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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1370821
審判番号 不服2019-13661  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-11 
確定日 2021-02-03 
事件の表示 特願2018- 91288「通信装置及び通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年10月11日出願公開、特開2018-160902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、2014(平成26年)5月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年8月16日 欧州)を国際出願日とする出願である特願2016-533843号の一部を、平成30年5月10日に新たに特許出願したものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成31年 2月19日付け :拒絶理由通知書
令和 1年 5月22日 :意見書、手続補正書の提出
令和 1年 6月 5日付け :拒絶査定
令和 1年10月11日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提出

第2 令和1年10月11日にされた手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和1年10月11日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された。(下線部は、補正箇所である。)
「システム周波数帯域幅にわたり、また前記システム周波数帯域幅内でかつ前記システム周波数帯域幅よりも狭い複数の制限された周波数帯域内での少なくともいくつかの端末デバイスとの少なくとも一部の通信をサポートする無線インターフェイスを使用するダウンリンク通信が基地局によってなされる無線通信システムにおける基地局の動作方法であって、前記方法は、
端末デバイスが当該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯の数に基づいて前記複数の制限された周波数帯域の中から一つの制限された周波数帯域を選択する際に使用した前記識別子を含む接続確立のためのリクエストを受信することと、
前記受信したリクエストに含まれる前記端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯域の数に基づいて、所定の計算式により計算される値に対して予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択することと、
前記選択された1つの制限された周波数帯域内で前記端末デバイスへダウンリンク通信を送信することと、を含む方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の、令和1年5月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載は次のとおりである。
「システム周波数帯域幅にわたり、また前記システム周波数帯域幅内でかつ前記システム周波数帯域幅よりも狭い複数の制限された周波数帯域内での少なくともいくつかの端末デバイスとの少なくとも一部の通信をサポートする無線インターフェイスを使用するダウンリンク通信が基地局によってなされる無線通信システムにおける基地局の動作方法であって、前記方法は、
端末デバイスが前記複数の制限された周波数帯域の中から1つの制限された周波数帯域を選択する際に使用された端末デバイスのための識別子を含む接続確立のためのリクエストを受信することと、
前記受信したリクエストに含まれる前記端末デバイスのための識別子に基づいて、前記端末デバイスのダウンリンク通信のために使用されるべき1つの制限された周波数帯域を選択することと、
前記選択され制限された周波数帯域内で前記端末デバイスへダウンリンク通信を送信することと、を含む方法。」

2 補正の適否

(1)補正の目的要件請求項1についての上記補正は、本件補正前の「複数の制限された周波数帯域の中から1つの制限された周波数帯域を選択する」ことについて、「端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯の数に基づいて」との限定を付し、また、本件補正前の「受信したリクエストに含まれる前記端末デバイスのための識別子に基づいて、前記端末デバイスのダウンリンク通信のために使用されるべき1つの制限された周波数帯域を選択する」ことについて、「端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯域の数に基づいて、所定の計算式により計算される値に対して予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択する」との限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(2)独立特許要件
上記補正は、特許請求の範囲の限縮を目的とするものであるから、本件補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

ア 本件補正発明

本件補正発明は、上記「1 (1)」に記載したとおりのものである。

イ 引用発明等

原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2013/093437号(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。

