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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B |
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管理番号 | 1370716 |
審判番号 | 不服2019-10977 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-08-20 |
確定日 | 2021-01-27 |
事件の表示 | 特願2017-518269「ワイヤメッシュ加熱体併設電子レンジ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 3月23日国際公開、WO2017/049014、平成29年11月24日国内公表、特表2017-535034〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年9月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2015年9月15日、米国、2016年2月1日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。 平成29年3月29日に手続補正書の提出 平成29年9月29日に手続補正書の提出 平成30年8月1日付けで拒絶理由通知 平成30年11月7日に意見書及び手続補正書の提出 平成31年4月16日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。) 令和元年8月20日に審判請求書及び手続補正書の提出 第2 令和元年8月20日にされた手続補正についての補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 令和元年8月20日にされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 1 本件補正について(補正の内容) (1)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。) 「 【請求項1】 電子レンジ空洞と、 前記電子レンジ空洞に黒体放射による熱を輻射するように配置されたワイヤメッシュ加熱体と、 交流電力線の容量を超える電力を提供する蓄積エネルギー装置と、 マイクロ波を発生するマグネトロンと、 前記ワイヤメッシュ加熱体と電気的に接続された高電力電源と、 前記電子レンジ空洞に配置され、前記ワイヤメッシュ加熱体を電源に電気的に接続する導体と、を備え、 生成されたマイクロ波の一部がワイヤメッシュ加熱体に当たり、 前記高電力電源は、エネルギー伝送の持続時間を変化させること、エネルギー伝送の振幅を変化させること、またはそれらの組み合わせを含む、複数のパルスによって電気エネルギーを供給する ことを特徴とするワイヤメッシュ加熱体併設電子レンジ。」 (2)本件補正前の特許請求の範囲の請求項1の記載 本件補正前の、平成30年11月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲のの請求項1の記載は次のとおりである。 「 【請求項1】 電子レンジ空洞と、 前記電子レンジ空洞に黒体放射による熱を輻射するように配置されたワイヤメッシュ加熱体と、 交流電力線の容量を超える電力を提供する蓄積エネルギー装置と、 マイクロ波を発生するマグネトロンと、 前記電子レンジ空洞に配置され、前記ワイヤメッシュ加熱体を電源に電気的に接続する導体と、を備え、 生成されたマイクロ波の一部がワイヤメッシュ加熱体に当たる ことを特徴とするワイヤメッシュ加熱体併設電子レンジ。」 2 補正の適否 本件補正は、本件補正前の請求項1における、ワイヤメッシュ加熱体を導体により電気的に接続する「電源」について、「前記ワイヤメッシュ加熱体と電気的に接続された高電力電源」であって、「前記高電力電源は、エネルギー伝送の持続時間を変化させること、エネルギー伝送の振幅を変化させること、またはそれらの組み合わせを含む、複数のパルスによって電気エネルギーを供給する」ものであることを限定するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について、以下検討する。 (1)本件補正発明 本件補正発明は、上記1(1)に記載したとおりのものである。 (2)引用文献 ア 引用文献1 (ア)引用文献1の記載 原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の優先日前に頒布された仏国特許出願公開第2509109号明細書(以下「引用文献1」という。)には、「マイクロ波加熱装置および取り外し可能なグリルを含む他の電気加熱装置を備えた電気オーブン(仏文省略)」に関し、次の記載がある。なお、「・・・」は記載の省略を示し(以下同様。)、翻訳文は当審によるものである。 「 ![]() ・・・ ![]() 」 <訳文:[]内に原文の該当箇所を示す。> 「 本発明は、ロースター庫内で食品を照射および調理するための取り外し可能なグリルを含む、マイクロ波加熱装置および他の電気加熱装置を備えた電気オーブンに関するものであり、オーブンはマイクロ波加熱装置と異なる加熱モードとで同時に調理することができ、さらに、ロースター庫内が金属壁で形成されており、このオーブンは、ロースター庫内の壁の後ろに、ガイドピース、仕切り、およびグリル加熱コイルのプラグのピンが収納されているグリルソケットを含み、プラグのピンは、ロースター庫内の壁に平行に配置された高周波シールドで形成されている。[1頁1行?1頁16行] 本発明は、ドイツ特許出願P 30 47 112.6および出願DE-AS 30 10 231に記載されている先行技術に基づく。ドイツ特許出願P 30 47 112は、マイクロ波加熱装置および他の加熱装置を備えた電気オーブン、側壁が金属のみ、たとえばステンレスシートで作られているオーブンをすでに記載している。このオーブンは、後壁の後ろと仕切りの後ろにグリルソケット用のガイドピースを備えており、加熱コイルのプラグのピン用のこのガイドピースはセラミックで作られている。このオーブンは、加熱コイルのプラグのピンの近くに高周波シールドを備えている。ロースター庫内の放射されたマイクロ波エネルギーの高周波のシールドは、プラグの接点を囲むロースター庫内の金属壁に接触しているグリルの高周波シールドと相補的な形状の接触により、この取り外し可能なグリルで形成されている。たとえばボルト締めによって確実にすることができるこの密接な接触は、ロースター庫内の高周波エネルギーが加熱コイルのプラグのピンのためにこの庫内の壁の開口部を通って出るのを完全に防ぐ。[1頁17行?2頁3行] しかしながら、当該発明による電気オーブンは大量生産品であり、したがって、ロースター庫内からの高周波エネルギーの放出を回避して、可能な限り最も単純で最も安価な方法で生産されなければならない。ステンレス鋼は、錆の形成を防ぎ、これらのシートが長持ちするようにして、このタイプのオーブンの原価を下げるために、たとえば、シンプルで安価な鉄のシートで置き換えられ、次に、ロースター庫内の内側にエナメル層などの保護層がコーティングされる。したがって、高周波シールドを含む、ドイツ特許出願P30 47 112に基づく取り外し可能なグリルを備えた装置一式が、内部に絶縁保護層を含むこのタイプのロースター庫内の壁に設置されている場合、プラグのピン用に意図された、ロースター庫内の後壁の通路を通って、一定量の高周波エネルギーが出てくる可能性がある。これは、保護層自体が特定の厚さを持ち、その絶縁性により、高周波エネルギーのほとんどはこのシールドによって吸収されるが、高周波シールドとオーブンの壁の間の直接的な金属接触が妨げられるためである。[2頁4行?2頁26行] 特許出願DE-AS 30 10 231はまた、マイクロ波加熱装置を備えた電気オーブン用の取り外し可能なグリルを記載しているが、このオーブンでは、その近くのプラグのピン間の高周波シールドは提供されていない。図2、3、4、6および対応する説明文は、次の方法を示している、すなわち、ロースター庫内の壁の通路を通って加熱コイルのプラグのピンに沿って自由に流れる高周波エネルギーは、高周波減衰管および中空シリンダー、ならびに減衰管の端部に配置された接触要素によって消滅する。このオーブンで使用される接触要素は、本質的に弾性があるため、摩耗する。さらに、プラグのピンからロースター庫内の壁を通って出る高周波エネルギーのさまざまな減衰部品の製造と組み立ては、接触要素に(熱に耐えなければならない)弾性材料を使用していることと許容誤差があるため、非常に複雑で費用がかかる。[2頁27行?3頁10行] 特許出願DE-AS 30 10 231による規定で得られる高周波エネルギーの減衰量については、加熱要素と高周波減衰管との間には容量性結合しかないことに注意すべきであり、この種の結合は、高周波エネルギーを減衰させる限定された効果しか有さない。さらに、このドイツ特許出願の図2、3、4および6による高周波減衰管に対する加熱要素の空間内の配置との純粋な容量性結合は、プラグのピンの近くでの高周波漏れ放射の十分な減衰を保証することができない。[3頁11行?3頁23行] したがって、本発明の主題は、マイクロ波加熱装置および他の電気加熱装置を備えた電気オーブンであり、その中に取り外し可能なグリルがあり、このオーブンは大量生産に適しており、シンプルで安価であり、マイクロ波加熱装置および他の異なる種類の加熱によって同時に調理することができる。このオーブンは、特に加熱コイルのプラグのピンによって伝導され、内側に面する側が絶縁層でコーティングされているロースター庫内の壁でこれらのピンの近くに配置された高周波シールドの周りを通過するマイクロ波エネルギーの消滅を可能にし、このオーブンは、電源コンセントの近くで発生するマイクロ波エネルギーを破壊するために機械的変位を受ける摩耗部品なしで製造でき、それどころか、プラグのピンの近くでマイクロ波エネルギーを消滅させるために使用されるさまざまな部品は、それらの大量生産による許容差にもかかわらず、制限なく使用でき、それにもかかわらず、加熱コイルのプラグのピンを通って出るマイクロ波エネルギーは完全に消滅する。[3頁24行?4頁10行] 本発明の本質的な特徴によれば、ガイドピースは金属で作られており、さらに、 このガイドピースを貫通する穴に円筒状の空洞が生成され、グリルのプラグのピン用に充てられており、小型の吸収管は、円筒状の空洞の寸法に一致し、円筒状の空洞に配置されており、これらの高周波吸収管はマイクロ波吸収材料でできており、それぞれが高周波エネルギー用の簡略化された終端抵抗の誘電体を形成しており、これらの抵抗器のそれぞれは、内部導体の機能を担うプラグのピンと、穴の皿穴加工によって構成される空洞の外径によっても形成され、ガイドピースに生成され、これらの空洞は外部導体の機能を果たす。[4頁11行?4頁26行] 本発明によって提供される利点は、特に、ロースター庫内の内面に堆積された断熱保護層でコーティングされた安価な鉄板が使用される本発明による安価なオーブンであっても、加熱コイルのプラグのピンによって伝導され、プラグのピンに配置された高周波シールドとロースター庫内の壁の間の隙間から侵入するマイクロ波エネルギーの吸収のために非常に少数の部品で十分であるという事実にある。高周波エネルギーの吸収を目的としたさまざまな部品、たとえば、プラグのピンの近くにある高周波シールド、接触片、および小型の高周波吸収管は、十分に大きな寸法を持つことができるため、大量生産で発生するすべての許容誤差は重要でなく、それでも高周波エネルギーの吸収は十分である。