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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1370740
審判番号 不服2019-17201  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-20 
確定日 2021-02-18 
事件の表示 特願2015-195859「漏洩同軸ケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 4月 6日出願公開,特開2017- 69128,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2015年(平成27年)10月 1日の出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 3月29日付け:拒絶理由通知書
令和 1年 5月10日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 6月12日付け:拒絶理由(最後の拒絶理由)通知
令和 1年 8月 9日 :意見書,手続補正書の提出
令和 1年 9月13日付け:令和 1年 8月 9日の手続補正についての補正却下の決定,拒絶査定(原査定)
令和 1年12月20日 :審判請求書,手続補正書の提出
令和 2年 8月26日付け:拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由」という。)
令和 2年10月22日 :意見書,手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和 1年 9月13日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項に係る発明は,以下の引用文献Aに記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2 令和元年5月10日付け手続補正書でした補正は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下,「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
理由3 この出願は,発明の詳細な説明の記載が,特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

引用文献A 特開昭51-101883号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。

理由1 本願請求項に係る発明は,以下の引用文献1-5に記載された発明に基いて,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
理由2 この出願は,明細書,特許請求の範囲の記載が,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

引用文献1 特開平11-144533号公報
引用文献2 実願昭59-71574号(実開昭60-181818号)のマイクロフィルム
引用文献3 特開2013-149543号公報
引用文献4 特開2013-42271号公報
引用文献5 特開2014-67608号公報

第4 本願発明
本願請求項1-6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」-「本願発明6」という。)は,令和 2年10月22日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
内部導体と,
前記内部導体の外周上に配置された絶縁体と,
前記絶縁体の外周上に配置された外部導体と,
を有する漏洩同軸ケーブルであって,
前記絶縁体は,発泡した樹脂により形成され,架橋されていない発泡絶縁層と,
前記発泡絶縁層の外周上に配置され,発泡していない樹脂または発泡していないエラストマーからなり,一体的に筒状に形成され架橋されている架橋補強層とからなり,
前記外部導体はスロットを有し,
消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第十2条第1項第5号ロただし書の規定に基づく「耐熱電線の基準」(平成九年十二月十八日 消防庁告示第十一号)に準拠した耐熱試験の後,絶縁抵抗が0.4MΩ/1.3m以上である漏洩同軸ケーブル。」

なお,本願発明2-6は,概略,本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献1には,図面とともに次の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同様である。)

「【請求項1】 内部導体と,発泡フッ素樹脂から成る被覆層と,外部導体とがこの順に同軸的に配置されたシールド電線において,
前記被覆層と外部導体との間に,熱変形温度が発泡フッ素樹脂よりも高い材質から成る第2の被覆層を備えることを特徴とするシールド電線。」

「【発明の属する技術分野】本発明は,医療用超音波探触子等と接続して使用するシールド電線に関し,特に,端末加工処理の困難さを解消するものである。」

「【発明が解決しようとする課題】このシールド電線を超音波探触子等に使用する場合には,内部導体及び外部導体のそれぞれを他部に電気的に接続するための端末処理が必要になる。この端末処理の方法として,最近では,CO_(2)ガスレーザーやYAGレーザーを用いて,レーザー光線により,ケーブルの同軸構造を崩さずに,各心シース層10,外部導体9さらには内部導体7を切断する方法が広く行なわれている。
【0008】しかし,被覆層8に発泡フッ素樹脂を用いている場合には,レーザー光線のエネルギーで被覆層8が破壊され,内部導体7と外部導体9とが電気的に導通して,いわゆるショート状態が発生する。
【0009】本来,フッ素樹脂の耐熱性は比較的優れているが,発泡率が60%を超えるような発泡フッ素樹脂の場合には,材料の融点以下の温度でも容易に発泡体構造が破壊されてしまう性質を持っている。
【0010】そのため,発泡フッ素樹脂と金属である外部導体とを比べると,熱によって加工される割合は,発泡フッ素樹脂の方が遥かに大きく,外部導体を切断する際に,その強さが外部導体切断用に調整されているレーザー光線の熱エネルギーが僅かの時間でも被覆層に加わると,その熱で発泡フッ素樹脂が溶融し,被覆層の絶縁が破壊されてしまい,その結果として内部導体と外部導体とのショート状態が発生してしまう。」

