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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1370464
審判番号 不服2020-9824  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-14 
確定日 2021-02-09 
事件の表示 特願2016- 28512「放射線画像撮影システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月24日出願公開、特開2017-144075、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」という。)は、平成28年2月18日の出願であって、令和元年11月12日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月20日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年4月16日付けで拒絶査定(原査定)がされたところ、これに対し、同年7月14日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされ、同年10月30日付けで拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由」という。)がされ、同年11月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要及び当審拒絶理由の概要
1 原査定の概要は次のとおりである。
(1)本願の請求項1,7に係る発明は、その出願の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
(2)本願の請求項1,7-8に係る発明は、その出願の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)本願の請求項2-3に係る発明は、その出願の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、及び、引用文献2に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(4)本願の請求項4-6に係る発明は、その出願の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、及び、引用文献3に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(5)本願の請求項7に係る発明は、その出願の日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明、引用文献2に記載された事項、引用文献3に記載された事項、及び、引用文献4に記載された事項に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2014/208722号
2.特開2015-195811号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2011-050528号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2004-337232号公報

2 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
(1)請求項1において「出力手段」が「線量情報」を「出力」する対象が特定されておらず、「出力手段」が何に対して「線量情報」の「出力」を行うのかが明確でないから、請求項1に係る発明、及び、請求項1を引用する請求項4-6,8に係る発明は明確でない。
そのため、本願の請求項1,4-6,8の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

(2)請求項1に係る発明には、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなるから、請求項1を引用する、及び、請求項4-6,8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
そのため、本願の請求項1,4-6,8の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

第3 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和2年11月25日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「 【請求項1】
管理システムから撮影オーダー情報を取得するオーダー取得手段と、
撮影された放射線画像が写損であることを入力する入力手段と、
撮影された放射線画像が写損であることが入力された場合に、写損とされた撮影に関する線量情報を保存する記憶手段と、
前記記憶手段に保存された前記写損とされた撮影に関する線量情報を前記管理システムに出力する出力手段と、を備え、
前記記憶手段は、特定の患者に関する複数の撮影オーダー情報に基づいて行われた一連の撮影に対応付けて、前記写損とされた撮影に関する線量情報とともに、再撮影に関する線量情報を保存することを特徴とする放射線画像撮影システム。
【請求項2】
被写体を透過した放射線を信号値として読み出す放射線画像撮影装置から転送された前記信号値に基づいて前記放射線画像を生成するコンソールが、前記オーダー取得手段および前記出力手段として機能し、
前記記憶手段は、前記コンソールの記憶手段であることを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項3】
前記写損とされた放射線画像の撮影に関する線量情報には、当該撮影の際に放射線発生装置に設定された管電圧、管電流、曝射時間、照射線量の少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項4】
前記写損となった放射線画像の撮影に関する線量情報には、当該撮影の際に、前記放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置に照射された放射線の線量が含まれることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項5】
前記写損となった放射線画像の撮影に関する線量情報には、当該撮影の際に放射線発生装置から照射された放射線の線量が含まれることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項6】
写損とされた前記放射線画像に対して写損取り消しを指示する写損取り消し手段を備え、
前記出力手段は、前記写損取り消し手段により写損取り消しが指示された前記線量情報については、写損ではない線量情報として前記管理システムに出力することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の放射線画像撮影システム。
【請求項7】
前記記憶手段は、
写損とされた放射線画像のプレビュー画像と、診断に供する放射線画像と、を前記撮影オーダー情報と対応付けて保存し、
写損とされた前記放射線画像を破棄することを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影システム。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1の記載事項
(1)原査定に引用された引用文献1には、次の記載がある(下線は当審にて付した。)。

(引1a)
「【技術分野】
【0001】
本明細書の開示は、撮影情報処理装置、X線撮影装置、X線撮影システム、制御方法、および制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムに関する。」

