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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  B22F
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B22F
審判 全部無効 特36条4項詳細な説明の記載不備  B22F
管理番号 1371042
審判番号 無効2018-800126  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2018-10-18 
確定日 2020-11-25 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第4732645号発明「金属複合超微粒子の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第4732645号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正することを認める。 特許第4732645号の請求項1に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 特許第4732645号の請求項2?4に係る発明についての審判請求を却下する。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第4732645号(以下「本件特許」という。)は、2000年(平成12年)6月14日(優先権主張 平成11年6月15日)を国際出願日とする出願(特願2001-503014号)に係るものであって、その請求項1?4に係る発明について、平成23年4月28日に特許権の設定登録がなされたものである。
これに対し、株式会社日本スペリア社から平成30年10月18日付けで請求項1?4に係る発明の特許について無効審判の請求がなされたものであるところ、審判請求以降の手続は、おおむね次のとおりである。

平成31年 1月17日付け 審判事件答弁書(被請求人)及び訂正請求

同年 3月12日付け 訂正拒絶理由通知書
同年 4月 2日付け 意見書(被請求人)
令和 1年 5月16日付け 審判事件弁駁書(請求人)
同年 7月10日付け 補正許否の決定
同年 8月 9日付け 審判事件答弁書(被請求人)及び訂正請求

同年10月10日付け 審判事件弁駁書(2)(請求人)
同年11月27日付け 補正許否の決定
同年11月27日付け 審理事項通知書
令和 2年 1月 7日付け 口頭審理陳述要領書(請求人)
同年 1月 8日差出 口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 1月15日付け 口頭審理陳述要領書(2)(請求人)
同年 1月20日 口頭審理
同年 2月 7日付け 上申書(被請求人)
同年 2月12日付け 上申書(請求人)
同年 3月24日付け 審決の予告
同年 5月19日付け 訂正請求書

なお、請求人に対し、令和2年6月1日付けで、同年5月19日付け訂正請求書副本を送付するとともに、期間を指定して、この訂正請求に対する意見を求めたが、請求人からは、指定期間内に応答がなかった。


第2 訂正請求について
1 請求の趣旨
被請求人が令和2年5月19日に提出した訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の趣旨は、特許第4732645号の特許請求の範囲を、令和2年5月19日付け訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1?4について訂正することを求めるというものである。
なお、本件訂正の請求がされたため、特許法第134条の2第6項の規定により、平成31年1月17日及び令和1年8月9日にされた訂正の請求は、取り下げられたものとみなす。

2 本件訂正の内容
本件訂正の内容は、以下のとおりである。なお、下線は訂正された箇所を表す。

(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「金属有機化合物又は金属無機化合物を界面活性剤を用いて疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程」と記載されているのを、「金属有機化合物を界面活性剤を用いて疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程」に訂正する。

(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1に、「金属超微粒子を形成する第2工程からなることを特徴とする金属複合超微粒子の製造方法。」と記載されているのを、「金属複合超微粒子を形成する第2工程からなることを特徴とする金属複合超微粒子の製造方法。」に訂正する。

(3)訂正事項3
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項2?4の各請求項を削除する。

3 訂正の適否に関する当審の判断
(1)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
ア 訂正事項1について
訂正事項1による訂正は、本件訂正前の請求項1において、「界面活性剤を用いて疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する」ものが、「金属有機化合物又は金属無機化合物」とされていたのを、「又は金属無機化合物」を削除し、「金属有機化合物」のみに限定する訂正をするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。
そして、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。

イ 訂正事項2について
(ア)訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2による訂正は、本件訂正前の請求項1において、「金属超微粒子を形成する第2工程」と記載されているのを、「金属複合超微粒子を形成する第2工程」と訂正するものであって、これは、「金属超微粒子」を「金属複合超微粒子」として誤記を正すものであるから、誤記の訂正を目的とする訂正である。
そして、訂正事項1による訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しない。

(イ)新規事項の有無
本件訂正前の請求項1には、「金属複合超微粒子の製造方法。」と記載されており、製造されるものが「金属複合超微粒子」であることは明らかであるし、さらに、願書に添付した明細書(以下「本件特許明細書」という。本件特許明細書の記載箇所は、乙第1号証である本件特許公報における頁及び行で表すこととし、以下同様である。)の3頁23?27行には、「請求項6の発明は、金属有機化合物又は金属無機化合物を界面活性剤を用いて疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程と、このコロイド溶液中に還元剤を添加することにより前記超微粒子前駆体を還元して金属核の外周に少なくとも界面活性剤殻を有する粒径1?100nmの金属複合超微粒子を形成する第2工程からなることを特徴とする金属複合超微粒子の製造方法である。」として、「第2工程」は「金属複合超微粒子を形成する」ものであることが記載されている(なお、下線は当審が付与した。)。
よって、訂正事項1は、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。

ウ 訂正事項3について
訂正事項3による訂正は、請求項2?4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものには該当しないし、願書に添付した明細書及び特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正である。

(2)独立特許要件について
本件は、訂正前の全請求項に対して特許無効審判の請求がされているので、訂正事項1?3について、特許法第134条の2第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項は適用されない。

(3)一群の請求項について
本件訂正前の請求項3及び4は、いずれも請求項1又は2を引用するものであるところ、請求項1の記載を訂正する訂正事項1に連動して請求項3及び4が訂正されるから、本件訂正前の1、3及び4が一群の請求項を構成し、また、請求項2の記載を訂正する訂正事項2に連動して請求項3及び4が訂正されるから、本件訂正前の2、3及び4が一群の請求項を構成するものであって、共通する請求項3及び4を有する一群の請求項は組み合わされて、訂正前の請求項1?4が一群の請求項である。
したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項ごとにされたものである。

(4)訂正の適否についての結論
以上のとおり、上記訂正事項1?3は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1?4〕について訂正を認める。


第3 本件発明
本件訂正は、上記第2で検討したとおり適法なものであるから、本件特許の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明(以下、請求項1に係る発明を「本件発明」という。)は、本件訂正に係る訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1?4に記載された次のものである。

「【請求項1】
金属有機化合物を界面活性剤を用いて疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程と、このコロイド溶液中に還元剤を添加することにより前記超微粒子前駆体から金属を還元析出させて、前記金属から形成される金属核の外周に少なくとも界面活性剤殻を有する金属複合超微粒子を形成する第2工程からなることを特徴とする金属複合超微粒子の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)」


第4 当事者の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
(1)請求人は、「特許第4732645号の特許請求の範囲の請求項1?4に記載された発明についての特許を無効にする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。」と主張し、審判請求書とともに甲第1号証?甲第3号証を提出し、令和元年5月16日付け審判事件弁駁書とともに甲第4号証及び甲第5号証を提出し、同年10月10日付け審判事件弁駁書(2)とともに甲第6号証?甲第11号証を提出し、令和2年1月7日付け口頭審理陳述要領書とともに甲第12号証及び甲第13号証を提出し、同年1月15日付けで口頭審理陳述要領書(2)を提出し、同年2月12日付けで上申書を提出し、同年同月13日付けで甲第14号証?甲第20号証を提出している。

(2)ここで、請求人による令和元年5月16日付け審判事件弁駁書における、甲第4号証及び甲第5号証を追加した特許法第29条第2項に関する無効理由の新たな主張、並びに令和元年10月10日付け審判事件弁駁書(2)における、特許法第36条第6項第2号に関する無効理由の新たな主張についての請求の理由の補正は、それぞれ請求の理由の要旨を変更するものであるが、審理を不当に遅延させるおそれがないことが明らかなものであり、かつ、訂正の請求により請求の理由を補正する必要が生じたことから、同年7月10日付け並びに同年11月27日付け補正許否の決定において、それぞれ許可した。

(3)ただし、令和元年5月16日付け審判事件弁駁書とともに提出された甲第4号証及び甲第5号証は、平成31年1月17日付け訂正請求書による特許請求の範囲の訂正に伴い、当該訂正がされた請求項1及び2において特定された、「還元を途中で停止させるには、還元剤の添加量を部分的還元量に制限しておく方法、溶液温度を低下させる方法、還元停止剤を添加する方法、部分的還元段階で金属複合超微粒子を溶液から分離する方法のいずれかが採用される」還元を途中で停止させる事項が、本件優先日前に公知であったことを立証し、特許法第29条第2項に基いて特許を受けることができないことを主張しようとするものであったが、本件訂正により当該事項による特定がなくなったことから、甲第4号証及び甲第5号証を用いた当該主張の理由はないものとなった。

(4)そして、第1回口頭審理調書によれば、請求人は、以下の無効理由を主張するものである。なお、以下の無効理由1?3においては、本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明を「本件発明1」?「本件発明4」といい、「本件発明」は上記「第3」で記すように本件訂正後の請求項1に係る発明を意味する。

