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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04L
管理番号 1370449
審判番号 不服2019-7572  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-06-06 
確定日 2021-02-10 
事件の表示 特願2017- 93887「データ監視装置、データ監視方法及びデータ監視プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年11月29日出願公開、特開2018-191217、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成29年5月10日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成30年 8月22日付け:拒絶理由通知
平成30年10月11日 :意見書・手続補正書の提出
平成31年 3月15日付け:拒絶査定(以下、「原査定」という。)
令和 元年 6月 6日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 9月15日付け:拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由」
という。)
令和 2年10月28日 :意見書・手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定の概要は、次のとおりである。

本願請求項1-6に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献Aに記載された発明及び周知技術(引用文献BないしF)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.特開2014-138271号公報
B.特開2016-208516号公報
C.米国特許出願公開第2002/0123865号明細書
D.尾花弘章、ほか、脳波の周波数解析に基づく力覚タスクの分類、電気学会研究会資料、日本、一般社団法人電気学会、2013年 3月18日、pp.19-24
E.特開2017-22593号公報
F.特開平9-231366号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

(理由1)本願請求項1-6、8-11に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2及び3に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

(理由2)本願請求項1-4に係る発明は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

引用文献等一覧
1.特開2015-88079号公報
2.尾花弘章 他、脳波の周波数解析に基づく力覚タスクの分類、電気学会研究会資料、2013年3月18日、pp.19-24(拒絶査定時の引用文献D)
3.特開2012-256311号公報
4.Markus M. Breunig、 et al.、”LOF: identifying density-based local outliers”、Proceedings of the 2000 ACM SIGMOD international conference on Management of data、2000年5月15日、pp.93-104
5.特開平09-231366号公報(拒絶査定時の引用文献F)
6.特開2014-183495号公報

第4 本願発明
令和2年10月28日に提出された手続補正書によって補正(以下、「本件補正」という。)された請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。また、請求項2-5に係る発明を「本願発明2」-「本願発明5」という。)は、以下のとおりである。(下線部が補正箇所である。)

「 【請求項1】
定期的に記録された数値データの外れ値を検出する検出部と、
前記検出部により前記外れ値を検出した場合に、前記数値データの推移と類似する、過去に取得された前記数値データを抽出する抽出部と、
前記抽出部により抽出された前記数値データに基づいて、前記数値データの今後の推移を予測する予測部と、
を備え、
前記検出部は、
1)前記数値データを取得する取得部、
2)前記数値データをフーリエ変換して周波数成分を算出する算出部、
3)前記周波数成分について主成分分析を行って前記周波数成分の次元削減を行う削減部、
4)次元削減が行われた前記周波数成分について所定の周期にわたって所定の数値範囲に収まる場合に平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部、及び、
5)前記学習用データの平均及び分散に基づいて前記数値データを標準化する標準化部、を備え、
前記数値データの相対的な孤立度合いを示す指標に基づいて前記数値データの外れ値を検出する、
データ監視装置。」

また、本願発明2-5の概要は、以下のとおりである。
本願発明2-3は、本願発明1を減縮した発明である。
本願発明4、5は、それぞれ、本願発明1に対応する、「データ監視方法」、「データ監視プログラム」の発明である。

第5 引用文献の記載及び引用発明等
1 引用文献1記載事項、引用発明1
(1)引用文献1記載事項
引用文献1には、以下の記載がある(下線は、当審が付加した。以下同様。)。
ア 段落【0018】-段落【0036】
「【0018】
本発明は、工場、商業施設、工事現場などで使用される機械設備の稼働率を維持・向上するため、機械設備の健康状態を示す指標である性能・品質レベルを把握し、機械設備の稼働継続可能時間(RUL)を診断する方法などを提供するものである。そのために、センサデータ、稼働情報、イベント情報、設備負荷、作業報告書などに関する情報を用いて、機械設備の異常度の進展を推測し、機械設備の性能レベルを分類し、機械設備の稼働継続可能時間を評価する。すなわち、センサデータ、イベント情報はもちろんのこと、稼働情報、設備負荷といった時系列データも用いるものである。また、過去の故障事例からなる作業報告書に関する情報も扱う。

