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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04M
管理番号 1370882
異議申立番号 異議2020-700713  
総通号数 255 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2021-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2020-09-18 
確定日 2021-02-01 
異議申立件数
事件の表示 特許第6667611号発明「インターホンシステム」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第6667611号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
特許第6667611号の請求項1-4に係る特許についての出願は、2016年(平成28年)3月28日を国際出願日とする出願であって、令和元年9月6日付けで拒絶理由が通知され、同年11月8日に手続補正がされ、同年12月11日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年12月20日に手続補正がされ、令和2年2月27日にその特許権の設定登録がされ、同年3月18日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年9月18日に特許異議申立人西林博(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。

2 本件発明
特許第6667611号の請求項1-4の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」-「本件発明4」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステムであって、
前記住居棟の各々には、
各居室に設置される居室親機と、
訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部と、前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部と、を有するとともに、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機と、
インターホン回線を介して自棟内の前記各居室の居室親機と前記集合玄関機とを通信可能に接続する棟制御部と、
が備えられ、
前記複数の住居棟は、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている、
インターホンシステム。
【請求項2】
前記複数の住居棟の各々の前記棟制御部は、
自棟内の前記インターホン回線を通信可能な信号を、前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号に変換処理する第一変換部と、
前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号を、自棟内の前記インターホン回線で通信可能な信号に変換処理する第二変換部と、
を有する、棟制御機を備える、
請求項1に記載のインターホンシステム。
【請求項3】
汎用プロトコルに従って通信が行われる前記ネットワークには、さらに集中棟が接続されており、
前記集中棟には、
前記複数の住居棟の各居室を呼び出すことが可能な集中端末機器と、
インターホン回線を介して前記集中端末機器と通信可能に接続する集中制御部と、
が備えられている、
請求項2に記載のインターホンシステム。
【請求項4】
前記集中制御部は、
集中棟内の前記インターホン回線を通信可能な信号を、前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号に変換処理する第三変換部と、
前記汎用プロトコルに従って前記ネットワークで通信可能な信号を、集中棟内の前記インターホン回線で通信可能な信号に変換処理する第四変換部と、
を有する、集中制御機を備え、
前記複数の住居棟の各々の前記棟制御機は、
自棟内の前記呼出テーブルが記憶された棟記憶部と、
自棟内の前記呼出テーブルに基づいて、前記集中端末機器に入力された信号を呼び出し先の居室親機の居室親機特定情報に変換処理する棟処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する棟送信部と、
を備える、
請求項3に記載のインターホンシステム。」

3 申立理由の概要
申立人は、証拠として下記甲第1号証ないし甲第7号証(以下、それぞれ「甲1」ないし「甲7」という。)を提出し、要するに、本件発明1及び2は、主たる証拠としての甲1、甲2もしくは甲3に記載された発明(以下、それぞれ「甲1発明」ないし「甲3発明」という。)と、周知技術に基いて、当業者が容易に想到し得るものであり、また、本件発明3及び4は、甲1発明又は甲3発明と、周知技術に基いて、当業者が発明をすることができたものである旨(特許法第29条第2項違反)を主張している。

甲1:パナソニック株式会社、「2013 マンションHAシステム 総合カタログ」、2013年6月、29ページ
甲2:パナソニック株式会社、「マンションHA Dシリーズ用 共用 部システム 施工説明書」、2013年、18、19ページ
甲3:特開2005-184593号公報
甲4:特開2007-13671号公報
甲5:特開2000-13516号公報
甲6:特開昭62-245836号公報
甲7:特開2010-178212号公報

4 甲1-7、甲1発明-甲3発明
(1)甲1、甲1発明について
甲1には、以下の事項が記載されている。
ア 「


」(29ページ)

上記アによれば、「複数棟のマンション棟(最大16棟、住戸数5,000戸)を管理センター棟で管理でき」る「群管理システム」が記載されている。
そして、その「システム系統図例(管理センターが棟外にある場合)」、「制御装置間のLAN配線」によれば、各マンション棟(最大16棟(管理センター棟がある場合は15棟)まで)は、住宅情報盤と、カメラ付ロビーインターホンと、制御装置とを備え、該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとの間は、FCPEV線を使用して、該制御装置や分岐器を介して接続されていること、また、該システムにおいて、複数棟のマンション棟の制御装置間は、LAN配線としてスイッチングHUB接続されていることが、見てとれる。

よって、甲1には以下の甲1発明が記載されている。
「複数棟のマンション棟を管理センター棟で管理できる群管理システムであって、
各マンション棟は、
住宅情報盤と、
カメラ付ロビーインターホンと、
制御装置とを備え、
該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとの間は、FCPEV線を使用して、該制御装置や分岐器を介して接続されており、
複数棟のマンション棟の制御装置間は、LAN配線としてスイッチングHUB接続されている、
群管理システム。」

(2)甲2、甲2発明について
甲2には、以下の事項が記載されている。
ア 「マンションHA Dシリーズ用 共用システム 施工説明書」(表紙)

イ 「

」(18、19ページ)

上記イの「システム図」によれば、1号棟と2号棟と3号棟からなるシステムが示され、各棟は、住戸内に住宅情報盤と、共同玄関にカメラ付ロビーインターホンと、管理室に制御装置とを備え、該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとは、FCPEV線を使用し、該制御装置や分岐器を介して接続されていること、また、各棟の制御装置間は、LANケーブルを使用し、スイッチングハブを介して接続されていることが、見てとれる。

よって、甲2には以下の甲2発明が記載されている。
「1号棟と2号棟と3号棟からなるシステムであって、
各棟は、
住戸内に、カラーカメラ付ドアホン子機が接続される住宅情報盤と、
共同玄関にカメラ付ロビーインターホンと、
管理室に制御装置とを備え、
該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとは、FCPEV線を使用し、該制御装置や分岐器を介して接続されており、
各棟の制御装置間は、LANケーブルを使用し、スイッチングハブを介して接続されている、
システム。」

(3)甲3、甲3発明について
甲3には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審にて付与した。)
ア 「【0001】
本発明は集合住宅インターホンシステムに係り、特に、当該システムの施工時間を短くして施工性を高めた集合住宅インターホンシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の集合住宅インターホンシステムとして、施工後、居室親機用の送受器を居室親機書込機に接続することにより、当該居室親機書込機から居室親機のアドレス番号が発行され、このアドレス番号を呼び出し、通話の際に読み出して使用される当該送受器が有する居室番号保存用メモリにアドレスに記憶させ、当該送受器を所定の居室親機に接続してフックオフし、この状態で玄関機の当該居室親機に対応させたい居室親機の呼出スイッチを押下すれば通話状態となり通話確認テストが完了する集合住宅インターホンシステムが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。」(【0001】、【0002】)

