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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03B
管理番号 1371038
審判番号 不服2015-15061  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-11 
確定日 2016-05-09 
事件の表示 特願2014-267054「前方透過型スクリーン、その製造方法及びその使用方法」拒絶査定不服審判事件〔未公開〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年12月29日の出願であって、平成27年2月12日付けで拒絶理由が通知され、同年3月18日付けで同年3月16日付けファクシミリ等に係る応対記録が作成され、同年3月27日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年5月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月11日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同時に早期審理に関する事情説明書が提出され、さらに同日付けで手続補正がなされ、同年10月2日に前置報告がなされたものである。

第2 平成27年8月11日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
本件補正は、補正前(平成27年3月27日付け手続補正書によるもの)の特許請求の範囲の請求項2につき、
「透明シートの表面上に、『多数の各正六角形を互いに画するための線を、薄膜により描くこと』により、『多数の各正六角形の内部の透明部分』が互いに前記線を介して隙間なく並ぶように配置されて成る前方透過型スクリーンであって、前記薄膜による線は、その線幅が0.1?1mmに形成されており、前記各正六角形の内部は、その長い方の対角線(最も長い対角線)が1?10mmに形成されている、前方透過型スクリーン。」
とあったものを、
「透明シートの表面上に、『多数の各正六角形を互いに画するための線を、可視光反射率が30?100%の薄膜により描くこと』により、『多数の各正六角形の内部の透明部分』が互いに前記線を介して隙間なく並ぶように配置されて成る、前記線の部分で画像をユーザー方向に反射させると共に前記線の各内部(各正六角形の内部)の透明部分で前方からの光をユーザー方向に透過させる前方透過型スクリーンであって、前記薄膜による線は、その線幅が0.1?1mmに形成されており、前記各正六角形の内部は、その長い方の対角線(最も長い対角線)が1?10mmに形成されている、前方透過型スクリーン。」
に補正する内容を含むものである(下線は請求人が付したとおりである。なお、請求項の記載における「」(括弧)は本審決文中の「」(括弧)と区別するため、本審決では『』とした。)。

2 補正の目的
本件補正は、補正前の請求項2において、「薄膜」とあったものを「可視光反射率が30?100%の薄膜」と補正すると共に、「前方透過型スクリーン」とあったものを「前記線の部分で画像をユーザー方向に反射させると共に前記線の各内部(各正六角形の内部)の透明部分で前方からの光をユーザー方向に透過させる前方透過型スクリーン」と補正するものであって、いずれも限定を付加するものであるから、上記1の本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

3 独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項2に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか否か)について検討する。
(1)本願補正発明の認定
本願補正発明は、上記1において、本件補正後のものとして記載したとおりのものと認める。

(2)刊行物の記載及び引用発明
ア 原査定における拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2006-119489号公報(以下「引用文献」という。)には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタから投影された映像を反射光としてスクリーンに映し出すプロジェクタ用反射型スクリーンに関し、特に、プロジェクタ側からはスクリーンに投影された映像とスクリーンの背景を視認することができる反射型スクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタから投影された映像を反射光としてスクリーンに映し出すため、従来より反射型スクリーンとして、プロジェクタからの光を反射する反射層と反射された光を拡散するための光拡散層とを備えた二層の反射型スクリーンが知られている。このような二層の反射型スクリーンでは、反射層はアルミ蒸着層或いはアルミペースト塗布層からなり、この反射層で反射された光をさらに光拡散層で拡散することにより、比較的広い視野角でぎらつきのない画像を見ることができる。しかし、このような従来の反射型スクリーンは透視性が無いため、スクリーンの背景を視認することは殆ど不可能であった。
【0003】
ところで店舗のショーウィンドウ等には、店舗の中に居る人に向けてメニューや値段表、ポスター等の表示物を貼ったりすることがある。また、このような表示物は静的なものであり、貼り直したりしない限り、その内容は変わるものではない。そこで、動的な表示物とするためショーウィンドウ等に反射型スクリーンを貼着しプロジェクタ等を用いて投影することが考えられるが、このような従来の反射型スクリーンを貼着したショーウィンドウでは、反射型スクリーンに透視性が無いため、店舗の内側から外側、または外側から内側を見ることが出来なくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、プロジェクタ側からはスクリーンに投影された映像と、スクリーンの背景を視認することができる反射型スクリーンを提供することを目的とする。また、プロジェクタの反対側からもスクリーンの背景を視認可能である反射型スクリーンを提供することを目的とする。」

