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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04W
管理番号 1370858
審判番号 不服2019-5893  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-05-07 
確定日 2021-02-02 
事件の表示 特願2016-525285「ランダムアクセスプロセスに対するカバレッジ改善のための方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日国際公開、WO2015/005701、平成28年 9月15日国内公表、特表2016-528791〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2014年(平成26年)7月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2013年7月10日 米国、2013年8月9日 米国、2013年9月27日 米国、 2013年10月18日 米国、 2013年10月31日 米国、 2014年1月30日 米国、 2014年6月30日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 6月19日付け :拒絶理由通知書
平成30年 9月25日 :意見書、手続補正書の提出
平成30年12月25日付け :拒絶査定
令和 1年 5月 7日 :拒絶査定不服審判の請求,手続補正書の提出
令和 2年 3月12日付け :拒絶理由通知書(当審)
令和 2年 6月16日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明
令和2年6月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
通信システムにおけるユーザ装置(UE)によりプリアンブルを伝送するための方法であって、
前記UEによって物理的ランダムアクセスチャンネル(PRACH)パラメータセットを獲得するステップと、
各PRACHリソースセットは、サブフレーム情報、周波数情報、プリアンブル伝送に対する反復回数及びプリアンブル伝送の最大回数を含み、各PRACHリソースセットは対応するカバレッジ向上(CE)レベルに関連され、
初期CEレベルとして第1のCEレベルを獲得するステップと、
前記初期CEレベルは、基地局から提供された参照信号受信電力(reference signal received power : RSRP)の臨界値に基づいて決定され、
前記第1のCEレベルに対応するPRACHリソースセットを使用して第1のプリアンブル伝送を遂行するステップと、
前記第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合、前記第1のCEレベルで、次に向上したCEレベルである第2のCEレベルに対応するPRACHパラメータセットを使用して、第2のプリアンブル伝送を遂行するステップと、を有することを特徴とする方法。」
(以下「本願発明」という。)

第3 当審の拒絶理由通知書の概要
当審の拒絶理由である、令和2年3月12日付け拒絶理由通知の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりのものである。
「1.(サポート要件)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

2.(明確性)この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



1 請求項1には「前記第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合、前記第1のCEレベルで、次に向上したCEレベルである第2のCEレベルに対応するPRACHパラメータセットを使用して、第2のプリアンブル伝送を遂行する・・・」とあるが、発明の詳細な説明の例えば段落195及び対応する図18のフローチャートには、「伝送カウンタがMaxCount+1に達する場合、・・・ステップ1829で、RACHプロセスが失敗する」ことは特定され、ステップ1823やステップ1861でも同様の動作が記載されているものの、MaxCount+1に達する場合、次に向上したCEレベルである第2のCEレベルに対応するPRACHパラメータセットを使用して、第2のプリアンブル伝送を遂行するものは、発明の詳細な説明には記載されていない。図19A、図21、図22及び対応する発明の詳細な説明についても同様に記載されていない。
請求項14についても同様である。
したがって、請求項1、14及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものでない。(サポート要件)

2 請求項1の「第1のプリアンブル伝送の最大回数」とは、伝送を行う最大回数を表しているものと解されるが、当該「最大回数」が発明の詳細な説明にある「伝送カウンタ(MaxCount)」とどのような関係にあるのか読み取れず、また「第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合」という状態はどのような時に発生するのかが特定されていないため、最大回数+1という状態がプリアンブル伝送の最大回数とどのような関係にあるのか不明である。
請求項9、14、18についても同様である。
したがって、請求項1、9、14、18及びこれらの請求項を引用する各請求項に係る発明は、明確でない。(明確性)
(以下省略)」

第4 本願の発明の詳細な説明の記載
本願の発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。(下線は当審が付与。)

