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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1370832 |
審判番号 | 不服2020-1043 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-01-24 |
確定日 | 2021-02-04 |
事件の表示 | 特願2017-198596号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 5月16日出願公開、特開2019- 71968号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成29年10月12日の出願であって、平成31年2月20日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月22日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年5月29日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年8月1日に意見書及び手続補正書が提出され、同年10月16日付けで、同年8月1日に提出された手続補正書による補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、これに対し、令和2年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに手続補正書が提出され、当審において、同年8月27日付けで拒絶の理由が通知(以下、通知された拒絶の理由を「当審拒絶理由」という。)され、同年10月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、令和2年10月22日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載の事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものであると認める(なお、符号AないしEについては、分説するため合議体が付し、符号が付された事項を以下「特定事項A」等という。)。 「A 遊技領域の正面側に位置する透過板が少なくとも保持される枠体に対して交換可能に取り付けられ、遊技の進行に応じて演出を行う装飾体と、 B 前記装飾体が自機に対応するものであるか否かの識別を電気的に行う制御部と、 C 前記制御部による識別の結果を報知する報知部と、 を備え、 D 前記制御部は、遊技の進行と並行して前記報知部による報知を実行させることが可能であり、前記装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を前記装飾体の作動停止とは異なる態様で前記報知部に報知させる E 遊技機。」 3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由は、概略、次のとおりである。 (進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 ・請求項1 ・引用文献等 引用例1.特開2006-296586号公報 引用例2.特開2008-237772号公報 引用例3.特開2016-86822号公報 4 引用例の記載及び引用発明 (1)当審拒絶理由で引用例1として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2006-296586号公報(平成18年11月2日公開)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている(なお、下線は合議体が付した。以下同じ。)。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、パチンコ機等の遊技機に関し、詳しくは、ガラス板を支持する枠体に装飾ユニットを取り付けるようにした遊技機に係る。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、上述のようなパチンコ機においては、遊技盤における図柄表示装置の周囲には、種々の演出ユニット、例えば、固定状態のフィギュアモデルや、給電により照明状態が変化する演出ランプや態様が変化するフィギュアモデルが配設されている。 【0006】 しかしながら、全面液晶と呼ばれる図柄表示装置が搭載された遊技機にあっては、図柄表示装置が遊技領域のほぼ全面、つまり図柄表示装置が遊技盤のかなりの面積を占めるため、遊技盤側には、演出ユニットを有効に配設する空間的なゆとりがない。このため、例えば、照明ユニットや動くフィギュアモデルを使用しての効果的な演出を行うことが困難になっている。なお、全面液晶でないパチンコ機(図柄表示装置が遊技領域の一部に配置されているタイプ)においても、遊技盤以外の部分に演出ユニットを有効に取り付けられれば、一層の演出効果をあげることができる。 【0007】 そこで、本発明は、演出ユニット等の装飾ユニットをガラス枠に取り付け得るように構成し、もって上述の課題を解決するようにした遊技機を提供することを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】 【0008】 請求項1に係る本発明は(例えば図1ないし図5参照)、遊技盤(7)の遊技領域(7a)に遊技球を打ち出して遊技を行う遊技機(1)において、 前記遊技領域(7a)の前面を覆うガラス板(g)を支持するガラス枠(5)と、 装飾ユニット(10)を着脱可能な形で前記ガラス枠(5)の所定位置に設けられた装飾ユニット着脱部(26)とを備え、 前記装飾ユニット着脱部(26)が、前記装飾ユニット(10)を電気的に接続する接続部(53)を備える、 ことを特徴とする遊技機(1)にある。 【0009】 請求項2に係る本発明は(例えば図2及び図3参照)、前記装飾ユニットが、機種毎に形態が異なると共に給電によって態様が変化する演出ユニット(10)であり、 前記接続部が、前記演出ユニットを遊技機本体側に電気的且つ機械的に接続するためのコネクタプラグ(55)及びコネクタソケット(53)のうちの何れか一方を備え、前記演出ユニットが他方を備えてなる、 ことを特徴とする請求項1に記載の遊技機(1)にある。 ・・・略・・・ 【発明の効果】 【0013】 請求項1に係る本発明によると、遊技領域の前面を覆うガラス板を支持するガラス枠と、装飾ユニットを着脱可能な形でガラス枠の所定位置に設けられた装飾ユニット着脱部とを備え、装飾ユニット着脱部が、装飾ユニットを電気的に接続する接続部を備えるので、いわゆる全面液晶の図柄表示装置が遊技領域のほぼ全面を覆う形式の遊技機にあって、遊技盤側に装飾ユニットを有効に配設する空間的なゆとりがない場合でも、ガラス枠の所定位置に装飾ユニットを配置することで、照明ユニットやフィギュアモデルを使用しての効果的な演出を行うことができる。このような配置の装飾ユニットは、全面液晶の図柄表示装置を搭載しない一般的なタイプの遊技機にあっても適用できるので、遊技盤以外の部分に装飾ユニットを有効に装着して、演出効果をより向上させることができる。 【0014】 請求項2に係る本発明によると、装飾ユニットが、機種毎に形態が異なると共に給電によって態様が変化する演出ユニットであり、接続部が、演出ユニットを遊技機本体側に電気的且つ機械的に接続するためのコネクタプラグ及びコネクタソケットのうちの何れか一方を備え、演出ユニットが他方を備えてなるので、コネクタプラグとコネクタソケットとを係合又は離反させるだけで、演出ユニットを装飾ユニット着脱部に簡単且つ確実に装着又は取り外すことができる。」 イ 「【0018】 <パチンコ機1の概略構成> 図1ないし図3に示すパチンコ機1は、発射ハンドル9の操作による発射装置(図示せず)の作動で遊技球(所謂パチンコ玉)を遊技領域7aに打ち出しつつ遊技を行うようにされて、所謂確率変動等の大当たりが発生した状態でアタッカー16に入球した遊技球に対応する数の遊技球を払い出すように構成されている。上記確率変動当たり(「確変当たり)とも言う)とは、抽選の結果、確変モードの大当たりが当選したとき、少なくとも当該確変モードによる遊技状態において次なる大当たりを引くまでの間、遊技者に有利な付加価値を付与し得る特殊状態を意味する。これに対し、当該特殊状態にならない大当たりとして「通常当たり」がある。 【0019】 <パチンコ機1の詳細な構成> 図1に示すように、本パチンコ機1は、開口を有する枠体状の筐体2と、この筐体2に開閉可能に装着された前扉3とを有しており、前扉3の前面には、遊技領域7aの前面を覆うガラス板(透明ガラス)gを支持するガラス枠5が開閉可能に取り付けられている。ガラス板gの奥側には、遊技領域7aを有する遊技盤7が配置されている。前扉3における遊技領域7aの左右及び上部には演出用照明装置23が配置されており、前扉3における上部左右及び下部には夫々、スピーカ(図示せず)を有する放音装置8が配置されている。また、ガラス枠5における中央部右方には、前扉3を筐体2側に施錠又は解放するための施錠装置4が配置されている。なお、筐体2及び前扉3等から遊技機本体が構成されている。」 ウ 「【0029】 <演出ユニット10及び演出ユニット着脱部26の詳細な構成> ついで、図1ないし図3を参照して、本発明の特徴である演出ユニット(装飾ユニット)10及び演出ユニット着脱部(装飾ユニット着脱部)26について説明する。すなわち、図1に示すように、ガラス枠5の上部中央には、装飾ユニット10を着脱可能に構成された演出ユニット着脱部26が配設されており、この演出ユニット着脱部26には、演出ユニット10が装着されている。演出ユニット10は、パチンコ機の機種毎に形態が異なると共に給電によって態様が変化するように構成されている。」 エ 「【0035】 演出ユニット10は、例えば大当たり予告動作を行う際、第2演出制御手段60からの信号に従って、照明ランプ35を発光させつつ軸aを中心に回転開始した後、当該大当たり予告動作に対応する信頼度が最も高いときフィギュアモデル25がガラス枠5の前側を向くようにリフレクタ12を停止させ、信頼度が最も低いときフィギュアモデル25が背面を向くようにリフレクタ12を停止させるように作動させられる。」 オ 「【0051】 一方、サブ基板31は、第1演出制御手段59、表示制御手段34、及び第2演出制御手段60を有しており、サブ基板31には、放音装置8、演出用照明装置23、図柄表示装置11、照明ランプ35、及びフィギュア駆動モータ48が接続されている。 【0052】 第1演出制御手段59は、主基板30中の上記マイクロプロセッサから供給される信号に従って、放音装置8、演出用照明装置23を適時駆動して、遊技者の聴覚及び視覚に訴える演出表示を行う。 【0053】 表示制御手段34は、遊技制御手段36から送信された信号に従って図柄表示装置11を適時駆動し、大当たり抽選結果を除く内容或いは大当たり抽選結果に関連する内容を、それぞれ遊技者の視覚に訴えるように演出表示する。 【0054】 第2演出制御手段(演出制御手段)60は、図柄表示装置11の図柄に変動表示に対応させて演出ユニット10の態様を変化させる演出制御手段を構成しており、主基板30中の上記マイクロプロセッサから供給される信号に従って、照明ランプ35、フィギュア駆動モータ48を適時駆動して、遊技者の視覚に訴える演出表示を行う。」 カ 「【0064】 以上説明したように本実施の形態では、遊技領域7aの前面を覆うガラス板gを支持するガラス枠5と、演出ユニット10を着脱可能な形でガラス枠5の上部中央に設けられた演出ユニット着脱部26とを備え、この着脱部26が、演出ユニット10を電気的に接続するコネクタソケット53を備えている。このため、全面液晶の図柄表示装置11が遊技領域7aの全面を覆う形式のパチンコ機1で、遊技盤7側に演出ユニット10を有効に配設する空間的なゆとりがない場合であっても、ガラス枠5の所定位置に演出ユニット10を配置することで、照明ランプ35やフィギュアモデル25を使用しての効果的な演出を行うことができる。このような配置の演出ユニット10は、全面液晶の図柄表示装置11を搭載しない一般的なタイプのパチンコ機にあっても適用できるので、遊技盤以外の部分に演出ユニット10を有効に装着して、演出効果をより向上させることができる。 