・・・(中略)・・・

【0022】
図1に示した異常測度101は異常の度合を示す指標であるが、代わりに機械設備の性能や品質の劣化の度合を示す指標として捉えることもできる。例えば、性能としては、ガスエンジンの燃費が悪くなることや、プレス機の対象加工品の精度が劣化することを指し、機械設備が有する機能以外の出力形態や、機械設備が製造する製品などの出来具合などに関連する量や質的な変数が対応する。
また、閾値102を超える故障発生や性能劣化の限界時期103までの残された時間を、RUL104と呼ぶ。ここで、「RUL」はRemaining Useful Lifeの頭文字である。図1に示すように、異常測度101の上昇とともに、RUL104が低下し、異常測度101が閾値102を超えた時点でRUL104が「0」となる。
【0023】
図2は、本発明において、遠隔監視により、ヘルスマネージメント又は異常診断の対象となる機械設備の一例を示すものである。図2に示すように、監視対象となる機械設備は、病院に設置されるMRI(核磁気共鳴イメージング)やX線CT(コンピュータ断層装置)などの医療診断装置105a、工場や大規模商業施設などに設置されるガスエンジン・ガスタービンなどの発電設備105b、鉱山や工事現場などで稼働するショベルやダンプトラックなどの建設機械105c、屋外に設置される風力発電や太陽光発電などの発電設備105dなどがあり、多くの機械設備が遠隔監視の対象になる。図示していないが、鉄道、飛行機、船舶なども遠隔監視の対象になる。工場内のプレス機やドリル穴あけ装置などの加工設備、またロボットなどからなる組み立て設備も遠隔監視の対象となる。以下、医療診断装置105a、発電設備105bなどを総称して、適宜に機械設備105と呼ぶ。
【0024】
これらの機械設備105は、複数のセンサを装備しており、機械設備105の各所において、各種のセンサデータを出力するように構成されている。監視センタに設置されたヘルスマネージメントシステム又は異常診断システムは、機械設備105から出力されるセンサデータ及び機械設備105に関する環境データを、インターネット網を介して収集し、分析することにより、24時間体制で、機械設備105に異常予兆が発生していないか、性能が劣化していないか、加工精度や組み立て精度などの品質が劣化していないかなどを監視している。
【0025】
[ヘルスマネージメントシステムの構成]
次に、図3を参照して、本発明の第1実施形態に係るヘルスマネージメントシステムの構成について説明する。 図3に示すように、ヘルスマネージメントシステム(異常診断システム)1は、時系列データ取得部11と、時系列データベース記憶部12と、健康状態予測部13と、RUL予測部14と、出力部15とを備えて構成されている。
【0026】
時系列データ取得部11は、インターネット網などを介して、監視対象である機械設備105(例えば、図1に示した医療診断装置105a、発電設備105bなど)から出力される多次元のセンサデータと、機械設備105の設置環境を表す環境データとを取得する手段である。センサデータ及び環境データは、取得時刻(又は機械設備105から出力された時刻)と対応付けられた時系列データとして取り扱われる。時系列データ取得部11は、取得した最新の、すなわち現在の時系列データを、取得するごとに時系列データベース記憶部12に順次に記憶させることで蓄積するとともに、現在の時系列データを健康状態予測部13に出力する。
【0027】
時系列データベース記憶部12は、時系列データ取得部11から入力した時系列データのデータベースである時系列データベースを記憶するものである。また、時系列データベース記憶部12に記憶される時系列データベースは、健康状態予測部13及びRUL予測部14によって過去の時系列データとして適宜に参照される。
【0028】
なお、時系列データベース記憶部12に、新たに取得した時系列データを追加する場合は、不図示の評価手段によって、データとしての妥当性(異常ではないこと、既に時系列データベースに格納されているデータとの類似性から新規追加の是非)を評価した後に蓄積され、正常状態における過去の時系列データとして活用できる形態になっている。
また、監視対象が複数である場合は、時系列データは、監視対象の単位となる各機械設備105に対応付けて記憶される。

・・・(中略)・・・

【0033】
また、本明細書において、「異常」とは、機械設備が安定稼働する条件をはずれたもの、「性能」とは、機械設備の機能を含めたパフォーマンスを示すもの、「品質」とは、エンドユーザに直接的な影響を与えるもの、と定義するが、一般には重なりをもって定義される。分かりやすい例としては、ダンプトラックなどの移動体の燃費は、機械設備の性能として評価されるものである。また、物(製品)を生産する機械設備の場合は、機械設備が生産する製品の品質レベルで当該機械設備の品質を評価することができる。
また、「設備状態」は、機械設備が正常、異常を問わずに、任意の状態について定量化される状態量であるのに対して、性能や品質を示す「健康状態」は、原則として、正常な状態(設備状態)の範囲で稼働している機械設備について定量化される状態量である。 なお、以降の説明では、特に断らない限り、健康状態を示す指標である「性能」や「品質」を代表して、単に「性能」と呼ぶ。
【0034】
RUL予測部14は、健康状態予測部13から健康状態の時系列データを入力し、入力した健康状態の時系列データを用いて、RULの予測値を算出する。RUL予測部14は、算出したRULの予測結果を出力部15に出力する。 なお、RUL予測部14の詳細な構成については後記する。
【0035】
出力部15は、RUL予測部14からRULの予測結果を入力するとともに、時系列データベース記憶部12から設備状態や健康状態、あるいは異常測度や性能測度に影響が大きなセンサデータ12aを入力し、入力した時系列センサデータ12aや健康状態などを示す時系列データの波形を表示するものである。また、出力部15は、これらのデータの表示に代えて、又は加えて、不図示の上位システムであるAHM(asset health management)やEAM(enterprise asset management)にこれらのデータを出力する。
【0036】
次に、図4?図6を参照して、データの一例について説明する。
まず、図4にセンサデータ及びイベントデータの例を示す。図4に示すように、監視対象の機械設備である発電設備105bや建設機械105cから出力される多次元のセンサデータ12a及びイベントデータ12bを、時系列データ取得部11によって取得する。ここでは図示を省略しているが、イベントデータ12b以外の環境データである稼働データ12c、負荷データ12d及び保守履歴データ12eも取得対象である。」

イ 段落【0040】
「【0040】
[設備状態・健康状態の定量化方法]
次に、設備状態や健康状態を定量化する方法について説明する。
設備状態や健康状態の定量化には、回帰手法や認識手法などを用いることができる。以下に、いくつかの手法について順次に説明する。
なお、設備状態や健康状態の定量化は、図3に示した健康状態予測部13によって行われる処理である。」

