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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60R
管理番号 1370840
審判番号 不服2020-5024  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-14 
確定日 2021-02-04 
事件の表示 特願2019-81505号「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年10月3日出願公開、特開2019-167095号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成25年5月22日に出願された特願2013-107767号の一部を、平成28年11月1日に新たな特許出願とした特願2016-213975号の一部を、平成29年12月26日に新たな特許出願とした特願2017-248622号の一部を平成31年4月23日に新たな特許出願としたものであって、令和1年9月19日付けで拒絶理由が通知され、同年11月25日に意見書及び手続補正書が提出されたが、令和2年1月6日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対して、同年4月14日に拒絶査定不服審判の請求がされ、その後、当審において同年7月7日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年9月14日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、令和2年9月14日の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体と、
前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部と、
前記本体の前面側に設けられた操作部と、
前記本体の背面側に設けられ、前記車両の前方を撮影するカメラ部と
を備え、
前記本体が前記ルームミラーに装着されたときに、前記操作部は、前記本体の前面側から見て前記ルームミラーの右端、左端、下端および上端のいずれかの端部よりもはみ出した部分を有する
電子機器。」

第3 当審拒絶理由
当審拒絶理由は、以下の理由を含むものである。
[理由]
この出願の請求項1?4に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

[刊行物等一覧]
登録実用新案第3140339号公報(以下「引用文献1」という。)
特開2012-136192号公報(以下「引用文献2」という。)
英国特許出願公開第2455885号明細書(以下「引用文献3」という。)

請求項と引用文献との関係は、以下のとおりである。
・請求項1:引用文献1及び引用文献2
・請求項2?3:引用文献1、引用文献2及び引用文献3
・請求項1?4:引用文献2及び引用文献3

第4 引用文献
1 引用文献1について
(1)引用文献1に記載された事項
引用文献1には、図面とともに、以下の事項が記載されている(なお、下線は当審が付した。以下、同様である。)。
(1a)
「【0001】
本考案は、バックミラーに関し、特に画像を記録する機能を持つ走行時画像記録バックミラーに関する。
・・・
【0009】
本考案の一実施例を、図面を参照しながら説明する。
図1A?Cに示すとおり、本考案の走行時画像記録バックミラー10は、補助バックミラー20を備える。補助バックミラー20の正面には鏡面21が設置され、鏡面21の一端に鏡面21のバックミラー機能に影響しないように隠される形で、液晶スクリーン2A(LCD)が設置される。補助バックミラー20の反対面には、1組の固定クリップ22及びカメラ2Bを固定するための台座23が設置される。
図2A、図2B、及び図4に示すとおり、固定クリップ22の挟む作用によって、自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に、バックミラー41より大きいサイズの補助バックミラー20を直接挟んで簡単に固定する。補助バックミラー20の設置によって、自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に、走行時画像記録バックミラー10の取り付けが完了する。また、補助バックミラー20の側面には、メモリーカード2C及びメモリーカードインターフェース24、USBインターフェース25が設置される。
・・・
【0013】
リモコン操作処理ユニット35あるいはパネル操作ユニット36は、使用者が走行時画像記録装置30システム全体を操作するためのもので、リモコン操作処理ユニット35あるいはパネル操作ユニット36で情報を操作してCPチップ32に送り、CPチップ32によって走行時の画像データをデコードするよう命令する。画像表示再生処理出力ユニット37は、CPチップ32がデコードして送った走行時画像データを受信して、出力し、画像を再生する。そして、画像表示再生処理出力ユニット37に接続されている液晶スクリーン2A(LCD)によって直接画像が再生される。
・・・
【0017】
本考案の走行時画像記録バックミラー10の固定及び取り付け方法は、自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に、バックミラー41より大きな補助バックミラー20を直接取り付けるものである。走行時画像記録装置30は、補助バックミラー20内に隠れるように直接設置して固定する。
【0018】
上述したとおり、本考案は、補助バックミラー20を自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に設置するので、自動車40内の空間を占領しない。さらに、取り付けに便利で、取り付ける際に自動車40側の構造を変える必要が無い。よって、新車の場合でも何ら躊躇することなく、設置できる。さらに、本考案の走行時画像記録バックミラー10の取り付け方法は、一般に利用されている吸盤式で支柱をフロントグラスの内側に固定する方法、支柱をダッシュボードの上に粘着やネジとめ式で固定する方法、あるいは、支柱をエアコン吹き出し口のファンの上に固定する方法等と異なり、走行時に運転者の視線や注意力を妨げることが全くない。」
(1b)
図1A?図4は、以下のとおりである。

(2)引用文献1に記載された発明

摘記(1a)の段落【0009】の「カメラ2Bを固定するための台座23」という記載と、図1A、図1Bの「台座23」、「カメラ2B」、「鏡面21」の位置関係、及び、鏡面21が自動車40の後方に向けられている図4から、台座23に自動車40の前方を撮影するカメラ2Bを固定していることが、明らかである。

図1A及び図2Bから、液晶スクリーン2Aは、補助バックミラー20が自動車40内に元からあるバックミラー41に装着されたときに、図1Aにおける補助バックミラー20の正面側から見て、右端がバックミラー41の右端よりもはみ出した液晶スクリーン2Aであることが、明らかである。
図1A及び図2Bから、摘記(1a)の段落【0009】の「固定クリップ22の挟む作用によって、自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に、バックミラー41より大きいサイズの補助バックミラー20を直接挟んで」「固定する」ことは、「固定クリップ22の挟む作用によって、自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に、」バックミラー41の正面側の全面を覆うように、「バックミラー41より大きいサイズの補助バックミラー20を直接挟んで固定する」ことであることが、明らかである。

摘記(1a)の段落【0013】の「パネル操作ユニット36は、使用者が走行時画像記録装置30システム全体を操作するためのもの」という記載及び図1A?1Cから、補助バックミラー20の下面には、複数の操作ボタンが設置されていることが、明らかである。

