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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D |
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管理番号 | 1370720 |
審判番号 | 不服2019-15349 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-15 |
確定日 | 2021-01-27 |
事件の表示 | 特願2018-524731「レゾルバ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 5月18日国際公開、WO2017/082463、平成30年11月15日国内公表、特表2018-533739〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、2015年(平成27年)12月29日(パリ条約による優先権主張2015年11月13日、韓国)を国際出願日とする出願であって、その手続きの経緯は以下のとおりである。 平成31年 3月20日付け:拒絶理由通知書(発送日:平成31年3月26日) 令和元年 6月24日 :意見書、手続補正書の提出 令和元年 7月10日付け:拒絶査定(送達日:令和元年7月16日) 令和元年11月15日 :拒絶査定不服審判の請求 2 本願発明 本願の請求項1から23に係る発明は、令和元年6月24日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1から23に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。 「【請求項1】 内側に複数の歯とスロットとが交互に形成される磁性材質の固定子と、 内側に前記歯に対応する歯絶縁部が形成され、前記固定子の上下両面から前記固定子に取り付けられる絶縁カバーと、 前記歯絶縁部を介して前記歯に巻き取られるコイルと、を含み、 前記巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合が、0.8以上かつ1以下であることを特徴とするレゾルバ。」 (なお、下線は当審による。請求項1における「最短取幅」との記載は「最短巻取幅」の明らかな誤記であると認められるので、上記のとおり認定した。) 3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、以下のとおりである。 (1)請求項1-4、12-16に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下、「優先日」という。)前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に例示された周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 (2)請求項5-11、17-23に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において頒布された下記の引用文献1及び3に記載された発明並びに引用文献2に例示された周知技術に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.特開2015-27221号公報 引用文献2.特開2012-163359号公報 引用文献3.特開2011-188611号公報 4 引用文献の記載及び引用発明の認定等 (1)引用文献1の記載及び引用発明の認定 ア 引用文献1には、図面とともに以下の事項が記載されている。(下線は当審による。以下同様。) 「【0001】 本発明は、巻線に特徴があるVR型レゾルバのステータ構造、および、VR型レゾルバに関する。」 「【0014】 (1)第1の実施形態 (構成) 図1および図2には、実施形態のVR型(バリアブルリラクタンス型)レゾルバ100が示されている。レゾルバ100は、ステータコア200、上側インシュレータ300、下側インシュレータ400およびコイル500を有している。ステータコア200は、略環状を有し、軸中心の方向に延在する複数のステータ突起部201を有している。ステータ突起部201は、周方向に沿って複数が等間隔に配置されている。ステータコア200は、電磁鋼板等の磁性材料により構成され、図示する形状の板状の部材を軸方向で複数積層した構造を有している。 【0015】 上側インシュレータ300と下側インシュレータ400は、樹脂製であり、ステータコア200の軸方向の前後(図1の上下)からステータコア200に装着される。インシュレータ装着後、ステータコア200のステータ突起部201には、コイル500が巻回されるが、上側インシュレータ300と下側インシュレータ400により、ステータコア200とコイル500は絶縁されている。 【0016】 図3には、コイル500が巻回されたステータ突起部201をその延在方向から見た断面の様子が示されている。図3に示す断面の構造は、各ステータ突起部201において同じである。ステータ突起部201には、インシュレータ300および400を介して、内側からsin相検出コイル501、cos相検出コイル502、励磁コイル503が順に層状に巻回されている。すなわち、ステータ突起部201がインシュレータ300および400により保護され、その外側にsin相検出コイル501、cos相検出コイル502、励磁コイル503の順に各コイルが巻回され、最外周に励磁コイル503が位置する構造を有している。」 