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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J |
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管理番号 | 1370393 |
審判番号 | 不服2020-468 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-14 |
確定日 | 2021-01-14 |
事件の表示 | 特願2015-138899「情報処理装置、及び、情報処理装置の制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 1月26日出願公開、特開2017- 19199〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成27年7月10日の出願であって、平成30年7月9日付けで手続補正書が提出され、平成31年4月9日付けで拒絶の理由が通知され、令和1年5月24日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年10月10日付けで拒絶査定がなされたのに対し、令和2年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1乃至24に係る発明は、令和1年5月24日付けで提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至24に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。 「複数の電力状態を有する情報処理装置であって、 人を検知する検知手段と、 前記検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態で経過した時間及び閾値に基づいて、前記情報処理装置の電力状態を移行する移行手段と、 前記検知手段の感度の設定に基づいて前記閾値を変更する変更手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置。」(以下「本願発明」という。) 第3 原査定の拒絶の理由 拒絶査定の理由である、平成31年4月9日付けで通知された拒絶の理由は、次のものを含むものである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項 1?7、11?16、21、22 ・引用文献 特開2013-65974号公報 特開平11-84949号公報(周知技術) 特開平5-323735号公報(周知技術) 第4 当審の判断 1 引用例 本願の出願日前の平成25年4月11日に公開され、原査定の拒絶の理由に引用された特開2013-65974号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「【技術分野】 【0001】 本発明は、電力供給制御装置、画像処理装置、電力供給制御プログラムに関する。」 (2)「【0038】 画像処理装置10は、記録用紙に画像を形成する画像形成部240と、原稿画像を読み取る画像読取部238と、ファクシミリ通信制御回路236を備えている。画像処理装置10は、メインコントローラ200を備えており、画像形成部240、画像読取部238、ファクシミリ通信制御回路236を制御して、画像読取部238で読み取った原稿画像の画像データを一次的に記憶したり、読み取った画像データを画像形成部240又はファクシミリ通信制御回路236へ送出したりする。」 (3)「【0044】 ネットワーク回線網20は、メインコントローラ200に接続されている。メインコントローラ200には、それぞれ、データバスやコントロールバス等のバス33A?33Dを介して、ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル216が接続されている。すなわち、このメインコントローラ200が主体となって、画像処理装置10の各処理部が制御されるようになっている。なお、UIタッチパネル216には、UIタッチパネル用バックライト部(図4参照)が取り付けられている場合がある。 【0045】 また、画像処理装置10は、電源装置202を備えており、メインコントローラ200とはバス33Eで接続されている。電源装置202は、商用電源242から電力の供給を受けている。電源装置202では、メインコントローラ200、ファクシミリ通信制御回路236、画像読取部238、画像形成部240、UIタッチパネル216のそれぞれに対して独立して電力を供給する電力供給線35A?35Dが設けられている。このため、メインコントローラ200では、各処理部(デバイス)に対して個別に電力を供給する電力供給状態(電力供給モード)、或いは電力の供給を遮断する電力遮断状態(スリープモード)とし、所謂部分節電制御を可能としている。 【0046】 また、メインコントローラ200には、2個の第1の人感センサ28、第2の人感センサ30が接続されており、画像処理装置10の周囲の人の有無を監視している。