「(前略)
【0087】 本発明の実施形態は、UEに対して要求されるCEレベルによるランダムアクセスプロセスのために、スケール可能な(scalable)CEをサポートするメカニズムを提供する。本発明の実施形態では、UEが、測定又は他の統計に基づいて、又はeNBによる設定に基づいて、初期CEレベルに対する推定に関連したRAプリアンブル伝送のための初期の反復回数を決定し、UEが推定された初期CEレベルに対応するRAプリアンブル送に対する応答をeNBから受信しない場合には、より高いCEレベルに関連したRAプリアンブル伝送のための後続の反復回数を決定するメカニズムを提供する。また、本発明の実施形態では、UEがRAプリアンブル伝送に対する応答のための反復回数を決定するメカニズムを提供する。また、本発明の実施形態では、UEがRAプリアンブル伝送に対する応答をeNBから受信した後に、eNBへのMsg3伝送のための反復回数を決定するメカニズムを提供する。
(中略)
【0176】 <表10>は、各々のCEレベル及びPRACHリソース設定のうち所定のマッピングの第2の例示的なセットを示し、PRACH設定マッピングインデックスフィールドの‘01’値で表示され得る。これは、5個のCEレベルを含み、PRACHリソース設定を各CEレベルに関連させる。第1の代案で、UE114は、例えば、4個の上述したアプローチ方式のうち一つを使用してその要求されるCEレベルを決定し、要求されるCEレベルと同一であるか、あるいはこれより大きい所定のマッピングの表示されたセットからのCEレベルに対応するリソース設定を使用してPRACHを伝送する。第2の代案で、ULカバレッジ限定されたUEが第1のCEレベルを使用してランダムアクセスプロセスを始め、ランダムアクセスプロセスが失敗する場合、第2のCEレベルを用いて継続し、このようなことを最高のCEレベルに到達するまで、あるいはランダムアクセスプロセスが成功するまで続ける。
(中略)
【0195】 図18に示すように、UE114は、SIB-CEのみを取得し、SIB2を取得しない。UE114は、PRACH再伝送のために電力ランピングを実行できる。現在のCEレベルに対するRAプリアンブル伝送の回数(最大カウント)に到達する場合、UE114は、次のCEレベルに対して(例えば、以前に失敗したPRACH伝送がCEレベルiに対するものである場合、CEレベルi+1に対して)PRACHリソース設定を有する。総PRACH伝送カウント(初期伝送及び再伝送を含み)は、最大カウントを超えられない。最大カウントは、すべてのCEレベルに対して同一であり得又は各CEレベルに対して個別的に(システム情報によって)設定されることができる。UE114は、ステップ1801で、伝送カウンターを1に設定し、ステップ1803で、eNB102への経路損失を決定する。UE114は、ステップ1805で、SIB-CEを取得して(ステップ1801はステップ1803又は1805後にまた発生可能)、ステップ1807で、経路損失が<表2>又は<表4>とのようなカテゴリ1内にあるか否かを判定する。カテゴリ1内にある場合、UE114は、非CE UEに対する電力設定規則により決定された電力を用いて、ステップ1809で、新たなRAプリアンブルを伝送する。UE114は、ステップ1811で、RARが成功的に復号化されるか否かを判定し、RARが時間内に(特定タイマの満了以前に)受信されるか否かを判定し、伝送されたRAプリアンブルを表示する。RAR復号化が成功的である場合、UE114は、ステップ1813で、Msg3を送信し、そうでない場合には、RAプリアンブルに対する送信電力がPcmaxであるか否かを判定する。そうでない場合、UE114は、ステップ1817で、電力ランピングを適用し、ステップ1819で、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達する場合、MaxCountは、UE114が取得する(例えば、SIB-CEを通じて又は所定の)パラメータであり、ステップ1823で、ランダムアクセスプロセスが失敗する。