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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G07D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G07D
管理番号 1370874
審判番号 不服2020-4894  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-03-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-10 
確定日 2021-02-05 
事件の表示 特願2015-225498号「貨幣管理システム、貨幣処理装置および貨幣管理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 6月 1日出願公開、特開2017- 97403号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成27年11月18日の出願であって、令和1年6月26日付けで拒絶理由が通知され、同年8月27日に意見書及び手続補正書が提出され、令和2年1月20日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、同年4月10日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年4月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
令和2年4月10日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
令和2年4月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の補正を含むものであって、請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。

(1)補正前の請求項1
「【請求項1】
貨幣の入金処理および出金処理を行う第1貨幣処理装置と、
少なくとも貨幣の出金処理を行う第2貨幣処理装置と、
を備え、
貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部および前記第2貨幣処理装置の内部にそれぞれ着脱自在に装着されるようになっており、
前記収納カセットには記録媒体が設けられており、
前記第1貨幣処理装置は、前記収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部に装着されているときに当該第1貨幣処理装置の貨幣の在高に係る情報を当該収納カセットに設けられた前記記録媒体に書き込む第1書込部を有しており、
前記第2貨幣処理装置は、前記収納カセットが前記第2貨幣処理装置の内部に装着されているときに当該収納カセットに設けられた前記記録媒体から情報を読み取る第2読取部と、前記第2読取部により読み取られた情報に基づいて前記第1貨幣処理装置の貨幣の在高を管理する在高管理手段とを有している、貨幣管理システム。」

(2)補正後の請求項1
「【請求項1】
商品の代金としての貨幣を入金する、あるいは釣銭としての貨幣を出金するよう構成され、営業開始時にあらかじめ釣銭準備金としての貨幣が収納される第1貨幣処理装置と、
前記第1貨幣処理装置から回収された売上金としての貨幣を入金する、あるいは前記第1貨幣処理装置に貨幣を補充するための釣銭補充金としての貨幣を出金するように構成された第2貨幣処理装置と、
を備え、
貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部および前記第2貨幣処理装置の内部にそれぞれ着脱自在に装着されるようになっており、
前記収納カセットには記録媒体が設けられており、
前記第1貨幣処理装置は、前記収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部に装着されているときに当該第1貨幣処理装置の貨幣の在高に係る情報を当該収納カセットに設けられた前記記録媒体に書き込む第1書込部を有しており、
前記第2貨幣処理装置は、前記収納カセットが前記第2貨幣処理装置の内部に装着されているときに当該収納カセットに設けられた前記記録媒体から情報を読み取る第2読取部と、前記第2読取部により読み取られた情報に基づいて前記第1貨幣処理装置の貨幣の在高を管理する在高管理手段と、前記第1貨幣処理装置の釣銭準備金に関する貨幣の金種毎の枚数に係る情報を記憶する記憶部と、前記在高管理手段により管理される前記第1貨幣処理装置の貨幣の在高および前記記憶部に記憶されている情報に基づいて前記第1貨幣処理装置に入金されるべき釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数を算出する算出手段とを有している、貨幣管理システム。」

2 補正の適否
2-1 補正の目的
本件補正に係る請求項1の補正は、補正前の請求項1に記載された「第1貨幣処理装置」に関し、「商品の代金としての貨幣を入金する、あるいは釣銭としての貨幣を出金するよう構成され、営業開始時にあらかじめ釣銭準備金としての貨幣が収納される」との限定を付し、「第2貨幣処理装置」に関し、「前記第1貨幣処理装置から回収された売上金としての貨幣を入金する、あるいは前記第1貨幣処理装置に貨幣を補充するための釣銭補充金としての貨幣を出金するように構成された」との限定を付し、さらに、「貨幣管理システム」が「前記第1貨幣処理装置の釣銭準備金に関する貨幣の金種毎の枚数に係る情報を記憶する記憶部と、前記在高管理手段により管理される前記第1貨幣処理装置の貨幣の在高および前記記憶部に記憶されている情報に基づいて前記第1貨幣処理装置に入金されるべき釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数を算出する算出手段とを有している」ことを追加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げられた特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下検討する。