(ア)「It is assumed here the base station 504 is configured to communicate with the smart phone 506 over the first radio communication link 510 in accordance with the established principles of LTE-based communications.
(中略)
Although the smart phone 506 is typically only allocated a subset of the available PDSCH resources in any given subframe, the smart phone 506 could be allocated these resources anywhere across the full PDSCH bandwidth (BW). Accordingly, the smart phone will in the first instance receive and buffer the entire subframe. The smart phone 506 will then process the subframe to decode PDCCH to determine what resources are allocated on PDSCH, and then process the data received during PDSCH symbols and extracts the relevant higher-layer data therefrom.」(20ページ26行目?21ページ22行目)
(当審仮訳:
基地局504は、LTEベースの通信の確立された原理に従って、第1の無線通信リンク510上でスマートフォン506と通信するように構成されると仮定する。
(中略)
スマートフォン506は、典型的には、どのような所与のサブフレームにおいても利用可能なPDSCHリソースのサブセットを割り当てられるにすぎないが、スマートフォン506には、全PDSCH帯域幅(BW)のどこでもこれらのリソースを割り当てられ得るはずである。したがって、スマートフォンは、第1の例では、全サブフレームを受信し、およびバッファすることになる。次いで、スマートフォン506は、PDCCHを復調するようにサブフレームを処理して、PDSCH上でどのようなリソースが割り当てられているか判定し、次いで、PDSCHシンボル中に受信されたデータを処理し、そこから関連する上位層データを抽出する。)

(イ)「The inventor has recognised that the requirement for terminal devices to buffer and process each complete subframe to identify and extract what will typically be only a small fraction of the total PDSCH resources contained in the subframe for the terminal device introduces a significant processing overhead. Accordingly, the inventor has conceived of approaches in accordance with which example embodiments of the invention may allow for a terminal device, for example an MTC device, to operate generally in accordance with the principles of existing networks, but without needing to buffer and process an entire subframe to identify and extract its own higher-layer data from that subframe.
This can be achieved in accordance with some embodiments of the invention by pre-establishing a restricted frequency band within which higher-layer data, e.g. on PDSCH in LTE, may be communicated from a base station to a terminal device, wherein the restricted frequency band is narrower than the overall system frequency band (carrier bandwidth) used for communicating physical-layer control information, e.g. on PDCCH in LTE. Thus the base station may be configured to only allocate downlink resources for the terminal device on PDSCH within the restricted frequency band. Because the terminal device knows in advance that it will only be allocated PDSCH resources within the restricted frequency band, the terminal device does not need to buffer and process any PDSCH resources from outside the pre-determined restricted frequency band. This principle is schematically shown in Figure 7.」(21ページ29行目?22ページ14行目)

(当審仮訳:
本発明者の認識するところでは、端末デバイスが、典型的には端末デバイスのためにサブフレームに含まれる全PDSCHリソースのうちのごくわずかな部分であるリソースを識別し、及び抽出するために、各サブフレーム全体をバッファし、及び処理するという要件は、大きな処理オーバーヘッドをもたらす。したがって、本発明者は、その手法によれば、端末デバイス、例えばMTCデバイスが、サブフレームから端末デバイス自体の上位層データを識別し、及び抽出するために当該サブフレーム全体をバッファし、及び処理する必要なしに、概ね、既存のネットワークの原理に従って動作することを本発明の例示的な実施形態が可能にする手法を考案した。
これは、本発明のある実施形態によれば、上位層データが、例えば、LTEのPDSCH上で、基地局から端末デバイスへ通信され得る限られた周波数帯域幅を事前に確立することによって達成することができ、限られた周波数帯域は、例えば、LTEのPDCCH上で、物理層制御情報を通信するために使用される全システム周波数帯域(キャリア帯域幅)よりも狭い。よって、基地局は、限られた周波数帯域内のPDSCH上だけで端末デバイスのためのダウンリンクリソースを割り当てるように構成され得る。端末デバイスは、限られた周波数帯域内のPDSCHリソースだけを割り当てられることになることを事前に知っているため、予め決定される限られた周波数帯域外からのいかなるPDSCHリソースもバッファし、および処理する必要がない。この原理は、図7に概略的に示されている。)