「【0019】本発明の実施形態のシールド電線は,図1の断面図に示すように,1本の素線または複数本の撚り線から成る内部導体1と,内部導体1を外部から絶縁するための発泡フッ素樹脂から成る第1被覆層2と,熱変形温度が発泡フッ素樹脂よりも高い材質で構成された第2被覆層3と,内部導体1へのノイズ混入を防止する外部導体4と,外部導体4を絶縁する各心シース層5とを備え,それらが同軸上に配置されている。
【0020】内部導体1は,銅や銅合金を素材とし,合計の断面積が0.0005mm^(2)から0.05mm^(2)の間にある,一般的にAWG30?AWG50と呼ばれている導体である。
【0021】発泡フッ素樹脂から成る第1被覆層2の外周に設ける第2被覆層3は,その素材として,四フッ化エチレン樹脂,エチレン・四フッ化エチレン共重合体樹脂,四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂,パーフロロアルコキシ樹脂,ポリイミド樹脂など,熱変形温度が発泡フッ素樹脂よりも高い樹脂を用いて形成する。
【0022】例えば,内部導体1の導体断面積が0.005mm^(2)であるAWG40電線の場合では,内部導体1を錫メッキがされた直径が0.03mmの銅または銅合金の素線7本で構成し,第1被覆層2は,0.03mmの厚さの発泡フッ素樹脂テープを内部導体1の回りに2層巻き付けて,0.06mmの厚みに形成する。
【0023】第2被覆層3は,第1被覆層2の発泡フッ素樹脂よりも耐熱性に優れた厚みが0.005mm程度の高分子フィルムを巻き付けて形成する。また,外部導体9は,直径が0.03mmの銅または銅合金から成る二十数本の素線を第2被覆層3の外周に巻き付けて形成する。
【0024】また,各心シース層5は,外部導体9の外周に例えば0.02mm厚のポリエステル樹脂フィルム等を巻き付けたり,または溶融した高分子材料を押し出し成型機を使って外部導体9の外周に成型することにより形成する。」

「【図1】



(2)上記(1)から,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「1本の素線または複数本の撚り線から成る内部導体1と,内部導体1を外部から絶縁するための発泡フッ素樹脂から成る第1被覆層2と,熱変形温度が発泡フッ素樹脂よりも高い材質で構成された第2被覆層3と,内部導体1へのノイズ混入を防止する外部導体4と,外部導体4を絶縁する各心シース層5とを備え,
それらが同軸上に配置されているシールド電線であって,
内部導体1は,銅や銅合金を素材とし,合計の断面積が0.0005mm^(2)から0.05mm^(2)の間にある,一般的にAWG30?AWG50と呼ばれている導体であって,
発泡フッ素樹脂から成る第1被覆層2の外周に設ける第2被覆層3は,その素 材として,四フッ化エチレン樹脂,エチレン・四フッ化エチレン共重合体樹脂,四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂,パーフロロアルコキシ樹脂,ポリイミド樹脂など,熱変形温度が発泡フッ素樹脂よりも高い樹脂を用いて形成し,
内部導体1の導体断面積が0.005mm^(2)であるAWG40電線の場合では,内部導体1を錫メッキがされた直径が0.03mmの銅または銅合金の素線7本で構成し,第1被覆層2は,0.03mmの厚さの発泡フッ素樹脂テープを内部導体1の回りに2層巻き付けて,0.06mmの厚みに形成し,
第2被覆層3は,第1被覆層2の発泡フッ素樹脂よりも耐熱性に優れた厚みが0.005mm程度の高分子フィルムを巻き付けて形成し,
外部導体9は,直径が0.03mmの銅または銅合金から成る二十数本の素線を第2被覆層3の外周に巻き付けて形成する,
シールド導線。」

2 その他の文献について
(1)当審拒絶理由に引用された引用文献2の第3頁第5-17行には,「フッ素樹脂からなる絶縁体を架橋することで当該絶縁体の吸水性が向上すること。」が記載されている。

(2)当審拒絶理由に引用された引用文献3の段落0009及び0033には,「内層と外層からなる絶縁体のうち,外層を架橋することで絶縁体の耐熱性が向上すること。」が記載されている。

(3)当審拒絶理由に引用された引用文献4の段落0002-0003,及び図6には,以下の点が記載されている。

「 新幹線沿いに布設されて列車と地上との無線連絡のために使用されたり,あるいは,地下鉄構内や地下街に布設されて地上との消防無線や警察無線の連絡用に使用されている漏洩同軸ケーブルであって,
内部導体102,絶縁体103,外部導体104及び外被(シース)105を備えて同軸状に構成されており,外部導体104には,同導体104内の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために,周期的なスロット部101が設けられている,漏洩同軸ケーブル。」

(4)当審拒絶理由に引用された引用文献5の段落0008,0030には,「ポリオレフィン系樹脂をシラン架橋すること,及び架橋後のゲル分率が50%程度であること。」が記載されている。

(5)原査定において引用された引用文献Aの,特許請求の範囲,第2頁左上欄第1乃至7行,第2頁右上欄第7乃至11行において,「発泡ポリエチレン1次絶縁層」が架橋されていないものであることは文脈上自明であることを参酌すると,引用文献Aには,以下の事項が記載されている。

