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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1370741
審判番号 不服2019-13550  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-09 
確定日 2021-02-16 
事件の表示 特願2016- 43816「画素ユニット、及び撮像素子」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 9月14日出願公開、特開2017-162886、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年3月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 8月10日 上申書、手続補正書の提出
平成30年11月 1日付け 拒絶理由通知書
平成30年12月21日 意見書、手続補正書の提出
平成31年 3月 1日付け 拒絶理由(最後の拒絶理由)通知書
平成31年 4月24日 意見書、手続補正書の提出
令和 元年 7月 1日付け 拒絶査定
令和 元年10月 9日 審判請求書、手続補正書の提出
令和 2年 7月 8日付け 拒絶理由通知書
令和 2年 9月14日 意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(令和元年7月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1ないし12に係る発明は、以下の引用文献1ないし3に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.特開2016-18898号公報
2.特開2012-234988号公報
3.特開2009-135319号公報

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由(令和2年7月8日付け)の概要は次のとおりである。

A 本願請求項3ないし6に係る発明は、引用文献Aに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

B 本願請求項3ないし12に係る発明は、以下の引用文献AないしCに基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
A.特開2011-49446号公報(当審において新たに引用した文献)
B.特開2009-135319号公報(拒絶査定時の引用文献3)
C.特開2016-18898号公報(拒絶査定時の引用文献1)

第4 本願発明
本願請求項1ないし12に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明12」という。)は、令和2年9月14日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし12は以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
光電変換素子と、
前記光電変換素子に接続する転送ゲートを備える転送トランジスタと、
前記転送ゲートに接続するフローティングディフュージョン領域とを備える画素ユニットであって、
前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置されており、
前記転送ゲートは、
ゲート幅方向に第1のゲート幅を有し、前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、前記フローティングディフュージョン領域から離れるゲート長方向に延びる第1のゲート領域と、
前記ゲート幅方向に前記第1のゲート幅より小さい第2のゲート幅を有し、前記第1のゲート領域から連続して前記ゲート長方向に延びる第2のゲート領域とを含み、
前記第2のゲート領域は、前記第1のゲート領域から離れる方向に前記第1のゲート幅から前記第2のゲート幅になるように徐々に小さくなることを特徴とする画素ユニット。
【請求項2】
前記第2のゲート領域は、テーパ状に形成されている請求項1に記載の画素ユニット。
【請求項3】
光電変換素子と、
平面視で前記光電変換素子に接続する転送ゲートと、
前記転送ゲートに接続するフローティングディフュージョン領域とを備える画素ユニットであって、
前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造を備え、
前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、平面視で前記光電変換素子に囲まれている前記転送ゲートの領域は、前記フローティングディフュージョン領域から離れるに従い、広がることなく、かつ、前記転送ゲートの領域のうちの前記フローティングディフュージョン領域から離れている領域が徐々に小さくなるように形成されていることを特徴とする画素ユニット。
【請求項4】
前記転送ゲートは、前記フローティングディフュージョン領域から離れている前記領域が、テーパ状に形成されている請求項3に記載の画素ユニット。
【請求項5】
前記転送ゲートの平面形状は、四角形の前記フローティングディフュージョン領域から離れた側の2つの角部を切り欠いた形状である請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画素ユニット。
【請求項6】
前記光電変換素子、前記転送ゲート、及び前記フローティングディフュージョン領域が、直線上に配置されている請求項1乃至5のいずれか1項に記載の画素ユニット。
【請求項7】
前記フローティングディフュージョン領域は、拡散する不純物濃度が異なる第1の拡散領域及び第2の拡散領域を含んで構成されており、
前記第1の拡散領域は、前記第2の拡散領域よりも不純物濃度が高く、
前記第2の拡散領域は、前記第1の拡散領域を挟むように前記第1の拡散領域に隣接する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画素ユニット。
【請求項8】
前記フローティングディフュージョン領域に接続されて前記フローティングディフュージョン領域に蓄積された電荷をリセットするリセットトランジスタをさらに備える請求項1乃至7のいずれか1項に記載の画素ユニット。
【請求項9】
前記フローティングディフュージョン領域に接続して前記フローティングディフュージョン領域で変換した電圧を増幅する増幅トランジスタをさらに備える請求項1乃至8のいずれか1項に記載の画素ユニット。
【請求項10】
前記転送ゲートは、前記フローティングディフュージョン領域の側を含む前記転送ゲートの端部が、前記光電変換素子の前記転送ゲート側の端部から前記フローティングディフュージョン領域に向かって延びる延長部をさらに備える請求項1乃至9のいずれか1項に記載の画素ユニット。
【請求項11】
前記請求項1乃至10のいずれか1項に記載の画素ユニットが複数配置された撮像素子であって、
前記画素ユニットのうち、一部の画素ユニットが第1の方向に並んで配置された画素ユニット列を構成し、
前記画素ユニット列がさらに第1の方向と直交する第2の方向に複数並んで配置された撮像素子。
【請求項12】
前記画素ユニット列を構成する前記一部の画素ユニットは、前記画素ユニットの電気信号を読み出す1つの信号線に接続されている請求項11に記載の撮像素子。」

第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定及び当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換装置に関する。」

