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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D |
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管理番号 | 1370388 |
審判番号 | 不服2019-16006 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-27 |
確定日 | 2021-01-14 |
事件の表示 | 特願2016-15773号「フォーマーディスペンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年8月3日出願公開、特開2017-132522号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成28年1月29日の出願であって、令和元年8月14日付けで拒絶査定がされた。これに対し、令和元年11月27日に拒絶査定不服審判が請求され、令和2年6月12日付けで当審より拒絶理由が通知され、令和2年8月12日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明について 1 本願発明 特許請求の範囲の請求項1?6に係る発明は、令和2年8月12日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりのものであると認める。 「容器内の内容物を泡状にして噴出させるフォーマーディスペンサであって、 内容物を外部に吐出するノズルを有するノズルヘッドと、 該ノズルヘッドの押下によって容器内の内容物を吸引及び圧送するポンプとを備え、 該ポンプによって圧送された内容物は、前記ノズルヘッド内の水平方向の内部流路を経由し、更にL字型の内部流路を有する前記ノズルを経由して略鉛直方向下方へと吐出され、 前記ノズルヘッドは、前記水平方向の内部流路に開孔を介して連通する圧力調整空間を有し、該圧力調整空間は、少なくとも一部が前記押下による押圧力によって弾性変形し前記押圧力の解除によって復元する弾性部材によって区画形成されている、フォーマーディスペンサ。」 2 引用例 (1) 引用例1 令和2年6月12日付けで通知した拒絶理由に引用文献4として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2007-50343号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている(下線は当審で付した。)。 (ア)「【技術分野】 【0001】 本発明は、容器体に収容された液体を吐出する液体吐出装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、ノズルが設けられたノズルヘッドと、このノズルヘッドを押し下げることによって容器体に収容された液体をノズルの先端部から吐出させるポンプ機構とを備えた液体吐出装置がある。この液体吐出装置は、ポンプディスペンサーと呼ばれるものであり、例えばシャンプーやリンス、液体石鹸などの液体が収容された容器体の口頸部に装着されて使用される。」 (イ)「【0008】 以上のように、本発明に係る液体吐出装置では、ノズル部内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構をノズルヘッド側に配置することで、このバックサクション機構をより簡便且つ安価な構造とすることができ、なお且つ充分なバックサクション量を得ることができる。したがって、この液体吐出装置では、使用後にノズル部内に残った液体がノズル部の先端部から垂れ落ちたり、ノズル部内に残った液体がノズル部の先端部に溜まって固形物となったりするのを防ぐことができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0009】 以下、本発明を適用した液体吐出装置について、図面を参照して詳細に説明する。 本発明を適用した液体吐出装置は、例えば図1に示すポンプディスペンサー1である。このポンプディスペンサー1は、液体を収容する容器体2に装着されて、この容器体2に収容された液体を吐出するものであり、容器体2の口頸部2aに螺合により装着された装着キャップ3を介して容器体2に取り付けられている。そして、このようなポンプディスペンサー1が装着された容器体2によって、いわゆる縦型手動式のポンプ付き容器(液体吐出容器)が構成されている。 【0010】 なお、容器体2に収容される液体としては、例えばシャンプーや、リンス、トリートメント、液体石鹸、化粧液、洗浄剤、液体洗剤、柔軟仕上げ剤、液体歯磨きなどを挙げることができる。また、粘性を持った液体であれば、これらの液体に特に限定されるものではない。さらに、本発明は、これら液中に含まれる固形成分(液中の組成成分のうち水分を除いた成分)が全重量の10%以上である場合に、後述するノズル部7の先端部に固形物が発生しやすくなるため、特に有効である。 【0011】 ポンプディスペンサー1は、装着キャップ3から上方に突出して設けられたノズルヘッド4と、装着キャップ3の内側から容器体2の内部に突出して設けられたポンプ機構5とを備えている。このうち、ノズルヘッド4は、押圧操作されるヘッド部6と、このヘッド部6から延長して設けられたノズル部7とを有している。ヘッド部6は、後述するステム10の上端部に取り付けられることによって、上方に付勢された状態で上下方向に移動可能に支持されている。