• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F01L
管理番号 1370653
審判番号 不服2020-6984  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-22 
確定日 2021-02-17 
事件の表示 特願2016-546336「ローラー式ロッカーアーム」拒絶査定不服審判事件〔平成28年3月10日国際公開、WO2016/035373、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)4月14日(優先権主張平成26年9月2日、日本国)を国際出願日とする出願であって、平成30年12月27日付け(発送日:平成31年1月8日)で拒絶理由が通知され、平成31年3月1日に意見書及び手続補正書が提出され、令和元年8月6日付け(発送日:同年8月13日)で拒絶理由が通知され、令和元年10月8日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年2月21日付け(発送日:同年2月26日)で拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、令和2年5月22日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、その審判の請求と同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要

原査定の概要は、次のとおりである。

(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項1に対して 引用文献1-3
・請求項2-3に対して 引用文献1-5
・請求項4に対して 引用文献等 1-6

<引用文献等一覧>
1.特開2009-30467号公報
2.特開平10-331843号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2004-11748号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2006-194139号公報(周知技術を示す文献)
5.実公平5-15524号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2011-26591号公報」

第3 本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明4」という。)は、令和2年5月22日の手続補正により補正がされた特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
カムの回転動作を吸排気バルブに伝達する機能を備えたローラー式ロッカーアームであって、
当該一対の側壁を含むボディと、
前記一対の側壁に両端部が固定され、かつ直径D1の回転しない金属製のローラー軸と、
前記一対の側壁の間に設けられ、かつ前記ローラー軸の外周面上に摺動可能に取付けられ、かつ直径D1よりも大きい内径D2の一様な内周面および外径D3の一様な外周面を有する内輪ローラーと、
前記一対の側壁の間に設けられ、かつ前記内輪ローラーの外周面上に摺動可能に取付けられ、かつ外径D3よりも大きい内径D4の一様な内周面および外径D5の一様な外周面を有し、かつ当該外周面にカムが当接し、かつ金属製の外輪ローラーとを有し、
前記内輪ローラーの内周面と前記ローラー軸の外周面との間にクリアランスが形成され、前記内輪ローラーの外周面と前記外輪ローラーの内周面との間にクリアランスが形成され、
前記内輪ローラーは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ボリベンゾイミダゾール樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂のいずれかの樹脂材料によって成型されかつ金属材料を含まず、
前記内輪ローラーの内周面と前記ローラー軸の外周面との間に樹脂と金属とのすべり面が形成され、前記内輪ローラーの外周面と前記外輪ローラーの内周面との間に樹脂と金属とのすべり面が形成される、ローラー式ロッカーアーム。
【請求項2】
前記樹脂材料は、炭素繊維、CNT(カーボンナノチューブ)、CNC(カーボンナノコイル)、またはガラス繊維で強化した強化繊維を含む、請求項1に記載のローラー式ロッカーアーム。
【請求項3】
前記強化繊維は、前記内輪ローラーの摺動方向に対して略平行に配置される、請求項2に記載のローラー式ロッカーアーム。
【請求項4】
前記内輪ローラーの外周面および内周面と摺動する相手方の部材の少なくとも一方には、非晶質硬質炭素被膜が形成される、請求項1ないし3いずれか1つに記載のローラー式ロッカーアーム。」

第4 当審の判断
1 引用文献、引用発明等
(1)引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2009-30467号公報(以下「引用文献1」という。)には、「タペットローラ軸受構造」に関して、図面(【図1】及び【図2】を参照。)とともに以下の事項が記載されている(下線は、当審が付与したものである。以下同様。)。