「【0010】
以下の実施形態では、説明の簡単化のために、単一の光電変換部を含む光電変換装置について説明するが、典型的には、複数の光電変換部が配列されうる。複数の光電変換部を含む光電変換装置は、例えば、AF(Auto Focus)センサ、ラインセンサまたはイメージセンサを構成しうる。該光電変換装置は、画像を取得するためのイメージングデバイス、例えば、カメラの一部を構成する。
【0011】
以下で説明するp型、n型は、相互に入れ替え可能である。つまり、以下で説明されるp型をn型に変更し、n型をp型に変更することができる。特許請求の範囲に記載された「第1導電型」、「第2導電型」は、相互に異なる導電型を意味し、それぞれp型、n型
であってもよいし、それぞれn型、p型であってもよい。以下の説明においては、信号電荷が正孔の場合を説明し、導電型を入れ替えた場合には、信号電荷は電子となる。
【0012】
図1には、本発明の第1実施形態の光電変換装置が示されている。図1は、光電変換装置の平面図PV、平面図PVのA-A’線に沿った断面図CSVA、平面図PVのB-B’線に沿った断面図CSVBを含む。なお、平面図PVでは、構造の理解の容易化のために、層間絶縁膜4、第3半導体領域(表面領域)22およびサイドスペーサ33は取り除かれている。
【0013】
光電変換装置は、素子分離91と、p型の電荷蓄積領域21と、p型の浮遊拡散領域41と、ゲート電極Gと、n型の第1半導体領域100とを含む。光電変換装置はまた、n型の第2半導体領域3を含み、p型の電荷蓄積領域21、p型の浮遊拡散領域41およびn型の第1半導体領域100は、n型の第2半導体領域3の中に配されている。第1半導体領域100におけるn型の不純物濃度は、第2半導体領域3におけるn型の不純物濃度より高い。第2半導体領域3は、例えば、n型エピタキシャル層でありうる。第2半導体領域3は、例えば、n型の半導体基板1の上にn型の埋め込み層2を介して配されうる。埋め込み層2のn型の不純物濃度は、半導体基板1のn型の不純物濃度および第2半導体領域3のn型の不純物濃度よりも高い。p型の電荷蓄積領域21の上には、n型の第3半導体領域(表面領域)22が配されうる。p型の電荷蓄積領域21と、n型の第2半導体領域3のうちp型の電荷蓄積領域21の近傍の領域と、n型の第3半導体領域22とによって埋め込み型のフォトダイオード(光電変換部)が構成される。第1半導体領域100は、断面図CSVAおよび断面図CSVBに示すように、素子分離91の下にも存在している。
【0014】
ゲート電極Gは、ゲート絶縁膜31を介してn型の第2半導体領域3の上に配され、所定の電位が印加されることにより、p型の電荷蓄積領域21に蓄積された電荷をp型の浮遊拡散領域41に転送するためのチャネルをn型の第2半導体領域3に形成する。ゲート電極Gの側面には、サイドスペーサ33が配されうる。ゲート電極G、第3半導体領域22、浮遊拡散領域41および素子分離91は、層間絶縁膜4で覆われる。浮遊拡散領域41には、コンタクトプラグ42が接続され、浮遊拡散領域41は、コンタクトプラグ42を介して増幅トランジスタ(不図示)のゲート電極に電気的に接続されうる。
【0015】
図1では、電荷蓄積領域21を含む光電変換部の一部分のみが示されているが、他の部分は任意である。例えば、光電変換部は、図22に例示されるような構成、即ち、電荷蓄積領域21のうちゲート電極Gが配される側とは反対側の部分と素子分離91との間にも第1半導体領域100が配された構成を有しうる。
【0016】
図2は、図1(a)の同様の領域を示す平面図であるが、図2では、ゲート電極Gが点線で示され、第3半導体領域22が取り除かれ、電荷蓄積領域21の一部が切り欠いて示され、また、浮遊拡散領域41が取り除かれている。図3(a)には、活性領域ARが示され、図3(b)には、ゲート電極Gおよび浮遊拡散領域41が示されている。また、図2、図3(a)、図3(b)では、活性領域AR、素子分離91およびゲート電極Gのそれぞれの構造を説明するための線や点が付加されている。
【0017】
層間絶縁膜4の下に存在する構造体(半導体基板)の表面において、活性領域ARと素子分離91が配された素子分離領域とは排他的な関係にあり、素子分離91が存在しない領域が活性領域ARである。活性領域ARには、電荷蓄積領域21、第3半導体領域22、浮遊拡散領域41および第1半導体領域100が含まれる。
【0018】
素子分離91は、活性領域ARを取り囲むように配されている。活性領域ARは、仮想線VLで相互に接する第1領域AR1および第2領域AR2を含む。図3(a)に示されるように、仮想線VLに平行な方向における第2領域AR2の幅W2は、該方向における第1領域AR1の幅W1より狭い。図2および図3(a)に示されるように、第2領域AR2の外縁を規定する境界線は、第1境界線BL1と第2境界線BL2とを含む。第1境界線BL1は、仮想線VLの上の第1点P1を一端とし仮想線VLの上にはない第2点P2を他端とする線である。第2境界線BL2は、仮想線VLの上の第3点P3を一端とし仮想線VLの上にはない第4点P4を他端とする線である。また、図3(a)に示されるように、第1領域AR1および第2領域AR2は、それぞれ矩形形状を有している。
【0019】
電荷蓄積領域21は、第1領域AR1に配され、浮遊拡散領域41は、第1領域AR1および第2領域AR2にまたがって配されている。n型の第1半導体領域100は、p型の電荷蓄積領域21の少なくとも一部を取り囲むようにp型の電荷蓄積領域21と素子分離91との間に配された部分(図1のPV、図2参照)を含む。該部分は、図5において部分101として示されている。また、n型の第1半導体領域100は、第2領域AR2(浮遊拡散領域41の下)に配された部分(図1のCSVA、CSVB参照)を含む。該部分は、図5において部分102として示されている。
【0020】
図2に示されるように、ゲート電極Gは、第1部分G1、第2部分G2および第3部分G3を含む。第1部分G1は、第1点P1を覆うように第1領域AR1よび第2領域AR2にまたがっている。また、第1部分G1は、第1境界線BL1に沿って(第1境界線BL1に平行に)設けられている。第2部分G2は、第3点P3を覆うように第1領域AR1よび第2領域AR2にまたがっている。また、第2部分G2は、第2境界線BL2に沿って(第2境界線BL2に平行に)設けられている。第3部分G3は、第1部分G1と第2部分G2とを連結するように第1領域AR1の上に配されている。n型の第1半導体領域100の外縁を規定する境界線BL(図5参照)は、第3部分G3と仮想線VLとの間を通る部分を含む。一例において、第1部分G1および第2部分G2は、仮想線VLに直交する方向に延び、第3部分G3は、仮想線VLに平行な方向に延びている。
【0021】
上記のような構成では、電荷蓄積領域21の電荷を浮遊拡散領域41に転送するチャネルが形成されるn型の第2半導体領域3は、素子分離91に接していない。換言すると、n型の第2半導体領域3における前記チャネルが形成される領域およびその近傍の領域は、素子分離91に接していない。このような構成は、暗電流の発生を低減するために効果的である。また、このような構成では、前記チャネルが形成されるn型の第2半導体領域3よりもn型の不純物濃度が高いn型の第1半導体領域100が、前記チャネルが形成される領域の下に存在しない。よって、低照度時(即ち、電荷蓄積領域に蓄積される電荷が少ない時)における転送効率が向上する。これにより、照度(入射光量)と浮遊拡散層に現れる電位変化との間のリニアリティが改善される。また、ゲート電極Gを第1部分G1、第2部分G2および第3部分G3を含む構成とすることで、電界集中を緩和することができる。」

