【0006】)
そして、顧客が不動産の取り引きを行う相手となる業者はその不動産を管理する不動産業者となる(【0016】)ことは明らかである。
してみると、引用文献1に記載の不動産情報提供システムは、不動産物件に関する情報を顧客に提供することで、顧客と不動産業者との不動産の取り引きを支援する不動産情報提供システムである。

b 引用文献1に記載の不動産情報提供システムは、不動産物件に関する情報を顧客に提供するための不動産情報提供システム(例えば、土地情報提供テレホンサービスシステム1)であって、顧客データベースと不動産データベースと合致物件有無判定手段と顧客宛通知手段とを備える(【0007】)不動産情報提供システムである。

c 引用文献1に記載の顧客データベースには、不動産物件についての顧客の希望条件に関する希望条件データと、顧客の連絡先に関する顧客連絡先データとを少なくとも含む顧客データが格納され(【0007】)、顧客データは、希望条件データ5や顧客連絡先データの他に、例えば、当該顧客が、どの顧客取扱者の紹介によるものかを示すデータ、この顧客取扱者の連絡先に関する取扱者連絡先データ、顧客の氏名、年齢、郵便番号、住所、電話で連絡する場合に顧客が希望する連絡時間(例えば、月?金(平日)、土日祭日のうちいずれかの希望、1日のうちの希望する時間帯、いつでも可、などといった希望)などの項目が含まれる(【0013】)ことから、顧客の希望条件データを顧客連絡先データとは関連づけられているといえる。
また、顧客データ入力端末(入力端末)において顧客データの元となる内容が入力され、入力された内容が顧客データと関連するデータとして送信されて作成されるものである(【0012】)から、希望条件データは顧客データ入力端末(入力端末)から入力されたデータであるといえる。
してみると、引用文献1に記載の顧客データベースは、顧客データ入力端末(入力端末)から入力された顧客の希望条件データを顧客連絡先データに関連づけて登録する顧客データベースである。

d 引用文献1に記載の不動産データベースは、取り扱い不動産に関する不動産データが格納され(【0007】)、不動産データには、当該不動産物件が、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータ、価格、広さ(不動産物件が土地の場合、坪数)、地域(どの地域の物件であるか)、公共の交通機関の路線(どの路線の物件であるか)、取り扱い可能となる時期などの項目が含まれており(【0016】)、価格、広さ(不動産物件が土地の場合、坪数)、地域(どの地域の物件であるか)、公共の交通機関の路線(どの路線の物件であるか)、取り扱い可能となる時期などの項目は物件情報であるといえるとともに、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータは物件情報とともに不動産データを構成していることから、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータと物件情報とは関連づけられているといえる。
また、不動産データ入力端末(入力端末)は各不動産業者の事業所に設けられた不動産データを入力するための端末であって(【0015】)、物件情報は不動産データに含まれるものであるから、物件情報は不動産業者から提供された情報であるといえる。
してみると、引用文献1に記載の不動産データベースは、不動産業者から提供された物件情報をどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータに関連づけられて登録する不動産データベースである。

e 引用文献1に記載の合致物件有無判定手段は、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件の存在を自動的に検索することができるものであって(【0008】)、顧客毎に希望条件データと不動産データとを照合し、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があるかどうかを判定する合致物件有無判定手段である(【0007】、【0089】)。

f 引用文献1に記載の顧客宛通知手段は、合致物件有無判定手段により合致不動産物件があると判定された場合に、該合致不動産物件に関するデータを、顧客連絡先データに基づき、当該顧客に対し通知する顧客宛通知手段であって(【0007】)、顧客相手通知手段は、顧客と関連するパソコンに対し自動的に電子メールを送信したりするを含む(【0018】)。
ここで、顧客に通知される合致不動産物件に関するデータは合致不動産物件の不動産データに関するものであるとともに、不動産データには、上記dのごとく、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータ及び物件情報とが含まれていることから、通知される該合致不動産物件に関するデータは、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータを含む該合致不動産物件に関するデータであるといえる。
してみると、引用文献1に記載の顧客宛通知手段は、合致物件有無判定手段により合致不動産物件があると判定された場合に、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータを含む該合致不動産物件に関するデータを、顧客連絡先データに基づき、当該顧客に対し通知する顧客宛通知手段である。

g 引用文献1に記載された技術は、合致物件有無判定手段により顧客の希望条件に合致する合致不動産物件が無いと判定された場合には、今回の処理を終了する(【0092】)ものである。