2-2 独立特許要件
(1)引用文献の記載事項等
(1-1)引用文献1の記載事項等
(1-1-1)引用文献1の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献1として示され、本願の出願前に頒布された特開2015-92326号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。
(1a)「【請求項1】
貨幣収納カセットとともに運搬される情報保持具により保持されている情報を読み取る読取部と、
前記貨幣収納カセットの解錠を行う解錠部と、
機体内に投入された貨幣を収納する収納部と、
前記読取部により読み取られた情報に基づいて前記解錠部により前記貨幣収納カセットを解錠させるよう当該解錠部の制御を行う制御部と、
を備えた、貨幣処理装置。
・・・
【請求項6】
前記解錠部により解錠が行われた前記貨幣収納カセット内の貨幣は自動的に前記貨幣処理装置の機体内に投入されて前記収納部に収納されるようになっている、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項7】
前記収納部に収納された貨幣を前記貨幣処理装置の機体外に出金することができるようになっており、
前記情報保持具により保持される情報は、前記貨幣収納カセットにより前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受を行う釣銭機の在高を含み、
前記制御部は、前記読取部により読み取られた情報における前記釣銭機の在高に基づいて釣銭準備金としての貨幣を前記収納部から機体外に出金させるようになっている、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項8】
前記情報保持具は前記貨幣収納カセットに取り付けられている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の貨幣処理装置。
【請求項9】
前記貨幣収納カセットが装填される装填部を更に備え、
前記読取部は前記装填部に設けられている、請求項8記載の貨幣処理装置。
・・・
【請求項11】
レジに設けられた釣銭機と、
機体内に投入された貨幣を収納する収納部を有する貨幣処理装置と、
を備え、
貨幣収納カセットにより前記釣銭機と前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受が行われるようになっており、
前記貨幣処理装置は、前記貨幣収納カセットとともに運搬される情報保持具により保持されている情報を読み取る読取部と、前記貨幣収納カセットの解錠を行う解錠部と、前記読取部により読み取られた情報に基づいて前記解錠部により前記貨幣収納カセットを解錠させるよう当該解錠部の制御を行う制御部と、を有している、貨幣処理システム。」
(1b)「【0001】
本発明は、紙幣や硬貨等の貨幣の処理を行う貨幣処理装置、貨幣処理方法および貨幣処理システムに関する。
・・・
【0027】
図1に示すように、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の商業施設の店舗10において、顧客が立ち入ることができるフロント領域12には様々な商品が陳列された商品棚14が設置されているとともに、このフロント領域12の精算所16にはレジユニット18が設置されている。後述するように、レジユニット18は、硬貨釣銭機100、紙幣釣銭機200およびPOSレジスタ300等から構成されている。顧客がこのような精算所16で精算処理を行う際に、店員は、顧客から受け取った商品の代金としての貨幣や商品券をレジユニット18の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に入金したり、釣銭としての貨幣を硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から出金して顧客に返却したりするようになっている。また、このような店舗における顧客の立ち入りが禁止されたバックヤード領域20には、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から回収された売上金としての貨幣が入金される売上入金機22が設置されている。また、このような売上入金機22がショッピングセンターに設置される場合には、フロント領域12の精算所16に設置された硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から回収された売上金としての貨幣に加えて、ショッピングセンター内の各テナントから持ち込まれた売上金としての貨幣が当該売上入金機22に入金されるようになる。売上入金機22に入金された売上金としての貨幣は、警送会社の収集担当者により回収されて当該警送会社の管理センターに運搬されるようになっている。ここで、本実施の形態では、売上入金機22として、紙幣、硬貨、商品券等を含む有価媒体の処理を一つの装置で行うようなものが用いられるようになっている。また、本実施の形態では、レジユニット18および売上入金機22により貨幣処理システムが構成されている。
・・・
【0038】
次に、紙幣釣銭機200の構成について具体的に説明する。図2および図3に示すように、紙幣釣銭機200は、筐体210と、この筐体210内の略中央部に設けられた環状の周回搬送部203aとを備えている。また、紙幣受入部214、3つの紙幣収納部206、紙幣払出部216、出金リジェクト部204、および紙幣回収カセット207が、周回搬送部203aを外側から取り囲むように配置されている。
【0039】
また、紙幣釣銭機200の筐体210の内部には、紙幣受入部214、各紙幣収納部206、紙幣払出部216、出金リジェクト部204、および紙幣回収カセット207と、周回搬送部203aとの間をそれぞれ接続する複数の接続搬送部203bが形成されている。また、周回搬送部203aには紙幣識別部201が設けられており、この紙幣識別部201は、当該紙幣識別部201を通過する紙幣の識別を行うようになっている。
・・・
【0041】
図1および図2に示すように、筐体210の前面には、紙幣受入部214の紙幣受入口214aと、紙幣払出部216の紙幣取出口216aとがそれぞれ設けられている。また、紙幣回収カセット207は筐体210に対して着脱可能に設置されている。
・・・
【0044】
