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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W |
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管理番号 | 1370826 |
審判番号 | 不服2019-15787 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-11-25 |
確定日 | 2021-02-04 |
事件の表示 | 特願2017-157028「基地局、基地局の通信方法、端末、及び端末の通信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年12月14日出願公開、特開2017-220942〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2016年(平成28年)7月20日(優先権主張 平成27年7月24日)を国際出願日とする特願2017-514947号の一部を、平成29年8月16日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成30年 9月26日付け 拒絶理由通知書 平成30年11月20日 意見書、手続補正書の提出 平成31年 4月16日付け 拒絶理由通知書(最後の拒絶理由) 令和 元年 6月 4日 意見書、手続補正書の提出 令和 元年 6月13日付け 拒絶理由通知書(最後の拒絶理由) 令和 元年 8月 8日 意見書、手続補正書の提出 令和 元年 8月16日付け 令和元年8月8日の手続補正についての 補正の却下の決定、拒絶査定 令和 元年11月25日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の 提出 令和 2年 8月26日付け 拒絶理由通知書(当審) 令和 2年10月15日 意見書、手続補正書の提出 第2 本願発明について 本願の請求項1ないし4に係る発明は、令和2年10月15日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。 「 IoT(Internet of Things)向けにコアネットワークの最適化を行う移動通信システムの基地局(eNB)であって、 スモールデータの通信において、無線リソースの設定手順の一部の省略に関する情報を端末に提供するよう制御する制御部と、 前記端末における前記情報を用いた判断に基づき前記スモールデータが設定されたservice request messageを、前記端末からRRCシグナリングで受信する無線通信部と、 前記スモールデータが設定された前記service request messageをInitial UE messageを用いてMME(Mobility Management Entity)に送信するネットワーク通信部と、を有する、 基地局。」 第3 拒絶の理由 令和2年8月26日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、 「この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、令和2年10月15日にされた手続補正前の、令和元年11月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5に対して引用例4が引用されている。ここで、令和元年11月25日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項5が令和2年10月15日にされた手続補正により特許請求の範囲の請求項1になっている。 引用例4:3GPP TR 23.887 V12.0.0(2013-12),pp.10?15,2013年12月20日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/23_series/23.887/23887-c00.zip> 第4 引用発明について 当審拒絶理由で引用された3GPP TR 23.887 V12.0.0(2013-12),pp.10?15,2013年12月20日アップロード,インターネット<URL:https://www.3gpp.org/ftp/Specs/archive/23_series/23.887/23887-c00.zip> (以下、「引用例4」という。)には、次の記載がある。(下線は当審が付与。) (1)「・5 Small Data and Device Triggering Enhancements (SDDTE) ・5.1 Small Data Transmission (SDT) ・5.1.1 Key Issue - Efficient SDT ・5.1.1.1 Description Many MTC applications send or receive small amounts of data. This characteristic of MTC application may lead to inefficient use of resources in the 3GPP system. This key issue identifies the solutions to transmit and receive small amount of data efficiently through 3GPP system. The exact amount that is considered to be small may differ per individual system improvement proposal. It is the amount of data where a specific system improvement proposal still provides its benefits. 」(10ページ) (当審訳: ・5 スモールデータとデバイスのトリガー機能強化(SDDTE) ・5.1 スモールデータ伝送(SDT) ・5.1.1 重要な問題-効率的なSDT ・5.1.1.1 説明 多くのMTCアプリケーションは、少量のデータを送受信する。MTCアプリケーションのこの特性は、3GPPシステムでのリソースの非効率的な使用につながる可能性がある。この重要な問題は、3GPPシステムを介して少量のデータを効率的に送受信する解決策を特定する。