【0065】 また、演出ユニット10が、機種毎に形態が異なると共に給電によって態様が変化し、演出ユニット着脱部26にコネクタソケット53を備え、演出ユニット10がコネクタプラグ55を備えるので、コネクタプラグ55とコネクタソケット53とを係合又は離反させるだけで、演出ユニット10を演出ユニット着脱部26に簡単且つ確実に装着又は取り外すことができる。」 キ 上記アないしカからみて、引用例1には、次の発明が記載されている。なお、a1、b1、e1については本願発明のA、B、Eに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。 「a1 遊技領域7aの前面を覆うガラス板gを支持するガラス枠5の上部中央に配設された演出ユニット着脱部26に着脱可能に装着され、大当たり予告動作を行う際、照明ランプ35を発光させつつ軸aを中心に回転開始した後、当該大当たり予告動作に対応する信頼度が最も高いときフィギュアモデル25がガラス枠5の前側を向くようにリフレクタ12を停止させ、信頼度が最も低いときフィギュアモデル25が背面を向くようにリフレクタ12を停止させるように作動させられ、パチンコ機の機種毎に形態が異なるとともに給電によって態様が変化する演出ユニット10(【0019】、【0029】、【0035】、【0065】、図1)と、 b1 図柄表示装置11の図柄に変動表示に対応させて演出ユニット10の態様を変化させる演出制御手段(【0054】)と、 を備える、 e1 パチンコ機1(【0018】)。」(以下「引用発明1」という。) (2)当審拒絶理由で引用例2として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2008-237772号公報(平成20年10月9日公開)には、遊技台(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明はパチンコ機等の遊技台に関する。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 ところで、近年では、遊技台の外観を重視する傾向にあり、遊技領域だけでなく、遊技台の前面扉にも装飾を施すことが望まれている。前面扉に単なる装飾体ではなく、可動の装飾体を配すれば遊技台の外観をより顕著に向上し得るが、可動の装飾体を駆動するモータ等はある程度の大きさを有するため、その配置如何によってモータ等のメンテナンス性が悪くなる。また、本体側の回路とモータ等との配線はその接続作業を容易化し、メンテナンス性を向上することが望ましい。 【0006】 従って、本発明の目的は、遊技台の前面に可動の装飾体を設けるにあたり、装飾体を駆動する構成や配線のメンテナンス性を向上することにある。」 イ 「【0010】 <全体構成> 遊技台Aはパチンコ機であって、外枠100と本体200と前面扉ユニット300とを備える。外枠100は方形の枠体(例えば木枠)をなしており、遊技台Aをホールの島に設置するための枠である。本体200は外枠100の正面側に設けた内枠210を備える。内枠210は方形の枠体(例えば樹脂枠)をなしており、遊技盤220、及び、遊技盤220の下方の下部ユニット230を支持する。内枠210の左側部には、外枠100の左側部の上下にそれぞれ設けたヒンジ部110に回動可能なヒンジ部211を上下にそれぞれ設けており、内枠210は外枠100に対して開閉可能である。」 ウ 「【0034】 <前面扉310> 前面扉310は遊技台Aの正面から遊技者が遊技領域221全体を視認可能にする円形の開口部である窓部311を有する。窓部311には窓部311全体を覆う、透明のカバー部材311aを配している。カバー部材311aは例えば樹脂製である。カバー部材311aを設けたことにより、遊技領域221の視認性を確保しながら、窓部311を介した、ピアノ線等の異物を用いた遊技盤220に対する不正行為に対して、異物の侵入経路を封鎖して当該不正行為を防止できる。なお、本書において透明とは特に言及しない限り無色透明、有色透明の双方が含まれる。」 エ 「【0052】 この軸部313及び軸受部3312の構成によって、可動装飾ユニット330を前面扉310に対して軸部313の軸方向を回動中心として回動可能に取り付けており、可動装飾ユニット330は前面扉310に対して開閉する。また、可動装飾ユニット330を前面扉310に対して相対的に上方に移動すると、軸部313が軸受部3312から離脱し、可動装飾ユニット330を前面扉310から取外すことができる。従って、可動装飾ユニット330は、前面扉310を本体200に対して開放した状態で前面扉310に着脱自在である。 【0053】 この構成により、可動装飾ユニット330の交換・メンテナンスを前面扉310を開放することで簡易に行なうことができる。また、機種変更時等には前面扉310、内枠210、外枠200を再利用して可動装飾ユニット330を交換することで、異なる装飾体を採用することもでき、多様な遊技台Aを提供できる。また、可動装飾ユニット330を、前面扉310に回動可能に取り付けたことにより、可動装飾ユニット330のメンテナンスを前面扉310に可動装飾ユニット330を取り付けた状態で行い易くなり、メンテナンス性を向上できる。 ・・・略・・・ 【0060】 次に、可動装飾ユニット330は窓部3311の周縁に沿った、環状体333を可動の装飾体として備える。環状体333は、窓部3311の略中心を通る、略水平な仮想軸回りに回転する。環状体333は遊技盤220の正面前方に位置しており、環状体333が形成する開口を通じて遊技者は遊技領域221全体を視認可能である。環状体333により遊技領域221に遊技者の注意を向けさせることができると共に、遊技領域221の装飾効果を高めることができる。」 オ 「【0103】 軸部3412の先端は軸受部314の長孔の幅よりも大径となっているが(図6(e)及び(f)の上段の図参照)、割り溝が設けられている。従って、軸部3412の先端を軸受部314の長孔に押し込むようにすると、軸部3412の先端が割り溝の分だけ一時的に縮径し、軸部3412が長孔を挿通した状態となる。逆に、照明器ユニット340を前面扉310に対して相対的に上方にやや強めに移動すると、軸部314が軸受部314の長孔から離脱し、照明器ユニット340を前面扉310から取外すことができる。