そうでない場合には、UE114は、ステップ1809で、電力ランピング及びランダムアクセスプロセスが反復された以後に送信電力を使用して新たなRAプリアンブルを選択及び伝送する。ステップ1813で、RAプリアンブル送信電力が以前の伝送で、すなわちステップ1809で、Pcmaxに到達する場合、UE114は、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達した場合、ステップ1829でRACHプロセスが失敗する。そうでない場合、UE114は、新たなRAプリアンブルを選択してP_(CMAX,c)を使用して伝送し、ここで、各伝送のために新たなRAプリアンブルが選択され、伝送カウンタは1だけ増加する。ランダムアクセスプロセスがいまだに失敗した場合、UE114は、ステップ1851で、次のCEレベルに対するPRACHリソース設定を使用できる(例えば、<表3>のようなR_(1)反復)。次に、UE114は、ステップ1853で、RARが成功的に復号化されたか否かを判定する。RARが成功的に復号化される場合、UE114は、ステップ1863でMsg3を送信し、そうでない場合には、ステップ1855で、次のより高いCEレベルを有するPRACHリソース設定を決定する(例えば、<表3>のようなR_(2)反復を使用)。次に、UE114は、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達する場合、ステップ1861で、RACHプロセスは失敗する。そうでない場合、UE114は、ステップ1851で、次のCEレベル有する新たなRAプリアンブルを選択及び伝送し、(例えば、<表3>のようなR_(2)反復で)ステップ1855及びその手順が反復される。CEレベルがステップ1855で既に最高である場合、PRACHリソース設定は、この最高レベルに対応するように維持される。ステップ1807で、経路損失が<表2>又は<表4>のようなカテゴリ1内にないとUE114が決定する場合、UE114は、(例えば、<表4>のように)CEレベルに基づいてPRACHリソース設定を決定し、ステップ1851で、この決定したCEレベル1851を有するPRACHリソース設定を使用して新たなRAプリアンブルを伝送する。後続動作は、ステップ1851で、カテゴリ1で経路損失を決定して到達するUEに対しては上述したようである。ステップ1803での動作は省略し、ステップ1807の動作は“UEが正常カバレッジモードで動作するか?”に代替でき、この場合、P-BCHが予め定義された回数未満の回数により検出されるか否かのように、他の手段により、UEが正常カバレッジモードで動作するか否かを判定され得る。【0196】 図19Aは、本発明により、後述のように、いくつかの変形を有する図18と類似した機能を含む。図19Aに示すように、UE114は、<表4>のようにカテゴリ1内に推定された経路損失がある場合にSIB2を取得し、そうでない場合にはSIB-CEを取得する。UE114が、まずSIB2を取得する場合、UE114は、RAプリアンブルを再送信するときに電力ランピングを実行することができる。UE114が最大送信電力に到達してランダムアクセスプロセスに失敗する場合、UE114は、SIB-CEを取得してRAプリアンブル再伝送のために、(例えば、<表4>でカテゴリ2のように)次のCEレベルを有するPRACHリソース設定を決定する。UE114は、ステップ1901で、伝送カウンタを1に設定し、ステップ1903で、経路損失を決定し、またステップ1905で、推定された経路損失が<表4>のようなカテゴリ1にあるか否かを判定する。カテゴリ1にある場合、UE114は、ステップ1911でSIB2を取得し、ステップ1913で、新たなRAプリアンブルを非CE UEに対する電力設定規則により決定された電力を用いて再伝送する。