「【0038】
図13には、本発明の第4実施形態の光電変換装置が示されている。図13は、光電変換装置の平面図PV、平面図PVのA-A’線に沿った断面図CSVA、平面図PVのB-B’線に沿った断面図CSVBを含む。図13中の平面図PVでは、構造の理解の容易化のために、層間絶縁膜4、第3半導体領域(表面領域)22およびサイドスペーサ33は取り除かれている。なお、第4実施形態として言及しない事項は、第1乃至第3実施形態に従いうる。第4実施形態では、ゲート電極Gの第3部分G3は、浮遊拡散領域41から遠ざかるにつれて仮想線VLに平行な方向における幅が狭くなった部分を有する。このような構成は、ゲート電極Gの容量を低減し、ゲート電極Gを駆動する際の負荷を低減するために有利である。」

「【0046】
上述の各実施形態の構成は、適宜、変更可能であり、組み合わせが可能である。」

【図1】

【図2】

【図3】

【図13】

【図22】

図1によると、「ゲート電極G」は、平面視において、「ゲート電極G」は、「p型の電荷蓄積領域21」、「素子分離91」、「p型の浮遊拡散領域41」に囲まれており、また、ゲート幅は一定の幅を有し、「p型の浮遊拡散領域41」と接する部分は凹状となっていることがわかる。

したがって、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。

「素子分離91と、p型の電荷蓄積領域21と、p型の浮遊拡散領域41と、ゲート電極Gと、n型の第1半導体領域100と、n型の第2半導体領域3を含み、
p型の電荷蓄積領域21、p型の浮遊拡散領域41およびn型の第1半導体領域100は、n型の第2半導体領域3の中に配され、
p型の電荷蓄積領域21と、n型の第2半導体領域3のうちp型の電荷蓄積領域21の近傍の領域と、n型の第3半導体領域22とによって埋め込み型のフォトダイオード(光電変換部)が構成され、
ゲート電極Gは、ゲート絶縁膜31を介してn型の第2半導体領域3の上に配され、所定の電位が印加されることにより、p型の電荷蓄積領域21に蓄積された電荷をp型の浮遊拡散領域41に転送するためのチャネルをn型の第2半導体領域3に形成し、
ゲート電極Gは、p型の電荷蓄積領域21と、素子分離91と、p型の浮遊拡散領域41に囲まれており、また、ゲート幅は一定の幅を有し、p型の浮遊拡散領域41と接する部分は凹状となっている、
ことを特徴とする、光電変換装置。」

また、引用文献1には以下の事項が記載されている。

「ゲート電極Gの容量を低減し、ゲート電極Gを駆動する際の負荷を低減するために、ゲート電極Gのゲート幅は、幅が狭くなった部分を有すること。」

2 引用文献2について
原査定に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関し、特に酸化シリコン膜を有する素子分離構造に関する。」