紙幣回収カセット207は筐体210の前面から引き出すことにより当該筐体210の外部に取り出すことができるようになっている。このような紙幣回収カセット207の構成の詳細を図8に示す。図8に示すように、紙幣回収カセット207の底面にはICタグ207cが設けられており、このICタグ207cに様々な情報(例えば、レジの識別番号であるレジ番号、レジが設置された売り場名、店舗名、レジの担当者の識別番号、レジにおける売上金額、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高、売上日付、売上回収データ(具体的には、紙幣回収カセット207に収納されている紙幣の金額や金種毎の枚数)、売上回収日時(具体的には、操作者によりPOSレジスタ300に対して回収処理の指令が与えられた日時)等)を記憶させることができるようになっている。また、紙幣回収カセット207にはロック部(図示せず)が設けられており、紙幣回収カセット207が筐体210の外部に取り出されたときに、ロック部が当該紙幣回収カセット207のロックを行うことにより、操作者はこの紙幣回収カセット207の内部から紙幣を取り出すことができないようになっている。このようなロック部によりロックされた紙幣回収カセット207は、レジ担当者によって当該紙幣回収カセット207がバックヤード領域20に運搬された後、このバックヤード領域20に設置された売上入金機22のカセット解錠機構600(後述)によりロック部のロックが解錠されるようになっている。カセット解錠機構600による紙幣回収カセット207のロック部のロックの解錠方法の詳細については後述する。
・・・
【0053】
図5および図6に示すように、売上入金機22は略直方体形状の筐体512を有しており、この筐体512内には、紙幣や商品券等の紙葉類の処理を行う紙葉類処理機構520および硬貨の処理を行う硬貨処理機構550がそれぞれ設けられている。また、図5に示すように、売上入金機22を正面から見て右側部分には上方から順に紙葉類投入部522、紙葉類リジェクト部530、および紙葉類集積部532(後述)の前面開口を開閉するためのシャッタ533がそれぞれ配設されている。また、売上入金機22を正面から見て左側部分には硬貨投入部552が配設されている。また、売上入金機22を正面から見て右上部分には例えばタッチパネル等からなる操作表示部582がターミナルとして配設されている。また、売上入金機22を正面から見て左上部分には、レジユニット18の紙幣釣銭機200の筐体210から外部に取り出された紙幣回収カセット207の解錠を行うためのカセット解錠機構600が配設されている。また、売上入金機22の前面下部には下部扉514が設けられており、この下部扉514を開くことにより、筐体512内に収容された紙葉類収納カセット538、540(後述)や硬貨収納カセット568、570(後述)を筐体512の手前側に引き出すことができるようになっている。
・・・
【0058】
また、図6に示すように、紙葉類搬送部524には第1の紙葉類一時保留部534および第2の紙葉類一時保留部536がそれぞれ接続されており、紙葉類識別部526により識別された紙葉類のうち予め設定された所定の種類の紙葉類が紙葉類搬送部524から第1の紙葉類一時保留部534や第2の紙葉類一時保留部536に送られてこれらの第1の紙葉類一時保留部534や第2の紙葉類一時保留部536に一時的に保留されるようになっている。また、第1の紙葉類一時保留部534の下方には第1の紙葉類収納カセット538が設けられているとともに、第2の紙葉類一時保留部536の下方には第2の紙葉類収納カセット540が設けられている。そして、第1の紙葉類一時保留部534や第2の紙葉類一時保留部536に紙葉類が一時的に保留された後、売上入金機22の制御部580(後述)に対して操作表示部582(後述)により入金承認の指令が与えられると、第1の紙葉類一時保留部534や第2の紙葉類一時保留部536の底面が開放されてこれらの第1の紙葉類一時保留部534や第2の紙葉類一時保留部536に一時的に保留されている紙葉類が第1の紙葉類収納カセット538や第2の紙葉類収納カセット540に収納されるようになっている。これらの第1の紙葉類収納カセット538や第2の紙葉類収納カセット540は、売上入金機22の筐体512から取り外し可能となっており、第1の紙葉類収納カセット538や第2の紙葉類収納カセット540を筐体512から取り外すことによりこれらの第1の紙葉類収納カセット538や第2の紙葉類収納カセット540に収納されている紙葉類を取り出すことができるようになっている。
・・・
【0083】
次に、このような構成からなるレジユニット18や売上入金機22の動作、具体的には紙幣回収カセット207によりレジユニット18の紙幣釣銭機200から紙幣を回収して売上入金機22に入金する動作について図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0084】
店舗10の営業時間後に締め処理を行う際に、レジ担当者がPOSレジスタ300の操作部304により紙幣や硬貨の回収処理の指令を入力すると、硬貨収納部106に収納された硬貨が当該硬貨収納部106から繰り出されて出金搬送部108から図示しない硬貨回収袋に硬貨が送られて当該硬貨回収袋に収納されるとともに、紙幣収納部206に収納された紙幣が当該紙幣収納部206から繰り出されて紙幣回収カセット207に送られて当該紙幣回収カセット207に収納される(STEP1)。また、この際に、紙幣釣銭機200に設けられたICリーダライタ218により、紙幣回収カセット207のICタグ207cに、レジ番号、レジが設置された売り場名、店舗名、レジの担当者の識別番号、レジにおける売上金額、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高、売上日付、売上回収データ、売上回収日時等の様々な情報が書き込まれる(STEP2)。
・・・
【0101】
また、バックヤード領域20に売上入金機22を設置する代わりに、貨幣の入金処理および出金処理を行う入出金機を設置し、レジユニット18の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200で用いられる釣銭準備金としての貨幣がこの入出金機から出金されるようになっていてもよい。この場合には、紙幣回収カセット207に設けられたICタグ207cに硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高を書き込み、バックヤード領域20に設置された入出金機のICリーダ(図示せず)によりこのICタグ207cの情報を読み取ることにより、入出金機において硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における釣銭の不足金額を取得することができるようになるため、当該入出金機においてこの不足金額分の貨幣を釣銭準備金として自動的に出金させることができるようになる。」