したがって、上記ア?ウ及び摘記(1a)、図1A?図4(摘記(1b)参照)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明1]
「補助バックミラー20を備え、
補助バックミラー20の正面には、鏡面21が設置され、鏡面21の一端に鏡面21のバックミラー機能に影響しないように隠される形で、補助バックミラー20が自動車40内に元からあるバックミラー41に装着されたときに、補助バックミラー20の正面側から見て、右端がバックミラー41の右端よりもはみ出した液晶スクリーン2Aが設置され、
補助バックミラー20の反対面には、1組の固定クリップ22及びカメラ2Bを固定するための台座23が設置され、台座23に自動車40の前方を撮影するカメラ2Bを固定し、
補助バックミラー20の下面には、複数の操作ボタンが設置され、
固定クリップ22の挟む作用によって、自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に、バックミラー41の正面側の全面を覆うように、バックミラー41より大きいサイズの補助バックミラー20を直接挟んで固定する
走行時画像記録バックミラー10。」

2 引用文献2について
(1)引用文献2に記載された事項
引用文献2には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0003】
このように、ルームミラーに表示装置を設け、各種の情報を表示するようにした車載用電子機器は、その表示された情報を見るための運転者の視線の移動が少なくて済むので、安全運転に有効である。また、表示する情報として、例えば、“車両速度測定装置への接近”とした場合、その速度測定装置の存在を運転者に知らせることで、運転者が知らず知らずのうちに速度を出しすぎてしまうのを予防することに貢献している。特に、車両速度測定装置は、一般的に速度を超過しやすい場所等に設置されていることが多いため、危険性のある場所で、運転者に対して速度超過への注意を喚起することができる。このように、こうした車両用警報機能を備えた車載用電子機器は、安全運転に寄与している。また、後方車載カメラの場合、車載用電子機器のミラー部に映っている後方の視野と、ミラーの死角になる後方車載カメラで撮像した映像を同時に並べてみることができ、車両後方の状況をより正確に漏れなく見ることができ、安全運転に寄与できる。このような後付けのルームミラータイプの車載用電子機器としては、例えば、特許文献1に開示された発明がある。
・・・
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る車載用電子機器は、(1)スイッチ本体とそのスイッチ本体からの信号に基づき動作する電子回路を内蔵するケース本体と、前記ケース本体の表面に取り付けられたスイッチ操作板と、そのスイッチ操作板の表面に装着されるカバーフィルムと、を備え、前記スイッチ操作板は、前記スイッチ本体に対向する位置に、外部からの力を受けて変位する操作ボタン部を有し、その操作ボタン部の変位に伴い前記スイッチ本体の接点がON/OFFするように構成した。
・・・
【0023】
図1は、本発明に係る車載用電子機器の好適な一実施形態の全体斜視図を示しており、図2はその正面図、図3はその側面図、図4はその平面図、図5はその分解斜視図をそれぞれ示している。この実施形態の車載用電子機器は、車両に標準装備されているルームミラーに取り付けるルームミラータイプのレーダー探知機である。
【0024】
本実施形態の車載用電子機器10は、従来のこの種の装置と同様に、偏平で細長なケース本体11の内部に電子機器を構成する各種の装置・部品を組み込む。ケース本体11は、薄型で細長な前面開放したリアケース12と、そのリアケース12の前面開放部を閉塞するトップケース13とを備え、両ケース12,13の前後端面同士を突き合わせた状態で、リアケース12側より装着したネジを締結することで一体化する。
【0025】
リアケース12の背面中央側の上下には、後方に突出するように車両に標準装備のルームミラーへの固定用クランプ部15を設けている。この固定用クランプ部15は、リアケース12内に収納されたコイルスプリングにより、一対の上下の固定用クランプ部15の幅がせくなる方向に付勢されている。これにより、この上下の固定用クランプ部15にて標準装備のルームミラーを上下から挟み込むことで、車載用電子機器10をルームミラーのミラー面側に固定することになる。
【0026】
一方、トップケース13の前面のほぼ全面に、ミラー部14を装着する。そして、トップケース13の右端側には、スイッチ部16の操作面が露出するようにしている。このようにスイッチ部16をケース本体11に設けることで、リモコンによる操作並びにそのリモコンの保管・管理が不要となる。さらに、スイッチ部16の詳細な構成は後述するが、図5に示すように、スイッチ部16は、ケース本体11内に実装したタクトスイッチ21と、トップケース13に装着するスイッチ操作板22と、そのスイッチ操作板22の表面を覆うカバーフィルム23を備えて構成される。よって、これらのタクトスイッチ21,スイッチ操作板22,カバーフィルム23の一部または全部の部品の形状・レイアウト構成を変えても、ケース本体11の形態に変更を要しない。つまり、異なる型式の車載用電子機器10であって、機能等の相違からスイッチのボタン数を変更したり、レイアウトを変えたり、さらには、リモコンの受光部や、ランプなどの発光部などを設けるようなスイッチ部16の機能・構成を変更する必要を生じても、リアケース12及びトップケース13等は兼用することができる。
【0027】
図6は、車載用電子機器10(トップケース13)から、ミラー部14とカバーフィルム23を取り除いた状態を示す斜視図であり、図7はその状態からさらにカバーフィルム23を取り付けるための両面テープ24を取り除いた状態を示す正面図である。図8は、図7の状態からスイッチ操作板22並びにスイッチ操作板22用の固定ネジ25も取り除いた状態、すなわち、トップケース13を示す正面図である。さらに図9は、図7の状態からスイッチ操作板22を取り除いた状態を示す拡大斜視図である。
・・・
【0030】
一方、ミラー部14は、ガラス板の表面または裏面に銀・アルミ・クロムなどの金属膜を蒸着して鏡面部をハーフミラー化して形成する。このトップケース13にミラー部14を装着した際に、ケース本体11に実装した表示パネル17aに対向するミラー部14の部位は金属膜を蒸着して半透明な窓部14aを設ける。これにより、ミラー部14を第1凹所13b内に取り付けた場合には、その窓部14aに表示パネル17aが対向する。なお、表示パネル17aに対向するミラー部14の部位を除くミラー部14の裏面には表示パネル17aの表示領域以外の内部が見えない様に黒印刷等を施すと良い。
・・・
【0033】
スイッチ操作板22は、図10?図12に示すように、平板状のベース板22aの所定位置に矩形状の小開口部22bを設け、その小開口部22b内に、平面コ字状の操作ボタン部22cを配置する構造を基本構成としている。本実施形態では、タクトスイッチ21を上下に6個配置したレイアウトとしているため、小開口部22bは、そのタクトスイッチ21に合わせて上下方向に等間隔で6個(1列)形成している。操作ボタン部22cは、上下に平行に配置された一対のアーム22dと、そのアーム22dの左先端同士を連結する連結バー22eと、その連結バー22eの後面中央に後方に向けて突出する突起22fを備えている。操作ボタン部22cは、一対のアーム22dと連結バー22eにて平面コ字状に形成され、アーム22dの右先端が小開口部22bの内周面に連結されている。つまり、各操作ボタン部22cは、片持ち支持状でベース板22aに連結される。換言すると、操作ボタン部22cは、矩形状の部材の中央部をくりぬいた形状としている。よって、上下に延びる連結バー22eを後方に向けて(ケース本体11内に向けて)押すと、操作ボタン部22cは右先端を支点としてアーム22dが撓み、連結バー22eひいてはその裏面に設けられた突起22fが後方に変位する。連結バー22eに対する付勢力を解除すると、アーム22dの弾性復元力により、アーム22dの左先端が元の基本位置に復帰する。これに伴い、連結バー22e,突起22fも前方に移動し、基本位置に復帰する。
・・・
【0046】
一方、サブ基板29は、図13に示すように、表示パネルモジュール17と、タクトスイッチ21と、LED26を備え、それらを動作するための表示制御部,スイッチ制御部並びにLED制御部等を備える。さらにこのサブ基板29には、その裏面側にマイクロSDカード用スロット40を備える。マイクロSDカード用スロット40は、リアケース12の右側面の上下方向略中央部位に設けられたスロット口12aに臨むようしている。また、マイクロSDカード用スロット40は、タクトスイッチ21やLED26の裏面側に位置するレイアウトとなっている。」
(2b)
図1?図12は、以下のとおりである。