従って、照明器ユニット340は、前面扉310を本体200に対して開放した状態で前面扉310に着脱自在である。 【0104】 このような構成により、照明器ユニット340の交換・メンテナンスを前面扉310を開放することで簡易に行なうことができる。」 カ 「【0113】 次に、照明器ユニット340は支持板341の正面において支持した複数の基板3421乃至3424を備える。各基板3421乃至3424には電子部品としてLED3431を搭載している。また、基板3421には電子部品としてLED3432を搭載している。各基板3421乃至3424にはLED3431、3432の駆動に必要な電源配線や制御信号配線等ののパターンが形成されている(不図示)。 ・・・略・・・ 【0115】 LED3431は環状体333をその背面側から照明し、装飾性を高める照明器である。本実施形態ではLED3431を環状体333の輪郭に沿って環状に複数配置しており、環状体333の回転と、複数のLED3431の点灯位置の移動とにより、様々な演出が可能である。 【0116】 このようにLED3431による照明により、環状体333の装飾性を向上できる。また、LED3431を可動装飾ユニット330とは別に、照明器ユニット340に搭載したことにより、機種変更時等には可動装飾ユニット330と照明器ユニット340との組合せの選択肢が増えて遊技台Aを多様化できる。」 キ 「【0180】 <演出制御基板> 図20を参照して、演出制御基板246は演出制御回路50を搭載する。演出制御回路50は演出内容を制御するCPU50aと、CPU50aが実行するプログラム及びデータを記憶したROM50bと、一時的なデータを記憶するRAM50cと、CPU50aと外部デバイスとの入出力インターフェースであるI/O50dと、を備え、不図示のデータバス、アドレスバスがこれらを電気的に接続している。なお、ROM50b、RAM50cは他の種類の記憶手段を採用してもよい。また、RAM50cの記憶内容は不図示のバックアップ回路により電源断時にも消失しないようにしている。 ・・・略・・・ 【0183】 音源IC52はスピーカ318が出力する効果音のデータを記憶し、I/O50dが出力する制御信号に基づき、スピーカ318が出力する音を制御する。駆動回路53はI/O50dが出力する制御信号に基づき照明器ユニット340のLED3431、3432の駆動制御を行なう。CPU50aはI/O50dの出力ポートを介してこれらの各デバイスに制御信号を出力して制御することができる。また、可動装飾ユニット330のステッピングモータ3371の駆動回路基板339にI/O50dの出力ポートを介して制御信号を送出し、環状体333の回転制御を行なう。」 ク 上記イの記載、上記エの「【0060】・・・可動装飾ユニット330は・・・環状体333を可動の装飾体として備える。」との記載、上記カの「【0113】・・・照明器ユニット340は・・・複数の基板3421乃至3424を備える。各基板3421乃至3424には電子部品としてLED3431を搭載している。」及び「【0115】・・・環状体333の回転と、複数のLED3431の点灯位置の移動とにより、様々な演出が可能である。」との記載より、遊技台Aが可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340を備え、可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340は様々な演出が可能であるものと認められる。 ケ 上記イの記載、上記キの「【0180】・・・演出制御基板246は演出制御回路50を搭載する。演出制御回路50は演出内容を制御するCPU50aと、・・・CPU50aと外部デバイスとの入出力インターフェースであるI/O50dと、を備え、・・・【0183】・・・駆動回路53はI/O50dが出力する制御信号に基づき照明器ユニット340のLED3431、3432の駆動制御を行なう。CPU50aはI/O50dの出力ポートを介してこれらの各デバイスに制御信号を出力して制御することができる。また、可動装飾ユニット330のステッピングモータ3371の駆動回路基板339にI/O50dの出力ポートを介して制御信号を送出し、環状体333の回転制御を行なう。」との記載より、遊技台Aが演出制御回路50を備え、演出制御回路50は、照明器ユニット340のLED3431、3432の駆動制御を行ない、また、可動装飾ユニット330の環状体333の回転制御を行なうものと認められる。 コ 上記アないしケからみて、引用例2には、次の発明が記載されている。なお、a2、b2、e2については本願発明のA、B、Eに概ね対応させて付与し、引用箇所の段落番号等を併記した。 「a2 遊技台Aの正面から遊技者が遊技領域221全体を視認可能にする円形の開口部である窓部311全体を覆う透明のカバー部材311aを配している前面扉310(【0034】)に着脱自在として機種変更時等に交換し得るものであって、様々な演出が可能である可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340(【0052】、【0053】、【0103】、【0104】、【0115】、【0116】、上記ク)と、 b2 照明器ユニット340のLED3431、3432の駆動制御を行ない、また、可動装飾ユニット330の環状体333の回転制御を行なう演出制御回路50(【0180】、【0183】、上記ケ)と、 を備える、 e2 パチンコ機である遊技台A(【0010】)。」(以下「引用発明2」という。) (3)当審拒絶理由で引用例3として引用され、本願の出願前に頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特開2016-86822号公報(平成28年5月23日公開)には、遊技機(発明の名称)に関し、次の事項が図とともに記載されている。 ア 「【技術分野】 【0001】 本発明は、遊技盤を設置する枠が電気的に不適合である場合に故障が発生しない遊技機に関する。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 上記のような遊技機では,枠の種類(形式)が1つではなく複数の種類の枠が存在しており、遊技盤によっては、機械的に複数の枠に設置可能な場合がある。 