少量と見なされる正確な量は、個々のシステム改善提案ごとに異なる場合がある。特定のシステム改善提案が依然としてそのメリットを提供するのは、データの量である。) (2)「The following figures show the existing message sequence and describe a more optimized message sequence for the transfer of one IP packet (and its response). Neither of the following figures show the layer 2 acknowledgements or Hybrid ARQ mechanisms. ・Figure 5.1.1.3.1.1-2: Current LTE message sequence for the transfer of one IP packet pair ・LTE procedure for single MO IP packet (and response): ・Figure 5.1.1.3.1.1-3: Optimized LTE message sequence for the transfer of a MO IP packet pair a)The mobile performs Attach activating a PDN connection or TAU (with an already active PDN a connection). During the Attach and TAU procedures, the UE indicates the establishment cause "small data" to assist the eNB to select a MME optimized for MTC SDT. The UE and MME exchange information on the UE and network ability to support the "infrequent small data" procedures, the eNB's capability of "infrequent small data" transfer is also considered by MME for the network capability decision. The MME also obtains information (e.g. from the HSS) about the likelihood that this UE will predominately use (or not use) the 'infrequent small data' transfer feature. (略) b)When the UE needs to send just one IP packet and the UE is a low access priority device, the UE requests the UE's AS to establish an RRC connection with establishment cause 'low priority small data''. When the UE is not a low access priority device, (. the UE requests the UE's AS to establish an RRC connection with establishment cause "small data" (including as usual" the S-TMSI in the RRC Connection Request). c)A new NAS message format is used to carry the IP packet and its EPS Bearer ID in an encrypted IE. This NAS PDU is sent in the NAS container in the RRC Connection Setup Complete message. (略) d)The eNB forwards NAS PDU to the MME in the S1AP Initial UE message. (略) e)The MME decrypts the NAS message, obtaining the IP packet and the EPS Bearer ID. (略) f)The MME may use knowledge of the subscriber and the assistance information in the release ind parameter from the UE to determine whether to proceed with the full UE triggered Service Request procedure, or, to immediately release the RRC connection (Alt. A), or to wait for some time (e.g. to see if a downlink IP packet causes the S-GW to send a Downlink Data notification to the MME).」(11?14ページ) (当審訳: 次の図は、既存のメッセージ手順と、1つのIPパケットの伝送(及び、その応答)のための、より最適化されたメッセージ手順を示す。次の図はいずれも、レイヤー2の肯定応答やハイブリッドARQ機構を示すものではない。 (図省略) 図5.1.1.3.1.1-2:1つのIPパケットペアを転送するための現在のLTEメッセージ手順 (図省略) 図5.1.1.3.1.1-3:MO IPパケットペアの転送用に最適化されたLTEメッセージ手順 a)モバイルは、PDN接続するアタッチを又は(すでにアクティブなPDNで接続されているとき)TAUを実行する。 アタッチ手順とTAU手順の間、eNBがMTC SDTに最適化されたMMEを選択するのを支援するために、UEは確立原因「スモールデータ」を示す。UEとMMEは、「まれなスモールデータ」の手順をサポートするため、UEとネットワークの能力に関する情報を交換する。「まれなスモールデータ」転送のeNBの能力機能も、ネットワーク能力の決定のためにMMEによって考慮される。