(2)引用文献2に記載された発明、技術事項

摘記(2a)の段落【0024】の「ケース本体11は、薄型で細長な前面開放したリアケース12と、そのリアケース12の前面開放部を閉塞するトップケース13とを備え、両ケース12,13の前後端面同士を突き合わせた状態で、リアケース12側より装着したネジを締結することで一体化する」という記載を参照すると、同【0026】の「トップケース13の前面のほぼ全面に、ミラー部14を装着する。」という記載の「トップケース13」の「前面」は、「ケース本体11」の「前面」であることが、明らかであるから、当該記載は、「ケース11の前面のほぼ全面に、ミラー部14を装着する。」ものとしても特定できる。

摘記(2a)の段落【0025】の「この上下の固定用クランプ部15にて標準装備のルームミラーを上下から挟み込むことで、車載用電子機器10をルームミラーのミラー面側に固定することになる」という記載の「車載用電子機器10」は、実質的に「ケース本体11」を意味していることが明らかであるから、当該記載は、「この上下の固定用クランプ部15にて標準装備のルームミラーを上下から挟み込むことで、ケース本体11をルームミラーのミラー面側に固定することになる」ものとしても特定できる。

図6を参照すると、摘記(2a)の段落【0030】の「ケース本体11に実装した表示パネル17aに対向するミラー部14」は、ケース本体11の内部に実装した表示パネル17aに対向するミラー部14」として特定できる。

上記ア、ウ、摘記(2a)の段落【0033】及び図1?12(特に、図5?10)を参照すると、「ケース本体11の内部に実装した表示パネル17aとケース本体11の長手方向端との間に位置し、ケース本体11の長手方向端に沿って並ぶ複数の操作ボタン部22cを配置した、ケース本体11端部の前面側に取り付けられたスイッチ操作板22」及び「ケース本体11と上下の固定用クランプ部15とスイッチ操作板22とを備える、車載用電子機器10」が特定できる。

したがって、上記ア?エ及び摘記(2a)、図1?12(摘記(2b)参照)から、引用文献2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)又は次の技術事項(以下「引用文献2に記載された技術事項」という。)が記載されていると認められる。

[引用発明2]又は[引用文献2に記載された技術事項]
「前面に、鏡面部をハーフミラー化して形成され、ケース本体11に内部に実装した表示パネル17aに対向するミラー部14を装着する、偏平で細長なケース本体11と、
標準装備のルームミラーを上下から挟み込むことで、ケース本体11をルームミラーのミラー面側に固定する、上下の固定用クランプ部15と、
ケース本体11の内部に実装した表示パネル17aとケース本体11の長手方向端との間に位置し、ケース本体11の長手方向端に沿って並ぶ複数の操作ボタン部22cを配置した、ケース本体11端部の前面側に取り付けられたスイッチ操作板22と
を備える、
車載用電子機器10。」

3 引用文献3について
(1)引用文献3に記載された事項
引用文献3には、図面とともに、以下の事項が記載されている(翻訳は、当審が作成した。)。
(3a)
「Referring to FIGS. 1A, 1B, 1C, 1C, 2A, 2B, 2C, 2D, 3, 4 and 5 for an automobile image recording rear mirror of the present invention, the automobile image recording rear mirror 10 comprises:
an accessory rear mirror 20, having a mirror 21 installed at the front side of the accessory rear mirror 20, and the mirror 21 having a liquid crystal display screen (LCD)2A installed and hidden at an end of the mirror 21 without affecting the rear viewing function of the mirror 21, and a set of fixing clamps 22 and a camera 2B installed on the backside for fixing a base 23, so that the action force of the fixing clamps 22 facilitates clamping the accessory rear mirror 20 to the original position of the rear mirror 41 in the automobile 40, and the accessory rear mirror 20 is installed at the original position of the rear mirror 41 in an automobile 40 to complete installing the automobile image recording rear mirror 10, and a memory card 2C and a USB interface 24,25 is installed at a lateral side of the accessory rear mirror 20;」(2ページ20行?3ページ2行)
[翻訳]
「本発明の自動車用画像記録バックミラーの図1A、1B、1C、1C、2A、2B、2C、2D、2D、3、4および5を参照すると、自動車画像記録リアミラー10は、以下を含む。
アクセサリリアミラー20の前面にミラー21が取り付けられているアクセサリリアミラー20、
ミラー21の後方視機能に影響を与えることなく、ミラー21の端部に取り付けられ、隠された液晶ディスプレイスクリーン(LDC)2Aを有するミラー21、
ベース23を固定するために裏側に取り付けられた一組の固定クランプ22及びカメラ2B、その結果、固定クランプ22の作用力は、アクセサリリアミラー20を自動車40内のリアミラー41の元の位置にクランプすることを容易にする、
アクセサリリアミラー20は、自動車40のリアミラー41の元の位置に取り付けられ、自動車画像記録リアミラー10の取り付けを完了する、
メモリカード2C及びUSBインターフェース24、25は、アクセサリリアミラー20の側面に取り付けられている、」

