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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1370859
審判番号 不服2019-11786  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-09-06 
確定日 2021-02-02 
事件の表示 特願2017-542331「繊維を有する化粧用アプリケータ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 5月12日国際公開、WO2016/071486、平成30年 1月18日国内公表、特表2018-501044〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2015年(平成27年)11月6日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年(平成26年)11月6日、仏国)を国際出願日とする出願であって、平成29年6月12日に手続補正書が提出され、平成30年8月8日付けの拒絶理由の通知に対し、平成30年11月12日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成31年4月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対して令和元年9月6日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 本願発明
この出願の請求項に係る発明は、平成30年11月12日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「化粧製品を塗布するためのアプリケータ(3)であって、
・柄(4)と、
・前記柄(4)によって支えられ、複数の繊維(11)を有するアプリケータ部材(5)であって、それぞれの繊維(11)が、
- 中空円筒形の本体(13)、および
- 少なくとも1つの長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)であって、その基部(23)によって前記本体(13)に付着された、少なくとも1つの長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)、
を有する、アプリケータ部材(5)と、
を有し、
それぞれの繊維(11)が、断面が軸対称ではなく、比D2/D1が1.75以下であるような直径D2の円(C)に内接し、D1が、前記本体(13)の最大外側横断寸法であり、
少なくとも1つの長手方向リブ(17;17i)が、前記本体(13)の内側に延在し、且つ、1つまたは複数の前記長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)が、断面が多角形の形状を有する、又は、少なくとも1つの長手方向リブ(17;17i)が、前記本体(13)の内側に延在し、もしくは、1つまたは複数の前記長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)が、断面が多角形の形状を有する、
アプリケータ(3)。」

第3 原査定の拒絶の理由
本願発明(請求項1に係る発明)についての原査定(平成31年4月24日付け拒絶査定)の拒絶の理由(平成30年8月8日付けで通知された拒絶の理由)のうち、進歩性に関するものの概要は、次のとおりである。

(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、又は引用文献3に記載された発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1:米国特許第6237609号明細書
引用文献2:米国特許第5933908号明細書
引用文献3:特開2003-245133号公報

第4 引用文献の記載及び引用発明
1.引用文献1
(1)引用文献1の記載
原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は、当審で付与した。以下、同様である。)。
ア.「FIGS. 1-7 illustrate a mascara container 10 and its mascara brush 12, according to the invention herein.The container 10 has an elongated tubular body 14 which defines a cavity 16 therein for receiving and storing mascara, not shown.The body 14 has a threaded neck 18 in which a wiper 20 is mounted.」(第3欄第45行?第50行)[当審仮訳:図1-7は、本発明に従ったマスカラ容器10、及びそのマスカラブラシ12を示す。容器10は、マスカラ(図示せず)を受け入れて保管するための空洞16をその中に画定する細長い管状本体14を有している。本体14は、ワイパ20が取り付けられたねじ山付きネック18を有する。]