UE114は、図18のようにステップ1811乃至1829と同様に、ステップ1915乃至1935に従う。ステップ1917で、RAプリアンブル送信電力が以前の伝送でのPcmaxに到達する場合、UE114は、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達する場合、UE114は、ステップ1935で、PRACHプロセスが失敗し、そうでない場合、SIB-CEをステップ1951で取得し、新たなRAプリアンブルを選択して次のCEレベルを有するPRACHリソース設定を使用してステップ1953に伝送し、この場合、これは<表4>のようにカテゴリ2に対応する。後続ステップ1955乃至1965は、図18でのステップ1853乃至1863と同様である。ステップ1905で、推定された経路損失が<表4>のようにカテゴリ1内にないとUE114が決定する場合、UE114は、SIB-CEをステップ1951で取得し、<表4>のように経路損失カテゴリに基づいて適合したPRACHリソース設定を決定し、新たなRAプリアンブルを、ステップ1953で、次のより高いCEレベルを有する決定されたPRACHリソース設定を使用して伝送する。CEレベルがステップ1953で既に最高である場合、決定されたPRACH設定は、この最高レベルに対応するように維持される。後続動作は、UE114が初期にカテゴリ1での経路損失を推定してステップ1951で到達する場合に上述したようである。ステップ1903での動作は省略でき、ステップ1905の動作は“UEが正常カバレッジモードで動作するか?”に代替でき、ここで、UEが正常カバレッジモードで動作するか否かは他の手段によって、例えば、P-BCHが所定回数未満の試み回数により検出されるか否かによって決定され得る。
(中略)
【0243】 図21に示すように、UE114は、サービングeNB102への経路損失をステップ2101で決定し、次に決定された経路損失を含む経路損失範囲に対応するPRACH(RAプリアンブル)リソース設定をステップ2105で決定する。UE114は、ステップ2107で、AFirstValueの値を有する伝送カウンタを有する(AFirstValueは、初期RAプリアンブル伝送に対して1と同一であり、RAプリアンブル再伝送の場合には1より大きい)。UE114は、ステップ2110で、ステップ2105で決定されたPRACHリソースを用いてRAプリアンブルを送信し、次にRAR受信のための伝送設定をステップ2120で決定し、RARをステップ2130で受信し、またRARが成功的に復号化されるか否かをステップ2140で判定する。RAR復号化が成功的であり、RARメッセージが、転送されたRAプリアンブルを表示する場合、UE114は、ステップ2160でMsg3を伝送し、そうでない場合、UE114は、ステップ2150で、次のより高いレベルの信頼性(又は存在すると、次のより高いレベルのCE)(例えば、<表4>のように以前に使用されたカテゴリがiである場合、(i+1)番目のカテゴリ)を有するPRACHリソース設定を決定し(それが既に最高レベルのCEである場合、それはCEの最高レベルを有するPRACHリソース設定を使用する)、ステップ2170で伝送カウンタを1だけ増加させる。ステップ2180で伝送カウンタがMaxカウント+1に到達する場合、ランダムアクセスプロセスは、ステップ2190で失敗するようになり、そうでない場合、UE114は、(ステップ2150のように)新たなRAプリアンブルを選択し、このRAプリアンブルを決定したPRACHリソース設定により伝送する。次に、UE114は、ステップ2110で、RAプリアンブルをUE114が送信するために使用したPRACHリソースに対応するRAR受信に対する伝送設定を決定する。その後、この手順を反復する。ステップ2101での機能は、‘CEレベル決定’に代替でき、ステップ2105での機能は、‘PRACHリソース設定を決定されたCEレベルに基づいて決定’に代替できることに留意する。
(後略)」