(引1b)
「【0010】
図1を参照しながら本発明の実施形態に係るX線撮影システムの構成を説明する。実施形態に係るX線撮影システム101はX線発生装置、撮影台105、X線撮影装置106、撮影情報処理装置107、操作部110、及び表示部109を有する。
・・・
【0014】
撮影情報処理装置107は制御部111と、通信回路112と、記憶部108とを有する。撮影情報処理装置107は通信回路112を通じてX線撮影装置106と通信する。制御部111はX線撮影をするための撮影情報を生成管理し、X線撮影により得られるX線画像を取得し、撮影情報と関連付けて記憶部108に記憶する。制御部111は操作部110、表示部109と接続しており、操作部110からの操作入力を受けて撮影情報の取得、生成、変更といった設定を行う。これら撮影情報やX線画像は表示部109に表示され、ユーザはX線画像を確認することができる。操作部110は、キーボード、マウスデバイス、タッチパネルといった汎用の操作機器でも、本撮影情報処理装置107の専用の操作機器であってもよい。
【0015】
また撮影情報処理装置107は院内イントラネット等のネットワーク113に接続しており、通信回路112を通じてX線画像をPACS115,Viewer116,プリンタ117といった出力先の装置に送信する。
【0016】
RIS(Radiology Information System)114は放射線撮影情報の依頼を管理し、X線撮影システム101の撮影情報処理装置107に対して撮影依頼情報を送信するとともに、依頼した撮影の進捗管理を行う。撮影依頼情報を受けた撮影情報処理装置107は撮影に必要な撮影情報を生成し、X線撮影を行う。ここでいう撮影情報とは、X線撮影装置106の駆動条件を含む。またこれに加えて、X線発生装置のX線照射条件、X線撮影装置106により得られたX線画像の画像処理条件、処理された画像のクロップ等の出力条件を含むこととしてもよい。また、これらの任意の組み合わせを撮影情報としてもよい。撮影の開始、完了等の進捗があった場合には、制御部111の制御に応じて通信回路112が当該進捗情報をRIS114に送信する。
【0017】
なお、撮影情報にX線照射条件を含む場合、X線制御部104との通信を確立し、通信回路112からX線制御部104へX線照射条件を送信することとすれば便宜である。通信がない場合には、別途X線制御部104の操作卓でX線発生条件を入力することとなる。
【0018】
PACS(Picture Archiving and Communication Systems)115は画像管理サーバであり、X線画像を受信し、他の医用画像とまとめて管理する。」

(引1c)
「【0028】
写損設定がされた画像は一般に、撮影装置から診断用画像としてPACS115への出力が避けられるべきであるため、写損として設定された画像は出力指示があってもPACS115への出力をさせないよう、画像出力制御部208により制御される。なお、写損設定は例えばユーザの操作入力による設定情報であるため、仮に写損設定された画像であっても、外部に出力するよう、出力設定をしておいてもよい。例えば、初期設定では写損画像を出力しない設定としておき、この設定を変えて出力する設定とした場合には、写損画像であっても外部に出力されることとなる。このように出力される場合には、写損画像のDICOMヘッダに写損設定がされた画像である旨の情報が付与される。」

(引1d)
「【0055】