イ.「The mascara container 10 has a cap 26 which is internally threaded at 28 adapting the cap for being secured on the threaded neck 18 of the body 14.The threads 28 are conveniently provided on a head 32 of an applicator rod 30, the head 32 being inserted into the cap to mount the applicator rod thereto and provide for attaching the cap to the body 10.The applicator rod 30 and its head 32 may be fabricated of acetal plastic.The distal end 34 of the applicator rod 30 mounts the mascara brush 12.
The brush 12 has a twisted wire core 40 extending from a tip 42 to a shank 44, the shank being inserted into the distal end 34 the applicator rod 30 to mount the brush thereto.The tip 42 and shank 44 lie along the axis of the applicator rod.The twisted wire core 40 secures a plurality of bristles, generally indicated at 46, and the bristles extend generally radially from the twisted wire core 40.With reference to FIG. 4, a single bristle 47 is illustrated, the bristle 47 being a hollow fiber bristle with tri-lobal longitudinal ribs 49 on its exterior surface.The overall diameter of the bristles, subject to manufacturing tolerances, may be 0.005 inches, and the bristles may be made of 6.12 nylon.Such bristles have a desirable tendency to spread when captured in a twisted wire core, but are still considered as extending generally radially from the core.」(第3欄第59行?第4欄第15行)[当審仮訳:マスカラ容器10は、本体14のねじ山付きネック18に固定されるキャップを適合させる28において内側にねじ切りされたキャップ26を有する。ねじ山28は、アプリケータロッド30のヘッド32に都合よく設けられ、ヘッド32は、アプリケータロッドをそれに取り付けるためにキャップ内に挿入され、キャップを本体10に取り付けるためのものである。アプリケータロッド30およびそのヘッド32は、アセタールプラスチックで製造することができる。アプリケータロッド30の遠位端34はマスカラブラシ12を取付ける。
ブラシ12は、先端42からシャンク44に延びる撚り線コア40を有し、シャンクは、アプリケータロッド30の遠位端34に挿入されてブラシを取り付ける。先端部42およびシャンク44は、アプリケータロッドの軸線に沿って配置されている。撚り線コア40は、全体として46で示される複数の毛を確保し、毛は、撚り線コア40からほぼ半径方向に延びる。図4によると、単一の毛47が図示され、毛47は、その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛である。製造公差に従う毛の全体直径は、0.005インチであってよく、毛は6.12ナイロンで作ることができる。このような毛は、撚り線コアに捕捉されたときに拡がる望ましい傾向を有するが、コアからほぼ半径方向に延びると考えられている。]

ウ.「In using the brush 12, the applicator bristles that are closer to the plane P are generally more highly involved in the application process and, because these bristles extend from the convex side of the twisted wire core, they diverge and separate toward their tips.This allows the eyelashes to be received between the applicator bristles 50 for transferring mascara from the bristles 46 to the eyelashes.」(第4欄第34行?第41行)[当審仮訳:ブラシ12の使用において、平面Pに近いアプリケータ毛は、一般に、塗布プロセスに一層深く関与し、これらの毛は、撚り線コアの凸状側部から延びているので、それらの先端部に向かって分岐して分離する。これにより、マスカラをアプリケータ毛50の間に受け入れることができ、マスカラを毛46から睫毛へと移送することができる。]

エ.記載事項ウ.によると、マスカラブラシ12の使用において、マスカラを毛46から睫毛へと移送することができるものである。また、記載事項イ.によると、マスカラブラシ12は、アプリケータロッド30の遠位端34に取付けられるものである。すると、マスカラブラシ12と、マスカラブラシ12を取り付けるアプリケータロッド30とを備える部材は、マスカラを毛46から睫毛へと移送することができるといえる。

オ.記載事項イ.によると、マスカラブラシ12は、アプリケータロッド30に取り付けられ、撚り線コア40からほぼ半径方向に延びる複数の毛46を有するといえる。

カ.記載事項イ.によると、マスカラブラシ12の単一の毛47は、その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛であるといえる。

(2)引用発明
前記引用文献1の記載事項ア.?カ.及び図面の図示内容を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「マスカラを毛46から睫毛へと移送することができる、マスカラブラシ12と、マスカラブラシ12を取り付けるアプリケータロッド30とを備える部材であって、
・アプリケータロッド30と、
・アプリケータロッド30に取り付けられ、撚り線コア40からほぼ半径方向に延びる複数の毛46を有するマスカラブラシ12であって、単一の毛47は、その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛である、マスカラブラシ12と、
を有する、
マスカラブラシ12と、マスカラブラシ12を取り付けるアプリケータロッド30とを備える部材」

2.引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された、この出願の優先日前に頒布された刊行物である、引用文献2には、図面とともに、次の記載がある。
(1)「The bristle 10 includes a central core 12 having a pair of semi-cylindrical passages 14 and 16 extending the length of the bristle and separated by a central dividing wall 18. In addition, the bristle 10 includes four spokes, or ribs, 20, 22, 24 and 26 projecting radially from the outer surface 27 of said core.」(第3欄第22行?第27行)[当審仮訳:毛10は、毛の長さ方向に延び中央隔壁18によって分離された一対の半円筒状通路14、16を有する中心コア12を含む。さらに、毛10は、前記コアの外側表面27から半径方向に突出している4つのスポークまたはリブ20、22、24及び26を備えている。]