イ 「【0011】
図1のシステム構成図に示す集合住宅インターホンシステムは、A棟、B棟、C棟、・・・のような複数の棟から構成される集合住宅において、それぞれの棟内(同一システム内と同意)の住戸毎に設置されており、居住者が自棟の共同玄関に居る来訪者や集中共同玄関(詳述せず)に居る来訪者からの呼び出しに応答して通話を行うための機能および居住者が自棟の管理室に在室中の管理人との間で呼び出し、通話を行うための機能を有する居室親機1a、1b、・・・と、共同玄関毎に設置されており、来訪者が(自棟の)住戸内に在室中の居住者または(自棟の)管理室内に在室中の管理人を呼び出して通話を行うための機能を有する共同玄関機2a、2b、・・・と、管理室毎に設置されており、管理人が自棟の共同玄関に居る来訪者からの呼び出しに応答して通話を行うための機能および管理人が自棟の住戸内に在室中の居住者との間で呼び出し(一斉呼び出しを含む)、通話を行うための機能を有する管理室親機3a、3b、・・・と、ケーブルL1を介してバス接続された同一システム内の居室親機1a、1b、・・・、共同玄関機2a、2b、・・・、管理室親機3a、3b、・・・をそれぞれ制御するとともに、ケーブルL2を介して接続された他の棟内の制御機(図示せず)および集中制御機(詳述せず)の間で通信を行うための制御機4とから構成されている。
【0012】
居室親機1a、1b、・・・はそれぞれ同様な構成であり、居住者による呼び出しのための操作、来訪者または管理人からの呼び出しに応答するための操作が行われる呼出ボタン、通話(応答)ボタン、テンキーボタン等から構成される操作部10a、10b、・・・と、来訪者または管理人からの呼び出しを報知するためのスピーカ等から構成される呼出報知部11a、11b、・・・と、居住者が通話を行うための音声を送受信する送受話器(ハンドセット)等から構成される通話部12a、12b、・・・と、自居室親機、共同玄関機2a、2b、・・・、管理室親機3a、3b、・・・、制御機4のそれぞれのアドレス番号が書き込まれるEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等から構成される不揮発性メモリ13a、13b、・・・と、当該居室親機の構成各部を制御するためのCPU14a、14b、・・・とが備えられている。
【0013】
また、共同玄関機2a、2b、・・・はそれぞれ同様な構成であり、来訪者による呼び出しのための操作が行われる呼出ボタン、テンキーボタン等から構成される操作部20a、20b、・・・と、来訪者が通話を行うための音声を送受信するマイクおよびスピーカ等から構成される通話部21a、21b、・・・と、居室親機1a、1b、・・・、自共同玄関機、管理室親機3a、3b、・・・、制御機4のそれぞれのアドレス番号が書き込まれるEEPROM等から構成される不揮発性メモリ22a、22b、・・・と、当該共同玄関機の構成各部を制御するためのCPU23a、23b、・・・とが備えられている。」(【0011】-【0013】)

ウ 「【0021】
また、居室親機1a、1b、・・・のCPU14a、14b、・・・、共同玄関機2a、2b、・・・のCPU23a、23b、・・・、管理室親機3aを除く他の管理室親機3b、・・・のCPU34b、・・・および制御機4のCPU41は、管理室親機3aのCPU34aからの居室親機1aのアドレス番号をそれぞれの不揮発性メモリ13a、13b、・・・、22a、22b、・・・、33b、・・・、40へと書き込むことができ(不揮発性メモリ13aについては上書き処理が行われる。)、施工者により設定操作が行われなかった共同玄関機2a、2b、・・・、管理室親機3aを除く管理室親機3b、・・・および制御機4においても、不揮発性メモリ22a、22b、・・・、33b、・・・、40に書き込まれたアドレス番号をもとに呼び出し、通話を行うことができる。
」(【0021】)

エ 「

」(図1)

よって、甲3には以下の甲3発明が記載されている。
「集合住宅インターホンシステムは、
複数の棟から構成される集合住宅において、それぞれの棟内(同一システム内と同意)の住戸毎に設置されている居室親機と、
管理室毎に設置されている管理室親機と、(【0011】)
共同玄関毎に設置されており、来訪者が(自棟の)住戸内に在室中の居住者または(自棟の)管理室内に在室中の管理人を呼び出して通話を行うための機能を有する共同玄関機であって、来訪者による呼び出しのための操作が行われる呼出ボタン、テンキーボタン等から構成される操作部と、通話を行うための音声を送受信するマイクおよびスピーカ等から構成される通話部と、居室親機、自共同玄関機、管理室親機、制御機のそれぞれのアドレス番号が書き込まれるEEPROM等から構成される不揮発性メモリと、当該共同玄関機の構成各部を制御するためのCPUとが備えられ、該不揮発性メモリに書き込まれたアドレス番号をもとに呼び出し、通話を行うことができる共同玄関機と、(【0011】、【0013】、【0021】)
ケーブルL1を介してバス接続された棟内の居室親機、共同玄関機、管理室親機をそれぞれ制御するとともに、ケーブルL2を介して接続された他の棟内の制御機および集中制御機の間で通信を行うための制御機とから構成された、(【0011】)
集合住宅インターホンシステム。」

(4)甲4について
甲4には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0019】
図1のシステム説明図に示す集合住宅インターホンシステムは、集合住宅を構成するA棟、B棟の各棟において、2階、3階、・・・のようなフロア毎の複数の住戸内、すなわち、201号室内、202号室内、・・・、301号室内、302号室内、・・・、・・・にそれぞれ設置され、個別の居室番号(詳述せず)が割り当てられており、所定の呼出操作を行った来訪者からの呼び出しが報知され、この呼び出しを確認した居住者が来訪者との間で通話を成立させるとともに、後述するフロアドア2a、2a、・・・、2b、2b、・・・の電気錠20、またはエントランスドア5a、5b、・・・の電気錠50を解錠させるための所定の解錠操作が行われる居室親機1a、1a、・・・、1b、1b、・・・と、各棟(A棟、B棟)のフロア毎に設置された電気錠20を有するフロアドア2a、2a、・・・、2b、2b、・・・と、各棟(A棟、B棟)のフロア毎に設置され、個別の棟集合玄関機番号(詳述せず)が割り当てられており、当該フロア毎の複数の住戸内(201号室内、202号室内、・・・、301号室内、302号室内、・・・、・・・)にそれぞれ在室中の居住者のうち所望の居住者を来訪者が呼び出して通話を成立させるとともに、フロントドアラインL2a、L2a、・・・、L2b、L2b、・・・を介して接続された(フロア毎の)フロアドア2a、2a、・・・、2b、2b、・・・の電気錠20を解錠制御するたための棟集合玄関機3a、3a、・・・、3b、3b、・・・と、個別の棟制御機番号(詳述せず)が割り当てられており、居室親機ラインL1a、L1a、・・・、L1b、L1b、・・・を介して接続(バス接続)された居室親機1a、1a、・・・、1b、1b、・・・および棟集合玄関機ラインL3a、L3a、・・・、L3b、L3b、・・・を介して接続された棟集合玄関機3a、3a、・・・、3b、3b、・・・をそれぞれ制御するための棟制御機4a、4a、・・・、4b、4b、・・・と、各棟(A棟、B棟)のエントランス毎に設置された電気錠50を有するエントランスドア5a、5bと、各棟(A棟、B棟)のエントランス毎に設置され個別の集中集合玄関機番号(詳述せず)が割り当てられており、前述の居室親機1a、1a、・・・、1b、1b、・・・全てが呼び出しの対象として予め定められ、当該フロア毎の複数の住戸内(201号室内、202号室内、・・・、301号室内、302号室内、・・・、・・・)にそれぞれ在室中の居住者のうち所望の居住者を来訪者が呼び出して通話を成立させるとともに、エントランスドアラインL4a、L4bを介して接続された(エントランス毎の)エントランスドア5a、5bの電気錠50を解錠制御するための集中集合玄関機6a、6bと、棟制御機ラインL5を介して接続された棟制御機4a、4a、・・・、4b、4b、・・・および集中集合玄関機ラインL6a、L6bを介して接続された集中集合玄関機6a、6bをそれぞれ制御するための集中制御機7とが備えられている。」(【0019】)

イ 「【0048】
次に、図4(b)のテーブル説明図に示す設定情報が図3のブロック図に示す棟制御機4a、4a、・・・、4b、4b、・・・の記憶部45に予め記憶されている状態において、第2の実施例における第1の呼出動作として、各棟(A棟、B棟)フロアのうち、ここでは、A棟2階フロアに居る来訪者が所望の居住者を呼び出す、例えば、A棟201号室内に在室中の居住者を呼び出すにあたり、棟集合玄関機3aの操作部30を使用して所定の呼出操作を行う、例えば、操作部30を構成するキーボタン(図示せず)を操作して呼出先の住戸の居室番号を入力すると、この操作情報が棟集合玄関機制御回路34の制御により表示部31に表示される。また、操作部30にて呼出操作を行った来訪者は、表示部31の表示内容を確認した後、同様に操作部30を構成する呼出ボタン(図示せず)を押下する。さらに、前述までの呼出操作を検出した棟集合玄関機制御回路34では、操作部30の操作情報である居室番号に自棟集合玄関機に割り当てられている棟集合玄関機番号を付加させた呼出信号S11aを生成する。この呼出信号S11aは、棟集合玄関機制御回路34から通信回路36、棟集合玄関機ラインL3a、A棟2階フロアに設置された棟制御機4aの通信回路42を介して棟制御機制御回路40へと伝送される。」(【0048】)