(1c)引用文献1には、以下の図が示されている。

(1-1-2)認定事項
ア 引用文献1には、摘示(1a)の【請求項11】に記載のとおり、
「レジに設けられた釣銭機と、
機体内に投入された貨幣を収納する収納部を有する貨幣処理装置と、
を備え、
貨幣収納カセットにより前記釣銭機と前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受が行われるようになっており、
前記貨幣処理装置は、前記貨幣収納カセットとともに運搬される情報保持具により保持されている情報を読み取る読取部と、前記貨幣収納カセットの解錠を行う解錠部と、前記読取部により読み取られた情報に基づいて前記解錠部により前記貨幣収納カセットを解錠させるよう当該解錠部の制御を行う制御部と、を有している、貨幣処理システム。」が記載されている。
イ また、摘示(1a)の【請求項6】?【請求項10】の記載によれば、上記アの「貨幣処理システム」を構成する「貨幣処理装置」、「釣銭機」及び「貨幣収納カセット」について、以下の事項を認定することができる。
(ア)前記解錠部により解錠が行われた前記貨幣収納カセット内の貨幣は自動的に前記貨幣処理装置の機体内に投入されて前記収納部に収納されるようになっていること(【請求項6】)
(イ)前記収納部に収納された貨幣を前記貨幣処理装置の機体外に出金することができるようになっており、
前記情報保持具により保持される情報は、前記貨幣収納カセットにより前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受を行う釣銭機の在高を含み、
前記制御部は、前記読取部により読み取られた情報における前記釣銭機の在高に基づいて釣銭準備金としての貨幣を前記収納部から機体外に出金させるようになっていること(【請求項7】)
(ウ)前記情報保持具は前記貨幣収納カセットに取り付けられていること(【請求項8】)
(エ)前記貨幣収納カセットが装填される装填部を更に備え、前記読取部は前記装填部に設けられていること(【請求項9】)
ウ さらに、摘示(1b)によれば、上記ア、イの「釣銭機」、「貨幣収納カセット」及び「情報保持具」について、以下の事項を認定することができる。
(ア)前記釣銭機は、少なくとも紙幣釣銭機200を含み(段落【0027】)、紙幣釣銭機200は、筐体210を備えており(段落【0038】)、筐体210の内部には、紙幣受入部214、各紙幣収納部206、紙幣払出部216、出金リジェクト部204、および紙幣回収カセット207と、周回搬送部203aとの間をそれぞれ接続する複数の接続搬送部203bが形成されていること(段落【0039】)
(イ)前記貨幣収納カセットは、貨幣回収カセット207として構成されるものであって、筐体210に対して着脱可能に設置されること(段落【0038】、【0041】)
(ウ)前記情報保持具は、ICタグ207cとして構成されること(段落【0044】)
(エ)紙幣収納部206に収納された紙幣が紙幣回収カセット207に送られて当該紙幣回収カセット207に収納され、この際に、紙幣釣銭機200に設けられたICリーダライタ218により、紙幣回収カセット207のICタグ207cに、レジ番号、レジが設置された売り場名、店舗名、レジの担当者の識別番号、レジにおける売上金額、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高、売上日付、売上回収データ、売上回収日時等の様々な情報が書き込まれること(段落【0084】)

(1-1-3)引用文献1に記載された発明
以上によれば、引用文献1には、
「レジに設けられた釣銭機と、
機体内に投入された貨幣を収納する収納部を有する貨幣処理装置と、
を備え、
貨幣収納カセットにより前記釣銭機と前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受が行われるようになっており、
前記貨幣処理装置は、前記貨幣収納カセットとともに運搬される情報保持具により保持されている情報を読み取る読取部と、前記貨幣収納カセットの解錠を行う解錠部と、前記読取部により読み取られた情報に基づいて前記解錠部により前記貨幣収納カセットを解錠させるよう当該解錠部の制御を行う制御部と、を有している、貨幣処理システムであって、
前記解錠部により解錠が行われた前記貨幣収納カセット内の貨幣は自動的に前記貨幣処理装置の機体内に投入されて前記収納部に収納されるようになっており、
前記収納部に収納された貨幣を前記貨幣処理装置の機体外に出金することができるようになっており、
前記情報保持具により保持される情報は、前記貨幣収納カセットにより前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受を行う釣銭機の在高を含み、
前記制御部は、前記読取部により読み取られた情報における前記釣銭機の在高に基づいて釣銭準備金としての貨幣を前記収納部から機体外に出金させるようになっており、
前記情報保持具は前記貨幣収納カセットに取り付けられており、
前記貨幣収納カセットが装填される装填部を更に備え、前記読取部は前記装填部に設けられており、
前記釣銭機は、少なくとも紙幣釣銭機200を含み、紙幣釣銭機200は、筐体210を備えており、筐体210の内部には、紙幣受入部214、各紙幣収納部206、紙幣払出部216、出金リジェクト部204、および紙幣回収カセット207と、周回搬送部203aとの間をそれぞれ接続する複数の接続搬送部203bが形成されており、
前記貨幣収納カセットは、貨幣回収カセット207として構成されるものであって、筐体210に対して着脱可能に設置され、
前記情報保持具は、ICタグ207cとして構成され、
紙幣収納部206に収納された紙幣が紙幣回収カセット207に送られて当該紙幣回収カセット207に収納され、この際に、紙幣釣銭機200に設けられたICリーダライタ218により、紙幣回収カセット207のICタグ207cに、レジ番号、レジが設置された売り場名、店舗名、レジの担当者の識別番号、レジにおける売上金額、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200の在高、売上日付、売上回収データ、売上回収日時等の様々な情報が書き込まれる、貨幣処理システム。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(1-2)引用文献2の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用文献2として示され、本願の出願前に頒布された特開2015-125474号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【0001】
本発明は、スーパーマーケット等の店舗での現金を管理するための現金管理装置、該現金管理装置を備える現金管理システム、及び現金管理方法に関する。
・・・
【0042】
最適設定値算出部(最適設定値算出手段)54は、予め設定され、記憶部48に記憶された釣銭機14毎の現金管理に関する設定値(例えば、残置金額)を基に、上記した1又は複数の状況データを利用して、そのときの釣銭機14毎の最適な設定値(最適設定値)を算出し決定するものである。釣銭機14毎の現金管理に関する設定値は、各釣銭機14の記憶部30に記憶されていてもよく、この場合は通信部46を介して取得する。詳細は後述するが、最適設定値算出部54は、例えば、店舗16付近の天気がよく客足の伸びや売上向上が見込まれる場合に、釣銭機14でより多くの釣銭が必要となると判断し、予め設定された釣銭機14毎の設定値を基に売上向上や取引回数増加を見込んで残置金額を増加させる最適設定値を算出する。算出された最適設定値は、現金管理金額演算部58に送られる。
・・・
【0058】
ステップS8において、現金管理金額演算部58は、ステップS6で算出した釣銭機14毎の最適な設定値と、ステップS7で取得した釣銭機14毎の現金在高情報とを基に、各釣銭機14に対する現金管理で扱う金額データ(補充金額又は回収金額)を演算・決定し、これを各釣銭機14(又は入出金機18)に通知する(現金管理金額演算ステップ)。例えば、釣銭機Aでの現金在高が5万円であり、最適な残置金額が10万円と算出された場合には、補充金額が5万円であると決定され、例えば、釣銭機Aでの現金在高が10万円であり、最適な残置金額が5万円と算出された場合には、回収金額が5万円であると決定される。」

