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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 G01R |
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管理番号 | 1370482 |
審判番号 | 不服2020-2822 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-02 |
確定日 | 2021-02-09 |
事件の表示 | 特願2017-566231「3次元表面電位分布計測システム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月17日国際公開、WO2017/138034、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)2月8日を国際出願日とする日本語特許出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成31年 2月 6日 :手続補正書の提出 令和 元年 9月11日付け:拒絶理由通知書 令和 元年11月11日 :手続補正書、意見書の提出 令和 元年11月21日 :意見書の提出 令和 元年11月29日付け:拒絶査定(令和元年12月3日送達、以下「原査定」という。) 令和 2年 3月 2日 :審判請求書、手続補正書の提出 第2 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概要は次のとおりである。 1.本願の請求項1、4?5に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.本願の請求項1、4?5に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.本願の請求項2に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1?2に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 4.本願の請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された、以下の引用文献1?3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.国際公開第2014/147660号 2.特開平4-213082号公報(周知技術を示す文献) 3.特開平6-8174号公報 第3 本願発明 本願の請求項1?3に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明3」という。)は、令和2年3月2日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?3に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「 【請求項1】 回転電機の固定子コイル導体についてその接続部以外の箇所を測定対象として3次元的に形状が変化する前記固定子コイル導体の径方向外側、径方向内側および軸方向外側からその表面電位を計測する3次元表面電位分布計測システムであって、 レーザ光を出射するレーザ光源と、 第1の端面および第2の端面を有し前記第1の端面と前記第2の端面間の電位差の変化により屈折率が変化するポッケルス効果を有し、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光が入射する側に前記第1の端面を、前記測定対象側に前記第2の端面を向けるように配され前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶と、 前記第2の端面に設けられて、前記ポッケルス結晶の前記第1の端面から入射された前記レーザ光を前記入射の方向と反対方向に反射するミラーと、 インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を受け入れて、前記ポッケルス結晶の前記第1の端面と前記第2の端面との間の電位差に対応する前記レーザ光の光強度を検出する光検出器と、 前記レーザ光源と、前記ポッケルス結晶と、前記ミラーと、前記光検出器との互いの相対的位置関係を維持しながら、前記レーザ光源と、前記ポッケルス結晶と、前記ミラーと、前記光検出器を保持する筐体と、 前記筐体を3次元的に移動駆動可能な3次元移動駆動装置と、 前記3次元移動駆動装置を制御する駆動制御部と、 を備え、 前記筐体は、前記ポッケルス結晶と一体で移動し、前記ポッケルス結晶と前記測定対象の表面との間のギャップを計測するギャップセンサを有し、前記ギャップセンサが出力するギャップ信号は、前記駆動制御部に入力され、 前記駆動制御部は、前記ギャップセンサからの信号をフィードバック信号として、この信号値が所定のギャップ値となるように前記3次元移動駆動装置を制御し、 前記3次元移動駆動装置は、 固定子鉄心の径方向の中心軸位置に外部から静止固定された中心軸と、 前記中心軸に取り付けられて周方向の位置および軸方向の位置を変更する周軸方向駆動部と、 前記周軸方向駆動部に取り付けられて径方向の位置を変更する径方向駆動部と、 前記径方向駆動部に取り付けられて前記ポッケルス結晶の方向を変更する方向変換用回転駆動部と、 を有する、 ことを特徴とする3次元表面電位分布計測システム。 【請求項2】 前記ポッケルス結晶は、前記第1の端面から前記第2の端面に向かって次第に細くなるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の3次元表面電位分布計測システム。 【請求項3】 前記ポッケルス結晶は、BGO結晶であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の3次元表面電位分布計測システム。」 第4 引用文献に記載された発明 1.