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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1370622
審判番号 不服2020-817  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-21 
確定日 2021-02-16 
事件の表示 特願2016-510093「装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開、WO2015/146285、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)2月2日(優先権主張 平成26年3月25日)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 1月17日 手続補正書の提出
平成31年 3月 4付け 拒絶理由通知書
令和 元年 5月10日 意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月25日付け 拒絶査定
令和 2年 1月21日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提

令和 2年 9月16日付け 拒絶理由通知書(当審、最後)
令和 2年11月11日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月25日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1ないし26に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.国際公開第2010/126105号
2.特表2012-520633号公報
3.国際公開第2010/140347号
4.国際公開第2009/054086号

第3 当審拒絶理由の概要及び当審拒絶理由についての判断
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

1 理由1(サポート要件)、理由2(明確性)について
(1) 請求項1の「前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信に興味があることを示すメッセージ」との記載について、「MBMSの受信に興味がある」ことの主体(主語)が何なのか不明である。また、請求項1の上記記載について、「興味があること」という記載は不明瞭であり、どのようなメッセージが「興味があること」を示すメッセージに含まれ、どのようなメッセージが「興味があること」を示すメッセージに含まれないのかを明確に特定することができないから、請求項1に係る発明の技術的範囲を不明確なものとしている。(明確性)
更に、請求項1の「前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信に興味があることを示すメッセージ」と、本願の発明の詳細な説明の記載との対応関係が不明確である。(サポート要件)
また、請求項10,11及び請求項1を引用する請求項についても同様である。

(2) 請求項4の「前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージ」と、請求項1の「前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信に興味があることを示すメッセージ」が、同一のメッセージのことを特定しているのか、あるいはそれぞれ別々のメッセージのことを特定しているのか不明確である。また、請求項4の「前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージ」と、請求項1の「前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信に興味があることを示すメッセージ」が、それぞれ別々のメッセージのことを特定しているのであれば、具体的にどのような点で異なるメッセージであるのか不明確である。(明確性)
また、請求項4を引用する請求項についても同様である。

上記拒絶理由について検討すると、令和2年11月11日にされた手続補正により、当該補正前の請求項1,10及び11の「興味があること」との記載は,請求項1,9及び10において「優先すること」と補正されたことから、拒絶理由(1)は解消された。
また、令和2年11月11日にされた手続補正により、請求項4は削除されたことから、拒絶理由(2)は解消された。

第4 本願発明について
本願請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、令和2年11月11日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし10は以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
端末装置のためのアップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCとしてマクロセルのアップリンクCC(Component Carrier)及びダウンリンクCCを使用する前記端末装置により報告される測定結果を取得する取得部と、
前記測定結果に基づいて、前記アップリンクPCC及び前記ダウンリンクPCCの少なくとも一方を変更するハンドオーバを決定する制御部と、
を備え、
前記制御部は、所定の条件が満たされる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定し、
前記所定の条件は、前記端末装置により前記マクロセルの基地局へ所定のメッセージが送信されることを含み、
前記マクロセルは、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Services)サービスが提供されないセルであり、
前記スモールセルは、MBMSサービスが提供されるセルであり、
前記制御部は、前記所定のメッセージに、前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージが含まれる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定する、
装置。
【請求項2】
前記所定のメッセージは、前記端末装置のモビリティが低いことを示すメッセージを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記所定のメッセージは、前記端末装置が低消費電力を好むことを示すメッセージを含む、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを変更する前記ハンドオーバの実行後に、前記端末装置との無線通信のために前記マクロセルの前記ダウンリンクCCを使用しない、請求項1?3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを変更する前記ハンドオーバの実行後に、前記端末装置との無線通信のために前記マクロセルの前記ダウンリンクCCを前記端末装置のためのダウンリンクSCC(Secondary Component Carrier)として使用する、請求項1?3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを変更する前記ハンドオーバの実行のためのメッセージの、前記端末装置への送信を制御する、請求項1?5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記メッセージは、RRC(Radio Resource Control)コネクションリコンフィギュレーションメッセージである、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置は、前記マクロセルの基地局、当該基地局のための基地局装置、又は当該基地局装置のためのモジュールである、請求項1?7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
端末装置のためのアップリンクPCC及びダウンリンクPCCとしてマクロセルのアップリンクCC及びダウンリンクCCを使用する前記端末装置により報告される測定結果を取得することと、
プロセッサにより、前記測定結果に基づいて、前記アップリンクPCC及び前記ダウンリンクPCCの少なくとも一方を変更するハンドオーバを決定することと、
を含み、
前記ハンドオーバを決定することは、所定の条件が満たされる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定することを含み、
前記所定の条件は、前記端末装置により前記マクロセルの基地局へ所定のメッセージが送信されることを含み、
前記マクロセルは、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Services)サービスが提供されないセルであり、
前記スモールセルは、MBMSサービスが提供されるセルであり、
前記ハンドオーバを決定することは、前記所定のメッセージに、前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージが含まれる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定する、
方法。
【請求項10】
端末装置のためのアップリンクPCC及びダウンリンクPCCとしてマクロセルのアップリンクCC及びダウンリンクCCを使用する前記端末装置により報告される測定結果を取得することと、
前記測定結果に基づいて、前記アップリンクPCC及び前記ダウンリンクPCCの少なくとも一方を変更するハンドオーバを決定することと、
をプロセッサに実行させ、
前記ハンドオーバを決定することは、所定の条件が満たされる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定することを含み、
前記所定の条件は、前記端末装置により前記マクロセルの基地局へ所定のメッセージが送信されることを含み、
前記マクロセルは、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Services)サービスが提供されないセルであり、
前記スモールセルは、MBMSサービスが提供されるセルであり、
前記ハンドオーバを決定することは、前記所定のメッセージに、前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージが含まれる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定する、
プログラム。」