<無効理由1>
本件発明2及び3は、甲第1号証に記載された発明及び甲第6?8号証に記載の周知技術に基いてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に基いて特許を受けることができないから、同法第123条第1項第2号に該当し、同発明に係る特許は無効とすべきである。

<無効理由2>
本件発明1?4は、甲第1号証に記載された発明、甲第2、3号証に記載の技術手段、及び甲第6?8号証に記載の周知技術に基いてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に基いて特許を受けることができないから、同法第123条第1項第2号に該当し、同発明に係る特許は無効とすべきである。

<無効理由3>
本件発明1?4の各請求項の記載は同法第36条第6項第1号及び同項第2号の規定に適合しない 及び/又は 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は同法第36条第4項第1号の規定に適合しないから、本件特許は同法第123条第1項第4号に該当し、同発明に係る特許は無効とすべきである。

[請求人の証拠方法]
甲第1号証:Luis M. Liz-Marzan and Isabel Lado-Tourino, 「Reduction and Stabilization of Silver Nanoparticles in Ethanol by Nonionic Surfactants」, Langmuir 1996,12,3585-3589,1996年7月24日, American Chemical Society
甲第2号証:H.H.Huang, F.Q.Yan, Y.M.Kek, C.H.Chew, G.Q.Xu, W.Ji, P.S.Oh and S.H.Tang, 「Synthesis, Characterization,and Nonlinear Optical Properties of Copper Nanoparticles」, Langmuir 1997,13,172-175, 1997年1月22日, American Chemical Society
甲第3号証:特開平11-80647号公報
甲第4号証:D.Burshtain, L.Zeiri and S.Efrima, 「Control of Colloid Growth and Size Distribution by Adsorption-Silver Nanoparticles and Adsorbed Anisate」, Langmuir 1999, 15, 3050-3055, 1999年4月27日, American Chemical Society
甲第5号証:O.Siiman, A.Lepp, and M.Kerker, 「Absorption and Surface-Enhanced Raman Spectra of Silver Organosols in Ethanol」, Chemical Physics Letters, volume 100, number 2, p163-168,1983年9月2日
甲第6号証:特開平10-183207号公報
甲第7号証:特開平10-308120号公報
甲第8号証:特開平7-320535号公報
甲第9号証:Hidefumi Hirai, Noboru Yakura, Yoko Seta and Shinya Hodoshima, 「Characterization of palladium nanoparticles protected with polymer as hydrogenation catalyst」, Reactive & Functional Polymers 37 (1998) 121-131, 1998年6月,Elsevier Science B.V.
甲第10号証:Product Specification(https://www.sigmaaldrich.com/Graphics/COfAInfo/SigmaSAPQM/SPEC/46/466387/466387-BULK______ALDRICH__.pdf), 2019年10月10日(出力日)
甲第11号証:安全データシート(SDS)(http://www.st.rim.or.jp/~shw/MSDS/20559350.pdf), 2019年10月10日(出力日)(乙第8号証と同じ)
甲第12号証:Ruth E.Riter, Joel R.Kimmel, Erik P.Undiks and Nancy E.Levinger, 「Novel Reverse Micelles Partitioning Nonaqueous Polar Solvents in a Hydrocarbon Continuous Phase」, J. Phys. Chem. B,Vol.101,No.41, 8292-8297(1997), 1997年10月9日, American Chemical Society
甲第13号証:理化学辞典第5版第9刷, 777頁, 2006年9月5日, 岩波書店
甲第14号証:Kunio Esumi, Takafumi Tano, Kanjiro Torigoe and Kenjiro Meguro, 「Preparation and Characterization of Bimetallic Pd-Cu Colloids by thermal Decomposition of Their Acetate Compounds in Organic Solvents」, Chem. Mater., Vol. 2, No. 5, 564-567 (1990), 1990年, American Chemical Society
甲第15号証:John S.Bradley, Ernestine W.Hill, Carl Klein, Bruno Chaudret and Anne Duteil, 「Synthesis of Monodispersed Bimetallic Palladium-Copper Nanoscale Colloids」, Chem. Mater., Vol. 5, No. 3, 254-256 (1993), 1993年, American Chemical Society
甲第16号証:Hanfan Liu, Guoping Mao and Shaojin Meng, 「Preparation and characterization of polymer-protected palladium-gold colloidal bimetallic catalysts」, Journal of Molecular Catalysis, 74 (1992), 275-284, 1992年, Elsevier Sequoia
甲第17号証:Naoki Toshima, Kakuta Kushihashi, Tetsu Yonezawa and Hidefumi Hirai, 「Colloidal Dispersions of Palladium-Platinum Bimetallic Clusters Protected by Polymers. Preparation and Application to Catalysis」, CHEMISTRY LETTERS, pp.1769-1772,1989, 1989年, The Chemical Society of Japan
甲第18号証:Kunio Esumi, Masayoshi Shiratori, Hidenori Ishizuka,
Takafumi Tano, Kanjiro Torigoe and Kenjiro Meguro, 「Preparation of Bimetallic Pd-Pt Colloids in Organic Solvent by Solvent Extraction-Reduction」, Langmuir, Vol.7, No.3, 457-459 (1991), 1991年, American Chemical Society
甲第19号証:Naoki Toshima, Masafumi Harada, Tetsu Yonezawa, Kakuta Kushihashi and Kiyotaka Asakura, 「Structural Analysis of Polymer-Protected Pd/Pt Bimetallic Clusters as Dispersed Catalysts by Using Extended X-ray Absorption Fine Structure Spectroscopy」, J. Phys. Chem., Vol. 95, No. 19, 7448-7453(1991), 1991年, American Chemical Society
甲第20号証:谷崎義治, 「〔入門講座・界面活性剤〕高分子界面活性剤」, 油化学第34巻第11号973?978頁(1985), 1985年

以下、それぞれ「甲1」?「甲20」という。なお、甲12?20は、周知技術を示す文献として提出された。

2 被請求人の主張の概要
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする」との審決を求めて、審判事件答弁書とともに乙第1号証?乙第4号証及び訂正請求書を提出し、訂正拒絶理由に対する平成31年4月2日付け意見書を提出し、令和1年8月9日付け審判事件答弁書とともに乙第5号証及び第6号証並びに訂正請求書を提出し、令和2年1月8日差出の口頭審理陳述要領書とともに乙第7号証を提出し、同年2月7日付け上申書とともに乙第8号証を提出している。
そして、上記提出した書面及び第1回口頭審理調書によれば、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件発明を無効とすることはできないと主張している。

[被請求人の証拠方法]
乙第1号証:特許第4732645号公報(本件特許公報)
乙第2号証:加藤公延,「物の発明と方法の発明の分類基準についての批判的考察」,パテント,2003年,Vol.56,No.5, 4-13頁,弁理士会
乙第3号証:「(案)添加物評価書ポリビニルピロリドン」, 2006年9月,食品安全委員会添加物専門調査会
乙第4号証:久司美登,「分散基礎講座(第IX講) 分散剤」, J. Jpn. Soc. Colour Matter., 78〔3〕, 141-148(2005),色材協会
乙第5号証:化学物質の環境リスク評価第8巻「ポリオキシエチレンアルキルエーテル」の添付文献,平成22年3月,環境省環境リスク評価室
乙第6号証:Chemical Bookの中のポリソルベート80,Copyright 2016年, https://chemicalbook.Com/ChemicalProductProperty_JP_cb7741359.htm
(当審注:被請求人による令和2年2月7日付け上申書7頁5?13行に記載のとおり、乙第6号証に基づくポリソルベート80の分子量ついての主張は撤回され、代わりに乙第8号証が提出された。)
乙第7号証:特許第5480801号公報(本件特許出願からの分割出願)
乙第8号証:安全データシート(SDS)ツイーン80 SDSNo.20559350、改定日2018/10/01、昭和化学株式会社)(甲11と同じ)

以下、それぞれ「乙1」?「乙8」という。

3 甲各号証の記載事項
(1)甲1
ア 甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は当審が付与し、「・・・」は記載の省略を表すものであって、以下同様である。