(ウ)「It will of course be appreciated that the specific numerical parameters used here are provided purely for the sake of concrete example, and other implementations of the invention may adopt other parameters, for example different bandwidths and locations for the restricted frequency band.
There are a number of different ways in which information on the restricted frequency band can be established by / shared between the base station and terminal device.
In some cases the restricted frequency band may be standardised within the wireless communications system. For example, it may be decided that any terminal device and base station which are to operate within the wireless communication system in accordance with an implementation of an embodiment of the invention should assume a restricted frequency band that has a bandwidth of 1.4 MHz and a location at the centre of the system frequency band. (Of course other parameters could be defined, for example defining lower and upper frequency limits for the standardised restricted frequency bandwidth instead of a central frequency and bandwidth). This provides a simple approach, but with limited flexibility. It will be appreciated that a restricted frequency band may be established by the base station and terminal device in various ways based on pre-defined standards. For example, rather than explicitly define the restricted frequency range, a mechanism for deriving a range may be defined in relevant standards. For example, the standards may specify that all terminal devices are to assume a given bandwidth for the restricted frequency band and to derive a location for the restricted frequency band from an identifier that is known to both the base station and the terminal device. For example, in a simple implementation terminal devices associated with an odd-numbered IMSI may assume a first location for the restricted frequency band while terminal devices associated with an even IMSI may assume a second location for the restricted frequency band. This provides for multiple restricted frequency bands to be provided based on pre-defined standards so that a greater number of reduced-capacity terminal devices may be allocated in any given subframe.
However, to improve overall scheduling flexibility it may be preferable in some implementations for the restricted frequency band to be selected by the base station and conveyed to the terminal device in advance, for example during a cell-attach procedure. The operating capabilities of the terminal device will typically set some limits on the restricted frequency band that may be used. For example a given terminal device may be unable to operate using a restricted frequency band having a bandwidth above some threshold. This may be accounted for by standardisation, for example by limiting the maximum bandwidth that may be established by the base station for the restricted frequency band, or based on the exchange of capability messages between the base station and terminal device.」(24ページ28行目?25ページ31行目)

(当審仮訳:
ここで使用される特定の数値パラメータは、ただ単に具体例として提供されるだけであり、本発明の他の実施形態は、他のパラメータ、例えば、限られた周波数帯域についての異なる帯域幅及び位置を用いてもよいことが当然ながら理解されるであろう。
限られた周波数帯域上の情報が、基地局及び端末デバイスによって確立され/基地局と端末デバイスとの間で共有され得るいくつかの異なるやり方がある。
場合によっては、限られた周波数帯域は、無線通信システム内で標準化されてもよい。例えば、本発明の実施形態の実装形態に従って無線通信システム内で動作することになるあらゆる端末デバイスおよび基地局が、1.4MHzの帯域幅およびシステム周波数帯域の中央の場所を有する限られた周波数帯域を前提とすると決定され得る。(当然ながら、例えば、中心周波数及び帯域幅の代わりに、標準化される限られた周波数帯域の上限周波数及び下限周波数を定義するなど、他のパラメータが定義され得るはずである)。これは簡単な手法を提供するが、柔軟性の制限を伴う。限られた周波数帯域は、予め定義された規格に基づく様々なやり方で、基地局および端末デバイスによって確立され得ることが理解されるであろう。例えば、限られた周波数範囲を明示的に定義するのではなく、範囲を導出するためのメカニズムが関連する規格で定義されてもよい。例えば、この規格は、すべての端末デバイスが限られた周波数帯域について所与の帯域幅を前提とし、限られた周波数帯域の場所を、基地局と端末デバイスの双方に知られている識別子から導出するように指定してもよい。例えば、単純な実施形態では、奇数番号のIMSIに関連付けられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第1の場所を想定し、偶数番号のIMSIに関連付けられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第2の場所を想定することができる。これにより、予め定義された規格に基づいて複数の限られた周波数帯域が提供されるため、より多くの低容量端末デバイスが任意のサブフレームに割り当てられる可能性がある。
しかし、全般的なスケジューリングの柔軟性を改善するために、実装形態によっては、限られた周波数帯域が基地局によって選択され、前もって、例えば、セルアタッチ手続中に端末デバイスに伝達されることが好ましい場合もある。端末デバイスの動作能力は、典型的には、使用され得る限られた周波数帯域に何らかの制限を設定することになる。例えば、所与の端末デバイスが、ある閾値を上回る帯域幅を有する限られた周波数帯域を使用して動作することができない場合もある。これは、標準化、例えば、限られた周波数帯域について基地局によって確立され得る最大帯域幅を制限することによって、または、基地局と端末デバイスとの間の能力メッセージの交換に基づいて説明され得る。)

