• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03F
管理番号 1371084
審判番号 不服2020-471  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-14 
確定日 2021-02-12 
事件の表示 特願2016-563899「感光性ポリイミドをマイクロ波処理する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 7月16日国際公開、WO2015/106234、平成29年 2月16日国内公表、特表2017-505464〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)1月13日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2014年(平成26年)1月13日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年1月15日に手続補正がなされ、同年11月15日付けで拒絶理由が通知され、平成31年4月22日に意見書の提出とともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされ、令和元年9月4日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し令和2年1月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。その後、令和2年2月26日に審判請求書の請求の理由について補正がなされた。

2 本件発明
本願の請求項1?15に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?15に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 フォトポリマー膜を硬化させる方法であって、
選択された基板上にフォトポリマー膜を堆積させること、および
前記フォトポリマー膜を、選択された時間の、セ氏200?340度の選択された温度での、20?200,000ppmの範囲の酸素濃度を含む選択された雰囲気中でのマイクロ波加熱によって硬化させること
を含み、前記酸素濃度は、既知の量の酸素ガス(O_(2))を前記雰囲気に与えるか、又は、前記雰囲気の圧力を調節するかの少なくとも一方によって維持される方法。」

3 原査定の拒絶理由の概要
原査定で通知された拒絶理由の一つは、概略、本願の請求項1、2、5?7、9?11に係る発明は、その優先権主張の日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物である引用文献2に記載された発明に基づいて、その優先権主張の日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

引用文献2:特開2006-30413号公報

4 引用文献の記載事項及び引用発明
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶理由に引用され、本願の優先権主張の日前の平成18年2月2日に頒布された刊行物である特開2006-30413号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の記載事項がある。なお、合議体が発明の認定等に用いた箇所に下線を付した。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性を有するポリアミドを含有し、マイクロ波照射によって硬化が促進可能なマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物、及びこれを用いた電子部品に関する。

(中略)

【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ポリイミド前駆体やポリベンゾオキサゾール前駆体を熱的に脱水閉環させてポリイミド薄膜やポリベンゾオキサゾール薄膜とする場合、通常、350℃前後の高温を必要とする。この350℃前後の高温は、基板に悪影響を与えるおそれがある。そこで、最近は熱履歴に由来する不良回避のため、半導体製造プロセスにおける処理温度の低温化が望まれている。このプロセスにおける処理温度の低温化を実現するためには、表面保護膜でも、従来の350℃前後というような高温でなく、約250℃未満の低温で脱水閉環ができ、脱水閉環後の膜の物性が高温で脱水閉環したものと遜色ない性能が得られるポリイミド材料やポリベンゾオキサゾール材料が不可欠となる。しかしながら、熱拡散炉を用い温度を下げて脱水閉環する場合では、一般的に膜の物性は低下する。

(中略)

【0010】
上記特許文献7(特許第3031434号)では、ポリイミド前駆体をマイクロ波により250℃から350℃で熱処理することを提唱している。また、上記特許文献8(米国特許第5738915号)に記載のポリイミド前駆体の脱水閉環方法は、マイクロ波の周波数を短い周期で変化させて照射することにより、ポリイミド層や基板へのダメージを抑える点で半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜として用いるのに好適な方法であるといえる。

(中略)

【0012】
本発明は、アルカリ現像可能なマイクロ波硬化用感光性樹脂組成物に関し、感光性樹脂層を有する基材の温度を250℃未満に保ち、マイクロ波の周波数を変えながらパルス状に照射することにより、感光性樹脂中のポリアミドを低温で脱水閉環させることができ、それによって得られた硬化膜が高温での脱水閉環膜(ポリオキサゾール膜)の物性と差がない、耐熱性に富んだポジ型の感光性樹脂組成物を提供するものである。
【0013】
また、本発明のマイクロ波硬化用感光性樹脂組成物は、良好な形状と特性のパターンを有する。さらに、低温プロセスで脱水閉環できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性の高い電子部品を歩留まり良く提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、前述のようにポリアミドを含むポジ型感光性樹脂組成物からなる基材に、250℃未満で周波数を変えながらマイクロ波をパルス状に照射して脱水環化を行うと、熱拡散炉を用いて250℃以上で脱水環化した膜の物性と差がないことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は次のものに関する。
〔1〕 成膜された後、マイクロ波の照射により、ポジ型の硬化膜となるマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物であって、
下記(a)一般式(I)
【化1】