第5 当審の判断
1 当審拒絶理由「1.(サポート要件)」について
上記第4の段落87には、「初期CEレベルに対する推定に関連したRAプリアンブル伝送のための初期の反復回数を決定し、UEが推定された初期CEレベルに対応するRAプリアンブル送に対する応答をeNBから受信しない場合には、より高いCEレベルに関連したRAプリアンブル伝送のための後続の反復回数を決定するメカニズムを提供する。」と記載されている。また上記第4の段落195には「UE114は、ステップ1817で、電力ランピングを適用し、ステップ1819で、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達する場合、MaxCountは、UE114が取得する(例えば、SIB-CEを通じて又は所定の)パラメータであり、ステップ1823で、ランダムアクセスプロセスが失敗する。そうでない場合には、UE114は、ステップ1809で、電力ランピング及びランダムアクセスプロセスが反復された以後に送信電力を使用して新たなRAプリアンブルを選択及び伝送する。ステップ1813で、RAプリアンブル送信電力が以前の伝送で、すなわちステップ1809で、Pcmaxに到達する場合、UE114は、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達した場合、ステップ1829でRACHプロセスが失敗する。そうでない場合、UE114は、新たなRAプリアンブルを選択してP_(CMAX,c)を使用して伝送し、ここで、各伝送のために新たなRAプリアンブルが選択され、伝送カウンタは1だけ増加する。ランダムアクセスプロセスがいまだに失敗した場合、UE114は、ステップ1851で、次のCEレベルに対するPRACHリソース設定を使用できる(例えば、<表3>のようなR_(1)反復)。次に、UE114は、ステップ1853で、RARが成功的に復号化されたか否かを判定する。RARが成功的に復号化される場合、UE114は、ステップ1863でMsg3を送信し、そうでない場合には、ステップ1855で、次のより高いCEレベルを有するPRACHリソース設定を決定する(例えば、<表3>のようなR_(2)反復を使用)。次に、UE114は、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達する場合、ステップ1861で、RACHプロセスは失敗する。そうでない場合、UE114は、ステップ1851で、次のCEレベル有する新たなRAプリアンブルを選択及び伝送し、(例えば、<表3>のようなR_(2)反復で)ステップ1855及びその手順が反復される。」こと、段落196には「ステップ1917で、RAプリアンブル送信電力が以前の伝送でのPcmaxに到達する場合、UE114は、伝送カウンタを1だけ増加させる。伝送カウンタがMaxCount+1に到達する場合、UE114は、ステップ1935で、PRACHプロセスが失敗し、そうでない場合、SIB-CEをステップ1951で取得し、新たなRAプリアンブルを選択して次のCEレベルを有するPRACHリソース設定を使用してステップ1953に伝送し、この場合、これは<表4>のようにカテゴリ2に対応する。後続ステップ1955乃至1965は、図18でのステップ1853乃至1863と同様である。ステップ1905で、推定された経路損失が<表4>のようにカテゴリ1内にないとUE114が決定する場合、UE114は、SIB-CEをステップ1951で取得し、<表4>のように経路損失カテゴリに基づいて適合したPRACHリソース設定を決定し、新たなRAプリアンブルを、ステップ1953で、次のより高いCEレベルを有する決定されたPRACHリソース設定を使用して伝送する。」こと、段落243には「RARをステップ2130で受信し、またRARが成功的に復号化されるか否かをステップ2140で判定する。RAR復号化が成功的であり、RARメッセージが、転送されたRAプリアンブルを表示する場合、UE114は、ステップ2160でMsg3を伝送し、そうでない場合、UE114は、ステップ2150で、次のより高いレベルの信頼性(又は存在すると、次のより高いレベルのCE)(例えば、<表4>のように以前に使用されたカテゴリがiである場合、(i+1)番目のカテゴリ)を有するPRACHリソース設定を決定し(それが既に最高レベルのCEである場合、それはCEの最高レベルを有するPRACHリソース設定を使用する)、ステップ2170で伝送カウンタを1だけ増加させる。ステップ2180で伝送カウンタがMaxカウント+1に到達する場合、ランダムアクセスプロセスは、ステップ2190で失敗するようになり、そうでない場合、UE114は、(ステップ2150のように)新たなRAプリアンブルを選択し、このRAプリアンブルを決定したPRACHリソース設定により伝送する。」ことが記載されており、更に図18、図19A、図21からも上記段落195、196、243にそれぞれ対応する処理が行われることが見て取れる。
そして、「MaxCount」と「Maxカウント」はどちらも「Maxカウント」といえることから、これらの記載からは、「伝送カウンタ=Maxカウント+1に到達する場合、ランダムアクセスプロセスは、失敗する」こと、そうでない場合(伝送カウンタ=Maxカウント+1に到達する場合でない場合)には「UE114は、ステップ1809で、電力ランピング及びランダムアクセスプロセスが反復された以後に送信電力を使用して新たなRAプリアンブルを選択及び伝送する。」こと、「UE114は、新たなRAプリアンブルを選択してP_(CMAX,c)を使用して伝送し、ここで、各伝送のために新たなRAプリアンブルが選択され、伝送カウンタは1だけ増加する。」こと、「UE114は、ステップ1851で、次のCEレベル有する新たなRAプリアンブルを選択及び伝送し、(例えば、<表3>のようなR_(2)反復で)ステップ1855及びその手順が反復される。」こと、「SIB-CEをステップ1951で取得し、新たなRAプリアンブルを選択して次のCEレベルを有するPRACHリソース設定を使用してステップ1953に伝送」すること、及び「UE114は、(ステップ2150のように)新たなRAプリアンブルを選択し、このRAプリアンブルを決定したPRACHリソース設定により伝送する。」こと、すなわち、伝送カウンタ=Maxカウント+1に到達する場合でない場合「新たなRAプリアンブルを選択及び伝送する。」こと、が記載されていると認められる。