(ウ)上記(ア)、(イ)を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「不動産物件に関する情報を顧客に提供することで、顧客と不動産業者との不動産の取り引きを支援する不動産情報提供システムであって、
顧客データ入力端末(入力端末)から入力された顧客の希望条件データを顧客連絡先データに関連づけて登録する顧客データベースと、
不動産業者から提供された物件情報をどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータに関連づけて登録する不動産データベースと、
顧客毎に希望条件データと不動産データとを照合し、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があるかどうかを判定する合致物件有無判定手段と、
合致物件有無判定手段により合致不動産物件があると判定された場合に、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータを含む該合致不動産物件に関するデータを、顧客連絡先データに基づき、顧客と関連するパソコンに対し自動的に電子メールを送信したりすることで、当該顧客に対し通知する顧客宛通知手段と、を備え、
合致物件有無判定手段により顧客の希望条件に合致する合致不動産物件が無いと判定された場合には今回の処理を終了する
不動産情報提供システム。」

(3)引用発明との対比
ア 対比
本願補正発明と引用発明を、以下で対比する。

(ア)引用発明は、「不動産物件に関する情報を顧客に提供することで、顧客と不動産業者との不動産の取り引きを支援する不動産情報提供システム」である。
ここで、引用発明の「顧客」及び「不動産業者」は、本願補正発明の「不動産の購入希望者」及び「販売希望者」に相当するとともに、引用発明の「不動産情報提供システム」は、不動産物件に関する情報を顧客に提供することで不動産の取り引きを支援するものであるから、「不動産取引支援システム」と呼べる。
してみると、引用発明の「不動産情報提供システム」は、本願補正発明の「不動産の購入希望者と販売希望者との取り引きを支援する不動産取引支援システム」に相当する。

(イ)引用発明は「顧客データ入力端末(入力端末)から入力された顧客の希望条件データを顧客連絡先データに関連づけて登録する顧客データベース」を備える。
ここで、引用発明の「顧客データ入力端末(入力端末)」、「顧客の希望条件データ」及び「顧客連絡先データ」は、本願補正発明の「通信端末」、「購入希望者の購入条件」及び「当該購入希望者の連絡先」に相当するとともに、引用発明の「顧客データベース」は、顧客の希望条件データを登録するものであるから、「購入条件登録手段」と呼べる。
してみると、引用発明の「顧客データベース」は、本願補正発明の「通信端末から入力された購入希望者の購入条件を当該購入希望者の連絡先に関連づけて登録する購入条件登録手段」に相当する。

(ウ)引用発明は「不動産業者から提供された物件情報をどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータに関連づけて登録する不動産データベース」を備える。
ここで、引用発明の「不動産データベース」は物件情報を登録するものであるから、「物件情報登録手段」と呼べる。
してみると、引用発明の「不動産データベース」は、物件情報が関連づけて登録される情報がどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータであって、「当該販売希望者の連絡先」ではない点を除き、「販売希望者から提供された物件情報を」「登録する物件情報登録手段」に対応する。

(エ)引用発明は「顧客毎に希望条件データと不動産データとを照合し、顧客の希望条件に合致する合致不動産物件があるかどうかを判定する合致物件有無判定手段」を備える。
ここで、不動産データは不動産データベースに登録されたデータであるから、不動産データベース内に希望条件データに合致する物件情報を含む不動産データが登録されているか否かを判定することに他ならない。
してみると、引用発明の「合致物件有無判定手段」は「前記物件情報登録手段内に購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されているか否かを判定する物件情報判定手段」に相当する。

(オ)引用発明は「合致物件有無判定手段により合致不動産物件があると判定された場合に、どの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータを含む該合致不動産物件に関するデータを、顧客連絡先データに基づき、顧客と関連するパソコンに対し自動的に電子メールを送信したりすることで、当該顧客に対し通知する顧客宛通知手段」を備えている。
そして、引用発明の「合致不動産物件に関するデータ」は本願補正発明の「特定物件情報」に相当する。
このため、引用発明の「顧客宛通知手段」は、連絡するタイミングが「前記特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後に」ではない点、連絡する特定物件情報が「特定物件情報記憶手段に記憶された」ものではない点、及び、特定物件情報を「販売希望者の連絡先とともに」連絡するものではない点を除き、「マッチング時に、」「特定物件情報を販売希望者の連絡先とともに購入希望者の連絡先に連絡する連絡手段」に対応する。