また、ヘッド部6内には、ステム10からノズル部7へと液体を導く流路8が設けられている。ノズル部7は、ヘッド部6の側面部からほぼ水平方向に延長され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有している。また、ノズル部7は、内部に残った液体が先端部に溜まって固形物となるのを防ぐため、先端部が基端部よりも上方に位置するような上向き形状としてもよい。」 (ウ)「【0018】 ところで、このポンプディスペンサー1は、ノズル部7内に溜まった液体を吸引するバックサクション機構30をノズルヘッド4側に配置した構成となっている。具体的に、このバックサクション機構30は、ヘッド部6の上面部を覆い且つ押圧操作可能に設けられた弾性部材31を有している。 【0019】 弾性部材31は、例えばゴムや、エラストマー、ポリオレフィン、シリコン樹脂等の弾性変形可能な樹脂からなる。この弾性部材31は、略円形ドーム状に形成されて、その周縁部がヘッド部6の上面部に接着等により取り付けられている。これにより、弾性部材31は、ヘッド部6の上面部を構成する隔壁6aと共に、ノズル部7より吸引された液体を収容する空間である液体収容部Sを構成している。また、弾性部材31は、その弾性変形により液体収容部Sの容積を変動させる容積変動部を構成している。ヘッド部6の隔壁6aには、液体収容部Sと流路8との間を連通させる連通孔32が設けられている。すなわち、連通孔32及び流路8は、液体収容部Sとノズル部7との間を連通させる連通部を構成している。なお、液体収容部Sの容積は、ノズル部7の容積に対して同等かそれ以上であることが好ましい。また、連通孔32の径は、液体収容部Sに収容された液体が表面張力等により漏れ出ない程度の大きさとすることが好ましい。 【0020】 以上のようなポンプディスペンサー1を備えるポンプ付き容器では、先ず、図2に示すノズルヘッド4が上方に突出した状態から、図3に示すように、ヘッド部6を押圧することによって、弾性部材31の弾性変形により液体収容部Sの容積が縮小した状態となる。さらに、この状態から、図4に示すように、ノズルヘッド4を圧縮コイルバネ9の付勢に抗して押し下げることによって、ポンプ機構5が容器体2に収容された液体Lをノズル部7の先端部へと圧送する。 【0021】 具体的に、このポンプ機構5では、ノズルヘッド4と共に、ステム10、ピストンヘッド11及びガスケット12が下降することによって、ポンプ室Pが圧縮されてこのポンプ室P内に充填された液体Lが加圧された状態となる。このとき、ガスケット12は、ステム10の上側ストッパー20aに当接された状態となり、ピストンヘッド11の排出口19を開放する。これにより、加圧された液体Lがノズル部7の先端部から吐出されることになる。なお、このとき吸入弁15は、ポンプ室P内が加圧されることよって吸入口14を閉塞する。 【0022】 一方、このポンプディスペンサー1では、ヘッド部6に対する押圧を解除して、図5に示す押し下げられたノズルヘッド4が図6に示す元の位置へと戻るとき、このノズルヘッド4と共に、ステム10、ピストンヘッド11及びガスケット12が上昇することによって、ポンプ室Pが拡張される。このとき、ガスケット12は、下側ストッパー20bに当接された状態となり、ピストンヘッド11の排出口19を閉塞する。一方、ポンプ室Pが拡張されると、このポンプ室P内に発生する負圧によって吸入弁15が吸入口14を開放する。これにより、容器体2に収容された液体Lが吸引パイプ16から吸い込まれて、再びポンプ室Pに充填されることになる。なお、このとき容器体2内の液体Lが減少するのに伴って、ステム10と支持筒18の貫通孔18aとの間の隙間からシリンダ9の通気孔17を通って外気が容器体2の内部へと導入されることになる。 【0023】 また、図7に示すように、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、ヘッド部6に対する押圧が解除されることによって、弾性部材31が弾性復帰する。このとき、液体収容部Sの容積が復元(拡張)するのに伴って、この液体収容部S内に負圧が発生し、ノズル部7に溜まった液体Lが流路8から連通孔32を通って液体収容部Sの内部へと引き込まれる。」 (エ)「【図1】 」 (オ)「【図3】 」 (カ)「【図7】 」 (2)引用発明1 上記記載を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。 「液体を収容する容器体2に装着されて、この容器体2に収容された液体を吐出するポンプディスペンサー1であって、 押圧操作されるヘッド部6と、ヘッド部6の側面部からほぼ水平方向に延長され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有しているノズル部7とを有するノズルヘッド4と、 ノズルヘッド4を下降することによって、加圧された液体がノズル部7の先端部から吐出され、ヘッド部6に対する押圧を解除したとき、容器体2に収容された液体Lが吸引パイプ16から吸い込まれて、再びポンプ室Pに充填されるポンプ機構5と、 液体収容部Sとノズル部7との間を連通させる連通部を構成する連通孔32及び流路8を有し、 液体収容部Sは、ヘッド部6を押圧することによって、弾性部材31の弾性変形によりその容積が縮小し、弾性部材31は、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、ヘッド部6に対する押圧が解除されることによって、弾性復帰する、ポンプディスペンサー1。」 (3) 引用例2 令和2年6月12日付けで通知した拒絶理由に引用文献5として引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である英国特許出願公告第1414637号公報(以下「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。(翻訳は、当審で付した。) (ア)「Dispensing pumps can be used for the emission of fluids, paste-like or cream-like substances or similar viscous media in measured quantities. These media may be,for example, cosmetic substances such as semi-fluid creams,facial milk, fluid make-up or the like. Considerable disadvantages occur in the use of known dispensing pumps for such substances which fundamentally do not differ from dispensing pumps for liquids such for example as perfume, due to the properties of these substances. At the end of the dispensing operation, a residue of the substance remains directly at the outlet opening or in the channel leading to the outlet opening, and this residue generally tends to dry and form a crust. Apart from the fact that these crusts are unsightly, the outlet channel and the outlet opening become obstructed by the residues and thus further dispensing is inhibited. In the case of viscous media this phenomenon, which also affects fluids, is particularly unpleasant as the liquid in the outlet channel cannot flow out due to its high viscosity.」(1頁左欄17?41行、翻訳:分配ポンプは、流体、ペースト状またはクリーム状の物質または同様の粘性媒体を測定量で放出するために使用することができる。これらの媒体は、例えば、化粧品物質、例えば、半流動性クリーム、フェイシャルミルク、あってもよい。これらの物質の特性のために、例えば香水のような液体のための分配ポンプと基本的に異ならないこのような物質のための既知の分配ポンプの使用において、かなりの欠点が生じる。分配操作の終わりに、物質の残留物は、出口開口部または出口開口部につながるチャネルに直接残り、この残留物は、一般に、乾燥し、クラストを形成する傾向がある。これらのクラストが見苦しいという事実とは別に、出口チャネルおよび出口開口部は、残留物によって塞がれるようになり、したがって、さらなる分配が阻害される。粘性媒体の場合、流体にも影響を及ぼすこの現象は、出口チャネル内の液体がその高い粘度のために流出できないので、特に不快である。) (イ)「The piston pump shown in Figure 1 is screwed onto a container 12 by means of a cap 13.」(2頁右欄115?117行、翻訳:図1に示すピストンポンプは、キャップ13を使用してコンテナ12にねじ込まれる。) (ウ)「The push-button operator 31 is firmly pressed onto the thickened part 25 of the piston rod 18 in the conventional manner.Into the push-button operator 31 there laterally projects an outlet channel 32 which consists of a tube with a downward bend, It is connected by a flange to the push-button operator 31 and projects into a bore 33 therein which bore extends to the thickened part 25 of the piston rod. In the thickened part 25 of the piston rod there is a bore 34 which leads into the recess 26 and lies opposite the outlet channel.A closure device 35 is fixed between the end of the outlet channel which projects into the bore 33 and the thickened part 25 of the piston rod. This closure device consists, as can be seen from Figure 2,.of a circular disc made of a soft resilient material such as e.g.rubber,or synthetic plastics material.ln the centre of this disc are provided two slits 36 which cross one another at right angles,so that ears 37 are in each case formed between two slits.」