一方、請求項1の「前記第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合、前記第1のCEレベルで、次に向上したCEレベルである第2のCEレベルに対応するPRACHパラメータセットを使用して、第2のプリアンブル伝送を遂行する」に関し、請求項1の「プリアンブル伝送」は、RAプリアンブル伝送であることは明らかであり、請求項1の「プリアンブル伝送の最大回数」は、RAプリアンブル伝送の最大回数といえる。そして、発明の詳細な説明において、RAプリアンブル伝送の回数についての回数のカウント及び回数の比較を行う記載に関しては、上記記載のとおり、段落195,196、及び243にしか存在しないことから、請求項1の「プリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合」とは、段落195、196、243に記載される「伝送カウンタがMaxCount+1に到達する」(図18、19A、図21の伝送カウンタ=MaxCount+1)であることを表していると認められる。

そうすると、上記のとおり、上記「第4」の段落195,196,243にはいずれにも、プリアンブル伝送の回数が「伝送カウンタがMaxCount+1」、すなわち「プリアンブル伝送の最大回数+1に到達する場合、ランダムアクセスプロセスは失敗する」もののみが記載されており、請求項1に記載されるように「プリアンブル伝送の回数が・・・プリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合、・・・次に向上したCEレベルである第2のCEレベルに対応するPRACHパラメータセットを使用」するものは記載されていないことは明らかである。
したがって、本願発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。