「 中心導体(1)と,
前記中心導体(1)の外周上に配置され,発泡した樹脂により形成され,架橋されていない発泡ポリエチレン1次絶縁層(21)と,
前記発泡ポリエチレン一次絶縁層(21)の外周上に配置され,発泡していない樹脂により形成され,架橋されている架橋ポリエチレン2次絶縁層(22)と,
前記架橋ポリエチレン2次絶縁層(22)の外周上に配置された銅編組導体(3)と,
を有する耐熱同軸ケーブル。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると,次のことがいえる。

ア 引用発明の「内部導体1」,「外部導体9」は,本願発明1の「内部導体」,「外部導体」にそれぞれ対応し,引用発明の「第1被覆層2」と「第2被覆層3」を合わせたものが,本願発明1の「絶縁体」に対応する。

イ 引用発明の「内部導体1を外部から絶縁するための発泡フッ素樹脂から成る第1被覆層2」は,本願発明1の「発泡絶縁層」と,「発泡した樹脂により形成され」る点で一致する。

ウ 引用発明の「第2被覆層3」は,「発泡フッ素樹脂から成る第1被覆層2の外周に設け」られ,「その素材として,四フッ化エチレン樹脂,エチレン・四フッ化エチレン共重合体樹脂,四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体樹脂,パーフロロアルコキシ樹脂,ポリイミド樹脂など,熱変形温度が発泡フッ素樹脂よりも高い樹脂を用い」ること,及び,樹脂は発泡することで熱変形温度が低下するという技術常識に照らすと,引用発明のこれらの樹脂は発泡していないことは明らかであるから,本願発明1の「架橋補強層」と,「前記発泡絶縁層の外周上に配置され,発泡していない樹脂」により形成される「補強層」である点で一致する。

エ 引用発明の「シールド導線」は,複数の導体が「同軸上に配置されている」から,本願発明1の「漏洩同軸ケーブル」と,「同軸ケーブル」である点で一致する。

(2)一致点・相違点
したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点と,相違点がある
といえる。
<一致点>
「 内部導体と,
前記内部導体の外周上に配置された絶縁体と,
前記絶縁体の外周上に配置された外部導体と,
を有する同軸ケーブルであって,
前記絶縁体は,発泡した樹脂により形成された発泡絶縁層と,
前記発泡絶縁層の外周上に配置され,発泡していない樹脂または発泡していないエラストマーにより形成された補強層とからなる,
同軸ケーブル。」

<相違点>
(相違点1)
本願発明1の「発泡絶縁層」は「架橋されていない」のに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。

(相違点2)
本願発明1の「架橋補強層」は「架橋されている」のに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。

(相違点3)
本願発明1の「漏洩同軸ケーブル」は,「外部導体」に「スロット」を有する「漏洩」ケーブルであるのに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。

(相違点4)
本願発明1の「漏洩同軸ケーブル」は,「消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第十2条第1項第5号ロただし書の規定に基づく「耐熱電線の基準」(平成九年十二月十八日 消防庁告示第十一号)に準拠した耐熱試験の後,絶縁抵抗が0.4MΩ/1.3m以上である」のに対して,引用発明はこの点について特定されていない点。

(3)相違点についての判断
ア 相違点3について
事案に鑑みて上記相違点3について先に検討する。
引用文献4に記載されているように,「外部導体」に「スロット」を有する「漏洩同軸ケーブル」は周知技術であると認められる。

しかしながら,一般的に「同軸ケーブル」における「外部導体」は,引用文献1の段落0019に記載されているように,「内部導体1へのノイズ混入を防止する」ために設けるものであるから,たとえ「外部導体」に「スロット」を有する「漏洩同軸ケーブル」が周知技術であったとしても,引用発明の「外部導体4」に「スロット」を設けることは,「内部導体1」へノイズを混入させることになるため,阻害要因があるといえる。

さらに,引用発明は,引用文献1の段落0001に記載されているように,「医療用超音波探触子等と接続して使用するシールド電線」である一方,引用文献4は,「新幹線沿いに布設されて列車と地上との無線連絡のために使用されたり,あるいは,地下鉄構内や地下街に布設されて地上との消防無線や警察無線の連絡用に使用されている漏洩同軸ケーブル」であるから,その技術分野が異なり,引用発明に引用文献4を適用する動機付けがあるとはいえない。

そして,相違点3についての構成は,上記引用文献2,3,5,Aには記載されていない。
すると,引用発明において,周知技術を適用し,相違点3に係る本願発明1の構成を想到することは,当業者であれば容易になし得たものであるとはいえない。