イ 一致点及び相違点
以上のことから、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。

<一致点>
「不動産の購入希望者と販売希望者との取り引きを支援する不動産取引支援システムであって、
通信端末から入力された購入希望者の購入条件を当該購入希望者の連絡先に関連づけて登録する購入条件登録手段と、
販売希望者から提供された物件情報を登録する物件情報登録手段と、
前記物件情報登録手段内に購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されているか否かを判定する物件情報判定手段と、
マッチング時に、特定物件情報を購入希望者の連絡先に連絡する連絡手段と、を備える
不動産取引支援システム。」

<相違点1>
本願補正発明は、物件情報を当該販売希望者の連絡先に関連づけて登録するのに対して、引用発明は、物件情報をどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータに関連づけて登録する点。

<相違点2>
本願補正発明は、購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されていたマッチング時に、当該物件情報を購入希望者と関連づけた特定物件情報として記憶する特定物件情報記憶手段を備え、連絡手段が前記特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後に、特定物件情報記憶手段に記憶された特定物件情報を販売希望者の連絡先とともに連絡するのに対して、引用発明は、特定物件情報記憶手段を備えておらず、連絡するタイミングが前記特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後にではなく、連絡する特定物件情報が特定物件情報記憶手段に記憶されたものではないとともに、特定物件情報を販売希望者の連絡先とともに連絡するものではない点。

<相違点3>
本願補正発明は、マッチング時以外には、購入希望者に対して販売希望者の物件情報を表示および通知せず、また、マッチング時以外には、販売希望者に対して購入希望者の購入条件を表示および通知しないのに対して、引用発明は、マッチング時以外の販売希望者の物件情報や購入希望者の購入条件の表示及び通知についての特定がない点。

<相違点4>
本願補正発明は、物件情報はそれを入力した販売希望者以外の販売希望者には表示および通知しないのに対して、引用発明は、このようになっていない点。

(4)当審の判断
以下、上記相違点について検討する。

ア 相違点1について
相違点1は、本願補正発明は物件情報を当該販売希望者の連絡先に関連づけて登録するのに対して、引用発明は物件情報をどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータに関連づけて登録するという点である。
管理する不動産業者を特定するために、不動産業者の名称、所在地及び連絡先などを用いることは、当業者にとって常套的に行われている事項である。
してみると、引用発明のどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータとして不動産業者の連絡先、すなわち、当該販売希望者の連絡先を含めるようにし、引用発明の物件情報登録手段を、「販売希望者から提供された物件情報を当該販売希望者の連絡先に関連づけて登録する物件情報登録手段」とすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

イ 相違点2について
相違点2は、本願補正発明は、購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されていたマッチング時に、当該物件情報を購入希望者と関連づけた特定物件情報として記憶する特定物件情報記憶手段を備え、連絡手段が前記特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後に、特定物件情報記憶手段に記憶された特定物件情報を販売希望者の連絡先とともに連絡するのに対して、引用発明は、特定物件情報記憶手段を備えておらず、連絡するタイミングが前記特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後にではなく、連絡する特定物件情報が特定物件情報記憶手段に記憶されたものではないとともに、特定物件情報を販売希望者の連絡先とともに連絡するものではないという点である。
引用発明の連絡手段は、マッチング時にどの不動産業者の管理下にあるものであるかを示すデータを含む特定物件情報を購入希望者の連絡先に電子メールを送信したりすることで通知するものであり、電子メールを送信するものにおいて、送信するデータを一旦バッファする記憶手段を設け、記憶手段に記憶された直後に、当該記憶手段に記憶されたデータを順次読み出して送信することは技術常識であることから、引用発明においてもこのような構成となっていると認められる。
そして、このような記憶手段は、購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されていたマッチング時に、当該物件情報を購入希望者と関連づけた特定物件情報として記憶する特定物件情報記憶手段に相当するとともに、特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後に、特定物件情報記憶手段に記憶された特定物件情報を連絡する作用を奏することは明らかである。
してみると、当該相違点2については、引用発明では特定されていないものの、その奏する作用からみて同様な構成を有していると認められることから、実質的な相違点ではない。

また、仮に実質的な相違点であったとしても、上記技術常識に鑑みれば、引用発明に送信するデータを一旦バッファするために、購入希望者の購入条件に合致する物件情報が登録されていたマッチング時に、当該物件情報を購入希望者と関連づけた特定物件情報として記憶する特定物件情報記憶手段を設けるとともに、特定物件情報記憶手段に特定物件情報が記憶された直後に、特定物件情報記憶手段に記憶された特定物件情報を連絡するように構成することは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