MMEはまた、このUEが「まれなスモールデータ」転送機能を主に使用する(または使用しない)可能性に関する情報を(たとえば、HSSから)取得する。 (略) b)UEが1つのIPパケットのみを送信する必要があり、UEが低アクセス優先度デバイスである場合、UEは確立理由「低優先度のスモールデータ」を使用してRRC接続を確立するように、UEのASに要求する。UEがアクセス優先度の低いデバイスではない場合、UEは、UEのASに、確立原因「スモールデータ」(通常どおり、RRC接続要求のS-TMSIを含む)でRRC接続を確立するように要求する。(当審注:原文の「(.」は誤記と認められる。) c)新しいNASメッセージフォーマットを使用して、暗号化されたIEでIPパケットとそのEPCベアラIDを伝送する。 このNAS PDUは、RRC接続セットアップ完了メッセージのNASコンテナで送信される。 (略) d)eNBは、S1AP Initial UEメッセージでNAS PDUをMMEに転送する。(略) e)MMEがNASメッセージを復号化し、IPパケットとEPSベアラIDを取得する。 (略) f)MMEは、加入者の知識とUEからの解放indパラメーターの支援情報を使用して、完全なUEトリガーサービスリクエスト手順を続行するか、またはRRC接続をすぐに解放するか(選択A)、又は、しばらく待つか(たとえば、ダウンリンクIPパケットによってS-GWがMMEにダウンリンクデータ通知を送信することが起こるかを確認するため)どうかを決定する。) 上記記載及び当業者における技術常識からみて、 a.上記(2)の図5.1.1.3.1.1-3には、UE、eNB、MME及びS-GW/P-GWが記載されており,これらが移動通信システムを構成していること、またそのうちの、MME、S-GW/P-GWがコアネットワークを構成していることは技術常識である。そして、上記(1)に「多くのMTCアプリケーションは、少量のデータを送受信する。」と記載されていることから、図に示されたUEがMTC装置であることは明らかである。よって、引用例4には、MTC装置であるUEと、eNBと、コアネットワークを有する移動通信システムが記載されているといえる。 また、上記(2)のa)に「アタッチ手順・・・の間、eNBがMTC SDTに最適化されたMMEを選択するのを支援するために、UEは確立原因「スモールデータ」を示す。」と記載され、上記(1)に「5.1 スモールデータ伝送(SDT)」と記載されていることから、引用例4には、eNBによりMTCのスモールデータ伝送に最適化されたMMEが選択されるコアネットワークを有する移動通信システムが記載されているといえる。 よって、引用例4のeNBは、「MTC装置であるUEと、eNBと、eNBによりMTCのスモールデータ伝送に最適化されたMMEが選択されるコアネットワークを有する移動通信システムのeNB」といえる。 b.上記(1)に「5.1 スモールデータ伝送(SDT)」と記載されている。また、上記(2)に「既存のメッセージ手順と、1つのIPパケットの伝送(及び、その応答)のための、より最適化されたメッセージ手順を示す」との記載から、図5.1.1.3.1.1-2は既存のメッセージ手順、図5.1.1.3.1.1-3は1つのIPパケットの伝送のための、より最適化されたメッセージ手順を表していることは明らかである。よって、上記(2)の図5.1.1.3.1.1-3がスモールデータの通信時の動作であることは明らかである。 また、上記(2)のa)に「UEとMMEは、「まれなスモールデータ」の手順をサポートするため、UEとネットワークの能力に関する情報を交換する。」と記載され、MMEからUEへの通信はeNBを経由することから、eNBは「スモールデータの通信において、「まれなスモールデータ」の手順をサポートするネットワークの能力に関する情報をUEに送信」しているといえる。 c.上記(2)のb)に「UEは確立理由「低優先度のスモールデータ」を使用してRRC接続を確立するように、UEのASに要求する。」ことや「UEは、UEのASに、確立原因「スモールデータ」(通常どおり、RRC接続要求のS-TMSIを含む)でRRC接続を確立するように要求する。」ことが記載された上で、続く上記(2)の図5.1.1.3.1.1-3のc)で、UEはRRC接続セットアップ完了メッセージを送信していることから、UEはa)で交換した「まれなスモールデータ」の手順をネットワークの能力としてサポートする場合に、上記(2)のc)で、UEはRRC接続セットアップ完了メッセージの送信が行われ、eNBで受信しているといえる。 また、上記(2)のc)に「新しいNASメッセージフォーマットを使用して、・・・IPパケット・・・を伝送する。」、及び、「このNAS PDUは、RRC接続セットアップ完了メッセージのNASコンテナで送信される。」と記載されている。そして、IPパケットがスモールデータであり、NAS PDUが新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージであることは明らかであるから、上記(2)のc)において、eNBで受信されるRRC接続セットアップ完了メッセージは、スモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージを含んでいるといえる。 よって、eNBは「「まれなスモールデータ」の手順をネットワークの能力としてサポートする場合に、UEからのスモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージをRRC接続セットアップ完了メッセージで受信」しているといえる。 d.上記(2)のd)に「eNBは、S1AP Initial UEメッセージでNAS PDUをMMEに転送する。」と記載され、(2)のe)に「MMEがNASメッセージを復号化し、IPパケット・・・を取得する。」と記載されている。加えて、上記「c.」で説示したとおり、NAS PDUが新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージであることは明らかであるから、eNBは「スモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージをInitial UEメッセージでMMEに送信する」といえる。 