上記(ア)?(ウ)の記載及び当業者の技術常識を考慮すると、次のことがいえる。

a 上記「(ア)」には、「基地局504は、LTEベースの通信の確立された原理に従って、第1の無線通信リンク510上でスマートフォン506と通信するように構成される」、「スマートフォン506は、典型的には、どのような所与のサブフレームにおいても利用可能なPDSCHリソースのサブセットを割り当てられるにすぎないが、スマートフォン506には、全PDSCH帯域幅(BW)のどこでもこれらのリソースを割り当てられ得る」との記載がある。
そうすると、引用例には、「基地局は、LTEベースの通信の確立された原理に従い、スマートフォンには、全PDSCH帯域幅(BW)のどこでもこれらのリソースを割り当てられ得る」ものが記載されていると認められる。

b 上記「(イ)」には、「端末デバイス、例えばMTCデバイス」、「本発明のある実施形態によれば、上位層データが、LTEのPDSCH上で、基地局から端末デバイスへ通信され得る限られた周波数帯域幅を事前に確立することによって達成することができ、限られた周波数帯域は、例えば、LTEのPDCCH上で、物理層制御情報を通信するために使用される全システム周波数帯域(キャリア帯域幅)よりも狭い。よって、基地局は、限られた周波数帯域内のPDSCH上だけで端末デバイスのためのダウンリンクリソースを割り当てるように構成され得る。」との記載がある。
そうすると、引用例には「基地局は、限られた周波数帯域内のPDSCH上だけで端末デバイス(MTCデバイス)のためにダウンリンクを割り当てるように構成する」、「限られた周波数帯域は、全システム周波数帯域(キャリア帯域幅)よりも狭い」ものが記載されていると認められる。

c 上記「(ウ)」には、「範囲を導出するためのメカニズムが関連する規格で定義されてもよい。例えば、この規格は、すべての端末デバイスが限られた周波数帯域について所与の帯域幅を前提とし、限られた周波数帯域の場所を、基地局と端末デバイスの双方に知られている識別子から導出するように指定してもよい。例えば、単純な実施形態では、奇数番号のIMSIに関連付けられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第1の場所を想定し、偶数番号のIMSIに関連付けられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第2の場所を想定することができる。これにより、予め定義された規格に基づいて複数の限られた周波数帯域が提供されるため、より多くの低容量端末デバイスが任意のサブフレームに割り当てられる可能性がある。」との記載がある。
そうすると、引用例には「限られた周波数帯域の位置を基地局と端末デバイスの双方に知られている識別子から導出するものであって、奇数番号のIMSIと関連付けられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第1の場所を想定し、偶数番号のIMSIに関連づけられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第2の場所を想定し、予め定義された規格に基づいて複数の限られた周波数帯域が提供される」ものが記載されていると認められる。
また、上記「(ウ)」には、「しかし、全般的なスケジューリングの柔軟性を改善するために、実装形態によっては、限られた周波数帯域が基地局によって選択され、前もって、例えば、セルアタッチ手続中に端末デバイスに伝達されることが好ましい場合もある。」との記載がある。そうすると、上記の例では、引用例の「限られた周波数帯域」は、「基地局」から「端末デバイス」に伝達されないことは明らかである。
そうすると、引用例には「基地局」は「提供される限られた周波数帯域は端末デバイスに伝達されない」ものが記載されていると認められる。

d そして、上記「b」にも摘記したとおり、「基地局は、限られた周波数帯域内のPDSCH上だけで端末デバイスのためのダウンリンクリソースを割り当てる」ものであり、上記「c」には、限られた周波数帯域を導出する手順が記載されているものであるから、引用発明は、「基地局の動作方法」が記載されていると認められる。

