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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B |
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管理番号 | 1370391 |
審判番号 | 不服2019-17617 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-12-26 |
確定日 | 2021-01-14 |
事件の表示 | 特願2018- 19861「偏光膜形成用組成物及び偏光膜」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 5月31日出願公開,特開2018- 84845〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 事案の概要 1 手続等の経緯 特願2018-19861号(以下「本件出願」という。)は,平成24年12月18日(先の出願に基づく優先権主張 平成23年12月20日)に出願された特願2012-275395号の一部を,平成30年2月7日に新たな特許出願としたものであって,その手続等の経緯の概要は,以下のとおりである。 平成30年 3月 6日付け:手続補正書 平成30年 3月20日付け:上申書 平成31年 2月14日付け:拒絶理由通知書 平成31年 4月19日付け:手続補正書 平成31年 4月19日付け:意見書 令和 元年 9月24日付け:拒絶査定 令和 元年12月26日付け:審判請求書 令和 元年12月26日付け:手続補正書 2 本願発明 本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成31年4月19日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるとおりの,次のものである。 「重合性液晶化合物,重合性非液晶化合物,二色性色素,重合開始剤及び溶剤を含有し, 以下の(A),(B)及び(C)の要件を満たす偏光膜形成用組成物。 (A)重合性液晶化合物及び重合性非液晶化合物がともに重合性基を有すること; (B)偏光膜形成用組成物から得られる塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が相分離状態を形成することなく,ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相を示すこと; (C)前記重合性非液晶化合物の含有量が,重合性液晶化合物100質量部に対して,3質量部以上10質量部以下であること」 (当合議体注:令和元年12月26日にした手続補正では,特許請求の範囲は補正されていない。) 3 原査定の理由 原査定の拒絶の理由は,概略,本願発明は,先の出願前に日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された発明に基づいて,先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない,という理由を含むものである。 引用文献1:特開2010-1368号公報 第2 当合議体の判断 1 引用文献の記載及び引用発明 (1) 引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由において引用された引用文献1(特開2010-1368号公報)は,先の出願前に頒布された刊行物であるところ,そこには,以下の記載がある。なお,下線は当合議体が付したものであり,引用発明の認定や判断等に活用した箇所を示す。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は,棒状液晶単量体及び二色性色素を含有する液晶組成物に関する。また,本発明は,該組成物を用いた光吸収異方性膜,偏光素子及び液晶表示装置に関する。 …省略… 【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は,高い二色性を有する液晶組成物,特に,ネマチック液晶性及びスメクチック液晶性,中でも特に,スメクチックB液晶性を有する液晶組成物を提供することを目的とする。また,本発明は,幅広い温度において,優れた二色比を有する光吸収異方性膜,偏光素子,および表示性能に優れた液晶表示装置を提供することを目的とする。」 イ 「【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明は, <1>配向かつ重合可能な棒状液晶単量体を主成分とし,下記式(1)を満足する二色性色素の少なくとも一種を含有することを特徴とする液晶組成物, 式(1) L_(d)/L_(l)>1 [式中L_(l)は液晶単量体の分子長軸の分子長を表し,L_(d)は二色性色素の分子長を表す。] …省略… 【発明の効果】 【0017】 本発明の液晶組成物は,ネマチック液晶性及びスメクチック液晶性,特に,スメクチックB液晶性を有し,且つ偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有するものとすることができる。