(3b)
引用文献3のFIG.1-A?FIG.2-Dは、以下のとおりである。

(2)引用文献3に記載された技術事項

摘記(3a)の「ベース23を固定するために裏側に取り付けられた一組の固定クランプ22及びカメラ2B、その結果、固定クランプ22の作用力は、アクセサリリアミラー20を自動車40内のリアミラー41の元の位置にクランプすることを容易にする」という構成及びFIG.1-B、FIG.1-D、FIG.2-B及びFIG.2-Dを参照すると、当該構成の「裏側」は、「アクセサリリアミラー20」の「裏側」であることが明らかであり、「カメラ2B」は、自動車の前方を撮影することが明らかである。
そうすると、当該構成は、「アクセサリリアミラー20を自動車40内のリアミラー41」「にクランプする」「アクセサリリアミラー20」の「裏側に取り付けられた一組の固定クランプ22」と、「アクセサリリアミラー20」の「裏側に取り付けられた」自動車の前方を撮影する「カメラ2B」とを有している構成として、特定できる。

上記ア、摘記(3a)及びFIG.1-B、FIG.1-D、FIG.2-B及びFIG.2-Dを参照し、「カメラ2B」と「液晶ディスプレイスクリーン2A」との位置関係に着目すると、「アクセサリリアミラー20」が、自動車40内のリアミラー41」「にクランプ」された状態で、「アクセサリリアミラー20」の「裏側に取り付けられた」自動車の前方を撮影する「カメラ2B」を、「自動車40内のリアミラー41」と干渉しない位置であって、「液晶ディスプレイスクリーン2A」に対向する位置に取り付けている、構成が認められる。

FIG.1-B及びFIG.3から、「アクセサリリアミラー20」の下面に設けられた複数の突起が看取できるところ、「アクセサリリアミラー20」には、「液晶ディスプレイスクリーン2Aを有する」「ミラー21が取り付けられている」ことや「カメラ2B」が取り付けられていること(上記ア)などを総合すると、これらの突起は、操作ボタンであることが、明らかである。
したがって、「アクセサリリアミラー20」の下面に設けられた複数の操作ボタンが認められる。

上記ア?ウ、摘記(3a)及びFIG.1-B、FIG.1-D、FIG.2-B及びFIG.2-D(摘記(3b)参照)を総合すると、引用文献3には、次の技術事項(以下「引用文献3に記載された技術事項」又は「事項3」ともいう。)が記載されていると認められる。
[引用文献3に記載された技術事項](又は[事項3])
「ミラー21の後方視機能に影響を与えることなく、ミラー21の端部に取り付けられ、隠された液晶ディスプレイスクリーン2Aを有するミラー21と、
前面にミラー21が取り付けられているアクセサリリアミラー20と、
アクセサリリアミラー20を自動車40内のリアミラー41にクランプするアクセサリリアミラー20の裏側に取り付けられた一組の固定クランプ22と、
アクセサリリアミラー20の下面に設けられた複数の操作ボタンと、
アクセサリリアミラー20の裏側に取り付けられた自動車の前方を撮影するカメラ2Bとを、
含み、
アクセサリリアミラー20が、自動車40内のリアミラー41にクランプされた状態で、アクセサリリアミラー20の裏側に取り付けられた自動車の前方を撮影するカメラ2Bを、自動車40内のリアミラー41と干渉しない位置であって、液晶ディスプレイスクリーン2Aに対向する位置に取り付けている、
自動車画像記録リアミラー10。」

第5 対比・判断
1 引用発明1を主たる発明とした場合の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明1とを対比する。

(ア)
引用発明1の「正面」、「液晶スクリーン2A」及び「補助バックミラー20」は、それぞれ、本願発明の「前面」、「表示部」及び「本体」に相当する。
(イ)
引用発明1の「一端に鏡面21のバックミラー機能に影響しないように隠される形で」「液晶スクリーン2Aが設置され」る「鏡面21」は、「液晶スクリーン2A」(表示部)の光を透過させることが明らかであるから、本願発明の「表示部の光を透過させるハーフミラー部」に相当する。
(ウ)
引用発明1は、「補助バックミラー20の正面には、鏡面21が設置され、鏡面21の一端に鏡面21のバックミラー機能に影響しないように隠される形で、」「液晶スクリーン2Aが設置され」るから、「液晶スクリーン2A」が、「補助バックミラー20」の内部に「設置され」ているといえる。
(エ)
上記(ア)?(ウ)を踏まえると、引用発明1の「正面には、鏡面21が設置され、鏡面21の一端に鏡面21のバックミラー機能に影響しないように隠される形で、」「液晶スクリーン2Aが設置され」る「補助バックミラー20」は、本願発明の「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体」に相当する。

(ア)
引用発明1の「自動車40」は、本願発明の「車両」に相当し、引用発明1の「バックミラー41」は、「自動車40内に元からあるバックミラー41」であるから、本願発明の「ルームミラー」に相当する。
引用発明1の「固定クリップ22」は、本願発明の「装着部」に相当する。
(イ)
上記(ア)及びア(ア)から、引用発明1の「固定クリップ22の挟む作用によって、自動車40内に元からあるバックミラー41の位置に、バックミラー41の正面側の全面を覆うように、バックミラー41より大きいサイズの補助バックミラー20を直接挟んで固定する」、「補助バックミラー20の反対面に」「設置され」た「1組の固定クリップ22」は、本願発明の「前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部」に相当する。

(ア)
引用発明1の「複数の操作ボタン」は、本願発明の「操作部」に相当する。
(イ)
上記(ア)及びア(ア)から、引用発明1の「補助バックミラー20の下面に」「設置され」る「複数の操作ボタン」と、本願発明の「前記本体の前面側に設けられた操作部」とは、「前記本体に設けられた操作部」において共通している。

(ア)
引用発明1の「反対面」及び「自動車40の前方を撮影するカメラ2B」は、それぞれ、本願発明の「背面」及び「車両の前方を撮影するカメラ部」に相当する。
(イ)
上記(ア)及びア(ア)から、引用発明1の「補助バックミラー20の反対面に」「設置され」た「カメラ2Bを固定するための台座23」に「固定し」た「自動車40の前方を撮影するカメラ2B」は、本願発明の「前記本体の背面側に設けられ、前記車両の前方を撮影するカメラ部」に相当する。