ウ 段落【0054】-段落【0059】
「【0054】
(第2の定量化手法)
次に、図8を参照(適宜図3参照)して、設備状態の第2の定量化手法として、認識手法の一つであるk-NN(k-Nearest Neighbor;k-近傍)法について説明する。
第2の定量化手法においても、設備状態の定量化を行うために、多次元のセンサデータ及び環境データをからなる過去データを学習データとして用いる。
【0055】
図8は、k-NN法により、観測データqの近傍のk個の学習データを選択する様子を示したものである。図8は、観測データq(黒三角「▲」で示す)の近傍に2つのクラスタA及びクラスタBがある場合を示している。図8において、クラスタAの属するメンバである学習データxAを黒丸「●」で示し、クラスタBの属するメンバである学習データxBを黒四角「■」で示している。
【0056】
k-NN法によれば、まず、観測データqの最近傍のk個の学習データを選択する。図8に示した例では、k=5とし、破線で示した円内の5個の学習データxA、xBが選択されている。ここで、選択された5個の学習データxA、xBについて、選択されたメンバの多数決によって観測データqが所属するクラスタを選択する。この例では、クラスタAに属する学習データxA(2個)よりも、クラスタBに属する学習データxB(3個)の方が多いので、観測データqは、クラスタBに属すると分類される。
なお、kの個数は適宜に定めることができる。
【0057】
k-NN法において、観測データqが分類されたクラスタBの重心(代表値)を始点とし、観測データqの位置を終点とする多次元ベクトルを考えた場合に、当該多次元ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができる。この多次元ベクトルは、局所部分空間法における残差ベクトルに相当するものである。
従って、当該多次元ベクトルの始点位置によって設備状態を定量化することができる。また、多次元ベクトルの長さは、正常状態からの乖離度を示す異常測度として用いることができる。
【0058】
また、k-NN法において、選択した学習データx(xA、xB)を観測データqが属するクラスタを選択するために用いるのではなく、選択した学習データの重心を算出するために用いるようにしてもよい。そして、算出した重心を、設備状態を示すものとして用いるようにすることができる。 例えば、図8において示した学習データxA、xBが、A、B2つのクラスタではなく、1つのクラスタに属するものとする。そして、選択した学習データ(図8の場合は、5個の学習データx(xA、xB))の重心を始点とし、観測データqの位置を終点とする多次元ベクトルを、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルと定義して用いることができる。
【0059】
なお、k-NN法を時系列データに適用するという意味で、所定の期間についての複数の過去の時系列データをベクトル化して1つのベクトルデータとして取り扱い、時間軌跡を予測の対象にするようにしてもよい。 すなわち、現時点までの所定の期間に取得された複数の時系列データをベクトル化したベクトルデータを観測データqとして用いる。また、同様に、前記した所定の期間ごとに取得された過去の時系列データのベクトルデータを学習データxとして用いる。そして、学習データxと観測データqとの距離を求め、この距離の大小により、観測データqに近い学習データのベクトルを複数(k個)選ぶものである。」

エ 段落【0080】-段落【0120】
「【0080】
[健康状態予測部及びRUL予測部の構成]
次に、図17を参照(適宜図3参照)して、第1実施形態における健康状態予測部13及びRUL予測部14の詳細な構成について説明する。
健康状態予測部13は、類似時系列データ選択部131と、第1識別部133aと、第2識別部133bと、第1始点データ記憶部134aと、第2始点データ記憶部134bと、第1クラスタ生成部135aと、第2クラスタ生成部135bと、類似度算出部136と、類似度データ記憶部137と、健康状態推定部138と、健康状態記憶部139とを備えている。 また、本実施形態におけるヘルスマネージメントシステム1は、異常予兆検知部16を備えている。
【0081】
類似時系列データ選択部131は、時系列データ取得部11から現在の時系列データである観測データを入力し、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去データから、観測データと類似するデータを選択する。具体的には、観測データである入力ベクトルと、時系列データベース記憶部12に蓄積されている過去データである入力ベクトルとの間の距離を算出し、距離が近いものから所定数の過去データを選択する。更に具体的には、前記したカーネル関数(例えば、式(1.4))を用いて、カーネル関数の値が「1」に近いデータから順に選択することができる。
類似時系列データ選択部131は、選択した過去データを、第1識別部133a及び第2識別部133bに出力する。
【0082】
第1識別部133a及び第2識別部133bは、それぞれ類似時系列データ選択部131から観測データ又は/及び過去データを入力し、それぞれ設備状態及び健康状態を定量化するものである。具体的には、前記したガウシアンプロセスなどの回帰手法や、k-NN法やLSC法などの認識手法を用いて、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出し、その始点データによって設備状態及び健康状態を定量化する。

・・・(中略)・・・

【0090】
ここで、図18を参照(適宜図17参照)して、第1識別部133a及び第2識別部133bの詳細な構成について説明する。
第1識別部133a及び第2識別部133bは、何れも同様の構成をしており、図18に示すように、特徴変換部1331と、トレンド抽出部1332と、学習データ選択部1333と、識別器1334とを備えている。 第1識別部133a及び第2識別部133b(以下、これらを総称して、適宜に識別部133と呼ぶ)は、前記したように観測データ又は過去データについて、LSC法による残差ベクトル又は他の手法により残差ベクトルに相当する多次元ベクトルを算出するものである。
【0091】
センサデータ12a、イベントデータ12b、稼働データ12c、負荷データ12d、保守履歴データ12eなどの時系列データは、残差ベクトルなどの多次元ベクトルの始点データの分布として表わされる設備状態分布や健康状態分布の基礎データになる。ショベルを例にとると、冷却水温度やその蓄積値は、機械設備の状態に相当する。しかし、蓄積冷却水温度は、性能劣化に結び付いている可能性がある。しかしながら、機械設備の生まれ(部品の違い、組立ての違い)、機械設備の育ち(稼働環境、人為的要素)が違う訳で、そのような機械設備に対し、その性能(健康状態)をうまく表現することは難しい。そこで、性能の劣化の要因を検討するのではなく、結果としての性能という外的評価を教師として与え、学習させていく。性能グロスから入り、学習の結果、要因も出力する。
【0092】
特徴変換部1331は、多次元のセンサデータを含む観測データ及び過去データに特徴変換を前処理として施すものである。特徴変換部1331は、特徴変換した観測データ及び過去データを、トレンド抽出部1332に出力する。
特徴変換の手法の例を、図19に示す。主成分分析(PCA)、独立成分分析(ICA)、ウェーブレット(Wavelet)変換などが代表的なものである。
主成分分析を通して時系列データの次元数を削減し、3次元以下にすることで、高次の残差ベクトルの始点の振舞を、視覚的に画像表示することが可能となる。また、独立成分分析やウェーブレット変換を通して、残差ベクトルの始点の分布を観察すると、状態変化をより分かりやすく顕在化できる場合がある。