また,本発明の光吸収異方性薄膜および偏光素子は,幅広い温度において,優れた二色比を有するものとすることができる。また,本発明の液晶表示装置は表示性能に優れる。 【0018】 本発明の液晶組成物は,棒状液晶単量体を主成分とし,該組成物が下記式(1)を満足する二色性色素の少なくとも一種を含有する。 式(1) L_(d)/L_(l)>1 [式中L_(l)は液晶単量体の分子長軸の分子長を表し,L_(d)は二色性色素の分子長を表す。] 【0019】 [棒状液晶単量体] まず,棒状液晶単量体について説明する。棒状液晶は,液晶性化合物の分子構造において,よく知られている概念であり,(液晶便覧編集委員会編,「液晶便覧」,丸善(株),2000年発行;および岩柳茂夫著,「液晶」,共立出版,1984年発行)に記載されている。 本発明では,棒状液晶をネマチック相からスメクチック相に転移させたのち,重合することが好ましいため,ネマチック相とスメクチック相,特にスメクチックB相の双方を発現できる棒状液晶が好適に用いられる。 …省略… 【0034】 以下に,前記一般式(2)で表される棒状液晶単量体の具体例をあげるが,本発明は以下の具体例に限定されるものではない。 【0035】 【化5】 …省略… 【0040】 次に,二色性色素について詳細に説明する。 …省略… 【0072】 【化14】 …省略… 【0080】 前記一般式(3)で表されるアゾ色素は,その分子構造から明らかなように,分子形状が平板で直線性がよく,分子長軸方向と短軸方向のアスペクト比が大きな分子形状をしているため,液晶相,特にスメクチック液晶相の複数のレイヤー間に配列し,スメクチック相を安定化する効果をもたらす。 …省略… 【0084】 [液晶組成物の添加剤] 本発明の液晶組成物には,前記の棒状液晶単量体及び二色性色素の他に,任意の添加剤を併用することができる。本発明の液晶組成物を用いて光吸収異方性膜を形成する場合の添加剤の例としては,風ムラ防止剤,ハジキ防止剤,配向膜のチルト角(光吸収異方性膜/配向膜界面での棒状液晶単量体及び二色性色素の傾斜角)を制御するための添加剤,空気界面のチルト角(光吸収異方性膜/空気界面での棒状液晶単量体及び二色性色素の傾斜角)を制御するための添加剤,重合開始剤,配向温度を低下させる添加剤(可塑剤),重合性モノマー,糖類,防黴,抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤等が挙げられる。以下,各添加剤について説明する。 【0085】 [風ムラ防止剤] 棒状液晶単量体及び二色性色素とともに使用して,塗布時の風ムラを防止するための材料としては,一般にフッ素系ポリマーを好適に用いることができる。…省略…棒状液晶単量体及び二色性色素とフッ素系ポリマーとを併用することによって,ムラを生じることなく表示品位の高い画像を表示することができる。 …省略… 【0086】 [ハジキ防止剤] 棒状液晶単量体及び二色性色素の塗布時のハジキを防止するための材料としては,一般に高分子化合物を好適に用いることができる。 …省略… 【0087】 [配向膜チルト角制御剤] 配向膜のチルト角を制御する添加剤として,分子内に極性基と非極性基の両方を有する化合物を添加することができる。 …省略… 【0090】 [重合開始剤] 棒状液晶単量体及び二色性色素の配向状態を固定して光吸収異方性膜を形成するのが好ましく,重合反応を利用して棒状液晶単量体及び二色性色素を固定するのが好ましい。 …省略… 【0091】 [重合性モノマー] 棒状液晶単量体及び二色性色素とともに重合性モノマーを使用してもよい。本発明に使用可能な重合性モノマーとしては,棒状液晶単量体及び二色性色素と相溶性を有し,棒状液晶単量体及び二色性色素のチルト角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り,特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基,例えばビニル基,ビニルオキシ基,アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は,棒状液晶単量体及び二色性色素に対して一般に1?50質量%の範囲にあり,5?30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると,配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため,特に好ましい。 【0092】 [糖類] 本発明の組成物に糖類を添加してもよい。糖類を添加することで色素会合体の会合度を向上させ,その結果として色素の分子配向を高めることができる。 …省略… 【0103】 [防黴剤,抗菌剤及び殺菌剤] 本発明の組成物に防黴,抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤を添加してもよい。これらの添加剤を添加することにより,組成物の保存安定性を向上させることができる。 …省略… 【0112】 …省略…防黴,抗菌及び殺菌の少なくともいずれかの機能を有する薬剤の含有量が少なすぎると,棒状液晶単量体及び二色性色素含有液晶組成物が充分な防黴,抗菌または殺菌効果を有さず,含有量が多すぎると棒状液晶単量体及び二色性色素含有液晶組成物中で薬剤が析出したり,異方性色素膜を成膜した際に相分離が生じる恐れがあるため,点欠陥や光散乱などの光学的欠陥を生じさせる恐れがある。 【0113】 [光吸収異方性膜] 本発明の光吸収異方性膜は,上記の本発明の液晶組成物を用いて形成されたものである。 【0114】 [塗布溶剤] 本発明の光吸収異方性膜は,本発明の棒状液晶単量体及び二色性色素を含有する液晶組成物の塗布液を用いて形成するのが好ましい。 …省略… 【0116】 本発明の光吸収異方性膜は,湿式成膜法により形成することが好ましい。本発明における光吸収異方性膜の作製には,本発明の棒状液晶単量体及び二色性色素含有液晶組成物を調製後,ガラス板などの各種基材に塗布し,色素を配向,積層して得る方法など公知の方法が採用される。 …省略… 【0125】 [光吸収異方性膜の特性] 光吸収異方性膜の厚さは,0.1?10μmであることが好ましく,0.1?5μmであることがさらに好ましく,1?5μmであることが最も好ましい。 …省略… 【0133】 [支持体] 本発明に使用する支持体は透明であっても,着色等により不透明化した支持体であってもよいが,透明な支持体(透明支持体)であるのが好ましく,光透過率が80%以上であるのが好ましい。光学的等方性のポリマーフィルムを用いるのが好ましい。 …省略… 【0144】 [偏光素子] 本発明の偏光素子は,例えば,(1)支持体,または該支持体上に形成された配向膜をラビングする工程,(2)ラビング処理した支持体または配向膜上に,有機溶媒に溶解した本発明の棒状液晶単量体及び二色性色素含有液晶組成物を塗布する工程,(3)前記有機溶媒を蒸発させる工程,(4)ネマチック相温度以上に加熱した後スメクチック相温度まで降温する工程,により製造することができる。前記(1)?(4)の工程の詳細については,前述の通りである。 【0145】 本発明の光吸収異方性膜を基材上に形成し偏光素子として使用する場合,形成された光吸収異方性膜そのものを使用してもよく,また上記の様な保護層のほか,粘着層或いは反射防止層,配向膜,位相差フィルムとしての機能,輝度向上フィルムとしての機能,反射フィルムとしての機能,半透過反射フィルムとしての機能,拡散フィルムとしての機能,光学補償フィルムとしての機能などの光学機能をもつ層など,様々な機能をもつ層を湿式成膜法などにより積層形成し,積層体として使用してもよい。 …省略… 【実施例】 【0173】 以下,本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが,本発明はこれらに限定されない。 …省略… 【0177】 (実施例1) クロロホルム80質量部に棒状液晶単量体No.(11)を19.6質量部及び二色性アゾ色素No.(18)を0.4質量部加え,撹拌溶解後濾過して液晶組成物の塗布液を得た。次に,ガラス基板上に形成しラビングした配向膜上に,前記塗布液を塗布し,室温でクロロホルムを自然乾燥した後,155℃で1分間加熱熟成し,ネマチック相で配向させた。この後,80℃まで降温してスメクチックB相で光吸収異方性膜を作製した。配向膜としては,ポリイミド(日産化学社製SE-150)を使用した。 …省略… 【0179】 (実施例2) アゾ色素をNo.(19)に変更した以外,実施例1と同様に光吸収異方性膜を作製した。 …省略… 【0180】 (実施例3) クロロホルム80質量部に棒状液晶単量体No.(11)を18.8質量部及び二色性アゾ色素No.(19)を0.4質量部及び重合開始剤としてIragacure OXE-01(Ciba Speciality Chemicals 社製)を0.8質量部加え,撹拌溶解後濾過して液晶組成物の塗布液を得た。このものを実施例2と同様の条件で塗布し,155℃で1分間加熱熟成してネマチック相で配向させた後,80℃まで降温してスメクチックB相で2Jの紫外線を照射して配向状態を固定化した。得られた光吸収異方性膜の二色比(D),分子長比(L_(d)/L_(l)),極大吸収波長(λmax),および相転移温度を表2に示す。組成物は,ネマチック液晶性及びスメクチック液晶性,特に,スメクチックB液晶性を有しており,得られた異方性色素膜は偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜であった。 …省略… 【0182】 【表2】 」 (2) 引用発明 引用文献1の【0180】には実施例3が記載されている。 ここで,【0180】に記載の「棒状液晶単量体No.