(2)「It is an extremely important feature of this invention that the spokes be equally spaced about the circumference of the bristle, that none of the spokes be in the same plane as the central dividing wall 18, and that the spokes adjacent to, and on opposite sides of the dividing wall 18 be equally spaced from the central axis 28 of said dividing wall. This structural arrangement among the central dividing wall 18 and the spokes provides for a balanced weight distribution around the circumference of the bristle, which assists in maintaining the bristle substantially straight throughout the longitudinal extent thereof, i.e., avoids camber or curl in the longitudinal direction of the bristle 10. This is a very important property of bristles employed in applicator brushes, such as in paintbrushes, toothbrushes and cosmetic brushes.」(第3欄第36行?第49行)[当審仮訳:スポークが毛の周囲に等しく間隔を置いて配置され、スポークが中央隔壁18と同じ平面内に存在せず、隔壁18の両側に隣接するスポークが隔壁の中心軸28から等間隔に配置されていることは、本発明の極めて重要な特徴である。中央隔壁18とスポークの間のこの構造配置は、毛の周囲にバランスのとれた重量分布を提供し、これは、毛をその長手方向の範囲全体にわたって実質的に真っ直ぐに維持するのに役立つ。すなわち、毛10の長手方向の反りやカールを回避する。これは、塗装ブラシ、歯ブラシおよび化粧品ブラシのようなアプリケータブラシに使用される毛の非常に重要な特性である。]

(3)「The bristles of this invention have a number of advantages over prior art hollow and honeycomb bristles.
First, the inclusion of the central dividing wall 18, 118 and 218 in the bristles 10, 100 and 200 of this invention renders the bristles more stable than hollow bristles having a single, central passage through them. Second, the provision of the central dividing wall provides an additional surface to be flagged as compared to a bristle with a single central passage, for the purpose of enhancing the evenness of paint application. Third, the inclusion of radiating ribs or spokes in the honeycomb construction also increases the surface available for flagging as compared to a bristle with a single central passage (with or without ribs) or to a honeycomb bristle without ribs.
The aforementioned benefits are achieved in bristles of this invention that tend to remain straight during use, i.e., they do not tend to develop camber or curl because of the unique and effective weight distribution of the polymer within the bristles.」(第6欄第3行?第21行)[当審仮訳:本発明の毛は、従来技術の中空及びハニカム剛毛に比べて多くの利点を有する。
第1に、本発明の毛10、100及び200に中央隔壁18、118及び218を含めることにより、毛を、それらを通る単一の中央通路を有する中空毛よりも安定させることができる。第2に、中央隔壁を設けることにより、塗料塗布の均一性を向上させる目的で、単一の中央通路を有する毛と比較して、フラグを立てる追加の表面が提供される。第3に、ハニカム構造内に放射リブまたはスポークを含めることは、単一の中心通路(リブ有りまたは無し)またはリブなしのハニカム剛毛と比較して、フラッギングに対して利用可能な表面を増加させる。
上記の利点は、使用中に真っ直ぐなままである傾向がある本発明の毛において達成される。すなわち、これらは、毛内のポリマーの独特で有効な重量分布のために、キャンバまたはカールを発生する傾向がない。]