ア「【0016】
まず、図2を参照して、自動車の内燃機関等の可動弁機構1は、軸5に揺動可能に支持されたロッカーアーム2と、ロッカーアーム2の一端に連結され、エンジン内部の吸排気を行う弁3と、ロッカーアーム2の他端の左右一対の支持壁2a,2bの間に配置される支持軸6と、支持軸6に嵌合するタペットローラ軸受11と、カムシャフト(図示省略)に固定され偏心部4aを有するカム4とを備える。
【0017】
上記構成の可動弁機構1は、内燃機関のクランクシャフト(図示省略)の回転がタイミングベルト(図示省略)を経由してカムシャフト(図示省略)に伝達され、カム4を回転させる。そして、カム4の偏心部4aがタペットローラ軸受11に当接したときに、ロッカーアーム2が軸5を中心として揺動して弁3を押し下げる。これにより、内燃機関内の給排気を行うことができる。このとき、タペットローラ軸受11はカム4の回転に伴って回転するので、タペットローラ軸受11とカム4との当接部分のフリクションロスを低減することが可能となる。
【0018】
次に、図1を参照して、上記構成の可動弁機構1に採用されるタペットローラ軸受構造は、支持壁2a,2bに固定された支持軸6と、支持軸6に嵌合する円筒形状の内径側ローラ12、および内径側ローラ12に嵌合する円筒形状の外径側ローラ13を備えるダブルローラタイプのタペットローラ軸受11とを備える。なお、支持軸6と内径側ローラ12の内径面との間、および内径側ローラ12の外径面と外径側ローラ13の内径面との間には所定のラジアル隙間が設けられており、相互に回転可能となっている。また、外径側ローラ13の外径面はカム(図示省略)に当接している。」

イ「【0025】
上記構成のタペットローラ軸受構造において、支持軸6、内径側ローラ12、および外径側ローラ13は、例えば、浸炭窒化処理を施した軸受鋼(SUJ2)によって形成することができる。また、内径側ローラ12の表面には表面処理層12aを形成するのが望ましい。具体的には、リン酸塩化合物層および固体潤滑層のうちの少なくともいずれか一方を形成する。
【0026】
例えば、下地処理としてリン酸塩化合物層を形成する。リン酸塩化合物としては、リン酸マンガンやリン酸亜鉛を採用することができる。これにより、内径側ローラ12の発錆を防止することができる。また、このリン酸塩化合物層は、防錆効果の他に摺動部分の耐摩耗性や潤滑性を向上させるので、内径側ローラ12の回転がスムーズとなる。これにより、耐久性に優れ信頼性の高いタペットローラ軸受構造を得ることができる。
【0027】
さらに、リン酸塩化合物層のさらに外側に固体潤滑層を形成する。固体潤滑層は、二硫化モリブデン(MoS_(2))およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のうちの少なくともいずれか一方を常温硬化性合成樹脂と共に硬化させることによって得ることができる。なお、常温硬化性合成樹脂に代えて熱硬化性合成樹脂を採用することもできるが、潤滑耐久性が高く、処理コストの安価な常温硬化性合成樹脂がより適している。
【0028】
これにより、支持軸6と内径側ローラ12との間、および内径側ローラ12と外径側ローラ13との間の摩耗や焼き付きを有効に防止することができる。この固体潤滑層は、エンジン始動直後等の潤滑油がタペットローラ軸受11に供給される前における接触面の潤滑に特に大きな効果を発揮する。さらに、固体潤滑剤は、液体の潤滑剤と比較して潤滑寿命が極めて長いので、長寿命で信頼性の高いタペットローラ軸受構造を得ることができる。
【0029】
なお、表面処理層12aは内径側ローラ12の表面全域に形成してもよいし、選択的に形成してもよい。例えば、支持軸6に接触する内径面、および外径側ローラ13に接触する外径面に表面処理層12aを形成すれば、この発明の効果を得ることができる。
【0030】
また、潤滑性の観点からは、リン酸塩化合物層を省略して、固体潤滑層のみを形成しても、一定の効果を得ることはできる。ただし、下地としてリン酸塩化合物層を設けることによって、固体潤滑層単体の場合と比較して潤滑性能はさらに向上する。また、リン酸塩化合物層、および/または、固体潤滑層は、内径側ローラ12だけでなく、支持軸6や外径側ローラ13にも形成することができる。」

ウ 段落【0018】の記載及び図1により、内径側ローラ12は、支持軸6の直径よりも大きい内径の一様な内径面および外径の一様な外径面を有し、外径側ローラ13は、内径側ローラ12の外径よりも大きい内径の一様な内径面および外径の一様な外径面を有しているといえる。