第5 引用発明について
1.引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2010/126105号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「[0022] 図1に示すように、本実施形態に係る移動通信システムでは、2GHz帯(第1周波数帯域)内のキャリアが用いられるセル1(第1通信エリア)と3.5GHz帯(第2周波数帯域)内のキャリアが用いられるセル2(第2通信エリア)とが少なくとも一部で地理的に重複している。
[0023] ここで、セル1は、セル2と比べて、低い周波数が使用され、カバーエリアは広いが、使用する周波数帯域幅が小さく、スループットが小さい。[0024] 一方、セル2は、セル1と比べて、高い周波数が使用され、カバーエリアは狭いが、使用する周波数帯域幅が大きく、スループットは大きい。
(略)
[0030] なお、LTE-Advanced方式が適用される場合には、「キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation)」が適用されてもよい。すなわち、上りリンク又は下りリンクにおいて、「Component Carrier(コンポーネントキャリア)」を複数用いた通信が行われる。」

(2)「[0045] 図2に示すように、無線基地局eNBは、報知情報送信部11と、取得部12と、判定部12Aと、決定部13と、制御信号送信部14とを具備している。
(略)
[0065] 例えば、無線基地局eNBは、ハンドオーバ(HO:Handover)を行う移動局UEに対して、ハンドオーバ先の無線基地局eNBにおける上記情報を通知する。この場合、移動局UEは、ハンドオーバ先で、新たにHO先の無線基地局eNBの報知情報を読み直す必要がないため、ハンドオーバにおけるInterruption timeを低減することが可能となる。
(略)
[0067] 取得部12は、移動局UEが2GHz帯内のキャリア及び3.5GHz帯内のキャリアを用いて上りリンクの信号を送信するキャリアアグリゲーションを行うべきであるか否かについて判定するための判定情報を取得するように構成されている。
(略)
[0070] 或いは、例えば、取得部12は、判定情報として、移動局UEからRRCメッセージにより報告された測定結果を取得するように構成されていてもよいし、判定情報として、移動局UEからMeasurement Reportにより報告された測定結果を取得するように構成されていてもよい。」
(略)
[0097] 決定部13は、判定部12Aによる判定結果に基づいて、制御信号を送信するキャリア、すなわち、「アンカーキャリア」を決定するように構成されている。ここで、アンカーキャリアは、メインキャリア或いはプライマリキャリアと呼ばれてもよい。」

(3)「[図1]




(4)「[図2]



上記記載及び当業者における技術常識からみて、
a.上記(1)の段落22の「移動通信システム」、段落23の「セル1は、セル2と比べて、・・・カバーエリアは広い」、及び、段落24の「セル2は、セル1と比べて、・・・カバーエリアは狭い」という記載から、図1の移動通信システムはカバレッジの広いセル1とカバレッジの狭いセル2からなる移動通信システムであるといえる。
また、上記(1)の段落30の「「キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation)」が適用されてもよい。すなわち、上りリンク又は下りリンクにおいて、「Component Carrier(コンポーネントキャリア)」を複数用いた通信が行われる。」という記載から、上りリンクや下りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアでキャリアアグリゲーションを行う移動通信システムであるといえる。
よって、引用例1の移動通信システムは、カバレッジの広いセル1とカバレッジの狭いセル2からなり、上りリンクや下りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアでキャリアアグリゲーションを行う移動通信システムといえる。