(1a)「


(3585頁要約部)
(当審訳:エタノール中のAg^(+)は、この溶液中に界面活性剤が存在する時、光が全くなくても還元される。この還元により、ナノ粒子の分散液が得られる。この銀ナノ粒子は、ガラス壁に張り付く傾向を見せるが、数週間にわたって安定である。数種類の界面活性剤を試した結果、その特性及び濃度への依存が見られた。非イオン性のエトキシ化界面活性剤が、試したすべての界面活性剤のうち最も効果的であると証明され、この時の還元は、オキシエチレン基の酸化によるものである。いずれにしても、収率は非常に低い(約1%)。コロイドの安定性は粒子の表面上に界面活性剤の分子が吸着されることにより達成され、これにより、粒子は非極性溶媒中へ容易に移動される。還元速度は、明らかに一次反応的に銀塩濃度に依存し、アレニウス則に従って温度に依存する。得られたコロイドの光特性は粒子の表面に付着した界面活性剤の分子により影響される。)

(1b)「


(3586頁左欄13?22行)
(当審訳:実験について
材料. AgNO_(3)はPanreac(PureGrade)から準備し、NaBH_(4)はMerckから、Aerosol-OT(ナトリウムビス(2-エチルヘキシル)スルホサクシネート)はAldrichから準備した。Brij92(ポリ-(2)-オキシエチレンオレイルエーテル)及びBrij72(ポリ-(2)-オキシエチレンステアリルエーテル)は、ICIから提供され、Brij97 (ポリ-(10)-オキシエチレンオレイルエーテル)及びTween80(ポリオキシエチレンー(20)-モノオレイン酸ソルビタン)はSigmaより購入した。これらは、ポリ-オキシエチレン鎖の長さにおいてある程度の多分散性を有する、市販の界面活性剤である。エチルアルコールはPanreac (PureGrade)から、シクロヘキサンはAldrichから準備した。)

(1c)「


(3586頁右欄15?21行)
(当審訳:他の市販の非イオン性界面活性剤である、Tween80も試した。この界面活性剤もまた、安定な着色分散液を生成した。これらの分散液の吸光度は、同じ界面活性剤濃度と銀濃度を持つ銀/Brij97による分散液よりも少し低い(しかしこれは、オキシエチレン基の濃度が半分であることを示す)が、反応は早く進んだ。)

(1d)「


(3589頁右欄15?24行)
(当審訳:非イオン界面活性剤で硝酸銀を還元することにより、粒子径がナノメートルの範囲のコロイド状の銀粒子が、エタノール中で合成された。主な結論としては、界面活性剤は、オキシエチレン基がヒドロペルオキシドへ酸化されることを介して、銀イオンを中性状態に還元する。続いて界面活性剤の分子は粒子の表面上に吸着し、立体的安定化を促進する。この吸着により、粒子は、乾燥状態を経て、非極性溶媒中へ移動することが可能になりその溶媒中で粒子の凝集は起こらない。」

(1e)「


(3589頁右欄37?45行)
(訳:最後に、予め銀/界面活性剤の分散液を作製し、この分散液に対してより強い還元剤を用いることにより、エタノール中で高濃度の銀の分散液を得ることができることを指摘しておく。高濃度の銀の分散液を得ることは、他の文献に開示の方法では極めて困難である。一方、この分散は多分散系であるが、粒子径分布は時間と共に狭くなる。このことは、その非球体形状と併せて、光学的特性の研究用モデルとしてこの粒子を応用することを幾分制限する。)

イ 甲1に記載された発明
上記摘示(1e)において、「銀/界面活性剤の分散液」を還元することが記載されている。そして、同(1d)に基づけば、当該「銀」は「硝酸銀」のことであるといえ、さらに同(1e)の「銀の分散液」における「銀」は、同(1d)から、「粒子径がナノメートルの範囲のコロイド状の銀粒子」であって、「界面活性剤の分子は粒子の表面上に吸着し、立体的安定化を促進する」ものであるから、同(1e)に着目すると、甲1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

<引用発明>
「予め硝酸銀/界面活性剤の分散液を作製し、この分散液に対してより強い還元剤を用いることにより、エタノール中で高濃度の銀粒子の分散液を得ることができる方法であって、前記銀粒子は粒子径がナノメートルの範囲のコロイド状のものであり、界面活性剤の分子は前記銀粒子の表面上に吸着し、立体的安定化を促進する方法。」

(2)甲2の記載事項
甲2には、以下の記載がある。

(2a)「


(172頁要約部)
(当審訳:本稿では、水中及び2-エトキシエタノール中で、ヒドラジンを用いて還流条件下で酢酸銅(II)を還元することにより銅ナノ粒子を作製した。合成されたナノ粒子は、572?582nmにおいて明瞭な吸収ピークを示す。保護ポリマー(ポリ-(N-ビニルピロリドン))を様々な量で添加することにより、エトキシエタノール中において6.6?22.7nm、水中において15.5?30.2nmの範囲の平均粒径が達成された。銅コロイドの非線形光学特性が、Z走査法を用いて初めて測定された。得られたχ^((3))/α_(0)値が10^(-11)?10^(-12)esu cmの大きさであることが確認された。この値は、ガラスに埋設された銅ナノ粒子に関して得られた報告値と一致している。)

(2b)「


(172頁左欄13行?右欄3行)
(当審訳:金属ナノ粒子を作製する多くの方法が開発されてきた。これらの方法には、光還元^(5)や、様々な還元剤を保護ポリマー又は界面活性剤と併せて用いる還元などがある^(3)。Ag(銀)^(5,6)やAu(金)^(7)、Cu(銅)^(3,8-11)、Pt(白金)^(12,13)、Pd(パラジウム)^(12,13)、Ru(ルテニウム)^(12)等の様々な単一の金属のナノ粒子が、Pd-Cu^(14,15)やPd-Au^(16)、Pd-Pt^(17-19)のような合金と同様に、合成され、特徴付けられてきた。一方、金属ナノ粒子の物理特性は未だよくわかっていない。)

(3)甲3の記載事項
甲3には、以下の記載がある。

(3a)「【請求項1】 貴金属又は銅のコロイド粒子及び高分子量顔料分散剤を含むことを特徴とする貴金属又は銅のコロイド溶液。
【請求項2】 貴金属は、金、銀及び白金からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1記載の貴金属又は銅のコロイド溶液。
・・・
【請求項7】 貴金属又は銅の化合物を、溶媒に溶解し、高分子量顔料分散剤を加えた後、貴金属又は銅に還元することを特徴とする貴金属又は銅のコロイド溶液の製造方法。」

(3b)「【発明の属する技術分野】本発明は、高濃度で彩度の高い貴金属又は銅のコロイド溶液及びその製造方法並びにそれを用いた塗料組成物及び樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】貴金属や銅のコロイドは、化学的に非常に安定であり、各コロイド特有の色を発色する。この特性を活かして、従来より、ベネチアガラスやステンドグラス等の着色に利用されている。
【0003】貴金属コロイドのなかでも、金コロイドは、粒径に応じて、青、青紫、赤紫等の色を示すが、この金コロイドによる発色は、「カシウスの紫」として古くより知られており、陶磁器の絵つけ等の発色に利用されている。
【0004】金コロイド等の貴金属コロイドによる発色は、電子のプラズマ振動に起因し、プラズモン吸収と呼ばる発色機構によるものである。このプラズモン吸収による発色は、金属中の自由電子が光電場により揺さぶられ、粒子表面に電荷が現れ、非線形分極が生じるためであるとされている。この貴金属コロイドによる発色は、彩度や光線透過率が高く、耐久性等に優れている。このような貴金属コロイドによる発色は、粒径が数nm?数十nm程度の、いわゆるナノ粒子において見られるものであり、着色材としては、粒径分布が狭いコロイドであることが有利である。
【0005】ところで、塗料や樹脂組成物の着色においても、ガラス等の発色と同様の彩度や濃度を再現できるものが望まれており、上述した貴金属コロイドや銅コロイドを着色材として利用することが期待されている。」