(11)」及び「二色性アゾ色素No.(19)」は,それぞれ【0035】及び【0072】に記載のものである。そして,【0180】の「実施例2と同様の条件で塗布」という記載をたどると,【0177】に記載の塗布方法のことと理解される。 そうしてみると,引用文献1には,次の発明が記載されている(以下「引用発明」という。) 「 クロロホルム80質量部に棒状液晶単量体No.11を18.8質量部及び二色性アゾ色素No.19を0.4質量部及び重合開始剤としてIragacure OXE-01を0.8質量部加え,撹拌溶解後濾過して得た液晶組成物であって, ガラス基板上に形成しラビングした配向膜上に,液晶組成物の塗布液を塗布し,室温でクロロホルムを自然乾燥した後,155℃で1分間加熱熟成してネマチック相で配向させた後,80℃まで降温してスメクチックB相で2Jの紫外線を照射して配向状態を固定化して得られる異方性色素膜は,偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜である, 液晶組成物。 棒状液晶単量体No.11:4-(4-アクリロイルオキシブトキシ)安息香酸4'-(4-アクリロイルオキシブトキシ)ビフェニル-4-イル 二色性アゾ色素No.19:1,1'-ビス[4-[4-[4-(4-ブチルフェニルアゾ)フェニルアゾ]3-メチルフェニルアゾ]フェニル]-4,4'-ビピペリジン 」 2 対比及び判断 (1) 対比 本願発明と引用発明を対比すると,以下のとおりとなる。 ア 重合性液晶化合物 引用発明の「液晶組成物」は,「クロロホルム80質量部に棒状液晶単量体No.11を18.8質量部及び二色性アゾ色素No.19を0.4質量部及び重合開始剤としてIragacure OXE-01を0.8質量部加え,撹拌溶解後濾過して得た」ものである。 上記の製造工程からみて,引用発明の「液晶組成物」は,「棒状液晶単量体No.11」を含有するものである。また,「棒状液晶単量体No.11」は,前記1(2)に記載のものであるから,その両末端に「アクリロイル基」,すなわち重合性基を有する。 そうしてみると,引用発明の「棒状液晶単量体No.11」は,本願発明の「重合性液晶化合物」に相当する。また,引用発明の「棒状液晶単量体No.11」は,本願発明の「重合性液晶化合物」における,「重合性基を有する」という要件を満たす。 イ 二色性色素,重合開始剤及び溶剤 前記アと同様に,引用発明の「二色性アゾ色素No.19」,「Iragacure OXE-01」及び「クロロホルム」は,それぞれ本願発明の「二色性色素」,「重合開始剤」及び「溶剤」に相当する。 ウ 偏光膜形成用組成物 引用発明の「液晶組成物」において,「ガラス基板上に形成しラビングした配向膜上に,液晶組成物の塗布液を塗布し,室温でクロロホルムを自然乾燥した後,155℃で1分間加熱熟成してネマチック相で配向させた後,80℃まで降温してスメクチックB相で2Jの紫外線を照射して配向状態を固定化して得られる異方性色素膜は,偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有する異方性色素膜である」。 上記の製造工程からみて,引用発明の「液晶組成物」は,偏光膜の形成に適したものであるから,偏光膜形成用の組成物といえる。加えて,前記アで述べた「液晶組成物」の組成を考慮すると,引用発明の「液晶組成物」から得られる塗布膜に含まれる「棒状液晶単量体No.11」は,相分離状態を形成することなく「ネマチック相」及び「スメクチックB相」を示すものと考えられる。 そうしてみると,引用発明の「液晶組成物」は,本願発明の「偏光膜形成用組成物」に相当する。また,引用発明の「液晶組成物」は,本願発明の「偏光膜形成用組成物」における,「(B)偏光膜形成用組成物から得られる塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が相分離状態を形成することなく,ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相を示すこと」という要件を満たす。加えて,引用発明の「液晶組成物」と本願発明の「偏光膜形成用組成物」は,「重合性液晶化合物」,「二色性色素,重合開始剤及び溶剤を含有し」ている点で共通する。 (2) 一致点及び相違点 ア 一致点 本願発明と引用発明は,次の構成で一致する。 「重合性液晶化合物,二色性色素,重合開始剤及び溶剤を含有し, 以下の(A’)及び(B)の要件を満たす偏光膜形成用組成物。 (A’)重合性液晶化合物が重合性基を有すること; (B)偏光膜形成用組成物から得られる塗布膜に含まれる重合性液晶化合物が相分離状態を形成することなく,ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相を示すこと」 イ 相違点 本願発明と引用発明は,次の点で相違する。 (相違点) 「偏光膜形成用組成物」が,本願発明は,「重合性非液晶化合物」を含有し,「(A)重合性液晶化合物及び重合性非液晶化合物がともに重合性基を有すること」及び「(C)前記重合性非液晶化合物の含有量が,重合性液晶化合物100質量部に対して,3質量部以上10質量部以下であること」という要件を満たすのに対して,引用発明は,上記下線を付した構成を具備しない点。 (3) 判断 引用文献1の【0091】には,「棒状液晶単量体及び二色性色素とともに重合性モノマーを使用してもよい。本発明に使用可能な重合性モノマーとしては,棒状液晶単量体及び二色性色素と相溶性を有し,棒状液晶単量体及び二色性色素のチルト角変化や配向阻害を著しく引き起こさない限り,特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基,例えばビニル基,ビニルオキシ基,アクリロイル基およびメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの添加量は,棒状液晶単量体及び二色性色素に対して一般に1?50質量%の範囲にあり,5?30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると,配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため,特に好ましい。」と記載されている。 そうしてみると,例えば,上記「反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると,配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため,特に好ましい。」との記載を考慮した当業者が,「好ましい」とされる「5?30質量%の範囲」で「棒状液晶単量体及び二色性色素に対して」「反応性官能基数が2以上の」「重合性モノマー」(【0091】の文意からみて,重合性基を有する非液晶化合物である。)を,引用発明の「液晶組成物」に添加することは,引用文献1の記載が示唆する範囲内の創意工夫といえる。また,引用発明の「棒状液晶単量体No.11」は「反応性官能基数が2」である(ある程度の密着性が期待できる)から,当業者が試みる「重合性モノマー」の「添加量」の選択肢から,下限値の「5」「質量%」が除かれる特段の事情はない。 そして,引用発明の「液晶組成物」の「棒状液晶単量体No.11」及び「二色性アゾ色素No.19」に対して「5」「質量%」で添加された「重合性モノマー」の含有量は,「棒状液晶単量体No.11」の100質量部に対して5.1質量%(5質量%×(18.8質量部+0.4質量部)÷18.8質量部)と計算され,「3質量部以上10質量部以下」となる。 そうしてみると,引用発明の「液晶組成物」を,相違点に係る本願発明の構成を具備したものとすることは,引用文献1の記載が示唆する範囲内の事項である。 (4) 発明の効果について 本願発明の効果に関して,本件出願の明細書の【0006】には,「本発明の偏光膜形成用組成物によれば,薄型かつ高透明性の偏光膜が製造できる。」と記載されている。 しかしながら,引用文献1の【0017】には,「発明の効果」として,「本発明の液晶組成物は…偏光膜として充分機能し得る高い二色比を有するものとすることができる。また,本発明の光吸収異方性薄膜および偏光素子は,幅広い温度において,優れた二色比を有するものとすることができる。」と記載されている(薄膜であり,また,光学的欠陥もないと理解される。)。 そうしてみると,本願発明の効果は,引用発明が奏する効果であり,少なくとも,当業者が引用発明から予測可能な効果である。 (5) 請求人の主張について 請求人は,審判請求書の「3.2」において,「重合性液晶化合物に対する重合性モノマーの添加量を,本願発明1における重合性非液晶化合物の含有量の範囲まで限定された組成物は,引用文献1に一切記載されていません。」と主張する。 しかしながら,前記(3)で述べたとおり,引用発明の「液晶組成物」において,「重合性モノマー」(本願発明でいう「重合性非液晶化合物」)の含有量を,本願発明で特定された含有量の範囲内に調製することは,引用文献1の記載が示唆する範囲内の事項である。 第3 まとめ 以上のとおり,本願発明は,引用文献1に記載された発明に基づいて,先の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本件出願は拒絶すべきものである。 よって,結論とおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-11-09 |
結審通知日 | 2020-11-10 |
審決日 | 2020-11-27 |
出願番号 | 特願2018-19861(P2018-19861) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池田 博一 |
特許庁審判長 |
里村 利光 |
特許庁審判官 |
樋口 信宏 河原 正 |
発明の名称 | 偏光膜形成用組成物及び偏光膜 |
代理人 | 坂元 徹 |
代理人 | 中山 亨 |