(イ)「【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の反射型スクリーンは、支持体の一方の面に光拡散層を有するものであって、当該スクリーンは光拡散層を有する部分と透視性を有する部分とが周期的、またはランダムに混在してなり、前記光拡散層を有する部分は光反射性を有し、前記光拡散層は光拡散剤、およびガラスまたは硬化型樹脂からなる透明バインダーから形成されてなるものである。以下、各構成要素の実施の形態について説明する。
【0013】
支持体は、金属、ガラス、高分子樹脂等を使用することができ、高分子樹脂としては例えば、ポリカーボネ-ト、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリル等の熱可塑性樹脂があげられる。このような支持体は、用途に応じて板状、フィルム状、シート状のものを適宜選択することができる。(・・・途中省略・・・)
【0015】
さらに、プロジェクタからの光の反射特性を高め、より鮮明な映像を映すために、支持体の表面の反射率が90%以上のものを用いることが好ましい。このような支持体は、アルミニウムや銀などの金属をシート状等にしたり、ガラス板上や高分子樹脂をシート状等としたもの上に、反射層として蒸着やスパッタリング等により金属を膜状に形成したり、ペースト状にした金属を膜状に塗布形成したりすることにより得ることができる。また、ホットスポットの発生を抑え、かつ光拡散性を高めるために白色顔料を練り込んだ高分子樹脂をシート状等にしたものを用いることも好ましい。(・・・途中省略・・・)
【0029】
このような光拡散層を有する本発明の反射型スクリーンは、スクリーン面内(スクリーンの面方向)に光拡散層を有する部分と透視性を有する部分とが周期的、またはランダムに混在してなるものである。このような反射型スクリーン7としては、例えば、光拡散層を有する部分4として光拡散層を有するスクリーン面内に、透視性を有する部分3をストライプ状に周期的に設けたり、円、楕円、四角形等の多角形、不定形の形状に周期的、またはランダムに設けたり、上記のような形状としたもの同士を組み合わせて設けたりしたもの等があげられる(図4、図6)。また、例えば、上記したものとは逆に、透視性を有する部分3として透視性を有するシート等の面内に、光拡散層を有する部分4をストライプ状に周期的に設けたり、円、楕円、四角形等の多角形、不定形の形状に周期的、またはランダムに設けたり、上記のような形状としたもの同士を組み合わせて設けたりしたもの等もあげられる(図5、図7)。
【0030】
このような本発明の反射型スクリーン7における光拡散層を有する部分4と透視性を有する部分3との面積の割合は、特に限定されるものではないが、光拡散層を有する部分4:透視性を有する部分3で、好ましくは4:1?1:4、さらに好ましくは2:1?1:2程度である(図4?図7)。
【0031】
このように光拡散層を有するスクリーン面内に透視性を有する部分を設ける場合は、前記透視性を有する部分は、長径が0.1mm?8mm、さらには0.2mm?8mmで、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が0.1mm?5mm、さらには0.2mm?5mmの間隔で周期的、またはランダムに形成されていることが好ましい。透視性を有する部分の長径が0.1mm未満、または当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が5mmを超えると、スクリーンの背景が視認しにくくなり、透視性を有する部分の長径が8mmを超えるか、または当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が0.1mmに満たないと、プロジェクタからの投射された映像が見えにくくなる。すなわち、光拡散層を有するスクリーン面内に透視性を有する部分が、上記のような大きさと間隔で連続的に形成されていることにより、プロジェクタからの投射された映像を鮮明に映しつつ、スクリーンの背景を視認することができる。(・・・途中省略・・・)
【0033】
ここで本発明でいう透視性を有する部分、および光拡散層を有する部分の長径とは、その形状に従って以下の通りとする。例えば、形状が真円の場合は直径、楕円の場合は長径、三角形の場合は最長となる垂線、四角形以上の多角形の場合は最長の対角線、不定形の場合は任意の1点と1点を結ぶ直線のうち最長のものを意味する。
【0034】
透視性を有する部分は、JIS K7136:2000におけるヘーズが40%以下、JIS K7361-1:1997における全光線透過率が80%以上であることが好ましい。透視性を有する部分がこのような光学特性を有することにより、本発明の反射型スクリーンにプロジェクタから投射された光が入射した際に、透視性を有する部分は映像を映すことなくスクリーンの背景を視認することができる。
【0035】
また、光拡散層を有するスクリーン面内に透視性を有する部分を設ける場合には、透視性を有する部分は、貫通孔であってもよい。透視性を有する部分を貫通孔とすることにより、プロジェクタから投射された光や、環境光を反射することがないためより一層スクリーンの背景を視認しやすいものとすることができる。また、スクリーン面内における透視性を有する部分の形状は、上述した範囲を逸脱しない限り、スクリーンの厚さ方向で変化しても構わない。。(・・・途中省略・・・)
【0040】
また、例えば透明な支持体の一方の面に黒色層、反射層および光拡散層をスクリーン印刷等により透視性を有する部分は印刷されないよう順に積層し作製することにより得ることができる(図3)。」