したがって,他の相違点について判断するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用文献1及び引用文献2-5,Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2-6について
本願発明2-6は,本願発明1の全ての構成要素を備える従属請求項であり,上記相違点3に係る本願発明1と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1及び引用文献2-5,Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
1 理由1について
本願発明1-6は,上記「第6 対比・判断」における相違点3に係る構成を有するものである。
そして,当該相違点3に係る構成は,原査定における引用文献Aには記載されていない。
また,上記「第6 対比・判断」における「1 本願発明1について」の「(3)相違点についての判断」で検討したように,「外部導体」に「スロット」を有する「漏洩同軸ケーブル」が,本願出願前における周知技術であったとしても,「耐熱同軸ケーブル」である引用文献Aに適用することは阻害要因があるといえ,本願発明1-6は,当業者であっても,原査定における引用文献Aに基づいて,容易に発明できたものとはいえない。
したがって,原査定の理由1を維持することはできない。

2 理由2について
出願当初明細書の段落0015には,「発泡絶縁層20の外周上に,架橋補強層(外部充実層)30が配置されている。発泡絶縁層20と架橋補強層30との積層構造により,同軸ケーブル100の絶縁体90が構成されている。」ことが,出願当初明細書の段落0043-0045には,「消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第十2条第1項第5号ロただし書の規定に基づく「耐熱電線の基準」(平成九年十二月十八日 消防庁告示第十一号)に準拠した」耐熱試験が,出願当初明細書の段落0056-0065には,「実施例1?実施例4の同軸ケーブルに対して,耐熱試験を行った。」点,及び,「耐熱試験後の内部導体と外部導体との間の絶縁抵抗を評価した。耐熱試験後の絶縁抵抗は,実施例1?実施例4のすべてで,0.4MΩ/1.3m以上という基準を満たしている。」点が記載されている。
すると,本願発明1の「消防法施行規則(昭和三十六年自治省令第六号)第十2条第1項第5号ロただし書の規定に基づく「耐熱電線の基準」(平成九年十二月十八日 消防庁告示第十一号)に準拠した耐熱試験の後,絶縁抵抗が0.4MΩ/1.3m以上である漏洩同軸ケーブル」は,出願当初明細書等に記載した事項の範囲内であると認められる。
したがって,原査定の理由2を維持することはできない。

3 理由3について
本願明細書の段落0056-0065には,「実施例1?実施例4の同軸ケーブルに対して,耐熱試験を行った。」点,及び,「耐熱試験後の内部導体と外部導体との間の絶縁抵抗を評価した。耐熱試験後の絶縁抵抗は,実施例1?実施例4のすべてで,0.4MΩ/1.3m以上という基準を満たしている。」点が記載されている。
すると,発明の詳細な説明の記載は,本願発明1-6を実施することができる程度に記載されていると認められる。
したがって,原査定の理由3を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
1 理由1について
以下,当審拒絶理由の理由1が解消したか否かについて検討する。
本願発明1-6は,上記「第6 対比・判断」における相違点3に係る構成を有するものであり,当該相違点3に係る構成は,上記「第6 対比・判断」のとおり,本願発明1は,当業者であっても引用文献1及び引用文献2-5,Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。
よって,当審拒絶理由の理由1は解消した。

2 理由2(明確性)について
以下,当審拒絶理由の理由2(明確性)が解消したか否かについて検討する。
「補正前の請求項1には,「内部導体と,前記内部導体の外周上に配置され,発泡した樹脂により形成され,架橋されていない発泡絶縁層と,前記発泡絶縁層の外周上に配置され,発泡していない樹脂または発泡していないエラストマーにより形成され,架橋されている架橋補強層とからなる絶縁体と,」と記載されているが,「内部導体」と,「発泡絶縁層」と,「架橋補強層」とは,全てが「絶縁体」に係るようにも読めるし,そのうちの一部のみが「絶縁体」に係るようにも読めるため,「絶縁体」は,「内部導体」と,「発泡絶縁層」と,「架橋補強層」とのいずれを有するかが不明瞭である。」とした拒絶理由は,補正後の請求項1において,「前記内部導体の外周上に配置された絶縁体と,」,「前記絶縁体は,発泡した樹脂により形成され,架橋されていない発泡絶縁層と,前記発泡絶縁層の外周上に配置され,発泡していない樹脂または発泡していないエラストマーからなり,一体的に筒状に形成され架橋されている架橋補強層とからなり,」と補正されることにより,解消した。

第9 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。


 
審決日 2021-01-27 
出願番号 特願2015-195859(P2015-195859)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01B)
P 1 8・ 55- WY (H01B)
P 1 8・ 121- WY (H01B)
P 1 8・ 537- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 井上 和俊
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 漏洩同軸ケーブル  

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