ウ 「

」(図3)


(5)甲5について
甲5には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マンション等の集合住宅における監視通話システム、特に、複数のロビーインターホンを設けている集合住宅監視通話システムに関する。
【0002】
【従来の技術】近時の集合住宅では、各住戸に設置したインターホン機能付きの住宅情報盤と、共同玄関に設置したロビーインターホンと、管理人室に設置したインターホン機能付きの警報監視盤とを、通話線と制御用の信号線とを介して接続し、集合住宅監視通話システムを構成している。
【0003】このシステムの基本動作を説明すると、来訪者はロビーインターホンから住戸番号を入力して、警報監視盤を介して、目的とする住戸を呼び出す。これに対して、その住戸の住宅情報盤では、呼出音を鳴動させる。ここで、ハンドセットを取り上げるなどで応答すれば、玄関先の来訪者との通話が可能になり、集合住宅内への立ち入りを許可するときには、ボタン操作などにより共同玄関の解錠を指示すれば、警報監視盤が玄関に設置された電気錠などを解錠する。また、来訪者は管理人を呼び出すこともでき、この場合も同様の操作をすれば、ロビーインターホンと警報管理盤との通話が可能になる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記従来の集合住宅監視通話システムでは、集合住宅が大規模になると、以下のような問題が生じていた。図9と図10は、その問題を説明するための図である。図9は、同じ階において通路(廊下)がない、階段(及びエレベータ)独立型の住宅を示している。図中、MKは管理人室等に設置される警報監視盤、LB(LB1?LB3)は複数ある共同玄関の各々に設けられたロビーインターホン、JKは各住戸に設置された住宅情報盤を示している。
【0005】このタイプの住宅では、各共同玄関から訪問できる住戸が限定されている。例えば、この図では、ロビーインターホンLB1が設置されている共同玄関からは、住戸(101,102,201,202,301,302号室)のみが訪問できる。ところが、各ロビーインターホンLB1?LB3からは、すべての住戸を個別に呼び出しできるようになっており、例えば、ロビーインターホンLB1から306号室の住戸を呼出できるが、その住戸の住宅情報盤JKから、共同玄関の解錠指示があったとしても、通話中であったロビーインターホンLB1が設置された共同玄関の解錠がされるのみであり、その玄関から階段1を昇っても、306号室を訪問することはできなかった。また、306号室の住宅情報盤JKから、ロビーインターホンLB1に、ロビーインターホンLB3から再度呼び出すことを指示しなければならず、面倒であった。
【0006】図10(a)は、複数の棟(図では、1棟?8棟)からなるタイプの住宅を示している。このタイプの住宅でも、各棟のロビーインターホンLBから、他棟の住戸の住宅情報盤JKが呼び出すことができてしまうという問題があった。図示したように、1台の警報監視盤MKによって複数の棟を管理する場合、2桁の階番号と2桁の部屋番号からなる住戸番号を、1桁の棟番号と1桁の階番号と2桁の部屋番号で構成すればよいが、10階(2桁)以上あるいは10棟(2桁)以上の住宅では、住戸番号の桁数が足りなくなるので対処できない。
【0007】そこで、同図(b)に示すように、各棟に警報監視盤MKを設置し、各警報監視盤MKを、群管理インタフェースIFを介してセンタ監視盤CKに接続し、群管理システムを構成すればよいが、センタ監視盤CKを設置する必要があり、また、棟毎に警報監視盤MKを設置する必要があるため、大幅なコストアップになるという問題がある。
【0008】本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、各ロビーインターホンから呼び出しできる住戸を限定し、また、1台の警報監視盤で、大規模な集合住宅の管理が出来るようにした集合住宅監視通話システムを提供することを目的としている。」(【0001】-【0008】)

イ 「【0020】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る集合住宅監視通話システムの基本構成を示したブロック図である。管理人室や警備室等に設置した警報監視盤1と、共同玄関に設置したロビーインターホン2と、各住戸に設置した住宅情報盤3とは、信号線L1と通話線L2とを介して接続されており、それぞれの間での通話を可能としている。
【0021】警報監視盤1には、この警報監視盤1とともにシステム全体を制御する制御手段を構成するホストCPU10と、信号線L1を通じて制御信号を送受する信号送受信部11と、この信号送受信部11による伝送を制御する伝送CPU12と、通話線L2を通じたインターホン通話を制御するとともに、スピーカSP1からの呼出音などの出力を行うインターホン回路部13と、インターホン通話のためのハンドセット14と、液晶画面や各種表示灯などで構成される表示回路部15と、ファンクションキーやテンキー等で構成されたキー入力部16と、書換え可能とした読み出し専用メモリであるフラッシュメモリ17(フラッシュEEPROM)と、データの読み出しと書き込みが随時可能なS-RAM18(スタティックRAM)とを備える。
【0022】ロビーインターホン2には、ロビーインターホン2の各部を制御するCPU20と、信号線L1を通じて制御信号を送受する信号送受信部21と、通話線L2を通じたマイクMI2とスピーカSP2によるインターホン通話を制御するインターホン回路部22と、液晶画面、7セグメント表示器、各種表示灯などで構成され、住戸番号などを表示する表示回路部23と、テンキーや呼出ボタン等で構成されたキー入力部24と、このロビーインターホン2に割り当てられたアドレスを設定するためのディップスイッチ25とを備える。
【0023】また、各住戸に設置された住宅情報盤3には、住宅情報盤3の各部を制御するCPU30と、信号線L1を通じて制御信号を送受する信号送受信部31と、通話線L2を通じたインターホン通話を制御するとともに、スピーカSP3からの呼出音などの出力を制御するインターホン回路部32と、インターホン通話をするためのハンドセット33と、液晶画面や各種表示灯などで構成された表示回路部34と、テンキー等で構成されたキー入力部35と、この住宅情報盤3に割り当てられたアドレスを設定するためのディップスイッチ36とを備える。
【0024】警報監視盤1は、信号線L1を通じ、ロビーインターホン2から住戸の呼出信号を受信したときには、呼び出す住戸の住宅情報盤3のアドレスを指定し、信号線L1を通じて呼出信号を送出する。住宅情報盤3では、自己宛の呼出信号を検出すれば、スピーカSP3から呼出音を出力し、ハンドセット33を取り上げて応答すれば、ロビーインターホン2と住宅情報盤3の間では、通話線L2を通じて、双方のインターホン回路部22,32による通話が可能になる。通話中の住宅情報盤3は、信号送受信部31から信号線L1を通じて、解錠信号を送出すれば、警報監視盤1は、ロビーインターホン2に近設された電気錠(不図示)を解錠して、呼び出した人が共同玄関から住宅内に入ることを許可する。
【0025】警報監視盤1は、各住戸の住戸番号と、その住戸の住宅情報盤のアドレスとを対応させて記憶するとともに、ロビーインターホン2のアドレスと、そのロビーインターホン2から呼出可能な住戸のグループ番号とを対応させて記憶した記憶手段とを備えており、ここでは、フラッシュメモリ17及びS-RAM18に設けられる。」(【0020】-【0025】)