第5 対比
以下、本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「マスカラ」は、本願発明の「化粧製品」に相当し、引用発明の「マスカラを毛46から睫毛へと移送することができる」という事項は、マスカラを睫毛に塗布するものといえるから、本願発明の「化粧製品を塗布する」という事項に相当する。また、引用発明の「マスカラブラシ12と、マスカラブラシ12を取り付けるアプリケータロッド30とを備える部材」は、マスカラを毛46から睫毛へと移送するためのものであって、本願発明の「アプリケータ(3)」に相当する。すると、引用発明の「マスカラを毛46から睫毛へと移送することができる、マスカラブラシ12と、マスカラブラシ12を取り付けるアプリケータロッド30とを備える部材」は、本願発明の「化粧製品を塗布するためのアプリケータ(3)」に相当する。
引用発明の「アプリケータロッド30」は、本願発明の「柄(4)」に相当する。
引用発明の「マスカラブラシ12」、「複数の毛46」及び「単一の毛47」は、それぞれ本願発明の、「アプリケータ部材(5)」、「複数の繊維(11)」及び「それぞれの繊維(11)」に相当する。また、引用発明の「その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛」は、引用文献1のFIG.4の図示内容(当審注:FIG.4に付された番号「48」は明細書中で何ら参照されておらず、また、前記「第4 1.(1)」の記載事項イ.に「With reference to FIG. 4, a single bristle 47 is illustrated,」と記載されているにもかかわらず、番号「47」が図示されていないことを考慮すると、FIG.4に付された番号「48」は「47」の誤記であると認められる。)を考慮すると、中空円筒形の部材の外面上に、その長手方向に延びる縦リブ49を備えるものであり、縦リブ49の基部が、該中空円筒形の部材の外面に付着しているといえるから、本願発明の「- 中空円筒形の本体(13)、および - 少なくとも1つの長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)であって、その基部(23)によって前記本体(13)に付着された、少なくとも1つの長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)」に相当する。すると、引用発明の「アプリケータロッド30に取り付けられ、撚り線コア40からほぼ半径方向に延びる複数の毛46を有するマスカラブラシ12であって、単一の毛47は、その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛である、マスカラブラシ12」は、本願発明の「前記柄(4)によって支えられ、複数の繊維(11)を有するアプリケータ部材(5)であって、それぞれの繊維(11)が、 - 中空円筒形の本体(13)、および - 少なくとも1つの長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)であって、その基部(23)によって前記本体(13)に付着された、少なくとも1つの長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)、を有する、アプリケータ部材(5)」に相当する。
そして、本願発明の「それぞれの繊維(11)が、断面が軸対称ではなく」という事項に関し、この出願の明細書の段落[0051]には、「繊維11の断面は、その中心の周りで対称ではなく、図示された例では、繊維は、120°の回転によるそれ自体の像である。」と記載され、図2についての実施例として、長手方向リブ17が120°の間隔で3個設けられるものが記載されており、このような長手方向リブ17の配置も、本願発明の「それぞれの繊維(11)が、断面が軸対称ではなく」という事項に含まれるところ、引用発明の「単一の毛47は、その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛である」という事項は、引用文献1のFIG.4の図示内容を考慮すると、中空円筒形の部材の外面上に、縦リブ49を略120°の間隔で3個設けるものである。すると、引用発明の単一の毛47の断面形状は、縦リブ49の配置箇所に関し、本願発明の実施例における繊維(11)の断面形状と一致しており、軸対称ではないといえるから、引用発明の「単一の毛47は、その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛である」という事項と、本願発明の「それぞれの繊維(11)が、断面が軸対称ではなく、比D2/D1が1.75以下であるような直径D2の円(C)に内接し、D1が、前記本体(13)の最大外側横断寸法であ」るという事項とは、「それぞれの繊維が、断面が軸対称ではな」い点において共通する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「化粧製品を塗布するためのアプリケータであって、
・柄と、
・前記柄によって支えられ、複数の繊維を有するアプリケータ部材であって、それぞれの繊維が、
- 中空円筒形の本体、および
- 少なくとも1つの長手方向リブであって、その基部によって前記本体に付着された、少なくとも1つの長手方向リブ、
を有する、アプリケータ部材と、
を有し、
それぞれの繊維が、断面が軸対称ではない、
アプリケータ。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
それぞれの繊維について、本願発明は、「比D2/D1が1.75以下であるような直径D2の円に内接し、D1が、前記本体の最大外側横断寸法であ」るのに対し、引用発明は、このような比のものであるのか明確でない点。

[相違点2]
長手方向リブについて、本願発明は、「少なくとも1つの長手方向リブが、前記本体の内側に延在し、且つ、1つまたは複数の前記長手方向リブが、断面が多角形の形状を有する、又は、少なくとも1つの長手方向リブが、前記本体の内側に延在し、もしくは、1つまたは複数の前記長手方向リブが、断面が多角形の形状を有する」のに対し、引用発明は、縦リブ49が中空糸毛の中空な内側に延在するものでなく、また、縦リブ49の断面が多角形の形状を有するとはいえない点。