引用発明1の「走行時画像記録バックミラー10」は、本願発明の「電子機器」に相当する。

以上から、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点1>
「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体と、
前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部と、
前記本体に設けられた操作部と、
前記本体の背面側に設けられ、前記車両の前方を撮影するカメラ部と
を備える
電子機器。」
<相違点1-1>
「本体に設けられた操作部」に関して、本願発明は、前記本体「の前面側」に設けられた操作部であり、「前記本体が前記ルームミラーに装着されたときに、前記操作部は、前記本体の前面側から見て前記ルームミラーの右端、左端、下端および上端のいずれかの端部よりもはみ出した部分を有する」のに対して、引用発明1は、「補助バックミラー20の正面には、」「補助バックミラー20が自動車40内に元からあるバックミラー41に装着されたときに、補助バックミラー20の正面側から見て、右端がバックミラー41の右端よりもはみ出した液晶スクリーン2Aが設置され」、「補助バックミラー20の下面には、複数の操作ボタンが設置され」る点。

(2)判断
相違点について、以下検討する。
ア 相違点1-1について
(ア)
本願発明と引用文献2に記載された技術事項とを対比すると、引用文献2に記載された技術事項の「ケース本体11」は本願発明の「本体」に相当し、以下同様に、「表示パネル17a」は「表示部」に、「複数の操作ボタン部22c」及び「複数の操作ボタン部22cを配置した」「スイッチ操作板22」は「操作部」に、それぞれ相当するから(後述の2(1)アも参照)、引用文献2に記載された技術事項は、「ケース本体11の内部に実装した表示パネル17aとケース本体11の長手方向端との間に位置し、ケース本体11の長手方向端に沿って並ぶ複数の操作ボタン部22cを配置した、ケース本体11端部の前面側に取り付けられたスイッチ操作板22」、すなわち、本願の用語を用いると「本体の内部に実装した表示部と本体の長手方向端との間に位置し、本体の長手方向端に沿って並び本体端部の前面側に取り付けられた操作部」を備えている。
(イ)
引用発明1(上記一致点1参照)と引用文献2に記載された技術事項(本願発明との対比に関して後述の2(1)の<一致点2>参照)とは、
「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体と、
前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部と、
前記本体に設けられた操作部と
を備える
電子機器」
において共通するものである。
このように、引用発明1と引用文献2に記載された技術事項とは、車両のルームミラーに装着する電子機器という技術分野とその電子機器の主要な構成が共通しており、本体を車両のルームミラーに装着することで運転の妨げにならないという課題(摘記(1a)の段落【0018】及び摘記(2a)の段落【0003】)でも共通しているから、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえる。
(ウ)
そうすると、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用することで、
引用発明1において、引用文献2に記載された技術事項の上記(ア)の構成を採用し、「補助バックミラー20の下面に」「設置され」た「複数の操作ボタン」を、「補助バックミラー20が自動車40内に元からあるバックミラー41に装着されたときに、補助バックミラー20の正面側から見て、右端がバックミラー41の右端よりもはみ出した液晶スクリーン2A」と「補助バックミラー20」(本体)の長手方向端との間の前面側に、「補助バックミラー20」(本体)の長手方向端に沿って並ぶように、操作部として配置することで、
「補助バックミラー20」(本体)が「自動車40内に元からあるバックミラー41」(ルームミラー)に装着されたときに、操作部は、前記「補助バックミラー20」(本体)の前面側から見て前記「自動車40内に元からあるバックミラー41」(ルームミラー)の右端の端部よりもはみ出した部分を有するようにして、
上記相違点1-1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
イ 作用効果について
そして、本願発明の効果について検討しても、本願発明の効果は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項から予測されるものであって格別なものとはいえない。
ウ 小括
したがって、本願発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

2 引用発明2を主たる発明とした場合の対比・判断
(1) 対比
本願発明と引用発明2とを対比する。

引用発明2の「ケース本体11」、「前面」、「表示パネル17a」、「固定用クランプ部15」は、それぞれ、本願発明の「本体」、「前面」、「表示部」、「装着部」に相当する。
引用発明2の「複数の操作ボタン部22c」及び「複数の操作ボタン部22cを配置した」「スイッチ操作板22」は,本願発明の「操作部」に相当する。

引用発明2の「鏡面部をハーフミラー化して形成され、ケース本体11に内部に実装した表示パネル17aに対向するミラー部14」は、「表示パネル17a」の光を透過させることが明らかであるから、本願発明の「内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部」に相当する。
したがって、上記アの相当関係を踏まえると、引用発明2の「前面に、鏡面部をハーフミラー化して形成され、ケース本体11に内部に実装した表示パネル17aに対向するミラー部14を装着する、偏平で細長なケース本体11」は、本願発明の「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体」に相当する。

引用発明2の「ルームミラー」は、「車載用電子機器10」の「ケース本体11」を「固定する」、「標準装備のルームミラー」であるから、本願発明の「車両のルームミラー」に相当する。
したがって、上記アの相当関係を踏まえると、引用発明2の「標準装備のルームミラーを上下から挟み込むことで、ケース本体11をルームミラーのミラー面側に固定する、上下の固定用クランプ部15」は、本願発明の「本体を車両のルームミラーに装着するための装着部」に相当する。

上記アの相当関係を踏まえると、引用発明2の「複数の操作ボタン部22c」及び「ケース本体11の長手方向端に沿って並ぶ複数の操作ボタン部22cを配置した、ケース本体11端部の前面側に取り付けられたスイッチ操作板22」は、本願発明の「本体の前面側に設けられた操作部」に相当する。

引用発明2の「車載用電子機器10」は、本願発明の「電子機器」に相当する。

以上から、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
<一致点2>
「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体と、
前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部と、
前記本体の前面側に設けられた操作部と
を備える
電子機器。」
<相違点1-2>
本願発明は、「前記本体の背面側に設けられ、前記車両の前方を撮影するカメラ部」を備えるのに対して、引用発明2は、そのように特定されていない点。
<相違点2-2>
本願発明は、「前記本体が前記ルームミラーに装着されたときに、前記操作部は、前記本体の前面側から見て前記ルームミラーの右端、左端、下端および上端のいずれかの端部よりもはみ出した部分を有する」のに対して、引用発明2は、「ケース本体11の内部に実装した表示パネル17aとケース本体11の長手方向端との間に位置し、ケース本体11の長手方向端に沿って並ぶ複数の操作ボタン部22cを配置した、ケース本体11端部の前面側に取り付けられたスイッチ操作板22」を備える点。