上記アないしウに示した事項及び図面の図示内容を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

[引用発明]
「カム4の回転を弁3に伝達する機能を備えたタペットローラ軸受11を備えたロッカーアーム2であって、
当該左右一対の支持壁2a、2bを含むロッカーアーム2と、
前記左右一対の支持壁2a、2b間に配置され、固定された浸炭窒化処理を施した軸受鋼によって形成された支持軸6と、
前記左右一対の支持壁2a、2bの間に設けられ、かつ前記支持軸6外径面上に回転可能に取付けられ、かつ支持軸6の直径よりも大きい内径の一様な内径面および外径の一様な外径面を有する内径側ローラ12と、
前記左右一対の支持壁2a、2bの間に設けられ、かつ前記内径側ローラ12の外周面上に回転可能に取付けられ、かつ内径側ローラ12の外径よりも大きい内径の一様な内径面および外径の一様な外径面を有し、かつ当該外径面にカム4が当接し、かつ浸炭窒化処理を施した軸受鋼によって形成された外径側ローラ13とを有し、
支持軸6と内径側ローラ12の内径面との間、および内径側ローラ12の外径面と外径側ローラ13の内径面との間には所定のラジアル隙間が設けてあり、
内径側ローラ12の表面にリン酸塩化合物層を形成し、さらにリン酸塩化合物のさらに外側に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を常温硬化性合成樹脂と共に硬化させる固体潤滑層を形成させる、タペットローラ軸受11を備えたロッカーアーム2。」

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開平10-3311843号公報(以下「引用文献2」という。)には、「軽量小型軸受」に関して、図面(特に、【図1】を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

エ 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明はラジアル軸受に関し、より詳しくは、自由に回転する円筒状体を備え、比較的軽量・小型・安価で、低速回転の用途に適した軸受に関する。」

オ 「【0011】図1(a)は、本発明に係わる軽量小型軸受10によって回転軸18が支持されている状態を模式的に示すものである。ハウジング部14に収められている軸受部12には回転軸18が貫通している。また、同図(b)に示されるように、軸受部12は外輪15と円筒状体16と内輪17とが同心円状に重なって構成されている。ハウジング部14はボルトやナット等によって機械の架台や壁面等に固定され、外輪15の外周部はハウジング部14に、内輪17の内周部は回転軸18に固定されている。回転軸18が回転すると、円筒状体16は回転軸18と共につれ回りするか、すなわち、外輪15の内面を滑って回転するか、あるいは、外輪15に密着して動かず、内輪17が円筒状体16の内面を滑って回転することになる。
【0012】円筒状体16の外内どちらの面で滑るかは、それぞれの摩擦の大きさにより、摩擦の小さいほうの面で滑り、回転軸18はスムーズに回転できることになる。摩擦の大きさは、円筒状体16の外内両面、外輪15の内面及び内輪17の外面の表面特性、すなわち、材質や形状に左右され、損傷などによる傷の存在等にも影響される。本発明において、円筒状体16の外内両面は易滑性に形成されている。易滑性とは、特に表面が滑り易く加工されていない場合の、回転軸18の表面及びハウジング部14の内面より滑りやすいことを意味する。具体的には、易滑性の材料を用いて製作するか、表面を易滑性に加工するかによって、この特性を備えさせることが出来る。前者の場合、材料は特に限定されないが、プラスチック、特に、ポリテトラフルオロエチレンに代表される各種のフッソ系樹脂、ナイロン66に代表されるポリアミド、ポリエチレンに代表されるポリオレフィン等々が好ましい材料である。あるいは、二硫化モリブデンのような易滑性材料の粉末を混入した易滑性材料を用いることもできる。
【0013】内輪17及び外輪15を用いることの目的は、軸受部12を部品として工場生産可能にすることと、円筒状体16の内面及び外面での滑り易さをコントロールすることにある。軸受部12を工場生産することにより、品質の安定、コストの低減等々の効果が得られるとともに、汎用性の拡大によって、多くの用途への展開が可能となる。ユーザーは、軸受部12を部品として入手しハウジング部14に組み込むことができるので、回転軸18やハウジング部14に対する複雑な加工が不必要になり、全体のコストを大幅に低減できる。
【0014】円筒状体16に関して上述したのと同様の方法により、外輪15の内面及び内輪17の外面の滑り特性を向上させれば、円筒状体16表面との摩擦がさらに小さくなり、回転軸18をいっそうスムーズに回転させることができる。外輪15、内輪17、円筒状体16とが一体化した軸受部12とすれば、ハウジング部14や回転軸18の材質、形状に影響されずに、円筒状体16の外内両表面の滑り易さを使用目的に合わせて適切にコントロールすることができる。特に、外輪15の内面の滑り特性と、内輪17の外面の滑り特性を同程度に合わせれば、円筒状体16の外面での滑りやすさと、内面での滑りやすさとがほぼ同一となって、どちらの面でも同じように滑れるようになるので、滑り面が頻繁に変わることになり、結果として寿命が長くなる効果が得られる。」