本発明はまた、出現する高周波エネルギーを吸収するために機械的運動をしている部分を取り除くことを可能にし、したがって本発明によるオーブンの製造のための摩耗部品に決して依存しないという利点を提供する。[4頁27行?5頁13行] 本発明の実施形態は、下記の添付の図面を参照してより詳細に説明される:[5頁14行?5頁16行] 図1は、マイクロ波加熱装置および他の電気加熱装置を備えた電気オーブンの全体的な概略縦断面図である。 そして[5頁17行?5頁20行] 図2は、図1によるオーブンの詳細な分解斜視図であり、ロースター庫内から出てくる高周波の吸収に使用される実施形態を示している。[5頁21行?5頁24行] 図1は、ロースター庫内1内部で食品を照射および調理するための取り外し可能なグリルを含む、マイクロ波加熱装置および他の電気加熱装置を備えた電気オーブンの概観である。この電気オーブンは、マイクロ波加熱装置と、取り外し可能なグリル、熱風装置および/または他の適切な従来の加熱装置などの他の電気加熱装置を備えている。図1は、マイクロ波加熱装置と取り外し可能なグリルのみを部分的に示しており、ファンホイールを含む熱風装置一式を示している。他のすべての電気加熱装置は、図面を明確にするために省略されている。図1に示される電気オーブンは、縦断面のみで示されるフレーム2を含む。このフレーム2はまた、単純に素描された、入力キーボード、ディスプレイ、およびこのタイプの他の要素をサポートすることを目的とするパネル3も含むが、これらのどれも示されていない。[5頁25行?6頁7行] パネル3の背後に配置された室4は、取り付けプレート5上に配置されたオーブンの電気回路および他のケーブル用であり、これらの要素のすべてが部分的にのみ示されている。電気オーブンの加熱装置の制御は、温度調節器およびタイマースイッチを含むが、いずれも図1には示されていない。[6頁8行?6頁14行] ロースター庫内1は6つの壁で形成され、そのうちの1つはドア6の形態である。図1の表示に見える他の唯一の壁は、後壁7ならびに上面8および底部9である。電気オーブンは、マイクロ波加熱装置と他の電気加熱装置を同時に使用して調理することを目的としているため、ロースター庫内の壁は金属でできている。提供される金属壁は、一方では出現する可能性のある高温に耐え、他方では、ロースター庫内で放射されるマイクロ波エネルギーのシールド機能を担う。しかしながら、このロースター庫内の壁はステンレスシートで形成されておらず、腐食に対する保護を向上させ、電気オーブンのコストを下げるため、ロースター庫内に面する内側に、たとえばエナメルの保護層でコーティングされた単純な鉄シートで作られている。[6頁15行?6頁33行] 高周波発生器11を含み、導波管12によってロースター庫内1内部のマイクロ波エネルギーを放射するマイクロ波加熱電気装置10もまた、電気オーブンの内部に設けられる。 図1には、マイクロ波加熱装置の他の取り付け要素は示されていない。[6頁34行?7頁3行] 図1はまた、ラジアルファン用のモーター13およびホイール14を含む熱風装置一式の素描を示している。電気オーブンはもちろん他の電気加熱装置、たとえば炉床加熱または他の適切な装置を取り付けることもできるが、これらの追加の加熱装置は図1には示されていない。[7頁4行?7頁11行] グリルは、ロースター庫内1の上面8のすぐ下に配置される。このグリルは、反射板15と、この反射面の下に配置された加熱要素16とからなる。これらの加熱要素は、たとえば、1つ以上のヘアピンコイルからなることが可能である。[7頁12行?7頁17行] マイクロ波エネルギーは、後壁7の穴18を通って、または加熱要素のプラグのピン17を通って、ロースター庫内1を出るが、それは防止されなければならない。したがって、剛性の高い高周波シールドは、プラグのピン17の近くおよびそれらの間にグリルの加熱要素16を接続する。この高周波シールドは、グリルが固定されるロースター庫内の壁に平行である。この高周波シールドは、プラグのピン17のためにロースター庫内1の後壁7に設けられた穴18を通って出ることが可能な高周波エネルギーのほとんどを保持するように設計されている。[7頁18行?7頁30行] プラグのピン17の近くおよびその間に位置する高周波シールドは、さまざまな方法で製造することができる。したがって、図1による高周波シールドは、たとえば、反射板15から約90°で曲管によって形成され、ロースター庫内の壁に平行な板金要素31からなる。しかしながら、プラグのピン17の近くおよびそれらの間に位置する高周波シールドは、図2に示されるように平面フランジ19からなることも可能である。しかし、もちろん、この高周波シールドが後壁7の穴18およびこれらの穴の周囲に位置する領域を覆う限り、プラグのピンの近くに配置された他の適切な形態の高周波シールドを採用することができる。上記の高周波シールドは、図1および2に示されていない方法で接地されている。図2は、グリルをロースター庫内の壁に固定する方法も表している。[7頁31行?8頁11行] ロースター庫内と後壁7を作るために使用されている安価な鉄板も、これらの板の1つから形成されており、防錆および耐久性向上のために、ロースター庫内1の内部に面する側から保護層、たとえばエナメル層20を堆積させる。このエナメル層20自体は、それゆえ、高周波シールド19と後壁7との間に、マイクロ波エネルギーがそこに向かって流れ、プラグのピン17に設けられた穴18を通って外向きに流れることが可能な隙間を形成する特定の厚さを有する。高周波シールド19とエナメル20の層で覆われたロースター庫内の後壁7の間に他の隙間が現れることもある、なぜならば、ロースター庫内の熱が大幅に放出されるため、調理およびグリルした食品を準備するときに後壁7が膨張するからである。したがって、後壁7は熱の影響下でベールに覆われ、したがって高周波シールド19から離れ、その結果、これらの2つの仕切り要素の間に隙間が形成される。したがって、マイクロ波エネルギーは、プラグの穴18とピン17を通過するこの隙間を通って外部に逃げることができる。容量性の結合とこれら2つの要素の間に形成された短絡にもかかわらず、高周波シールドの周りを移動し、プラグの通路18とピン17を通して高周波漏れ放射の形で出るのは、確かに、残りの高周波エネルギーである。[8頁12行?9頁3行] この高周波エネルギーの発生を吸収するために、以下の対策が講じられる。加熱要素16のプラグのピン17を誘導するための部品21は、ロースター庫内1の後壁7と仕切り22との間に配置され、部品21は、ピン17をグリルのソケット23に直接誘導する。グリルのソケット23は、加熱要素16への電流供給を提供し、このグリルが図示されていない方法で取り外されると、生成されるスイッチ24は、それに応じてマイクロ波加熱装置への電力を遮断する。ガイドピース21を、プラグのピン17用の穴25が貫通している。さらに、ねじ27が通過する穴26が部品21に作られ、それらがロースター庫内1の後壁7の側に固定されたねじ付きリベット28にねじ込まれることを可能にする。この後壁7は、図示されていない方法で接地されている。[9頁4行?9頁22行] ガイドピース21の製造に使用される材料は、マイクロ波を良好に伝導する固体金属である。しかし、この部品は、他の適切な方法で製造することもできる。円筒形の空洞29は、部品21を貫通し、かつプラグのピン17をグリルのソケット23に誘導することを目的とする穴25に皿穴を形成する。これらの円筒形の空洞29は、小型の吸収管30を収容することを意図しており、その寸法は、これらの空洞29の寸法に正確に対応している。[9頁23行?9頁32行] 小管30は、マイクロ波を吸収するための材料で作られている。小型の高周波吸収管の取り付けに特に適した材料は、焼結フェライト粉末である。それらの設計とサイジングによれば、これらの小管は無視できるごくわずかな割合のみを通過させることにより高周波エネルギーを吸収し、このエネルギーを熱に変換する。小型の吸収管30の穴の内径は、グリルのプラグのピン17を誘導するために部品21に作られた穴25の内径に等しい。[9頁33行?10頁7行] 電気オーブンのマイクロ波加熱装置の使用中は、グリルのプラグのピン17がソケット23に挿入される。次に、部品21に配置された小型の高周波吸収管30は、ロースター庫内から出てくる高周波エネルギーの単純化された終端抵抗の誘電体の機能を担う。プラグのさまざまなピン17の各終端抵抗は、このピン17によって形成され、このピン17は、内部導体の機能と、ガイドピースに生成され、穴25の皿穴、ならびにそれぞれ誘電体を形成する高周波エネルギーを吸収するための小型の介在管30を構成する円筒状の空洞29の外径の機能を担う。[10頁8行?10頁22行] それぞれの場合に設けられた、たとえばフランジ19の形状を有する高周波シールド、ならびにガイドピース21および小型の吸収管30は、大量生産の部品であり、安価に製造することができる。プラグのピン17の間に配置され、本発明の本質的な特徴に従って、プラグのピン上に配置された小型の吸収管と協働する、金属製誘導部品の空洞内にある高周波シールドは、穴18とプラグのピン17から出る高周波エネルギーの完全に信頼できる消滅を同時に保証する。プラグのピン、小型の吸収管、およびガイドピースに形成された空洞の外径によって形成される単純化された終端抵抗によって提供される必要な減衰量は、高周波エネルギーの消滅率に応じて、壁の厚さと小型の吸収管の長さを変えることで正確に決定できる。[10頁23行?11頁5行] 請求項 1. ロースター庫内で食品を照射および調理するための取り外し可能なグリルを含む、マイクロ波加熱装置およびその他の電気加熱装置を備えた電気オーブンであって、オーブンはマイクロ波加熱装置および異なる加熱モードを使用して同時に調理でき、ロースター庫内は、金属壁とガイドピース、仕切り、およびロースター庫内の壁の後ろに設けられたグリル加熱コイルのプラグのピンを収容することを目的としたソケットで形成されており、プラグのピンの周囲およびピンの間に位置する剛性接続は、ロースター庫内の壁に平行に配置された高周波シールドによって形成され、ガイドピース(21)が金属製であることを特徴とするオーブンで、さらに、円筒形の空洞(29)が皿穴(25)を形成し、この穴は、ガイドピースを貫通し、グリルのプラグのピン(17)に向けられ、その寸法が前記円筒形空洞(29)の寸法に対応する小型の吸収管(30)がこれらの空洞に配置され、これらの小型の高周波吸収管(30)は、マイクロ波吸収材料でできており、最後に、これらの小型の高周波吸収管(30)のそれぞれは、高周波エネルギー用の簡略化された終端抵抗の誘電体を形成し、さらに、各終端抵抗は、内部導体の機能を想定しているプラグのピン(17)と、穴(25)の皿穴をガイドピース(21)内に形成し、外部導体の機能を想定している空洞(29)の外径で形成されている。 2. 請求項1に記載の電気オーブンであって、簡略化された終端抵抗の吸収率を、壁の厚さと小型の吸収管(30)の長さを変えることによって変更できることを特徴とする。 3. 請求項1および2のいずれか一項に記載の電気オーブンであって、小型の高周波吸収管(30)が焼結フェライト粉末でできていることを特徴とする。 4. 請求項1から3のいずれか一項に記載の電気オーブンであって、ガイドピース(21)が固体金属で作られていることを特徴とする。 5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の電気オーブンであって、小型の吸収管(30)の内径が、ガイドピース(21)に作成された穴(25)の内径に等しく、グリルのプラグのピン(17)に向けられていることを特徴とする。[12頁1行?13頁11行]」 「 ![]() 」 (イ)上記(ア)から認められる事項 上記(ア)から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。 