以上を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「 基地局の動作方法であって、
基地局は、LTEベースの通信の確立された原理に従い、スマートフォンには、全PDSCH帯域幅(BW)のどこでもこれらのリソースを割り当てられ得るものであり、
また基地局は、限られた周波数帯域内のPDSCH上だけで端末デバイス(MTCデバイス)のためにダウンリンクリソースを割り当てるように構成するもの、であって、
該限られた周波数帯域は、全システム周波数帯域(キャリア帯域幅)よりも狭い、ものであり、
該限られた周波数帯域の位置を基地局と端末デバイスの双方に知られている識別子から導出するものであって、奇数番号のIMSIと関連付けられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第1の場所を想定し、偶数番号のIMSIに関連づけられた端末デバイスは、限られた周波数帯域の第2の場所を想定し、予め定義された規格に基づいて複数の限られた周波数帯域が提供される、ものであり、
提供される限られた周波数帯域は端末デバイスに伝達されない、
方法。」

[周知技術]

原査定の拒絶の理由に引用された、特表2009-542091号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(エ)「【0003】
図1は、3G UMTSネットワーク10における初期の接続および認証手続きを示す図である。WTRU12の電源投入時に、WTRU12の非アクセス階層(NAS)層14は、RRC接続をトリガするために、信号(ATTACH)を、WTRU12の無線リソース制御(RRC)層16に送信する(ステップ102)。RRC層16は、RRC接続を確立するために、RRC接続要求を、WTRUの初期の識別(すなわちIMSI)と共に、ユニバーサル地上無線アクセスネットワーク(universal terrestrial radio access network:UTRAN)18に送信する(ステップ104)。(後略)」

本願の優先日前に利用可能となった、EventHelix.com Inc.,”LTE RRC Connection Setup Messaging”([当審仮訳]:LTE RRC接続設定メッセージング),[online],2013年1月23日(アップロード),[令和2年6月8日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20130123195718/http://www.eventhelix.com/lte/attach/LTE-RRC-Connection-Setup-Messaging.pdf>(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(オ)「
UL-SCH: UE → eNodeB
RRC Connection Request
(中略)
・The message contains the UE-Identity
・IMSI is sent in the message if this is the first attach to the network
(後略)
」(5ページ)

(当審仮訳:
UL-SCH: UE → eNodeB
RRC接続要求
(中略)
・メッセージには、UE-Identityが含まれる
・ネットワークへの最初のアタッチの場合は、IMSIはメッセージ内で送信される
(後略)
)

上記(エ)?(オ)の記載並びに当業者の技術常識を考慮すると、「基地局は、IMSIを含むRRC接続要求を受信する。」ことは、周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。