・・・(中略)・・・

【0099】
図18に戻って、識別部133の構成について説明を続ける。
トレンド抽出部1332は、特徴変換部1331から特徴変換された観測データ及び過去データを入力し、特徴変換された観測データ及び過去データから、更にトレンド成分を抽出して、識別器1334で多次元ベクトルを算出するための観測データ及び過去データであるベクトルデータの成分として付加するものである。トレンド抽出部1332は、トレンド成分を付加した、観測データについては識別器1334に出力し、過去データについては学習データ選択部1333に記憶させる。

・・・(中略)・・・

【0104】
識別器1334は、トレンド抽出部1332から観測データを入力するとともに、学習データ選択部1333から学習データを入力し、前記した回帰手法や認識手法などにより、観測データに対応する残差ベクトルなどの、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出するものである。
識別器1334は、第1識別部133a又は第2識別部133bの出力として、過去データについての多次元ベクトルの始点データを、対応する第1始点データ記憶部134a又は第2始点データ記憶部134bに出力する。更に、識別器1334が第1識別部133aの構成である場合は、観測データについての、多次元ベクトルの始点データを健康状態推定部138に出力し、多次元ベクトルの長さを異常測度として異常予兆部検知部16に出力する。

・・・(中略)・・・

【0120】
また、異常予兆検知部16は、第1識別部133aから異常測度を入力し、異常測度が所定の閾値を超えた場合に異常予兆ありと判定し、閾値以下の場合に異常予兆なしと判定することにより、異常予兆の有無を検知するものである。異常予兆検知部16は、異常予兆の判定結果を出力部15に出力する。」

(2)引用発明1
よって、上記ア?エを関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

「監視センタに設置されたヘルスマネージメントシステム又は異常診断システムは、機械設備105から出力されるセンサデータ及び機械設備105に関する環境データを、インターネット網を介して収集し、分析することにより、24時間体制で、機械設備105に異常予兆が発生していないかなどを監視し(段落【0024】)、
ヘルスマネージメントシステム(異常診断システム)1は、時系列データ取得部11と、時系列データベース記憶部12と、健康状態予測部13と、RUL予測部14と、出力部15とを備え(段落【0025】)、
時系列データ取得部11は、インターネット網などを介して、監視対象である機械設備105から出力される多次元のセンサデータと、機械設備105の設置環境を表す環境データとを取得する手段であり、センサデータ及び環境データは、取得時刻と対応付けられた時系列データとして取り扱われ、時系列データ取得部11は、取得した最新の、すなわち現在の時系列データを、取得するごとに時系列データベース記憶部12に順次に記憶させることで蓄積するとともに、現在の時系列データを健康状態予測部13に出力し、(段落【0026】)、
時系列データベース記憶部12に、新たに取得した時系列データを追加する場合は、データとしての妥当性(異常ではないこと、既に時系列データベースに格納されているデータとの類似性から新規追加の是非)を評価した後に蓄積され、正常状態における過去の時系列データとして活用できる形態になっており(段落【0028】)、
「異常」とは、機械設備が安定稼働する条件をはずれたものと定義し(段落【0033】)、
出力部15は、RUL(Remaining Useful Life)予測部14からRULの予測結果を入力するとともに、時系列データベース記憶部12から設備状態や健康状態、あるいは異常測度や性能測度に影響が大きなセンサデータ12aを入力し、入力した時系列センサデータ12aや健康状態などを示す時系列データの波形を表示し(段落【0022】、段落【0035】)、
k-NN法によれば、まず、観測データqの最近傍のk個の学習データを選択し(段落【0056】)、
k-NN法において、観測データqが分類されたクラスタBの重心(代表値)を始点とし、観測データqの位置を終点とする多次元ベクトルを考えた場合に、当該多次元ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができ、多次元ベクトルの長さは、正常状態からの乖離度を示す異常測度として用いることができ(段落【0057】)、
k-NN法を時系列データに適用するという意味で、所定の期間についての複数の過去の時系列データをベクトル化して1つのベクトルデータとして取り扱い、時間軌跡を予測の対象にし(段落【0059】)、
健康状態予測部13は、類似時系列データ選択部131と、第1識別部133aと、第2識別部133bとを備えており、ヘルスマネージメントシステム1は、異常予兆検知部16を備えており(段落【0080】)、
類似時系列データ選択部131は、時系列データ取得部11から現在の時系列データである観測データを入力し、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去データから、観測データと類似するデータを選択し、類似時系列データ選択部131は、選択した過去データを、第1識別部133a及び第2識別部133bに出力し(段落【0081】)、
第1識別部133a及び第2識別部133bは、それぞれ類似時系列データ選択部131から観測データ及び過去データを入力し、前記したk-NN法などの認識手法を用いて、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出し、その始点データによって設備状態及び健康状態を定量化し(段落【0082】)、
第1識別部133a及び第2識別部133bは、何れも、特徴変換部1331と、トレンド抽出部1332と、学習データ選択部1333と、識別器1334とを備えており(段落【0090】)、
特徴変換部1331は、多次元のセンサデータを含む観測データ及び過去データに特徴変換を前処理として施すものであり、特徴変換の手法の例として、主成分分析(PCA)、ウェーブレット(Wavelet)変換などが代表的なものであり、主成分分析を通して時系列データの次元数を削減し、3次元以下にすることで、高次の残差ベクトルの始点の振舞を、視覚的に画像表示することが可能となり、独立成分分析やウェーブレット変換を通して、残差ベクトルの始点の分布を観察すると、状態変化をより分かりやすく顕在化できる場合があり(段落【0092】)、
トレンド抽出部1332は、トレンド成分を付加した、観測データについては識別器1334に出力し、過去データについては学習データ選択部1333に記憶させ(段落【0099】)、
識別器1334が第1識別部133aの構成である場合は、多次元ベクトルの長さを異常測度として異常予兆部検知部16に出力し(段落【0104】)、
異常予兆検知部16は、第1識別部133aから異常測度を入力し、異常測度が所定の閾値を超えた場合に異常予兆ありと判定し、閾値以下の場合に異常予兆なしと判定することにより、異常予兆の有無を検知するものである(段落【0120】)、
ヘルスマネージメントシステム(異常判断システム)。」