引用文献1について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「[0001]本発明は、回転電機の電界緩和システムの表面電位分布を計測するための表面電位分布計測装置に関する。」 「[0021][第1の実施形態]図1は、第1の実施形態に係る表面電位分布計測装置の構成を示す斜視図である。また、図2は、第1の実施形態に係る表面電位分布計測装置のポッケルス結晶を含む本体部分の長手方向の平断面図である。 [0022]本発明の実施形態に係る表面電位分布計測装置70は、回転電機に施される電界緩和システム3に適用される。まず、計測対象である電界緩和システム3を含む回転電機の構成について説明する。 [0023]回転電機は固定子2(図8参照)と回転子(図示せず)とを具備している。回転子は固定子2の内部に配置されて回転軸(図示せず)まわりを回転する。回転子は回転軸と回転子コア(図示せず)と回転子コイル(図示せず)とを具備している。回転子コアは回転軸とともに回転する。回転子コイルは回転子コアに巻回される。 [0024]固定子2は、固定子コア7と、固定子コイルと、主絶縁層4とを具備している。 [0025]固定子コア7は、回転子の径方向外側に所定の間隔をあけて配置される。固定子コア7の内周縁に沿って周方向に所定の間隔をあけて複数のスロットが形成されている。 [0026]そのスロット内には、固定子コイル導体1である型巻コイルが収納される。固定子コア7の外では型巻コイル同士が結線される。すなわち、型巻コイル同士が電気的に接続され、固定子コイルが製作される。この固定子コイルがU相、V相、W相に対して製作されることにより、U相、V相、W相の三相巻線コイルが製作される。 [0027]固定子コイル導体1の外周には、固定子コイル導体1に対して絶縁被覆を行うための主絶縁層4が設けられる。具体的には、固定子コイル導体1の外周には、マイカエポキシを主成分とする対地絶縁テープが主絶縁層4として巻回される。 [0028]主絶縁層4が設けられた固定子コイルの端部(以下、固定子コイルエンドと称する)8は直接発電に寄与する部分ではないため、固定子コイルエンド8における型巻コイル同士の結線部が3次元的に曲げられた(湾曲された)形状が採用される。いわゆる、インボリュート形状が採用される。これにより、回転電機をコンパクトにすることができる。 [0029]固定子コイルエンド8には、後述のコロナ放電の発生を防ぐための電界緩和システム3が施される。電界緩和システム3は、低抵抗層5と、電界緩和層6とを有している。 [0030]固定子コイルエンド8の主絶縁層4と固定子コア7のスロット壁面に面する部分との間では、コロナ放電である部分放電が発生する可能性がある。その部分放電の発生を防ぐために、主絶縁層4の外周には、低抵抗層5が設けられる。 [0031]具体的には、主絶縁層4の外周には、主絶縁層4が固定子コア7の内周に対面する部分から、主絶縁層4が固定子コア7の外に露出される部分まで、低抵抗半導電テープが低抵抗層5として巻回される。固定子コア7の外に設けられた低抵抗層5の幅は数十mm程度である。 [0032]低抵抗層5は固定子コア7とともに接地される。そのため、固定子コイル導体1に電圧(交流電圧)が印加された場合、固定子コイル導体1が駆動電極となり、低抵抗層5が接地電極となる。この場合、固定子コイル導体1と固定子コア7内の低抵抗層5との間で生じる等電位線はほぼ並行となる。 [0033]一方、固定子コイル導体1と固定子コイルエンド8における低抵抗層5との間で生じる等電位線は、主絶縁層4の厚み方向に分布する。固定子コイルエンド8では、主絶縁層4と固定子コイル導体1との比誘電率の相違や固定子コイル導体1の表面の抵抗率に依存して等電位線が密に分布する。 [0034]このため、固定子コイルエンド8の表面では電位傾度が大きくなり、固定子コイルエンド8の沿面方向に電界が集中する。特に、低抵抗層5の端部においては、電位傾度が著しく大きくなり、コロナ放電である部分放電または沿面放電が発生しやすくなる。 [0035]したがって、部分放電または沿面放電の発生を防ぐために、低抵抗層5の端部と固定子コイルエンド8の主絶縁層4との外周には、電界緩和層6が設けられる。 [0036]具体的には、固定子コイルエンド8の主絶縁層4の外周には、電位傾度を緩やかにするための高抵抗半導電テープが電界緩和層6として、低抵抗層5の端部を覆うように巻回される。 [0037]表面電位分布計測装置70は、固定子コイルエンド8に施された電界緩和システム3の表面電位を計測する。なお、本実施形態では、単独の固定子コイル導体1の電界緩和システム3を測定対象として説明する。」 「[0038]表面電位分布計測装置70は、計測装置本体10(図2参照)、演算装置20および保持搭載部30を備える。 [0039]計測装置本体10は、半導体レーザ発生器(以下、レーザ光源と称する)13、偏光ビームスプリッタ(以下、PBSと称する)15、ポッケルス結晶11、誘電体ミラー(以下、ミラーと称する)14、光検出器16を有する。 [0040]レーザ光源13は、電界緩和システム3の長手方向(y方向)に垂直な入射方向(x方向)に向かって、レーザ光を出射する。そのレーザ光は、その波長が532.0nmであり、最大出力が10mWであり、口径が0.34mmである。ここではレーザ光の波長を、532.0nmとしているが、ポッケルス結晶11内や光学部品内を大きく減衰することなく伝搬できればこれと異なる波長でもよい。 [0041]レーザ光は直線偏光であり、その直線偏光の偏波面は、入射方向(x方向)および電界緩和システム3の長手方向(y方向)に垂直な方向(z方向)に対して平行である。 [0042]PBS15は、上記直線偏光だけを通過させる。PBS15は、レーザ光源13から出射されたレーザ光を入射方向(x方向)に向かって通過させる。 [0043]ポッケルス結晶11は、その軸方向が入射方向(x方向)に平行になるように配置され、レーザ光源13およびPBS15とともに入射方向(x方向)に並べて配置されている。 [0044]ポッケルス結晶11は、第1の端面11aと第2の端面11bとの間で第1の端面11aから第2の端面11bに向かって軸方向(x方向)に延びている。また、ポッケルス結晶11の軸方向に沿って、軸方向に垂直な断面(横断面)の大きさが変化するように形成されている。 [0045]本実施形態では、ポッケルス結晶11は、軸方向に垂直な断面の形状は正方形であり、x方向に沿って正方形の辺の長さが直線的に減少する。 [0046]また、軸方向に延びたポッケルス結晶11の4つの側面のうち隣接する2つの側面は軸方向に平行な面であり、残る2つの面は軸方向に対して傾斜している。 [0047]ポッケルス結晶11の第1の端面11aは接地されているか、または、ポッケルス結晶11の第1の端面11aは電源装置により0[V]になっている。 [0048]PBS15からのレーザ光は、ポッケルス結晶11の第1の端面11aに入射され、ポッケルス結晶11の第1の端面11aに交わらない第2の端面11bに向かう。 [0049]ミラー14の表面は、ポッケルス結晶11の第2の端面11bに設けられている。ミラー14の裏面であるポッケルス結晶11の第2の端面11bは電界緩和システム3の周囲の電磁場の影響を受けて電圧が印加された状態になっている。 [0050]ミラー14の裏面は、試験箇所すなわち電界緩和システム3の試験対象部分に対して所定距離だけ離れて設けられる。この所定距離は、電界緩和システム3表面の樹脂の凹凸の程度、空間分解能等を考慮して設定される。 [0051]ミラー14は、ポッケルス結晶11の第1の端面11aから入射されたレーザ光を入射方向(x方向)とは反対方向に反射する。 [0052]ポッケルス結晶11は、「結晶点群3m」に属する圧電性のある等方性結晶であり、ポッケルス効果を発生させる。ポッケルス効果とは、誘電体の等方性結晶が電場に置かれたとき、あるいは電圧をかけられたときに複屈折性を示す現象である。 [0053]すなわち、かかった電圧に依存して屈折率が変化するものである。この結果として光強度が変化する。ポッケルス結晶11としては、BGO(たとえばBi12GeO20)結晶などが例示される。 [0054]ポッケルス結晶は、結晶方位と入射光の伝搬方向との成す向きにより、外部電場の光の伝搬方向と平行もしくは垂直な成分に対して感度を持たせることができる。前者は縦型変調、後者は横型変調と呼ばれる。 [0055]「結晶点群3m」に属するポッケルス結晶は縦型変調配置が行える結晶であり、縦型変調配置とした場合、光強度は、外部電場の光路に平行な成分の積分値、即ち電圧に比例して変化する。 [0056]ミラー14により反射されたレーザ光の光強度は、ポッケルス結晶11の第1の端面11aと第2の端面11bとの間の電位差である出力電圧VPoutに対応する。 [0057]PBS15は、ミラー14により反射されたレーザ光を長手方向y(本実施形態では長手方向yとは反対方向)に通過させる。 [0058]光検出器16は、インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有している。その光検出器16は、PBS15に対して長手方向y(本実施形態では長手方向yとは反対方向)に配置されている。光検出器16にはPBS15からのレーザ光が入射される。光検出器16は、そのレーザ光の光強度として、検出光強度Poutを検出する。 [0059]検出光強度Poutは、ポッケルス結晶11の第1の端面11aと第2の端面11bとの間の電位差である出力電圧VPoutに対応する。その検出光強度Poutは、出力電圧VPoutの余弦関数として下式のように表される。 [0060]Pout=(Pin/2)×{1-cos(π(VPout/Vπ)-θ0)} 上記余弦関数において、Pinはポッケルス結晶11の入射光強度であり、Vπは半波長電圧であり、θ0は波長板によって与える位相差(任意)である。本実施形態では、検出光強度Poutにより、上記余弦関数の逆関数からポッケルス結晶11の出力電圧VPoutを求めている。 [0061]ポッケルス結晶11は、たとえば100mm長と比較的長い結晶を用いているため、ポッケルス結晶11を近づけることによる誘電体表面の電界分布の乱れは小さい。そのため、ポッケルス結晶11の出力電圧VPoutは、測定対象である電界緩和システム3の表面電位に比例する。」 「[0065]保持搭載部30は、保護部31、筐体32、軸方向移動部35および軸方向移動部35を駆動する軸方向駆動部35a、長手方向移動部36および長手方向移動部36を駆動する長手方向駆動部36a、軸方向駆動部35aおよび長手方向駆動部36aを制御する駆動制御部37を有する。 [0066]保護部31は、ポッケルス結晶11を保護するために設けられている。保護部31は、ポッケルス結晶11の1つの傾斜面と同じ傾斜度であって軸方向に沿って逆方向に形成された側面を有しており、保護部31のこの側面は、ポッケルス結晶11の傾斜面に密着、固定されている。 [0067]保護部31の電界緩和システム3側の先端は、ポッケルス結晶11の第2の端面11bおよびミラー14よりも突出するように保護部31とポッケルス結晶11との相対的位置が設定されている。このため、ポッケルス結晶11の第2の端面11bのミラー14が電界緩和システム3に到達する前に保護部31の先端が電界緩和システム3に到達し、ポッケルス結晶11が計測対象である電界緩和システム3に触れることがない。 [0068]なお、保護部31の電界緩和システム3側の先端には、先端切り欠き部31aが形成されている。これは、ポッケルス結晶11の第2の端面11bに誘電体が近づくと電界を乱すことから、先端切り欠き部31aを形成することによって、保護部31の先端とポッケルス結晶11の第2の端面11bとが隣接せず離れるようにするためである。 [0069]ポッケルス結晶11、PBS15および保護部31は筐体32内に取り付けられている。 [0070]筐体32は、軸方向移動部35上に搭載されている。軸方向移動部35は軸方向駆動部35aによって駆動されて軸方向(x方向)を前後する。 [0071]また、軸方向移動部35は、長手方向移動部36上に搭載されている。長手方向移動部36は長手方向駆動部36aによって駆動されて、長手方向(y方向)を前後する。 [0072]軸方向駆動部35aおよび長手方向駆動部36aは、駆動制御部37からの指令によって駆動を行う。また、軸方向駆動部35aおよび長手方向駆動部36aは、それぞれの走行方向と走行距離の情報を駆動制御部37に出力する。」 