(3c)「【0016】上記貴金属又は銅の化合物としては上記貴金属又は銅を含むものであれば特に限定されず、例えば、塩化金酸、硝酸銀、酢酸銀、過塩素酸銀、塩化白金酸、塩化白金酸カリウム、塩化銅(II)、酢酸銅(II)、硫酸銅(II)等を挙げることができる。
【0017】上記高分子量顔料分散剤は、高分子量重合体に顔料表面に対する親和性の高い官能基が導入されている両親媒性の共重合体である。
・・・
【0019】・・・本発明者らは、予想外にも、上記高分子量顔料分散剤が貴金属又は銅のコロイド粒子の保護コロイドとして機能し、上記高分子量顔料分散剤の使用により、非常に高濃度の貴金属又は銅のコロイド溶液が得られることを見いだした。・・・
【0020】上記高分子量顔料分散剤としては特に限定されないが、以下に説明するものを好適に使用することができる。すなわち;
(1)顔料親和性基を主鎖及び/又は複数の側鎖に有し、かつ、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を有する櫛形構造の高分子
・・・
【0021】ここで、上記顔料親和性基とは、顔料の表面に対して強い吸着力を有する官能基をいい、例えば、オルガノゾルにおいては、第3級アミノ基、第4級アンモニウム、塩基性窒素原子を有する複素環基、ヒドロキシル基、カルボキシル基;ヒドロゾルにおいては、フェニル基、ラウリル基、ステアリル基、ドデシル基、オレイル基等を挙げることができる。本発明において、上記顔料親和性基は、貴金属又は銅に対して強い親和力を示す。上記高分子量顔料分散剤は、上記顔料親和性基を有することにより、貴金属又は銅の保護コロイドとして充分な性能を発揮することができる。
【0022】上記櫛形構造の高分子(1)は、上記顔料親和性基を有する複数の側鎖とともに、溶媒和部分を構成する複数の側鎖を主鎖に結合した構造のものであり、これらの側鎖があたかも櫛の歯のように主鎖に結合されているものである。本明細書中、上述の構造を櫛形構造と称する。上記櫛形構造の高分子(1)において、上記顔料親和性基は、側鎖末端に限らず、側鎖の途中や主鎖中に複数存在していてもよい。なお、上記溶媒和部分は、溶媒に親和性を有する部分であって、親水性又は疎水性の構造をいう。上記溶媒和部分は、例えば、水溶性の重合鎖、親油性の重合鎖等から構成されている。」

(3d)「【0039】本発明の貴金属又は銅のコロイド溶液において、コロイド粒子の平均粒径は、5?30nmであることが好ましい。5nm未満であると、着色力が弱く、30nmを超えると、彩度が低くなる。また、上記コロイド粒子は、粒度分布が狭いので、濃色かつ彩度が高い。」
・・・
【0042】本発明の製造方法において、上記貴金属又は銅の化合物は、溶媒に溶解して使用される。上記溶媒としては上記貴金属又は銅を含む化合物を溶解することができるものであれば特に限定されず、例えば、水;アセトン、メタノール、エチレングリコール、酢酸エチル等の有機溶媒等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」

(4)(5)甲4及び甲5
甲4及び甲5は、上記1(3)のとおりであるから、記載事項の摘記を省略する。

(6)甲6の記載事項
甲6には、以下の記載がある。

(6a)「【請求項1】金属有機化合物及び当該金属有機化合物に由来する金属成分から主として構成されており、実質的にその中心部が金属成分からなり、その周りが金属有機化合物により取り囲まれている、平均粒径が1?100nmであることを特徴とする超微粒子。」

(6b)「【0002】
【従来の技術】粒子径が100nm以下の超微粒子は、その特性が一般の粒子とは大きく異なる。例えば、金(Au)の場合、粒子径が10nm以下になると融点が大きく低下する等の特性が見られる。また、これらの超微粒子は、高い触媒作用をもつなど今後いろいろな分野で新しい可能性を持つ材料である。特に、金属超微粒子は、電子材料用の配線形成材料として、低温焼結ペースト等への応用が考えられている。」

(6c)「【0011】本発明の超微粒子は、金属有機化合物及び当該金属有機化合物に由来する金属成分から主として構成されており、実質的にその中心部が金属成分からなり、その周りが金属有機化合物により取り囲まれている、平均粒径が1?100nmであることを特徴とする。」

(6d)「【0031】このような特徴をもつ本発明の超微粒子は、電子材料(プリント配線、導電性材料等)、磁性材料(磁気記録媒体、電磁波吸収体、電磁波共鳴器等)、触媒材料(高速反応触媒、センサー等)、構造材料(遠赤外材料、複合皮膜形成材等)、セラミックス・金属材料(焼結助剤、コーティング材料等)、医療材料等の各種の用途に幅広く用いることが可能である。」

(7)甲7の記載事項
甲7には、以下の記載がある。

(7a)「【請求項1】 金属でなる微粒子を、有機溶媒中に分散させた金属ペーストを塗布し、該塗布した金属ペーストを、減圧下で、かつ酸素又は水素の活性励起種を導入した状態で仮焼した後、焼結することにより、前記金属でなる膜を形成することを特徴とする金属ペーストの焼成方法。
【請求項2】 前記焼結が還元雰囲気中で行なわれる請求項1に記載の金属ペーストの焼成方法。
【請求項3】 前記塗布された金属ペーストの熱処理がすべて500℃以下の温度で行なわれる請求項1又は請求項2に記載の金属ペーストの焼成方法。
【請求項4】 前記微粒子が平均粒子径1μm単位のもの、平均粒子径0.1μm単位のもの、および平均粒子径0.01μm単位のものの中の何れか単独、またはそれら中の2種類以上の混合である請求項1から請求項3までの何れかに記載の金属ペーストの焼成方法。
【請求項5】 前記微粒子が金、銀、白金、パラジウム、銅、鉛、すず、ニッケル、アルミニウム、インジウム、チタンの中の何れか1種類、又は2種類以上の合金の微粒子の混合である請求項1乃至請求項4の何れかに記載の金属ペーストの焼成方法。」

(7b)「【0013】本発明の第1実施例について以下、説明する。まず、市販の銅ペースト(例えば、平均粒子径が0.1μmの銅微粒子を、有機溶媒のテルピネオール中に分散させた銅ペーストや平均粒子径が数μmの銅微粒子を、有機溶媒中に分散させた銅ペーストなど)を、従来と同様に、スクリーン印刷により、シリコン基板1上に形成する。すなわち、図2に示すように、必要な配線となるべき銅ペーストの塗布膜2をシリコン基板1上に形成する。次に、この基板1を真空電気炉に設置する。そして、酸素O_(2)を含む酸化性ガスを炉内に導入し、炉内を数百Pa?数Pa程度の低真空にする。次に、基板1の全面に電子シャワー照射し、導入された酸化性ガスから酸素の活性励起種を生成させ、これを塗布膜2が形成されている基板1の表面に供給する。同時に、基板1を、100℃?500℃に加熱して、数分から1時間程度の仮焼を行う。これにより、銅ペースト中の有機物が熱分解される。更に、これと同時に、この熱分解によって生成された炭素などの残留不純物が酸素の活性種と反応する。すなわち、C(炭素)+X・O^(*)(酸素ラジカル)→CO_(X)(X=1のとき一酸化炭素であり、X=2のとき二酸化炭素となる)の反応が行なわれる。従って、残留不純物である炭素は気体(一酸化炭素又は二酸化炭素)となって、すなわち、蒸発されて塗布膜2から除去される。なお、このときの熱処理の温度及び時間は、金属ペースト中の有機物の種類や量に依るが、100℃?500℃で、充分に有機物及びその残留不純物の除去ができる。
【0014】次に、供給していた酸素ガスの代わりに、還元性ガス(例えば、水素や水素と不活性ガスの混合ガス)を真空電気炉に供給し、500℃以下の温度で焼結を行なう。これによって、塗布膜の中の銅でなる微粒子は焼結され、高密度の金属となる。同時に、仮焼時に塗布膜中に形成されてしまった部分酸化膜が、還元性ガスによって還元され、除去される。従って、高密度、かつ低抵抗の銅膜でなる配線が得られる。なお、この方法で得られた銅膜は、バルク状の銅金属(抵抗率1.67×10^(-6)Ωcm)と同程度の低抵抗を有するものであった。
【0015】次に、本発明の第2実施例について説明する。市販の金ペースト(例えば、有機溶媒中に平均粒子径が0.01μm以下の金でなる微粒子を分散させた金ペースト)を、シリコン基板1上に、スクリーン印刷によって塗布する。上記第1実施例と同様な条件で、仮焼及び焼結を行う。これによって、金ペーストを塗布した塗布膜2の有機溶媒を加熱分解させ、かつ加熱分解で生じた残留不純物を除去し、低温で、高密度、低抵抗の金バンプを形成した。なお、本実施例では、貴金属である金ペーストを用いているので、上記第1実施例のように、焼結時に、還元性雰囲気中で行なうことは必ずしも、必要ない。しかしながら、最近、金のような貴金属でも、超微粒子では表面が酸化していることが判明している。そのため、この表面酸化のために、形成された金バンプが、高抵抗であったり、接着力の低下を招く恐れがあるので、本実施例では、上記第1実施例と同様に、還元性雰囲気中で焼結を行なっている。」