(ウ)「【0045】
[実施例2]
厚み100μmの白色顔料を練り込んだフィルム(W300:三菱化学ポリエステル社)の一方の面に、下記処方の黒色層用塗布液をバーコーティング法により塗布、乾燥し、厚み10μmの黒色層を形成した後、もう一方の面に、実施例1の光拡散層用塗布液を用いて、実施例1と同様にして光拡散層を形成した。(・・・途中省略・・・)
【0048】
[実施例3]
支持体として厚み100μmの透明なポリエステルフィルム(ルミラーT60:東レ社)上に、実施例2の黒色層用塗布液を用いてスクリーン印刷により塗布、乾燥し、黒色層を形成した後、その上層に下記処方の反射層用塗布液を黒色層と同様にして塗布、乾燥して厚み25μmの反射層を形成した後、60℃で24時間エイジングした。
【0049】
さらにその上層に下記処方の光拡散層用塗布液を黒色層と同様にして塗布、乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射し、厚み3.5μmの光拡散層を形成し、実施例3の反射型スクリーンを得た。スクリーン印刷は、スクリーンの全面に透視性を有する部分として、直径1mmの真円で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成した。
【0050】
なお、光拡散層を有する部分のスクリーンゲインは0.85であった。また、透視性を有する部分のJIS K7136:2000におけるヘーズは1.4%、JIS K7361-1:1997における全光線透過率は88%であった。」

(エ)図4及び図6は次のものである。


(オ)上記(ア)ないし(ウ)の記載を踏まえて、(エ)の図4及び図6をみると、多数の各透視性を有する部分3を互いに画する光拡散層を有する部分4を、多数の各透視性を有する部分3が互いに光拡散層を有する部分4を介して並ぶ点がみてとれる。

イ 引用発明
上記アによれば、引用文献には、次の発明が記載されていると認められる。
(ア)「支持体として厚み100μmの透明なポリエステルフィルム上に、黒色層用塗布液を用いてスクリーン印刷により塗布、乾燥し、黒色層を形成した後、その上層に反射層用塗布液を黒色層と同様にして塗布、乾燥して厚み25μmの反射層を形成した後、60℃で24時間エイジングし、さらにその上層に下記処方の光拡散層用塗布液を黒色層と同様にして塗布、乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射し、厚み3.5μmの光拡散層を形成した反射型スクリーンであって、
上記スクリーン印刷は、スクリーンの全面に透視性を有する部分として、直径1mmの真円で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成した、反射型スクリーン。」

(イ)上記(ア)の発明の「透視性を有する部分」は、「直径1mmの真円で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成した」ものであるところ、引用文献には、「透視性を有する部分3を・・・四角形等の多角形・・・に設けたり」(上記(2)ア(イ)【0029】)、及び、「ここで本発明でいう透視性を有する部分・・・の長径とは・・・四角形以上の多角形の場合は最長の対角線・・・を意味する」(上記(2)ア(イ)【0033】)と記載されているから、上記(ア)の発明の「透視性を有する部分」は、長い方の対角線(最も長い対角線)が1mmの多角形で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成したものであってよいものである。
また、上記(ア)の発明の「透視性を有する部分」は、引用文献には、「透視性を有する部分がこのような光学特性を有することにより、本発明の反射型スクリーンにプロジェクタから投射された光が入射した際に、透視性を有する部分は映像を映すことなくスクリーンの背景を視認することができる。」(上記(2)ア(イ)【0034】)と記載されているから、上記(ア)の発明の「透視性を有する部分」は、スクリーンの背景を視認するものである。