(3頁左欄40?63行、翻訳:押しボタン操作装置31は、従来の方法でピストンロッド18の厚い部分25にしっかりと押し付けられる。押しボタン操作装置31内に、下向きに曲がった管からなる出口チャネル32を横方向に突出させ、フランジによって押しボタン操作装置31に接続され、ピストンロッドの厚い部分25まで延びる穴33に突出する。ピストンロッドの厚い部分25には、凹部26に通じ、出口チャネルの反対側にある穴34が存在する。閉鎖装置35は、ボア33に突出する出口チャネルの端部とピストンロッドの厚い部分25との間に固定されている。この閉鎖装置は、図2から分かるように、ゴムなどの柔らかい弾力性のある材料または合成プラスチック材料で作られた円形ディスクからなる。このディスクの中心には、耳37がそれぞれ2つのスリットの間に形成されるような、直角に互いに交差する2つのスリット36が設けられている。) (エ)「When the pressure in the operative chamber 19 is released i.e.at the end of the conveying movement, the pressure on the lower side of the piston 45 is also released and the spring 50 presses the piston 45 back into the position shown in Figure 4. It should also be noted that the upper end of the pin 47 is conical in shape so that when the piston is lifted off the pin 47,it can be centred upon the latter again. When the piston returns under the force of the spring 50, low pressure is created in the reabsorption chamber 38 which causes the fluid lying in the outlet channel 32 to be sucked back via the closing device 35 into the reabsorption chamber 38.The piston 45 which simultaneously forms the outlet valve of the piston pump,then rests on the sealing area 48 again to afford an absolute seal.」(5頁左欄38?56行、翻訳:作動室19内の圧力が解放されると、すなわち搬送運動の終わりに、ピストン45の下側の圧力も解放され、ばね50がピストン45を図4に示される位置に押し戻す。 また、ピン47の上端は円錐形であり、ピストンがピン47を持ち上げられたときに、ピストンが再びピン47の中心に置かれることができることに留意されたい。 ピストンがばね50の力で戻ると、再吸収チャンバー38内に低圧が生成され、これにより、出口チャネル32にある流体が、閉鎖装置35を介して再吸収チャンバー38に吸い戻される。 同時にピストンポンプの出口バルブを形成し、次に再びシール領域48上に載って絶対シールを提供する。) (オ)「1. A fluid-dispensing device having an outlet valve and an outlet channel connected to the latter, wherein there is provided between the outlet valve and the outlet channel a reabsorption chamber which is adapted, upon operation of the dispensing device,to be reduced in volume against a resilient force; and wherein said chamber,after termination of the dispensing operation and the closure of the outlet valve,is adapted to increase its volume as a result of the action of the resilient force,thereby reabsorbing the fluid in and at the orifice of the outlet channel. 