上記エ及びオに示した事項及び図面の図示内容を総合し整理すると、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献2記載事項]
「軽量小型軸受において、ハウジング部14と、ハウジング部14に貫通している回転軸18と、外輪15と円筒状体16と内輪17とが同心円状に重なって構成されている軸受部12を備え、回転軸18がスムーズに回転できるように、円筒状体16は回転軸18とつれ回りするか、あるいは、内輪17が円筒状体16の内面を滑って回転するように、円筒状体16の外内両面にポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を用いて易滑性とすること。」

(3)引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された、本願の優先日前に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である、特開2004-11748号公報(以下「引用文献3」という。)には、「すべり軸受」に関して、図面(特に、(【図1】を参照。)とともに以下の事項が記載されている。

カ 「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、外輪と樹脂製の内輪とから成り、この外輪の内周面と内輪の外周面とが互いにすべり合うすべり軸受に関する。」

キ 「【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面に従って具体的に説明する。まず、第一の実施例について図1及び2を用いて説明する。図1に示すように、すべり軸受1は円筒形の外輪2の内周面に円筒形の内輪3を嵌合状態に設けて構成されている。外輪2は金属製(鉄、アルミニウム、及びそれらの合金等)、内輪3は樹脂製(POM:ポリオキシメチレン、PPS:ポリフェニレンサルファイド等)であり、外輪2と内輪3の軸方向における幅は、ほぼ同じである。
【0014】
外輪2の内周面のうち、軸方向中央部には、円周方向に延びる凹条部4が設けられている。また、この凹条部4に対応して、内輪3の外周面のうち、軸方向中央部には、円周方向に延びる凸条部5が設けられている。そして、内輪3の内径において、軸方向両端側は、軸方向中央部より径大になっている。このように、内輪はその内面に、軸方向中央部に位置して内径が径小である内径縮小部(軸との密嵌部)6、軸方向両端側に位置して内径が径大である内径拡大部7を有する。
【0015】
ここで、樹脂製の内輪3は、金属製の外輪2に射出成形したもので、この内輪3は、成形後の収縮により、外輪2に対して回転可能となる。なお、収縮量によって、外輪2と内輪3とのクリアランスを調整することができる。収縮量は、樹脂へのファイバ等の充てん剤の充てん量や、金型温度や、成形圧力や、射出速度を調整することで調整することができる。
【0016】
次に、前述したすべり軸受1の使用形態を説明する。図2に示すように、このすべり軸受1は、その外輪2の外周面が金属製の軸受ハウジング8の内周面に嵌合され、固定される。この軸受ハウジング8に固定されたすべり軸受1の内輪3には、軸9が挿入される。この際、内輪3の軸方向両端側が内径拡大部7となっているので、軸9を内輪3に入れ易くなる。また、内輪3の内径拡大部7内に入れられた軸9は、その後、当該内径拡大部7に導かれ、内輪3の内径縮小部6まで案内されるため内径縮小部6へ嵌め込み易くなる。さらに、内径縮小部6へと軸9を押し込む際、内輪3と軸9とが接触する面(内径縮小部6)の軸方向長さを短くしているため、摩擦抵抗が少なく押し込み易くなる。
【0017】
このようにして、すべり軸受1に軸9が嵌合されると、内輪3と軸9とは一体となって回転し、外輪2の内周面と内輪3の外周面とが摺動する。この際、前述の通り、外輪2の内周面には凹条部4が、内輪3の外周面には凸条部5が設けられており、それらが互いに嵌合されているため、軸9と共に内輪3が回転しても、軸方向にずれたり、外れたりすることがない。また、外輪2と内輪3との摺動面は、外輪2の内周面と内輪3の外周面のほぼ全面と広いため、互いの面圧が低くなり、摺動面の摩耗が少ない。なお、内輪3と軸9とは、必ずしも一体となって回転する必要はなく、場合によっては内輪3に対して軸9が回っても良い。」