(1-3)引用文献3の記載事項
当審で新たに引用する、本願の出願前に頒布された特開2008-197831号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(3a)「【0001】
本発明は、店舗内に設置される複数のPOSレジスタと、各POSレジスタの釣銭機にセットする釣銭資金や各POSレジスタから回収した売上金の入出金処理を行う現金処理機を備えた現金管理システムに関する。
・・・
【0026】
すなわち、釣銭には千円と五千円が使用され、二千円と万円は釣銭として不要であり、
従って、収納部45に二千円と万円の紙幣が収納された場合は、あらためて収納庫45から紙幣を繰出し、紙幣回収カセット26に搬送して収納する。
これにより収納庫45には常に五千円紙幣のみが収納されるので、次に出金が要求されたときに五千円紙幣を即座に出金できるように準備ができ、待ち時間を短縮することができると共に、釣銭として不要な二千円、万円は紙幣回収カセット26に収納しておくことで、釣銭として不要な紙幣をいつでも回収処理することができる。
・・・
【0056】
この現金データ管理装置4による各釣銭機3の有高(釣銭収納量)に従った釣銭資金の管理は以下のように行われる。
図10は現金データ管理装置4の記憶部に設定した釣銭管理用テーブルの一例を示す図で、この釣銭管理用テーブルは、図10(a)に示す日時条件、図10(b)に示す釣銭機設置リスト、図10(c)に示す釣銭必要量設定表、図10(d)に示す釣銭機別釣銭有高表により構成されている。
・・・
【0060】
例えば、図10(a)の日時条件で設定された「平日12:30、催事なし」の場合には、平日日中に該当する枚数が選択される。」
尚、営業条件の数は任意に追加してもよい。
図10(d)に示す釣銭機別釣銭有高表には、釣銭機3毎の金種別の釣銭資金の有高と警報設定枚数、補充枚数等が設定されている。」
(3b)引用文献3には、以下の図が示されている。