2.引用文献6記載事項、引用発明2
(1)引用文献6記載事項
ア 段落【0016】-段落【0053】
「【0016】
図2は、本実施例の伝送装置の構成の一例を示すブロック図である。制御カード10のCPU20は、図示しない記憶部に格納されたプログラムに基づき各種プロセスとなる機能を実行する。

・・・(中略)・・・

【0041】
統計トラフィックDB31は、CL-LIUカード11A?11Eのトラフィック監視部111から収集したトラフィック量を受信して格納する。つまり、統計トラフィックDB31は、方路16毎に収集されたトラフィック量が、統計データとして蓄積されている。

・・・(中略)・・・

【0048】
次に、実施例1の伝送装置の動作について説明する。図10は、本実施例での伝送装置の回線割当処理の一例を示すフローチャートである。説明の便宜上、回線割当処理の流れを先に説明し、より詳細な説明が必要な処理については後述する。
【0049】
[トラフィック監視処理]
各CL-LIUカード11のトラフィック監視部111は、それぞれ接続されている方路16のトラフィック量を監視して収集し、収集したトラフィック量を1分毎に制御カード10に送信する(ステップS11)。
【0050】
[異常トラフィック検出処理]
制御カード10の計算部21は、予測グラフ生成時刻、すなわち10分毎に異常トラフィックが発生しているか否か判定する(ステップS12)。計算部21は、受信したトラフィック量が、上限トラフィック量以上、又は下限トラフィック量未満である場合には(ステップS12肯定)、異常トラフィックとして検出する。また、計算部21は、異常トラフィックを検出しない場合(ステップS12否定)、つまり、通常トラフィックである場合には、ステップS15の予測グラフ生成処理に進む。なお、計算部21は、異常トラフィックが発生しているか否かの判定のタイミングについて、例えば、1分毎など適宜変更してもよい。
【0051】
[異常トラフィックの増減パラメータ算出処理]
計算部21は、ステップS12で異常トラフィックを検出すると、異常トラフィックの増減パラメータとして、トラフィック増減時間及びトラフィック増減量を算出する(ステップS13)。
【0052】
[類似パターンの増減パラメータ抽出処理]
パターン抽出部23は、異常トラフィックの増減パラメータに基づいて、新たに異常予測グラフを生成するか否か判定する。パターン抽出部23は、新たに異常予測グラフを生成する場合には、統計トラフィックDB31から、異常トラフィックの増減パラメータと同一又は類似するパターンの増減パラメータを求める。パターン抽出部23は、求めた同一又は類似するパターンの増減パラメータを、類似パターンの増減パラメータとして1つ以上を抽出する(ステップS14)。また、パターン抽出部23は、新たに異常予測グラフを生成せず、現在の予測グラフを引き続き用いる場合、及び類似パターンの増減パラメータの抽出に失敗した場合には、その旨の情報を生成する。
【0053】
[予測グラフ生成処理]
予測グラフ生成部24は、ステップS14で、1つ以上の類似パターンの増減パラメータを抽出した場合には、当該増減パラメータに基づいて異常予測グラフを生成する。予測グラフ生成部24は、ステップS12で、異常トラフィックを検出しなかった場合、すなわち、通常トラフィックと判定された場合には、通常予測グラフDB32から通常予測グラフを抽出する。予測グラフ生成部24は、異常予測グラフ又は通常予測グラフを、予測グラフDB33に格納する(ステップS15)。なお、予測グラフ生成部24は、ステップS14で増減パラメータの抽出に失敗した場合には、異常予測グラフを生成せずに現在の予測グラフを破棄して、最適化部27に対して、等確率で回線割当処理を行う旨の情報を送信する。」

(2)引用文献6に記載された引用発明2
よって、上記アを関連図面に照らし、下線部に着目すれば、引用文献6には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているといえる。

「統計トラフィックDB31は、方路16毎に収集されたトラフィック量が、統計データとして蓄積されており(段落【0041】)、
各CL-LIUカード11のトラフィック監視部111は、それぞれ接続されている方路16のトラフィック量を監視して収集し、収集したトラフィック量を1分毎に制御カード10に送信し(段落【0049】)、
制御カード10の計算部21は、予測グラフ生成時刻、すなわち10分毎に異常トラフィックが発生しているか否か判定し(段落【0050】)、
異常トラフィックを検出すると(段落【0051】)、
パターン抽出部23は、新たに異常予測グラフを生成する場合には、統計トラフィックDB31から、異常トラフィックの増減パラメータと同一又は類似するパターンの増減パラメータを求め、パターン抽出部23は、求めた同一又は類似するパターンの増減パラメータを、類似パターンの増減パラメータとして1つ以上を抽出する(ステップS14)(段落【0052】)、
予測グラフ生成部24は、ステップS14で、1つ以上の類似パターンの増減パラメータを抽出した場合には、当該増減パラメータに基づいて異常予測グラフを生成する(段落【0053】)、
伝送装置。」

3.周知技術
(1)周知技術1について
引用文献2の特に、「3.2 特徴抽出について」(21-22頁)を参照すると、データ解析において、数値データをフーリエ変換して周波数成分を算出し、算出した周波数成分について主成分分析を行い、情報圧縮(本願発明の「次元削減」に対応)を行うことが記載されている(以下、「周知技術1」という。)。