上記カ及びキに示した事項及び図面の図示内容を総合し整理すると、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3記載事項」という。)が記載されている。

[引用文献3記載事項]
「すべり軸受において、軸9と一体となって回転する内輪3は樹脂製であり、外輪2に対して回転可能となり、外輪は金属製であること。」

2 対比・判断

(1)本願発明1について
本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「カム4」は、その機能、構成及び技術的意義からみて、本願発明1の「カム」に相当し、以下同様に、「回転」は「回転動作」に、「弁3」は「吸排気バルブ」に、「タペットローラ軸受11を備えたロッカーアーム2」は「ローラー式ロッカーアーム」に、「左右一対の支持壁2a、2b」は「一対の側壁」に、「ロッカーアーム2」は「ボディ」に、「間に配置され、固定された」は「両端部が固定され、かつ直径D1の回転しない」に、「浸炭窒化処理を施した軸受鋼によって形成された支持軸6」は「金属製のローラー軸」に、「支持軸6」は「ローラー軸」に、「外径面」は「外周面」に、「回転可能」は「摺動可能」に、「支持軸6の直径」は「直径D1」に、内径側ローラ12の「内径」は「内径D2」に、「内径面」は「内周面」に、内径側ローラ12の「外径」は「外径D3」に、「内径側ローラ12」は「内輪ローラー」に、外径側ローラ13の「内径」は「内径D4」に、外径側ローラ13の「外径」は「外径D5」に、「浸炭窒化処理を施した軸受鋼によって形成された」は「金属製」に、「外径側ローラ13」は「外輪ローラー」に、それぞれ相当する。
また、引用発明の「支持軸6と内径側ローラ12の内径面との間、および内径側ローラ12の外径面と外径側ローラ13の内径面との間には所定のラジアル隙間が設けてあり」は、それぞれローラ間にクリアランスが形成されていることを示していることから、本願発明1の「前記内輪ローラーの内周面と前記ローラー軸の外周面との間にクリアランスが形成され、前記内輪ローラーの外周面と前記外輪ローラーの内周面との間にクリアランスが形成され」に相当する。
また、引用発明の「内径側ローラ12の表面にリン酸塩化合物層を形成し、さらにリン酸塩化合物のさらに外側に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を常温硬化性合成樹脂と共に硬化させる固体潤滑層を形成」に関して、これによって内径側ローラ12の内径面と支持軸6の外径面との間、及び内径側ローラ12の外径面と外径側ローラ13の内径面との間に、樹脂と金属とのすべり面が形成されることから、本願発明1の「前記内輪ローラーの内周面と前記ローラー軸の外周面との間に樹脂と金属とのすべり面が形成され、前記内輪ローラーの外周面と前記外輪ローラーの内周面との間に樹脂と金属とのすべり面が形成」に相当する。
また、引用発明の「内径側ローラ12の表面にリン酸塩化合物層を形成し、さらにリン酸塩化合物のさらに外側に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を常温硬化性合成樹脂と共に硬化させる固体潤滑層を形成」と、本願発明1の「内輪ローラーは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ボリベンゾイミダゾール樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂のいずれかの樹脂材料によって成型されかつ金属材料を含まず」とは、「内輪ローラの少なくとも一部が樹脂であり」という限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明1と引用発明1とは、次の一致点、相違点がある。