(2)判断
相違点について、以下、検討する。
ア 相違点1-2について
(ア)
本願発明と引用文献3に記載された事項(事項3)とを対比する。
a
事項3の「ミラー21の後方視機能に影響を与えることなく、ミラー21の端部に取り付けられ、隠された液晶ディスプレイスクリーン2Aを有するミラー21」という構成の「ミラー21」は、「後方視機能に影響を与えることなく」「端部に取り付けられ」た、「液晶ディスプレイスクリーン」を「隠」す機能を備えるとともに、「液晶ディスプレイスクリーン」を見ることができるように「液晶ディスプレイスクリーン」の光を透過させる機能も備えることが明らかである。
事項3の「液晶ディスプレイスクリーン」は、本願発明の「表示部」に相当する。
したがって、事項3の「ミラー21の後方視機能に影響を与えることなく、ミラー21の端部に取り付けられ、隠された液晶ディスプレイスクリーン2Aを有するミラー21」は、本願発明の「表示部の光を透過させるハーフミラー部」に相当する。
b
事項3の「アクセサリリアミラー20」は、本願発明の「本体」に相当する。
このことと、上記aを踏まえると、事項3の「ミラー21の後方視機能に影響を与えることなく、ミラー21の端部に取り付けられ、隠された液晶ディスプレイスクリーン2Aを有するミラー21と、前面にミラー21が取り付けられているアクセサリリアミラー20」は、本願発明の「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体」に相当する。
c
事項3の「自動車40内のリアミラー41」、「クランプする」及び「固定クランプ22」は、それぞれ、本願発明の「車両のルームミラー」、「装着する」及び「装着部」に相当する。
このことと、上記bを踏まえると、事項3の「アクセサリリアミラー20を自動車40内のリアミラー41にクランプするアクセサリリアミラー20の裏側に取り付けられた一組の固定クランプ22」は、本願発明の「前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部」に相当する。
d
事項3の「操作ボタン」は、本願発明の「操作部」に相当する。
このことと、上記bを踏まえると、事項3の「アクセサリリアミラー20の下面に設けられた複数の操作ボタン」と、本願発明の「前記本体の前面側に設けられた操作部」とは、「前記本体に設けられた操作部」において共通している。
e
事項3の「カメラ2B」及び「裏側」は、それぞれ、本願発明の「背面側」及び「カメラ部」に相当する。
このことと、上記bを踏まえると、事項3の「アクセサリリアミラー20の裏側に取り付けられた自動車の前方を撮影するカメラ2B」は、本願発明の「前記本体の背面側に設けられ、前記車両の前方を撮影するカメラ部」に相当する。
f
事項3の「含」むこと、及び、「自動車画像記録リアミラー10」は、それぞれ、本願発明の「備え」ること、及び、「電子機器」に相当する。
g
上記a?eを踏まえると、事項3の「アクセサリリアミラー20が、自動車40内のリアミラー41にクランプされた状態で、アクセサリリアミラー20の裏側に取り付けられた自動車の前方を撮影するカメラ2Bを、自動車40内のリアミラー41と干渉しない位置であって、液晶ディスプレイスクリーン2Aに対向する位置に取り付けている」構成は、本願発明の用語を用いると、「本体が、ルームミラーに装着された状態で、本体の背面側に取り付けられた自動車の前方を撮影するカメラ部を、ルームミラーと干渉しない位置であって、表示部に対向する位置に取り付けている」構成であるといえる。
h
したがって、引用文献3に記載された技術事項(事項3)は、本願発明の用語を用い本願発明の記載に倣うと、
「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体(上記b参照)と、
前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部(上記c参照)と、
前記本体に設けられた操作部(上記d参照)と、
前記本体の背面側に設けられ、前記車両の前方を撮影するカメラ部(上記e参照)と
を備え、
前記本体が、前記ルームミラーに装着された状態で、前記本体の背面側に取り付けられた車両の前方を撮影するカメラ部を、ルームミラーと干渉しない位置であって、表示部に対向する位置に取り付けている(上記g参照)
電子機器(上記f参照)。」
であるといえる。
(イ)
上記一致点2及び上記(ア)から、引用発明2(上記一致点2参照)と引用文献3に記載された技術事項(上記(ア)参照)とは、
「前面側に、内部に有する表示部の光を透過させるハーフミラー部を備える本体と、
前記本体を車両のルームミラーに装着するための装着部と、
前記本体に設けられた操作部と
を備える
電子機器」
において共通するものである。
このように、引用発明2と引用文献3に記載された技術事項とは、車両のルームミラーに装着する電子機器という技術分野とその電子機器の主要な構成が共通しており、本体を車両のルームミラーに装着することで運転の妨げにならないという課題(引用文献3には、明記されているわけではないが、本体を車両のルームミラーに装着していることから、自明な課題といえる。)でも共通しているから、引用発明2に引用文献3に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえる。
(ウ)
引用発明2に、引用文献3に記載された技術事項を適用し、引用発明2において、「ケース本体11」の背面側に設けられ、車両の前方を撮影するカメラ部を備えるようにすることで、上記相違点1-2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
イ 相違点2-2について
また、上記ア(イ)と同様に、引用発明2に、引用文献3に記載された技術事項を適用し、引用発明2において、「ケース本体11」(本体)がルームミラーに装着された状態で、前記「ケース本体11」の背面側に取り付けられた車両の前方を撮影するカメラ部を、ルームミラーと干渉しない位置であって、「ケース本体11の内部に実装した表示パネル17aとケース本体11の長手方向端との間に位置し、ケース本体11の長手方向端に沿って並ぶ複数の操作ボタン部22cを配置した、ケース本体11端部の前面側に取り付けられたスイッチ操作板22」の構成における「ケース本体11の内部に実装した表示パネル17a」(表示部)と対向する位置に取り付けることで、
「複数の操作ボタン部22cを配置した」「スイッチ操作板22」を、「ルームミラー」よりも「ケース本体11の長手方向端」に位置するようにし、「複数の操作ボタン部22c」及び「ケース本体11の長手方向端に沿って並ぶ複数の操作ボタン部22cを配置した、ケース本体11端部の前面側に取り付けられたスイッチ操作板22」が、「ケース本体11」の前面側から見て「ルームミラー」の右端よりもはみ出した部分を有するようにすることで、上記相違点2-2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。
ウ 作用効果について
そして、本願発明の効果について検討しても、本願発明の効果は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術事項から予測されるものであって格別なものとはいえない。
エ 小括
したがって、本願発明は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 審判請求人の主張について
(1)審判請求人の主張
審判請求人は、当審拒絶理由に対する令和2年9月14日の意見書の「【意見の内容】」「1.本願が特許されるべき理由」「(3)拒絶理由に対する意見」の「(3-5)理由1-1について(引用文献1を主引例とする拒絶理由について)」「(3-5-1)請求項1」「B.本願発明1と引用発明との対比」及び「(3-6)理由1-2について(引用文献2を主引例とする拒絶理由について)」「(3-6-1)請求項1」「B.本願発明1と引用発明との対比」において、それぞれ、以下のとおり主張している。