2 当審拒絶理由「2.(明確性)」について
請求項1の「第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合」に関し、プリアンブル伝送の最大回数とは、言葉のとおり、プリアンブルを伝送できる最大回数であると認められる。そして、プリアンブル伝送の回数は、プリアンブルが伝送されるごとに回数がカウントされるものであると認められる。そうすると、プリアンブルが伝送される回数は通常、最大回数を超えることができないことは明らかであり、プリアンブル伝送の回数がプリアンブル伝送の最大回数+1と同一となる場合の条件等について請求項1には何ら特定がされていないから、最大回数+1という状態がプリアンブル伝送の最大回数とどのような関係にあるのか不明であり、「第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合」がどのような時に発生するのか不明である。
したがって、本願発明は明確でない。

[請求人の主張について]
請求人は、令和2年6月16日に提出された意見書において、
「(一)サポート要件不備について:(中略)
本願明細書等には「[0087]・・・初期CEレベルに対する推定に関連したRAプリアンブル伝送のための初期の反復回数を決定し、UEが推定された初期CEレベルに対応するRAプリアンブル送に対する応答をeNBから受信しない場合には、より高いCEレベルに関連したRAプリアンブル伝送のための後続の反復回数を決定するメカニズムを提供する。・・・」と記載され、・・・さらに、「[0176]・・・第1の代案で、UE114は、例えば、4個の上述したアプローチ方式のうち一つを使用してその要求されるCEレベルを決定し、要求されるCEレベルと同一であるか、あるいはこれより大きい所定のマッピングの表示されたセットからのCEレベルに対応するリソース設定を使用してPRACHを伝送する。第2の代案で、ULカバレッジ限定されたUEが第1のCEレベルを使用してランダムアクセスプロセスを始め、ランダムアクセスプロセスが失敗する場合、第2のCEレベルを用いて継続し、このようなことを最高のCEレベルに到達するまで、あるいはランダムアクセスプロセスが成功するまで続ける。」と記載されており、さらに、「[0195]・・・伝送カウンタがMaxCount+1に到達した場合、ステップ1829でRACHプロセスが失敗する。そうでない場合、UE114は、新たなRAプリアンブルを選択してP_(CMAX,c)を使用して伝送し、ここで、各伝送のために新たなRAプリアンブルが選択され、伝送カウンタは1だけ増加する。ランダムアクセスプロセスがいまだに失敗した場合、UE114は、ステップ1851で、次のCEレベルに対するPRACHリソース設定を使用できる(例えば、<表3>のようなR_(1)反復)。・・・」と記載されており、さらに、「[0196]・・・伝送カウンタがMaxCount+1に到達する場合、UE114は、ステップ1935で、PRACHプロセスが失敗し、そうでない場合、SIB-CEをステップ1951で取得し、新たなRAプリアンブルを選択して次のCEレベルを有するPRACHリソース設定を使用してステップ1953に伝送し、この場合、これは<表4>のようにカテゴリ2に対応する。後続ステップ1955乃至1965は、図18でのステップ1853乃至1863と同様である。ステップ1905で、推定された経路損失が<表4>のようにカテゴリ1内にないとUE114が決定する場合、UE114は、SIB-CEをステップ1951で取得し、<表4>のように経路損失カテゴリに基づいて適合したPRACHリソース設定を決定し、新たなRAプリアンブルを、ステップ1953で、次のより高いCEレベルを有する決定されたPRACHリソース設定を使用して伝送する。・・・」との記載から、本願明細書等には、本指摘に関する「前記第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合、前記第1のCEレベルで、次に向上したCEレベルである第2のCEレベルに対応するPRACHパラメータセットを使用して、第2のプリアンブル伝送を遂行する」に相当する技術思想が開示されていると、当業者には理解できるものと請求人は思料致します。(中略)さらに、・・・TransmissionCounter=MaxCount+1である場合のRACH失敗は、第1のCEレベルでのRACH失敗のみを意味し、当該第1のCEレベルでRACHが失敗されたので、次の向上した第2のCEレベルでのプリアンブル伝送が行われるものです。具体的には、第1のCEレベルのMaxCount内でRACHが成功した場合、第2のCEレベルでのプリアンブル伝送が行われる必要がないが、伝送カウンターがMaxCountに逹するまでRACHが成功していなかったので、伝送カウンターがMaxCount+1に逹し、その場合、次のCEレベルでプリアンブル伝送が行われるものです。 また、本願の図19D及び詳細な説明を参照しても、CEレベルに対応する第1回数のRAプリアンブル伝送以後に、RAR受信を失敗すれば、次のCEレベルに進め、最大第2伝送回数の間に、RAプリアンブル伝送を行うという内容が開示されています。すなわち、本拒絶理由通知で御指摘されている図18、図19Aでは、第1のCEレベルでの動作のみを示しているものです。具体的には、図19Dによれば、第1のCEレベルでTransmissionCounter=MaxCount+1である場合、第1のCEレベルでのRACHのみ失敗しているだけで、次のCEレベルでは、新たなRAプリアンブルの伝送が可能です。 したがって、第1のCEレベルでTransmissionCounter=MaxCount+1である場合、次の第2のCEレベルでプリアンブル伝送が行われ、全体RACHが失敗するものではないので、RACHが失敗するという構成が追加されねばならないという拒絶理由通知における御指摘は、適切ではないものと請求人は思料致します。(二)明確性要件不備について:(中略) 伝送カウンターは、TransmissionCounterに対応し、伝送カウンター(TransmissionCounter)が最大回数(MaxCounter)+1と同一の場合、第2のCEレベルで第2プリアンブル伝送が行われるものです。すなわち、第1プリアンブルが伝送される回数をカウントするものが伝送カウンター(TransmissionCounter)であり、第1プリアンブル伝送の最大回数は、MaxCountに対応します。すなわち、請求項1は、第1プリアンブルが伝送される回数を示す伝送カウンター(TransmissionConter)が第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数(MaxCount)よりも1だけ大きい場合を意味するものです。伝送カウンターは、TransmissionCounterに対応し、最大カウント(MaxCount)は、各CEレベルに対して設定される値であり、伝送カウンター(TransmissionConter)が超過できない値を意味します。したがって、伝送回数(TransmissionCounter)は、最大回数(MaxCounter)を超過することができない関係にあり、そのような内容は、本願の詳細な説明の段落[0195]によってサポート記載されています。(後略)」と主張している。