(式中、Uは4価の有機基を示し、Vは2価の有機基を示す)で表される繰り返し単位を有するアルカリ水溶液可溶性のポリアミドと、(b)o-キノンジアジド化合物と、を少なくとも含むことを特徴とするマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物。

(中略)

【発明の効果】
【0016】
本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物は、基板上に設けられた感光性樹脂膜層を露光・現像後に周波数を変えながらマイクロ波をパルス状に照射する工程において、より低温で、具体的には250℃未満で効率的にポリアミドのフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する。したがって、上記組成物からなる感光性樹脂膜に対して周波数を変えながらマイクロ波をパルス状に照射することにより、感度、解像度、接着性に優れ、さらに低温硬化プロセスでも耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターンが得られる。さらには低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性が高い。また、デバイスへのダメージが少ないことから、歩留まりも高い。」

イ 「【0056】
本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物は、支持基板上に塗布し乾燥する被膜形成工程、露光・現像するパターン形成工程、及び、マイクロ波の周波数を変化させながらパルス状に照射する閉環工程を経て、ポリオキサゾールのパターンとすることができる。
【0057】
本発明のパターン製造法は、上記マイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物を支持基板上に塗布し乾燥する被膜形成工程と、上記被膜形成工程で得られた被膜を露光後、現像液を用いて現像するパターン形成工程と、上記パターン形成工程で得られたパターン中のポリアミドの開環構造を脱水閉環させてポリオキサゾールに変化させる閉環工程とを含むことを特徴とする。
【0058】
支持基板上に塗布し乾燥する被膜形成工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えばTiO_(2)、SiO_(2)等)、窒化ケイ素などの支持基板上に、この感光性樹脂組成物をスピンナーなどを用いて回転塗布後、ホットプレート、オーブンなどを用いて乾燥する。
【0059】
次いで、パターン形成工程では、露光は、支持基板上で被膜となった感光性樹脂組成物に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線などの活性光線を照射する。現像は、露光部を現像液で除去することによりパターンが得られる。現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,ケイ酸ナトリウム,アンモニア,エチルアミン,ジエチルアミン,トリエチルアミン,トリエタノールアミン,テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルカリ水溶液が好ましいものとして挙げられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1?10重量%とされることが好ましい。さらに、上記現像液にアルコール類や界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100重量部に対して、好ましくは0.01?10重量部、より好ましくは0.1?5重量部の範囲で配合することができる。
【0060】
このようにして、支持基板上で被膜となった本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物を露光、つづいて現像した後、後述するが如く、マイクロ波の周波数を変化させながらパルス状に照射してポリアミドを脱水閉環すれば、マイクロ波による低温での脱水閉環プロセスによっても熱拡散炉を用いた高温での脱水閉環膜の物性と差がないようなポリオキサゾールが得られる。
【0061】
前述のように、マイクロ波の周波数を変化させながらパルス状に照射した場合は定在波を防ぐことができ、基板面を均一に加熱することができる点で好ましい。また、基板として後述する電子部品のように金属配線を含む場合、マイクロ波の周波数を変化させながらパルス状に照射すると金属からの放電等の発生を防ぐことができ、電子部品を破壊から守ることができる点で好ましい。
【0062】
本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環させる際に照射するマイクロ波の周波数は0.5?20GHzの範囲であるが、実用的には1?10GHzの範囲であり、さらに2?9GHzの範囲がより好ましい。
【0063】
照射するマイクロ波の周波数は連続的に変化させることが望ましいが、実際は周波数を階段状に変化させて照射する。その際、単一周波数のマイクロ波を照射する時間はできるだけ短い方が定在波や金属からの放電等が生じにくく、その時間は1ミリ秒以下が好ましく、100マイクロ秒以下が特に好ましい。
【0064】
照射するマイクロ波の出力は装置の大きさや被加熱体の量によっても異なるが、概ね10?2000Wの範囲であり、実用上は100?1000Wがより好ましく、100?700Wがさらに好ましく、100?500Wが最も好ましい。出力が10W以下では被加熱体を短時間で加熱することが難しく、2000W以上では急激な温度上昇が起こりやすい。
【0065】
本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環する温度は、先に述べたとおり、脱水閉環後のポリオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けるためにも低い方が好ましい。本発明において脱水閉環する温度は300℃未満が好ましく、250℃未満がさらに好ましく、210℃未満が最も好ましい。なお、基材の温度は赤外線やGaAsなどの熱電対といった公知の方法で測定する。
【0066】
本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環させる際に照射するマイクロ波は、パルス状に「入/切」を繰り返して照射することが好ましい。マイクロ波をパルス状に照射することにより、設定した加熱温度を保持することができ、また、ポリオキサゾール薄膜や基材へのダメージを避けることができる点で好ましい。パルス状のマイクロ波を1回に照射する時間は条件によって異なるが、概ね10秒以下である。
【0067】
本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環させる時間は、脱水閉環反応が十分進行するまでの時間であるが、作業効率との兼ね合いから概ね5時間以下である。また、脱水閉環の雰囲気は大気中、または窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することができる。
【0068】
このようにして、本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物を層として有する基材に、前述の条件でマイクロ波を照射して本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物中のポリアミドを脱水閉環すれば、マイクロ波による低温での脱水閉環プロセスによっても熱拡散炉を用いた高温での脱水閉環膜の物性と差がないポリオキサゾール膜が得られる。」