「また、仮に、引用文献1に記載の発明に引用文献2に記載の発明を組み合わせることができたとしても、以下の理由により、当業者が本願発明1を容易に想到できたということはできません。
引用文献1には、ケース本体11にパネル操作ユニット36が設けられていることが記載され、図1C等に操作ボタンらしきものが図示されているだけで(なお、図面に符号が付されていません。)、これ以外に、操作ボタンの配置に関する記載や示唆がありません。引用文献1に記載の発明では、図1A、2A、2B等の記載からも分かりますように、補助バックミラー20の前面のうち、ルームミラーよりも幅方向にはみ出した部分には、液晶スクリーン2A(LCD)が広範囲にわたって設けられていますから、このはみ出した部分の前面に操作ボタンを配置するスペースがなく、前面に操作ボタンを配置することはできず、引用文献1に記載の発明でこのような配置が想定されていないことが明白です。そのような理由もあって、引用文献1には下端に操作ボタンらしきものが図示されているのだと思料します。
引用文献2に、本体ケースの端部の前面側に操作ボタンを配置することが記載されているにしても、引用文献1に記載の発明の構成を前提にしたのでは、前面に操作ボタンを配置することはできませんし、引用文献1、2に接した当業者にとってこのような配置をする動機づけとなりうるものもなく、このような構成とすることを阻害する阻害要因すら存在するものです。

仮に、引用文献1に記載の発明の構成の下で、前面側から見て液晶スクリーン2A(LCD)よりもさらに右側に操作ボタンを配置する場合を考えてみても、当業者が本願発明1の構成に想到できたということはできません。
このように操作ボタンを配置する場合、液晶スクリーン2Aを縮小するか、または補助バックミラー20を幅方向に肥大化させることが必須となります。しかしながら、前者とした場合、ユーザによる液晶スクリーン2Aの表示内容の視認性を妨げることになりますから、視覚情報の提供を重視する補助バックミラー20の特性上、許容しがたいものです。後者とした場合、補助バックミラー20の肥大化に伴い、補助バックミラー20の重量も増大することになります。重量の増大は、補助バックミラー20やルームミラーの姿勢の安定性や、補助バックミラー20の落下・破損等のおそれを軽減させる妨げにもなり得、車両の走行の安全性にも影響を与えうるものとなります。よって、後者とすることもまた、補助バックミラー20の特性上、許容しがたいものです。
このように、ルームミラーに取り付ける機器の分野特有の事情も考慮すれば、引用文献1、2に接した当業者にとって、引用文献1に記載の補助バックミラー20を本願発明1のように構成する動機づけがないばかりか、このように構成することを阻害する要因が存在します。

ところで、拒絶理由通知書の『(1-2) 判断』の項のイにおいて、審判官殿は、『引用発明1と引用文献2に記載された技術事項とは、ハーフミラー部と装着部と操作部とを備える、ルームミラーに装着する電子機器において、技術分野が共通しているから、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえる』と認定され、さらに同項のウにおいて、『そうすると、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用することで、引用発明1において、引用文献2に記載された技術事項の上記アの構成を採用し、(中略)上記相違点1-1に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得たといえる。』と認定されています。
しかし、引用文献1、2に記載された発明から本願発明1に想到できる根拠が、もっぱらルームミラーに装着する電子機器という技術分野の共通性だけであり、引用文献1、2に記載の両発明の構成の関係や、補助バックミラーのようなルームミラーに取り付ける機器における分野特有の事情(上記参照)、これらを踏まえた動機づけの不存在、および阻害要因の存在等が考慮されていません。出願人は、このような認定に承服することができません。
本願発明1と各引用文献に記載の発明とは、その技術的思想が異なるものであり、本願発明1は、引用文献とは異質な固有の効果を奏する構成要素および構成要素間の有機的連携を有する特徴的な構成であって、本願発明1は、特許を受けることのできる発明です。
したがって、本願発明1は、引用文献1-2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではありません。」(以下「主張1」という。)

「・・・しかし、既に説明しましたように、引用文献2には、車載用電子機器10がルームミラーに装着されたときの、複数の操作ボタン部22cとルームミラーとの具体的な位置関係について記載されていません。よって、引用文献2には、複数の操作ボタン部22cが、ルームミラーの前面側から見たときに、ルームミラーの右端、左端、下端および上端のいずれかの端部よりもはみ出した部分を有することも、記載されていません。
・・・
このように、拒絶理由通知書においては、「所定の端部よりもはみ出した部分を有するようにすることで、上記相違点2-2に係る本願発明1の構成とすることは、当業者が容易になし得た」とだけ認定されているのみで、その根拠について明確に示されていません。例えば、引用文献2に記載の発明と引用文献3に記載の発明とでは、操作ボタンが設けられる面も幅方向における位置も異なる等の、引用文献2、3に記載の両発明の構成の関係が考慮されていませんし、既に説明しましたような、ルームミラーに取り付ける機器の特性上、機器を幅方向に肥大化させることや、表示部を縮小することによる問題があるという、かかる機器が属する技術分野における特有の事情、これらを踏まえた動機づけの不存在や、阻害要因の存在等が考慮されていません。出願人は、このような認定に承服することができません。」(以下「主張2」という。)