そこで、上記主張について検討する。
(一)サポート要件不備について:
請求人が根拠として主張する段落87、176からは、「CEレベルに対する反復回数を決定する」こと、「RAプリアンブル送に対する応答をeNBから受信しない場合には、より高いCEレベルに関連したRAプリアンブル伝送のための後続の反復回数を決定する」こと、「第1のCEレベルでランダムアクセスが失敗する場合、第2のCEレベル?最高のCEレベルレベルを用いて、ランダムアクセスプロセスが成功するまで続ける」ことが記載されていると認められ、また上記「第5 1」に記載したとおり、請求人が根拠として主張する段落195-196からは、「伝送カウンター=Maxカウント+1に到達する場合、ランダムアクセスプロセスは、失敗する」こと、伝送カウンター=Maxカウント+1に到達する場合でない場合「新たなRAプリアンブルを選択及び伝送する。」ことが記載されているとは認められるが、当該記載から、請求人が主張する「「前記第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合、前記第1のCEレベルで、次に向上したCEレベルである第2のCEレベルに対応するPRACHパラメータセットを使用して、第2のプリアンブル伝送を遂行する」に相当する技術思想が開示されている」とは認められない。 また、請求人は「TransmissionCounter=MaxCount+1である場合のRACH失敗は、第1のCEレベルでのRACH失敗のみを意味し、当該第1のCEレベルでRACHが失敗されたので、次の向上した第2のCEレベルでのプリアンブル伝送が行われるものです。」と主張するが、図18、19A、21からは、いずれも失敗した後において、継続的な処理を行うことを読み取ることはできないし、段落195の「ランダムアクセスプロセスがいまだに失敗した場合、UE114は、ステップ1851で、次のCEレベルに対するPRACHリソース設定を使用できる」との記載はあるが、当該記載の前提として「そうでない場合、UE114は、新たなRAプリアンブルを選択してP_(CMAX,c)を使用して伝送し、ここで、各伝送のために新たなRAプリアンブルが選択され、伝送カウンタは1だけ増加する。」と記載されており、「そうでない場合」とは、ステップ1827において、Noである場合、すなわち伝送カウンタ=MaxCount+1とならない場合であり、図18の記載からも明らかなように、ステップ1827の後続処理としてステップ1851が行われることが記載されているものであって、当該記載から、ステップ1829の「失敗」以降に、次のCEレベルでのプリアンブル伝送が行われるものが開示されているとは認められない。 更に、請求人は、図19D及び詳細な説明を参照すると、「CEレベルに対応する第1回数のRAプリアンブル伝送以後に、RAR受信を失敗すれば、次のCEレベルに進め、最大第2伝送回数の間に、RAプリアンブル伝送を行うという内容が開示されています。」を主張するが、図19D及び図19Dの説明が記載される段落218-219には、プリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合という比較を行う記載はないため、当該主張も採用できない。

(二)明確性要件不備について:
請求人は、「本願発明の詳細な説明によりますと、伝送カウンターはTransmissionCounterに対応し、伝送カウンター(TransmissionCounter)が最大回数(MaxCounter)+1と同一の場合、第2のCEレベルで第2プリアンブル伝送が行われるものです。すなわち、第1プリアンブルが伝送される回数をカウントするものが伝送カウンター(TransmissionCounter)であり、第1プリアンブル伝送の最大回数は、MaxCountに対応します。すなわち、請求項1は、第1プリアンブルが伝送される回数を示す伝送カウンター(TransmissionConter)が第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数(MaxCount)よりも1だけ大きい場合を意味するものです。」と主張する。
まず、請求項1では伝送カウンタという用語は使用されていない。
また、本願の発明の詳細な説明においては、ステップ1801で伝送カウンタ=1とし、ステップ1809でプリアンブル送信し、ステップ1825でTransmissionCounter+1を行ってからステップ1827に進むことから、ステップ1827の伝送カウンタの値は伝送回数+1の値となっている。一方、請求項1では「第1のプリアンブル伝送の回数が前記第1のCEレベルに対応するプリアンブル伝送の最大回数+1と同一の場合」と記載されており、「第1のプリアンブル伝送の回数」は伝送回数としか読み取れず、伝送回数+1の値とは読み取れない。
よって、上記「第5 2」に記載したとおり、「プリアンブル伝送の回数がプリアングル伝送の最大回数+1と同一となる場合の条件等について請求項1には何ら特定がされておらず、しかも、「第1のプリアンブル伝送の回数」とは伝送回数としか読み取れないことから、当該状況がどのような時に発生するのか不明である。」ため、請求人の主張は採用できない。

以上のとおりであるから、請求人の各上記主張は、採用できない。

第6 むすび
以上のとおり、本件出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-26 
結審通知日 2020-08-31 
審決日 2020-09-16 
出願番号 特願2016-525285(P2016-525285)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石井 則之  
特許庁審判長 中木 努
特許庁審判官 本郷 彰
永田 義仁
発明の名称 ランダムアクセスプロセスに対するカバレッジ改善のための方法及び装置  
代理人 阿部 達彦  
代理人 実広 信哉  
代理人 崔 允辰  
代理人 木内 敬二  

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