ところが、遊技盤が機械的に複数の種類の枠に設置可能であっても、電気的な適合性が確保されない場合がある。つまり、遊技盤を枠に取り付けることができ、電気的な接続もできている場合であっても、遊技盤と枠の電気的信号の整合がとれておらず、遊技盤からの電気信号により枠に取り付けられているランプなど電気的に作動する機器が正常に作動せず、遊技盤が故障したりする場合があるという問題があった。 【0005】 本発明は、こうした問題に鑑みなされたものであり、遊技盤を設置する枠が電気的に不適合である場合に、故障が発生しない遊技機を提供することを目的とする。 ・・・略・・・ 【発明の効果】 【0008】 この発明によれば、遊技盤(2)を設置する枠(Y2)が電気的に不適合である場合に、故障が発生しない遊技機(Y)とすることができる。」 イ 「【0010】 [第1実施形態] 以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1に示すように、遊技機Yは、遊技に係る制御を行う制御手段100(図3参照)が設けられた遊技機本体Y1と、遊技機本体Y1に着脱可能に取り付けられた遊技機枠Y2とを備えている。 【0011】 遊技機本体Y1は、遊技店の島設備に固定された外枠(図示せず)に取り付けられる内枠1と内枠1に着脱可能に嵌め込まれた遊技盤2とからなる。 遊技機枠Y2は、枠状のガラス枠Y21とガラス枠Y21に取り付けられた透明のガラス板Y22とを具備している。ガラス枠Y21は、水平方向の一端側においてヒンジ機構部Hを介して内枠1に脱着自在に連結されており、ヒンジ機構部Hを支点として回動可能に内枠1に支持されている。すなわち、遊技機枠Y2は遊技機本体Y1に対して回動可能であり、遊技機本体Y1の前面側(遊技者側)を開閉することができる。一方、遊技機枠Y2は、他端側において、鍵式のロック機構Rを介して遊技機本体Y1に施錠される。ロック機構Rによる固定は、専用の鍵によって解除することが可能とされている。また、ロック機構Rによって、遊技機Yと外枠とも施錠されている。 【0012】 遊技機枠Y2には、遊技球を発射させる操作を行うための遊技球発射操作装置3、スピーカーからなる音声出力装置72、LEDを具備する演出用照明装置73?78、及び、複数の遊技球を貯留する受け皿6が設けられている。」 ウ 「【0055】 遊技盤2の裏面には、主制御基板101、演出制御基板102、払出制御基板103、ランプ制御基板104、画像制御基板105、外部情報端子板107、電源基板Pを具備する制御手段100が設けられている。電源基板Pには遊技機Yに給電をするための電源プラグや、図示しない電源スイッチが設けられている。また、図2に示すように、遊技機枠Y2の裏面には、制御手段100と、遊技機枠Y2に設けられた遊技球発射操作装置3、選択ボタン装置9、演出ボタン装置10及び演出用照明装置73?78との間で行われるデータの送受信を中継する枠上側中継基板108及び枠下側中継基板109が設けられている。」 エ 「【0248】 ステップS3160において、ランプCPU104aは、ステップS3100で退避した情報をランプCPU104aのレジスタに復帰させる。 (演出制御基板タイマ割込処理) 図32に基づき、次に演出制御基板102で実行される演出制御基板タイマ割込処理の内容について説明する。図32は、演出制御基板102のサブCPU102aによって行われるタイマ割込み処理を示すフローチャートである。なお、本処理は、演出制御基板102に設けられた図示しないリセット用クロックパルス発生回路によって、演出制御基板102の電源投入時や電源断時等の特殊な場合を除く通常の動作時において、所定の周期(例えば2ms)毎に繰り返し実行される。また、図32のフローチャートに基づいて説明する演出制御基板102で行われる処理は、サブROM102bに記憶されているプログラムに基づいて実行される。さらにまた、本発明に関係しない処理について適宜省略して示す。 ・・・略・・・ 【0254】 ステップS3206では、送信処理を行う。この処理は、ステップS3202において、遊技機枠Y2が不適合である場合には、画像制御基板105に対し、「遊技機枠が不適合」である旨を画像表示装置71に表示するコマンドを送信する。また、ステップS3202において、遊技機枠Y2が適合している場合には、ステップS3203からステップS3205までの処理でセットされたコマンドを画像制御基板105及びランプ制御基板104へ送信するものである。 【0255】 以上のように、遊技機Yでは、電源が投入されると、遊技及び遊技に関連した演出が行われる前に、遊技機枠Y2に係る所定の固有情報を有する枠IDが、遊技機本体Y1において予め設定された枠ID判定用情報と一致するか否かの判定(枠適合判定処理)が実行される。 ・・・略・・・ 【0260】 ・・・略・・・ [第2実施形態] 図33に基づき、次に、ランプ制御基板104から演出制御基板102に枠不適合情報を送信しないで、遊技機枠Y2が不適合であることを判定できるようにした実施形態について説明する。図33は、演出制御基板102のサブCPU102aによって行われるタイマ割込み処理を示すフローチャートである。 ・・・略・・・ 【0265】 以上のような第2実施形態における遊技機Yでは、枠適合判定で「適合」と判定される回数が所定回数未満である場合、すなわち、当該遊技機枠Y2が不適合であると正式に判定された場合、ランプ制御基板104は、演出用照明装置73?78と演出用役物装置80?84に所定の演出(遊技演出・デモ演出・初期動作)を実行させない。一方、枠適合判定で「適合」と判定される回数が所定回数以上である場合、すなわち、当該遊技機枠Y2が適合であると正式に判定された場合、ランプ制御基板104は、演出用照明装置73?78と演出用役物装置80?84に演出を実行させる。つまり、ランプ制御基板104は、当該遊技機枠Y2が適合と認定された場合と不適合と認定された場合とで、演出制御態様が異なる。この違いにより、当該遊技機枠Y2の適合/不適合を認識することができる。 【0266】 また、制御手段100は、ランプ制御基板104から主制御基板101にはコマンドなどの情報を送信することができない構成となっている。よって、当該遊技機枠Y2が不適合と正式に判定された場合であっても、主制御基板101は遊技制御を行うことができる。