「【発明を実施するための形態】
【0008】
図1を用いて半導体装置の一例である撮像装置、具体的にはCMOSイメージセンサーを説明する。図1(a)は半導体装置のX-Y平面図であり、図1(b)は図1(a)のA-A’線における半導体装置の断面図である。なお、以下の説明では、第1導電型をp型、第1導電型とは反対の導電型である第2導電型をn型として説明するが、これとは逆に、第1導電型がn型、第2導電型がp型であってもよい。
【0009】
図1(a)は撮像装置の4画素を示している。各画素は第1の半導体素子群1111と第2の半導体素子群2111とを有しており、第1の半導体素子群1111と第2の半導体素子群2111はシリコン基板100に形成されている。なお、本例では、4つの画素の各々が第1の半導体素子群1111を有し、2つの画素が1つの第2の半導体素子群2111を共有している、いわゆる画素共有構造(2画素共有構造)となっている。勿論、各画素がそれぞれ別々の第2の半導体素子群2111を有していてもよいし、3つ以上の画素が1つの第2の半導体素子群2111を共有していてもよい。なお、撮像装置は、4画素に限らず、例えば100万個以上の多数の画素を含むことができる。また撮像装置は、画素に加えて、CMOSプロセスで形成される公知の周辺回路を含むこともできる。
【0010】
第1の半導体素子群1111は第1の素子活性部1110に、第2の半導体素子群2111は第2の素子活性部2110に、それぞれ設けられている。図1(a)では、第1の素子活性部1110、第2の素子活性部2110をそれぞれ太線で囲んで示している。なお、本例では、第2の素子活性部2110は3つの素子活性部に分けて配置されているが、第2の半導体素子群2111を1つの素子活性部にまとめて配置することもできる。
【0011】
第1の素子活性部1110は素子分離部3120に囲まれている。つまり、第1の半導体素子群1111は素子分離部3120で囲まれている。第2の素子活性部2110は、素子分離部3120を挟んで第1の素子活性部1110とは反対側に位置している。また、第2の素子活性部2110は素子分離部3120に囲まれている。つまり、第2の半導体素子群2111も素子分離部3120で囲まれている。
【0012】
素子分離部3120はLOCOS法によって形成された酸化シリコン膜300とシリコン基板100内に配された不純物領域121を含んでいる。酸化シリコン膜300はバーズビーク部310を有し、バーズビーク部310の下には第1導電型の第1の不純物領域121が設けられている。なお、図1(a)ではバーズビーク部310の表記を省略して第1の不純物領域121の位置を示している。
【0013】
第1の半導体素子群1111は半導体素子である光電変換素子111を含んでいる。ここでは、光電変換素子111はフォトダイオードであるが、フォトゲートであってもよい。第1の半導体素子群1111は、第2導電型の浮遊拡散領域115(フローティングディフュージョン領域)を含んでいる。第1の半導体素子群1111は、光電変換素子111と浮遊拡散領域115との間に、半導体素子であるスイッチング素子を含んでいる。このスイッチング素子は、MOS構造を有する転送ゲート600である。転送ゲート600はゲート電極601とゲート絶縁膜602とを含む。
【0014】
第2の半導体素子群2111は、半導体素子である増幅トランジスタ610とリセットトランジスタ620と選択トランジスタ630とウェルコンタクト640を含んでいる。増幅トランジスタ610とリセットトランジスタ620、選択トランジスタ630はそれぞれ、制御電極(ゲート)と2つの主電極(ソースとドレイン)を有するMOSFETである。各トランジスタの主電極116は、第1導電型の不純物領域であるウェル領域(不図示)に配された第2導電型の不純物領域として設けられている。第2の半導体素子群2111のウェル領域と、後述する第1の半導体素子群のウェル領域112は、ウェルコンタクト640を介して所定の電位に規定される。
【0015】
浮遊拡散領域115は不図示の配線を介して増幅トランジスタ610のゲート611に接続されている。また、浮遊拡散領域115は不図示の配線を介して、リセットトランジスタ620のソースに接続されている。リセットトランジスタ620のドレインと増幅トランジスタ610のドレインには、不図示の配線によって電源電圧VDDが供給されている。増幅トランジスタ610のソースは、選択トランジスタ630のドレインと、共通の第2導電型の不純物領域からなる。選択トランジスタ630のソースには信号線を介して不図示の定電流源が接続されており、増幅トランジスタ610はその定電流源とソースフォロワ回路を構成している。
【0016】
リセットトランジスタ620のゲート621にON信号を供給することで浮遊拡散領域115の電位を電源電圧VDDに基づく電位に規定し、浮遊拡散領域115の電荷をリセットする。リセットトランジスタ620のゲートおよび転送ゲート600にOFF信号を供給し光電変換素子111での信号電荷の蓄積を開始する。転送ゲート600にON信号を供給することにより、信号電荷は浮遊拡散領域115に転送されて、増幅トランジスタ610のゲート611の電位を変化させる。選択トランジスタ630のゲート631にON信号を供給することにより、光電変換素子111で生じた信号電荷に応じた電圧信号が信号線に現れる。このようにして取り出された信号は不図示の読み出し回路で読み出され、撮像装置の外部へ出力される。
【0017】
図1(b)を用いて半導体装置の構成を詳述する。シリコン基板100は、第2導電型のシリコン基体101とシリコン基体101の上にエピタキシャル成長によって成膜された第2導電型のシリコン層102を有している。素子分離部3120は、酸化シリコン膜300と、第1導電型の第1の不純物領域121を含む構造(素子分離構造)を成している。更に、素子分離部3120は第1導電型の第2の不純物領域122を有することができる。第1の不純物領域121は酸化シリコン膜300の端部であるバーズビーク部310の下に位置しており、第2の不純物領域122は酸化シリコン膜300の中央部320の下に位置している。第1の不純物領域121の不純物濃度は第2の不純物領域122の不純物濃度よりも高いことが好ましいが、第1の不純物領域121の不純物濃度は第2の不純物領域122の不純物濃度以下であってもよい。第1の不純物領域121および第2の不純物領域122の不純物濃度は、例えば、1×1015?1×1020atoms/cm3である。第1の不純物領域121と第2の不純物領域122はどちらも酸化シリコン膜300に接している。第2の不純物領域122は第1の不純物領域121よりもシリコン基板100の深部にまで延在している。
【0018】
光電変換素子111は、第2導電型のシリコン層102に配された第1導電型の不純物領域であるウェル領域112と、ウェル領域112の中に配された第2導電型の不純物領域である蓄積領域113とを有している。ウェル領域112と蓄積領域113はpn接合を成している。蓄積領域113とシリコン基板100の表面との間には第1導電型の不純物領域である表面領域114が設けられている。ウェル領域112の不純物濃度は、第2の不純物領域122の濃度よりも低い。表面領域114の不純物濃度はウェル領域112の不純物濃度よりも高い。以上のように光電変換素子111は、いわゆる埋め込み型のフォトダイオードの構造を有している。
【0019】
LOCOS法によって形成された酸化シリコン膜300のバーズビーク部310の近傍、特に第1部分110とバーズビーク部310の界面には結晶構造に不整合部が生じやすい。この不整合部で生じた電荷がノイズ(例えば、暗電流)の原因となる場合がある。なお、第2導電型がn型である場合にはこれらのノイズの原因となる電荷は電子であり、第2導電型がp型である場合にはこれらのノイズの原因となる電荷は正孔となる。第1導電型の第1の不純物領域121をバーズビーク部310の下に配することにより、不整合部で生じた電荷が光電変換素子111の第2導電型の蓄積領域113に移動して再結合することを抑制し、ノイズを低減することができる。また、光電変換素子111に限らず、第2導電型の浮遊拡散領域115や、第2の半導体素子群2111のトランジスタの主電極116である第2導電型の不純物領域に対しても、ノイズの影響を低減することができる。」