「[0087]次に、固定子コイルエンド8の両端部の電界緩和システム3の表面を順次測定するように、表面電位分布計測装置70のポッケルス結晶11の位置を選定し、駆動制御部37によって制御する(ステップS22;試験箇所配置処理)。 [0088]具体的には、駆動制御部37において、軸方向移動部35および長手方向移動部36の必要移動距離を演算し、軸方向駆動部35aおよび長手方向駆動部36aのそれぞれにそれぞれ駆動すべき距離指令を出力することにより、必要位置にポッケルス結晶11を移動させる。」 「[0102][第2の実施形態]図5は、第2の実施形態に係る表面電位分布計測装置のポッケルス結晶を含む本体部分の長手方向の平断面図である。本実施形態は、第1の実施形態の変形である。 [0103]本実施形態においては、保護部31にギャップセンサ41が設けられている。ギャップセンサ41は、当該ギャップセンサ41と計測対象である電界緩和システム3との間隔を計測して、その間隔を駆動制御部37に出力する。 [0104]駆動制御部37は、ギャップセンサ41からのギャップ出力が所定の目標値となるように、軸方向駆動部35aを制御する。ここで、目標値は、ポッケルス結晶11と電界緩和システム3との間隙寸法を望ましい寸法とするような値に設定される。 [0105]以上のような本実施形態によれば、電界緩和システム3の長手方向に沿っての計測において、仮に長手方向移動部36の移動方向が電界緩和システム3の長手方向に平行に設定されていない場合でも、軸方向駆動部35aがギャップセンサ41からのギャップ出力が一定となるようにポッケルス結晶11と電界緩和システム3との間隔を制御する。 [0106]すなわち、ポッケルス結晶11は、電界緩和システム3に沿って移動する際には、電界緩和システム3と平行に移動する。」 「[0124][第5の実施形態]図8は、第5の実施形態に係る表面電位分布計測装置の構成を含む固定子の立断面図である。 [0125]本実施形態は、第1の実施形態の変形である。本実施形態は、それぞれの固定子コイル導体1の単独の試験の場合だけではなく、固定子2の各スロットに固定子コイル導体1が組み込まれ、結線された状態で計測を行う場合を示している。 [0126]固定子2は、固定子コア7と固定子コイルを備え円筒形状である。固定子コア7の内周面に沿って周方向に所定間隔をあけて複数のスロットが軸方向に延びて形成されている。 [0127]それぞれのスロット内には、固定子コイル導体1である型巻コイルが収納され、固定子コア7の外で型巻コイル同士が結線されている。また、固定子2は、固定子組立架台2a上に搭載されている。 [0128]図示しない回転子は固定子2内には組み込まれておらず、固定子2の内部は中空の状態である。 [0129]本実施形態における表面電位分布計測装置70は、この状態において固定子コイル導体1に電圧が印加されたときの電界緩和システム3の表面電位分布を計測する。 [0130]本実施形態における表面電位分布計測装置70は、計測装置本体10、演算装置20および保持搭載部30に加えて、支持台61、支持軸62および回転駆動部63をさらに有する。なお、演算装置20および駆動制御部37は図示を省略している。 [0131]支持軸62は、両端を支持台61に支持されて固定子2内の空間を貫通するように設置されている。支持軸62は、回転駆動部63により回転駆動される。 [0132]支持軸62は保持搭載部30を支持している。すなわち、支持軸62は、長手方向駆動部36aの取り付けられた長手方向移動部36を支持している。長手方向移動部36は、軸方向駆動部35aの取り付けられた軸方向移動部35を支持している。軸方向移動部35は計測装置本体10を支持している。 [0133]保持搭載部30は、支持軸62に支持され、軸方向駆動部64に駆動されて支持軸62の軸方向に沿って移動可能である。なお、本実施形態では移動可能としたが移動可能に限定されない。たとえば、両側の固定子端部に対応する支持軸62の軸方向位置に取り付け、取り外しが可能であってもよい。 [0134]以上のように構成された本実施形態においては、支持軸62上であって、両側の固定子端部に対応する位置に保持搭載部30を取り付けることによって、固定子内面の全周に保持搭載部30を近接させることができる。 [0135]保持搭載部30に取り付けられた計測装置本体10は、保持搭載部30の動きによって、ポッケルス結晶11の先端が、電界緩和システム3と適切な間隙を保ちながらそれぞれの位置での計測を行うことができる。 [0136]以上のように、本実施形態によれば、固定子に組み込まれた状態でも、テーパ付のポッケルス結晶11の健全性を損なうことなく、かつ、精度よくインバータパルス電圧の発生を想定した電界緩和システム3の表面電位を計測することができる。」 「[0137][その他の実施形態]以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。 [0138]たとえば、ポッケルス結晶の形状は断面が正方形の場合であって、辺の長さが軸方向に沿って直線的に減少する場合を示したが、これに限定されない。たとえば、ポッケルス結晶の形状は断面が長方形や多角形であってもよい。また、辺の長さが軸方向に沿って単調に減少するものであればよい。 [0139]また、各実施形態の特徴を組み合わせてもよい。たとえば、第2の実施形態におけるギャップセンサ41によるギャップ計測と、第3の実施形態における移動制限部53とポッケルス結晶把持部51との嵌め合い構造とを組み合わせてもよい。また、第2の実施形態におけるギャップセンサ41によるギャップ計測と、第4の実施形態における保護部55のガイド孔56による移動制限構造とを組み合わせてもよい。 [0140]さらに、これらと、第5の実施形態における固定子2の組立て状態においての固定子2への適用形態とを組み合わせてもよい。 [0141]さらに、これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。」 [図1] [図2] [図5] [図8] 図2、5から、ポッケルス結晶11が、レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びていることが読み取れる。 図1、2、5から、レーザ光源13及び光検出器16が、筐体32に保持されていることが読み取れる。 