(2)周知技術2について
引用文献3(段落【0006】)、引用文献4(本願発明の従来技術として例示されている非特許文献1である。特にセクション4参照)を参照すると、外れ値の検出方法として、データxのk近傍距離÷周辺のデータk個のk近傍距離の平均値}を、データxのLOFとして求め、LOF(本願発明の孤立度に相当)が大きいものを外れ値として検出することは周知技術である(以下、「周知技術2」という。)。

第6 当審の判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1に基づく進歩性欠如
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
(ア)引用発明1の「時系列データ取得部11」は、「インターネット網などを介して、監視対象である機械設備105から出力される多次元のセンサデータと、機械設備105の設置環境を表す環境データとを取得する手段」であり、監視目的の時系列で取得されるセンサデータや環境データが通常、定期的に記録される数値データであることは技術常識であるから、引用発明1の「センサデータや環境データ」は、「定期的に記録される数値データ」に相当する。
また、引用発明1の「第1識別部133a」は、「時系列データ取得部11」から入力される「現在の時系列データである観測データ」を入力して、k-NN法などの認識手法を用いて多次元ベクトルを算出しており、引用発明1の「異常予兆検知部16」は、当該「第1識別部133a」から「異常測度を入力し、異常測度が所定の閾値を超えた場合に異常予兆ありと判定し、閾値以下の場合に異常予兆なしと判定することにより、異常予兆の有無を検知するものであり」、「「異常」とは、機械設備が安定稼働する条件をはずれたものと定義し」ているから、引用発明1の「異常予兆検知部16」は、「定期的に記録される数値データの外れ値を検出する検出部」であるといえる。

(イ)引用発明1の「類似時系列データ選択部131」は、「時系列データ取得部11から現在の時系列データである観測データを入力し、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去データから、観測データと類似するデータを選択し」ており、当該「類似時系列データ131」は常に類似するデータを選択しており、「前記検出部により前記外れ値が検出された場合に」も当該「選択」は行われている。
したがって、引用発明1の「類似時系列データ選択部131」は、本願発明1の「前記検出部により前記外れ値を検出した場合に、前記数値データの推移と類似する、過去に取得された前記数値データを抽出する抽出部」に相当する。

(ウ)引用発明1は、「k-NN法によれば、まず、観測データqの最近傍のk個の学習データを選択し」、「k-NN法を時系列データに適用するという意味で、所定の期間についての複数の過去の時系列データをベクトル化して1つのベクトルデータとして取り扱い、時間軌跡を予測の対象にし」ており、「センサデータ及び環境データは、取得時刻と対応付けられた時系列データとして取り扱われ」いるから、時系列データであるセンサデータ及び環境データ(数値データに相当)の最近傍の学習データに基づいて前記時系列データであるセンサデータ及び環境データ(数値データに相当)の今後の推移を予測していると認められる。
また、引用発明1においては、「時系列データベース記憶部12に記憶されている過去データから、観測データと類似するデータを選択し、類似時系列データ選択部131は、選択した過去データを、第1識別部133a及び第2識別部133bに出力し、」、「第1識別部133a及び第2識別部133bは、何れも、特徴変換部1331と、トレンド抽出部1332と、学習データ選択部1333と、識別器1334とを備えており」、「トレンド抽出部1332は、トレンド成分を付加した、観測データについては識別器1334に出力し、過去データについては学習データ選択部1333に記憶させ」ているから、引用発明1の「学習データ」は、類似時系列データ選択部131により抽出された数値データであると認められる。
したがって、引用発明1は、類似時系列データ選択部(前記抽出部といえる)により抽出された数値データに基づいて、前記数値データの今後の推移を予測していると認められ、当該予測を行う処理部も当然備えられていると認められる。
よって、引用発明1は、本願発明1の「前記抽出部により抽出された前記数値データに基づいて、前記数値データの今後の推移を予測する予測部」と「前記抽出部により抽出された前記数値データに基づいて、前記数値データの今後の推移を予測する予測部」を備えている点で一致している。

(エ)引用発明1の「センサデータや環境データ」を取得する「時系列データ取得部11」は、本願発明1の「検出部」に備えられる「前記数値データを取得する取得部」と「前記数値データを取得する取得部」である点で共通している。

(オ)引用発明1の「第1識別部133a」は、類似時系列データ選択部131から観測データ及び過去データを入力し、k-NN法などの認識手法を用いて、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出し、その始点データによって設備状態及び健康状態を定量化しており、多次元ベクトルの長さを異常測度として異常予兆部検知部16に出力しており、「第1識別部133a」は、多次元のセンサデータを含む観測データ及び過去データに前処理として主成分分析(PCA)、ウェーブレット(Wavelet)変換などの特徴変換を施すものであり、観測データとは、センサデータ及び環境データであるから、数値データに主成分分析、ウェーブレット変換などの前処理を施して、前処理された数値データに基づいて異常測度を出力するものであると認められる。
ここで、ウェーブレット(Wevelet)変換が、周波数成分を算出する変換処理であることは技術常識であり、ウェーブレット(Wevelet)変換して周波数成分を算出する場合、その手段として算出部は当然備えられていると認められるから、引用発明1は、数値データを変換して、周波数成分を算出する算出部を含んでいるといえる。
よって、引用発明1の「異常予兆検知部16」は、本願発明1の「前記数値データをフーリエ変換して周波数成分を算出する算出部」を備えた「前記検出部」と、「前記数値データを変換して、周波数成分を算出する算出部」を備えた「前記検出部」である点で共通している。