【図1】

図1(a)によると、「転送ゲート600」は、「光電変換素子111」、「第2導電型の浮遊拡散領域115」、「素子分離領部3120」に囲まれており、また、「転送ゲート600」のゲート幅は一定の幅を有し、「第2導電型の浮遊拡散領域115」と接する部分は直線状となっていることがわかる。

したがって、引用文献2には次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。

「光電変換素子111と、
第2導電型の浮遊拡散領域115(フローティングディフュージョン領域)と、
光電変換素子111と浮遊拡散領域115との間の、MOS構造を有する転送ゲート600とを有し、
転送ゲート600は、光電変換素子111、第2導電型の浮遊拡散領域115、素子分離領部3120に囲まれており、また、転送ゲート600のゲート幅は一定の幅を有し、第2導電型の浮遊拡散領域115と接する部分は直線状となっている、
画素。」

3 引用文献3について
原査定及び当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、固体撮像装置、及びこの固体撮像装置を備えたカメラに関する。」

「【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、転送トランジスタのトランジスタ特性を維持することができる。従って、画素が微細化されても、光電変換素子からフローティングディフージョン領域への信号電荷の転送能力を向上することができる。また、光電変換素子の受光面積を十分に確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
図1に、本発明に係る固体撮像装置、いわゆるCMOSイメージセンサに適用される一実施の形態の概略構成を示す。本実施の形態に係る固体撮像装置1は、複数の画素2が規則性をもって2次元配列された撮像部(いわゆる画素部)3と、撮像部3の周辺に配置された周辺回路、すなわち垂直駆動部4、水平転送部5及び出力部6とを有して構成される。画素2は、1つの光電変換素子であるフォトダイオードPDと、複数の画素トランジスタ(MOSトランジスタ)Trとにより構成される。
【0017】
フォトダイオードPDは、光入射で光電変換され、その光電変換で生成された信号電荷を蓄積する領域を有して成る。複数の画素トランジスタTrは、本例では転送トランジスタTr1、リセットトランジスタTr2、増幅トランジスタTr3及び選択トランジスタTr4の4つのMOSトランジスタを有している。転送トランジスタTr1は、フォトダイオードPDに蓄積された信号電荷を後述するフローティングディフージョン(FD)領域に読み出すトランジスタである。リセットトランジスタTr2は、フローティングディフージョン(FD)領域の電位を規定の値に設定するためのトランジスタである。増幅トランジスタTr3は、フローティングディフージョン(FD)領域に読み出された信号電荷を電気的に増幅するためのトランジスタである。選択トランジスタTr4は、画素1行を選択して画素信号を垂直信号線8に読み出すためのトランジスタである。
なお、図示しないが、選択トランジスタTr4を省略した3トランジスタとフォトダイオードPDで画素を構成することも可能である。
【0018】
画素2の回路構成では、転送トランジスタTr1のソースがフォトダイオードPDに接続され、そのドレインがリセットトランジスタTr2のソースに接続される。転送トランジスタTr1とリセットトランジスタTr2間の電荷-電圧変換手段となるフローティングディフージョン(FD)領域(転送トランジスタのドレイン領域、リセットトランジスタのソース領域に相当する)が増幅トランジスタTr3のゲートに接続される。増幅トランジスタTr3のソースは選択トランジスタTr4のドレインに接続される。リセットトランジスタTr2のドレイン及び増幅トランジスタTr3のドレインは、電源電圧供給部に接続される。また、選択トランジスタTr4のソースが垂直信号線8に接続される。
【0019】
垂直駆動部4からは、1行に配列された画素のリセットトランジスタTr2のゲートに共通に印加される行リセット信号φRSTが、同じく1行の画素の転送トランジスタTr1のゲートに共通に印加される行転送信号φTRGが、同じく1行の選択トランジスタTr4のゲートに共通に印加される行選択信号φSELが、それぞれ供給されるようになされる。
【0020】
水平転送部5は、各列の垂直信号線8に接続された増幅器またはアナログ/デジタル変換器(ADC)、本例ではアナログ/デジタル変換器9と、列選択回路(スイッチ手段)SWと、水平転送線(例えばデータビット線と同数の配線で構成されたバス配線)10とを有して構成される。出力部6は、増幅器又は、アナログ/デジタル変換器及び/又は信号処理回路、本例では水平転送線10からの出力を処理する信号処理回路11と、出力バッファ12とを有して構成される。
【0021】
この固体撮像装置1では、各行の画素2の信号が各アナログ/デジタル変換器9にてアナログ/デジタル変換され、順次選択される列選択回路SWを通じて水平転送線10に読み出され、順次に水平転送される。水平転送線10に読み出された画像データは、信号処理回路11を通じて出力バッファ12より出力される。
【0022】
画素2における一般的な動作は、先ず最初に転送トランジスタTr1のゲートとリセットトランジスタTr2のゲートをオン状態にしてフォトダイオードPDの電荷を全て空にする。次いで、転送トランジスタTr1のゲートとリセットトランジスタTr2のゲートをオフ状態にして電荷蓄積を行う。次に、フォトダイオードPDの電荷を読み出す直前にリセットトランジスタTr2のゲートをオン状態にしてフローティングディフージョン(FD)領域の電位をリセットする。その後、リセットトランジスタTr2のゲートをオフ状態にし、転送トランジスタTr1のゲートをオン状態にしてフォトダイオードPDからの電荷をフローティングディフージョン(FD)領域へ転送する。増幅トランジスタTr3ではゲートに電荷が印加されたことを受けて信号電荷を電気的に増幅する。一方、選択トランジスタTr4は前記読み出し直前のフローティングディフージョンリセット時から読み出し対象画素のみオン状態になり、該当画素内増幅トランジスタTr3からの電荷-電圧変換された画像信号が垂直信号線8に読み出されることになる。
【0023】
そして、本実施の形態においては、上述の固体撮像装置1において、画素が微細化されてもフォトダイオードPDの面積を十分に確保しつつ、フローティングディフージョン(FD)領域への信号電荷の転送を良好に行えるように、転送トランジスタTr1の転送ゲートを構成する。すなわち、本実施の形態では、転送ゲートのチャネル幅がフォトダイオードPD側よりフローティングディフージョン(FD)領域側で広くなるように構成される。さらに、変換効率をも改善できるように構成される。」