(ウ)上記(ア)の発明の「反射層」及び「光拡散層」は、それぞれ「厚み25μm」及び「厚み3.5μm」であるから薄膜であるといえる。
また、引用文献には、「プロジェクタからの光の反射特性を高め、より鮮明な映像を映すために、支持体の表面の反射率が90%以上のものを用いることが好ましい。」(上記(2)ア(イ)【0015】)と記載されているから、上記(ア)の発明の「反射層」は、可視光の反射率が90%以上のものであってよい。
さらに、上記(2)ア(オ)によれば、引用文献は、多数の各透視性を有する部分3を互いに画する光拡散層を有する部分4を、多数の各透視性を有する部分3が互いに光拡散層を有する部分4を介して並ぶものであるから、上記(ア)の発明の「透視性を有する部分」と、「反射層」及び「光拡散層」が、多数の各透視性を有する部分を互いに画する反射層及び光拡散層を、多数の各透視性を有する部分が互いに反射層及び光拡散層を介して並ぶものである。

上記(イ)及び(ウ)を踏まえれば、引用文献には、次の発明が記載されていると認められる(以下「引用発明」という。)。
「支持体として厚み100μmの透明なポリエステルフィルム上に、黒色層用塗布液を用いてスクリーン印刷により塗布、乾燥し、黒色層を形成した後、その上層に反射層用塗布液を黒色層と同様にして塗布、乾燥して厚み25μmの反射層を形成した後、60℃で24時間エイジングし、さらにその上層に下記処方の光拡散層用塗布液を黒色層と同様にして塗布、乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射し、厚み3.5μmの光拡散層を形成した反射型スクリーンであって、
上記スクリーン印刷は、スクリーンの全面に透視性を有する部分として、直径1mmの真円で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成し、
前記透視性を有する部分は、スクリーンの背景を視認するものであって、長い方の対角線(最も長い対角線)が1mmの多角形で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成したものであり、
前記反射層は、可視光の反射率が90%以上のものであり、
前記透視性を有する部分と、前記反射層及び前記光拡散層が、多数の各透視性を有する部分を互いに画する反射層及び光拡散層を、多数の各透視性を有する部分が互いに反射層及び光拡散層を介して並ぶものである、
反射型スクリーン。」

(3)対比・判断
ア 対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
(ア)引用発明の「支持体」は「厚み100μmの透明なポリエステルフィルム」であるから、本願補正発明の「透明シート」に相当する。

(イ)引用発明の、長い方の対角線(最も長い対角線)が1mmの多角形で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成したものであって、スクリーンの背景を視認する「透視性を有する部分」は、本願補正発明の「各正六角形の内部の透明部分で前方からの光をユーザー方向に透過させる」、「各正六角形の内部は、その長い方の対角線(最も長い対角線)が1?10mmに形成されている」「内部」と、「各多角形の内部の透明部分で前方からの光をユーザー方向に透過させる」点で一致する。

(ウ)引用発明の、「厚み25μm」及び「厚み3.5μm」であって、「反射率が90%以上のもの」であってよく、多数の各透視性を有する部分を互いに画する反射層及び光拡散層を、多数の各透視性を有する部分が互いに反射層及び光拡散層を介して並ぶものである「反射層及び光拡散層」は、上記(イ)での検討も踏まえると、本願補正発明の「『多数の各正六角形を互いに画するための線を、可視光反射率が30?100%の薄膜により描くこと』により、『多数の各正六角形の内部の透明部分』が互いに前記線を介して隙間なく並ぶように配置されて成る、前記線の部分で画像をユーザー方向に反射させ」、「前記薄膜による線は、その線幅が0.1?1mmに形成されて」いる「薄膜」と、「『多数の各多角形を互いに画するための薄膜を、可視光反射率が90%以上の薄膜により描くこと』により、『多数の各多角形の内部の透明部分』が互いに前記薄膜を介して並ぶように配置されて成る、前記薄膜の部分で画像をユーザー方向に反射させ」る点で一致する。