a 上記(ア)の1頁1行?同頁16行、3頁24行?同頁30行、5頁25行?同頁33行、6頁19?23行、請求項1及び図1の記載によれば、引用文献1には、電気オーブンが記載されている。 b 上記(ア)の5頁25行?同頁33行、6頁34行?7頁1行、請求項1及び図1の記載によれば、電気オーブンは、ロースター庫内1を備えることが認められる。 c 上記(ア)の7頁12行?同頁15行及び図1の記載によれば、電気オーブンはロースター庫内1の上面8のすぐ下に配置される、反射板15と、この反射板15の下に配置された加熱要素16とからなるグリルを備えることが認められる。 d 上記(ア)の6頁34行?7頁1行、請求項1及び図1の記載によれば、電気オーブンは、高周波発生器11を含み、導波管12によってロースター庫内1内部のマイクロ波エネルギーを放射するマイクロ波加熱電気装置10を備えることが認められる。 e 上記(ア)の10頁8行?同頁11行、9頁10行?同頁15行及び図1の記載によれば、電気オーブンは、加熱要素16のプラグのピン17が挿入され、前記加熱要素16への電流供給を提供するソケット23を備えることが認められる。 (ウ)引用発明 上記(ア)及び(イ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ロースター庫内1と、 前記ロースター庫内1の上面8のすぐ下に配置される、反射板15と、この反射板15の下に配置された加熱要素16とからなるグリルと、 高周波発生器11を含み、導波管12によってロースター庫内1内部のマイクロ波エネルギーを放射するマイクロ波加熱電気装置10と、 前記加熱要素16のプラグのピン17が挿入され、前記加熱要素16への電流供給を提供するソケット23と、を備えた電気オーブン。」 イ 引用文献2 (ア)引用文献2の記載 原査定の拒絶の理由で引用された文献であって、本願の優先日前に頒布された国際公開第2014/055457号(以下「引用文献2」という。)には、「HIGH-SPEED OVEN INCLUDING WIRE MESH HEATING ELEMENTS(ワイヤメッシュ加熱エレメントを含む高速オーブン)」に関し、次の記載がある。なお、翻訳文はファミリー文献の特表2015-534034号公報を参考にしたものである。 「 [0040] In summary, the following invention allows for the creation of a high power oven by using a resistive mesh element. The heater element designed so as to allow for the desired wavelength output by modifying both the thickness of the mesh as well as the surface area from which heat radiates. The heater consisting of a single unit mesh that is easily assembled into the oven and having a low mass so as to allow for a very quick heat-up (on the order of less than a few seconds). [0041] Specifically, the wire mesh cloth design calibrated to have the correct De Luca Element Ratio for a fast response (less than 2 sec) oven application operating at 1400 degrees K. [0042] According to exemplary embodiments, a mesh design for operating a quick response time oven consisting of a nichrome wire mesh with strand diameter of 0.3 mm, and spacing between strands of 0.3 mm, and operating voltage of 24V. [0043] In considering the best mesh design, it is important to evaluate the blackbody radiative area as well as the resistance of the element as a function of the following: 1) The number of strands per unit area of the mesh 2) The radius of the mesh strands 3) The mesh strand material 4) The potential for radiation occlusion between strands. [0044] FIG. 1 describes the blackbody area as a function of the number of strands and the strand spacing of the mesh. Interestingly, the surface area is independent of the radius of the wire strand if the spacing is made a function of the radius. [0045] Using equation 5 from above, the resistance of the mesh can be calculated for a specific wire strand radius. FIG. 2illustrates the electrical resistance of a nichrome mesh element as a function of the radius of the strand and the mesh spacing. Limitation in Equation 5 become apparent as the number of strands becomes very high and the resistance becomes very low; thus atomic effects associated with random movement of electrons in the metal at room temperature form a minimum resistive threshold. [0046] Using nichrome as the strand material in the mesh and operating the system at 20 KW, the ramp up time to achieve an operating temperature of 1400 degrees K. is a function of the strand radius and the mesh spacing (note that a nominal mesh size of two times 125 mmx250 mm is used). FIG. 3 illustrates the region below which a ramp up of less than 2 seconds is achievable (note that wire radius above 0.5 mm are not shown due to the long required ramp up times). [0047] FIG. 4 is a composite graph of FIGS. 1 and 2, indicating the regions applicable for high speed oven cooking with a De Luca Element Ratio close to 0.11 ohms/m2. [0048] FIG. 5 is a photograph of oven 3 with top and bottom wire mesh elements 1 and 2 each 125 mmx230 mm and operated at 24V. Each wire mesh (1 and 2) has 766-125 mm long filaments woven across 416-230 mm long elements, each element 0.3 mm in diameter. A 24 V battery source is placed across the length of the 766 elements at bus bars 4and 5. The wire surface area for a single strand of 0.14 mm diameter wire is 0.000440 m2/m. Thus, a total surface area (for combined top and bottom elements) can be calculated as: Total Blackbody Radiating Area = 2 x 0.000440 x (416x0.23+766x0.125) = 0.168 m2 [0049] The resistance across bus bars 4 and 5 as well as 6 and 7 was measured at 0.04+/-0.01 ohms. (Note that bars 4 and6 as well as 5 and 7 are connected by cross bars 8 and 9 respectively.) Thus calculating the De Luca Element Ratio for the elements gives: 0.02 ohms +/- 0.01 ohms/0.168 m^(2) = 0.119 +/- 0.06 ohms/m^(2) which is within experimental error to the desired vale for the De Luca Element Ratio providing the most optimal cook time. These experimental values also match closely to the expected values shown in FIG. 4. [0050] Panels 10 and 11 are reflectors used to help focus the radiation towards the item placed in area 12. [0051] According to exemplary embodiments, a mesh is a 0.3 mmx0.3 mm mesh (2xR) using 0.14 mm diameter nichrome wire and operates well at 24V. [0052] A oven based on using wire mesh segments wherein the item to be cooked is transported on a conveyor between separate segments of wire mesh allowing for a continuous