図4を参照しながら撮影情報処理装置により表示部に表示される撮影画面を説明する。表示制御部202は、撮影画面401として画像402aを表示するための画像表示領域402、状態表示403、患者表示領域407、撮影情報409を表示させるための撮影情報表示領域408、検査終了ボタン417を表示させる。これに加えて表示制御部202は、撮影画面に、検査保留ボタン415、画像出力ボタン416、シングルビューボタン404、マルチビューボタン405、フレームビューボタン406、詳細ボタン418、-90度回転ボタン419、+90度回転ボタン420、左右反転ボタン421、上下反転ボタン421、白黒反転ボタン422、Lマークボタン424、Rマークボタン425、クロップボタン426、マスクボタン427、再撮影ボタン428、写損ボタン429、やり直しボタン430、リセットボタン431、下送りボタン432、上送りボタン433のうちいずれか1つまたはこれらの任意の組み合わせを表示させることとしてもよい。以下、図4以下の説明においても先述の患者選択画面や撮影情報選択画面と同様に、表示制御は表示制御部202により、操作入力の処理は入力検出部203により行われ、これら入力に応じた表示制御等の制御は撮影制御部201により実現される。また、画像や撮影情報の指定は指定部206により、写損の設定は写損設定部207により行われる。以下詳細を説明する。
【0058】
詳細ボタン418は指定された画像、撮影情報、患者情報の詳細を表示させる操作入力を受け付けるためのボタンである。-90度回転ボタン419は画像表示領域402に表示された画像を-90度回転させるためのボタンである。+90度回転ボタン420は画像表示領域402に表示された画像を+90度回転させるためのボタンである。左右反転ボタン421は画像表示領域402に表示された画像を左右反転させるためのボタンである。上下反転ボタン421は画像表示領域402に表示された画像を上下反転させるためのボタンである。白黒反転ボタン422は画像表示領域402に表示された画像の白黒を反転させて表示させるためのボタンである。Lマークボタン424は画像表示領域402に表示された画像の任意の位置にLマークを付与するボタンである。Rマークボタン425は画像表示領域402に表示された画像の任意の位置にRマークを付与するボタンである。クロップボタン426は画像表示領域402に表示された画像のうちPACS115等に出力する部分領域を選択するための、操作入力により大きさ及び位置が変更可能な選択枠を表示させるためのボタンである。マスクボタン427は画像表示領域402に表示された画像のうち、照射野外や被写体外の領域の画素値を0とするためのボタンである。再撮影ボタン428は、撮影情報表示領域408に表示された画像のうち、指定された画像について写損としかつ同一撮影条件、画像処理条件、出力条件、を含む撮影情報を生成させ、撮影情報表示領域408に追加表示させるためのボタンである。撮影情報の生成は上述の通り撮影制御部201により行われる。写損ボタン429は、撮影情報表示領域408に表示された画像のうち、指定された画像について写損として設定するためのボタンである。やり直しボタン430は、上述の要素419乃至429により行われた処理や設定のうち、もっとも最近の処理をキャンセルするためのボタンである。リセットボタン431は、上述の要素419乃至429により行われた処理や設定のすべてをキャンセルするためのボタンである。下送りボタン432は、撮影画面401に一度には表示しきれないボタンを表示させるためのボタンである。この下送りボタン432が押下されることにより、最上段の詳細ボタン418の表示をやめさせ、別のボタンが表示される。別のボタンの例は例えば、画像表示領域402に表示された画像の拡大を拡大させる拡大ボタン434、縮小させる縮小ボタン435のほか、詳細な画像処理の設定を行うためのQAボタンや、高画質化処理を行うためのHQボタン等のボタンなどである。上送りボタン433は下送りボタン432と逆の処理を行うためのボタンである。押下されることにより、最下段のボタンの表示をやめさせ、上段側に隠されていたボタン、例えば詳細ボタン418を表示させる。」