以上を総合すると、引用例4には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「 MTC装置であるUEと、eNBと、eNBによりMTCのスモールデータ伝送に最適化されたMMEが選択されるコアネットワークを有する移動通信システムのeNBであって、 スモールデータの通信において、「まれなスモールデータ」の手順をサポートするネットワークの能力に関する情報をUEに送信し、 「まれなスモールデータ」の手順をネットワークの能力としてサポートする場合に、UEからのスモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージをRRC接続セットアップ完了メッセージで受信し、 スモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージをInitial UEメッセージでMMEに送信する、 eNB。」 第5 対比及び判断 本願発明と引用発明とを対比する。 1.引用発明の「eNB」、「MME」はそれぞれ、本願発明の「基地局(eNB)」、「MME(Mobility Management Entity)」に相当する。また、引用発明は「eNBによりMTCのスモールデータ伝送に最適化されたMMEが選択されるコアネットワークを有する」ことから、eNBがMTC装置向けにコアネットワークの最適化を行っているといえる。そして、IoTデバイスにMTC装置が含まれることは技術常識である。よって、引用発明の「eNBによりMTCのスモールデータ伝送に最適化されたMMEが選択されるコアネットワークを有する移動通信システム」は、本願発明の「IoT(Internet of Things)向けにコアネットワークの最適化を行う移動通信システム」に含まれる。 よって、引用発明の「eNBによりMTCのスモールデータ伝送に最適化されたMMEが選択されるコアネットワークを有する移動通信システムのeNB」は、本願発明と同様に、「IoT(Internet of Things)向けにコアネットワークの最適化を行う移動通信システムの基地局(eNB)」といえる。 2.引用発明の「まれなスモールデータ」の手順は、上記「第4 引用発明について 」の(2)の図5.1.1.3.1.1-3のf)において、RRC接続をすぐに解放する場合、「図5.1.1.3.1.1-2:1つのIPパケットペアを転送するための現在のLTEメッセージ手順」の無線リソースの設定手順の一部の省略がされている手順(Security Mode Commandの送信やRadio Bearer Setupの送信等を省略する手順)となっていることは明らかである。よって、引用発明の「「まれなスモールデータ」の手順をサポートするネットワークの能力に関する情報」は、本願発明の「無線リソースの設定手順の一部の省略に関する情報」に含まれるといえる。 そして、引用発明のeNBが、上記のような「まれなスモールデータ」の手順を制御する制御部を有することは明らかである。 したがって、引用発明の「スモールデータの通信において、「まれなスモールデータ」の手順をサポートするネットワークの能力に関する情報をUEに送信」することは、本願発明の「スモールデータの通信において、無線リソースの設定手順の一部の省略に関する情報を端末に提供するよう制御する制御部」を有することに含まれる。 3.本願発明の「service request message」がNASメッセージであることは技術常識であるから、本願発明の「スモールデータが設定されたservice request message」と、引用発明の「スモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージ」とは、「スモールデータが設定されたNASメッセージ」の点で共通する。 また、上記「2.」で述べたように、引用発明の「「まれなスモールデータ」の手順をサポートするネットワークの能力に関する情報」は、本願発明の「無線リソースの設定手順の一部の省略に関する情報」、つまり「前記情報」に含まれる。 そして、引用発明の「「まれなスモールデータ」の手順をネットワークの能力としてサポートする場合」であるかどうかは、「まれなスモールデータ」の手順をサポートするネットワークの能力に関する情報である「前記情報」を用いたUEにおける判断で判明することであるから、引用発明の「「まれなスモールデータ」の手順をネットワークの能力としてサポートする場合」の「UEからのスモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージ」は、「前記端末における前記情報を用いた判断に基づき前記スモールデータが設定されたNASメッセージ」といえる。 よって、本願発明の「前記端末における前記情報を用いた判断に基づき前記スモールデータが設定されたservice request message」と、引用発明の「「まれなスモールデータ」の手順をネットワークの能力としてサポートする場合」の「UEからのスモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージ」は、「前記端末における前記情報を用いた判断に基づき前記スモールデータが設定されたNASメッセージ」の点で共通する。 そして、引用発明の「RRC接続セットアップ完了メッセージ」は本願発明の「RRCシグナリング」に含まれる。 更に、引用発明のeNBが、上記のようなメッセージを受信するための無線通信部を有することは明らかである。 よって、本願発明の「前記端末における前記情報を用いた判断に基づき前記スモールデータが設定されたservice request messageを、前記端末からRRCシグナリングで受信する無線通信部」と、引用発明の「「まれなスモールデータ」の手順をネットワークの能力としてサポートする場合に、UEからのスモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージをRRC接続セットアップ完了メッセージで受信」することは、「前記端末における前記情報を用いた判断に基づき前記スモールデータが設定されたNASメッセージを、前記端末からRRCシグナリングで受信する無線通信部」を有する点で共通する。 4.引用発明の「スモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージをInitial UEメッセージでMMEに送信する」とは、スモールデータが設定されたNASメッセージをInitial UEメッセージを用いてMMEに送信することである。また、引用発明の「Initial UEメッセージ」は本願発明の「Initial UE message」に相当する。そして、引用発明のeNBが、MMEと通信するネットワーク通信部を有することは明らかである。 