(2)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用文献1(摘示(1b))には、引用発明の「貨幣処理システム」に係る実施の形態について、「レジユニット18は、硬貨釣銭機100、紙幣釣銭機200およびPOSレジスタ300等から構成されている。顧客がこのような精算所16で精算処理を行う際に、店員は、顧客から受け取った商品の代金としての貨幣や商品券をレジユニット18の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200に入金したり、釣銭としての貨幣を硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から出金して顧客に返却したりするようになっている。」(段落【0027】)と記載されているから、引用発明の「少なくとも紙幣釣銭機200を含む」「レジに設けられた釣銭機」が、商品の代金としての貨幣が入金されるように構成されること、釣銭としての貨幣が出金されるように構成されること、及び釣銭としての貨幣が収納されることは明らかである。
さらに、上記「レジに設けられた釣銭機」は、その営業開始時から十分機能するように構成すべきことが技術常識であるから、上記「釣銭機」に、釣銭としての釣銭準備金を営業開始時からあらかじめ収納すべきことも明らかである。
したがって、引用発明の「少なくとも紙幣釣銭機200を含む」「レジに設けられた釣銭機」は、本願補正発明の「商品の代金としての貨幣を入金する、あるいは釣銭としての貨幣を出金するよう構成され、営業開始時にあらかじめ釣銭準備金としての貨幣が収納される第1貨幣処理装置」に相当するものといえる。
イ 引用文献1(摘示(1b))には、「バックヤード領域20には、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200から回収された売上金としての貨幣が入金される売上入金機22が設置されている。」(段落【0027】)、及び「また、バックヤード領域20に売上入金機22を設置する代わりに、貨幣の入金処理および出金処理を行う入出金機を設置し、レジユニット18の硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200で用いられる釣銭準備金としての貨幣がこの入出金機から出金されるようになっていてもよい。」(段落【0101】)と記載されているから、引用発明の「機体内に投入された貨幣を収納する収納部を有する貨幣処理装置」が、入出金機として具現化することができ、上記「レジに設けられた釣銭機」から回収された売上金としての貨幣が入金されることは明らかである。
さらに、引用発明は、「前記釣銭機の在高に基づいて釣銭準備金としての貨幣を前記収納部から機体外に出金させるように」構成されているところ、引用文献1(摘示(1b))には、「入出金機において硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における釣銭の不足金額を取得することができるようになるため、当該入出金機においてこの不足金額分の貨幣を釣銭準備金として自動的に出金させることができるようになる。」(段落【0101】)と記載されているように、上記「釣銭準備金」は、硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における釣銭の不足金額であって、上記「釣銭機」に補充する釣銭補充金として位置づけられ得るものであるから、引用発明の「貨幣処理装置」が、入出金機として具現化されるとともに、上記「レジに設けられた釣銭機」に貨幣を補充するための釣銭補充金としての貨幣を出金することも技術的に明らかである。
したがって、引用発明の「貨幣処理装置」は、上記アをも踏まえると、本願補正発明の「前記第1貨幣処理装置から回収された売上金としての貨幣を入金する、あるいは前記第1貨幣処理装置に貨幣を補充するための釣銭補充金としての貨幣を出金するように構成された第2貨幣処理装置」に相当するものといえる。
ウ 引用発明は、「貨幣収納カセットにより前記釣銭機と前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受が行われるようになっており」、「前記解錠部により解錠が行われた前記貨幣収納カセット内の貨幣は自動的に前記貨幣処理装置の機体内に投入されて前記収納部に収納されるようになっており」、「前記貨幣収納カセットは、貨幣回収カセット207として構成されるものであって、筐体210に対して着脱可能に設置され」、「紙幣収納部206に収納された紙幣が紙幣回収カセット207に送られて当該紙幣回収カセット207に収納され」るものであるから、上記「貨幣回収カセット207として構成される」「貨幣収納カセット」は、本願補正発明の「貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセット」に相当するものといえる。
エ 引用発明は、「前記釣銭機は、少なくとも紙幣釣銭機200を含み、紙幣釣銭機200は、筐体210を備え」、「筐体210の内部には、・・・紙幣回収カセット207と、・・・が形成されて」いるところ、「前記貨幣収納カセットは、貨幣回収カセット207として構成されるものであって、筐体210に対して着脱可能に設置され」るものであるから、「貨幣回収カセット207として構成される」「貨幣収納カセット」が、「紙幣釣銭機200」としての「釣銭機」の内部に着脱自在に装着されることは明らかである。
また、引用発明の「貨幣処理装置」は、「前記貨幣収納カセットとともに運搬される情報保持具により保持されている情報を読み取る読取部」を備えるものであるところ、「前記情報保持具は前記貨幣収納カセットに取り付けられており」、また、上記「貨幣処理装置」は、「前記貨幣収納カセットが装填される装填部を更に備え」、「前記読取部は前記装填部に設けられている」から、引用発明の「貨幣収納カセット」が、「読取部」を備える「貨幣処理装置」に着脱自在に装着されることは明らかである。
したがって、引用発明の上記「貨幣収納カセット」の装着に係る構成と、本願補正発明の「貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部および前記第2貨幣処理装置の内部にそれぞれ着脱自在に装着されるようになっており」という構成とは、上記ア?ウをも踏まえると、「貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部および前記第2貨幣処理装置にそれぞれ着脱自在に装着されるようになっており」という構成の点で共通するものといえる。
オ 引用発明の「ICタグ207cとして構成され」る「情報保持具」は、本願補正発明の「記録媒体」に相当する。
したがって、引用発明の「前記情報保持具は前記貨幣収納カセットに取り付けられており」という構成は、上記ウをも踏まえると、本願補正発明の「前記収納カセットには記録媒体が設けられており」という構成に相当する。
カ 引用発明の「紙幣釣銭機200に設けられたICリーダライタ218」は、本願補正発明の「第1書込部」に相当する。
そして、引用発明は、「紙幣収納部206に収納された紙幣が紙幣回収カセット207に送られて当該紙幣回収カセット207に収納され、この際に、紙幣釣銭機200に設けられたICリーダライタ218により、紙幣回収カセット207のICタグ207cに、・・・紙幣釣銭機200の在高、・・・等の様々な情報が書き込まれる」るものであるから、紙幣釣銭機200は、紙幣回収カセット207が紙幣釣銭機200の内部に装着されているときに当該紙幣釣銭機200の貨幣の在高に係る情報を当該紙幣回収カセット207に設けられたICタグ207cに書き込むICリーダライタ218を有して構成されることも明らかである。
したがって、引用発明において、上記「紙幣釣銭機200」が上記「ICリーダライタ218」を有して構成されることは、上記ア?オをも踏まえると、本願補正発明の「前記第1貨幣処理装置は、前記収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部に装着されているときに当該第1貨幣処理装置の貨幣の在高に係る情報を当該収納カセットに設けられた前記記録媒体に書き込む第1書込部を有しており」という構成に相当するものといえる。
キ 引用発明の「貨幣処理装置」は、「前記貨幣収納カセットとともに運搬される情報保持具により保持されている情報を読み取る読取部」を有し、「前記貨幣収納カセットが装填される装填部を更に備え、前記読取部は前記装填部に設けられ」るものであって、「前記情報保持具は前記貨幣収納カセットに取り付けられ」るものであるから、上記貨幣処理装置は、貨幣収納カセットが貨幣処理装置に装着されているときに、上記読取部により貨幣収納カセットに設けられた情報保持具から情報を読み取ることが明らかである。
したがって、引用発明において、「貨幣処理装置」が有する「読取部」と、本願補正発明の「前記収納カセットが前記第2貨幣処理装置の内部に装着されているときに当該収納カセットに設けられた前記記録媒体から情報を読み取る第2読取部」とは、上記イ?オをも踏まえると、「前記収納カセットが前記第2貨幣処理装置に装着されているときに当該収納カセットに設けられた前記記録媒体から情報を読み取る第2読取部」の点で共通するものとといえる。
ク 引用発明は、「前記情報保持具により保持される情報は、前記貨幣収納カセットにより前記貨幣処理装置との間で貨幣の授受を行う釣銭機の在高を含み」、「前記情報保持具は、ICタグ207cとして構成され、紙幣収納部206に収納された紙幣が紙幣回収カセット207に送られて当該紙幣回収カセット207に収納され、この際に、紙幣釣銭機200に設けられたICリーダライタ218により、紙幣回収カセット207のICタグ207cに、・・・紙幣釣銭機200の在高等の様々な情報が書き込まれる」ものであるから、上記「ICタグ207cとして構成され」る「情報保持具」には、「釣銭機」を構成する「紙幣釣銭機200」の「在高」に係る情報が保持されていることが明らかである。
そして、引用発明における「貨幣処理装置」の「制御部」は、「前記読取部により読み取られた情報における前記釣銭機の在高に基づいて釣銭準備金としての貨幣を前記収納部から機体外に出金させるように」構成されるものであるから、上記「制御部」が、読取部により読み取られた情報に基づいて「釣銭機」を構成する「紙幣釣銭機200」の在高を管理する在高管理手段と位置づけ得ることも明らかである。
したがって、引用発明の「制御部」は、上記ア、キをも踏まえると、本願補正発明の「前記第2読取部により読み取られた情報に基づいて前記第1貨幣処理装置の貨幣の在高を管理する在高管理手段」に相当するものといえる。
ケ 引用発明の「貨幣処理システム」は、本願補正発明の「貨幣管理システム」に相当する。