[一致点]
「カムの回転動作を吸排気バルブに伝達する機能を備えたローラー式ロッカーアームであって、
当該一対の側壁を含むボディと、
前記一対の側壁に両端部が固定され、かつ直径D1の回転しない金属製のローラー軸と、
前記一対の側壁の間に設けられ、かつ前記ローラー軸の外周面上に摺動可能に取付けられ、かつ直径D1よりも大きい内径D2の一様な内周面および外径D3の一様な外周面を有する内輪ローラーと、
前記一対の側壁の間に設けられ、かつ前記内輪ローラーの外周面上に摺動可能に取付けられ、かつ外径D3よりも大きい内径D4の一様な内周面および外径D5の一様な外周面を有し、かつ当該外周面にカムが当接し、かつ金属製の外輪ローラーとを有し、
前記内輪ローラーの内周面と前記ローラー軸の外周面との間にクリアランスが形成され、前記内輪ローラーの外周面と前記外輪ローラーの内周面との間にクリアランスが形成され、
内輪ローラーの少なくとも一部が樹脂であり、
前記内輪ローラーの内周面と前記ローラー軸の外周面との間に樹脂と金属とのすべり面が形成され、前記内輪ローラーの外周面と前記外輪ローラーの内周面との間に樹脂と金属とのすべり面が形成される、ローラー式ロッカーアーム。」

[相違点]
「内輪ローラの少なくとも一部は樹脂材料であり」に関して、本願発明1は「内輪ローラーは、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ボリベンゾイミダゾール樹脂、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂のいずれかの樹脂材料によって成型されかつ金属材料を含ま」ないのに対して、引用発明は「内径側ローラ12の表面にリン酸塩化合物層を形成し、さらにリン酸塩化合物のさらに外側に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を常温硬化性合成樹脂と共に硬化させる固体潤滑層を形成」させる点。

相違点について検討する。
上記「1(2)及び(3)」で述べたとおり、引用文献2記載事項は「軽量小型軸受において、ハウジング部14と、ハウジング部14に貫通している回転軸18と、外輪15と円筒状体16と内輪17とが同心円状に重なって構成されている軸受部12を備え、回転軸18がスムーズに回転できるように、円筒状体16は回転軸18とつれ周りするか、あるいは、内輪17が円筒状体16の内面を滑って回転するように、円筒状体16の外内両面にポリテトラフルオロエチレン等の樹脂を用いて易滑性とすること。」であり、引用文献3記載事項は「すべり軸受において、軸9と一体となって回転する内輪3は樹脂製であり、外輪2に対して回転可能となり、外輪は金属製であること。」であって、いずれも、回転しない金属製のローラー軸、内輪ローラー及び金属製の外輪ローラーを有するローラー式ロッカーアームにおいて、樹脂材料によって成型されかつ金属材料を含まない内輪ローラを備える発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。
また、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項は、回転軸を受けるための軸受の機構に関するものであり、引用発明のロッカーアームのような高温、高負荷の環境において使用されるものではないことから、上記樹脂製である内輪を引用発明に適用すべき動機付けもない。

さらに、原査定で提示された他の引用文献4ないし6について検討すると、引用文献4及び5は、ガラス繊維等の強化繊維で樹脂材料を補強する技術事項について開示されたものであり、また、引用文献6は、低摩擦摺動部材に非晶質硬質炭素膜を備えるという技術事項について開示されたものであるから、引用文献4ないし6も、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を開示ないし示唆するものではない。

そして、本願発明1は当該発明特定事項により、従来のころがり式ローラーロッカーアームよりも、エンジンの低回転域から高回転域まで摺動によるフリクションを低減させることができるという格別な作用効果を奏するものである。
したがって、本願発明1は、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、更には、他の引用文献4乃至6に記載されている事項を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2)本願発明2ないし4について

本願の特許請求の範囲における請求項2ないし4は、請求項1の記載を他の記載に置換することなく引用するものであるから、本願発明2ないし4は、本願発明1の発明特定事項を全て含むものである。
したがって、本願発明2ないし4は、本願発明1について述べたものと同様の理由により、引用発明、引用文献2記載事項及び引用文献3記載事項に基いて、更には、他の引用文献4乃至6に記載されている事項を参酌しても、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-25 
出願番号 特願2016-546336(P2016-546336)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 稲村 正義菅野 京一小笠原 恵理村山 禎恒  
特許庁審判長 谷治 和文
特許庁審判官 鈴木 充
北村 英隆
発明の名称 ローラー式ロッカーアーム  
代理人 片寄 恭三  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