(引1e)
「【0097】
図7のフローチャートを参照しながら実施形態に係る撮影情報処理の流れを説明する。
【0098】
S700で通信回路112はX線撮影装置106からX線の照射を検知したことを示す検知信号(X線検知信号)を受信する。
【0099】
S701で撮影制御部201は、検知信号を受信した時点で、X線撮影装置106が撮影許可状態であるか否かを判定する。撮影制御部201は例えば、撮影許可信号を受信済みであるか否か、表示制御部202にX線撮影装置106が撮影許可状態である表示(Ready表示)が表示されているか、記憶部108に記憶されたX線撮影装置106の状態情報で撮影許可状態となっているか否か等の情報に基づいて上記の判定を実行する。撮影許可状態でない場合にはステップS702、撮影許可状態である場合にはステップS719に進む。
【0100】
ステップS702-S707は撮影不許可状態でX線検知信号が受信された場合の処理の流れを示す。ステップS702で表示制御部202はたとえば図5(b)に示すような、撮影不許可状態でX線検知信号が受信された旨のダイアログを表示部109に表示させる。当該表示は、ダイアログに表示されたいずれかのボタンが押下されるまで継続される。
【0101】
その後ステップS703で通信回路112はX線画像を受信する。ステップS704で情報生成部204は、上述の検知信号やX線撮影不許可信号等、X線撮影装置106から受信した信号に基づいて、撮影不許可状態で得られた画像であることを示す識別情報を生成する。撮影制御部201は当該識別情報と当該X線画像と関連付け、当該X線画像とともに不図示のRAM等のテンポラリメモリに一時的に記憶させる。ステップS705で撮影情報処理装置の画像処理部は得られた画像を画像処理する。ステップS706で表示制御部202は画像処理された画像を表示部109に表示させる。ステップS707では、画像が表示された状態で、例えば警告表示501の第一のボタン502、第二のボタン503あるいは写損ボタン429、再撮影ボタン428が押下されたか否かを撮影制御部202が判定する。以下図7に示すフローチャートでは、写損指示が再撮影指示のいずれかが行われる場合を説明する。ここで、写損指示や再撮影指示が行われない場合で、検査保留ボタン415が押下されることによる検査保留指示、画像出力ボタン416が押下されることによる画像出力指示、検査終了ボタン417が押下されることによる検査終了指示等があった場合、ステップS713以降の処理を行う。またあるいは第三のボタン504の押下があった場合には、上述の検査保留指示、画像出力指示、検査終了指示を待機する状態に遷移することとしてもよい。あるいは、未撮影の撮影情報がある場合には、当該撮影情報に対応する撮影を実行できる状態へと遷移することとしてもよい。
【0102】
S708で撮影制御部201は、S707で写損指示あるいは再撮影指示がされた場合に、写損指示が行われたか、再撮影指示が行われたか否かを判定する。写損指示が行われた場合にはステップS709に進み、再撮影指示が行われた場合にはステップ715に進む。
【0103】
ステップS709-S712で写損指示が行われた場合の処理を説明する。S709で写損設定部207は、当該画像がすでに写損として設定がされているか否かを記憶部108のデータを参照して判定する。写損設定がされていない場合、ステップS710に進み、写損設定部207は当該画像を写損として設定する。加えてステップS711で写損設定部207は操作部110からの操作入力に応じて写損の理由情報を設定する。当該画像と、写損であることを示す情報と、写損理由の情報とを関連付けて記憶部108に記憶させる。
【0104】
一方で、ステップS709で既に写損として設定された画像であったと判定された場合には、ステップS712で写損設定部207は写損設定を解除する。具体的には、写損であることを示すデータ「1」を写損ではないことを示すデータ「0」に書き換え、当該データを当該画像に関連付けて記憶部108に保存する。
【0105】
その後ステップS713で撮影制御部201は、画像出力ボタン416が押下されることによる画像出力指示、検査終了ボタン417が押下されることによる検査終了指示の入力を待機する。入力があった場合には出力指示ありとしてステップS714に進む。
【0106】
S714で画像出力制御部208は、写損設定されていないX線画像をPACS115に対して送信するよう、通信回路112を制御する。出力が完了後処理を終了する。
【0107】
ステップS715-S718で再撮影指示が行われた場合の処理を説明する。ここで再撮影の処理とは、当該画像を写損設定したうえで、再撮影のための撮影情報を生成する処理である。ステップS715で写損設定部207は当該画像を写損画像として設定する。再撮影指示がされた場合、写損設定部207はすでに写損として設定された画像があったとしても、当該写損設定を維持し、写損設定を解除することはしない。ステップS716でステップS711と同様で写損設定部207は操作部110からの操作入力に応じて写損の理由情報を設定し、画像と関連付けて記憶部108に記憶させる。
【0108】
S717で撮影制御部201は当該画像に対応する撮影情報と同一の撮影条件、画像処理条件、出力条件を含む撮影情報を生成する。当該撮影情報を写損とされた撮影情報と同一の検査情報に関連付け、記憶部108に記憶させる。ステップS718で表示制御部202は撮影情報表示領域408に当該新たに生成された撮影情報を追加表示させる。
【0109】
S719-S723は撮影許可状態で検知信号を受信した場合の処理の流れを示す。S719で表示制御部202は、撮影許可状態にX線検知信号を受信した旨のダイアログを撮影画面401等に重畳して表示する。S720で通信回路112はX線撮影装置106からX線画像を受信する。ステップS721で撮影情報処理装置の画像処理部は当該X線画像を画像処理する。ステップS722で表示制御部202は画像処理されたX線画像を表示部109に表示させる。
【0110】
S723で、撮影制御部201は、入力検出部203からの検出結果に応じて、例えば図4の写損ボタン429、再撮影ボタン428が押下されたか否かを判定する。押下されたと判定された場合には先述のステップS708以下の処理が行われる。押下されていないと判定された場合には先述のステップS713以下の処理が行われる。」