「 」 イ 上記記載より、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「略環状を有し、軸中心の方向に延在して周方向に沿って等間隔に配置されている複数のステータ突起部201を有し、磁性材料により構成されたステータコア200と、(【0014】、図1) 樹脂製であり、ステータコア200の軸方向の前後からステータコア200に装着される上側インシュレータ300及び下側インシュレータ400と、(【0015】、図1) ステータコア200のステータ突起部201に巻回されるコイル500であって、上側インシュレータ300と下側インシュレータ400により、ステータコア200とコイル500は絶縁されている、コイル500と、(【0015】、図1) を有するレゾルバ100。(【0014】)」 (2)引用文献2の記載 ア 引用文献2には,図面とともに以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、レゾルバの固定子及びレゾルバに関するものである。」 「【0002】 回転体の回転角度検出に用いられるレゾルバにおいては、例えば特許文献1に示すように、固定子の周方向に並設された複数の歯部に対して、励磁コイルと正弦相及び余弦相の2相の出力コイルとが同一の歯部に巻回されて構成されているものがある。このようなレゾルバの固定子の一例として、例えば図9に示す固定子60は、固定子コア61の同一の歯部62に絶縁部材63を介して励磁コイル65と正弦相及び余弦相出力コイル66,67とが積み重なるように多層に巻回され、各コイル65?67が同一のスロット64内に収容されている。」 「【0004】 しかしながら、各コイル65?67を重ねて多層に巻回する途中で不規則な巻き崩れが生じ、特にレゾルバの固定子に用いるコイルは極細の線材を用いその巻数も多いため、巻回中の巻き崩れが生じ易い。そのため、各コイルを同一の歯部に対して多層に整列巻きすることが難しく、巻き崩れが生じたコイルは正常に巻回されたものと比べて発生電圧に歪みが発生する等の不具合が生じ、特に励磁コイルの巻き崩れは角度検出精度に大きな影響を与えるものである。 【0005】 本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、同一歯部に巻回するコイルの巻き崩れを好適に防止し、回転角度の検出精度を向上させることができるレゾルバの固定子及びレゾルバを提供することにある。」 上記記載から、引用文献2には、以下の技術事項が記載されていると認められる。 「各コイルを同一の歯部に対して多層に整列巻きすることが難しい、レゾルバの固定子に用いるコイルにおいて、同一歯部に巻回するコイルの巻き崩れを好適に防止して回転角度の検出精度を向上させる。」 5 本願発明と引用発明の対比 (1)引用発明の「軸中心の方向に延在して周方向に沿って等間隔に配置されている複数のステータ突起部201」は、本願発明の「内側に」「形成される」「複数の歯」に相当する。 また、引用発明の「複数のステータ突起部201」は、「軸中心の方向に延在して周方向に沿って等間隔に配置されている」から、隣接する「ステータ突起部201」の間には、溝状の空間が存在するものと認められ(図1参照)、複数のステータ突起部201の間にある複数の溝状の空間は、本願発明の「複数の歯」と「交互に形成される」「複数の」「スロット」に相当する。 さらに、引用発明の「磁性材料により構成され」ることは、本願発明の「磁性材質」であることに相当する。 そうすると、引用発明の「軸中心の方向に延在して周方向に沿って等間隔に配置されている複数のステータ突起部201を有する、略環状の磁性材料により構成されたステータコア200」は、本願発明の「内側に複数の歯とスロットとが交互に形成される磁性材質の固定子」に相当する。 (2)引用発明において、「ステータコア200のステータ突起部201に巻回されるコイル500」について、「上側インシュレータ300と下側インシュレータ400により、ステータコア200とコイル500は絶縁されている」とされているから、上側インシュレータ300及び下側インシュレータ400がステータ突起部201に対応する部分を有することは明らかであって、当該部分は本願発明の「前記歯に対応する歯絶縁部」に相当するといえる。 また、引用発明の「ステータコア200の軸方向の前後」とは、「図1の上下」を意味するから(段落【0015】参照)、「上側インシュレータ300及び下側インシュレータ400」を「ステータコア200の軸方向の前後からステータコア200に装着」することは、本願発明の「前記固定子の上下両面から前記固定子に取り付け」ることに相当する。 そうすると、引用発明の「樹脂製であり、ステータコア200の軸方向の前後からステータコア200に装着される上側インシュレータ300及び下側インシュレータ400」は、本願発明の「内側に前記歯に対応する歯絶縁部が形成され、前記固定子の上下両面から前記固定子に取り付けられる絶縁カバー」に相当する。 (3)引用発明の「ステータコア200のステータ突起部201に巻回されるコイル500であって、上側インシュレータ300と下側インシュレータ400により、ステータコア200とコイル500は絶縁されている、コイル500」は、本願発明の「前記歯絶縁部を介して前記歯に巻き取られるコイル」に相当する。 (4)引用発明の「レゾルバ100」は、本願発明の「レゾルバ」に相当する。 (5)以上より、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。 <一致点> 「内側に複数の歯とスロットとが交互に形成される磁性材質の固定子と、 内側に前記歯に対応する歯絶縁部が形成され、前記固定子の上下両面から前記固定子に取り付けられる絶縁カバーと、 前記歯絶縁部を介して前記歯に巻き取られるコイルと、を含むレゾルバ。」 <相違点> 本願発明は「前記巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合が、0.8以上かつ1以下である」のに対し、引用発明においては、コイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合の限定がない点。 