(カ)引用発明1の「特徴変換部1331」は、「特徴変換の手法の例として、主成分分析(PCA)、ウェーブレット(Wavelet)変換などが代表的なものであり、主成分分析を通して時系列データの次元数を削減し」ているから、引用発明1の「特徴変換部1331」は、本願発明1の「検出部」に備えられた「前記周波数成分について主成分分析を行って前記周波数成分の次元削減を行う削減部」と「主成分分析を行い、次元削減を行う削減部」である点で一致している。

(キ)引用発明1の「時系列データベース記憶部12」は、「新たに取得した時系列データを追加する場合は、データとしての妥当性(異常ではないこと、既に時系列データベースに格納されているデータとの類似性から新規追加の是非)を評価した後に蓄積され、正常状態における過去の時系列データとして活用できる形態になって」いるから、本願発明の「次元削減が行われた前記周波数成分について所定の周期にわたって所定の数値範囲に収まる場合に平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部」と「平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部」である点で共通している。

(カ)引用発明1の「ヘルスマネージメントシステム又は異常診断システム」は、「機械設備105から出力されるセンサデータ及び機械設備105に関する環境データを、インターネット網を介して収集し、分析することにより、24時間体制で、機械設備105に異常予兆が発生していないかなどを監視し」ているから、データ監視装置といえる。
よって、引用発明1の「ヘルスマネージメントシステム(異常判断システム)」は、引用発明1の「データ監視装置」と「データ監視装置」である点で一致している。

以上から、本願発明1と引用発明1とは、以下の点において一致、及び相違する。

[一致点]
「 定期的に記録される数値データの外れ値を検出する検出部と、
前記検出部により前記外れ値を検出した場合に、前記数値データの推移と類似する、過去に取得された前記数値データを抽出する抽出部と
前記抽出部により抽出された前記数値データに基づいて、前記数値データの今後の推移を予測する予測部と、
前記数値データを取得する取得部と
を備え、
前記検出部は、
前記数値データを変換して、周波数成分を算出する算出部、
主成分分析を行い、次元削減を行う削減部、
平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部、を備えた
データ監視装置。」

[相違点1]
本願発明1の「検出部」が「数値データを取得する取得部」を備えているのに対し、引用発明1には、そのようなことが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1の「周波数成分を算出する算出部」の変換処理として、フーリエ変換を用いているのに対して、引用発明1では、ウェーブレット変換を用いている点。

[相違点3]
本願発明1は、「削除部」において「前記周波数成分」について主分分析を行っているのに対して、引用発明1では、そのようなことが特定されていない点。

[相違点4]
本願発明1は、「次元削減が行われた前記周波数成分について所定の周期にわたって所定の数値範囲に収まる場合に平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部」を備えているのに対して、引用発明1では、「平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部」を備えている点。

[相違点5]
本願発明1は、「前記学習用データの平均及び分散に基づいて前記数値データを標準化する標準化部」を備えているのに対して、引用発明1では、そのようなことが特定されていない点。

[相違点6]
本願発明1が「前記数値データの相対的な孤立度合いに基づいて前記数値データの外れ値を検出する」のに対して、引用発明1では、そのようなことが特定されていない点

イ.判断
事案に鑑みて、相違点4について先に検討を行う。
また、相違点4における「次元削減が行われた前記周波数成分」に関する相違点であるため、相違点2及び3と併せて検討する。
引用発明1は、特徴変換部の例として、次元削減を行う「主成分分析」や周波数成分を算出する「ウェーブレット変換」が例示されており、「主成分分析を通して時系列データの次元数を削減し、3次元以下にすることで、高次の残差ベクトルの始点の振舞を、視覚的に画像表示することが可能となり、独立成分分析やウェーブレット変換を通して、残差ベクトルの始点の分布を観察すると、状態変化をより分かりやすく顕在化できる場合がある」旨示唆されている。
そして、引用文献2に記載されているとおり、特徴量抽出の方法として、フーリエ変換後に主成分分析を行うことは、上記「第5」の「3.(1)」の周知技術1であるから、引用発明1において周知技術1を採用して、相違点2、3の構成を備えることは、当業者が容易に想到し得たものである。
しかしながら、引用発明1は、学習データを分類する際に「次元削減が行われた前記周波数成分」を用いることや、当該「次元削減が行われた前記周波数成分が所定の周期にわたって所定の数値範囲に収まる場合に」平常時の前記数値データとして学習用データに分類することを特定又は示唆するものではなく、かつ、これらの事項は、引用文献1-6のいずれにも記載されていない。さらに、「次元削減が行われた前記周波数成分について所定の周期にわたって所定の数値範囲に収まる場合に平常時の前記数値データとして学習用データに分類する」ことが本願出願時に周知技術であるともいえない。
してみると、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基いて、本願発明1の相違点4に係る構成とすることは、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1及び周知技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。

(2)引用発明2に基づく進歩性欠如
ア.対比
本願発明1と引用発明2とを対比する。
(ア)引用発明2の「トラフィック監視部111」は、収集したトラフィック量を1分毎に制御カード10に送信していることから、「1分毎に」「収集されたトラフィック量」は、本願発明1の「定期的に記録される数値データ」に相当する。
そして、引用発明2の「制御カード10の計算部21」は、当該トラフィック量について、異常トラフィックが発生しているか否かを判定していることから、本願発明1の「定期的に記録される数値データの外れ値を検出する検出部」である点で一致している。

(イ)引用発明2の「統計トラフィックDB31」は、方路16毎に収集されたトラフィック量が、統計データとして蓄積されているから、統計トラフィックDB31に蓄積されたデータは過去のデータであると認められる。
そして、引用発明2の「パターン抽出部」は、「異常トラフィックを検出すると」「統計トラフィックDB31から、異常トラフィックの増減パラメータと同一又は類似するパターンの増減パラメータを求め、パターン抽出部23は、求めた同一又は類似するパターンの増減パラメータを、類似パターンの増減パラメータとして1つ以上を抽出し」ており、異常トラフィックを検出した場合(外れ値を検出した場合に相当)に、統計トラフィックDB(過去データ)から類似したパターン(類似する推移といえる)を抽出するものであると認められる。
よって、引用発明2の「パターン抽出部」は、本願発明1の「前記検出部により前記外れ値を検出した場合に、前記数値データの推移と類似する、過去に取得された前記数値データを抽出する抽出部」と一致している。