2.A device as claimed in Claim 1,wherein the outlet channel is arranged in a push-button operator for operating a piston dispenser pump;and wherein the reabsorption chamber is arranged in the push-button operator. 3.A device as claimed in Claim 2,wherein the reabsorption chamber is sealed off by a resilient membrane which, upon actuation of the pump is manually depressed,thus reducing the volume of the reabsorption chamber,and upon release springs back into its rest position. 」(5頁左欄80?106行、翻訳:1.出口弁と、後者に接続された出口チャネルとを有する流体分配装置であって、出口弁と出口チャネルとの間に提供され、流体分配装置の動作時に、弾性力に逆らって体積を減少し、前記チャンバは、分配操作の終了および出口弁の閉鎖後、弾性力の作用の結果として、その体積を増加させるように適合され、それにより、出口チャネルのオリフィス内およびオリフィスで流体を再吸収する再吸収チャンバを有する。 2.前記出口チャネルは、ピストンディスペンサーポンプを操作するための押しボタン操作装置に配置され、再吸収チャンバーは、押しボタン操作装置に配置される、請求項1に記載の装置。 3.前記再吸収チャンバーは、手動で押し下げられるポンプの動作によって、再吸収チャンバーの容積を減少させ、解放時にその静止位置に戻る弾性膜によって密封される、請求項2に記載の装置。) (4)引用発明2 上記記載を総合すると、引用例2には、以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。 「出口弁と、後者に接続された出口チャネルとを有するコンテナ12に用いられる流体分配装置であって、 下向きに曲がった管からなる出口チャネル32を横方向に突出させ、フランジによって接続された押しボタン操作装置31と、 ピストンディスペンサーポンプとを備え、 出口弁と出口チャネルとの間に提供され、流体分配装置の動作時に、弾性力に逆らって体積を減少し、前記チャンバは、分配操作の終了および出口弁の閉鎖後、弾性力の作用の結果として、その体積を増加させるように適合され、それにより、出口チャネルのオリフィス内およびオリフィスで流体を再吸収する再吸収チャンバを有する流体分配装置。」 3 本願発明と引用発明の対比・判断 (1)引用発明1を主引用発明として ア 対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「容器体2」は、その機能及び構造から、本願発明の「容器」に相当し、同様に「液体」は「内容物」に相当し、「ノズル部7」は「ノズル」に、「ノズルヘッド4」は「ノズルヘッド」に、「連通孔32」は「開孔」に、「液体収容部S」は「圧力調整空間」にそれぞれ相当する。 (イ)引用発明1の「液体を収容する容器体2に装着されて、この容器体2に収容された液体を吐出するポンプディスペンサー1」と、本願発明の「容器内の内容物を泡状にして噴出させるフォーマーディスペンサ」とは、「容器内の内容物を噴出させるディスペンサ」の限りで一致する。 (ウ)引用発明1の「押圧操作されるヘッド部6と、ヘッド部6の側面部からほぼ水平方向に延長され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有しているノズル部7とを有するノズルヘッド4」は、ノズル部7から液体を外部に吐出することが明らかであるから、本願発明の「内容物を外部に吐出するノズルを有するノズルヘッド」に相当する。 (エ)引用発明1の「ノズルヘッド4を下降することによって、加圧された液体がノズル部7の先端部から吐出され、ヘッド部6に対する押圧を解除したとき、容器体2に収容された液体Lが吸引パイプ16から吸い込まれて、再びポンプ室Pに充填されるポンプ機構5」は、本願発明の「該ノズルヘッドの押下によって容器内の内容物を吸引及び圧送するポンプ」に相当する。 (オ)引用発明1の「押圧操作されるヘッド部6と、ヘッド部6の側面部からほぼ水平方向に延長され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有しているノズル部7とを有するノズルヘッド4」であって、「ノズルヘッド4を下降することによって、加圧された液体がノズル部7の先端部から吐出され」ることは、ノズルヘッド4を下降することでポンプ機構によって液体が圧送され、該液体が、ヘッド部6の側面部からほぼ水平方向に延長され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有しているノズル部7の先端部から吐出されることであるから、引用発明1の当該記載と、本願発明の「該ポンプによって圧送された内容物は、前記ノズルヘッド内の水平方向の内部流路を経由し、更にL字型の内部流路を有する前記ノズルを経由して略鉛直方向下方へと吐出され」ることとは、「該ポンプによって圧送された内容物は、前記ノズルヘッド内のほぼ水平方向の内部流路を経由し、更に屈曲して下方へと、吐出され」ることの限りで一致する。 (カ)引用発明1の「液体収容部Sとノズル部7との間を連通させる連通部を構成する連通孔32及び流路8を有する」ことは、液体収容部S及びノズル部7がノズルヘッド4であって、【図1】等を参照すると、連通孔32がノズルヘッド内の水平方向の内部流路と液体収容部Sとを連通していることであるから、本願発明の「前記ノズルヘッドは、前記水平方向の内部流路に開孔を介して連通する圧力調整空間を有」することに相当する。 (キ)引用発明1の「液体収容部Sは、ヘッド部6を押圧することによって、弾性部材31の弾性変形によりその容積が縮小し、弾性部材31は、押し下げられたノズルヘッド4が元の位置へと戻るとき、ヘッド部6に対する押圧が解除されることによって、弾性復帰する」態様は、本願発明の「該圧力調整空間は、少なくとも一部が前記押下による押圧力によって弾性変形し前記押圧力の解除によって復元する弾性部材によって区画形成されている」態様に相当する。 したがって、本願発明と引用発明1とは、 「容器内の内容物を噴出させるディスペンサであって、 内容物を外部に吐出するノズルを有するノズルヘッドと、 該ノズルヘッドの押下によって容器内の内容物を吸引及び圧送するポンプとを備え、 該ポンプによって圧送された内容物は、前記ノズルヘッド内のほぼ水平方向の内部流路を経由し、更に屈曲して下方へと、吐出され、 前記ノズルヘッドは、前記水平方向の内部流路に開孔を介して連通する圧力調整空間を有し、該圧力調整空間は、少なくとも一部が前記押下による押圧力によって弾性変形し前記押圧力の解除によって復元する弾性部材によって区画形成されている、ディスペンサ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 本願発明は、「泡状にして」噴出させる「フォーマーディスペンサ」であるのに対して、引用発明1は、ポンプディスペンサーである点。 <相違点2> ポンプによって圧送された内容物が、ノズルヘッド内のほぼ水平方向の内部流路を経由し、更に屈曲して下方へと、吐出されることについて、本願発明は、ノズルヘッド内の水平方向の内部流路を経由し、「更にL字型の内部流路を有する前記ノズルを経由して略鉛直方向下方へと吐出され」るのに対して、引用発明1は、ヘッド部6の側面部からほぼ水平方向に延長され、その先端部が下方に向かって僅かに屈曲した細長形状を有しているノズル部7の先端部から吐出される点。 イ 当審の判断 上記相違点について検討する。 <相違点1について> 令和2年6月12日付けで通知した拒絶理由に引用文献1として引用した特開2015-127220号公報(【0001】等、以下「引用例3」という。)及び同じく引用文献6として引用した特開2015-227183号公報(【0004】等、以下「引用例4」という。)にも記載されているように、フォーマーディスペンサは周知である。 さらに、特開2015-127220号公報の【0006】、【0007】には、泡の吐出停止後に泡がノズル部先端に残りにくくなる点が記載されている。 そして、引用例1の【0010】には、シャンプーや液体石鹸等が挙げられており、シャンプーや液体石鹸等を泡状で使用されることが通常のことであることを鑑みれば、引用発明1のポンプディスペンサを泡状にして噴出させるフォーマーディスペンサとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 <相違点2について> 令和2年6月12日付けで通知した拒絶理由に引用文献2として引用した特開2015-160667号公報(【0013】、【0014】、図1、以下「引用例5」という。)及び同じく引用文献3として引用した国際公開2005/056415号(5頁末行?6頁15行、図1、以下「引用例6」という。)に記載されているように、水平方向の内部流路を経由し、更にL字型の内部流路を経由して略鉛直方向下方へと吐出するノズルは、周知である。 そして、引用発明1において、ノズルとして、上記周知のノズルを採用し、上記相違点2に係る本願発明1の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 <本願発明1の奏する効果について> 液だれ防止の効果は、サックバックと略鉛直方向下方へと吐出するノズルにより、当然に奏する効果であるから、本願発明1の奏する効果は、引用発明1及び周知の事項から、当業者が想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。 (2)引用発明2を主引用発明として ア 対比 本願発明と引用発明2とを対比する。 (ア)引用発明2の「コンテナ12」は、その機能及び構造から、本願発明の「容器」に相当し、同様に「出口チャネル32」は「ノズル」に、「再吸収チャンバ」は「圧力調整空間」にそれぞれ相当する。 (イ)引用発明2の「出口弁と、後者に接続された出口チャネルとを有するコンテナ12に用いられる流体分配装置」は、コンテナ12の内容物を出口チャンネルから噴出させるものであるから、引用発明2の当該事項と本願発明の「容器内の内容物を泡状にして噴出させるフォーマーディスペンサ」とは、「容器内の内容物を噴出させるディスペンサ」の限りで一致する。 (ウ)引用発明2の「下向きに曲がった管からなる出口チャネル32を横方向に突出させ、フランジによって接続された押しボタン操作装置31」は、出口チャネル32から内容物が外部の吐出されることが明らかであるから、本願発明の「内容物を外部に吐出するノズルを有するノズルヘッド」に相当する。 (エ)引用発明2の「ピストンディスペンサーポンプ」は、押しボタン操作装置31の押し下げによってコンテナ12内の内容物を吸引して圧送するものであるから、本願発明の「該ノズルヘッドの押下によって容器内の内容物を吸引及び圧送するポンプ」に相当する。 (オ)引用発明2の「下向きに曲がった管からなる出口チャネル32を横方向に突出させ」る態様は、引用例2のFig.1を参照すると、出口チャネル32が、ピストンディスペンサーポンプによって圧送された内容物を水平方向から下向きに曲がった管の内部流路を通って吐出されるものであるから、引用発明2の当該態様と、本願発明の「該ポンプによって圧送された内容物は、前記ノズルヘッド内の水平方向の内部流路を経由し、更にL字型の内部流路を有する前記ノズルを経由して略鉛直方向下方へと吐出され」る態様とは、「該ポンプによって圧送された内容物は、前記ノズルヘッド内の水平方向の内部流路を経由し、更に屈曲して下方へと、吐出され」る態様の限りで一致する。 (カ)引用発明2の「再吸収チャンバ」が「出口弁と出口チャネルとの間に提供され、流体分配装置の動作時に、弾性力に逆らって体積を減少し、前記チャンバは、分配操作の終了および出口弁の閉鎖後、弾性力の作用の結果として、その体積を増加させるように適合され、それにより、出口チャネルのオリフィス内およびオリフィスで流体を再吸収する」態様は、引用例2のFig.1を参照すると、再吸収チャンバが、出口チャネル内の水平方向の内部流路と開孔で連通していることが明らかであるから、本願発明の「前記ノズルヘッドは、前記水平方向の内部流路に開孔を介して連通する圧力調整空間を有し、該圧力調整空間は、少なくとも一部が前記押下による押圧力によって弾性変形し前記押圧力の解除によって復元する弾性部材によって区画形成されている」態様に相当する。 したがって、本願発明と引用発明2とは、 「容器内の内容物を噴出させるディスペンサであって、 内容物を外部に吐出するノズルを有するノズルヘッドと、 該ノズルヘッドの押下によって容器内の内容物を吸引及び圧送するポンプとを備え、 該ポンプによって圧送された内容物は、前記ノズルヘッド内の水平方向の内部流路を経由し、更に屈曲して下方へと、吐出され、 前記ノズルヘッドは、前記水平方向の内部流路に開孔を介して連通する圧力調整空間を有し、該圧力調整空間は、少なくとも一部が前記押下による押圧力によって弾性変形し前記押圧力の解除によって復元する弾性部材によって区画形成されている、フォーマーディスペンサ。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点3> 本願発明は、「泡状にして」噴出させる「フォーマーディスペンサ」であるのに対して、引用発明2は、流体分配装置である点。 <相違点4> ポンプによって圧送された内容物は、ノズルヘッド内のほぼ水平方向の内部流路を経由し、更に屈曲して下方へと、吐出されることについて、本願発明は、ノズルヘッド内の水平方向の内部流路を経由し、「更にL字型の内部流路を有する前記ノズルを経由して略鉛直方向下方へと吐出され」るのに対して、引用発明2は、横方向に突出させた下向きに曲がった管からなる出口チャネル32から吐出される点。 イ 当審の判断 上記相違点について検討する。 <相違点3について> 引用例2の1頁左欄17?23行には、化粧品物質等が挙げられており、泡状で使用されることが周知であることを鑑みれば、引用発明2の流体分配装置をフォーマーディスペンサとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 <相違点4について> 引用発明2において、ノズルとして、上記周知の水平方向の内部流路を経由し、更にL字型の内部流路を経由して略鉛直方向下方へと吐出するノズルを採用し、上記相違点4に係る本願発明1の事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 <本願発明1の奏する効果について> 本願発明1の奏する効果は、引用発明2及び周知の事項から、当業者が想到し得る範囲のものであって、格別なものでない。 (3)請求人の主張について 請求人は、令和2年8月12日の意見書で、「引用文献4(当審注:引用例1)及び引用文献5(当審注:引用例2)に記載の発明は、ともにサックバック機構を備える吐出装置にかかる発明であり、吐出口に残留した内容物をサックバックして液だれを抑制することを目的としております。このような吐出装置において、L字吐出口の先端部を略鉛直方向下方に方向づけて一見液だれし易いように見える構成に変更することに容易に想到することはできない」旨主張する。 しかし、引用発明1又は引用発明2は、先端部が下方に向かって屈曲したものであって、内容物のノズル先端からの吐出方向は、その使用形態に応じて適宜決定されるもの(例えば、前記引用例5の【0014】、前記引用例6の9頁7?10行参照。)であって、さらに、ノズル先端を下方に向けてもバックサクション機構が有効であることは技術的に明らかであるから、引用発明1又は引用発明2において、略鉛直方向下方へ吐出することが困難であるとまではいえない。 4 むすび したがって、本願発明は、引用発明1又は引用発明2、及び引用例3?6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 第3 まとめ 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-11-06 |
結審通知日 | 2020-11-10 |
審決日 | 2020-11-27 |
出願番号 | 特願2016-15773(P2016-15773) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 佐藤 正宗 |
特許庁審判長 |
井上 茂夫 |
特許庁審判官 |
佐々木 正章 村山 達也 |
発明の名称 | フォーマーディスペンサ |
代理人 | 杉村 光嗣 |
代理人 | 片岡 憲一郎 |
代理人 | 杉村 憲司 |