6 判断 相違点についての判断 レゾルバの技術分野において、同一歯部に巻回するコイルの巻き崩れを防止して回転角度の検出精度を向上させることは、引用文献2にも記載されているとおり、本願優先日前に周知の技術である。ここで、各歯に巻き回されるコイルの巻き崩れを防止するということは、各歯に巻き回されるコイルの巻取幅を均一にすることにほかならない。なお、各歯に巻き回されるコイルの巻取幅を均一にすることの結果、コイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合は1となる。 そして、レゾルバの技術分野において、回転角度の検出角度を向上させることは、当業者にとって自明の課題である。 したがって、引用発明において、回転角度の検出精度を向上させるという自明の課題を解決するために、上記周知技術を適用して、各歯に巻き回されるコイルの巻取幅を均一にすることは、当業者が容易に想到し得たことである。そして、この結果、巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合は1となる。そうすると、相違点は、当業者であれば容易に想到し得たことにすぎない。 そして、本願発明の奏する作用効果について、引用発明及び周知技術から予測されるものを超える格別顕著な作用効果は認められない。 よって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)請求人の主張について ア 請求人は、審判請求書において、以下のとおり主張している。 「本願の請求項1においては、歯に巻き取られるコイルの巻取均一度についての最適の数値範囲を記載している。即ち、歯に巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合が、0.8以上かつ1以下である最適の数値範囲を提示している。しかし、引用文献1においては、コイルの素材のみについて説明するたけで、コイルの巻取均一度に関わる数値範囲は一切開示していない。引用文献2においては、歯に巻き回されるコイルが崩壊しないように固定子の巻回部33aに仕切り壁35を設け、その仕切り壁35を基準にして径方向の内側部分には凹設深さを大きくし、径方向の外側部分には凹設深さを浅くしてコイルを巻き取る構成のみを開示している。即ち、引用文献2の仕切り壁35を基準にしてコイルの巻取が均一ではない。拒絶査定においては、引用文献2の段落0004において、レゾルバの回転角度の精度を向上させるために、コイルの巻取幅を均一にすることは周知であるので、本願発明1のコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合を0.69以上かつ1以下にすることは、当業者が容易になし得ると指摘されているが、単に「均一に巻き取ることが望ましい」という程度にしか言及しておらず、コイルの巻取均一度についての最適の数値範囲は一切開示していない。なお、引用文献3においては、ティースカバー部を仕切りで三つの区域に区切って各区域にコイルを巻き回しており、各区域のコイルの巻取幅は全て同一である。本願発明1に記載されているコイルの巻取均一度に関わる最適の数値範囲のうち下限範囲は一切開示していない。 このように、引用文献1?3は、本願発明の目的とは全く異なる目的を有しており、それによって問題を解決する方向も全く相違するものである。即ち、引用文献1?3は、本願発明1のように歯に巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合を定義することを全く意図しておらず、示唆もしていない。本願明細書における詳細な説明を参照すれば、本願発明1に記載された巻取幅の割合は、数値限定の臨界的意義を有する。本願の発明者は、重ねられた試行錯誤の末、歯に巻き取られるコイルの巻取幅の割合が性能に大きい影響を及ぼすことが分かり、数多いテストを経てその割合を得ることができたものである。すなわち、本願発明1は、単なる取捨選択による構成ではなく、発想の転換のみによって導き出すことができる構成であるといえる。」 イ しかしながら、上記(1)で述べたとおり、巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合が1であるものは、引用発明において、回転角度の検出精度を向上させるという自明の課題を解決するために、結果として、当業者であれば容易に想到し得たものである。 そして、巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合が1であるもの、すなわち、本願発明の数値範囲に含まれるものが、引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、「歯に巻き取られるコイルのうち最外周に位置するコイルの最長巻取幅に対する最短巻取幅の割合」を指標とする点、当該指標の数値範囲の開示の有無、その臨界的意義の有無を検討する余地はない。 以上より、請求人の上記主張は採用し得ないものであり、本願発明は引用発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであると言わざるを得ない。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2020-08-21 |
結審通知日 | 2020-08-25 |
審決日 | 2020-09-08 |
出願番号 | 特願2018-524731(P2018-524731) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩本 太一、岡田 卓弥、菅藤 政明 |
特許庁審判長 |
岡田 吉美 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 中塚 直樹 |
発明の名称 | レゾルバ |
代理人 | 特許業務法人矢野内外国特許事務所 |