ウ 相違点3について
相違点3は、本願補正発明は、マッチング時以外には、購入希望者に対して販売希望者の物件情報を表示および通知せず、また、マッチング時以外には、販売希望者に対して購入希望者の購入条件を表示および通知しないのに対して、引用発明は、マッチング時以外の販売希望者の物件情報や購入希望者の購入条件の表示及び通知についての特定がないという点である。
引用発明ではマッチングしない場合には今回の処理を終了するものであることから、マッチング時以外に販売希望者の物件情報や購入希望者の購入条件が表示及び通知がされないことは明らかである。
してみると、当該相違点3については、引用発明では特定されていないものの、その奏する作用からみて同様な構成を有していると認められることから、実質的な相違点ではない。

また、仮に実質的な相違点であったとしても、マッチングしない場合には今回の処理を終了するとの動作に鑑みれば、マッチング時以外には、購入希望者に対して販売希望者の物件情報を表示および通知せず、また、マッチング時以外には、販売希望者に対して購入希望者の購入条件を表示および通知しないようにすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

エ 相違点4について
相違点4は、本願補正発明は、物件情報はそれを入力した販売希望者以外の販売希望者には表示および通知しないのに対して、引用発明は、このようになっていないという点である。
不動産会社が取り扱う不動産の物件情報には、店頭に掲示して広く一般に公開する物件情報と来店者にのみ限定的に公開する物件情報とがあり、不動産の物件情報は、不動産会社での取扱に応じて提供される範囲が異なる。
また、不動産の媒介契約には、宅地建物取扱業法によって指定流通機構(いわゆる「レインズ」)に登録する義務を負い、不動産の物件情報が他の不動産会社に提供される「専任媒介契約」や、指定流通機構へ登録する義務を負わず、登録しない不動産の物件情報は当該指定流通機構を通じて他の不動産会社に提供されない「一般媒介契約」などがあり、不動産の物件情報には、媒介契約の契約形態に応じても他の不動産会社への提供の有無が異なる。
このように、不動産の物件情報には他の不動産会社に対して提供するものや提供しないものがあることは商慣行において広く知られており、不動産の物件情報を他の不動産会社へ提供するか否かは必要に応じて選択し得る事項である。
そして、不動産の物件情報を他の不動産会社へ提供しないようにシステムを構築した場合であっても、他の不動産会社にも提供したい物件情報は当該システムの外で提供すれば足りるのに対して、物件情報を他の不動産会社へ提供するようにシステムを構築した場合は、他の不動産会社に提供したくない物件情報もそのシステムによって提供されてしまって、提供したくないという意向を守ることができないことは明らかである。
してみると、引用発明において、物件情報はそれを入力した販売希望者以外の販売希望者には表示および通知しないようすることは、当業者であれば容易に想到し得たことである。

オ 効果について
本願明細書の段落【0014】には、「本発明によれば、それぞれ多数の購入希望者と販売希望者との間での不動産の取り引きが迅速かつ円滑に行えるようになる。」との事項が記載されており、該事項が本願補正発明の効果であると認められる。
これに対して、引用発明は、「不動産物件に関する情報を顧客に提供することで、顧客と不動産業者との不動産の取り引きを支援する不動産情報提供システム」であることから、購入希望者と販売希望者との間での不動産の取り引きが迅速かつ円滑に行えるという効果を奏していると認められることから、これらの相違点を総合的に勘案しても、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明が奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

カ 小括
したがって、本件補正発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 本件補正についてのむすび
よって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。


第3 本願発明について
1 本願発明
令和1年9月30日にされた手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成31年5月14日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その請求項1に記載された事項により特定される、前記第2[理由]1(2)に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1?6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:特開2001-256300号公報
引用文献2:特開2006-058924号公報
引用文献3:特開2001-357118号公報
引用文献4:特開2004-5473号公報
引用文献5:特開2013-152598号公報

3 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1及びその記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「連絡手段」についての連絡するタイミング及び連絡する情報に係る限定事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記第2の[理由]2(3)、(4)に記載したとおり、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-11-05 
結審通知日 2020-11-10 
審決日 2020-11-25 
出願番号 特願2015-252834(P2015-252834)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 裕史  
特許庁審判長 渡邊 聡
特許庁審判官 佐藤 聡史
相崎 裕恒
発明の名称 不動産取引支援システム  
代理人 植村 貴昭  

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