以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「商品の代金としての貨幣を入金する、あるいは釣銭としての貨幣を出金するよう構成され、営業開始時にあらかじめ釣銭準備金としての貨幣が収納される第1貨幣処理装置と、
前記第1貨幣処理装置から回収された売上金としての貨幣を入金する、あるいは前記第1貨幣処理装置に貨幣を補充するための釣銭補充金としての貨幣を出金するように構成された第2貨幣処理装置と、
を備え、
貨幣の収納および収納されている貨幣の繰り出しを行う収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部および前記第2貨幣処理装置にそれぞれ着脱自在に装着されるようになっており、
前記収納カセットには記録媒体が設けられており、
前記第1貨幣処理装置は、前記収納カセットが前記第1貨幣処理装置の内部に装着されているときに当該第1貨幣処理装置の貨幣の在高に係る情報を当該収納カセットに設けられた前記記録媒体に書き込む第1書込部を有しており、
前記第2貨幣処理装置は、前記収納カセットが前記第2貨幣処理装置に装着されているときに当該収納カセットに設けられた前記記録媒体から情報を読み取る第2読取部と、前記第2読取部により読み取られた情報に基づいて前記第1貨幣処理装置の貨幣の在高を管理する在高管理手段と、を有している、貨幣管理システム。」の点で一致し、以下の点で相違している。
<相違点1>
本願補正発明は、収納カセットが、第2貨幣処理装置の「内部」に装着されるのに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
本願補正発明は、第2貨幣処理装置が、「前記第1貨幣処理装置の釣銭準備金に関する貨幣の金種毎の枚数に係る情報を記憶する記憶部と、前記在高管理手段により管理される前記第1貨幣処理装置の貨幣の在高および前記記憶部に記憶されている情報に基づいて前記第1貨幣処理装置に入金されるべき釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数を算出する算出手段とを有している」のに対し、引用発明は、そのように特定されていない点。

(3)判断
ア 相違点1について
引用発明は、「前記解錠部により解錠が行われた前記貨幣収納カセット内の貨幣は自動的に前記貨幣処理装置の機体内に投入されて前記収納部に収納されるように」構成されるものであるところ、上記「貨幣処理装置の機体」に対する「貨幣収納カセット」の装着部位(位置)について特定されるものではない。
そこで、そのような機体に対する貨幣収納カセットの装着位置について検討するに、
引用発明の「紙幣釣銭機200」は、「筐体210を備えており、筐体210の内部には、・・・紙幣回収カセット207・・・が形成され」、「前記貨幣収納カセットは、貨幣回収カセット207として構成されるものであって、筐体210に対して着脱可能に設置され」るものであるから、上記「貨幣回収カセット207」は、「紙幣釣銭機200」の「内部」に着脱自在に装着されるように構成されている。
また、引用文献1(摘示(1b))には、売上入金機22が筐体512を有し、この筐体512内に紙葉類収納カセット538、540を収納するとともに(段落【0053】)、これら紙葉類収納カセット538、540を売上入金機22の筐体512から取り外し可能に構成すること(段落【0058】)が記載されており、上記「紙葉類収納カセット538」や「第2の紙葉類収納カセット540」は、「売上入金機22」の「内部」に着脱自在に装着されるように構成されている。
これら「貨幣回収カセット207」、「紙葉類収納カセット538」及び「第2の紙葉類収納カセット540」の装着態様からも裏付けられるとおり、機体に対する貨幣収納カセットの装着部位(位置)を、その「内部」に設定することは、ごくありふれた技術であって、周知・慣用技術ということもできるから、引用発明において、「貨幣処理装置」に対する「貨幣収納カセット」の装着部位(位置)を、貨幣処理装置の内部に設定することは、当業者が必要に応じ適宜設定する設計事項というべきである。
したがって、上記相違点1に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び周知・慣用技術に基いて当業者が容易になし得たものといえる。