(2)検討
ア 主張1について
上記1(2)ア(イ)で述べたとおり、引用発明1と引用文献2に記載された技術事項とは、技術分野のみならず主要な構成や課題の一部が共通するものであるから、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえる。
また、引用発明1は、図1C等から、補助バックミラー20の下面には、複数の操作ボタンが設置されている構成を備えていることが、明らかであり(上記第4 1(2)ウ)、図1Cから、その操作ボタンが、液晶スクリーン2Aと補助バックミラー20の端部との間に配置できる程度の大きさであることも、明らかである。
したがって、上記1(2)ア(ウ)で述べたとおりであって、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用することで、上記の複数の操作ボタンを、「液晶スクリーン2A」と「補助バックミラー20」の長手方向端との間の前面側に、「補助バックミラー20」の長手方向端に沿って並ぶように、操作部として配置することは、当業者が容易になし得たといえる。
また、仮に、操作ボタンがそこまで小さいものとはいえないとしても、表示内容の視認性を妨げるまで、極端に液晶スクリーン2Aを縮小したり、補助バックミラー20やルームミラーの姿勢の安定性が損なわれるまで、極端に補助バックミラー20を幅方向に広げたり、補助バックミラー20の落下・破損等のおそれがあるような重量になるまで、極端に補助バックミラー20を幅方向に広げたりする(すなわち肥大化させる)ことまでしなければ、操作ボタンが、液晶スクリーン2Aと補助バックミラー20の長手方向端との間に配置できないというものではないから、操作ボタンをその位置に配置するための補助バックミラー20の改良は、充分に許容できるものである。
そうすると、引用発明1に引用文献2に記載された技術事項を適用することに、阻害要因は存在しない。
これらのことを総合すると、審判請求人の上記主張1は、当を得たものとはいえない。
(なお、本願発明の操作部は操作ボタン11を含むことが明らかであることを踏まえ、上記1において、対比・判断をしたが、発明の詳細な説明には、操作ボタン11や操作スイッチが記載されているだけであり、操作部についての説明は一切記載されておらず、操作部とこれらの関係も記載されていないから、本願発明の操作部が、実施例においてどのような部分まで含んでいるものであるのか具体的に特定することはできず、本願発明の操作部は、操作ボタンや操作ボタンの表示部などを含む操作ユニットとも解することができるから、引用文献1の操作ボタンの表示部である「REC」という文字が位置している部分も操作部(操作ユニット)の一部ということもでき、その操作部(操作ユニット)は、前面側から見てルームミラーの右端の端部よりもはみ出した部分を有することも明らかである。)
イ 主張2について
上記2(2)ア(イ)で述べたとおり、引用発明2と引用文献3に記載された技術事項とは、技術分野のみならず主要な構成や課題の一部が共通するものであるから、引用発明2に引用文献3に記載された技術事項を適用する動機付けは充分にあるといえる。
一方、審判請求人が主張するとおり、引用文献2には、車載用電子機器10がルームミラーに装着されたときの、複数の操作ボタン部22cとルームミラーとの具体的な位置関係について記載されていない。
しかしながら、引用文献2(摘記(2a)の段落【0046】)には、「サブ基板29には、その裏面側にマイクロSDカード用スロット40を備える。マイクロSDカード用スロット40は、リアケース12の右側面の上下方向略中央部位に設けられたスロット口12aに臨むようしている。」と記載されていることと、図1、3、5、6及び9から、引用文献2の車載用電子機器10は、複数の操作ボタン部22cが設けられる側の幅方向の端部には、マイクロSDカード用スロット40のためのスロット口12aを備えているから、その部分へのマイクロSDカードの挿入接続を妨げるように、ルームミラーの端部が車載用電子機器10の幅方向の端部からはみ出すようなことはないといえるし、また、ルームミラーの端部が車載用電子機器10の幅方向の端部からはみ出せば、視界の邪魔になるし見栄えも良くなく、後方の様子を見たときに車載用電子機器10のハーフミラー部の画像と混同などする虞もあるから、当業者であれば、引用文献2では、ルームミラーの端部が車載用電子機器10の幅方向の端部からはみ出さないような構造に、車載用電子機器10を設計するといえる。
また、車載用電子機器10の幅方向の長さがルームミラーと同じかやや小さい場合は、上記のはみ出さないようにするために位置合わせなどをする必要が生じるから、そのような構成も想定し得ないものである。
これらのことと、車載用電子機器が、引用文献1の図2Bや引用文献3のFIG.2-C、FIG.2-Dような状態でルームミラーに装着されることが周知技術といえることを総合すると、引用発明2において「ケース本体11をルームミラーのミラー面側に固定する」場合、すなわち、引用発明2の車載用電子機器10をルームミラーに装着する場合、車載用電子機器10とルームミラーとの装着に係る具体的な位置関係までは記載されていないものの、ルームミラーの左右両端から車載用電子機器10の左右両端がそれぞれ余裕を持ってはみ出した状態となるように装着されるものと理解できる。
そうすると、引用発明2の車載用電子機器10をルームミラーに装着すれば、相違点2-2に係る本願発明の構成が得られるともいえる。
要するに、引用発明2の車載用電子機器10の背面に周知のカメラを設けただけで(引用文献3のように、表示部が存在していない側に設けることもできる。)、本願発明を想到できるともいえる。
そして、引用発明2においてカメラを設けると共に引用発明2の車載用電子機器10をルームミラーへ装着することの具体的な態様として、上記2(2)ア、イで述べたとおりのものを想到することは、当業者が容易になし得たといえる。
これらのことを総合すると、「引用文献2には、車載用電子機器10がルームミラーに装着されたときの、複数の操作ボタン部22cとルームミラーとの具体的な位置関係について記載されていません。」ということなどを根拠とする、審判請求人の上記主張2は、当を得たものとはいえない。
ウ 小括
したがって、審判請求人の上記の主張1及び主張2は、いずれも当を得たものとはいえないから、いずれも採用できない。

4 まとめ
以上から、本願発明は、引用発明1及び引用文献2に記載された技術事項に基いて、又は、引用発明2及び引用文献3に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-12 
結審通知日 2020-11-17 
審決日 2020-12-15 
出願番号 特願2019-81505(P2019-81505)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60R)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高島 壮基  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 出口 昌哉
須賀 仁美
発明の名称 電子機器  

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