flow process versus an intermittent conveyance. Each wire mesh segment or heating element can be individually controlled for intensity and/or duration. This embodiment can provide the advantage of heating or cooking with a high flow rate. Also, the heating profile for each item can be optimally customized. The customization can be achieved without reconfiguring the hardware of the oven. [0053] Each length of a wire mesh segment and intervening gaps between lengths of the wire mesh segments can provide the equivalent effect of an on-and-off pulsed oven. This can permit for a continuous process flow, for example, when cooking a food item [0054] In exemplary embodiments, a conveyance belt runs at a constant speed and an item to be cooked is placed on the belt. In some cases wire mesh segments are disposed to reflect on both the top and bottom surfaces of the belt. In other cases, the wire mesh segments can be disposed on either the top or the bottom surface of the belt. [0055] As the object or food item to be heated is conveyed forward by the belt, the wire mesh segments can heat the item. A wire mesh segment or heating element may either be already on or may turn on when the item approaches the segment. The item then passes under the wire mesh segment and heats. [0056] In some embodiments, as the item is conveyed or moves past the wire mesh element, the item can be cooled. A duration of the cool-off period can be achieved with a gap. In a preferred embodiment, the wire mesh element can comprise a nichrome heating element. [0057] In the absence of an item to be heated, the wire mesh heating element can be turned off. For example, if the normal process using a wire mesh segment desires 4 seconds on time and then 8 seconds off time, for a belt moving at 60" a minute, a 4" long element would be followed by an 8" gap. [0058] In some embodiments, shielding can be provided to reflect the infrared radiation. [0059] FIG. 6 is an isometric view of a radiant oven 100 comprising multiple wire mesh heating elements 102. A gap 104 is disposed between two of the multiple wire mesh heating elements 102. Buses 108 and 110 supply an electrical current to each of the multiple wire mesh heating elements 102. A movable belt 114 disposed over rollers/motors 112 is provided. An item to heated, for example, food can be disposed on belt 114. Some of the multiple wire mesh heating elements 102 can be disposed above the belt 114 in a plane 120. Some of the multiple wire mesh heating elements 102 can be disposed below the belt 114 in a plane 122. Radiant oven 100 can be disposed in an enclosure (not shown). An enclosure is visible in FIG. 7.」 <訳文> 「[0040] 要するに、次の発明では抵抗メッシュエレメントを用いることにより、高出力オーブンを作製することができる。熱輻射する表面の面積だけでなく、メッシュの厚さも改良することにより、所望の波長を出力するようにヒータエレメントが設計されている。ヒータは、容易にオーブンに組み入れることができる単一のユニットのメッシュからなり、(おおよそ数秒程度未満の)極めて早い加熱を可能にするように質量が小さくされている。 [0041] 具体的には、1400度Kで稼働する高速応答(2秒未満)のオーブンの用途に適したデ・ルーカ・エレメント比になるように、線メッシュ布のデザインは調整されている。 [0042] 代表的な実施形態によれば、応答時間が早いオーブンを稼働させるメッシュのデザインは、素線の直径が0.3mmで、素線間の距離が0.3mm、で、稼働電圧が24Vのニクロム線ワイヤメッシュからなる。 [0043] 最良のメッシュのデザインを考えると、エレメントの抵抗だけでなく、次の要因に応じて変化する黒体輻射の面積を評価することが重要である。 (1) メッシュの単位面積あたりの素線の数 (2) メッシュ素線の半径 (3) メッシュ素線の材料 (4) 素線間で輻射が妨げられる可能性 [0044] 図1は素線の数と素線の間隔に応じて黒体面積を表したものである。興味深い点は、素線の間隔が素線の半径に応じて変化する場合、表面の面積は素線の半径とは無関係であることである。 [0045] 前記した(式5)を用いて、特定の素線の半径のメッシュの抵抗を計算できる。図2は素線の半径とメッシュの間隔に応じて変わるニクロム線メッシュエレメントの電気抵抗を示す。素線の数が極めて多くなり、抵抗が極めて低くなると、(式5)の適用には限界があることがはっきりする。このように、室温での金属中の電子のランダム運動に関係する原子効果によって最低抵抗の限界値が決められている。 [0046] ニクロムをメッシュの素線材料として用いて、システムを20kWで稼働させるとき、1400°Kの動作温度まで温度上昇させる時間は、素線の半径とメッシュの間隔に応じて変わる(125mm×250mmの2倍という公称サイズが用いられる)。図3が示す領域の下側では2秒未満の温度上昇が可能である。 [0047] 図4は、図1と図2とを合成したグラフであり、高速オーブン調理に適用可能な、0.11オーム/m^(2)に近いデ・ルーカ・エレメント比を有する領域を示す。 [0048] 図5は、上側および下側線メッシュ1、2を有し、24Vで動作するオーブン3の写真である。各線メッシュは125mm×230mmのサイズで、各線メッシュ(1および2)は766本の125mmの長さのフィラメントが416本の230mmの長さのエレメントを横切って織られている。各エレメントの直径は0.3mmである。24Vの電池が766本のエレメントの端から端までを跨いで、バスバー4、5に配置される。直径0.14mmの線からなる素線の線表面積は0.000440m^(2)/mである。したがって、(上側と下側のエレメントを合わせた)総表面積は次のように計算できる。 総黒体輻射面積=2×0.000440×(416×0.23+766×0.125)=0.168m^(2) [0049] バスバー4と5および6と7の間の抵抗の測定値はともに0.04±0.01オームである(ここで、バー4と6および5と7はそれぞれクロスバー8、9により接続されている。したがって、これらのエレメントのデ・ルーカ・エレメント比を計算すると次のようになる。 0.02オーム±0.01オーム/0.168m^(2)=0.119±0.06オーム/m^(2) この値は、最も理想的な調理時間となるデ・ルーカ・エレメント比の所望の値の実験誤差の範囲内にある。また、これらの実験値は図4から予測される値に近い。 [0050] パネル10、11は、領域12内に配置される物に熱輻射を集中させるのに用いられる反射板である。 [0051] 代表的な実施形態によれば、0.14mmの直径のニクロム線を用い、24Vで稼働させる場合、メッシュのサイズは、0.3mm×0.3mmのメッシュ(2×R)となる。 [0052] 複数の線メッシュセグメントを用いるオーブンでは、調理される物はコンベヤにより、該複数の線メッシュセグメントの間を運ばれ、間欠的な輸送と比べて、より連続的な流れのプロセスが可能である。各線メッシュセグメントまたは各加熱エレメントの加熱強度および加熱時間は、個別に制御できる。本実施形態には、高流速で加熱または冷却できるという利点がある。オーブンをカスタマイズするのに、その構成を変える必要がない。 [0053] 各線メッシュセグメントの端から端までの部分と複数の線メッシュセグメントの端から端までの部分の間の間隙は、オンとオフのパルスが印加されるオーブンと同じ効果を与える。この効果により、例えば、食物を調理する場合のような連続的なプロセスフローが可能になる。 [0054] 代表的な実施形態によれば、コンベヤは一定速度で進行し、調理される物はベルト上に配置される。複数の線メッシュセグメントを配置して、ベルトの上面と下面の両方を加熱する場合がある。複数の線メッシュセグメントをベルトの上面と下面のいずれかを加熱するように配置する場合もある。 [0055] 加熱すべき物または食品は、ベルトによって前方に輸送され、線メッシュエレメントが輸送される物を加熱する。被加熱物が線メッシュセグメントに近づく時、線メッシュセグメントまたは加熱エレメントは既に通電状態か、または通電される。その後、被加熱物は線メッシュセグメントの下を通り、加熱される。 [0056] ある実施形態では、被加熱物が線メッシュエレメントを通り過ぎて輸送されまたは動いていくと、この被加熱物は冷却される。冷却期間の長さは間隙によって決まる。好ましい実施形態では、線メッシュエレメントはニクロム加熱エレメントを有するものでよい。 [0057] 加熱される物がない場合、線メッシュ加熱エレメントへの通電は停止する。例えば、線メッシュエレメントを用いる通常工程で4秒の通電時間とその後の8秒の非通電時間が設定され、ベルトが1分間に60インチ(1.524m)進むとすると、4インチの長さ(0.1016m)のエレメントの後、8インチ(0.2032m)のギャップが続く。 [0058] ある実施形態では、シールドを設けて赤外線の輻射を反射させることができる。 [0059] 図6は、複数の線メッシュ加熱エレメント102を有する輻射オーブン100の等角斜視図である。間隙104が2つの線メッシュ加熱エレメント102の間に設けられている。バス108、110は複数の線メッシュ加熱エレメント102の各々に電流を供給する。ローラー/モータ112に亘って配置された可動ベルト114が備えられている。加熱すべき物である、例えば、食品はベルト114上に配置される。複数の線メッシュ加熱エレメント102のいくつかは、ベルト114の上方の面120内に配置できる。複数の線メッシュ加熱エレメント102のいくつかは、ベルト114の下方の面122内に配置できる。輻射オーブン100を(図示しない)密閉容器内に配置することもできる。密閉容器は図7中に見える。」 「 ![]() 」 (イ)引用文献2の記載事項 上記(ア)から、引用文献2には、次の事項(以下「引用文献2の記載事項」という。)が記載されていると認められる。 「食品を加熱調理するためのオーブンにおいて、黒体輻射する線メッシュ加熱エレメント及び前記線メッシュ加熱エレメントの両端にそれぞれ接続されるバスバーを備えたヒータを用いること。」 ウ 引用文献3 (ア)引用文献3の記載 原査定の拒絶の理由に引用された文献であって、本願の優先日前に頒布された米国特許出願公開第2010/0166397号明細書(以下「引用文献3」という。)には、「WIRE MESH THERMAL RADIATIVE ELEMENT AND USE IN A RADIATIVE OVEN(ワイヤーメッシュ熱輻射エレメントと放射オーブンでの使用)」に関し、次の記載がある。なお、翻訳文は当審によるものである。 「[0001] The following invention relates to the use of stored energy in combination with an infrared heating source consisting of a wire screen mesh element for the purpose of cooking or toasting.」 <訳文> 「[0001] 本発明は、調理または焼くために、ワイヤスクリーンメッシュエレメントからなる赤外線加熱源と組み合わせて、貯蔵エネルギーを使用することに関する。」 「[0028] The ratio of the resistance of the heater to the black body raditive area of the same heater becomes the critical design constraint for the oven; herein termed the De Luca Element Ratio. The ideal oven for foods operating over a 0.25 square meter area at 2 micron wavelength has a De Luca Element Ratio (at room temperature), of 0.1137 ohms/m^(2) (0.0284 ohms/0.25 m^(2)). 」 <訳文> 「[0028] 同じヒータの黒体輻射面積に対するヒータの抵抗の比は、オーブンの重要な設計制約になる。本明細書では、デ・ルーカ・エレメント比と呼ばれる。2ミクロンの波長で0.25平方メートルの面積で動作する食品に最適なオーブンは、デ・ルーカ・エレメント比(室温)が0.1137オーム/m^(2)(0.0284オーム/0.25m^(2))である。」 「[0036] Another way for lowering the resistance is to place multiple resistors in parallel. Kirkoff's law's predict the cumulative result of resistors placed in parallel. ・・・ [0037] The following Table 2 lists the number of conductors for each of the elements in Table 1, as derived using equation 5, that would need to be placed in parallel in order to achieve a De Luca Element Ratio of 0.1137. Clearly placing and distributing these elements evenly across the surface would be extremely difficult and impossible for manufacture.」 <訳文> 「[0036] 抵抗を低減するための別の方法は、複数の抵抗を並列に接続することである。キルヒホッフの法則は、並列に接続された抵抗器の累積的な結果を予測する。 ・・・ [0037] 次の表2は、式5を使用して導き出された、表1の各エレメントの導体の数を示しています。これらの導体は、デ・ルーカ・エレメント比0.1137を達成するために並列に接続する必要があります。これらのエレメントを表面全体に均一に配置して接続することは、製造が非常に困難で不可能である。」 「[0038] It is therefore an object of the current invention to: [0039] 1) Find a heating element capable of delivering the same power and cooking characteristics as bulbs yet be significantly less expensive. [0040] 2) It is an object of the current invention that the heating element have a temperature rise time of less than 2 seconds. [0041] 3) It is further an object of the following invention that the heat generated from the element be capable of being evenly distribution over the cooking area. [0042] 4) It is further an object of the current invention that the De Luca Element Ratio, as defined herein, of the element be close to 0.11. [0043] 5) It is also an object of the current invention that a resistive nichrome element consist of an integral unit that is easy to assemble into a unit such as an oven.」 <訳文> 「[0038] したがって、本発明の目的は、 [0039] 1)電球と同じ出力と調理特性を提供でき、しかも大幅に安価なヒータエレメントを見つけることである。 [0040] 2)本発明の目的は、ヒータエレメントが2秒未満の温度上昇時間を有することである。 [0041] 3)以下の発明のさらなる目的は、エレメントから発生した熱が調理領域全体に均一に分配されることができることである。 [0042] 4)本発明のさらに別の目的は、本明細書で定義されている要素のデ・ルーカ・エレメント比が0.11に近いことである。 [0043] 5)本発明の目的はまた、抵抗性ニクロムエレメントが、オーブンなどのユニットに組み立てることが容易な一体ユニットからなることである。」 「[0044] In summary, the following invention allows for the creation of a high power oven by using a resistive mesh element. The heater element designed so as to allow for the desired wavelength output by modifying both the thickness of the mesh as well as the surface area from which heat radiates. The heater consisting of a single unit mesh that is easily assembled into the oven and having a low mass so as to allow for a very quick heat-up (on the order of less than a few seconds). [0045] Specifically, the wire mesh cloth design calibrated to have the correct De Luca Element Ratio for a fast response (less than 2 sec) oven application operating at 1400 degrees K. [0046] To date, the best mesh design for operating a quick response time oven consisting of a nichrome wire mesh with strand diameter of 0.3 mm, and spacing between strands of 0.3 mm, and operating voltage of 24V. ・・・ [0052] FIG. 5 is a photograph of a small 24V oven built using the mesh system. [0053] FIG. 6 is a photograph of a 0.3 mm×0.3 mm mesh using 0.3 mm diameter nichrome wire which operates well at 24V across a 200 mm oven.」 <訳文> 「[0044] 要約すると、以下の発明は、抵抗メッシュエレメントを使用することにより、高出力オーブンの作成を可能にする。メッシュの厚さと熱が放射される表面積の両方を変更することにより、目的の波長の出力を可能にするように設計されたヒータエレメントである。単一のユニットメッシュで構成されるヒータは、オーブンに簡単に組み込まれ、非常に迅速な加熱(数秒未満のオーダー)を可能にするように低質量である。 [0045] 具体的には、ワイヤメッシュ布の設計は、1400度Kで動作する高速応答(2秒未満)のオーブンアプリケーションに対して正確なデ・ルーカ・エレメント比を持つように調整されている。 [0046] これまでのところ、オーブンを迅速な応答時間で操作するためのための最良のメッシュの設計は、素線の直径0.3mmのニクロム線のメッシュからなり、素線間の間隔0.3mm、動作電圧24Vである。 ・・・ [0052] 図5はメッシュシステムを用いて構成される小型の24Vレンジの写真である。 [0053] 図6は、200mmのオーブン全体で24Vで適切に動作する直径0.3mmのニクロム線を使用した0.3mm×0.3mmメッシュの写真である。」 「[0054] In considering the best mesh design, it is important to evaluate the blackbody radiative area as well as the resistance of the element as a function of the following: [0055] 1) The number of strands per unit area of the mesh [0056] 2) The radius of the mesh strands [0057] 3) The mesh strand material [0058] 4) The potential for radiation occlusion between strands. [0059] FIG. 1 describes the blackbody area as a function of the number of strands and the strand spacing of the mesh. Interestingly, the surface area is independent of the radius of the wire strand if the spacing is made a function of the radius. [0060] Using equation 5 from above, the resistance of the mesh can be calculated for a specific wire strand radius. FIG. 2 illustrates the electrical resistance of a nichrome mesh element as a function of the radius of the strand and the mesh spacing. Limitation in Equation 5 become apparent as the number of strands becomes very high and the resistance becomes very low; thus atomic effects associated with random movement of electrons in the metal at room temperature form a minimum resistive threshold. [0061] Using nichrome as the strand material in the mesh and operating the system at 20 KW, the ramp up time to achieve an operating temperature of 1400 degrees K. is a function of the strand radius and the mesh spacing (note that a nominal mesh size of two times 125 mm×250 mm is used). FIG. 3 illustrates the region below which a ramp up of less than 2 seconds is achievable (note that wire radius above 0.5 mm are not shown due to the long required ramp up times). [0062] FIG. 4 is a composite graph of FIGS. 1 and 2, indicating the regions applicable for high speed oven cooking with a De Luca Element Ratio close to 0.11 ohms/m2. [0063] FIG. 5 is a photograph of oven 3 with top and bottom wire mesh elements 1 and 2 each 125 mm×230 mm and operated at 24V. Each wire mesh (1 and 2) has 766-125 mm long filaments woven across 416-230 mm long elements, each element 0.3 mm in diameter. A 24 V battery source is placed across the length of the 766 elements at bus bars 4 and 5. The wire surface area for a single strand of 0.14 mm diameter wire is 0.000440 m2/m. Thus, a total surface area (for combined top and bottom elements) can be calculated as: Total Blackbody Radiating Area=2×0.000440×(416×0.23+766×0.125)=0.168 m2 [0064] The resistance across bus bars 4 and 5 as well as 6 and 7 was measured at 0.04±0.01 ohms. (Note that bars 4 and 6 as well as 5 and 7 are connected by cross bars 8 and 9 respectively.) Thus calculating the De Luca Element Ratio for the elements gives: 0.02 ohms±0.01 ohms/0.168 m2=0.119±0.06 ohms/m2 [0065] which is within experimental error to the desired vale for the De Luca Element Ratio providing the most optimal cook time. These experimental values also match closely to the expected values shown in FIG. 4. [0066] Panels 10 and 11 are reflectors used to help focus the radiation towards the item placed in area 12.」 <訳文> 「[0054] 最良のメッシュのデザインを考えると、エレメントの抵抗だけでなく、次の要因に応じて変化する黒体輻射の面積を評価することが重要である。 [0055] (1) メッシュの単位面積あたりの素線の数 [0056] (2) メッシュ素線の半径 [0057] (3) メッシュ素線の材料 [0058] (4) 素線間で輻射が妨げられる可能性 [0059] 図1は素線の数と素線の間隔に応じた黒体面積を表したものである。興味深い点は、素線の間隔が素線の半径に応じて変化する場合、表面の面積は素線の半径とは無関係であることである。 [0060] 前記した(式5)を用いて、特定の素線の半径のメッシュの抵抗を計算できる。図2は素線の半径とメッシュの間隔に応じたニクロム線メッシュエレメントの電気抵抗を示す。素線の数が極めて多くなり、抵抗が極めて低くなると、(式5)の適用には限界があることがはっきりする。このように、室温での金属中の電子のランダム運動に関係する原子効果によって最低抵抗の限界値が決められている。 [0061] ニクロムをメッシュの素線材料として用いて、システムを20kWで稼働させるとき、1400度Kの動作温度まで温度上昇させる時間は、素線の半径とメッシュの間隔に応じて変わる(125mm×250mmの2倍という公称サイズが用いられる)。図3が示す領域の下側では2秒未満の温度上昇が可能である(なお、0.5mmを超えるワイヤの半径は、長く要求されるランプアップ時間のために図示されていない。)。 [0062] 図4は、図1と図2とを合成したグラフであり、高速オーブン調理に適用可能な、0.11オーム/m^(2)に近いデ・ルーカ・エレメント比を有する領域を示す。 [0063] 図5は、上部と下部のワイヤメッシュエレメント1と2がそれぞれ125mm×230mmで24Vで動作するオーブン3の写真である。各ワイヤメッシュ(1および2)は、長さ416?230mmのエレメント全体に長さ766?125mmのフィラメントが織り込まれ、各エレメントの直径が0.3mmである。24Vバッテリー電源は、766個のエレメントの長さに渡ってバスバー4と5に接続されている。直径0.14mmのワイヤからなる素線の線表面積は0.000440m^(2)/mである。したがって、(上部と下部のエレメントを合わせた)総表面積は次のように計算できる。 総黒体輻射面積=2×0.000440×(416×0.23+766×0.125)=0.168m^(2) [0064] バスバー4と5および6と7の間の抵抗の測定値はともに0.04±0.01オームである(ここで、バー4と6および5と7はそれぞれクロスバー8、9により接続されている。)。したがって、これらのエレメントのデ・ルーカ・エレメント比を計算すると次のようになる。 0.02オーム±0.01オーム/0.168m^(2)=0.119±0.06オーム/m^(2) [0065] この値は、最も理想的な調理時間となるデ・ルーカ・エレメント比の所望の値の実験誤差の範囲内にある。また、これらの実験値は図4から予測される値に近い。 [0066] パネル10、11は、領域12内に配置される物に熱輻射を集中させるのに用いられる反射板である。」 「[0067]・・・ What is claimed is: 1. A radiant oven comprising: a cooking cavity configured for receiving a cooking load; a circuit for carrying current supplied by one or more stored energy devices; and a main heater comprising one or more wire mesh heating elements to be driven by the current, the one or more wire mesh heating elements being sized and positioned for heating the cooking load.」 <訳文> 「[0067]・・・ クレーム 1.調理負荷を受けるように構成された調理キャビティと、 1つ以上の蓄積エネルギーデバイスによって供給される電流を流すための回路と、さらに、 電流によって駆動される1つまたは複数のワイヤメッシュヒータエレメントからなり、1つまたは複数のワイヤメッシュヒータエレメントが、調理負荷を加熱するためのサイズおよび位置にあるメインヒーターとからなる輻射オーブン。」 「 ![]() 」 (イ)引用文献3の記載事項 上記(ア)によると、引用文献3には、次の事項(以下「引用文献3の記載事項」という。)