イ 相違点2について
(ア)引用発明の「貨幣処理装置」が有する「制御部」は、「前記読取部により読み取られた情報における前記釣銭機の在高に基づいて釣銭準備金としての貨幣を前記収納部から機体外に出金させるように」構成されるものである。
ここで、引用文献1(摘示(1b))には、「バックヤード領域20に設置された入出金機のICリーダ(図示せず)によりこのICタグ207cの情報を読み取ることにより、入出金機において硬貨釣銭機100や紙幣釣銭機200における釣銭の不足金額を取得することができるようになるため、当該入出金機においてこの不足金額分の貨幣を釣銭準備金として自動的に出金させることができるようになる。」(段落【0101】)と記載されているから、引用発明の上記「釣銭準備金としての貨幣」は、少なくとも、引用発明の「紙幣釣銭機200」における釣銭の不足金額と位置づけられるものであって、紙幣釣銭機200に不足金額として補充される釣銭補充金ということができるから、本願補正発明の「釣銭補充金に係る貨幣」に相当するものといえる。
また、引用発明の「紙幣釣銭機200」は、「レジに設けられた釣銭機」として構成されるところ、そのような「レジ」において五千円札や千円札が釣銭として使用されることは商慣習に照らして明らかであり(必要ならば、引用文献3(摘示(3a):段落【0026】)の「釣銭には千円と五千円が使用され」などの記載を参照。)、さらに、そのような「紙幣釣銭機200」において、釣銭の不足金額を取得するためには、少なくとも、「紙幣釣銭機200」に必要とされる釣銭の設定値(記憶部に設定値として記憶されている)、及び「紙幣釣銭機200」の在高の情報が必要となることは、かかる技術分野の技術常識である(必要ならば、引用文献2(摘示(2a))の段落【0042】に記載された「記憶部48に記憶された釣銭機14毎の現金管理に関する設定値(例えば、残置金額)」、段落【0058】に記載された「釣銭機14毎の最適な設定値」及び「釣銭機14毎の現金在高情報」、引用文献3(摘示(3a)(3b))の段落【0056】、【0060】に記載された、「記憶部に設定した釣銭管理用テーブル」であって「釣銭必要量設定表」及び「釣銭機別釣銭有高表」、図10(c)(d)に記載された「五千」「千」の「金種」について、「設定-有高」で「補充枚数」を算出していること、など参照。)。
してみると、引用発明において、上記「貨幣処理装置」が有する「制御部」にて、「前記読取部により読み取られた情報における前記釣銭機の在高に基づいて釣銭準備金としての貨幣を前記収納部から機体外に出金させる」ために、紙幣釣銭機200の釣銭準備金に関する貨幣の金種毎(五千円、千円)の枚数に係る情報を記憶部に記憶させ、読取部により読み取られた情報における釣銭機の在高および前記記憶部に記憶されている情報に基づいて紙幣釣銭機200に入金されるべき釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数を算出すること、すなわち、上記相違点2に係る本願補正発明の構成は、引用発明及び技術常識に基いて当業者が容易になし得たものといえる。

ウ そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明、周知・慣用技術及び技術常識から当業者が予測し得る範囲のものであって、格別なものとはいえない。

エ 請求人の主張について
請求人は、令和2年4月10日付けの審判請求書(「4.」の項)で、上記引用文献1及び引用文献2には、第2貨幣処理装置の記憶部に記憶されている第1貨幣処理装置の釣銭準備金に関する情報等に基づいて、第1貨幣処理装置に入金されるべき釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数を第2貨幣処理装置により算出することについて記載および示唆がないため、当業者であっても釣銭準備金および釣銭補充金の両方を正確に管理する構成を容易に想到することはできない旨主張する。
しかし、上記イで述べたとおり、引用発明の「紙幣釣銭機200」において、五千円札や千円札が釣銭として使用されることは商慣習に照らして明らかであり、さらに、釣銭の不足金額を取得するためには、少なくとも、「紙幣釣銭機200」に必要とされる釣銭の設定値(記憶部に設定値として記憶されている)、及び「紙幣釣銭機200」の在高の情報が必要となることは、かかる技術分野の技術常識であるから、そのような技術常識を有する当業者にとって、第2貨幣処理装置の記憶部に記憶されている第1貨幣処理装置の釣銭準備金に関する情報等に基づいて、第1貨幣処理装置に入金されるべき釣銭補充金に係る貨幣の金種毎の枚数を第2貨幣処理装置により算出することは、格別困難なことではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(4)まとめ
以上のとおり、本願補正発明は、引用発明、周知・慣用技術及び技術常識に基いて当業者が容易になし得たものであるから、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、令和1年8月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 1(1)補正前の請求項1」に記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、次の理由を含むものである。
本願の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び周知の技術事項(引用文献1の【0053】)に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
なお、上記引用文献1は、上記「第2 2 2-2 (1)」に示す引用文献1である。

3 当審の判断
本願発明は、上記「第2 1(1)補正前の請求項1」に示すとおりのものであり、実質的には、上記「第2 1(1)補正後の請求項1」に示す本願補正発明の発明を特定するために必要な事項である下線の事項を削除したものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 2-2(3)(4)」で述べたとおり、周知・慣用技術及び技術常識に基いて当業者が容易になし得たものであるから、本願発明も同様の理由により(上記相違点2の判断は除く)、引用発明及び上記周知・慣用技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知・慣用技術に基いて当業者が容易になし得たものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2020-11-26 
結審通知日 2020-11-30 
審決日 2020-12-15 
出願番号 特願2015-225498(P2015-225498)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G07D)
P 1 8・ 121- Z (G07D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井出 和水  
特許庁審判長 一ノ瀬 覚
特許庁審判官 氏原 康宏
佐々木 一浩
発明の名称 貨幣管理システム、貨幣処理装置および貨幣管理方法  
代理人 加島 広基  
代理人 高村 雅晴  

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