ウ 「【0030】…(中略)…各ロビーインターホンLB1?LB6は、同じ棟に属する住戸のみを呼び出すことができるようになっている。また、警報監視盤MKを設置した管理棟では、ロビーインターホンLB6(アドレス6)から、いずれの棟に属する住戸であっても呼出可能になっている。」(【0030】)

エ 「【0045】なお、ここでは、フラッシュメモリ17とS-RAM18に記憶されたデータを比較するようにしているが、フラッシュメモリ17に記憶されたデータと、ホストCPU10内部に持つデータとを比較するようにしてもよい。次に、本発明に係る集合住宅監視通話システムの別の構成を、図7にブロック図で示す。
【0046】図1に示した構成と比べ、警報監視盤1と、各住戸の住宅情報盤3は、同じ構成になっている。但し、警報監視盤1のフラッシュメモリ17及びS-RAM18には、住戸番号テーブルT1と棟番号テーブルT2を設けていない。ロビーインターホン2Aは、図1の構成に加えて、書換え可能とした読み出し専用メモリであるフラッシュメモリ26と、データの読み出しと書き込みが随時可能なS-RAM27とを備えており、各住戸の住戸番号と、その住戸の住宅情報盤のアドレスとを対応させて記憶するとともに、このロビーインターホン2Aから呼出可能な住戸のグループ番号を記憶した記憶手段を、これらフラッシュメモリ26及びS-RAM27に設けている。
【0047】記憶手段の構成は、図2(b)に示した住戸番号テーブルT1、同図(a)に示した棟番号テーブルT2と同様である。したがって、棟番号テーブルT2には、そのロビーインターホン2Aはいずれのグループに属する住戸であっても呼出可能であることを記憶できるようにもなっている。ロビーインターホン2Aの棟番号テーブルT2には、図1において警報監視盤1に記憶しているように、他のロビーインターホンが呼出可能である住戸のグループは登録しなくてもよいが、すべてのロビーインターホン2Aに同じ構成のテーブルT2が使用できるようにする場合は、図2(a)に示したテーブル構成にすればよい。
【0048】各ロビーインターホン2Aに、テーブルT1,T2を設ければ、図3に示したシステム構成では、各棟(1棟?8棟)に設けられたロビーインターホンLB1?LB5(2A)は、同じ棟に属する住戸のみを呼び出すことができる。また、管理棟に設置されたロビーインターホンLB6からは、いずれの棟に属する住戸であっても呼出可能にすることができる。
【0049】また、図9に示した階段独立型の集合住宅であっても、各ロビーインターホンLB1?LB3(2A)のテーブルT2,T1に、各々から呼出可能な住戸を登録しておけば、その呼び出した玄関から集合住宅内に入ると、確実に目的とする住戸を訪問できることになる。ロビーインターホン2Aでは、登録手段を構成するキー入力部24によって、住戸番号テーブルT1に、各住戸の住戸番号、その住戸の住宅情報盤3のアドレスが登録できるとともに、棟番号テーブルT2に、そのロビーインターホン2Aから呼出可能な住戸の棟番号(グループ番号)が登録できる。なお、この登録は、キー操作によるもの以外に、ディップスイッチなどで出来るようにしてもよい。
【0050】次に、ロビーインターホン2Aの動作を、図8のフローチャートを用いて説明する。制御手段であるCPU20は、操作手段を構成するキー入力部24によって、呼び出す住戸の住戸番号が入力操作され、更に、呼出ボタンが操作されると(300)、S-RAM18に記憶された棟番号テーブルT2を参照して、入力された住戸番号の住戸が属する棟番号が記憶されているかをチェックする。同じ棟番号が記憶されているか、全棟の呼出を可とすることが記憶されていれば、次に住戸番号テーブルT1を参照する(302?304)。すなわち、棟番号テーブルT2に、いずれの棟(グループ)に属する住戸であっても呼出可能であることが記憶されている場合も、住戸番号テーブルT1を参照する。
【0051】住戸番号テーブルT1に、入力された住戸番号が記憶されていれば、その住戸番号に対応して記憶されているアドレスを指定して、警報監視盤1を介して、住宅情報盤3を呼び出す(305,306)。ところが、入力された住戸番号が属する棟番号と、棟番号テーブルT2に記憶されている棟番号とが一致せず、全棟呼出可の設定でもない場合(303のN)、住戸番号テーブルT1に、入力された住戸番号が記憶されていない場合(305のN)などでは、このロビーインターホン2Aにおいて、呼出不可を報知する(307)。
【0052】この報知手段には、呼出ができないことを文字や表示灯によって表示する表示回路部23や、スピーカSP2からアラーム音や音声メッセージを出力するインターホン回路部22がある。なお、ここでは、ロビーインターホン2Aから、警報監視盤1を介して住宅情報盤3を呼び出す場合を説明したが、ロビーインターホン2Aでは、住宅情報盤3のアドレスを指定できるため、住宅情報盤3を、直接呼び出すようにしてもよい。」(【0045】-【0052】)

オ 「

」(図3)

カ 「

」(図7)

キ 「

」(図9)

ク 「

」(図10)

(6)甲6について
甲6には、以下の事項が記載されている。
ア 「[従来の技術]
最近、マンション等の集合住宅においては、各住戸と居住者の安全と快適、便利な住環境を提供するとともにその集合住宅の合理的かつ適切な維持管理を行なう等のための種々の住宅管理システムが採用されている。
このシステムは、例えば、管理人室または監視センタ等に管理人親機、各住戸ごとに住戸端末器(ホームコントローラまたは住宅情報盤)、さらに集合玄関に集合玄関機等の各機器を設置するとともに、これらの各機器間を2線の通話線および2線の伝送線等で接続してなるもので、各住戸端末器と集合玄関機または管理人親機との間で通話を行なうインターホン機能、住戸端末器からの指令により集合玄関機を介して集合玄関のドアを解錠または開扉する機能、各住戸に設けられこの住戸端末器に接続された温度、煙などの火災センサ、ガス漏れセンサ、非常ボタンおよび防犯スイッチ等のセンサ類からの信号に応じて警報を発生したり管理人親機に警報の種類および発生住戸を表示するセキュリティ機能、ならびに管理人親機から単数または複数の所望の住戸端末器を指定して緊急またはサービス等の各種放送を行なう放送機能等、種々の機能を有している。
このような住宅管理システムすなわち集合住宅情報システムにおいては、伝送をバイナリィデータで行なうが、住戸番号は住人、管理人および訪問者等の便宜のため10進数で表示および入力するようになっている。このため、住戸端末器のアドレスを3ビットずつに区切って住戸番号と住戸端末器のアドレスとを一致させようとすると、8または9を含む住戸番号が使用できないので住戸番号を表示する桁数が増加し、一方、アドレスを4ビットずつに区切った場合は、16進表示でA?F(10進数の10?15)を含む端末器アドレスが使用できないので1つのシステムに接続し得る端末器数が減少するという不都合が生じる。そこで、従来の集合住宅情報システムにおいては、一般に、住戸番号と住戸端末器とのアドレスを任意に対応させ、管理人親機および集合玄関機のROM上に住戸番号対住戸端末器アドレステーブル(以下、住戸番号テーブルという)を書き込んで、管理人または訪問者等が10進数で入力した住戸番号をこのテーブルで変換して所望の住戸端末器を呼び出すようにしている。」(1頁右下欄16行-2頁右上欄20行)

(7)甲7について
甲7には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0016】
請求項1の発明によれば、ブリッジ部を介して接続される第1及び第2のネットワークのうち、通信容量が相対的に大きいネットワークから、相対的に小さいネットワークへの通信トラフィック量を制限しているので、通信容量が相対的に小さいネットワークの通信トラフィックが過負荷になるのを防止でき、通信品質を高品質にく保つことができる。したがって、搬送波デジタル伝送によりデータ信号を送受信するインターホンシステムと、Ethernet(登録商標)のようなLANで構成されるインターホンシステムのように通信容量が異なるインターホンシステムを混在させることができ、また集合住宅の住戸棟毎に住戸インターホンが伝送線を介して接続された複数のネットワークの間をEthernet(登録商標)などのLANで接続し、複数のネットワークに接続された通信端末の間で高品質な通信を行うことができる。」(【0016】)