「【0034】
フローティン・ディフージョン(FD)領域の高濃度領域26がコンタクト部と共通、つまり共有することにより、高濃度領域の面積を最小とすることができる。本実施の形態において、高濃度領域26はコンタクト部を置く位置以外には必要ない。通常CMOSプロセスにおいて、高濃度領域は、レジストマスクを用いた不純物注入で形成されるため、コンタクト部の接触面積より十分大きくなっている。一般的にはゲートに接する拡散領域の一部のみが高濃度であるという構成になっていない。
【0035】
一方、フローティングディフージョン(FD)領域20をL字形状にすると、フローティングディフージョン(FD)領域20の面積が増大する。通常、面積の増大はフローティングディフージョン(FD)領域20における拡散容量(いわゆる接合容量)が増大し、変換効率の低下を招く。しかし、本実施形態では、L字形状のフローティングディフージョン(FD)領域20のうち、転送ゲート21の凸部に対応する一部の実質的に電荷が蓄積される領域とコンタクト部とを共有するn型の高濃度領域26を形成し、それ以外の領域はn型の低濃度領域27となるように不純物濃度分布を設定している。低濃度領域27での接合容量は非常に小さい。従って、フローティングディフージョン(FD)領域20における全体の接合容量は極度に増加することがなく、変換効率の低下は軽減される。
【0036】
フォトダイオードPDからフローティングディフージョン(FD)領域20のポテンシャルが浅い低濃度領域27へ転送された信号電荷は、ポテンシャルの深い高濃度領域26へ集められる。
【0037】
図3に、本発明の画素を構成するフォトダイオードPDと、フローティングディフージョン(FD)領域20と、転送トランジスタTr1特にその転送ゲートとを含む領域の第2実施形態を示す。本実施形態においては、フォトダイオードPDとフローティングディフージョン(FD)領域20との間にチャネル幅がフォトダイオードPD側よりフローティングディフージョン(FD)領域20側を広くした転送ゲート21を形成し、転送トランジスタTr1を形成して構成される。
【0038】
フォトダイオードPDは、正方形あるいは長方形等の四角形状を成している。フローティングディフージョン(FD)領域20は、フォトダイオードPDと対向する辺の長さがフォトダイオードPDの対向辺の長さと同じにした長方形状をなしている。転送ゲート21は、長方形の転送ゲート電極22と台形状のチャネル部23を有してなる。チャネル部23は、フォトダイオードPD側のチャネル幅Aがフローティングディフージョン(FD)領域20側のチャネル幅Bより狭く、フォトダイオードPDからフローティングディフージョン(FD)領域20に向って転送ゲート21のチャネル部23の幅が漸次広くなるように台形状に形成される。
【0039】
一方、フローティングディフージョン(FD)領域20は、上例と同様に長方形の中央部に高濃度領域(本例ではn+領域)26を形成し、残りの領域に低濃度領域(本例ではn-領域)27を形成して構成される。その他の不純物濃度などの構成は、第1実施形態で説明したと同様であるので、重複説明は省略する。
【0040】
第2実施形態の構成によれば、フォトダイオードPDが四角形状で形成されるので、面積を広く確保することができ、画素が微細化されても飽和電荷量を十分に確保することができる。また、転送ゲート21のチャネル部23のポテンシャルは、フォトダイオードPD側からフローティングディフージョン(FD)領域20側に向って漸次深くなるという電界が発生する。従って、フォトダイオードPDからフローティングディフージョン(FD)領域20への信号電荷の転送を良好に行うことができ、画素を微細化しても信号電荷の転送能力を改善することができる。
【0041】
一方、フローティングディフージョン(FD)領域20においては、高濃度領域26と低濃度領域27で形成されているので、フローティングディフージョン(FD)領域20における全体の接合容量を低く抑えることができ、変換効率を軽減することができる。
【0042】
第2実施形態でも、フローティングディフージョン(FD)領域20の低濃度領域27へ転送された信号電荷は、高濃度領域26へ集められる。その他、第1実施形態で説明したと同様の効果を奏する。」

4 引用文献Aについて
当審拒絶理由に引用された引用文献Aには、図面とともに次の事項が記載されている。

「【技術分野】
【0001】
本発明は、MOS型の固体撮像装置とその製造方法、及びこの固体撮像装置を備えたカメラ等の電子機器に関する。」

「【0004】
図23に、2画素共有構造のMOS固体撮像装置の構成例を示す。この固体撮像装置101は、1つのフローティングディフージョン部(FD)102を挟んで2つの光電変換部となるフォトダイオードPD1、PD2が対向して配列される。各フォトダイオードPD1、PD2とフローティングディフージョン部102間には、それぞれゲート絶縁膜を介して読み出しゲート電極103、104が形成される。この読み出しゲート電極103,104、フローティングディフージョン部102を有して、各フォトダイオードPD1、PD2に接続される読み出しトランジスタTr11、Tr12が構成される。この2画素のフォトダイオードPD1、PD2を1共有単位として、これが2次元アレイ状に配列される。1共有単位毎に、共通のリセットトランジスタTr2、増幅トランジスタTr3、選択トランジスタTr4が配列される。」