よって、本願発明の「前記スモールデータが設定された前記service request messageをInitial UE messageを用いてMME(Mobility Management Entity)に送信するネットワーク通信部」と、引用発明の「スモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージをInitial UEメッセージでMMEに送信する」ことは、「前記スモールデータが設定されたNASメッセージをInitial UE messageを用いてMME(Mobility Management Entity)に送信するネットワーク通信部」を有する点で共通する。 以上のことから、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 (一致点) 「 IoT(Internet of Things)向けにコアネットワークの最適化を行う移動通信システムの基地局(eNB)であって、 スモールデータの通信において、無線リソースの設定手順の一部の省略に関する情報を端末に提供するよう制御する制御部と、 前記端末における前記情報を用いた判断に基づき前記スモールデータが設定されたNASメッセージを、前記端末からRRCシグナリングで受信する無線通信部と、 前記スモールデータが設定された前記NASメッセージをInitial UE messageを用いてMME(Mobility Management Entity)に送信するネットワーク通信部とを有する、 基地局。」 (相違点) 1.スモールデータが設定されたNASメッセージが、本願発明ではservice request messageであるのに対し、引用発明では新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージであるが、service request messageと特定されていない点。 以下、相違点について検討する。 (相違点について) まず、上記「第4 引用発明について」の(2)のf)に「MMEは、・・・完全なUEトリガーサービスリクエスト手順を続行するか、またはRRC接続をすぐに解放するか・・・、又は、しばらく待つ」と記載され、完全なUEトリガーサービスリクエスト手順を続行する場合には、引用発明の「スモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージ」がサービスリクエスト手順の開始のNASメッセージであるといえる。 また、上記「第4 引用発明について」の(2)の図5.1.1.3.1.1-2において「RRC Connection Setup Complete(Service Request)」がサービスリクエスト手順の開始時にUEから送信されていることから、「サービスリクエストメッセージ」はサービスリクエスト手順の開始のNASメッセージであることは明らかである。 よって、引用発明のスモールデータを含む新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージを、service request messageとしてみることは当業者が容易に想到しうる。 したがって、本願発明は引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 ここで、令和2年10月15日の意見書において、審判請求人は、「しかし、引用例4のFigure 5.1.1.3.1.1-2は、引用例4の5.1.1.3.1.1 Generalの下記記載のとおり、従来のservice requestを用いるデータ伝送手順であり、スモールデータ送信には不適であることが記載されています。 "5.1.1.3.1.1 General In LTE, the current data transfer procedures require the use of the Service Request procedure. This entails the download of the RRC security context to the eNB and the establishment of the radio bearers. If all that is intended is the transfer of one, possibly small, IP data packet, and perhaps its response, and the UE was in RRC IDLE state, these procedures lead to a substantial increase in radio resource utilisation. In this clause, the proposed optimizations that relate to UEs that were in RRC IDLE in E-UTRAN are given the name tag 'infrequent small data'." このため、当業者であっても、Figure 5.1.1.3.1.1-2における"RRC Connec tion Setup Complete(Service Request)"との記載に基づいて、Figure 5.1.1.3.1.1-3の手順においてIPパケットを送信するために"Se rvice Request"を用いることを容易に想到することはできないと思料します。」と主張している。 しかしながら、上記摘記箇所は従来のservice requestを用いるデータ伝送手順の問題点を記載しているにすぎず、新しいNASメッセージフォーマットを使用したNASメッセージを、service request messageとすることを否定するものではない。 したがって、上記主張は認められない。 第6 むすび 以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用例4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-11-26 |
結審通知日 | 2020-12-01 |
審決日 | 2020-12-15 |
出願番号 | 特願2017-157028(P2017-157028) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小林 正明 |
特許庁審判長 |
廣川 浩 |
特許庁審判官 |
本郷 彰 中木 努 |
発明の名称 | 基地局、基地局の通信方法、端末、及び端末の通信方法 |
代理人 | 家入 健 |