が記載されていると認める。 「食品を加熱調理するためのオーブンにおいて、黒体輻射するワイヤメッシュヒータエレメント及び前記ワイヤメッシュヒータエレメントの両端にそれぞれ接続されるバスバーを備えたヒータを用いること。」 エ 引用文献4 原査定の拒絶の理由に引用された文献(「引用文献6」として引用された文献)であって、本願の優先日前に頒布された特開平4-351879号公報(以下「引用文献4」という。)には、「高周波加熱装置」に関し、次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、電子レンジなどの高周波加熱装置に関するものである。」 「【0019】図1において、31は商用電源、発電機またはバッテリー等の外部電源であり、高周波加熱装置32に外部から電力を供給する。高周波加熱装置32は、この電力を変換する電力変換部33と、電力変換部33により変換された電力を受けて高周波電波(例えばマイクロ波)を発生し加熱室(図示せず)に供給する電波放射部34を有している。この電力変換部33は、例えば電力変換器35と変換器制御部36により構成できる。高周波加熱装置32は、さらに、その出力電圧が45V以下の低電圧の蓄電池37を備え、この出力は昇圧部38を介して電力変換部33の電力変換器35に供給される構成である。蓄電池37は低電圧であるので感電や電触などの危険性がない。このため任意の場所に設置することができ、高周波加熱装置の筐体内部に内蔵されてもよいし、筐体の外部に設けられて交換が容易な構成であってもよい。この蓄電池37は、充電部39により、入力部40より供給される外部電源からのエネルギーにより充電される構成であり、いちいち電池を交換することなく半永久的に蓄電池を使用することができる構成となっている。 【0020】加熱制御部41は、短時間高出力制御部42を備え、電力変換部33の変換器制御部36を制御して、操作指令や調理指令に応じて所定の短時間(例えば1分?5分)の間、電力変換部33の変換電力を連続動作における最大許容電力よりも大きくせしめるものである。 【0021】このとき加熱制御部41は、例えば昇圧部38を制御することなどにより、蓄電池37の電力を外部電源からの電力に加えて電力変換部33に供給する構成となっている。このため、外部電源31からの入力電流は所定の値(例えば14A)を維持しつつ、望ましい所定の大きな電力を電力変換部33に与え、電波放射部34からの出力電波をきわめて強力なレベルにすることができる。例えば、外部電源31を100Vの商用電源とし入力電流を12?13Aとすると、従来の技術では約1.2?1.3kWの電力しか電力変換部33に供給することができず、このため電波出力は600W程度しか得ることができなかった。しかしながら、この発明を実施した図1の高周波加熱装置32では、外部電源31からの供給電力に加え、蓄電池37からの供給電力を合わせて電力変換部33に供給することが可能である。したがって、外部電源31より1.3kW、蓄電池37より0.7kWの電力を供給する構成とすれば、電力変換部33は合計で2.0kWの電力を電力変換することとなり、結果として電波放射部の電波出力は、1000Wというきわめて大きいものとすることができる。 【0022】すなわち、図1の構成により、外部電源31からの入力電流を大きくすることなく、高速加熱(調理)性能を従来の2倍もしくはそれ以上にした高周波加熱装置を実現することができる。しかも、短時間高出力制御部42は、加熱制御部41の任意の指令により所定の時間(例えば3分)以内の加熱時間の間のみ、このような高電波出力制御を行うので、高周波加熱装置32の冷却構成は連続動作における定格出力としてこの大出力(1000W)を保証する必要がない。したがって、高圧トランスやパワー半導体等の各構成部品の耐熱性能を過剰な耐熱性能にする必要がなく、非常に経済的にこのような大電波出力の高周波加熱装置を実現することができる。」 「【0032】このような構成により、電力変換回路35の動作中は商用電源31から充電回路39への電力供給を零にできるので、商用電源31から供給できる最大電力を電力変換し所望の大きな電波出力を得ることができる。 【0033】 【発明の効果】以上説明したように本発明の高周波加熱装置は、以下に述べる効果を有するものである。 【0034】すなわち、電力変換部と、電波放射部と、加熱制御部と、45V以下の蓄電池と、昇圧部とを備えると共に、前記加熱制御部からの任意の指令信号に応じた所定の時間の間前記電力変換部の変換電力を連続動作状態での定常電力より大きくなるよう制御する短時間高出力制御部を備え、前記指令信号に応じた所定の時間の間電波出力を連続動作状態での定常電波出力より大きくなるよう制御する構成としたので、比較的出力電圧が低く安全で信頼性の高い蓄電池と外部電源との両方から同時に電力を電力変換部に供給しても外部電源の力率低下やインピーダンス不整合による不安定現象等の不都合の発生を防止しつつ外部電源の最大限度の電力迄の利用を可能とし、しかも、実使用状態に見合った所定の時間だけ任意の加熱タイミングで所望の大きな高周波出力を発生できるので、高周波加熱装置の冷却性能や耐熱性能を過剰なものとすることなく、実使用に見合ったものとすることが可能であり、小型軽量で高信頼かつ安全であり、かつ、きわめて大きい電波出力を発生して被加熱物を加熱する高周波加熱装置を提供することができる。すなわち、実使用状態に見合った所定の時間だけ任意の加熱タイミングで所望の大きな高周波出力を発生できるので、高周波加熱装置の冷却性能や耐熱性能を過剰なものとすることなく、実使用に見合ったものとすることが可能であり、したがって、大型化、複雑化、および過剰品質化を防ぎ、安全かつ比較的低価格で所望の大きな高周波出力を得ることができる高周波加熱装置を実現することができるものである。 【0035】また、前記加熱制御部からの起動指令信号に対してのみ、前記短時間高出力制御部が、前記電力変換部を制御して前記外部電源と前記蓄電池の両エネルギー源の電力を前記電力変換部に供給し、所定の時間の間、起動時における電波出力を連続動作状態での定常電波出力より大きくなるよう制御する構成としたので、高周波加熱装置の各部温度が最も低い起動時にのみ、外部電源からの電力に加えて蓄電池からの電力を合わせて電力変換部で電波放射部に供給する高周波加熱装置を提供することができる。したがって、外部電源からの入力電流に制限されずに所望のより大きな電波出力を起動時に発生することができ、外部電源と蓄電池とからの電力が同一の電力変換部で電力変換されて電波放射部に供給されるので、簡単な構成で両電力の合成を実現することができる。そして、とりわけ高周波加熱装置の温度が最も低い起動時における所定の時間だけこの大きな高周波出力を発生するので、高周波加熱装置の冷却性能や耐熱性能を過剰なものとすることなく最も簡単な構成とすることができ、比較的コンパクトで簡単な構成であり、しかも安全で高信頼性である上に、低価格でありながら所望の大きな高周波出力を得ることができる高周波加熱装置を提供することができる。 【0036】さらに、商用電源より電力を得て蓄電池を充電する充電手段を備える構成としたので、自動的に蓄電池を充電し、常に外部電源からの電力に加えて蓄電池からの電力を合わせて電力変換部に供給することができるようにし、蓄電池を交換することなく半永久的に、外部電源からの入力電流に制限されずに所望の大きな電波出力を発生することができる高周波加熱装置を提供することができるものである。 【0037】さらにまた、電力変換部の動作停止時に充電手段により蓄電池を充電する構成としたので、電力変換部の動作中は外部電源からの供給電力を全て電力変換部に供給することができ、最大限の電力を外部電源より供給しながら所望の大きな電波出力を発生することができる高周波加熱装置を提供することができる。そして、電力変換部の動作停止中に蓄電池に自動的に充電し、常に蓄電池がその最大電力を供給できるようにするものであり、蓄電池を交換することなく半永久的に使用でき、常に、所望の大きな電波出力を発生することができる高周波加熱装置を提供することができるものである。」 「 ![]() 」 オ 引用文献5 原査定の拒絶の理由に引用された文献(「引用文献7」として引用された文献)であって、本願の優先日前に頒布された特公昭56-21237号公報(以下「引用文献5」という。)には、「高周波加熱装置」に関し、次の記載がある。 「つぎに、図面により本発明による高周波加熱装置の1実施例を説明する。第2図は電子レンジの高周波発振部の回路図で、電子レンジが使用されない状態を示すものである。図において、6は電源スイッチで、充電側に閉路されている。5はN倍電圧(例えば40倍電圧)の半波整流回路で、例えば交流100Vのような商用電源からの入力を整流し、昇圧された電圧(例えば4KV)で充電可能な電池7を時間をかけて充電する。9は別の充電可能な電池で、商用電源からの入力を例えばダイオードのような整流器8によって整流し、同様に時間をかけて充電する。電子レンジを使用する場合は、電源スイッチ6は切り換えられ、電子レンジは商用電源から切り離される。それと同時に、高圧に充電された電池7からタイマ12および図示されない安全スイッチにより制御される断続回路10を経た電圧と、もう一方の電池9から例えば抵抗分割器などで構成された降圧回路11を経て例えば3Vのヒータ電圧に降下された電圧とが重畳され、この電圧がマグネトロン1に印加されて高周波を発振し加熱が行なわれる。この装置では、電子レンジを使用しないとき長い時間に少しずつ充電すればよいので、入力電流は従来の概略1/10から1/20(例えば0.7?1.5A)で十分であり、契約電力10Aの家庭でも十分支障なく使用することができる。また、本発明による高周波加熱装置は、別に深夜受電設備を設けることにより、安い電気料金で使用することが可能であり、経済性の点で有利である。なお、前述の実施例においては、電池7を高電圧に充電するためにN倍電圧の半波整流回路5が使用されているが、この代りに例えば高電圧発生用の変圧器と整流素子とを組み合せた回路のような商用電圧を高電圧直流に変換できる他の回路を使用しても、前述の実施例と同等の結果を得ることができる。」(2頁3欄32行?同頁4欄23行) 「 ![]() 」 (3)引用発明との対比 本件補正発明と引用発明とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。 ア 後者の「ロースター庫内1」は、前者の「電子レンジ空洞」に相当し、同様に「マイクロ波エネルギー」は「マイクロ波」に相当する。 イ 後者の「前記ロースター庫内1の上面8のすぐ下に配置される、反射板15と、この反射板15の下に配置された加熱要素16とからなるグリル」は、加熱要素16が熱を輻射する加熱体といえるから、前者の「前記電子レンジ空洞に黒体放射による熱を輻射するように配置されたワイヤメッシュ加熱体」に、「前記電子レンジ空洞に熱を輻射するように配置された加熱体」という限りにおいて一致する。 ウ 後者の「高周波発生器11を含み、導波管12によってロースター庫内1内部のマイクロ波エネルギーを放射するマイクロ波加熱電気装置10」は、前者の「マイクロ波を発生するマグネトロン」に、「マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段」という限りにおいて一致する。 また、後者において、「マイクロ波加熱電気装置10」がマイクロ波エネルギーを放射するのに、「電力を提供する」「エネルギー装置」を備えることは明らかである。 エ 後者の「前記加熱要素16のプラグのピン17が挿入され、前記加熱要素16への電流供給を提供するソケット23」は、食品を照射及び調理するのに必要な電力を要する加熱要素16に電流供給を提供するために、前者と同様に「高電力電源」を構成していることは明らかであるから、前者の「前記ワイヤメッシュ加熱体と電気的に接続された高電力電源」に、「前記加熱体と電気的に接続された高電力電源」という限りにおいて一致する。 