b.上記(2)の段落45の「無線基地局eNBは、報知情報送信部11と、取得部12と、判定部12Aと、決定部13と、制御信号送信部14とを具備している。」、及び、上記(2)の段落70の「取得部12は、・・・移動局UEからMeasurement Reportにより報告された測定結果を取得するように構成されていてもよい。」という記載から、無線基地局eNBは移動局UEからMeasurement Reportにより測定結果を取得する取得部を備えている。

c.上記(2)の段落65の「無線基地局eNBは、ハンドオーバ(HO:Handover)を行う移動局UEに対して、ハンドオーバ先の無線基地局eNBにおける上記情報を通知する。」という記載から、無線基地局eNBはハンドオーバを決定するといえる。

d.上記(2)の段落45の「無線基地局eNBは、報知情報送信部11と、取得部12と、判定部12Aと、決定部13と、制御信号送信部14とを具備している。」、及び、上記(2)の段落97の「決定部13は、・・・「アンカーキャリア」を決定するように構成されている。ここで、アンカーキャリアは、・・・プライマリキャリアと呼ばれてもよい。」という記載から、無線基地局eNBはプライマリキャリアを設定するといえる。そして、上記(1)の段落30の「「キャリアアグリゲーション(Carrier Aggregation)」が適用されてもよい。すなわち、上りリンク又は下りリンクにおいて、「Component Carrier(コンポーネントキャリア)」を複数用いた通信が行われる。」と記載されていることから、アンカーキャリアはコンポーネントキャリアの1つであることは明らかである。よって、無線基地局eNBはコンポーネントキャリアにプライマリキャリアを設定するといえる。

以上を総合すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「カバレッジの広いセル1とカバレッジの狭いセル2からなり、上りリンクや下りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアでキャリアアグリゲーションを行う移動通信システムの無線基地局eNBは、
移動局UEからMeasurement Reportにより測定結果を取得する取得部を備え、
ハンドオーバを決定し、
コンポーネントキャリアにプライマリキャリアを設定する、
無線基地局eNB。」

2.引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された特表2012-520633号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

(1)「【要約】
マルチキャリア無線通信に対する搬送波割当ておよび構成の一部として、単一のUL(アップリンク)主搬送波は、複数の同時DL(ダウンリンク)搬送波に関する制御情報を提供することができる。任意選択で、それぞれのDL搬送波に関する制御情報は対のUL搬送波を介して送信され得る。主搬送波およびアンカー搬送波を含む、UL搬送波および/またはDL搬送波の搬送波の切替えは、通常の動作中またはハンドオーバ中に行うことができ、UL方向のみまたはDL方向のみで行うことができる。UL搬送波のみまたはDL搬送波のみがハンドオーバの一部として切り替えられるとき、単一方向ハンドオーバが実行される。UL搬送波および/またはDL搬送波の切替えは、1つのコンポーネントキャリアまたは搬送波のサブセットから別のコンポーネントキャリア、搬送波の別のサブセット、または同じ方向における全ての搬送波へであってもよい。」

(2)「【0050】
図13A、図13B、図14Aおよび図14Bは、単一方向ハンドオーバと呼ばれる、1つのeNBから別のeNBへの搬送波の切替えの例を示す。図13Aおよび図13Bでは、DL搬送波1310_(A)、1310_(B)、および1310_(C)並びにUL搬送波1312_(A)、1312_(B)、および1312_(C)は、eNB1302とWTRU1306との間で構成されている。また、DL搬送波1310_(D)は、eNB1304とWTRU1306との間で構成されている。DL搬送波1310_(A)、1310_(B)、1310_(C)、および1310_(D)並びにUL搬送波1312_(A)、1312_(B)、および1312_(C)は、アンカー搬送波、主搬送波および非アンカー搬送波を含み得る。図13Aおよび図13Bでは、伝送は、現在構成され起動されており、有効なDLスケジューリング割当てまたはULグラントを有する任意の搬送波1310_(A)、1310_(B)、1310_(C)、1310_(D)、1312_(A)、1312_(B)、および1312_(C)上に存在する。図13Aでは、網かけで示されているように、DL主搬送波またはアンカー搬送波はDL搬送波1310_(A)上で構成され、UL主搬送波またはアンカー搬送波はUL搬送波1312_(C)上で構成されている。図13Bでは、以前はDL搬送波1310_(A)上に存在していたDL主搬送波は、単一方向ハンドオーバの一部として、eNB1304上の構成されたDL搬送波1310_(D)に切り替えられる。例えば、DL主搬送波またはアンカー搬送波1310_(A)は、新しいeNB1304上の新しいDL主搬送波またはアンカー搬送波1310_(D)に切り替えられ得る。UL搬送波が切り替えられたときにDL搬送波が切り替えられ得ないように、ULおよびDLにおける切替えは独立して、または単一方向で行われ得る。」