(8)甲8の記載事項
甲8には、以下の記載がある。

(8a)「【請求項1】 平均粒子サイズ0.2μm以上10μm以下の銅系金属粉末を主成分とする導電性ペースト組成物において、金属酸化剤を含有することを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項2】 金属酸化剤が、該銅系金属粉末が焼結を開始する前に還元もしくは分解により平均粒子サイズ1nm以上100nm以下の金属超微粒子を形成する金属酸化剤であることを特徴とする請求項1記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】 平均粒子サイズ0.2μm以上10μm以下の銅系金属粉末を主成分とする導電性ペースト組成物において、平均粒子サイズ1nm以上100nm以下の金属超微粒子を含有することを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項4】 請求項3の導電性ペースト組成物において、予め該金属超微粒子が金属酸化剤を還元することによって形成され、該導電性ペースト組成物中において金属超微粒子相互が実質的に分散して存在していることを特徴とする導電性ペースト組成物。
【請求項5】 請求項3、4の導電性ペースト組成物において、該金属超微粒子が銀、ニッケル、金、パラジウム、白金、コバルト、銅の中から選ばれた少なくとも1種の金属超微粒子であることを特徴とする導電性ペースト組成物。」

(8b)「【0021】本発明の導電性ペースト組成物は、焼結性向上等の効果が最も期待できる、いわゆるサーメットタイプの厚膜材料(サーメット・シック・フィルム)として使用されるが、これだけに限定されず熱硬化型ポリマーで金属粒子を固めて使用するポリマー・シック・フィルム用ペーストとしても用いることができる。本発明の導電性ペーストは、各種回路の導体部、チップ部品等の端子電極やその接合材料、各種導電性接着剤、はんだ付け下地材、スルーホール用材料、電磁波シールド材料などに使用することができる。」

(9)甲9の記載事項
甲9には、以下の記載がある。

(9a)「


(127頁右欄16?39行)
(当審訳:フリーPVPの濃度とパラジウムナノ粒子へのPVP吸着量(Γ、gm^(-2))を表3に示す。パラジウムナノ粒子へのPVP吸着量は、フリーPVPの濃度から求めた。PVPのMwの増加に伴いパラジウムナノ粒子へのPVP吸着量は増大し、パラジウムナノ粒子当たりのPVP分子の数は減少する。懸濁液中で金属粒子を保護しているポリマーの主鎖は「トレイン」、「ループ」、「テール」と呼ばれる一連のセグメントで構成されると考えられる[18]。トレインは金属粒子表面と直接接しており、ループとテールはそれぞれポリマー鎖の中間、自由端であり、ともにバルク溶液にまで及んでいる。よって、トレインは粒子表面と最も強力に相互作用し、これを最も近くで覆っている。文献[19]によれば、ポリマー吸着量がポリマーの分子量と無関係の場合、ポリマーセグメントはすべてトレインの状態であるという。よって、パラジウムナノ粒子へのPVP吸着量がPVPのMwに依存するということは、吸着したPVPにループとテールが存在することを示している。)

(9b)「


(128頁)
(当審訳:表3
パラジウム粒子へのPVP吸着量とパラジウム粒子懸濁液中のフリーPVPの濃度
PVPのMw・・・平均粒径 ・・・)

(9c)「


(129頁)
(当審訳:表4
吸着PVPの厚さとPVP吸着層を含むパラジウム粒子の粒径^(b)
PVPのMw・・・Pd粒子の平均粒径 ・・・)

(9d)「


(129頁左欄5?15行)
(当審訳:沈降係数(S)と超遠心法で得たデータから計算したPVP吸着層の厚さ(δ)を表4に示す。PVP吸着層の厚さは、PVPのMwが6000から574000に増加するのに伴い、1.9nmから7.8nmに増大する。テールとループの両方がPVP吸着層の厚みに寄与している。PVPのMwの増加に伴うPVP吸着層の厚みの増大は、おそらく分散媒にまで及ぶループとテールの長さ伸びることによるものと考えられる。)

(10)甲10の記載事項
甲10には、以下の記載がある。

(10a)「


(6?12行)
(当審訳:製品仕様
製品名:
Brij S 100 - 平均分子量 -4,670
・・・
化学式: (C2H4O)nC18H38O)

(11)甲11
甲11には、以下の記載がある。

(11a)「


(1頁12行)

(11b)「


(2頁7行)

(11c)「


(2頁22?23行)

(12)甲12の記載事項
甲12には、以下の記載がある。

(12a)「


(8292頁要約部1?3行)
(当審訳:イソオクタンおよびデカンの逆マイクロエマルションの特徴が、界面活性剤のエアロゾルOT(AOT)と、極性溶媒のホルムアミド、エチレングリコール、アセトニトリル、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミドおよび1,2-プロパンジオールを使用して明らかにされた。)

(12b)「


(8292頁右欄下から19?4行)
(当審訳:いくつかの参考文献では、非水性の逆マイクロエマルションを生成し、制限のある非水極性環境における化学作用に影響を及ぼしていた。特に、ディールス・アルダー反応(メチルアクリレートをシクロペンタジエンに付加)などの有機反応を、ホルムアミド/臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)1-ブタノール/イソオクタンの逆マイクロエマルション中で起こした。^(14,17) Mukherjeeら^(18)はAOTとイソオクタンを使用して、水性および非水性のエチレングリコールのマイクロエマルション中でクリスタルバイオレットのアルカリ加水分解を測定した。この研究で、水性環境を上回るエチレングリコールのマイクロエマルションの反応速度は、反応の活性状態がより安定していることに起因するという仮説が立てられた。酸化亜鉛とBaFe_(12)O_(19)のナノクラスターが乾燥エタノール/金属ビス(2-エチルヘキシル)スルホサクシネート/イソオクタンの逆マイクロエマルジョンで形成された。^(19,20)これらすべての研究で、代替の極性溶媒が目的の化学作用を促進した。)

(12c)「


(8293頁左欄1?5行)
(当審訳:本研究では、特に逆ミセル環境の作成に重点を置いて、このような環境の性質について説明し、新規の化学反応媒体を開発するための枠組みを示す。)

(13)甲13
甲13は、用語「ゾル」の解説であるところ、摘記を省略する。

(14)甲14の記載事項
甲14には、以下の記載がある。

(14a)「


(564頁要約部1?4行)
(当審訳:メチルイソブチルケトンおよびブロモベンゼンに溶解させたそれぞれの酢酸塩を熱分解させることにより、Pd-Cu/Cu_(2)Oの二元金属コロイドを作製した。メチルイソブチルケトン中では酢酸パラジウムのモル分率が増加するに従ってPd-Cu_(2)Oコロイドの平均粒径が約130nmから約50nmに減少したのに対し、ブロモベンゼン中ではPd-Cuコロイドの粒径は約8nmから約15nmに増大した。)

(14b)「


(564頁右欄6?12行)
(当審訳:Pd-Cu二元金属コロイドの作製においては、種々の割合の酢酸パラジウムと酢酸銅(II)を有機溶媒に溶解させ、それぞれの溶液を上記のように還流させた。酢酸パラジウムと酢酸銅(II)の混合比は、1:5、2:4、3:3、4:2、5:1であった。混合した酢酸塩の総濃度は0.5mmoldm^(-3)、還流時間は20分とした。)

(15)甲15の記載事項
甲15には、以下の記載がある。

(15a)「


(254頁左欄下から10行?右欄8行)
(当審訳:より分散性の高いCuPd二元金属コロイドの作製にアプローチする際、我々はEsumi^(4)の方法を改良して、還元性アルコール溶媒(2-エトキシエタノール)中でパラジウムの酢酸塩と銅の酢酸塩を還元するという方法を用いた。この還元性アルコール溶媒は、沸点(135℃)でPd(II)を速やかに金属に還元する。作製されたゼロ価のPdは成長するPd粒子の表面においてCu(II)を還元するので、二元金属粒子の形成を確実にする化学的手段を提供することが期待される。Esumiの方法をさらに改良して、我々は粒径分布の狭い小さな粒子の形成を期待して、ポリ(ビニルピロリドン)すなわちPVPを安定化高分子として用いた。
酢酸パラジウム(Alfa社製)と酢酸銅水和物(Alfa社製)との混合物を2-エトキシエタノール中で加熱し、ポリ(ビニルピロリドン)(分子量[MW]40000、Aldrich社製)の存在下において2時間還流させる(135℃)ことにより、パラジウムー銅粒子を作製した。)

(15b)「


(254頁右欄下から12?8行)
(当審訳:2-エトキシエタノール中で作製した試料の透過型電子顕微鏡(TEM)画像では、明確に形成された単分散粒子が一貫して確認できる。作製物ごとに、平均粒径には30?50Åの範囲で、±10%のばらつきがあった。Figure 1には粒径が40±4ÅのPdCu/PVP試料が示される。)

(16)甲16の記載事項
甲16には、以下の記載がある。

(16a)「


(275頁「要旨」1?3行)
(当審訳:保護ポリマーであるポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)(PVP)の存在下において、塩化パラジウムおよび塩化金酸のCH_(3)0H-H_(2)O溶液(体積比で1:1)を還流させることにより、PVPに保護されたパラジウム-金の二元金属コロイドを得た。)