(引1f)
「【0121】
図9(b)は、その他の実施形態における検知後の画像データの流れを示すフロー図である。
【0122】
本実施形態においても、撮影情報処理装置107の画像取得準備が整った時点で、撮影されX線撮影装置106の画像保存部に保存されていた画像情報が撮影情報処理装置107へ転送される。ここで画像情報を受信した撮影情報処理装置107の写損設定部207は、画像を表示することなく自動的に写損画像として処理する。写損処理の際、写損設定部207はその理由として不適切な照射タイミングで撮影された旨を記録しても良い。同時に表示制御部202は不適切なタイミングで照射が行われた旨を示すダイアログを表示してもよい。写損処理する画像情報に対しては、患者情報や撮影条件などの情報を紐づけておくことにより、患者に対する被曝線量の適切な管理を行うことが出来るようになる。さらに写損を取り消して診断画像として利用することもできる。
【0123】
撮影情報処理装置107では、次の撮影に対して、写損として処理した画像と同一の条件に基づいて再撮影の準備が行われる。このように自動的に写損画像として処理することにより、操作者の処理を軽減し、速やかに次の撮影に向けた準備を整えることが出来るため、ワークフローの改善を行うことが出来る。」

(引1g)
【図7】

(当審注:S708「写損ボタンが押下された?」から続くYes,Noの矢印は、ステップS709-S712は写損指示が行われた場合の処理であり(【0103】)、ステップS715-S718は再撮影指示が行われた場合の処理である(【0107】)ことに鑑みれば、Yes及びNoの記載が本来の意図と逆になっていると認められる。)

【図9】(b)



(2)引用発明
ア (引1f)【0123】に「写損処理する画像情報に対しては、患者情報や撮影条件などの情報を紐づけておく」と記載されており、この「撮影条件」がどのようなものであるかについて引用文献1に明示的な説明はないが、(引1b)【0016】の「ここでいう撮影情報とは、X線撮影装置106の駆動条件を含む。またこれに加えて、X線発生装置のX線照射条件、X線撮影装置106により得られたX線画像の画像処理条件、処理された画像のクロップ等の出力条件を含むこととしてもよい。」及び(引1e)【0108】の「当該画像に対応する撮影情報と同一の撮影条件、画像処理条件、出力条件を含む撮影情報」という記載からすると、「X線撮影装置106の駆動条件」や「X線発生装置のX線照射条件」が「撮影条件」に含まれるものといえる。

イ 上記(1)及びアから、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「X線発生装置、撮影台105、X線撮影装置106、撮影情報処理装置107、操作部110、及び表示部109と、
放射線撮影情報の依頼を管理し、撮影情報処理装置107に対して撮影依頼情報を送信するとともに、依頼した撮影の進捗管理を行うRIS(RadiologyInformationSystem)114と、
画像管理サーバであり、X線画像を受信し、他の医用画像とまとめて管理するPACS(Picture ArchivingandCommunicationSystems)115と、を有し、
撮影情報は、X線撮影装置106の駆動条件、X線発生装置のX線照射条件、X線撮影装置106により得られたX線画像の画像処理条件、処理された画像のクロップ等の出力条件を含み、
撮影情報処理装置107はX線撮影により得られるX線画像を撮影情報と関連付けて記憶する記憶部108と、撮影制御部201とを有し、
表示部109は写損ボタン429を含む撮影画面401を表示し、写損ボタン429は、撮影情報表示領域408に表示された画像のうち、指定された画像について写損として設定するためのボタンであり、
撮影情報処理装置107は写損処理するX線画像に対して、X線撮影装置106の駆動条件、X線発生装置のX線照射条件などの撮影条件の情報を紐づけ、また、写損設定されたX線画像をPACS115に出力する、
X線撮影システム。」

2 引用文献2の記載事項
原査定に引用された引用文献2には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審にて付した。)。
「【0014】
(第1実施形態)
図1A、図1Bは、第1実施形態の放射線撮影システムの構成例を示す図である。図1Aは病院内のネットワーク上に構成されるシステムの例を示している。システム放射線情報システム(RIS11)、画像保管通信システム(PACS12)、病院情報システム(HIS13)、および放射線撮影装置100が病院内ネットワーク10に接続されている。
【0015】
病院情報システム(HIS)は、被検者情報(例えば、被検者ID、被検者氏名、性別、生年月日等)や会計情報等の病院内の管理情報全般を扱うことが可能である。放射線情報システム(RIS)は、診療科から画像の検査依頼を受け、放射線科にどの被検者のどの部位を撮影するかを明確にして検査情報として検査依頼を出すなどの画像撮影に関する情報の管理を行うことが可能である。
【0016】
また、RISは、検査依頼先から検査開始や検査終了等のモダリティによる検査の実施状況の通知を受信する。例えば、検査開始または検査終了時にDICOM(Digital Imaging and Communication in Medicine)のMPPS(Modality Performed Procedure Step)を受信する。RISはMPPSの受信により、検査状態の管理を行ったり、検査終了時に通知された線量情報に基づき被検者の被ばく線量の管理を行うことが可能である。
・・・
【0051】
また、図10(b)の検査終了通知(N-SET)には、タグ(0040,0252)の値が“COMPLETED”であり、検査が終了したことを示す情報が含まれている。また、検査終了通知(N-SET)には線量に関するタグ(0040,8302),(0018,115E)が含まれており、N-SETの通知先にて線量情報の管理が可能となる。タグ(0040,8302)により平均の線量がRIS11に通知される。また、(0018,115E)により検査におけるトータルの面積線量がRIS11に通知される。放射線撮影装置100は検査終了通知(N-SET)をRIS11に送信することで、検査における放射線の線量情報をRIS11に通知する。」