図8から、支持軸62が、固定子コア7と固定子コイルを備え円筒形状である固定子2の中心軸位置に設置されていることが読み取れる。 図8から、回転駆動部63及び軸方向駆動部64が、支持軸62に取り付けられていることが読み取れる。 [0065]、[0070]?[0072]、図1には、保持搭載部30が、筐体32、軸方向移動部35および軸方向移動部35を駆動する軸方向駆動部35a、長手方向移動部36および長手方向移動部36を駆動する長手方向駆動部36a、軸方向駆動部35aおよび長手方向駆動部36aを制御する駆動制御部37を有していること、[0130]?[0133]、図8には、保持搭載部30が支持軸62に支持され、軸方向駆動部64に駆動されて支持軸62の軸方向に沿って移動可能であり、支持軸62は、回転駆動部63により回転駆動されることが記載されている。 よって、これらの記載から、筐体32は保持搭載部30によりxy方向に移動可能とされ、当該保持搭載部30は支持軸62に回転可能に支持されていることになるから、筐体32を3次元的に移動可能とする駆動装置及び駆動制御部を有していることが読み取れる。 以上を総合すると、上記記載事項及び上記図1、2、5、8の記載からみて、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「回転電機に施される電界緩和システム3の表面電位分布を計測する表面電位分布計測装置であって([0001]、[0022]、[0136]、[図8])、 前記電界緩和システム3に向かって、レーザ光を出射するレーザ光源13と([0040])、 第1の端面11aから第2の端面11bに向かって軸方向(x方向)に延び、かかった電圧に依存して屈折率が変化するポッケルス効果を発生させ、レーザ光が第1の端面11aに入射され第2の端面11bに向かい、前記レーザ光を反射するミラー14が設けられた第2の端面11bが上記電界緩和システム3の試験対象部分に対して所定距離だけ離れて設けられるように配置され、レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びているポッケルス結晶11と([0044]、[0048]?[0053]、[図2]、[図5])、 前記第2の端面11bに設けられて、前記第1の端面11aから入射されたレーザ光を入射方向(x方向)とは反対方向に反射するミラー14と([0049]、[0051])、 インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラー14により反射されたレーザ光が入射され、前記ポッケルス結晶11の第1の端面11aと第2の端面11bとの間の電位差である出力電圧VPoutに対応する検出光強度Poutを検出する光検出器16と([0057]?[0059])、 前記ミラー14が設けられた前記ポッケルス結晶11が取り付けられ、前記レーザ光源13及び前記光検出器16が保持された筐体32と([0069]、[図1]、[図2]、[図5])、 前記筐体を3次元的に移動可能な駆動装置及び駆動制御部と([0065]、[0070]?[0072]、[0130]?[0133]、[図1]、[図8])、 を備え、 前記筐体32内に、ポッケルス結晶11と、ギャップセンサ41が設けられた保持部31が取り付けられ、当該ギャップセンサ41は、ギャップセンサ41と計測対象である電界緩和システム3との間隔を計測して、その間隔を駆動制御部37に出力し、当該駆動制御部37は、ギャップセンサ41からのギャップ出力が所定の目標値となるように軸方向駆動部35aを制御し([0066]、[0069]、[0103]、[0104]、図5)、 前記3次元的に移動可能な駆動装置は、 固定子コア7と固定子コイルを備え円筒形状である固定子2の中心軸位置に、当該固定子2内の空間を貫通するように設置された支持軸62と([0126]、[0131]、[図8])、 前記支持軸62に取り付けられる回転駆動部63及び軸方向駆動部64([図8])と、 前記回転駆動部63及び軸方向駆動部64によって駆動される保持搭載部30に設けられた軸方向駆動部35aと([0132]?[0133]、[図8])、 を有する 表面電位分布計測装置。」 2.引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、整流子片を有する回転電機、例えば直流電動機の電機子コイルの試験装置(以下単に試験装置という)及び試験用ブラシ保持器に関するものである。 【0002】【従来の技術】図8,図9は、例えば(財)日本電機工業会技術資料第113号「直流機の保守基準」(1977年6月制定)第28頁に記載された従来の直流機の試験装置を示すものであり、図8は電機子の構成図、図9は試験装置の構成図である。これらの図において、1は電機子であり、電機子コイル2と整流子3とを有し、整流子3は多数の整流子片4で構成されている。 【0003】5は銅バー電極、6は直流定電流電源であり、直流定電流電源6から銅バー5、整流子片4を介して電機子コイル1に電流が供給される。7は測定電極、8は電圧計であり、隣接する整流子片4間の電圧を測定電極5を介して電圧計8により指示させる。なお、図示を省略しているが、電機子1は支持体であるフレームに軸受を介して回転自在に支持されている。 【0004】次に、上記試験装置を用いて電機子コイルを試験する方法について説明する。直流定電流電源6から銅バー電極5、整流子片4を介して電機子コイル1に所定の電流を流した状態で、隣接する整流子片4相互間の電圧降下を測定電極7を介して電圧計8により測定する。 【0005】よく知られているように電機子コイル2に断線があれば整流子片4相互間の電圧が上昇し、層間短絡が生じていれば整流子片相互間の電圧が降下する。この電圧値によって電機子コイル2の健全性を試験する。なお、この例においては、直流機の保守、点検のために行う試験であり、実機のブラシは全て引き上げた状態で上記試験がなされる。」 【図8】 【図9】 3.引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】【産業上の利用分野】この発明は、マニピュレータのアームを非常停止させるアーム停止制御方法に関する。 