(16b)「


(276頁下から13?5行)
(当審訳:二元金属コロイドの作製
PVPに保護されたパラジウム-金の二元金属コロイドの作製に用いた方法は、報告されている方法[10]と同様のものである。すなわち、PdCl_(2)(3.0mg、0. 017mmol)、HAuCl_(4)・4H_(2)0 (7. Omg、0. 017mmol)およびPVP (150mg、単量体単位で1.34mmol)をCH_(3)0H-H_(2)Oの混合溶液(体積比で1:1、40ml)に溶解させ、室温で1時間攪拌した。NaOHのCH_(3)0H-H_(2)O溶液(10ml、NaOHを10mg含有)を添加し、さらに混合物を40分間還流させた。茶褐色をしたパラジウム-金の均質な二元金属コロイドが形成された(PVP-Pd/Au(1/1)と名付けた)。)

(16c)「


(277頁下から13?10行)
(当審訳:二元金属コロイドPVP-Pd/AU(1/1)は最小平均直径21.4Å、最小標準偏差9.6Åであり、コロイドPVP-Pd/AU(1/10)粒子は10Åから140Åに広がり、平均直径は50.0Å、標準偏差28.8Åである。)

(16d)「


(283頁「結論」1?4行)
(当審訳:(1)ポリマーに保護されたパラジウム-金の二元金属コロイド及びパラジウム又は金の一元金属コロイドは、保護ポリマーPVP及び少量の水酸化ナトリウムの存在下でアルコールによる還元法により作製することができる。)

(17)甲17の記載事項
甲17には、以下の記載がある。

(17a)「


(1769頁要約部1?5行)
(当審訳:ポリ(Nビニル-2-ピロリドン)の存在下において、PdCl_(2)およびH_(2)PtCl_(6)の水/エタノール溶液を還流させることにより、パラジウム-金二元金属クラスターのコロイド状の分散液を作製した。電子吸光スペクトルと透過型電子顕微鏡画像は、クラスター中に合金が形成されていることを示していた。)

(18)甲18の記載事項
甲18には、以下の記載がある。

(18a)「


(457頁要約部1?3行)
(当審訳:ヒドラジンまたは水素化ホウ素ナトリウムを用いて有機溶媒(シクロヘキサン、クロロホルム)中に抽出したそれぞれに対応するPd塩とPt塩を還元することにより、Pd-Ptの二元金属コロイドを作製した。使用した抽出剤はトリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)とジステリアルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)の2つである。)

(18b)「


(457頁右欄「実験の部」12?21行)
(当審訳:手順.抽出手順は以下のとおりである。PdCl_(2)またはH_(2)PtCl_(6)を水に溶解させ、抽出剤を含有する有機溶媒に添加した。TOPOのケースでは、抽出比率を高めるため0. 6nmol dm^(-3)のHClを使用した。その後、25℃で12時間、混合した溶液を振とう攪拌し、抽出を平衡化させた。抽出後、抽出したPdCl_(2)およびH_(2)PtCl_(6)のそれぞれの有機溶媒溶液を混合して様々な混合比率の溶液を調製した後、室温で還元剤を添加することによって直接還元した。還元剤の添加量は抽出された塩類の量の約3倍であった。)

(18c)「


(459頁右欄「要旨」1?14行)
(当審訳:ヒドラジンまたは水素化ホウ素ナトリウムを用いて有機溶媒中に抽出したそれぞれに対応するPd塩とPt塩を還元することにより、Pd-Ptの二元金属コロイドを作製した。トリオクチルホスフィンオキシド(TOPO)とジステリアルジメチルアンモニウムクロリド(DDAC)を抽出剤として使用した。TOPO-シクロヘキサンーヒドラジンの系およびDDAC-クロロホルムーヒドラジンの系では、Pd-Ptの粒径は20?30nmの範囲であり、Pdの供給モル分率に依存していたのに対し、TOPO-シクロヘキサン-水素化ホウ素ナトリウムの系およびDDAC-クロロホルムー水素化ホウ素ナトリウムの系ではPd-Ptの粒径は5?8nmの範囲であり、供給モル分率とは無関係であった。Pd-Ptコロイド粒子の分敵安定性は、粒径が小さくなるほど向上した。)

(19)甲19の記載事項
甲19には、以下の記載がある。

(19a)「


(7449頁左欄「実験の部」6?19行)
(当審訳:Pd/Pt二元金属クラスターの調製 Pd/Pt二元金属クラスターのコロイド分散体は、アルコール還元法により調製された。塩化パラジウム(II) (25mlのエタノール中に0. 033mmol)とヘキサクロロ白金酸 (25mLの水中に0.033mmol)をさまざまな比率で混合し、次にポリ(N-ビニル-2-ピロリドン)(PVP,K-30, MW 40000, 151mg, 1.36mmol単量体単位)を保護ポリマーとして加えることにより、Pd(II)とPt (IV)の両方のイオンを含むエタノール/水(1/1 v/v) (50ml)溶液が調製された。両方の金属の総量は、エタノール/水(1/1v/v)から成る50mLの混合溶液中で常に3.3×10^(-5)molに維持された。その溶液を約100℃で1.5時間、窒素下で還流することにより、パラジウム/白金の二元金属のコロイド分敵体の安定した暗褐色の均質な溶液が得られた。)

(20)甲20
甲20は、ポリビニルピロリドンが界面活性剤であることを示すものであるところ、摘記を省略する。

4 乙号証について
(1)乙1?4、6及び7については、摘記を省略する。

(2)乙5の記載事項
乙5には、以下の記載がある。



(第1頁)

(3)乙8
乙8についての摘記は、上記3(11)の甲11と同じである。


第5 当審の判断
1 無効理由1(進歩性)
無効理由1の対象となっていた本件訂正前の請求項2及び3に係る発明について、本件訂正により本件訂正前の請求項2及び3が削除されたため、無効理由1は理由がない。

2 無効理由2(進歩性)
(1)本件発明と引用発明との対比
ア 本件発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「硝酸銀」である金属無機化合物と本件発明における「金属有機化合物」とは、「金属化合物」である点で共通する。

イ また、引用発明は、「より強い還元剤を用いることにより、エタノール中で高濃度の銀粒子の分散液を得る」ものであるから、引用発明の「予め作製した硝酸銀/界面活性剤の分散液」も、分散液の溶媒は、非水系溶媒であるエタノールを用いるものであって、当該エタノール中で界面活性剤によりコロイド化するものであるといえる。
してみると、引用発明において、「予め硝酸銀/界面活性剤の分散液を作製」することと、本件発明において、「金属有機化合物を界面活性剤を用いて疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程」とは、「金属化合物を界面活性剤を用いて非水系溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程」である点で共通する。

ウ さらに、引用発明の「粒子径がナノメートルの範囲」である「銀粒子」は、本件発明の「超微粒子」に相当する。
また、引用発明は、「界面活性剤の分子は前記銀粒子の表面上に吸着し、立体的安定化を促進する」ことから、引用発明において、「銀粒子の表面上に吸着し」た「界面活性剤の分子」は、本件発明の「界面活性剤殻」に相当するといえる。
そして、引用発明において、「界面活性剤の分子」が「表面上に吸着し、立体的安定化を促進する」「粒子径がナノメートルの範囲」である「銀粒子」は、本件発明における「金属複合超微粒子」に相当するといえる。
してみると、引用発明の「この分散液に対してより強い還元剤を用いることにより、エタノール中で高濃度の銀粒子の分散液を得」ることは、本件発明の「コロイド溶液中に還元剤を添加することにより前記超微粒子前駆体から金属を還元析出させて、前記金属から形成される金属核の外周に少なくとも界面活性剤殻を有する金属複合超微粒子を形成する第2工程」に相当するといえる。

よって、上記ア?ウより、本件発明と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。

<一致点>
「金属化合物を界面活性剤を用いて非水系溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程と、このコロイド溶液中に還元剤を添加することにより前記超微粒子前駆体から金属を還元析出させて、前記金属から形成される金属核の外周に少なくとも界面活性剤殻を有する金属複合超微粒子を形成する第2工程からなる金属複合超微粒子の製造方法。」である点。

<相違点1>
金属化合物について、本件発明は、「金属有機化合物」であるのに対し、引用発明は、金属無機化合物である「硝酸銀」である点。

<相違点2>
非水系溶媒について、本件発明は、「疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒」であるのに対し、引用発明は、親水性非水系溶媒である「エタノール」である点。