この第1の人感センサ28、第2の人感センサ30については後述する。」 (5)「【0049】 [メインコントローラ200] 図4に示される如く、メインコントローラ200は、CPU204、RAM206、ROM208、I/O(入出力部)210、及びこれらを接続するデータバスやコントロールバス等のバス212を有している。I/O210には、UI制御回路214を介してUIタッチパネル216(バックライト部216BLを含む)が接続されている。また、I/O210には、ハードディスク(HDD)218が接続されている。ROM208やハードディスク218等に記録されているプログラムに基づいて、CPU204が動作することによって、メインコントローラ200の機能を実現する。なお、該プログラムを格納した記録媒体(CD、DVD、BD(ブルーレイディスク)、USBメモリ、SDメモリ等)から該プログラムをインストールし、これに基づいてCPU204が動作することにより画像処理機能を実現してもよい。」 (6)「【0066】 一方、上記スリープモード中において、常に電力の供給を受ける素子として、節電中監視制御部24がI/O210に接続されている。この節電中監視制御部24は、例えば、ASICと称される、自身で動作プログラムが格納され、当該動作プログラムで処理されるCPU,RAM,ROM等を備えたICチップ等を備えるようにしてもよい。」 (7)「【0094】 図6に示される如く、移動体(使用者)と画像処理装置10との関係は、大きく分けて3形態あり、第1の形態は、人が画像処理装置10に対して、使用目的で操作可能位置まで近づいてくる形態(図6のA線矢視の動向(Aパターン)参照)、第2の形態は、人が処理装置を使用目的ではないが、操作可能位置まで近づいてくる形態(図6のB線矢視の動向(Bパターン)参照)、第3の形態は、人が処理装置の操作可能位置まで近づかないが、第1の形態、第2の形態に移行する可能性のある距離まできている形態(図6のC線矢視の動向(Cパターン)参照)。 … 【0096】 (第2の人感センサ30の検出精度調整) ここで、本実施の形態における第2の人感センサ30の移動体検出は、その後の電力供給制御に影響を与える。例えば、図6のパターンBのように、第2の人感センサ30の検出領域内を横切る(画像処理装置10の近傍を素通り)すると、節電中監視制御部24では、少なくともメインコントローラ200を起動させる指示を発動する。 【0097】 上記画像処理装置10の近傍を素通りする場合と、実際に画像処理装置10を利用する場合とを区別するため、予め移動体が第2の人感センサ30を横切る時間を予測しておき、この時間中に再度、人感センサ30の検出状況を確認することがなされている。 【0098】 すなわち、前記再度の確認によって、前記第2の人感センサ30により依然として移動体を検出している場合は、当該移動体は、画像処理装置10を利用しようとする使用者であると認識し、例えば、アウェイクモード等の一部のデバイスに電力を供給する状態へ移行させる。一方、前記再度の確認によって、前記第2の人感センサ30により移動体を検出しなくなった場合は、当該移動体は、画像処理装置10の近傍を素通りした移動体であると認識し、例えば、メインコントローラ200への電力供給を遮断する。」 (8)「【0109】 図7(A)では、第2の人感センサ30により移動体を検出してからのメインコントローラ200の立ち上がり時間(CPU復帰時間)tpreであり、メインコントローラ200が立ち上がってから前記基準時間t1から立ち上がり時間tpreを差し引いた時間(t1-tpre)が経過したときを再検出時期としている。 【0110】 一方、図7(B)では、第2の人感センサ30により移動体を検出してからのメインコントローラ200の立ち上がり時間(CPU復帰時間)toffであり、メインコントローラ200が立ち上がってから前記基準時間t1から立ち上がり時間toffを差し引いた時間(t1-toff)が経過したときを再検出時期としている。 【0111】 この結果、スリープモードの種類が異なっていても、最初の移動体検出から再検出までの時間が一定となる(基準時間t1)。」 (9)【0119】 図11は、上記基準時間t1の補正に関する情報を入力するためのUIタッチパネル216に表示される表示画面である。 【0120】 UIタッチパネル216の表示部216Mの上部領域には、当該表示部216Mに表示される情報内容のタイトルや操作方法等が表示されており、その下部に2種類のウィンドウ画面50A、50Bが左右に並んで表示されている。さらに、ウィンドウ画面50Bの下部には、入力操作(タッチ操作)領域を案内するボタン画面50Cが表示されている。 【0121】 一方のウィウンドウ画面50Aは、検知距離を設定する画面であり、本実施の形態では、相対的に「近距離(約30cm)」「中距離(約60cm)」「遠距離(約100cm)」の3種類を識別する文字情報が表示され、これらの中から選択可能とされる。