【0002】【従来の方法】架空配電線等の高電圧部分の補修作業に用いられるマニピュレータとして、肩部、第一アーム、第二アーム、及びハンドから成る垂直多関節型マニピュレータが開発されている。このマニピュレータは、感電、短絡等の事故防止のため十分な絶縁性能を必要とし、このため第一アームの一部の構成部材を絶縁材料とすると共に、第二アームを全て絶縁材料の構成部材から成る三重管構造としている。 【0003】上記三重管構造の第二アームは、ハンド駆動部を第二アーム後部に設け、この駆動部の3軸駆動力を第二アーム内の中心シャフト、そのシャフト外周に同心状に設けた第一パイプ、第二パイプを介してそれぞれ先端ハンドに伝達するように構成している。電気配線は第一アームから第二アームのハンド駆動部までであり、そこから先には延びていない。中心シャフト、第一、第二パイプ及び最外層の第三パイプはいずれもFRP等の絶縁材で作られ、第二アームから先の部分は電気的に完全に絶縁されている。 【0004】このように第二アームから先は電気的に完全に絶縁されているため、第一アームは通常の構成で、内部には油圧モータや電気配線が施されている。」 「【0009】図1、図2にこの発明の制御方法を実施するマニピュレータの全体を示す。図示のように、このマニピュレータは、取付基部1に取り付けた肩部2と、その先端に取り付けた第一アーム3、第二アーム4、及びハンド5とを備えている。Xは固定ベース部材である。 【0010】肩部2は取付基部1に対してθ_(0 )軸の回りに回転自在に取り付けられ、第一アーム3は肩部2に対してθ_(1 )軸、θ_(2 )軸の回りに回転自在に取り付けられている。 【0011】図3に示すように、θ_(0 )軸は電動モータを用いたθ_(0) 軸駆動用モータ21、θ_(1) 、θ_(2) 軸はラックピニオンをシリンダで駆動する駆動ユニット22、23、θ_(3) 軸はその軸端のスプロケットに巻回された無端チェーンをシリンダで駆動する駆動ユニット24によってそれぞれ回転される。上記シリンダは、それぞれ後で説明するように油圧系内に設けた電気油圧サーボ弁によって制御される。 【0012】第一アーム3は、2枚の平板31、32を平行に設けたものから成り、下端にθ_(3) 軸、上端にθ_(2 )軸を有する。この第一アーム3の平板31、32の間に前記駆動ユニット24が設けられ、又肩部2の第一アーム寄りに前記駆動ユニット23のシリンダが垂直に設けられている。この第一アーム3に直接又はその付近に後で説明する電界検知センサS_(1) ?S_(3) が取り付けられている。 【0013】第二アーム4は、中心シャフト41の外周に第一パイプ軸42、第二パイプ軸43、第三パイプ軸44を同心状に設けたものから成り、第二アーム4の後部に取り付けた3軸駆動部6の駆動力を41、42、43の各軸を介してハンド5へ伝達するように構成されている。この場合、第二アーム4の各軸の構成部材は、この第二アームより先端部を第一アームに対して絶縁するためそれぞれFRP等の絶縁材を用いて形成している。 【0014】ハンド5は、第二アームに対してβ、γ軸の周りに回転自在で、α軸を回転させることによって指を開閉できるように構成されており、これらの3軸は前記3軸駆動部6のモータ(油圧)61、62、63の駆動力を第二アーム4内を通る前記41、42、43の各軸に伝達し、ギヤ機構内の各ギヤ(ベベルギヤ)を介して駆動される。」 【図1】 【図2】 【図3】 第5 対比・判断 1 本願発明1について (1)本願発明1と引用発明の対比 本願発明1と引用発明を対比する。 ア 引用発明の「表面電位分布計測装置」は、測定素子であるポッケルス結晶を備える筐体を3次元的に移動可能とする駆動部を有するものであるから、本願発明1の「3次元表面電位分布計測システム」に相当する。 したがって、引用発明の「回転電機に施される電界緩和システム3の表面電位分布を計測する表面電位分布計測装置」と本願発明1の「回転電機の固定子コイル導体についてその接続部以外の箇所を測定対象として3次元的に形状が変化する前記固定子コイル導体の径方向外側、径方向内側および軸方向外側からその表面電位を計測する3次元表面電位分布計測システム」とは、「表面電位を計測する3次元表面電位分布計測システム」という点で共通する。 イ 引用発明の「前記電界緩和システム3に向かって、レーザ光を出射するレーザ光源13」と本願発明1の「レーザ光を出射するレーザ光源」は、「レーザ光を出射するレーザ光源」という点で共通する。 ウ 引用発明の「ポッケルス結晶11」は、「第1の端面11aから第2の端面11bに向かって軸方向(x方向)に延び」たものであるから、本願発明1の「第1の端面および第2の端面を有」するものに相当する。 引用発明の「かかった電圧に依存して屈折率が変化するポッケルス効果を発生させ」は、本願発明1の「前記第1の端面と前記第2の端面間の電位差の変化により屈折率が変化するポッケルス効果を有し」に相当する。 引用発明の「レーザ光が第1の端面11aに入射され第2の端面11bに向かい、前記レーザ光を反射するミラー14が設けられた第2の端面11bが上記電界緩和システム3の試験対象部分に対して所定距離だけ離れて設けられるように配置された」は、本願発明1の「前記レーザ光源から出射された前記レーザ光が入射する側に前記第1の端面を、前記測定対象側に前記第2の端面を向けるように配され」に相当する。 したがって、引用発明の「第1の端面11aから第2の端面11bに向かって軸方向(x方向)に延び、かかった電圧に依存して屈折率が変化するポッケルス効果を発生させ、レーザ光が第1の端面11aに入射され第2の端面11bに向かい、前記レーザ光を反射するミラー14が設けられた第2の端面11bが上記電界緩和システム3の試験対象部分に対して所定距離だけ離れて設けられるように配置され、レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びているポッケルス結晶11」は、本願発明1の「第1の端面および第2の端面を有し前記第1の端面と前記第2の端面間の電位差の変化により屈折率が変化するポッケルス効果を有し、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光が入射する側に前記第1の端面を、前記測定対象側に前記第2の端面を向けるように配され前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶」に相当する。 