(2)相違点について判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。

請求人の証拠方法である甲各号証のいずれにも、界面活性剤で金属化合物をコロイド化した後に還元することにより金属超微粒子を製造する方法において、「疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中」でコロイド化することは記載されていない。

そして、本件特許明細書の5頁11?13行に記載のように、本件発明においては、「界面活性剤」を添加した「疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中」でコロイド化することによって、コロイド化の促進とコロイド粒子の安定性・分散性を強化するという格別顕著な効果を奏するものであると認められる。

この点について、請求人は、令和2年1月7日付け口頭審理陳述要領書の5頁下から10行?7頁下から10行において、概略以下a及びbのとおり主張している。

a 上記第4の3(3)に摘示(3d)のとおり、甲3には「上記溶媒としては・・・例えば、水;アセトン、メタノール、エチレングリコール、酢酸エチル等の有機溶媒等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。」と記載されており、ここで直接的に明記された溶媒はわずか数種類にすぎず、それらの組合せも限られたものであるから、疎水性溶媒である酢酸エチルと、親水性溶媒であるアセトン、メタノール、エチレングリコールとの組合せは、「2種以上を併用」する旨の具体的内容として、具体的に記載されているということができる。

b また、上記第4の3(12)の摘示(12b)のとおり、甲12には、「いくつかの参考文献では、非水性の逆マイクロエマルションを生成し、制限のある非水極性環境における化学作用に影響を及ぼしていた」として、「ディールス・アルダー反応(メチルアクリレートをシクロペンタジエンに付加)などの有機反応を、ホルムアミド/臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)1-ブタノール/イソオクタンの逆マイクロエマルション中で起こした。^(14,17)」、「Mukherjeeら^(18)はAOTとイソオクタンを使用して、水性および非水性のエチレングリコールのマイクロエマルション中でクリスタルバイオレットのアルカリ加水分解を測定した。」及び「酸化亜鉛とBaFe_(12)O_(19)のナノクラスターが乾燥エタノール/金属ビス(2-エチルヘキシル)スルホサクシネート/イソオクタンの逆マイクロエマルジョンで形成された。^(19,20)」ことが記載され、また、同摘示(12c)及び(12a)には、「本研究では、特に逆ミセル環境の作成に重点を置いて、このような環境の性質について説明し、新規の化学反応媒体を開発するための枠組みを示す」として、「イソオクタンおよびデカンの逆マイクロエマルションの特徴が、界面活性剤のエアロゾルOT(AOT)と、極性溶媒のホルムアミド、エチレングリコール、アセトニトリル、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミドおよび1,2-プロパンジオールを使用して明らかにされた」ことが記載されている。
ここで、「ホルムアミド」、「エチレングリコール」、「エタノール」及び「極性溶媒」は親水性非水系溶媒であり、「臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)1-ブタノール」、「AOT」及び「金属ビス(2-エチルヘキシル)スルホサクシネート」は界面活性剤であり、「イソオクタン」及び「デカン」は疎水性非水系溶媒であって、溶媒として親水性非水系溶媒と疎水性非水系溶媒の混合溶媒が使用されており、後の化学反応(例えば金属化合物を反応させて金属酸化物のナノ粒子を得る反応)のための溶媒として、親水性非水系溶媒/界面活性剤/疎水性非水系溶媒の溶媒系を用いることは、常套手段(技術常識)である。

しかしながら、上記aの主張について、甲3には、溶媒として、疎水性溶媒である酢酸エチルと、親水性溶媒であるアセトン、メタノール、エチレングリコールとの組合せが示されているにしても、甲3は、着色剤として貴金属コロイドや銅コロイドを用いる塗料組成物に関するものであるから、溶媒についての当該組合せを選択した上で、引用発明における「硝酸銀/界面活性剤の分散液」の溶媒であるエタノールと置き換える動機付けがあるとはいえない。

また、上記bの主張について、甲12には、溶媒として親水性非水系溶媒と疎水性非水系溶媒の混合溶媒を使用することが記載されているにしても、それは、逆マイクロエマルションを生成するものであるし、「メチルアクリレートをシクロペンタジエンに付加」、「クリスタルバイオレットのアルカリ加水分解」及び「酸化亜鉛とBaFe_(12)O_(19)のナノクラスターの形成」を行うためのものであるから、引用発明における「硝酸銀/界面活性剤の分散液」の溶媒であるエタノールと置き換える動機付けがあるとはいえない。

したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

(3)無効理由2についての小括
よって、相違点1について検討するまでもなく、本件発明は、引用発明と甲第2、3号証に記載の技術手段及び甲第6?8号証に記載の周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
さらに、無効理由2の対象となっていた本件訂正前の請求項2?4に係る発明について、本件訂正により請求項2?4が削除されたことから、無効理由2は理由がない。

3 無効理由3(サポート要件違反、実施可能要件違反、明確性要件違反)
(1)サポート要件違反
ア サポート要件違反の判断について
特許請求の範囲の記載が、明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。

イ 本件発明が解決しようとする課題
本件特許明細書の2頁43行?3頁4行によれば、本件発明が解決しようとする課題(以下「本件課題」という。)は、「量産性、価格および粒径可変性については不十分である」こと及び「分散性を更に強固にする技術開発も要請されていた」ことであると認められる。

ウ 発明の詳細な説明の記載により本件課題を解決できると認識し得る範囲の発明
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

(ア)「本発明の次の特徴は、前記金属複合超微粒子を生成するために、コロイド溶液還元法を適用したことである。従来の金属有機化合物を密閉装置内で加熱還元する方法では、その量産性と粒径制御性に最大の難点があった。本発明はこれらの両問題を一挙に解決する方法としてコロイド溶液還元法を採用する。
つまり、本発明の製法における特徴は、金属有機化合物又は金属無機化合物が集合したコロイド粒子を形成し、このコロイド粒子を超微粒子前駆体とするものである。このコロイド粒子の粒径を制御すれば、これを還元してできる金属複合超微粒子の粒径も可変に設計することができる。溶液中でコロイドを形成するから、溶液は大気に対し開放されていてもよい。従って、操作性が簡単で量産性を有し、安価な超微粒子を提供できる。」(4頁23?31行)

(イ)「コロイドの粒径を制御するには、金属有機化合物又は金属無機化合物の濃度を調整したり、疎水性溶媒と親水性溶媒の添加量や添加比を調整したり、界面活性剤の添加量を調整したり、金属の還元条件を調整する方法がある。金属有機化合物又は金属無機化合物の濃度を濃くしたり、界面活性剤の添加量を少なくすると、コロイドの粒径が大きくなる。逆は、コロイドの粒径が小さくなる。」(4頁37?41行)

(ウ)「第2の方法では、金属有機化合物又は金属無機化合物を疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒でコロイド化するだけでなく、界面活性剤を添加してコロイド化の促進と、コロイド粒子の安定性・分散性を強化している。金属有機化合物又は金属無機化合物をどちらの溶媒に先に添加してもよい。金属有機化合物を用いた場合には、還元によって、金属核の周囲に有機化合物殻と界面活性剤殻の両者が形成される。金属無機化合物を用いた場合には、還元により無機成分は溶媒中に溶解・分散してゆくから、金属核の周囲に界面活性剤殻だけが形成される。両ケースともに、金属複合超微粒子は界面活性剤殻により被われているため、溶媒中で強力な分散性を有する。」(5頁11?18行)

(エ)以上の記載から、量産性及び価格については、上記(ア)から、(a)「コロイド溶液還元法を採用すること」により、また、粒径可変性については、上記(ア)及び(イ)から、(b)「コロイド溶液還元法を採用し、還元前に金属有機化合物の濃度を調整したりすること」により、そして、分散性を更に強固にすることについては、上記(ウ)から、(c)「金属有機化合物を疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒でコロイド化するだけでなく、界面活性剤を添加すること」により、それぞれ解決することによって、本件課題を解決できるものと理解できる。

そして、本件発明の実施例である実施例3には以下の記載がある。

(オ)「実施例3
[酢酸銀の第2方法によるコロイド化]
酢酸銀を親水性非水系溶媒であるメタノールに溶解させて濃度が0.1M(mol/L)の酢酸銀溶液を作る。この溶液5mLに疎水性非水系溶媒のトルエンを40mL添加して攪拌し、更に界面活性剤である商品名テキサホール963(ポリカルボン酸アミン塩)を0.2g?0.5g添加してコロイド化する。
このコロイド溶液に還元剤としてアセトアルデヒドを添加し、65℃の定温度条件で5分間攪拌すると、溶液の色が透明なクロームイエローになり、金属複合超微粒子の分散溶液が得られた。この溶液を冷蔵庫内に1週間貯蔵しても透明な黄色溶液の変化は無く、安定な金属複合超微粒子が溶液分散状態で形成された。
この溶液の表面プラズモン吸収を見ると、波長が450nmの位置に吸収ピークが見出された。このことは、直径が約30nmの金属核を有していることを示す。また、原子間力顕微鏡(AFM)でこの金属複合超微粒子を撮像すると、全体がドーナツ状で、ドーナツ部の直径が約100nmであることが分かった。高分解能透過型電子顕微鏡(HRTEM)で調べると、金属銀の格子像が明確に見られ、その粒径分布の中心は約30nmであり、表面プラズモン吸収の結果と合致した。
このことから、ドーナツの中空部に金属核があり、ドーナツ部が界面活性剤殻(一部有機化合物殻を含有した)であり、この実施例では約30nmの銀の金属核を有した金属複合超微粒子が得られた。」