なお、それぞれの文字情報の表示領域に対応してチェックボックス画像が表示されており、ユーザーは、対応するチェックボックス画像の何れかの領域内を触れる(タッチ操作する)ことで、前記何れかの距離が選択される(図11では、選択したチェックボックスを黒塗りとしている)。 【0122】 他方のウィウンドウ画面50Bは、検知角度を設定する画面であり、本実施の形態では、画像処理装置10の正面壁とセンサ光軸が直角である「0度」、この「0度」に対して水平方向に傾斜する角度「30度」及び「45度」の3種類を識別する文字情報が表示され、これらの中から選択可能とされる。なお、それぞれの文字情報の表示領域に対応してチェックボックス画像が表示されており、ユーザーは、対応するチェックボックス画像の何れかの領域内を触れる(タッチ操作する)ことで、前記何れかの距離が選択される(図11では、選択したチェックボックスを黒塗りとしている)。 … 【0125】 なお、図12に示される如く、選択する項目として、使用者の歩行速度として、相対的に「早歩き」「標準」「ゆっくり」を選択するウィンドウ画面50Dを追加してもよい。これは、誤検知防止時間を設定する画面となる。この場合、「早歩き」は基準時間t1を短くする補正となり、「ゆっくり」は基準時間t1を長くする補正となる。「標準」は補正無しである。」 (10)上記(7)及び(8)より、節電中監視制御部24は、移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、基準時間t1後に再度の人感センサ30の検出状況を確認するものと認める。 (11)上記(9)、図11及び図12より、ウィンドウ画面50Dは、UIタッチパネル216の表示部216Mに表示されるものであって、ウィンドウ画面50D内の「早歩き」「標準」「ゆっくり」は触れる(タッチ操作する)ことで選択されるものと認める。 そうすると、上記(1)?(9)の記載事項並びに上記(10)及び(11)の認定事項を総合すると引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「画像処理装置10であって、 画像処理装置10は、メインコントローラ200を備え、 メインコントローラ200には、UIタッチパネル216及び第2の人感センサ30が接続されており、 メインコントローラ200は、I/O(入出力部)210を有し、 I/O210には、UI制御回路214を介してUIタッチパネル216(バックライト部216BLを含む)が接続されるとともに、節電中監視制御部24が接続され、 メインコントローラ200は、各処理部(デバイス)に対して個別に電力を供給する電力供給状態(電力供給モード)、或いは電力の供給を遮断する電力遮断状態(スリープモード)とすることで、所謂部分節電制御を可能としており、 移動体(使用者)が、第2の人感センサ30の検出領域内を横切る(画像処理装置10の近傍を素通りする)と、節電中監視制御部24は、少なくともメインコントローラ200を起動させる指示を発動し、 節電中監視制御部24は、移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、基準時間t1後に再度の人感センサ30の検出状況を確認し、 前記再度の確認によって、前記第2の人感センサ30により依然として移動体を検出している場合は、当該移動体は、画像処理装置10を利用しようとする使用者であると認識し、アウェイクモード等の一部のデバイスに電力を供給する状態へ移行させ、 UIタッチパネル216の表示部216Mの上部領域には、当該表示部216Mに表示される情報内容のタイトルや操作方法等が表示されており、その下部に2種類のウィンドウ画面50A、50Bが左右に並んで表示され、さらに、ウィンドウ画面50Bの下部には、入力操作(タッチ操作)領域を案内するボタン画面50Cが表示され、さらに、使用者の歩行速度として、相対的に「早歩き」「標準」「ゆっくり」をタッチ操作で選択するウィンドウ画面50Dを追加して表示し、誤検知防止時間を設定する画面であって、「早歩き」は基準時間t1を短くする補正となり、「ゆっくり」は基準時間t1を長くする補正となり、「標準」は補正無しである、画像処理装置10。」 2 対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比する。 (1)後者の「画像処理装置10」は、情報を処理する装置であることは明らかであるから、前者の「情報処理装置」と後者の「画像処理装置10」とは、「情報処理装置」との概念で共通する。 (2)後者の「画像処理装置10」が備える「メインコントローラ200」は、各処理部(デバイス)に対して個別に電力を供給する電力供給状態(電力供給モード)、或いは電力の供給を遮断する電力遮断状態(スリープモード)とし、所謂部分節電制御を可能とするものであるから、前者の「情報処理装置」と後者の「画像処理装置10」とは、「複数の電力状態を有する」情報処理装置との概念で共通する。 (3)後者の「第2の人感センサ30」及び「人感センサ30の検出状況」は、前者の「人を検知する検知手段」及び「検知手段の検知結果」に相当する。 (4)後者の「節電中監視制御部24」は、移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、基準時間t1後に再度の人感センサ30の検出状況を確認し、前記再度の確認によって、前記第2の人感センサ30により依然として移動体を検出している場合は、アウェイクモード等の一部のデバイスに電力を供給する状態へ移行させるものであることから、前者の「移行手段」と後者の「節電中監視制御部24」とは、「情報処理装置の電力状態を移行する移行手段」との概念で共通する。 (5)前者の「検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態で経過した時間及び閾値に基づいて、情報処理装置の電力状態を移行する移行手段」について、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「明細書等」という。)の「検出エリアA2に複数の熱源画素が存在するので、所定時間(例えば、0.5秒)継続して複数の熱源画素が検出エリアA2に存在することを条件に、画像形成装置10は節電状態から復帰する。」(【0043】)、「図5(A)の状態では、検出エリアA2に、6個の熱源画素が存在するが、この時点では、所定時間(例えば、0.5秒)継続して複数の熱源画素が検出エリアA2に存在しないので、画像形成装置10は節電状態を維持する。」(【0046】)及び「そして、本実施形態では、熱源画素が検知エリアA2に0.5ms間継続して存在する場合に、マイコン512が割り込み信号Cを出力する。画像形成装置10の横幅が約62cmであり、人の平均歩行速度1.25m/sであるから、人が画像形成装置10の前を通過するのには約0.5秒必要になる。そのため、本実施形態では、熱源画素が検知エリアA2に0.5秒以上滞在した場合に、画像形成装置10が節電状態から復帰するように、規定値Cxのデフォルト値を0.5秒とする。」(【0057】)との記載を参酌すると、前者の「検知手段の検知結果が所定の条件を満たした状態で経過した時間」とは、「人が画像形成装置の検知エリアA2に存在し続ける時間」と解され、前者の「閾値」とは、「情報処理装置の電力状態が移行(節電状態から復帰)するために要する時間」であると解される。 そして、上記のとおり、後者の「節電中監視制御部24」は、移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、基準時間t1後に再度の人感センサ30の検出状況を確認し、前記再度の確認によって、前記第2の人感センサ30により依然として移動体を検出している場合は、アウェイクモード等の一部のデバイスに電力を供給する状態へ移行させるものであって、「基準時間t1」とは、「移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、再度の人感センサ30の検出状況を確認するまでの時間であって、アウェイクモード等の一部のデバイスに電力を供給する状態へ移行させるまでの時間」であるから、後者の「基準時間t1」は、前者の「閾値」に相当し、後者の「第2の人感センサ30により依然として移動体を検出している場合」とは、前者の「検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態」に相当する。 そうすると、前者の「移行手段」と後者の「節電中監視制御部24」とは、「検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態及び閾値に基づいて、情報処理装置の電力状態を移行する移行手段」との概念で共通する。 (6)前者の「検知手段の感度の設定に基づいて閾値を変更する変更手段」について、明細書等の上述した【0043】、【0046】、及び【0057】、並びに「そのため、本実施形態では、熱源画素が検知エリアA2に0.5秒以上滞在した場合に、画像形成装置10が節電状態から復帰するように、規定値Cxのデフォルト値を0.5秒とする。」(【0057】)及び「本実施形態では、感度を設定するためのボタンが選択されたことに基づいて、規定値Cxが変更される。具体的には、低ボタン703がユーザによって選択された場合、規定値Cxが8となり、複数の熱源画素が検知エリアA2に継続して0.8秒滞在した場合に、マイコン514が割り込み信号Cを出力する。中ボタン704がユーザによって選択された場合、規定値Cxが5となり、複数の熱源画素が検知エリアA2に継続して0.5秒滞在した場合に、マイコン514が割り込み信号Cを出力する。また、高ボタン705がユーザによって選択された場合、規定値Cxが3となり、複数の熱源画素が検知エリアA2に継続して0.3秒滞在した場合に、マイコン514が割り込み信号Cを出力する。」(【0060】)との記載を参酌すると、ボタン703?705それぞれの「低」、「中」及び「高」との表示は、検知エリアA2の感度を表示したものであって、各ボタンを選択することでボタン703?705に対応した規定値Cxが設定されることとなる。 してみると、前者の「検知手段の感度の設定」とは、熱源画素が検知エリアに継続して滞在し、画像形成装置が節電状態から復帰するまでの時間を設定することであって、「検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態で経過する時間」を設定することと解し得る。 