【図1A】

上記記載から、引用文献2には「放射線撮影装置が、検査における放射線の線量情報を放射線情報システム(RIS)に送信する」という技術的事項が記載されているといえる。

3 引用文献3の記載事項
原査定に引用された引用文献3には、次の記載がある(下線は当審にて付した。)。
「【0020】
さらに、撮影制御手段13は、曝射量検出手段14、警告出力手段15を備えている。曝射量検出手段14は、放射線撮影装置10から患者Sに放射線を照射し放射線画像を取得する際に、放射線撮影の準備開始から放射線撮影の終了までに患者に照射された曝射量を検出するものである。ここで、曝射量検出手段14は、撮影制御手段13の制御状態(放射線源の種類、管電圧、管電流等)に基づいて曝射量を算出してもよいし、放射線画像の素抜け部分の濃度から曝射量を算出するものであってもよい。あるいは、曝射量検出手段14は、信号処理により曝射量を算出する場合のみならず、放射線源11の放射線射出部分もしくは放射線検出器12の外縁に設けられた放射線カウンタからなるものであって、放射線を直接計測するものであってもよい。」

上記記載から、引用文献3には「曝射量を算出するための情報には、放射線源の種類、管電圧、管電流等が含まれる」という技術的事項が記載されているといえる。

4 引用文献4の記載事項
原査定に引用された引用文献4には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。)。

(引4a)
「【0030】
X線照射後、患者を透過したX線を、蛍光体を介してFPD1でデジタルデータとして取得し、画像読取制御部3へ転送する。次にCPU10は、制御プログラム6を実行し、ユーザI/F16に接続された表示用ディスプレイ装置17の画面を図4のように変化させる。すなわち、図4は、本発明の一実施形態における表示用ディスプレイ装置17に表示される撮影後の表示画面例を示す図である。図4に示されるように、画像読取制御部3から取得した画像データは40に表示され、CPU10は撮影実施情報としてX線発生装置制御部23から線量値4mAsを受信し、ユーザI/F16を介して表示用ディスプレイ装置17上の41に表示するとともに、ハードディスク12に記憶する。
・・・
【0033】
医療用デジタルX線撮影装置4において検査のための撮影が終了すると、制御プログラム6によって、CPU10は、ハードディスク12に記憶した撮影条件や撮影実施情報を、オーダー装置22へ送信する。制御プログラム6は、予め決められた通信プロトコルに従い、オーダリング装置22へ検査の撮影が終了したことを伝える。この際、撮影が行われた撮影条件と、照射線量等の撮影実施情報を伝える。また、制御プログラム6は、前述の撮影条件や撮影実施情報を付帯情報とした撮影済み画像データをDICOMと呼ばれる医療用の標準通信プロトコルに従って、外部装置へまとめて出力し、診断に使用される。
【0034】
以上のようにオーダリング情報に従って画像を撮影する方法を示したが、検査の目的は、医師が指定した撮影部位の画像を取得することである。しかしながら、実際の撮影では前述したように一度で成功しない場合がある。その多くの原因は患者の動きによる画像のぶれであり、診断上使用することができないいわゆる「写損画像」が生じることがある。
【0035】
その場合、操作者は写損画像の再撮影を行うが、放射線科情報システム(RIS)へ戻すオーダーの撮影実施情報は再撮影が行われる前の写損画像は必要ではなく、指定された撮影条件でその部位を写した適正な画像だけが必要になる。」

(引4b)
「【0054】
また、本実施形態では、再撮影時に画像を上書きせずに、写損画像を再撮影が行われても消去することなく、図1に示す記憶装置12で内部保存を行っている。従って、診断に使用した画像以外の写損画像が必要になった時には、呼び出して再出力することが可能である。これを、診断時に医師に知らせる方法として、外部装置に出力する画像情報、例えば撮影条件等を保存するヘッダ情報と一緒に再撮影が行われたことを示す情報を記憶させる。
【0055】
すなわち、本実施形態では、被写体の再撮影が指示された場合、元の撮影画像に無効マークを付加する。そして、ハードディスク12では、無効マークが付加された撮影画像を再撮影画像と関連付けて記憶することを特徴とする。また、本実施形態では、無効マークが付加された撮影画像を無効画像とし、新たに取得された再撮影画像を有効画像とし、当該無効画像及び有効画像をともに消去しないことを特徴とする。
【0056】
例えば、PACS21へ送信する場合はヘッダに情報を記憶させておき、PACS21側のディスプレイ装置で表示する際に当該情報を表示しても良いし、画像上に再撮影があったことをテキストやアイコン等をオーバレイして表示させるようにしてもよい。また、プリンタ20に出力する場合は、予め画像内に診断の妨げにならない程度にテキストやアイコン等を埋め込んで出力することも可能である。そして、本実施形態では、これらの表示を見た医師が、別の画像が存在することを意識できるので、放射線技師に連絡して写損となった画像の様子を尋ねるきっかけになり、技師も写損画像を記憶装置12から容易に再読み出しを行い、再出力することができる。
【0057】
すなわち、本実施形態では、撮影画像及び再撮影画像の付属情報(例えば、ヘッダ情報)として無効画像を示す無効フラグ又は有効画像を示す有効フラグを保持させることを特徴とする。」