上記において、「酢酸銀」は、「金属有機化合物」であることから、実施例3は上記(エ)の(a)?(c)を満たし得るものであって、「安定な金属複合超微粒子が溶液分散状態で形成」されることから、「分散性」についての本件課題を解決できるものといえるし、コロイド溶液からの還元を行うことにより、量産性及び価格についても、また、金属有機化合物の濃度を調整すれば、粒径可変性についても、それぞれ課題を解決できるものと認められる。

してみると、発明の詳細な説明の記載により本件課題を解決できると認識し得る範囲の発明(以下「課題解決発明」という。)は、上記(エ)の(a)?(c)を満たし得るものであるということができる。

エ 本件発明と課題解決発明との対比
上記ウから、本件特許明細書の記載を総合勘案すれば、上記(エ)の(a)?(c)を満たし得る本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識し得る範囲のものである。

オ 請求人の主張について
請求人は、令和2年1月7日付け口頭審理陳述要領書の9頁2?13行において、以下を主張している。

(ア)界面活性剤殻については、いずれの実施例においても界面活性剤殻によって分散安定性が強固にされることが確認されておらず、完成された発明として明細書に記載されたものということはできない。

(イ)「金属無機化合物」の場合については、実施例が一切記載されておらず、(本件明細書によれば有機化合物殻によって作用効果を奏する)金属有機化合物の場合の記載から演繹できるものではなく、完成された発明として明細書に記載されたものということはできない。

(ウ)「金属種の異なる複数の金属無機化合物」や「金属種の異なる複数の金属有機化合物」の場合についても実施例が一切記載されておらず、完成された発明として明細書に記載されたものということはできない。

しかしながら、上記(ア)の主張については、上記ウ(エ)の実施例3に記載のとおり、金属複合超微粒子の分散溶液を「冷蔵庫内に1週間貯蔵しても透明な黄色溶液の変化は無く、安定な金属複合超微粒子が溶液分散状態で形成された」こと、金属複合超微粒子は「全体がドーナツ状で」、「ドーナツの中空部に金属核があり、ドーナツ部が界面活性剤殻(一部有機化合物殻を含有した)」であることから、界面活性剤殻によって分散安定性が強固にされるものであると認められる。

また、上記(イ)及び(ウ)の主張については、本件訂正により、金属複合超微粒子の原料から「金属無機化合物」及び「金属種の異なる複数」の「化合物」が削除されたことから、理由がない。

したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

カ サポート要件違反についての小括
よって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、サポート要件違反に係る無効理由3は理由がない。

(2)実施可能要件違反
実施可能要件の判断について
物を生産する方法の発明における発明の「実施」とは、その方法の使用をする行為、その方法により生産した物を使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為(以下「使用等」という。)をいう(特許法2条3項2号、3号)から、特許法36条4項1号の「その実施をすることができる」とは、上記の行為をすることができることである。したがって、同号の実施可能要件は、物を生産する方法の発明においては、明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づき、当業者が、発明に係る方法により、発明に係る物を生産することができ、かつ、その物を使用等できるかどうかによって判断すべきであるということができる。

イ 本件特許明細書における実施例の記載について
本件特許明細書における本件発明に係る実施例3の記載は、上記のとおりであって、「金属複合超微粒子の製造方法」として、物を生産する方法の発明である本件発明において、その発明に係る物である「金属複合超微粒子」を生産することができるように、その方法の手順が記載されているし、その方法により、「金属核の外周に少なくとも界面活性剤殻を有する金属複合超微粒子」を生産できることが記載され、さらに、出願当時の技術常識に基づけば、当該実施例3において具体的に示されている「酢酸銀」、「メタノール」及び「トルエン」以外の「金属有機化合物」、「親水性非水系溶媒」及び「疎水性非水系溶媒」を用いる場合であっても、本件発明の実施をすることができるものと認められる。

ウ 請求人の主張について
請求人は、令和2年1月7日付け口頭審理陳述要領書の9頁27行?10頁14行において、以下を主張している。

(ア)界面活性剤殻については、いずれの実施例においても界面活性剤殻によって分散安定性が強固にされることが確認されておらず、本件明細書の記載からその物を生産することもその物を使用すること等もできない。

(イ)金属無機化合物については、実施例が一切記載されておらず、実施例がなければ、本件明細書の記載からその物を生産することもその物を使用すること等もできない。

(ウ)金属種の異なる複数の金属無機化合物や「金属種の異なる複数の金属有機化合物についても実施例が一切記載されておらず、本件明細書の記載からその物を生産することもその物を使用すること等もできない。

しかしながら、上記(ア)の主張については、上記ウ(エ)の実施例3に記載のとおり、金属複合超微粒子の分散溶液を「冷蔵庫内に1週間貯蔵しても透明な黄色溶液の変化は無く、安定な金属複合超微粒子が溶液分散状態で形成された」こと、金属複合超微粒子は「全体がドーナツ状で」、「ドーナツの中空部に金属核があり、ドーナツ部が界面活性剤殻(一部有機化合物殻を含有した)」であることから、界面活性剤殻によって分散安定性が強固にされるものであると認められる。

また、上記(イ)及び(ウ)の主張については、本件訂正により、金属複合超微粒子の原料から「金属無機化合物」及び「金属種の異なる複数」の「化合物」が削除されたことから、理由がない。

したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。

実施可能要件違反についての小括
よって、本件発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないとはいえないから、実施可能要件違反に係る無効理由3は理由がない。

(3)明確性違要件違反
明確性要件違反についての請求人の主張は、令和1年8月9日付け訂正請求書により訂正が求められた特許請求の範囲の請求項1及び2において、「金属複合超微粒子は配線形成材料として使用される」として、金属複合超微粒子の用途を特定する訂正をしようとしたことにより生じたものであったところ、当該訂正請求書による訂正の請求は取り下げられたものとみなされるとともに、本件訂正では、当該用途の特定はされていないため、明確性要件違反に係る無効理由3は理由がない。

(4)無効理由3についての小括
したがって、本件発明の請求項の記載は、明確でないとも、発明の詳細な説明に記載したものでもないともいえないし、また、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないともいえないから、無効理由3は理由がない。


第5 まとめ
以上のとおり、令和2年5月19日付け訂正請求書によって求められる訂正は、これを認めるべきものであり、当該訂正によって訂正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明の特許を無効とすべき理由はなく、当該訂正によって請求項2?4は削除されたため、これらの請求項に係る発明の特許に対する無効審判の請求については、対象となる請求項が存在しないものとなった。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属有機化合物を界面活性剤を用いて疎水性非水系溶媒と親水性非水系溶媒の混合溶媒中でコロイド化して超微粒子前駆体を形成する第1工程と、このコロイド溶液中に還元剤を添加することにより前記超微粒子前駆体から金属を還元析出させて、前記金属から形成される金属核の外周に少なくとも界面活性剤殻を有する金属複合超微粒子を形成する第2工程からなることを特徴とする金属複合超微粒子の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
(削除)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2020-09-28 
結審通知日 2020-09-30 
審決日 2020-10-16 
出願番号 特願2001-503014(P2001-503014)
審決分類 P 1 113・ 537- YAA (B22F)
P 1 113・ 121- YAA (B22F)
P 1 113・ 536- YAA (B22F)
最終処分 不成立  
特許庁審判長 中澤 登
特許庁審判官 亀ヶ谷 明久
土屋 知久
登録日 2011-04-28 
登録番号 特許第4732645号(P4732645)
発明の名称 金属複合超微粒子の製造方法  
代理人 坂根 大亮  
代理人 鎌田 邦彦  
代理人 大上 雅史  
代理人 柳野 嘉秀  
代理人 柳野 隆生  
代理人 三木 久巳  
代理人 福本 洋一  
代理人 大上 雅史  
代理人 中川 正人  
代理人 戸田 俊材  
代理人 三木 久巳  

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