(エ)上記(イ)での検討を踏まえれば、引用発明の「反射型スクリーン」は、本願補正発明の「前方透過型スクリーン」に相当する。

イ 一致点
上記アによれば、本願補正発明と引用発明は、
「透明シートの表面上に、『多数の各多角形を互いに画するための薄膜を、可視光反射率が90%以上の薄膜により描くこと』により、『多数の各多角形の内部の透明部分』が互いに前記薄膜を介して並ぶように配置されて成る、前記薄膜の部分で画像をユーザー方向に反射させると共に前記薄膜の各内部(各多角形の内部)の透明部分で前方からの光をユーザー方向に透過させる、前方透過型スクリーン。」
である点で一致し、以下の各点で相違する。

ウ 相違点
(ア)本願補正発明の「スクリーン」は、「正六角形」が配置されるのに対して、引用発明の「スクリーン」は、「多角形」が配置される点(以下「相違点1」という。)。

(イ)本願補正発明の「内部の透明部分」は、互いに「線」を介して「隙間なく」並ぶように配置されてなるのに対して、引用発明の「透視性を有する部分」は、「反射層」及び「光拡散層」介して並ぶ点(以下「相違点2」という。)。

(ウ)本願補正発明の「前方透過型スクリーン」の「線」は、「線幅が0.1?1mmに形成され」るのに対して、引用発明の「反射型スクリーン」の「反射層」及び「光拡散層」は、「線幅」が特定されない点(以下「相違点3」という。)。

(エ)本願補正発明の「内部の透明部分」は、「その長い方の対角線(最も長い対角線)が1?10mmに形成されている」のに対して、引用発明の「透視性を有する部分」は「内部」の「その長い方の対角線(最も長い対角線)」が特定されない点(以下「相違点4」という。)。

エ 判断
(ア)上記相違点1及び2について検討する。
引用発明の「反射型スクリーン」は、「多角形」が配置されるところ、これを、隙間なく正六角形を並べた形状であるハニカム(蜂の巣)形状とすることは、従来周知の技術であるから(例えば、特開2011-122395号公報 段落【0020】?【0021】「文字、画像(静止画、動画)等の可視情報を表示させることができる優れた遮光性フィルムであり、窓用フィルム以外に多目的な太陽光発電用の遮光性フィルムとして優れた効果を得ることができるものである。・・・本発明の遮光性窓用フィルムは、不透光性網点部(光反射網点、不透光網点)の平面視形状を六角形状(亀甲パターン形状とすることにより、各網点同士に所定の間隙を持たせて配置し、所定の開口率(遮光率)により、その網点同士の間隙より屋内(室内)から屋外(室外)の様子を観察することが可能になる。特に六角形状の各網点を正六角形として蜂の巣状にすることにより、各網点を所定の間隙を持たせながら、その網点の配置密度と遮光性の効率を向上させることができる。」との記載、及び、特開2011-117161号公報 段落【0017】?【0018】「窓用フィルム以外に多目的な遮光性フィルムとして使用することができ、窓用フィルムと同様の優れた効果を得ることができるものである。・・・また不透光性網点部3(光反射網点3a、不透光網点3b)は、互いに隙間をもつように規則的に配置されているため、その隙間より窓外の風景を目視確認することができ、特に網点部3を、亀甲パターン(六角形)、蜂の巣状などの網点部とした場合、規則的に等間隔の隙間(直線帯状の亀甲パターン状の隙間)で各網点を配置することができ、そのためパターンの配置密度を高くし、光透過部(透光部)の領域を少なくすることができ、遮光性を高くすることができる。特に各網点の六角形パターンを正六角形とし、蜂の巣状とすれば配置密度を高くすることができる。」との記載参照)、引用発明の多角形をハニカム(蜂の巣)状として、上記相違点1及び2に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(イ)上記相違点3及び4について検討する。
引用発明は、「透視性を有する部分」を「直径1mmの真円」となすとともに、「当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成」するものであるところ、引用文献には「このように光拡散層を有するスクリーン面内に透視性を有する部分を設ける場合は、前記透視性を有する部分は、長径が0.1mm?8mm、さらには0.2mm?8mmで、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が0.1mm?5mm、さらには0.2mm?5mmの間隔で周期的、またはランダムに形成されていることが好ましい。透視性を有する部分の長径が0.1mm未満、または当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が5mmを超えると、スクリーンの背景が視認しにくくなり、透視性を有する部分の長径が8mmを超えるか、または当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が0.1mmに満たないと、プロジェクタからの投射された映像が見えにくくなる。すなわち、光拡散層を有するスクリーン面内に透視性を有する部分が、上記のような大きさと間隔で連続的に形成されていることにより、プロジェクタからの投射された映像を鮮明に映しつつ、スクリーンの背景を視認することができる。」(上記(2)ア(イ)【0031】)と記載されている。
したがって、引用発明において、上記(ア)で検討したとおり、多角形をハニカム状とした上で、「反射型スクリーン」の「反射層」及び「光拡散層」の「線幅」、及び、「透視性を有する部分」の「その長い方の対角線(最も長い対角線)」と適宜のものとなすることにより、上記相違点3及び4に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)請求人の主張について
請求人は、平成27年8月1日付けの審判請求書の「第2 審判請求理由(本願発明の進歩性の有無) 1 「審判請求理由」としての、主引用発明(引用文献3(特開2006-119489)の発明)の認定の誤り(事実誤認) (4)主引用発明を示す引用文献3中の段落0042?0053の抜粋」において、概略下記のとおり主張する
[実施例3]の説明部分中の、引用文献3の段落〔0049〕中の「さらにその上層に下記処方の光拡散層用塗布液を黒色層と同様にして塗布、乾燥した後、高圧水銀灯で紫外線を照射し、厚み3.5μmの光拡散層を形成し、実施例3の反射型スクリーンを得た。スクリーン印刷は、スクリーンの全面に透視性を有する部分として、直径1mmの真円で、当該透視性を有する部分と隣接する透視性を有する部分との間の最短距離が1mmの間隔で周期的に形成した。」(下線は本出願人による)中の「スクリーン印刷は」の部分は、他の部分と文脈的に整合していないので、誤入力によるものと推察される。すなわち、上記「スクリーン印刷は」は誤りで、例えば「実施例1と同様の(型抜き装置による)貫通孔を設ける方法としては」などの文言が正しいと推察される。
すなわち、引用文献3において、光拡散層は、「『透明なポリエステルフィルムの全面の上に形成された黒色層と反射層』の全面の上に形成するものである。
よって、引用文献3において、「『透明なポリエステルフィルムの全面の上に形成された黒色層と反射層』の全面の上に、光拡散層を形成すること」が「多数の形状を互いに画するための線を描くこと」に相当する(本件拒絶査定の「理由3」中の上から9-10行目)という事実は、無い。
よって、上記の(A)部分は、「本件拒絶査定中に存在する、主引用発明の事実誤認の1つ」を示す記載である。・・・
したがって、引用文献の[実施例3]を、「透明なポリエステルフィルムの全面の上に形成された黒色層」等とし、型抜き装置を用いる、あるいは、貫通孔を設けるものであると解釈して論じる請求人の主張は採用できない。