エ 引用発明の「前記第2の端面11bに設けられて、前記第1の端面11aから入射されたレーザ光を入射方向(x方向)とは反対方向に反射するミラー14」は、本願発明1の「前記第2の端面に設けられて、前記ポッケルス結晶の前記第1の端面から入射された前記レーザ光を前記入射の方向と反対方向に反射するミラー」に相当する。 オ 引用発明の「インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラー14により反射されたレーザ光が入射され、前記ポッケルス結晶11の第1の端面11aと第2の端面11bとの間の電位差である出力電圧VPoutに対応する検出光強度Poutを検出する光検出器16」は、本願発明1の「インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を受け入れて、前記ポッケルス結晶の前記第1の端面と前記第2の端面との間の電位差に対応する前記レーザ光の光強度を検出する光検出器」に相当する。 カ 引用発明の「筐体32」に保持された「ミラー14が設けられた前記ポッケルス結晶11」、「レーザ光源13」、「光検出器16」が、上記イ?オのように機能するためには、これらの構成の互いの相対的な位置関係は維持されていなければならないことは明らかである。 したがって、引用発明の「前記ミラー14が設けられた前記ポッケルス結晶11が取り付けられ、前記レーザ光源13及び前記光検出器16が保持された筐体32」は、本願発明1の「前記レーザ光源と、前記ポッケルス結晶と、前記ミラーと、前記光検出器との互いの相対的位置関係を維持しながら、前記レーザ光源と、前記ポッケルス結晶と、前記ミラーと、前記光検出器を保持する筐体」に相当する。 キ 引用発明の「前記筐体を3次元的に移動可能な駆動装置及び駆動制御部」は、本願発明1の「前記筐体を3次元的に移動駆動可能な3次元移動駆動装置と、前記3次元移動駆動装置を制御する駆動制御部」に相当する。 ク 引用発明は、ギャップセンサ41と計測対象である電界緩和システム3との間隔を測定し、その間隔が所定の目標値となるように制御するものであり、引用文献1の[0104]には、所定の目標値は、ポッケルス結晶11と電界緩和システム3との間隙寸法を望ましい寸法とするような値であると記載されており、ギャップセンサ41と電界緩和システム3との間隔を制御することで、ポッケルス素子11と電界緩和システム3との間隔が望ましい寸法となるためには、ギャップセンサ41とポッケルス素子11とは一体となって移動可能になっていることは明らかである。また、ギャップセンサ41とポッケルス素子11とは一体となっていることから、ギャップセンサ41と電界緩和システム3との間隔を計測することと、ポッケルス素子11と電界緩和システム3との間隔を計測することとは等価であるものといえる。 したがって、引用発明の「前記筐体32内に、ポッケルス結晶11と、ギャップセンサ41が設けられた保持部31が取り付けられ、当該ギャップセンサ41は、ギャップセンサ41と計測対象である電界緩和システム3との間隔を計測して、その間隔を駆動制御部37に出力し、当該駆動制御部37は、ギャップセンサ41からのギャップ出力が所定の目標値となるように軸方向駆動部35aを制御」することは、本願発明1の「前記筐体は、前記ポッケルス結晶と一体で移動し、前記ポッケルス結晶と前記測定対象の表面との間のギャップを計測するギャップセンサを有し、前記ギャップセンサが出力するギャップ信号は、前記駆動制御部に入力され、前記駆動制御部は、前記ギャップセンサからの信号をフィードバック信号として、この信号値が所定のギャップ値となるように前記3次元移動駆動装置を制御」することに相当する。 ケ 引用発明の「固定子コア7と固定子コイルを備え円筒形状である固定子2の中心軸位置」、「当該固定子2内の空間を貫通するように設置された支持軸62」、「前記支持軸62に取り付けられる回転駆動部63及び軸方向駆動部64」は、それぞれ本願発明1の「固定子鉄心の径方向の中心軸位置」、「外部から静止固定された中心軸」、「前記中心軸に取り付けられて周方向の位置および軸方向の位置を変更する周軸方向駆動部」に相当する。 引用発明の「前記回転駆動部63及び軸方向駆動部64によって駆動される保持搭載部30に設けられた軸方向駆動部35a」は、引用文献1の[図8]からみて、円筒形状である固定子2の径方向の位置を変更するものであるから、本願発明1の「前記周軸方向駆動部に取り付けられて径方向の位置を変更する径方向駆動部」に相当する。 したがって、引用発明の「前記3次元的に移動可能な駆動装置は、固定子コア7と固定子コイルを備え円筒形状である固定子2の中心軸位置に、当該固定子2内の空間を貫通するように設置された支持軸62と、前記支持軸62に取り付けられる回転駆動部63及び軸方向駆動部64と、前記回転駆動部63及び軸方向駆動部64によって駆動される保持搭載部30に設けられた軸方向駆動部35aと、を有する」と本願発明1の「前記3次元移動駆動装置は、固定子鉄心の径方向の中心軸位置に外部から静止固定された中心軸と、前記中心軸に取り付けられて周方向の位置および軸方向の位置を変更する周軸方向駆動部と、前記周軸方向駆動部に取り付けられて径方向の位置を変更する径方向駆動部と、前記径方向駆動部に取り付けられて前記ポッケルス結晶の方向を変更する方向変換用回転駆動部と、を有する」とは、「前記3次元移動駆動装置は、固定子鉄心の径方向の中心軸位置に外部から静止固定された中心軸と、前記中心軸に取り付けられて周方向の位置および軸方向の位置を変更する周軸方向駆動部と、前記周軸方向駆動部に取り付けられて径方向の位置を変更する径方向駆動部と、を有する」という点で共通する。 (2)一致点及び相違点 上記(1)の検討を総合すると、本願発明1と引用発明の両者は、以下の一致点で一致し、以下の相違点において相違する。 <一致点> 表面電位を計測する3次元表面電位分布計測システムであって、 レーザ光を出射するレーザ光源と、 第1の端面および第2の端面を有し前記第1の端面と前記第2の端面間の電位差の変化により屈折率が変化するポッケルス効果を有し、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光が入射する側に前記第1の端面を、前記測定対象側に前記第2の端面を向けるように配され前記レーザ光の伝搬方向に沿って長手方向に延びたポッケルス結晶と、 前記第2の端面に設けられて、前記ポッケルス結晶の前記第1の端面から入射された前記レーザ光を前記入射の方向と反対方向に反射するミラーと、 インバータパルス電圧の高周波成分に追従する帯域を有し、前記ミラーにより反射された前記レーザ光を受け入れて、前記ポッケルス結晶の前記第1の端面と前記第2の端面との間の電位差に対応する前記レーザ光の光強度を検出する光検出器と、 前記レーザ光源と、前記ポッケルス結晶と、前記ミラーと、前記光検出器との互いの相対的位置関係を維持しながら、前記レーザ光源と、前記ポッケルス結晶と、前記ミラーと、前記光検出器を保持する筐体と、 前記筐体を3次元的に移動駆動可能な3次元移動駆動装置と、 前記3次元移動駆動装置を制御する駆動制御部と、 を備え、 前記筐体は、前記ポッケルス結晶と一体で移動し、前記ポッケルス結晶と前記測定対象の表面との間のギャップを計測するギャップセンサを有し、前記ギャップセンサが出力するギャップ信号は、前記駆動制御部に入力され、 前記駆動制御部は、前記ギャップセンサからの信号をフィードバック信号として、この信号値が所定のギャップ値となるように前記3次元移動駆動装置を制御し、 前記3次元移動駆動装置は、 固定子鉄心の径方向の中心軸位置に外部から静止固定された中心軸と、 前記中心軸に取り付けられて周方向の位置および軸方向の位置を変更する周軸方向駆動部と、 前記周軸方向駆動部に取り付けられて径方向の位置を変更する径方向駆動部と、 を有する 3次元表面電位分布計測システム。 <相違点> 3次元表面電位分布計測システムについて、本願発明1では「回転電機の固定子コイル導体についてその接続部以外の箇所を測定対象として3次元的に形状が変化する前記固定子コイル導体の径方向外側、径方向内側および軸方向外側からその表面電位を計測する」ものであり、3次元移動駆動装置が、「径方向駆動部に取り付けられて前記ポッケルス結晶の方向を変更する方向変換用回転駆動部」を有しているのに対して、引用発明では、回転電機に施される電界緩和システムの表面電位分布を計測するもので、固定子コイル導体を測定対象とするものではなく、3次元移動駆動装置は、「径方向駆動部に取り付けられて前記ポッケルス結晶の方向を変更する方向変換用回転駆動部」を有していない点。 (3)相違点についての当審の判断 引用発明は、引用文献1の[0129]?[0136]に記載されているように、測定対象である電界緩和システム3が円筒形状の固定子2に組み込まれた状態でも、固定子コイル導体1に電圧が印加されたときの電界緩和システム3の表面電位分布を計測するため、3次元的に移動可能な駆動装置により、固定子2内面の全周に計測装置本体10が取り付けられた保持搭載部30を近接させるものである。 そうしてみれば、引用発明の電界緩和システム3の表面電位分布を計測する装置を、上記相違点に係る構成である「回転電機の固定子コイル導体についてその接続部以外の箇所を測定対象として3次元的に形状が変化する前記固定子コイル導体の径方向外側、径方向内側および軸方向外側からその表面電位を計測する」ために用いる動機付けを見いだせず、固定子コイル導体の径方向外側、径方向内側および軸方向外側から計測する動機付けがない以上、同じく上記相違点に係る構成である「径方向駆動部に取り付けられて前記ポッケルス結晶の方向を変更する方向変換用回転駆動部」を有するようにすることも同じく動機付けがないといわざるを得ない。 ここで、引用文献2の[0001]?[0005]、図8、9には、直流定電流電源6から銅バー電極5、整流子片4を介して電機子コイル1に所定の電流を流し、隣接する整流子片4相互間の電圧降下を測定電極7を介して電圧計8により測定することで、電機子コイルを試験する装置が記載されているが、引用発明のように、ポッケルス素子の非接触型の電界センサを用いて電界緩和システム3を計測するものではなく、非接触型の表面電位分布計測装置である引用発明に、測定対象が電機子コイル1で接触して電流を流す引用文献2に記載の技術事項を適用することは、当業者であっても容易になし得るものとはいえない。 また、引用文献3の[0001]?[0004]、[0009]?[0014]、図1?3には、電界検知センサS_(1) ?S_(3) が取り付けられている第一アーム3が、肩部2に対してθ_(1 )軸、θ_(2 )軸の回りに回転自在に取り付けられている架空配電線等の高電圧部分の補修作業に用いられるマニピュレータが記載されているが、上記のとおり、引用発明において、測定対象は電界緩和システム3であり、そもそも固定子コイル導体の径方向外側、径方向内側および軸方向外側から計測する動機付けがないのであるから、引用発明に、引用文献3に記載の上記構成を適用することは、当業者であっても容易に想到し得るものではない。 したがって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 2 本願発明2、3について 本願発明2、3も、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1?3は、当業者が引用発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-01-21 |
出願番号 | 特願2017-566231(P2017-566231) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01R)
P 1 8・ 113- WY (G01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 永井 皓喜 |
特許庁審判長 |
岡田 吉美 |
特許庁審判官 |
濱本 禎広 濱野 隆 |
発明の名称 | 3次元表面電位分布計測システム |
代理人 | 特許業務法人サクラ国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人サクラ国際特許事務所 |