第6 判断
以下、相違点について検討する。
(1)[相違点1]について
引用発明の「その外面上に3葉の縦リブ49を有する中空糸毛である」、「単一の毛47」について、前記「第4 1.(1)」の記載事項イ.には、「撚り線コアに捕捉されたときに拡がる望ましい傾向を有するが、コアからほぼ半径方向に延びると考えられている。」と記載されており、この「単一の毛47」は、撚り線コアからほぼ半径方向に延びることが望ましいものといえる。そして、「縦リブ49」は、リブである以上、「単一の毛47」の剛性を高めることに寄与するものであり、「単一の毛47」が、前記したほぼ半径方向に延びるような剛性となるように設けられるものといえる。
さらに、「縦リブ49」の寸法が「単一の毛47」の剛性に影響を与えることは、自明な事項であるから、「縦リブ49」の高さ、幅等の寸法を、必要とする「単一の毛47」の剛性や、「マスカラブラシ12」本来の機能である、マスカラの睫毛へ塗布性等を考慮の上、最適化することは、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明の「比D2/D1が1.75以下であるような直径D2の円に内接し、D1が、前記本体の最大外側横断寸法であ」るという事項について検討しても、中空円筒形の本体(13)の外側に延びる長手方向リブの高さ以外の寸法(幅等)や、繊維(11)の材料等が変われば、繊維(11)の剛性は変わるものであり、「比D2/D1が1.75以下である」ことにより、必ずしも繊維(11)の剛性を特定するものではないし、この数値範囲に、化粧製品の塗布性等についての臨界的意義があるとも認められない。また、引用文献1のFIG.4をみても、比D2/D1が1.75以下のもの(1.67程度のもの)が図示されており、「比D2/D1が1.75以下である」という数値範囲が、一般的なものとは異なる特別なものであるとは認められない。
そうすると、引用発明の「縦リブ49」の高さ等の寸法を最適化することは、前記したように当業者が容易に想到し得たものであり、その際、高さに関し、「比D2/D1が1.75以下であるような直径D2の円に内接し、D1が、前記本体の最大外側横断寸法であ」るという数値範囲とすることにも格別の困難性はない。

(2)[相違点2]について
前記「第4 2.」の記載事項(1)?(3)によると、引用文献2には、毛10の長さ方向に延びる中央隔壁18を中心コア12内に備えるとともに、該中心コア12の外側表面27から半径方向に突出している4つのリブ20、22、24及び26を備える、化粧品ブラシに使用される毛10が記載されており、また、この中央隔壁18と、4つのリブ20、22、24及び26を備えることにより、毛10をその長手方向の範囲全体にわたって実質的に真っ直ぐに維持し、毛10の長手方向の反りやカールを回避することが示唆されている。
そして、引用発明と引用文献2に記載された事項とは、ともに化粧品用のブラシに関するものであり、発明の属する技術の分野が共通している上、引用発明は、前記「第4 1.(1)」の記載事項イ.によると、単一の毛47を、撚り線コアからほぼ半径方向に延ばすという課題を内在し、その課題を解決するために単一の毛47を構成する中空糸毛の外面上に縦リブ49を備えるものと解され、一方、引用文献2に記載された事項は、毛10をその長手方向の範囲全体にわたって実質的に真っ直ぐに維持し、毛10の長手方向の反りやカールを回避するという課題を解決するものであって、そのために、中心コア12に毛10の長さ方向に延びる中央隔壁18、並びに4つのリブ20、22、24及び26を備えるものと解されるから、両者の課題は関連し、引用発明の縦リブ49と、引用文献2に記載された事項の中央隔壁18、並びに4つのリブ20、22、24及び26とは、中空部を有する繊維に剛性を付与するものである点で、作用・機能が共通するといえる。
すると、引用発明において、単一の毛47を、撚り線コアからほぼ半径方向に延ばすという課題のさらなる改善を図るべく、縦リブ49と作用・機能が共通する引用文献2に記載された事項の中央隔壁18、並びに4つのリブ20、22、24及び26の構成を参照し、中空糸毛の外面上に備えた縦リブ49に加えて、中空糸毛の中空部に、中空糸毛の長さ方向に延びる中央隔壁を設けることは、当業者が容易に想到し得たものである。そして、この中空糸毛の中空部に設けられる、中空糸毛の長さ方向に延びる中央隔壁は、中空糸毛における中空円筒形の本体の内側に延在し、かつ中空糸毛の剛性を高めるものにほかならないから、長手方向リブであるといえる。
したがって、引用発明に、引用文献2に記載された事項を適用し、「少なくとも1つの長手方向リブが、前記本体の内側に延在し、且つ、1つまたは複数の前記長手方向リブが、断面が多角形の形状を有する」ことと、「少なくとも1つの長手方向リブが、前記本体の内側に延在」することと、「1つまたは複数の前記長手方向リブが、断面が多角形の形状を有する」こととを択一的に特定している本願発明の前記相違点2に係る発明特定事項のうち「少なくとも1つの長手方向リブが、前記本体の内側に延在」するものとすることは、当業者が容易に想到し得たものである。