オ 後者において、引用文献1の「マイクロ波エネルギーは、後壁7の穴18を通って、または加熱要素のプラグのピン17を通って、ロースター庫内1を出るが、それは防止されなければならない。」(7頁18行?同頁21行)という記載を参酌すると、マイクロ波加熱電気装置10からロースター庫内1に放射されたマイクロ波エネルギーの一部が加熱要素16に当たるのは明らかであるから、前者の「生成されたマイクロ波の一部」が「加熱体に当た」る態様を備えるといえる。 カ 後者の「電気オーブン」は、食品に対して、グリルの加熱要素16を用いた熱の輻射による加熱と、マイクロ波加熱電気装置10を用いたマイクロ波による加熱を行うものであり、前者の「ワイヤメッシュ加熱体併設電子レンジ」に、「加熱体併設電子レンジ」という限りにおいて一致する。 以上のことから、本件補正発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「電子レンジ空洞と、 前記電子レンジ空洞に熱を輻射するように配置された加熱体と、 電力を提供するエネルギー装置と、 マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段と、 前記加熱体と電気的に接続された高電力電源と、を備え、 生成されたマイクロ波の一部が加熱体に当たる加熱体併設電子レンジ。」 [相違点1] 「前記電子レンジ空洞に熱を輻射するように配置された加熱体」に関し、本件補正発明では、「黒体放射による熱を輻射する」「ワイヤメッシュ加熱体」であり、「前記電子レンジ空洞に配置され、前記ワイヤメッシュ加熱体を電源に電気的に接続する導体」を備えるのに対して、引用発明では、「前記ロースター庫内1の上面8のすぐ下に配置される、反射板15と、この反射板15の下に配置された加熱要素16とからなるグリル」を備えるものの、加熱要素16が黒体放射による熱を輻射するワイヤメッシュ加熱体ではなく、電子レンジ空洞に配置され、前記ワイヤメッシュ加熱体を電源に電気的に接続する導体を備えていない点(以下「相違点1」という。)。 [相違点2] 「電力を提供するエネルギー装置」に関し、本件補正発明では、「交流電力線の容量を超える電力を提供する蓄積エネルギー装置」であるのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点(以下「相違点2」という。)。 [相違点3] 「マイクロ波を発生するマイクロ波発生手段」に関し、本件補正発明では、「マグネトロン」であるのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点(以下「相違点3」という。)。 [相違点4] 「高電力電源」に関し、本件補正発明では、「エネルギー伝送の持続時間を変化させること、エネルギー伝送の振幅を変化させること、またはそれらの組み合わせを含む、複数のパルスによって電気エネルギーを供給する」ものであるのに対して、引用発明では、そのような特定はされていない点(以下「相違点4」という。)。 (4)判断 ア 相違点1について 引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項は、応答時間(動作温度まで温度上昇させる時間)が早く(引用文献2の段落0040?0042及び0046並びに引用文献3の段落0040)、また、均一な加熱ができる(引用文献3の段落0041)ことを目的としたものであるところ、応答時間が早いこと及び均一な加熱をすることはオーブンレンジにおける普遍的な課題であり、オーブンレンジという技術分野において共通する引用発明においても内在する課題であるから、引用発明において、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項を適用し、ロースター庫内1に配置されるグリルの加熱要素16として、黒体輻射するワイヤメッシュヒータエレメント(ワイヤメッシュ加熱体)とするとともに、ワイヤメッシュヒータエレメントの両端にそれぞれ接続されるバスバー(電子レンジ空洞に配置され、ワイヤメッシュ加熱体を電源に電気的に接続する導体)を備えたものとして、上記相違点1に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 イ 相違点2及び3について 電子レンジで認められるように、マイクロ波エネルギーを放射して食品を加熱する加熱調理器において、電力を提供するエネルギー装置からの電力によりマイクロ波エネルギーを発生するマグネトロンを用いることが、本願の優先日前にごく普通に行われていることであるから、引用発明において、マイクロ波加熱電気装置10にマグネトロンを採用することは、当業者が適宜なし得ることである。 また、マグネトロンへの給電を行う装置として、商用電源(交流電力線)の容量を超える電力を提供することができる蓄電池等のエネルギー蓄積手段を用いた給電装置(蓄積エネルギー装置)は、例えば、引用文献4(上記(2)エの記載を参照。)及び引用文献5(上記(2)オの記載を参照。)に記載されているように、本願の優先日前に周知技術(以下「周知技術」という。)であり、これにより商用電源から供給される電力以上の所望の大きな電力を得ることができ、マイクロ波による加熱の高出力化を図るとともに商用電源の契約電力を抑制することができるから、同じくマイクロ波による加熱を行う技術分野において共通する引用発明に周知技術を適用し、「交流電力線の容量を超える電力を提供する蓄積エネルギー装置」を備えるようにすることは、当業者にとって格別困難ではない。 そうすると、引用発明において、上記相違点2及び3に係る本件補正発明の構成とすることは、周知技術に基づいて、当業者が容易になし得たことである。 ウ 相違点4について 「エネルギー伝送の持続時間を変化させること、エネルギー伝送の振幅を変化させること、またはそれらの組み合わせを含む、複数のパルスによって電気エネルギーを供給する」ことは、電気ヒータに限らず、幅広い電気負荷に対して、インバータやコンバータ等の電力変換装置を用いて行うPWM(パルス幅変調)、PAM(パルス振幅変調)又はそれらの組み合わせの制御として、本願の優先日前に普通に行われていること(以下「慣用技術」という。例えば、特開2007-26814号公報(特に、段落0020、0021、0028?0031、図1及び図2)及び特開平8-44435号公報)であるから、引用発明において、慣用技術を適用し、上記相違点4に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。 エ 効果について そして、本件補正発明の奏する効果は、引用発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項、周知技術及び慣用技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものということはできない。 オ 請求人の主張について 請求人は、令和元年8月20日に提出された審判請求書において、各引用文献には、「前記高電力電源は、エネルギー伝送の持続時間を変化させること、エネルギー伝送の振幅を変化させること、またはそれらの組み合わせを含む、複数のパルスによって電気エネルギーを供給する」事項について、各引用文献には記載がない旨主張するが(3頁2行?4頁24行)、上記ウで検討したとおり、そのような事項は慣用技術といえるから、請求人の主張は採用することができない。 カ まとめ したがって、本件補正発明は、引用発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項、周知技術及び慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 本件補正についてのむすび したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本願発明について 1 本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?24に係る発明は、平成30年11月7日に提出された手続補正書により補正された請求項1、10、11及び18?24に記載された事項、並びに平成29年9月29日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項2?9及び12?17に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成30年11月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、前記第2の[理由]1(2)に記載のとおりのものである。 2 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の一部は、以下のとおりである。 (1)理由1(進歩性) 本願発明は、その出願前(優先日前)に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1?3に記載された発明及び周知技術に基いて、その出願前(優先日前)にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(前記第2の[理由]2(4)で表記したとおり「当業者」ともいう。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1:仏国特許出願公開第2509109号明細書 引用文献2:国際公開第2014/055457号 引用文献3:米国特許出願公開第2010/0166397号明細書 引用文献4:特開平4-351879号公報(周知技術を示す文献) 引用文献5:特公昭56-21237号公報(周知技術を示す文献) 3 引用文献 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1?5、それらの記載並びに引用発明、引用文献2の記載事項及び引用文献3の記載事項は、前記第2の[理由]2(2)に記載したとおりである。 4 対比・判断 本願発明は、前記第2の[理由]2で検討した本件補正発明から、「前記ワイヤメッシュ加熱体と電気的に接続された高電力電源」という事項及び「前記高電力電源は、エネルギー伝送の持続時間を変化させること、エネルギー伝送の振幅を変化させること、またはそれらの組み合わせを含む、複数のパルスによって電気エネルギーを供給する」という事項を省いたものである。 そして、本願発明と引用発明とを対比した場合の相違点は、上記第2の[理由]2(3)の検討で示した相違点1?3となるから、上記第2の[理由]2(4)の検討を踏まえると、本願発明は、引用発明、引用文献2の記載事項、引用文献3の記載事項及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 第4 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-08-21 |
結審通知日 | 2020-08-25 |
審決日 | 2020-09-10 |
出願番号 | 特願2017-518269(P2017-518269) |
審決分類 |
P
1
8・
572-
Z
(H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B) P 1 8・ 575- Z (H05B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 土屋 正志 |
特許庁審判長 |
松下 聡 |
特許庁審判官 |
山崎 勝司 槙原 進 |
発明の名称 | ワイヤメッシュ加熱体併設電子レンジ |
代理人 | 特許業務法人磯野国際特許商標事務所 |