イ 「【0025】
各々のインターホンシステムA,Bは、それぞれ、少なくとも音声通話手段を備えた複数台の通信端末1と、通信端末間の通話を制御する制御装置2とを、一対の平衡ペア線からなる伝送線L1を介して接続することによって構成され、複数台の通信端末1、制御装置2、及び通信端末1と制御装置2の間を接続する伝送線L1から第1のネットワークが構成されている。またインターホンシステムA,Bの制御装置2,2は、Ethernet(登録商標)のようなLANのスイッチング交換部(Hub)3を介して接続されており、両インターホンシステムA,Bの通信端末1間で通話が行えるようになっている。なお、各インターホンシステムA,Bの通信端末1としては、集合住宅の各住戸に設置される住戸用インターホンや、集合住宅の共同玄関(ロビー)に設置されるロビーインターホンや、集合住宅の管理事務室に設置される管理事務室機などがある。」(【0025】)

ウ 「【0032】
一方、制御装置2は、図1に示すように、それぞれ異なる系統の通信端末1が伝送線L1を介して接続される複数のブリッジ部21と、通信端末1間の呼制御を行う呼制御/通信容量管理部22と、複数のブリッジ部21及び呼制御/通信容量管理部22が接続されるとともに、外部のスイッチング交換部3が接続されて、伝送データの中継を行うスイッチング交換部(Hub)23とを備えている。尚、スイッチング交換部23は、RJ45モジュラプラグが着脱自在に接続される接続ポート(図示せず)を複数備えており、ブリッジ部21からのケーブルに接続されたRJ45モジュラプラグよりなる接続手段(図示せず)がスイッチング交換部23の接続ポートに接続されることで、ブリッジ部21がスイッチング交換部23に着脱自在に接続されるようになっており、システム構成に合わせてブリッジ部21の数を容易に増減することができる。」(【0032】)

エ 「【0036】
このようにブリッジ部21は、通信端末1との間でデータ信号を搬送波デジタル伝送する第1のネットワークと、Ethernet(登録商標)のようなLANからなる第2のネットワークとの間で通信方式の変換を行うのであるが、本実施形態の場合は第1のネットワークの通信容量が、第2のネットワークの通信容量に比べて小さいため、第2のネットワークから流入した通信データが、第1のネットワークへ無制限に転送された場合、通信容量が相対的に小さい第1のネットワークの通信トラフィックが過負荷になってしまう。このとき、通信容量が相対的に大きい第2のネットワークから第1のネットワークに流入した音声や映像などのデータ信号が破棄されてしまい、通信品質が低下するという問題があった。」(【0036】)

オ 「

」(図1)


5 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1発明との対比
(ア)『複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステム』について

本件明細書の「複数の住居棟(本例では住居A棟?住居E棟)で構成されるマンション等の集合住宅」(【0016】)との記載に鑑みれば、本件発明1の『集合住宅』はマンションを包含するものと認められる。したがって、甲1発明の「マンション棟」及び「複数棟のマンション棟」は、本件発明1でいう『住居棟』、『複数の住居棟で構成される集合住宅』に相当する。
そして、甲1発明は「複数棟のマンション棟を管理センター棟で管理できる群管理システム」であって、各マンション棟はカメラ付ロビーインターホン等を備えており、インターホンの使用が想定されていることは明らかであるから、本件発明1と甲1発明とは、『複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステム』といえる点で共通する。

(イ)『前記住居棟の各々には、』『各居室に設置される居室親機』『が備えられ』ることについて

本件明細書には「複数の住居棟(本例では住居A棟?住居E棟)で構成されるマンション等の集合住宅」(【0016】)、「居室親機30は、集合住宅の各住戸内に設置されている。」(【0019】)との記載があり、甲1発明は、「各マンション棟は、」「住宅情報盤」を備えるものであり、マンションにおける住宅とは、上記住戸に対応するものと認められるため、本件発明1と甲1発明とは、『住居棟の各々には、住戸に設置される設備が備えられる』点で共通する。

(ウ)『前記住居棟の各々には、』『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部と、前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部と、を有するとともに、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機』『が備えられ』ることについて

甲1発明は、「各マンション棟は、」「カメラ付ロビーインターホン」を備えるものであり、マンションにおけるロビーとは、本件発明1でいう『集合玄関』に対応するものと認められるため、本件発明1と甲1発明とは、『住居棟の各々には、集合玄関に設置される設備が備えられる』点で共通する。

(エ)『前記住居棟の各々には、』『インターホン回線を介して自棟内の前記各居室の居室親機と前記集合玄関機とを通信可能に接続する棟制御部』『が備えられ』ることについて

甲1発明は、「各マンション棟は、」「制御装置」を備え、「該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとの間は、FCPEV線を使用して、該制御装置や分岐器を介して接続されて」いるものであって、各マンション棟において、上記FCPEV線を介してインターホンの通信が行われているものと認められるから、甲1発明の『FCPEV線』は、本件発明1の『インターホン回線』に対応する。
そうすると、上記(イ)、(ウ)も考慮すると、本件発明1と甲1発明とは、『住居棟の各々には、インターホン回線を介して自棟内の住戸に設置される設備と集合玄関に設置される設備とを通信可能に接続する設備が備えられる』点で共通する。

(オ)『前記複数の住居棟は、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている』ことについて

甲1発明は、「複数棟のマンション棟の制御装置間は、LAN配線としてスイッチングHUB接続されて」おり、そのように複数棟のマンション棟間が通信可能に接続されている構成は「ネットワーク」と称することができるため、本件発明1と、甲1発明とは、『複数の住居棟は、通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている』点で共通する。

(カ)一致点及び相違点
以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で、一致ないし相違する。
<一致点>
「複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステムであって、
前記住居棟の各々には、
住戸に設置される設備と、
集合玄関に設置される設備と、
インターホン回線を介して、自棟内の前記住戸に設置される設備と前記集合玄関に設置される設備とを通信可能に接続する設備と、
が備えられ、
前記複数の住居棟は、通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている
インターホンシステム。」

<相違点1>
「住戸に設置される設備」が、本件発明1では『各居室に設置される居室親機』であるのに対し、甲1発明では「住宅情報盤」である点。

<相違点2>
「集合玄関に設置される設備」が、本件発明1では『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部と、前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部と、を有するとともに、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機』であるのに対し、甲1発明では「カメラ付ロビーインターホン」であって、どのような構成であるのか何ら特定されていない点。

<相違点3>
上記<相違点1>、<相違点2>に関連して、本件発明1の『棟制御部』が『居室親機』と『集合玄関機』とを通信可能に接続するのに対し、甲1発明の「制御装置」が通信可能に接続するのは「住宅情報盤」と「カメラ付ロビーインターホン」である点。

<相違点4>
本件発明1において『複数の住居棟』に係る『ネットワーク』では、『汎用プロトコルに従って通信が行われる』のに対し、甲1発明において「マンション棟」間のLAN配線を介した通信は、どのようなプロトコルに従うものであるか特定されていない点。