(3)「【図13A】



(4)「【図13B】



以上を総合すると、引用例2には、次の技術的事項(以下、「技術的事項2」という。)が記載されていると認められる。

「マルチキャリア無線通信において、単一方向ハンドオーバとして、ULアンカー搬送波を切り替えず、DLアンカー搬送波の切替えのみを行う。」

3.引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2010/140347号(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「[0105] 上述の動作シーケンス例に加え、端末局装置10の電池残量によりキャリアアグリゲーションするコンポーネントキャリア数を制御するようにしてもよい。この場合には、端末局装置10の制御部15から基地局装置20に電池残量を通知する必要がある。基地局装置20のアンカーC/CC判定部264は通知された電池残量により、キャリアアグリゲーション数を決定する。例えば、電池容量が、予め決められた設定値よりも小さい(電池残量が少ない)ときには、品質測定指示を不実施にして端末局装置10に通知することにより、通知された端末局装置10は現在使用しているアンカーキャリアのみで下りリンクの通信をする。このことにより、端末局装置10は、消費電流を抑えながら通信することが可能になる。また、電池残量が中程度であれば、アグリゲーション数を2に絞るなど、電池残量を多段階に分けて、アグリゲーション数を、各段階に応じた最大値より小さくするなどの細かい制御を行なってもよい。また、ユーザ自身によるマニュアル指示により、設定されたアグリゲーション数となるように制御してもよい。この場合には通信速度は落ちるが、消費電流を抑えながらの通信が可能となる。」

以上を総合すると、引用例3には、次の技術的事項(以下、「技術的事項3」という。)が記載されていると認められる。

「端末局装置から基地局装置に電池残量を通知する。」

4.引用例4について
原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2009/054086号(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)

「[0088] また、MBMSには、そのセルのみにデータを送信するシングルセル送信と、複数のセルに同時にデータを送信することにより携帯端末1側で合成利得を得るMBSFN送信がある。一般的に、MBSFN送信の方が性能が高いので、携帯電話ネットワークとWLANの両方でMBMSを提供している場合には、MBSFNを用いているセルが選択されやすいように、パラメータを決定してもよい。」

以上を総合すると、引用例4には、次の技術的事項(以下、「技術的事項4」という。)が記載されていると認められる。

「MBMSには、そのセルのみにデータを送信するシングルセル送信と、複数のセルに同時にデータを送信することにより携帯端末1側で合成利得を得るMBSFN送信がある。」

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、次のことがいえる。
a.引用発明1の「無線基地局eNB」は装置であるから、本願発明1の「装置」に含まれる。また、引用発明1の「移動局UE」は本願発明1の「端末装置」に相当する。

b.引用発明1のコンポーネントキャリアは、無線基地局eNBと移動局UEの間のキャリアであるから、端末装置のためのコンポーネントキャリアといえる。
また、引用発明1では「上りリンクや下りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアでキャリアアグリゲーションを行う」及び「コンポーネントキャリアにプライマリキャリアを設定する」ことから、引用発明1のコンポーネントキャリアについては、上りリンクプライマリキャリアと下りリンクプライマリキャリアが移動局UEで使用されるといえる。
そして、引用発明1のコンポーネントキャリアはCC(Component Carrier)であるから、引用発明1の「上りリンクプライマリキャリア」、「下りリンクプライマリキャリア」はそれぞれ、本願発明1の「アップリンクPCC(Primary Component Carrier)」、「ダウンリンクPCC」に相当する。
よって、本願発明1の「端末装置のためのアップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCとしてマクロセルのアップリンクCC(Component Carrier)及びダウンリンクCCを使用する前記端末装置」と、引用発明1の「上りリンクや下りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアでキャリアアグリゲーションを行う」ことと「キャリアにプライマリキャリアを設定する」こととは、端末装置が「端末装置のためのアップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCを使用する」点で共通する。

また、引用発明1の「Measurement Report」は移動局UEから無線基地局eNBへの報告といえることから、引用発明1の「移動局UEからMeasurement Reportにより測定結果を取得する取得部」は、本願発明1と同様に、「前記端末装置により報告される測定結果を取得する取得部」といえる。