すなわち、遊技が実行されているが、演出用照明装置73?78及び演出用役物装置80?84による遊技演出が実行されていない場合、当該遊技機枠Y2が不適合であることの報知となる。 この報知により、遊技者や遊技店員に遊技機枠Y2が不適合であることを察知させ、適合な遊技機枠に取り替えさせることができる。なお、例えば、大当たり遊技中に枠適合判定が実行され、不適合と判定された場合、演出用照明装置73?78及び演出用役物装置80?84による遊技演出が規制されながらも、遊技自体は実行される。よって、遊技者が被る不利益を抑えることができる。」 オ 上記アないしエからみて、引用例3には、次の技術事項が記載されている。なお、引用箇所の段落番号等を併記した。 「遊技に係る制御を行う制御手段100が設けられた遊技機本体Y1と、遊技機本体Y1に着脱可能に取り付けられた遊技機枠Y2とを備え(【0010】)、遊技機本体Y1は、遊技店の島設備に固定された外枠に取り付けられる内枠1と内枠1に着脱可能に嵌め込まれた遊技盤2とからなり(【0010】)、制御手段100は、主制御基板101、演出制御基板102及び画像制御基板105を具備するともに、遊技盤2の裏面に設けられ(【0055】)、遊技機枠Y2には、LEDを具備する演出用照明装置73?78が設けられている(【0012】)、遊技機Y(【0010】)であって、 遊技盤と枠との電気的信号の整合がとれておらず、遊技盤からの電気信号により枠に取り付けられているランプなど電気的に作動する機器が正常に作動しないという従来の問題点を解決するために(【0004】)、 遊技機枠Y2に係る所定の固有情報を有する枠IDが、遊技機本体Y1において予め設定された枠ID判定用情報と一致するか否かの判定(枠適合判定処理)を実行し(【0255】)、遊技機枠Y2が不適合である場合には、画像制御基板105に対し、「遊技機枠が不適合」である旨を画像表示装置71に表示するコマンドを送信し(【0254】)、当該遊技機枠Y2が不適合であると正式に判定された場合、ランプ制御基板104は、演出用照明装置73?78と演出用役物装置80?84に所定の演出(遊技演出・デモ演出・初期動作)を実行させない一方、当該遊技機枠Y2が適合であると正式に判定された場合、ランプ制御基板104は、演出用照明装置73?78と演出用役物装置80?84に演出を実行させるものであり、当該遊技機枠Y2が適合と認定された場合と不適合と認定された場合とで、演出制御態様が異なり、この違いにより、当該遊技機枠Y2の適合/不適合を認識することができるようにし(【0265】)、不適合と判定された場合でも遊技自体は実行されるようにした(【0266】)、 遊技機Y(【0010】)。」(以下「引用例3記載の技術事項」という。) 5 引用発明1に基づく進歩性欠如について (1)対比 本願発明と引用発明1を対比する。 引用発明1の「遊技領域7a」、「ガラス板g」、「ガラス枠5」、「演出ユニット10」及び「パチンコ機1」は、それぞれ本願発明の「遊技領域」、「透過板」、「枠体」、「装飾体」及び「遊技機」に相当する。 引用発明1において、演出ユニット10(装飾体)は、遊技領域7aの前面を覆うガラス板g(透過板)を支持するガラス枠5(枠体)に着脱可能に装着され、大当たり予告動作を行う際、照明ランプ35を発光させつつ軸aを中心に回転開始した後、当該大当たり予告動作に対応する信頼度が最も高いときフィギュアモデル25がガラス枠5の前側を向くようにリフレクタ12を停止させ、信頼度が最も低いときフィギュアモデル25が背面を向くようにリフレクタ12を停止させるように作動させられるものである。要するに、引用発明1の演出ユニット10(装飾体)は、遊技の進行に応じて演出を行うものであるといえる。 そうすると、引用発明1は、本願発明の特定事項A及びEを備える。 してみると、本願発明と引用発明1とは、 「A 遊技領域の正面側に位置する透過板が少なくとも保持される枠体に対して交換可能に取り付けられ、遊技の進行に応じて演出を行う装飾体を備える、 E 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1(特定事項BないしD) 本願発明では、「前記装飾体が自機に対応するものであるか否かの識別を電気的に行う制御部と、前記制御部による識別の結果を報知する報知部と、を備え、前記制御部は、遊技の進行と並行して前記報知部による報知を実行させることが可能であり、前記装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を前記装飾体の作動停止とは異なる態様で前記報知部に報知させる」のに対し、 引用発明1では、「演出ユニット10」は、パチンコ機1の「機種毎に形態が異なるとともに給電によって態様が変化する」ものであるが、本願発明のような特定がない点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 ア 引用例3記載の技術事項(上記4(3)オ)は、遊技に係る制御を行う制御手段100が設けられた遊技機本体Y1と、遊技機本体Y1に着脱可能に取り付けられた遊技機枠Y2とを備え、遊技機本体Y1は、遊技店の島設備に固定された外枠に取り付けられる内枠1と内枠1に着脱可能に嵌め込まれた遊技盤2とからなり、制御手段100は、主制御基板101、演出制御基板102及び画像制御基板105を具備するともに、遊技盤2の裏面に設けられ、遊技機枠Y2には、LEDを具備する演出用照明装置73?78が設けられている、遊技機Yであって、遊技盤と枠との電気的信号の整合がとれておらず、遊技盤からの電気信号により枠に取り付けられているランプなど電気的に作動する機器が正常に作動しないという従来の問題点を解決するために、遊技機枠Y2に係る所定の固有情報を有する枠IDが、遊技機本体Y1において予め設定された枠ID判定用情報と一致するか否かの判定(枠適合判定処理)を実行し、遊技機枠Y2が不適合である場合には、画像制御基板105に対し、「遊技機枠が不適合」である旨を画像表示装置71に表示するコマンドを送信し、当該遊技機枠Y2が不適合であると正式に判定された場合、ランプ制御基板104は、演出用照明装置73?78と演出用役物装置80?84に所定の演出(遊技演出・デモ演出・初期動作)を実行させない一方、当該遊技機枠Y2が適合であると正式に判定された場合、ランプ制御基板104は、演出用照明装置73?78と演出用役物装置80?84に演出を実行させるものであり、当該遊技機枠Y2が適合と認定された場合と不適合と認定された場合とで、演出制御態様が異なり、この違いにより、当該遊技機枠Y2の適合/不適合を認識することができるようにし、不適合と判定された場合でも遊技自体は実行されるようにしたものである。 