イ 甲1発明からの本件発明1の容易想到性の判断
ここで、事案に鑑み、上記相違点2について、先に検討する。

(ア)甲3の記載内容
甲3の記載によれば、集合住宅インターホンシステムとして、自棟内の共同玄関機と居室親機と制御機とはケーブルL1を介してバス接続されており(【0011】、図1)、当該共同玄関機は、操作部や居室親機のアドレス番号が書き込まれた不揮発性メモリと、CPU等を備え(【0013】)、該制御機と同様に、書き込まれたアドレス番号をもとに呼び出し、通話を行うことができることが示されている(【0011】、【0021】)。
ここで、当該居室親機は、住戸毎に設置されている(【0011】)点で、甲1発明の「住宅情報盤」と対応したものであるといえる。そして、当該共同玄関機は、共同玄関毎に設置されている(【0011】)点では、甲1発明の「カメラ付ロビーインターホン」と対応し、さらに、当該制御機は、自棟内の共同玄関機、居室親機のいずれとも接続されており、他の棟内の制御機とも接続されている点では、甲1発明の「制御装置」と対応したものといえる。
しかしながら、甲3の集合住宅インターホンシステムと甲1発明の群管理システムとでは、甲3に記載の棟内において居室親機と共同玄関機との間がバス接続であるのに対し、甲1発明の棟内において該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとの間が該制御装置を介して接続されている点で、明らかにシステム構成が異なっている。

(イ)甲5の記載内容
甲5には、大規模な集合住宅に対し、複数のロビーインターホンを設けている集合住宅監視通話システムであって(【0001】、【0008】)、各ロビーインターホンがそこから訪問可能な住戸の住宅情報盤のみ呼出可能とした図10(b)で示される従来システムにおいては警報監視盤MKを棟毎に設置する必要があるため大幅なコストアップになるという問題に鑑み(【0004】-【0007】)、各ロビーインターホンから呼び出しできる住戸を限定し、また、1台の警報監視盤で、大規模な集合住宅の管理が出来るようにすることを目的とすることが示されている(【0008】)。そして、該集合住宅監視通話システムは、管理人室や警備室等に設置した警報監視盤と、共同玄関に設置したロビーインターホンと、各住戸に設置した住宅情報盤とが信号線L1と通話線L2とを介して接続されており(【0045】、図7、【0046】、【0020】)、該ロビーインターホンが、各部を制御するCPU、信号線L1を通じて制御信号を送受する信号送受信部、テンキーや呼出ボタン等で構成されたキー入力部、住戸番号とその住宅情報盤のアドレスとを対応させた住戸番号テーブル及び棟番号テーブルを記憶する記憶手段を備え(【0022】、【0046】、【0047】)、警報監視盤を介さずに、住宅情報盤を直接呼び出すようにしてもよい(【0052】)ことが示されている。
ここで、当該住宅情報盤、当該ロビーインターホンは、それぞれ、甲1発明の「住宅情報盤」、「カメラ付ロビーインターホン」と対応し、そして、当該警報監視盤は、ロビーインターホン、住宅情報盤のいずれとも接続されており、ロビーインターホンから、住宅情報盤を呼び出す際に介されうる点、さらには、【0030】に示されるように、他の棟との通信の際に介されうる設備である点では、甲1発明の「制御装置」に対応するものということができる。
しかしながら、甲5の集合住宅監視通話システムと甲1発明の群管理システムとでは、甲5のシステムでは住宅情報盤と共同玄関機との間が信号線L1等で直接的に接続されるのに対し、甲1発明では、棟内において、該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとの間は、該制御装置を介している点で、明らかにシステム構成が異なっている。

(ウ)甲6の記載内容
甲6の特に[従来の技術]欄の記載によれば、住宅管理システム(集合住宅情報システム)において、各機器(住宅端末器や集合玄関機等)間は伝送線等で直接つながっており、集合玄関機は、10進数で入力した住戸番号をROM上の住戸番号対住戸端末器アドレステーブルで変換して所望の住宅端末器(住宅情報盤)を呼び出すことが示されている。
ここで、甲6の当該集合玄関機、当該住宅情報盤は、それぞれ、甲1発明の「カメラ付ロビーインターホン」、「住宅情報盤」に対応したものであるといえるところ、甲6には、甲1発明でいう各マンション棟の「制御装置」については何ら開示がないから、甲6の住宅管理システムと、甲1発明の群管理システムとは、明らかにシステム構成が異なっている。

(エ)甲1発明と甲3、甲5及び甲6に記載された技術的事項との組み合わせ
甲1発明は、カメラ付ロビーインターホンと住宅情報盤との間に制御装置を介するシステム構成であって、ロビーインターホン(もしくは、共同玄関機、集合玄関機)と住宅情報盤(もしくは、居室親機)が直接的な接続関係を有する甲3、甲5、甲6のシステム構成とは、明らかに異なっている。このようなシステム構成の違いに起因し、甲1発明では、カメラ付ロビーインターホンから住宅情報盤の呼び出しを行う際、必ず制御装置が関与し、何らかの処理を行っていると解するのが自然であるところ、甲3、甲5、甲6のように制御装置による処理を要さない場合に比べ、甲1発明においては、制御装置で処理可能な分、ロビーインターホンに求められる機能も軽減されるものと認められる。
そうすると、甲1発明のシステムにおけるカメラ付ロビーインターホンとして、住宅情報盤の呼び出しのために制御装置を要しないロビーインターホン(甲3、甲5、甲6)を採用することに、合理的な理由があるとは認められない。

また、仮に、甲1発明のカメラ付ロビーインターホンとして、上記ロビーインターホン(甲3、甲5、甲6)を採用したとしても、本件発明1の『集合玄関機』の『前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部』を備えることにはならない。上記ロビーインターホン(甲3、甲5、甲6)は、ロビーインターホンと住宅情報盤(居室親機)との接続関係(例えば、甲3でいうバス接続。)のために、ロビーインターホンの送信した信号が全ての住戸に自動的に伝達されるものであるが、甲1発明のように制御装置を介した場合、ロビーインターホンからの信号は全ての住戸に送信されるとは限らず、むしろ、制御装置の機能により、呼び出し対象の住戸のみに送信されると解するのが自然である。したがって、甲1発明に当該周知のロビーインターホンを採用したとしても、呼び出し対象の住戸番号に対応するアドレスを各住戸に送信する(本件発明1でいう『前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する』)ことはなく、本件発明1と同等の機能を持つ『送信部』を有する構成には至らない。

さらに、甲5では、住宅情報盤を直接呼び出すようにもできるロビーインターホンが、あえて警報監視盤を介して住宅情報盤を呼び出すことも示している(【0052】)ものの、各棟に警報監視盤を備えることは、甲5の【0007】、【0008】で示される課題に反することとなるから、甲1発明において、各棟に制御装置を備えるシステム構成のまま、カメラ付ロビーインターホンとして、甲5に示される、住宅情報盤を直接呼び出し可能なロビーインターホンを採用することが想定されないことは明らかであって、『住居棟の各々』が『棟制御部』を備える本件発明1には至らない。

(オ)甲1発明と甲2、甲4及び甲7に記載された技術的事項との組み合わせ
甲2及び甲7では、ロビーインターホンがどのような構成をとるのかについて何ら開示がないため、本件発明1の『変換処理』を行っているとは認められない。
甲4では、呼出信号には居室番号が含まれることが開示されており(【0048】)、各種集合玄関機が、本件発明1でいう『変換処理』を行う必要がない。
したがって、甲1発明に甲2、甲4及び甲7に記載された技術的事項を適用したとしても、本件発明1の『変換処理』を備えるには至らない。

(カ)甲1発明からの本件発明1の容易想到性の判断の結論
以上によれば、当該相違点2に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲2-7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易になし得るものではなく、そのため、他の相違点(相違点1、3、4)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2-7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易になし得るものではない。