よって、本願発明1の「端末装置のためのアップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCとしてマクロセルのアップリンクCC(Component Carrier)及びダウンリンクCCを使用する前記端末装置により報告される測定結果を取得する取得部」と、引用発明1の「上りリンクや下りリンクにおいて複数のコンポーネントキャリアでキャリアアグリゲーションを行う」こと、「キャリアにプライマリキャリアを設定する」こと、及び、「移動局UEからMeasurement Reportにより測定結果を取得」することは、「端末装置のためのアップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCを使用する端末装置により報告される測定結果を取得する取得部」である点で共通する。

c.引用発明1の無線基地局eNBでは「ハンドオーバを決定」することから、ハンドオーバを決定する制御部を備えているといえる。
よって、本願発明1の「前記測定結果に基づいて、前記アップリンクPCC及び前記ダウンリンクPCCの少なくとも一方を変更するハンドオーバを決定する制御部」と、引用発明1の「ハンドオーバを決定」することとは、「ハンドオーバを決定する制御部」を備える点で共通する。

d.引用発明1ではカバレッジの広いセル1とカバレッジの狭いセル2からなることから、セル2はスモールセルといえる。
よって、本願発明1の「前記制御部は、所定の条件が満たされる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定し」と、引用発明1の「カバレッジの広いセル1とカバレッジの狭いセル2からなり」とは、「スモールセルを有する」点で共通する。

以上のことから、本願発明1と引用発明1との一致点及び相違点は、次のとおりである。

(一致点)
「 端末装置のためのアップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCを使用する端末装置により報告される測定結果を取得する取得部と、
ハンドオーバを決定する制御部と、
を備え、
スモールセルを有する、
装置。」

(相違点)
1.アップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCに関して、本願発明1では「アップリンクPCC(Primary Component Carrier)及びダウンリンクPCCとしてマクロセルのアップリンクCC(Component Carrier)及びダウンリンクCCを使用する」のに対し、引用発明1では当該発明特定事項が特定されていない点。
2.ハンドオーバについて、本願発明1では「前記測定結果に基づいて、前記アップリンクPCC及び前記ダウンリンクPCCの少なくとも一方を変更する」のに対し、引用発明1では当該発明特定事項が特定されていない点。
3.本願発明1では「前記制御部は、所定の条件が満たされる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定し、
前記所定の条件は、前記端末装置により前記マクロセルの基地局へ所定のメッセージが送信されることを含み、
前記マクロセルは、MBMS(Multimedia Broadcast Multicast Services)サービスが提供されないセルであり、
前記スモールセルは、MBMSサービスが提供されるセルであり、
前記制御部は、前記所定のメッセージに、前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージが含まれる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定する」のに対し、引用発明1では当該発明特定事項が特定されていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討する。
上述の技術的事項4のようにMBMSは本願優先日前において公知の技術的事項であるが、本願発明1の相違点3に関する発明特定事項の一部である「前記制御部は、前記所定のメッセージに、前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージが含まれる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定する」ことは、技術的事項2ないし4では行われておらず、本願優先日前において周知技術でもない。
したがって、上記相違点1及び2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、技術的事項2、技術的事項3及び技術的事項4に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし10について
本願発明2ないし10も、本願発明1の「前記制御部は、前記所定のメッセージに、前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージが含まれる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定する」ことと同様の発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、技術的事項2、技術的事項3及び技術的事項4に基づいて容易に発明をすることができたものとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和2年11月11日にされた手続補正により、補正後の請求項1ないし10には、「前記制御部は、前記所定のメッセージに、前記端末装置がユニキャストの受信よりもMBMSの受信を優先することを示すメッセージが含まれる場合に、前記アップリンクPCCを変更せずに前記ダウンリンクPCCを前記マクロセルの前記ダウンリンクCCから前記マクロセルよりも小さいセルであるスモールセルのダウンリンクCCへ変更するハンドオーバを決定する」こと、又は、それと同様の発明特定事項を備えるものであるが、当該構成は原査定における引用例1ないし4には記載されておらず、本願優先日前における周知技術でもないので、本願発明1ないし10は、当業者であっても、原査定における引用例1、2、3及び4に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-28 
出願番号 特願2016-510093(P2016-510093)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04W)
P 1 8・ 537- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 宮田 繁仁桑江 晃  
特許庁審判長 廣川 浩
特許庁審判官 國分 直樹
中木 努
発明の名称 装置  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

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