ウ 対比・判断

本件補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。

(ア)引用発明の「スマートフォン」及び「端末デバイス」は、共に本件補正発明の「端末デバイス」に相当する。引用発明の「基地局」は、スマートフォンに対し、「全PDSCH帯域幅のどこでもこれらのリソースを割り当てられ得るもの」であるから、全PDSCH帯域幅とは、「システム周波数帯域幅」であるといえる。
そうすると、引用発明の「基地局」は、「システム周波数帯域幅にわたり端末デバイスとの通信をサポートする無線インターフェイスを使用するダウンリンク通信を行う」といえる。
また、引用発明の「基地局」は、「限られた周波数帯域のPDSCH上だけで端末デバイス(MTCデバイス)のためにダウンリンクを割り当てるように構成するもの」であり、「限られた周波数帯域は、全システム周波数帯域(キャリア帯域)よりも狭い」ものである。そして、「全システム周波数帯域(キャリア帯域)」は、「システム周波数帯域」であるといえるから、引用発明の「限られた周波数帯域」は、「システム周波数帯域幅内でかつシステム周波数帯域幅より狭い」といえる。
そうすると、引用発明の「基地局」は、「システム周波数帯域幅内でかつシステム周波数帯域幅より狭い限られた周波数帯域内で端末デバイスと通信をサポートする無線インターフェイスを使用するダウンリンク通信を行う」といえる。
また、引用発明の「基地局」はダウンリンクをエリア内に存在する複数の端末デバイスに割り当てるものであることは自明であるから、引用発明の「基地局」は「少なくともいくつかの端末デバイス」に対してダウンリンクを割り当てるものであるといえる。
一方、本件補正発明の「制限された周波数帯域」は「システム周波数帯域幅よりも狭い」ものである。そうすると、引用発明の「限られた周波数帯域」は、本件補正発明の「制限された周波数帯域」に相当する。
そうすると、引用発明の「基地局の動作方法であって、基地局は、LTEベースの通信の確立された原理に従い、スマートフォンには、全PDSCH帯域幅(BW)のどこでもこれらのリソースを割り当てられ得るものであり、また基地局は、限られた周波数帯域内のPDSCH上だけで端末デバイス(MTCデバイス)のためにダウンリンクを割り当てるように構成するもの、であって、該限られた周波数帯域は、全システム周波数帯域(キャリア帯域幅)よりも狭い、もの」は、本件補正発明と同様に「システム周波数帯域幅にわたり、また前記システム周波数帯域幅内でかつ前記システム周波数帯域幅よりも狭い複数の制限された周波数帯域内での少なくともいくつかの端末デバイスとの少なくとも一部の通信をサポートする無線インターフェイスを使用するダウンリンク通信が基地局によってなされる無線通信システムにおける基地局の動作方法」であるという点で一致する。

(イ)引用発明の「基地局」は、「LTEベースの通信の確立された原理に従」うものであるから、スマートフォン等の端末デバイスから接続確立のためのリクエストを受信するものであることは自明である。
そうすると、本件補正発明の「基地局」と、引用発明の「基地局」は、「接続確立のためのリクエストを受信する」点で共通する。