なお、申立人は、甲3、甲5及び甲6から、本件発明1の『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部と、前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部と、を有するとともに、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機』が周知である旨主張しているので以下、検討する。
甲3、甲5及び甲6に記載された技術的事項から、インターホン技術分野において、集合玄関機(もしくは、ロビーインターホン、共同玄関機)と居室親機(もしくは、住宅情報盤)が直接的に接続されているシステム構成をとる前提であれば、集合玄関機が、該居室親機を直接呼び出す機能を有すること、すなわち、本件発明1でいう『集合玄関機』が『訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成され』ることは、周知であると認められる。
しかしながら、そのような集合玄関機が、異なるシステム構成、とりわけ甲1発明のようなシステム構成で採用されることについて、甲3、甲5及び甲6には開示も示唆もないから、甲1発明のシステム構成を前提とするロビーインターホンとして、上記周知のロビーインターホンを採用することまでが、当業者にとってよく知られていたとまではいえず、また、前記(エ)で述べたように、本件発明1でいう『送信部』を有しているともいえないから、本件発明1の『集合玄関機』が周知であるとまではいえない。
よって、当該申立人の主張は採用できない。

ウ 本件発明1と甲2発明との対比、判断
(ア)『複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステム』について

甲2の「1号棟」、「2号棟」及び「3号棟」には特段の説明がないが、甲2の書名が「マンションHA Dシリーズ用 共用システム 施行説明書」であることに鑑みれば、前記「1号棟」ないし「3号棟」はマンション棟であると認められる。そして、本件明細書の「複数の住居棟(本例では住居A棟?住居E棟)で構成されるマンション等の集合住宅」(【0016】)との記載との記載に鑑みれば、本件発明1の『集合住宅』はマンションを包含するものと認められる。したがって、甲2発明の「1号棟」と「2号棟」と「3号棟」のそれぞれは、本件発明1でいう『住居棟』に相当し、甲2発明の「1号棟と2号棟と3号棟」は、本件発明1でいう『複数の住居棟で構成される集合住宅』に相当する
そして、甲2発明は「1号棟と2号棟と3号棟からなるシステム」であって、各棟は共同玄関にカメラ付ロビーインターホン等を備えており、インターホンの使用が想定されていることは明らかであるから、本件発明1と甲2発明とは、『複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステム』といえる点で共通する。

(イ)『前記住居棟の各々には、』『各居室に設置される居室親機』『が備えられ』ることについて

本件明細書には「居室親機30は、集合住宅の各住戸内に設置されている。」(【0019】)との記載があり、甲2発明は、「各棟は、」「住戸内に、カラーカメラ付ドアホン子機が接続される住宅情報盤」を備えるものであって、該住宅情報盤は、該子機に対する親機と称することができるため、本件発明1と甲2発明とは、『住居棟の各々には、住戸に設置される親機が備えられる』点で共通する。

(ウ)『前記住居棟の各々には、』『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部と、前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部と、を有するとともに、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機』『が備えられ』ることについて

甲2発明は、「各棟は、」「共同玄関にカメラ付ロビーインターホン」を備えるものであり、マンションにおける共同玄関とは、本件発明でいう『集合玄関』に対応するものと認められるため、本件発明1と甲2発明とは、『住居棟の各々には、集合玄関に設置される設備が備えられる』点で共通する。

(エ)『前記住居棟の各々には、』『インターホン回線を介して自棟内の前記各居室の居室親機と前記集合玄関機とを通信可能に接続する棟制御部』『が備えられ』ることについて

甲2発明は、「各棟は、」「管理室に制御装置」を備え、「該住宅情報盤と該カメラ付ロビーインターホンとは、FCPEV線を使用し、該制御装置や分岐器を介して接続されて」いるものであって、各棟において、上記FCPEV線を介してインターホンの通信が行われているものと認められるから、甲2発明の「FCPEV線」は、本件発明1の『インターホン回線』に対応する。
そうすると、上記(イ)、(ウ)も考慮すると、本件発明1と甲2発明とは、『住居棟の各々には、インターホン回線を介して自棟内の住戸に設置される親機と集合玄関に設置される設備とを通信可能に接続する設備が備えられる』点で共通する。

(オ)『前記複数の住居棟は、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている』ことについて

甲2発明は、「各棟の制御装置間は、LANケーブルを使用し、スイッチングハブを介して接続されて」おり、そのように1号棟と2号棟と3号棟が通信可能に接続されている構成は「ネットワーク」と称することができるため、本件発明1と、甲2発明とは、『複数の住居棟は、通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている』点で共通する。

以上を踏まえると、本件発明と甲2発明とは、次の点で、一致ないし相違する。
<一致点>
「複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステムであって、
前記住居棟の各々には、
住戸に設置される親機と、
集合玄関に設置される設備と、
インターホン回線を介して自棟内の住戸に設置される親機と集合玄関に設置される設備とを通信可能に接続する設備と、
が備えられ、
前記複数の住居棟は、通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている
インターホンシステム。」

<相違点1>
「親機」が、本件発明1では各居室に設置される『居室親機』であるのに対し、甲2発明では「住宅情報盤」であり、各居室内に配置されているか明らかでない点。

<相違点2>
「集合玄関に設置される設備」が、本件発明1では『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部と、前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部と、を有するとともに、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機』であるのに対し、甲2発明では「カメラ付ロビーインターホン」であって、どのような構成であるのか何ら特定されていない点。

<相違点3>
上記<相違点1>、<相違点2>に関連して、本件発明1の『棟制御部』が『居室親機』と『集合玄関機』とを通信可能に接続するのに対し、甲2発明の「制御装置」が通信可能に接続するのは「住宅情報盤」と「カメラ付ロビーインターホン」である点。

<相違点4>
本件発明1において『複数の住居棟』に係る『ネットワーク』では、『汎用プロトコルに従って通信が行われる』のに対し、甲2発明において、棟間でLANケーブルを使用し、スイッチングハブを介して行われる通信が、どのようなプロトコルに従うものであるか特定されていない点。

ここで、事案に鑑み、上記相違点2について、先に検討すると、甲2発明も、甲1発明と同様のシステム構成をとるものであるから、上述のイと同様、当該相違点2に係る本件発明1の構成は、甲2発明及び甲1、甲3-7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易になし得るものではなく、そのため、他の相違点(相違点1、3、4)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2発明及び甲1、甲3-7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易になし得るものではない。

エ 本件発明1と甲3発明との対比、判断
(ア)『複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステム』について

甲3発明の「集合住宅」は「複数の棟から構成される」ものであって、該「棟」及び該「集合住宅」は、本件発明1でいう『住居棟』、『複数の住居棟で構成される集合住宅』に相当する。
してみると、本件発明1の『インターホンシステム』と甲3発明の「集合住宅インターホンシステム」とは『複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステム』といえる点で共通する。

(イ)『前記住居棟の各々には、』『各居室に設置される居室親機』『が備えられ』ることについて

甲3発明は、「複数の棟から構成される集合住宅において、それぞれの棟内(同一システム内と同意)の住戸毎に設置されている居室親機」を1つの構成要素とするものであるから、甲3発明の「居室親機」は、本件発明1の『居室親機』に対応する。

(ウ)『前記住居棟の各々には、』『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部と、前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部と、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部と、を有するとともに、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機』『が備えられ』ることについて

a 『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部』について
甲3発明の「来訪者が(自棟の)住戸内に在室中の居住者または(自棟の)管理室内に在室中の管理人を呼び出して通話を行うための機能を有する共同玄関機」は、「来訪者による呼び出しのための操作が行われる呼出ボタン、テンキーボタン等から構成される操作部」を備えており、来訪者にとって、該「呼び出す」対象の「自棟の住戸」は、訪問先ということができるから、当該「操作部」は、本件発明1でいう『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部』に相当する。

b 『各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブルが記憶された記憶部』について
甲3発明の「共同玄関機」は、「居室親機、自共同玄関機、管理室親機、制御機のそれぞれのアドレス番号が書き込まれるEEPROM等から構成される不揮発性メモリ」を備え、前記aで述べたように、呼び出しのために操作部の操作を行うこと、さらに「該不揮発性メモリに書き込まれたアドレス番号をもとに呼び出し」を行うことができるため、該操作部で入力された、訪問先に係る何らかの情報と、居室親機等の機器を特定するための情報といえる、アドレス番号とを対応付ける情報が、該不揮発性メモリに記憶されていることは明らかであるので、本件発明1の『記憶部』と甲3発明の「不揮発性メモリ」とは、『訪問先に係る情報と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とを対応付ける情報が記憶された記憶部』である点で共通する。