【図23】

図23によると、「トランジスタTr11」は、「フォトダイオードPD1」、「フローティングディフィージョン部102」に接しており、また、「トランジスタTr11」のゲート幅は「フローティングディフィージョン部102」に接する部分は一定の幅を有し、「フォトダイオードPD1」に接する部分は次第に幅が狭くなっており、「フローティングディフィージョン部102」と接する部分は直線状となっていることがわかる。

したがって、引用文献Aには次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されている。

「フォトダイオードPD1と、
フローティングディフィージョン部102と、
フォトダイオードPD1及びフローティングディフィージョン部102に接したトランジスタTr11とを有し、
トランジスタTr11のゲート幅はフローティングディフィージョン部102に接する部分は一定の幅を有し、フォトダイオードPD1に接する部分は次第に幅が狭くなっており、
トランジスタTr11のフローティングディフィージョン部102と接する部分は直線状となっている、
MOS固体撮像装置。」

第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1との対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1の「埋め込み型のフォトダイオード(光電変換部)」、「ゲート電極G」、「ゲート電極G」「ゲート絶縁膜31」「n型の第2版導体領域3」からなるチャネル、「p型の浮遊拡散領域41」、「光電変換装置」は、それぞれ本願発明1の「光電変換素子」、「転送ゲート」、「転送トランジスタ」、「フローティングディフュージョン領域」、「画素ユニット」に相当する。

イ 引用発明1の「ゲート電極G」のゲート幅は一定の幅を有しているから、このことと、本願発明1の「前記転送ゲートは、ゲート幅方向に第1のゲート幅を有し、前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、前記フローティングディフュージョン領域から離れるゲート長方向に延びる第1のゲート領域と、 前記ゲート幅方向に前記第1のゲート幅より小さい第2のゲート幅を有し、前記第1のゲート領域から連続して前記ゲート長方向に延びる第2のゲート領域とを含み、前記第2のゲート領域は、前記第1のゲート領域から離れる方向に前記第1のゲート幅から前記第2のゲート幅になるように徐々に小さくなること」は、「転送ゲート」が、ゲート幅方向に幅を有する点で共通する。

ウ したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「光電変換素子と、
前記光電変換素子に接続する転送ゲートを備える転送トランジスタと、
前記転送ゲートに接続するフローティングディフュージョン領域とを備える画素ユニットであって、
前記転送ゲートは、ゲート幅方向に幅を有していることを特徴とする画素ユニット。」

[相違点1]
本願発明1は「前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置されて」いるのに対して、引用発明1の「ゲート電極G」は、「p型の電荷蓄積領域21」と「素子分離91」と「p型の浮遊拡散領域41」に囲まれているために、「前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置されて」いない点。

[相違点2]
本願発明1の「前記転送ゲート」は、「ゲート幅方向に第1のゲート幅を有し、前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、前記フローティングディフュージョン領域から離れるゲート長方向に延びる第1のゲート領域と、前記ゲート幅方向に前記第1のゲート幅より小さい第2のゲート幅を有し、前記第1のゲート領域から連続して前記ゲート長方向に延びる第2のゲート領域とを含み、前記第2のゲート領域は、前記第1のゲート領域から離れる方向に前記第1のゲート幅から前記第2のゲート幅になるように徐々に小さくなる」のに対して、引用発明1はそのようになっていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点1について先に検討すると、相違点1に係る本願発明1の「前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置され」るという構成は、上記引用文献1-3、Aには記載されておらず、本願出願前おいて周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2、3、Aに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)引用発明2との対比
本願発明1と引用発明2を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明2の「光電変換素子111」、「転送ゲート600」、「転送ゲート600」を備える「MOS構造」、「第2導電型の浮遊拡散領域115(フローティングディフュージョン領域)」、「画素」は、それぞれ本願発明1の「光電変換素子」、「転送ゲート」、「転送トランジスタ」、「フローティングディフュージョン領域」、「画素ユニット」に相当する。

イ 引用発明2の「転送ゲート600のゲート幅は一定の幅を有し」、また、「第2導電型の浮遊拡散領域115と接する部分は直線状となっている」ことから、このことと、本願発明1の「前記転送ゲートは、ゲート幅方向に第1のゲート幅を有し、前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、前記フローティングディフュージョン領域から離れるゲート長方向に延びる第1のゲート領域と、前記ゲート幅方向に前記第1のゲート幅より小さい第2のゲート幅を有し、前記第1のゲート領域から連続して前記ゲート長方向に延びる第2のゲート領域とを含み、前記第2のゲート領域は、前記第1のゲート領域から離れる方向に前記第1のゲート幅から前記第2のゲート幅になるように徐々に小さくなること」は、「転送ゲート」が、ゲート幅方向に幅を有し、「前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であ」る点で共通する。

ウ したがって、本願発明1と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「光電変換素子と、
前記光電変換素子に接続する転送ゲートを備える転送トランジスタと、
前記転送ゲートに接続するフローティングディフュージョン領域とを備える画素ユニットであって、
前記転送ゲートは、ゲート幅方向に幅を有し、前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であることを特徴とする画素ユニット。」

[相違点3]
本願発明1は「前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置されて」いるのに対して、引用発明2の「転送ゲート600は、光電変換素子111、第2導電型の浮遊拡散領域115、素子分離領部3120に囲まれ」ているために、「前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置されて」いない点。

[相違点4]
本願発明1の「前記転送ゲート」は、「ゲート幅方向に第1のゲート幅を有し、前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、前記フローティングディフュージョン領域から離れるゲート長方向に延びる第1のゲート領域と、前記ゲート幅方向に前記第1のゲート幅より小さい第2のゲート幅を有し、前記第1のゲート領域から連続して前記ゲート長方向に延びる第2のゲート領域とを含み、前記第2のゲート領域は、前記第1のゲート領域から離れる方向に前記第1のゲート幅から前記第2のゲート幅になるように徐々に小さくなる」のに対して、引用発明2はそのようになっていない点。