イ 引用例3記載の技術事項の「遊技機枠Y2」は、LEDを具備する演出用照明装置73?78を設け、該LEDの発光態様により装飾機能を果たすから、本願発明の「装飾体」に相当する。 また、引用例3記載の技術事項において、遊技機枠Y2(装飾体)が遊技機本体Y1(自機)に整合、すなわち対応するものであるか否かを識別するために、遊技機枠Y2(装飾体)に係る所定の固有情報を有する枠IDが、遊技機本体Y1において予め設定された枠ID判定用情報と一致するか否かの判定(枠適合判定処理)を実行していることが自明であるから、引用例3記載の技術事項は、本願発明の特定事項Bの「装飾体が自機に対応するものであるか否かの識別を電気的に行う制御部」「を備え」るものといえる。 また、引用例3記載の技術事項において、遊技機枠Y2が不適合である場合には、画像制御基板105に対し、「遊技機枠が不適合」である旨を画像表示装置71に表示するコマンドを送信し、当該遊技機枠Y2が適合と認定された場合と不適合と認定された場合とで、演出制御態様が異なり、この違いにより、当該遊技機枠Y2の適合/不適合を認識することができるようにしたものであるから、本願発明の特定事項Cの「前記制御部による識別の結果を報知する報知部」「を備え」るものである。 また、引用例3記載の技術事項は、遊技機枠Y2が不適合と判定された場合でも遊技自体は実行されるようにしたものであるから、本願発明の特定事項Dのうち「前記制御部は、遊技の進行と並行して前記報知部による報知を実行させることが可能であり、」を備える。 また、引用例3記載の技術事項は、遊技機枠Y2が不適合である場合に、「遊技機枠が不適合」である旨を画像表示装置71に表示するものであり、遊技機枠Y2におけるLEDの消灯(作動停止)とは異なる態様で遊技機枠Y2が不適合であることを報知しているといえるから、本願発明の特定事項Dのうち「前記装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を前記装飾体の作動停止とは異なる態様で前記報知部に報知させる」との特定事項を備える。 以上のとおり、引用例3記載の技術事項は、本願発明の特定事項BないしDの「装飾体が自機に対応するものであるか否かの識別を電気的に行う制御部と、前記制御部による識別の結果を報知する報知部と、を備え、前記制御部は、遊技の進行と並行して前記報知部による報知を実行させることが可能であり、前記装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を前記装飾体の作動停止とは異なる態様で前記報知部に報知させる」との特定事項を備えるといえる。 ウ 引用発明1と引用例3記載の技術事項とは、遊技機本体に対して交換可能な装飾体を有する遊技機である点で技術分野が共通するから、引用発明1及び引用例3記載の技術事項に接した当業者であれば、引用例3記載の技術事項のように、装飾体が不適合であることを報知する必要性が引用発明1に潜在的に存在することを認識するものである。 そうすると、引用発明1において、引用例3記載の技術事項を適用し、演出ユニット10(装飾体)がパチンコ機1(自機)に対応するものであるか否かを報知し、該報知を遊技の進行と並行して実行させることを可能とし、演出ユニット10(装飾体)が対応するものではない場合、その旨を演出ユニット10の照明ランプ35の発光や回転の停止(装飾体の作動停止)とは異なる態様で報知させるようになすこと、すなわち、上記相違点1に係る本願発明の特定事項のようになすことは当業者が容易に想到できることである。 エ 本願発明の奏する効果は、引用発明1の奏する効果及び引用例3記載の技術事項の奏する効果から、予測することができた程度のものである。 6 引用発明2に基づく進歩性欠如について (1)対比 本願発明と引用発明2を対比する。 引用発明2の「遊技領域221」、「透明のカバー部材311a」、「前面扉310」、「可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340」及び「パチンコ機である遊技台A」は、それぞれ本願発明の「遊技領域」、「透過板」、「枠体」、「装飾体」及び「遊技機」に相当する。 引用発明2において、可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340(装飾体)は、正面から遊技者が遊技領域221全体を視認可能にする円形の開口部である窓部311全体を覆う透明のカバー部材311a(透過板)を配している前面扉310(枠体)に着脱自在として機種変更時等に交換し得るものであって、様々な演出が可能である。 そうすると、引用発明2は、本願発明の特定事項A及びEを備える。 してみると、本願発明と引用発明2とは、 「A 遊技領域の正面側に位置する透過板が少なくとも保持される枠体に対して交換可能に取り付けられ、遊技の進行に応じて演出を行う装飾体を備える、 E 遊技機。」である点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点2(特定事項BないしD) 「装飾体」に関し、 本願発明では、「前記装飾体が自機に対応するものであるか否かの識別を電気的に行う制御部と、前記制御部による識別の結果を報知する報知部と、を備え、前記制御部は、遊技の進行と並行して前記報知部による報知を実行させることが可能であり、前記装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を前記装飾体の作動停止とは異なる態様で前記報知部に報知させる」のに対し、 引用発明2では、「可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340」は「機種変更時等に交換し得るものであ」るが、本願発明のような特定がない点。 (2)判断 上記相違点2について検討する。 