c 『前記呼出テーブルに基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換処理する処理部』と『前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する送信部』について
上記bで述べたように、甲3発明の「共同玄関機」は、「該不揮発性メモリに書き込まれたアドレス番号をもとに呼び出し」を行うことができるから、操作部の操作により入力される情報から、不揮発性メモリに記憶された情報によってアドレス番号を取得し、該アドレス番号を用いて、呼び出しに係る通信が「ケーブルL1を介してバス接続された棟内の居室親機」に対して行われることは明らかであるから、本件発明1と甲3発明とは、『前記対応付ける情報に基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換』し、『前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する』構成を備える点で共通する。

d 『訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機』について
上記a-cより、本件発明1の『集合玄関機』と甲3発明の「共同玄関機」とは、『訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、訪問先に係る情報と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とを対応付ける情報が記憶された記憶部と、前記対応付ける情報に基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換し、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する構成を備え』る点で共通しており、いずれも、所望の居室親機を呼び出す機能が果たされるものであるから、『訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように』構成されているといえる。

(エ)『前記住居棟の各々には、』『インターホン回線を介して自棟内の前記各居室の居室親機と前記集合玄関機とを通信可能に接続する棟制御部』『が備えられ』ることについて

甲3発明は、「ケーブルL1を介してバス接続された棟内の居室親機、共同玄関機、管理室親機をそれぞれ制御する」ための「制御機4」を1つの構成要素として、「来訪者が通話を行う」ことが想定される集合住宅インターホンシステムであるから、該「ケーブルL1」は、本件発明1の『インターホン回線』に対応する。また、本件発明1の『棟制御部』と、甲3発明の「制御機」とは、『前記住居棟の各々には、』『インターホン回線を介して、自棟内の前記各居室の居室親機と前記集合玄関機とのいずれとも通信可能に接続する制御部』『が備えられ』る点で共通する。

(オ)『前記複数の住居棟は、汎用プロトコルに従って通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている』ことについて

甲3発明は、「ケーブルL2を介して接続された他の棟内の制御機および集中制御機の間で通信を行うための制御機4」を、各棟が構成要素として備えており、そのように複数棟の棟間が通信可能に接続されている構成は「ネットワーク」と称することができるため、本件発明1と、甲3発明とは、『複数の住居棟は、通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている』点で共通する。

以上を踏まえると、本件発明と甲3発明とは、次の点で、一致ないし相違する。
<一致点>
「複数の住居棟で構成される集合住宅に用いられるインターホンシステムであって、
前記住居棟の各々には、
各居室に設置される居室親機と、
訪問先の前記居室親機を呼び出す呼出操作が可能な呼出部と、訪問先に係る情報と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とを対応付ける情報が記憶された記憶部と、前記対応付ける情報に基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換し、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する構成とを備え、訪問先の前記居室親機を呼び出すための呼出制御を行うように構成された集合玄関機と、
インターホン回線を介して、自棟内の前記各居室の居室親機と前記集合玄関機とのいずれとも通信可能に接続する制御部と、
が備えられ、
前記複数の住居棟は、通信が行われるネットワークを介して互いに接続されている
インターホンシステム。」

<相違点1>
本件発明1の『集合玄関機』と甲3発明の「共同玄関機」に関し、「訪問先に係る情報と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とを対応付ける情報」が、本件発明1では『各居室の部屋番号と各居室の居室親機を特定する居室親機特定情報とが対応づけられた呼出テーブル』であるのに対し、甲3発明では「アドレス番号」とどのような情報が対応付けられているのか特定されていない点。また、「前記対応付ける情報に基づいて前記呼出部に入力された信号を呼び出し先の前記居室親機の前記居室親機特定情報に変換し、前記居室親機特定情報を自棟内の各前記居室親機に向けて送信する構成」が、本件発明1では『処理部』と『送信部』であることが特定されているのに対し、甲3発明では種々の処理を行う構成要素が特定されていない点。

<相違点2>
本件発明1の『棟制御部』が『自棟内の各居室の居室親機』と『集合玄関機』とを通信可能に接続するのに対し、甲3発明の「制御機」と、自棟の「居室親機」と「共同玄関機」とは、ケーブルL1にバス接続されており、システムにおける接続関係が異なる点。

<相違点3>
本件発明1において『複数の住居棟』に係る『ネットワーク』では、『汎用プロトコルに従って通信が行われる』のに対し、甲3発明において「他の棟」とケーブルL2を介した通信は、どのようなプロトコルに従うものであるか特定されていない点。

ここで、事案に鑑み、上記相違点2について、先に検討する。

甲3発明の集合住宅インターホンシステムにおいて、各棟の制御機は「ケーブルL1を介してバス接続された棟内の居室親機、共同玄関機、管理室親機をそれぞれ制御する」ものではあるが、具体的にどのような制御を行うのかは不明であること、共同玄関機と居室親機がバス接続されていること、また、共同玄関機が不揮発性メモリに書き込まれたアドレス番号をもとに呼び出しを行う機能が備わっていること、に鑑みれば、共同玄関機と居室親機間において、あえて制御機を介した通信を行うような接続関係にする必要性があるとは認められず、本件発明1の『棟制御部』のように『インターホン回線を介して自棟内の前記各居室の居室親機と前記集合玄関機とを通信可能に接続する』ようにすることの合理的理由が見いだせない。

また、本件発明1は、各棟において、共同玄関機が制御機を介さずに呼び出し機能が実現されている前提で、『棟制御部』が『自棟内の各居室の居室親機』と『集合玄関機』とを通信可能に接続する構成(相違点2に係る本件発明1の構成)を有するが、この構成は甲1、2、4、6、7に何ら示されていない。そして、甲5については、前記イ(イ)及びイ(エ)で上述したとおり、住宅情報盤を直接呼び出すようにもできるロビーインターホンから住宅情報盤を呼び出す際、警報監視盤を介すことを示してはいるものの、そもそも、該警報監視盤を各棟に設置しないようにロビーインターホンに呼び出し機能を持たせたものであるから、甲3発明に、各棟に制御機を備えるシステム構成のまま、甲5に記載された技術を適用する動機付けはなく、むしろ、その適用によって、甲3発明における制御機を各棟に備えないようにすることになるから、『住居棟の各々』が『棟制御部』を備える本件発明1に至らない。

よって、他の相違点(相違点1、3)について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明及び甲1、2、4-7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に想到し得るものではない。

なお、申立人は、上記相違点2について何ら触れずに、本件発明1は、甲3発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明できたものである旨主張するが、当該相違点2についての当審の見解は上述のとおりであるので、当該主張は採用できない。

(2)本件発明2ないし本件発明4について
本件発明2ないし本件発明4は、本件発明1に対して、さらに別の技術的事項を追加したものであるから、上記(1)に示した理由と同様の理由により、本件発明2ないし本件発明4は、甲1発明及び甲2-7に記載された技術的事項、甲2発明及び甲1、3-7に記載された技術的事項、甲3発明及び甲1、2、4-7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易になし得るものではない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件発明は、甲1発明及び甲2-7に記載された技術的事項、甲2発明及び甲1、3-7に記載された技術的事項、甲3発明及び甲1、2、4-7に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。


6 むすび
したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1-4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1-4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2021-01-21 
出願番号 特願2018-507817(P2018-507817)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (H04M)
最終処分 維持  
前審関与審査官 加内 慎也  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
谷岡 佳彦
登録日 2020-02-27 
登録番号 特許第6667611号(P6667611)
権利者 アイホン株式会社
発明の名称 インターホンシステム  
代理人 特許業務法人 信栄特許事務所  

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