上記記載から、引用文献4には「写損画像を再撮影が行われても消去することなく、記憶装置で内部保存を行う」という技術的事項が記載されているといえる。

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明を比較する。
ア 引用発明の「X線撮影システム」は、本願発明1の「放射線画像撮影システム」に相当する。

イ 引用発明の「RIS114」は、「撮影情報処理装置107に対して撮影依頼情報を送信するとともに、依頼した撮影の進捗管理を行う」ものであるから、本願発明1の「管理システム」に相当する。また、引用発明の「撮影依頼情報」は本願発明1の「撮影オーダー情報」に相当する。そして、引用発明の「RIS114」は「撮影情報処理装置107」に対して「撮影依頼情報」を送信するのであるから、引用発明の「撮影情報処理装置107」は、本願発明1の「オーダー取得手段」に相当する手段を有するといえる。

ウ 引用発明の「写損ボタン429」は、本願発明1の「撮影された放射線画像が写損であることを入力する入力手段」に相当する。

エ 引用発明の「撮影情報処理装置107」は「X線撮影により得られるX線画像を撮影情報と関連付けて記憶する記憶部108」を有し、また、「写損処理するX線画像に対して、X線撮影装置106の駆動条件、X線発生装置のX線照射条件などの撮影条件の情報を紐づけ」る。そして、(引1f)の【0122】には、「写損処理する画像情報に対しては、患者情報や撮影条件などの情報を紐づけておくことにより、患者に対する被曝線量の適切な管理を行うことが出来るようになる。」と記載されているから、「写損処理するX線画像に対して、X線撮影装置106の駆動条件、X線発生装置のX線照射条件などの撮影条件の情報を紐づけ」る際の「撮影条件」とは「患者に対する被曝線量」に関する情報が含まれるといえ、当該情報が本願発明1の「線量情報」に相当する。
よって、引用発明の「記憶部108」は、本願発明1の「撮影された放射線画像が写損であることが入力された場合に、写損とされた撮影に関する線量情報を保存する記憶手段」に相当する。

オ 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は次のとおりである。

【一致点】
「管理システムから撮影オーダー情報を取得するオーダー取得手段と、
撮影された放射線画像が写損であることを入力する入力手段と、
撮影された放射線画像が写損であることが入力された場合に、写損とされた撮影に関する線量情報を保存する記憶手段と、
を備える放射線画像撮影システム。」

【相違点】
本願発明1の「記憶手段」は、「特定の患者に関する複数の撮影オーダー情報に基づいて行われた一連の撮影に対応付けて、前記写損とされた撮影に関する線量情報とともに、再撮影に関する線量情報を保存する」ものであり、また本願発明1は「記憶手段に保存された前記写損とされた撮影に関する線量情報を前記管理システムに出力する出力手段」を備えるのに対し、引用発明の「記憶部」は写損処理するX線画像と患者に対する被曝線量に関する情報を対応づけて記憶するものの、被曝線量に関する情報を「特定の患者に関する複数の撮影オーダー情報に基づいて行われた一連の撮影に対応付けて」記憶するものではなく、また、「写損とされた撮影に関する線量情報とともに、再撮影に関する線量情報を保存する」ものでもなく、また、引用発明の「撮影情報処理装置107」は「写損処理するX線画像に対して、X線撮影装置106の駆動条件、X線発生装置のX線照射条件などの撮影条件の情報を紐づけ、また、写損設定されたX線画像をPACS115に出力する」ものの、X線画像に紐づけた情報をも出力するかは不明であり、また、その出力先も、引用発明は「PACS115」であり、本願発明1の「管理システム」とは異なるものである点。