(4)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点3について先に検討すると、相違点3に係る本願発明1の「前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置され」るという構成は、上記引用文献1-3、Aには記載されておらず、本願出願前おいて周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明2、引用文献1、3、Aに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(5)本願発明1についてのまとめ
したがって、本願発明1は、引用文献1-3、Aに基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の「前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置され」るという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-3、Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明3について
(1)引用発明1との対比
本願発明3と引用発明1を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明1の「埋め込み型のフォトダイオード(光電変換部)」、「ゲート電極G」、「p型の浮遊拡散領域41」、「光電変換装置」は、それぞれ本願発明3の「光電変換素子」、「平面視で前記光電変換素子に接続する転送ゲート」、「フローティングディフュージョン領域」、「画素ユニット」に相当する。

イ したがって、本願発明3と引用発明1との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「光電変換素子と、
平面視で前記光電変換素子に接続する転送ゲートと、
前記転送ゲートに接続するフローティングディフュージョン領域とを備える画素ユニット。」

[相違点5]
本願発明3は「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造を備え」ているのに対して、引用発明1の「ゲート電極G」は、「p型の電荷蓄積領域21」と「素子分離91」と「p型の浮遊拡散領域41」に囲まれているために、引用発明1の「ゲート電極G」は、「平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造を備え」ていない点。

[相違点6]
本願発明3は、「前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、平面視で前記光電変換素子に囲まれている前記転送ゲートの領域は、前記フローティングディフュージョン領域から離れるに従い、広がることなく、かつ、前記転送ゲートの領域のうちの前記フローティングディフュージョン領域から離れている領域が徐々に小さくなるように形成されている」のに対して、引用発明1はそのようになっていない点。

(2)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点5について先に検討すると、相違点5に係る本願発明3の「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造」は、上記引用文献1-3、Aには記載されておらず、本願出願前おいて周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明3は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2、3、Aに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(3)引用発明2との対比
本願発明3と引用発明2を対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明2の「光電変換素子111」、「転送ゲート600」、「第2導電型の浮遊拡散領域115(フローティングディフュージョン領域)」、「画素」は、それぞれ本願発明3の「光電変換素子」、「平面視で前記光電変換素子に接続する転送ゲート」、「フローティングディフュージョン領域」、「画素ユニット」に相当する。

イ 引用発明2の「第2導電型の浮遊拡散領域115と接する部分は直線状となっている」ことから、このことと、本願発明3の「前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、平面視で前記光電変換素子に囲まれている前記転送ゲートの領域は、前記フローティングディフュージョン領域から離れるに従い、広がることなく、かつ、前記転送ゲートの領域のうちの前記フローティングディフュージョン領域から離れている領域が徐々に小さくなるように形成されていること」は、「前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であ」る点で共通する。

ウ したがって、本願発明3と引用発明2との間には、次の一致点、相違点があるといえる。

[一致点]
「光電変換素子と、
平面視で前記光電変換素子に接続する転送ゲートと、
前記転送ゲートに接続するフローティングディフュージョン領域とを備える画素ユニットであって、
前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造を備え、
前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側が直線であり、平面視で前記光電変換素子に囲まれている前記転送ゲートの領域は、前記フローティングディフュージョン領域から離れるに従い、広がることなく、かつ、前記転送ゲートの領域のうちの前記フローティングディフュージョン領域から離れている領域が徐々に小さくなるように形成されていることを特徴とする画素ユニット。」

[相違点7]
本願発明3は「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造を備え」ているのに対して、引用発明2の「転送ゲート600は、光電変換素子111、第2導電型の浮遊拡散領域115、素子分離領部3120に囲まれ」ているために、「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造を備え」ていない点。

[相違点8]
本願発明3の前記転送ゲート」は、「平面視で前記光電変換素子に囲まれている前記転送ゲートの領域は、前記フローティングディフュージョン領域から離れるに従い、広がることなく、かつ、前記転送ゲートの領域のうちの前記フローティングディフュージョン領域から離れている領域が徐々に小さくなるように形成されている」のに対して、引用発明2はそのようになっていない点。

(4)相違点についての判断
事案に鑑みて、上記相違点7について先に検討すると、相違点7に係る本願発明3の「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造」は、上記引用文献1-3、Aには記載されておらず、本願出願前おいて周知技術であるともいえない。
したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明3は、当業者であっても、引用発明2、引用文献1、3、Aに記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(5)本願発明3についてのまとめ
したがって、本願発明3は、引用文献1-3、Aに基づいて当業者が容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明4ないし12について
本願発明4ないし12も、本願発明3の「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造」を備えるものであるから、本願発明3と同じ理由により、当業者であっても、引用文献1-3、Aに基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定についての判断
令和2年9月14日付けの手続補正により、補正後の請求項1、2は、「前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置されて」いるという技術的事項を有し、また、請求項3ないし12は、「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造」を備えるものとなった。当該「前記転送ゲートは、前記転送ゲートの前記フローティングディフュージョン領域の側を除いて前記光電変換素子が囲むように配置されて」いるという技術的事項、又は、「前記転送ゲートは、平面視でフローティングディフュージョン領域と接続する辺以外の辺は前記光電変換素子に接続し、前記光電変換素子で囲まれている構造」は、原査定における引用文献1ないし3に記載されておらず、本願出願前における周知技術でもないので、本願発明1ないし12は、当業者であっても、原査定における引用文献1ないし3に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-01-27 
出願番号 特願2016-43816(P2016-43816)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 113- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田邊 顕人  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小田 浩
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 画素ユニット、及び撮像素子  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 伊東 忠重  

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