(ウ)引用発明の「限られた周波数帯域」は、「基地局と端末デバイスの双方に知られている識別子から導出する」ものであり、具体的な方法として「奇数番号のIMSIに関連付けられた端末デバイスは限られた周波数帯域の第1の場所を想定し、偶数番号のIMSIに関連付けられた端末デバイスは限られた周波数帯域の第2の場所を想定し、予め定義された規格に基づいて複数の限られた周波数帯域が提供される」ものであって、「提供される限られた周波数帯域は端末デバイスに伝達されない」ものである。
ここで、本件補正発明の「端末デバイスのための識別子」とは、明細書の段落【0058】に「識別子(IMSI)」とあるように、国際移動機加入者識別子(IMSI)を含むものであることは明らかであるから、本件補正発明の「端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値」とはIMSIに割り当てられた各番号を含むものであるといえる。
そうすると、引用発明の「IMSI」は「端末デバイスのための識別子」であるといえ、「奇数番号」及び「偶数番号」は「端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値」であるといえる。
また、引用発明の「基地局」は、「提供される限られた周波数帯域は端末デバイスに伝達されない」のだから、「限られた周波数帯域」の「第1の場所」又は「第2の場所」のどちらが「端末デバイス」に提供されるのかは、「基地局」及び「端末デバイス」の双方で判断をする必要があることは自明である。
そして、引用発明の「基地局」、「端末デバイス」は、IMSIが奇数であるか偶数であるかを判断し、基地局が提供できる周波数帯域の第1の場所、第2の場所を提供するのだから、基地局が提供できる周波数帯域の数が2つであることに基づいて周波数帯域を提供するものであるといえ、「基地局」及び「端末デバイス」は、2つの周波数帯域から1つの周波数帯を選択しているといえる。
そうすると、引用発明において、「端末デバイスは、該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と限られた周波数帯域数に基づいて、複数の限られた周波数帯域の中から一つの限られた周波数帯域を、端末デバイスで選択された1つの限られた周波数帯域として選択する」ものといえ、「基地局は、該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と限られた周波数帯域数に基づいて、複数の限られた周波数帯域の中から一つの限られた周波数帯域を、端末デバイスで選択された1つの限られた周波数帯域として選択する」ものであるといえる。そして、引用発明において、「該選択の際に用いるIMSIは基地局が受信する」ものであることは自明である。
そして、上記(イ)でも述べたとおり、引用発明の「基地局」は、「接続確立のためのリクエストを受信する」ものである。そして、引用発明は、限られた周波数帯域を選択する際、端末デバイスのための識別(IMSI)に関連づけられた数値に基づいて限られた周波数帯域内のPDSCH上でダウンリンクを提供するものであるから、「周波数帯域を選択する際に使用する識別子と接続確立のためのリクエストを受信する」ものであるといえる。
そうすると、本件補正発明の「端末デバイスが当該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯の数に基づいて前記複数の制限された周波数帯域の中から一つの制限された周波数帯域を選択する際に使用した前記識別子を含む接続確立のためのリクエストを受信すること」と、引用発明の「端末デバイスは、該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と限られた周波数帯域数に基づいて、複数の限られた周波数帯域の中から一つの限られた周波数帯域を、端末デバイスで選択された1つの限られた周波数帯域として選択する」ものであって「IMSIは基地局が受信する」ことは、「端末デバイスが当該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯の数に基づいて前記複数の制限された周波数帯域の中から一つの制限された周波数帯域を選択する際に使用する識別子と接続確立のためのリクエストを受信する」という点において共通する。
また、本件補正発明の「前記受信したリクエストに含まれる前記端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯域の数に基づいて、所定の計算式により計算される値に対して予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択する」ことと、引用発明の「基地局は、該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と限られた周波数帯域数に基づいて、複数の限られた周波数帯域の中から一つの限られた周波数帯域を、端末デバイスで選択された1つの限られた周波数帯域として選択する」こととは、「端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯域の数に基づいて、予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択する」点で共通する。
そして、上記(ア)でも述べたとおり、本件補正発明及び引用発明は、「制限された周波数帯域内での少なくともいくつかの端末デバイスとの少なくとも一部の通信をサポートする無線インターフェイスを使用するダウンリンク通信が基地局によってなされる」ものであるから、本件補正発明と引用発明は「選択された1つの制限された周波数帯域内で端末デバイスへのダウンリンク通信を送信する」点で一致する。

以上を総合すると、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。

(一致点)

「 システム周波数帯域幅にわたり、また前記システム周波数帯域幅内でかつ前記システム周波数帯域幅よりも狭い複数の制限された周波数帯域内での少なくともいくつかの端末デバイスとの少なくとも一部の通信をサポートする無線インターフェイスを使用するダウンリンク通信が基地局によってなされる無線通信システムにおける基地局の動作方法であって、
端末デバイスが当該端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯の数に基づいて前記複数の制限された周波数帯域の中から一つの制限された周波数帯域を選択する際に使用する識別子と接続確立のためのリクエストを受信することと、
端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯域の数に基づいて、予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択することと、
選択された1つの制限された周波数帯域内で端末デバイスへのダウンリンク通信を送信する、
方法。」

(相違点1)
「接続確立のためのリクエスト」に関し、本件補正発明は、「接続確立のためのリクエスト」が、「識別子」を含むものであるのに対し、引用発明では、当該事項が特定されていない点。

(相違点2)
「識別子」に関し、本件補正発明の「識別子」は、「端末デバイス」が「制限された周波数帯域を選択する際に使用した識別子」であるのに対し、引用発明では、当該事項が特定されていない点。