(2)判断
ア 引用発明の「撮影情報処理装置107」は「写損処理するX線画像に対して、X線撮影装置106の駆動条件、X線発生装置のX線照射条件などの撮影条件の情報を紐づけ、また、写損設定されたX線画像をPACS115に出力する」ものである。ここで、(引1e)【0108】の記載、(引1f)【0123】の記載、及び(引1g)【図9】(b)によると、「写損処理するX線画像に対して、X線撮影装置106の駆動条件、X線発生装置のX線照射条件などの撮影条件の情報を紐づけ」るのは、「次の撮影に対して、写損として処理した画像と同一の条件に基づいて再撮影の準備」を行うためである。そうすると、引用発明においては「写損として処理した画像」の撮影条件と「再撮影」の撮影条件は同一であるから、両者の撮影条件を個別に記憶する必要はなく、1つの撮影条件として記憶しておけば足り、また、「放射線撮影情報の依頼を管理し、・・・、依頼した撮影の進捗管理を行う」ものである「RIS114」に「写損として処理した画像」の撮影条件を出力する必要もない。この点は、引用文献4の(引4a)【0035】にも「その場合、操作者は写損画像の再撮影を行うが、放射線科情報システム(RIS)へ戻すオーダーの撮影実施情報は再撮影が行われる前の写損画像は必要ではなく、指定された撮影条件でその部位を写した適正な画像だけが必要になる。」と記載されているとおりである。
そのため、「放射線撮影装置が、検査における放射線の線量情報を放射線情報システム(RIS)に送信する」という技術的事項が、引用文献2に記載されているように本願の出願の日前に公知であるとしても、引用発明において、「特定の患者に関する複数の撮影オーダー情報に基づいて行われた一連の撮影に対応付けて」、「写損とされた撮影に関する線量情報とともに、再撮影に関する線量情報を保存」し、当該「保存された前記写損とされた撮影に関する線量情報」を「RIS114」(本願発明1の「管理システム」に相当)に出力することは、当業者が容易に想到しうることとはいえない。

イ また、引用文献3-4のいずれにも、「記憶手段」は、「特定の患者に関する複数の撮影オーダー情報に基づいて行われた一連の撮影に対応付けて、前記写損とされた撮影に関する線量情報とともに、再撮影に関する線量情報を保存する」ものである点、及び、「記憶手段に保存された前記写損とされた撮影に関する線量情報を前記管理システムに出力する出力手段」を備える点は記載されていない。

ウ よって、引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて、引用発明において、「特定の患者に関する複数の撮影オーダー情報に基づいて行われた一連の撮影に対応付けて」、「写損とされた撮影に関する線量情報とともに、再撮影に関する線量情報を保存」し、当該「保存された前記写損とされた撮影に関する線量情報」を「RIS114」に出力することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

(3)小括
したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

2 本願発明2-7について
本願発明2-7も、本願発明1の「記憶手段」は、「特定の患者に関する複数の撮影オーダー情報に基づいて行われた一連の撮影に対応付けて、前記写損とされた撮影に関する線量情報とともに、再撮影に関する線量情報を保存する」ものである点、及び、「記憶手段に保存された前記写損とされた撮影に関する線量情報を前記管理システムに出力する出力手段」を備える点と同一の構成を備えるものであるから、上記1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2-4に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1-7は、原査定における引用文献1に記載された発明ではなく、また、原査定における引用文献1-4に基づいて当業者が容易に発明できたものでもないから、原査定を維持することはできない。

第7 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第2号について
当審では、請求項1において「出力手段」が「線量情報」を「出力」する対象が特定されておらず、「出力手段」が何に対して「線量情報」の「出力」を行うのかが明確でない、との拒絶の理由を通知しているが、令和2年11月25日付け手続補正書による手続補正により、「管理システムから撮影オーダー情報を取得するオーダー取得手段」の「管理システム」に対して「出力手段」が「線量情報」の「出力」を行うことが明確となった結果、この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第36条第6項第1号について
当審では、請求項1に係る発明には、発明の課題を解決するための手段が反映されておらず、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えることとなる、との拒絶の理由を通知しているが、令和2年11月25日付け手続補正書による手続補正により、「管理システムから撮影オーダー情報を取得するオーダー取得手段」の「管理システム」に対して「出力手段」が「線量情報」の「出力」を行うことが特定された結果、この拒絶の理由は解消した。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-20 
出願番号 特願2016-28512(P2016-28512)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
P 1 8・ 537- WY (A61B)
P 1 8・ 113- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 秀樹  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 幸仙
磯野 光司
発明の名称 放射線画像撮影システム  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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