また、本願発明の作用効果は、引用発明及び引用文献2に記載された事項から当業者が予測できる範囲のものである。

(2)請求人の主張について
請求人は、令和元年10月17日に提出された手続補正書(方式)で補正された審判請求書の請求の理由において、「本願発明1について検討すると、用語「リブ」とは、繊維の外面から突出するか、または中空の繊維の内面から突出する部品17を指すものとしてのみ用いられており、出願当初の図2?7には異なるタイプの「リブ」が記載されているので参照されたい。本願発明の実施形態において、これらのリブはいずれも内壁(internal wall)と同化されてはおらず、明細書にも「リブ」という言葉のそのような解釈を許容する記載は存在しない。更に、本願の明細書段落[0026]には、リブが本体に接続された基部と自由端とを有することが示唆されている
引用文献2について検討すると、用語「リブ」とは、スポーク20、22、24および26とも呼ばれる、外面から径方向外側に延びるものを指すものとして用いられている(例えば、要約書、図3、および第3欄第29行を参照されたい)。しかし、この用語「リブ」は、引用文献2においてcentral dividing wall 18と呼ばれる内部部品18(the inner part 18)を指すものとして用いられてはいない。
したがって、本願明細書の作成者も引用文献2の作成者もいずれも「リブ」という用語を、内壁(inner wall)を指すために選択していない。そして、両者ともに「リブ」という用語を、本体に接続された基部と自由端とを有する突起を指すために選択している。
よって、引用文献2のcentral dividing wall 18を本願のリブと結びつけることはできない。したがって、前回の応答における意見を以下に繰り返すこととする。」(令和元年10月17日に提出された手続補正書(方式)の第4ページ第25行?第41行)と主張している。
しかしながら、拒絶査定時に示した米国特許出願公開第2014/0159432号明細書のFIG.3に図示された「ribs L」についての記載等を考慮すると、「リブ」という用語は、必ずしも、本体に接続された基部と自由端とを有する突起を指すために用いられているとはいえない。そして、本願発明は、長手方向リブについて、「その基部(23)によって前記本体(13)に付着された」、及び「少なくとも1つの長手方向リブ(17;17i)が、前記本体(13)の内側に延在し、且つ、1つまたは複数の前記長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)が、断面が多角形の形状を有する、又は、少なくとも1つの長手方向リブ(17;17i)が、前記本体(13)の内側に延在し、もしくは、1つまたは複数の前記長手方向リブ(17;17a、17b;17i、17e)が、断面が多角形の形状を有する」と特定されているのみであって、自由端を有することについては、何ら特定されていないから、請求人の主張は、特許請求の範囲の記載に基づく、主張とはいえない。
そうすると、請求人の前記主張は採用できない。

第7 むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び引用文献2に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含するこの出願は、この出願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-08-31 
結審通知日 2020-09-07 
審決日 2020-09-18 
出願番号 特願2017-542331(P2017-542331)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 浩士  
特許庁審判長 佐々木 芳枝
特許庁審判官 山本 健晴
柿崎 拓
発明の名称 繊維を有する化粧用アプリケータ  
代理人 堀江 健太郎  
代理人 実広 信哉  
代理人 村山 靖彦  
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