(相違点3)
「端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯域の数に基づいて、予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択する」ことに関し、本件補正発明は、「所定の計算式により計算される値に対して予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択する」ものであるのに対し、引用発明では、当該事項が特定されていない点。

以下、上記各相違点について検討する。

(相違点1について)
上記[周知技術]で述べたとおり、「基地局は、IMSIを含むRRC接続要求を受信する。」ことは周知技術であるから、引用発明においても、接続確立のためのリクエストに、IMSI、すなわち、識別子を含む接続確立のためのリクエストとすることは、当業者が容易になし得る事項である。
よって、相違点1は、当業者が容易になし得る事項である。

(相違点2ついて)
引用発明の「基地局」と「端末デバイス」は、「限られた周波数帯域」をそれぞれ選択して同じ「限られた周波数帯域」で通信を行う必要があるのだから、「限られた周波数帯域」を選択する際に使用するIMSIは制限された周波数帯域を選択する際に使用する識別子といえ、「端末デバイス」は基地局からダウンリンクを受信する前のタイミングにおいて「端末デバイスのための識別子に関連付けられた数値と前記複数の制限された周波数帯域の数に基づいて、1つの制限された周波数帯域として選択する」必要があることは自明である。そして、そのタイミングを、接続要求の前に行うものとするか接続要求の後に行うものとするかは、「端末デバイス」内での処理過程において処理負荷等を考慮して実施すべき位置を決定すべき事項であり、接続要求の前とするか後とするかは、当業者が適宜選択し得る事項である。
よって、相違点2は、当業者が適宜なし得る事項である。

(相違点3について)
引用発明の「基地局」は、「IMSI」が奇数番号又は偶数番号であるかを判断するものである。そして、「IMSI」が奇数番号又は偶数番号であるかを判断することは、IMSIを2で除算した余りを計算で求める計算式(所定の計算式に相当)によって計算可能であり、余りの値が0であれば偶数番号、余りの値が1であれば、奇数番号であると判断することができることは当業者にとって明らかである。そうすると、引用発明においても「所定の計算式により計算される値に対して予め対応付けられた周波数を、前記端末デバイスで選択された1つの制限された周波数帯域として選択する」ことは、当業者にとって容易である。
よって、引用発明においても、移動局に割り当てる周波数帯域を決定する際、加入者識別情報が備える番号と周波数帯域の数を用いた計算式から算出することは、当業者において格別困難なことではない。

よって、相違点3は、当業者が容易になし得る事項である。

そして、本件補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測できる範囲のものにすぎず、格別顕著なものとはいえない。

したがって、本件補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

3 結語

したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

令和1年10月11日にされた手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし14に係る発明は、令和1年5月22日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明は、上記「第2[理由]1(2)」に記載のとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由

原査定の拒絶理由は、

5.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

という理由を含むものであり、請求項1に対して以下の1(引用例)が引用され、周知技術を示す文献として以下の5(周知例1)が例示されている。

1.国際公開第2013/093437号
5.特表2009-542091号公報(周知技術を示す文献)

3 引用発明等

引用発明及び周知技術1、2は、上記「第2[理由]2(2)イ」に記載したとおりである。

4 対比・判断

本願発明は、上記「第2[理由]2」で検討した本件補正発明から当該補正に係る限定事項を省いたものである。そうすると、本願発明と引用発明との相違点は、上記相違点1、2のみとなるところ、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、上記「第2[理由]2(2)ウ」に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-08-27 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-16 
出願番号 特願2018-91288(P2018-91288)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04W)
P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊東 和重  
特許庁審判長 岩間 直純
特許庁審判官 本郷 彰
永田 義仁
発明の名称 通信装置及び通信方法  
代理人 中村 哲平  
代理人 大森 純一  
代理人 中村 哲平  
代理人 大森 純一  
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