ア 上記5(2)イのとおり、引用例3記載の技術事項(上記4(3)オ)は、本願発明の特定事項BないしDを備えるといえる。 イ 上記相違点1についての検討と同様、引用発明2と引用例3記載の技術事項とは、遊技機本体に対して交換可能な装飾体を有する遊技機である点で技術分野が共通するから、引用発明2及び引用例3記載の技術事項に接した当業者であれば、引用例3記載の技術事項のように、装飾体が不適合であることを報知する必要性が引用発明2に潜在的に存在することを認識するものである。 そうすると、引用発明2において、引用例3記載の技術事項を適用し、可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340(装飾体)がパチンコ機である遊技台A(自機)に対応するものであるか否かを報知し、該報知を遊技の進行と並行して実行させることを可能とし、可動装飾ユニット330及び照明器ユニット340(装飾体)が対応するものではない場合、その旨を可動装飾ユニット330の環状体330の回転停止及び照明器ユニット340の発光停止(装飾体の作動停止)とは異なる態様で報知させるようになすこと、すなわち、上記相違点2に係る本願発明の特定事項のようになすことは当業者が容易に想到できることである。 ウ 本願発明の奏する効果は、引用発明2の奏する効果及び引用例3記載の技術事項の奏する効果から、予測することができた程度のものである。 7 請求人の主張について (1)請求人は、令和2年10月22日提出の意見書の「4.本願発明が特許されるべき理由」において、以下のとおり主張する。 ア 「しかし、引用例3では、段落0011等を参照すると、遊技機枠Y2自体が、ガラス枠Y21と、ガラス枠に取り付けられたガラス板Y22とを具備しています。つまり、引用例3では、遊技機枠が、ガラス枠に対して交換可能に取り付けられていません。 このため、引用例3の「遊技機枠」は、「透過板が少なくとも保持される枠体に対して交換可能に取り付けられ」る補正後の請求項1の「装飾体」に相当しません。 したがって、引用例1または引用例2に補正後の請求項1の「装飾体」が仮に示されていたとしても、引用例3に補正後の請求項1の「装飾体」に相当する構成が示されていないため、引用例1または引用例2に、引用例3を適用することはできません。」 イ 「仮に、不承ながら引用例1または引用例2に引用例3を適用できたとしても、以下の理由により、適用後の構成は、補正後の請求項1には至りません。 ・・・略・・・ しかし、引用例3の段落0256には、「遊技機枠Y2が不適合であると正式に判定された場合、ランプ制御基板104は、演出用照明装置73?78、演出ボタン装置10及び演出用役物装置80?84の駆動部(ソレノイド/モータ)を作動させないようになっている。」と記載されています。 つまり、引用例3では、補正後の請求項1の「装飾体」に対応する「遊技機枠」が不適合の場合、補正後の請求項1の「装飾体」の装飾機能に対応する「演出用照明装置73?78」を作動停止させています。 このため、「演出用照明装置73?78」を作動停止させる引用例3は、「装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を装飾体の作動停止とは異なる態様で報知部に報知させる」補正後の請求項1に係る発明とは異なります。 なお、「装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を装飾体の作動停止とは異なる態様で報知部に報知させる」点については、引用例1?2には、記載も示唆もされていません。 したがって、仮に、不承ながら引用例1または引用例2に引用例3を適用できたとしても、適用後の構成は、補正後の請求項1には至りません。」 (2)上記(1)の請求人の主張について検討する。 ア 上記(1)アについて 引用例3記載の技術事項は、遊技機枠Y2がガラス枠に対して交換可能に取り付けられていないものの、LEDを具備する演出用照明装置73?78が設けられているという意味で遊技機枠Y2が装飾体といえるものであり、ガラス枠に対して交換可能な装飾体については、引用例3には記載されていないが、引用発明1又は引用発明2では特定されている事項である。 そして、上記5(2)ウ及び6(2)イで説示したように、引用発明1又は2と引用例3記載の技術事項とが遊技機本体に対して交換可能な装飾体を有する遊技機として共通する点、及び、引用例3記載の技術事項は遊技機枠という交換可能な部品が遊技機本体に対して適合か不適合かを判定し不適合である場合にその旨を報知するものである点に着目すれば、引用例3記載の技術事項を引用発明1又は2に適用することは可能であり阻害要因もない。 イ 上記(1)イについて 上記4(3)オで示したとおり、引用例3記載の技術事項は、「遊技機枠」が不適合の場合、「演出用照明装置73?78」を作動停止させているものの、それに加えて、「遊技機枠が不適合」である旨を画像表示装置71に表示するものでもある。このため、引用例3記載の技術事項は、本願発明の「装飾体が自機に対応するものではない場合、その旨を装飾体の作動停止とは異なる態様で報知部に報知させる」との特定事項を備える。 したがって、引用発明1又は引用発明2に引用例3記載の技術事項を適用すれば、適用後の構成は、本願発明の特定事項に到るものである。 以上のとおり、上記主張は採用できない。 8 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用発明1及び引用例3記載の技術事項に基いて、又は、引用発明2及び引用例3記載の技術事項に基いて、容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-11-25 |
結審通知日 | 2020-12-01 |
審決日 | 2020-12-15 |
出願番号 | 特願2017-198596(P2017-198596) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小河 俊弥 |
特許庁審判長 |
伊藤 昌哉 |
特許庁審判官 |
鉄 豊郎 佐藤 高之 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 特許業務法人青海特許事務所 |