(ウ)引用発明2の「予測グラフ生成部24」は、「パターン抽出部23は、求めた同一又は類似するパターンの増減パラメータを、類似パターンの増減パラメータとして1つ以上を抽出する(ステップS14)」で、1つ以上の類似パターンの増減パラメータを抽出した場合には、当該増減パラメータに基づいて異常予測グラフを生成しており、数値データの今後の推移を予測する予測部であるといえる。
また、(イ)において検討したとおり、引用発明2の「パターン抽出部23」は、「前記検出部により前記外れ値を検出した場合に、前記推知データの推移と類似する、過去に取得された前記数値データを抽出する抽出部」といえるから、引用発明2の「予測グラフ生成部24」は、本願発明1の「前記抽出部により抽出された前記数値データに基づいて、前記数値データの今後の推移を予測する予測部」と一致している。

(エ)上記(ア)において検討したとおり、引用発明2の「トラフィック監視部111」は、1分毎に収集されたトラフィック量が記録されているといえるから、本願発明1の「検出部」に備える「前記数値データを取得する取得部」と本願発明1の「前記数値データを取得する取得部」である点で共通している。

(オ)引用発明2の「伝送装置」は、トラフィックの監視を行っていることから、本願発明1の「データ監視装置」と「データ監視装置」である点で一致している。

以上から、本願発明1と引用発明2とは、以下の点において一致、及び相違する。

[一致点]
「 定期的に記録される数値データの外れ値を検出する検出部と、
前記検出部により前記外れ値を検出した場合に、前記数値データの推移と類似する、過去に取得された前記数値データを抽出する抽出部と
前記抽出部により抽出された前記数値データに基づいて、前記数値データの今後の推移を予測する予測部と、
前記数値データを取得する取得部と
を備えた、
データ監視装置。」

[相違点1]
本願発明1の「検出部」が「数値データを取得する取得部」を備えているのに対し、引用発明2には、そのようなことが特定されていない点。

[相違点2]
本願発明1の「検出部」が、「 2)前記数値データをフーリエ変換して周波数成分を算出する算出部、 3)前記周波数成分について主成分分析を行って前記周波数成分の次元削減を行う削減部、」を備えているのに対し、引用発明2には、そのようなことが特定されていない点。

[相違点3]
本願発明1の「検出部」が、「4)次元削減が行われた前記周波数成分について所定の周期にわたって所定の数値範囲に収まる場合に平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部」を備えているのに対して、引用発明2にはそのようなことが特定されていない点。

[相違点4]
本願発明1の「検出部」が「5)前記学習用データの平均及び分散に基づいて前記数値データを標準化する標準化部」を備えているのに対し、引用発明2にはそのようなことが特定されていない点。

[相違点5]
本願発明1が、「前記数値データの相対的な孤立度合いを示す指標に基づいて前記数値データの外れ値を検出する」のに対して、引用発明2には、そのようなことが特定されていない点。

イ.判断
事案に鑑みて、相違点3について先に、検討を行う。
引用文献1-6には、「次元削減が行われた前記周波数成分について所定の周期にわたって所定の数値範囲に収まる場合に平常時の前記数値データとして学習用データに分類する分類部」を備えることは記載されておらず、本願出願時に周知技術であるともいえない。
してみると、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基いて、本願発明1の相違点3に係る構成とすることは、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2及び周知技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。

(3)小括
(1)、(2)において検討したとおり、本願発明1は、当業者であっても、引用文献1-6に記載された技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2-5について
上記「第4」のとおり、本願発明2-3は本願発明1を減縮した発明であり、本願発明4-5は、それぞれ、本願発明1に対応する、「データ監視方法」、「データ監視プログラム」の発明であるから、本願発明2-5はいずれも本願発明1の上記相違点に係る構成と実質的に同一の構成を備えるものである。
よって、本願発明1と同じ理由により、本願発明2-5も、当業者であっても、引用文献1-6に記載された技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
本件補正で補正された請求項1-5は、上記「第6」のとおり、本願発明1の上記相違点に係る構成を備えるものであり、当該構成は、原査定における引用文献A-Fには記載されておらず、本願出願日前における周知技術でもないので、本願発明1-5は、当業者であっても、原査定における引用文献A-Fに記載された発明に基いて、容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第8 その他の当審拒絶理由についての判断
1.当審拒絶理由(特許法第36条第6項第1号)について
当審では、補正前の請求項1-4について、請求項1に係る発明の「数値データの外れ値を検出する検出部」に関して、「周波数成分の次元削減を行う削減部」が、当該検出部の構成要素ではない様態を含むが、発明の詳細な説明(図2及びその関連する記載)によれば、検出部の一部の構成として、削減部があることのみが記載されており、補正前の本願発明1-4が発明の詳細な説明に記載されたものではない、との拒絶の理由を通知している。
しかしながら、令和2年10月28日の手続補正において、補正前の請求項1-4に対応する補正後の請求項1-3に「 前記検出部は、・・・3)前記周波数成分について主成分分析を行って前記周波数成分の次元削減を行う削減部、・・・を備え、」との構成が追加される補正がなされた結果、この拒絶の理由は解消した。

第9 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-26 
出願番号 特願2017-93887(P2017-93887)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04L)
P 1 8・ 121- WY (H04L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松崎 孝大中川 幸洋菊地 陽一  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 太田 龍一
林 毅
発明の名称 データ監視装置、データ監視方法及びデータ監視プログラム  
代理人 内藤 和彦  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 江口 昭彦  

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