(5)まとめ
したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献に記載の事項及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定についてのむすび
上記3の検討によれば、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の特許請求の範囲の各請求項に係る発明は、平成27年3月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載されたとおりのものであるところ、その請求項2に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記第2、[理由]1において、本件補正前のものとして示したとおりのものである。

2 刊行物の記載及び引用発明
上記第2、[理由]3(2)のとおりである。

3 対比・判断
上記「第2、[理由]2 補正の目的」のとおり、本件補正は、補正前の請求項2において、「薄膜」に係り、「可視光反射率が30?100%の薄膜」との限定を付加するとともに、「前方透過型スクリーン」に係り、「前記線の部分で画像をユーザー方向に反射させると共に前記線の各内部(各正六角形の内部)の透明部分で前方からの光をユーザー方向に透過させる前方透過型スクリーン」との限定を付加するものである。
そうすると、本願発明は、本願補正発明から上記限定を省いたものと認められるところ、上記第2 [理由]3(3)の検討に照らすと、引用発明との間で相違点1及び2で相違する。そして、相違点1及び2については、上記第2 [理由]3(4)で検討したとおりである。よって、本願発明は、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献に記載の事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2015-11-05 
結審通知日 2015-11-10 
審決日 2016-03-23 
出願番号 特願2014-267054(P2014-267054)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G03B)
P 1 8・ 121- Z (G03B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田辺 正樹佐竹 政彦  
特許庁審判長 森林 克郎
特許庁審判官 松川 直樹
川端 修
発明の名称 前方透過型スクリーン、その製造方法及びその使用方法  
代理人 梶原 圭太  
代理人 森田 靖之  
代理人 遠藤 聡子  
代理人 有吉 修一朗  
代理人 筒井 宣圭  
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