これに対し、後者は、ウィンドウ画面50Dで使用者の歩行速度(相対的に「早歩き」「標準」「ゆっくり」)をタッチ操作で選択(設定)することにより、使用者の歩行速度に対応した基準時間t1に補正するものであって、上記2で検討したとおり、前者の「閾値」と後者の「基準時間t1」とは、「情報処理装置の電力状態が移行(節電状態から復帰)するために要する時間」との概念で共通するものであるから、前者の「変更手段」と後者の「UIタッチパネル216」とは、「設定に基づいて閾値を変更する変更手段」との概念で共通する。 したがって、両者は、 「複数の電力状態を有する情報処理装置であって、 人を検知する検知手段と、 前記検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態及び閾値に基づいて、前記情報処理装置の電力状態を移行する移行手段と、 設定に基づいて前記閾値を変更する変更手段と、を備えることを特徴とする情報処理装置。」 の点で一致し、以下の点で、相違する。 [相違点] 本願発明の情報処理装置は「検知手段の感度」を設定するものであって、情報処理装置が、検知手段の検知結果が「所定条件を満たした状態で経過した時間」及び閾値に基づいて、電力状態を移行する移行手段を備えるものであるのに対し、引用発明の画像処理装置10は基準時間t1を補正し、画像処理装置10の節電中監視制御部24が、移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、基準時間t1後に再度の人感センサ30の検出状況を確認し、前記再度の確認によって、前記第2の人感センサ30により依然として移動体を検出している場合に、デバイスに電力を供給する状態へ移行させる節電中監視制御部24である点。 3 判断 上記相違点について、以下、検討する。 本願の出願日前に、画像形成装置を含む情報処理装置において、センサにより所定時間連続して人を継続して検知した場合に、人が通り過ぎたのではなく装置の前に居ると判断して電力状態を変更させるように制御することは、周知の技術である(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-84949号公報(【0014】?【0018】参照。)及び特開平5-323735号公報(【0028】?【0029】参照。以下「周知技術」という。)。 そうすると、上記相違点における「検知手段の検知結果が『所定条件を満たした状態で経過した時間』及び閾値に基づいて電力状態を移行する」ことは、周知技術といえる。 そして、引用発明の移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、基準時間t1後に再度の人感センサ30の検出状況を確認することに、上記周知技術を適用すれば、アウェイクモード等の一部のデバイスに電力を供給する状態へ移行させる際に、移動体(使用者)が第2の人感センサ30の検出領域内を横切った(画像処理装置10の近傍を素通り)後、基準時間t1後まで連続して人感センサ30の検出状況を確認することとなるのであるから、引用発明に、上記周知技術を適用することにより、上記相違点に係る「検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態で経過した時間及び閾値基づいて電力状態を移行する」ようにすることは、当業者が容易になし得るものである。 ここで、引用発明に、上記周知技術を適用すると、人感センサ30は、基準時間t1後まで連続して検出し続けることとなるのであるから、引用発明の基準時間t1を補正するとは、「検知手段の検知結果が所定条件を満たした状態で経過する時間」を補正すること、すなわち、上記相違点に係る「検知手段の感度」を設定することとなる。 よって、引用発明に上記周知技術を適用することにより、上記相違点に係る本願発明を構成することは、当業者が容易になし得るものである。 そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明及び上記周知技術から、当業者が予測し得る範囲内のものである。 したがって,本願発明は,引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-10-27 |
結審通知日 | 2020-11-10 |
審決日 | 2020-11-24 |
出願番号 | 特願2015-138899(P2015-138899) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B41J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 大浜 登世子 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
藤本 義仁 清水 康司 |
発明の名称 | 情報処理装置、及び、情報処理装置の制御方法 |
代理人 | 阿部 琢磨 |
代理人 | 黒岩 創吾 |