ウ 「【実施例】
【0075】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。

(中略)

【0079】
〈実施例1?6〉マイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物の調製と特性評価
上記ポリアミド[(a)成分]100重量部に対し、感光剤である成分(b)、フェノール性水酸基を有する化合物(c)、溶剤(d)を表1に示した所定量にて配合し、さらに接着助剤として尿素プロピルトリエトキシシランの50%メタノール溶液10重量部を配合した。この溶液を3μm孔のテフロン(登録商標)フィルタを用いて加圧ろ過して、感光性樹脂組成物の溶液(M1?M6)を得た。表中の(b)成分、(c)成分は、下記構造式のものを使用した。また、(e)成分であるE1とは、γ-ブチロラクトン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート=90/10(重量部)である。
【0080】
【表1】

【0081】
【化9】

【0082】
上記溶液(M1?M6)をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚11?13μmの塗膜を形成した。その後、i線ステッパー(キャノン製FPA-3000iW)を用いてマスクを介してi線(365nm)での縮小投影露光を行った。露光後、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの2.38%水溶液にて現像を行い、残膜厚が初期膜厚の70?90%程度となるように現像を行った。その後、水でリンスしパターン形成に必要な最小露光量と解像度を求めた。結果を下記表2に記す。
【0083】
【表2】

【0084】
さらに、上記溶液(M1?M6)をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚13μmの塗膜を形成した。その後、上記塗膜をラムダテクノロジー社製Microcure2100を用い、マイクロ波出力450W、マイクロ波周波数5.9?7.0GHz、温度200℃、2時間で脱水閉環し、膜厚約10μmのポリオキサゾール膜を得た。次に、このポリオキサゾール膜をシリコン基板から剥離し、剥離膜のガラス転移温度(Tg)をセイコーインスツルメンツ社製TMA/SS600で測定した。また、剥離膜の平均破断伸度(El)を島津製作所製オートグラフAGS-H100Nによって測定した。さらに、剥離膜の5%重量減少温度(Td)をセイコーインスツルメンツ社製TG-DTA6300で測定した。これらの結果を下記表3に示す。
【0085】
【表3】


(中略)

【0088】
〈実施例7?8〉金属配線に対するマイクロ波照射方法の影響
図2は、櫛形銅配線(厚さ5μm、線幅20μm、間隔20μm)を形成した基板の平面構成図である。図3は、図2に表す基板の断面を拡大した要部断面図である。この基板は、SiO_(2)絶縁膜12で覆われたシリコン基板10上に銅配線9が形成され、さらにその上に感光性樹脂膜11で覆われている構造を有する。図2に示す基板上に上記溶液(M1?M2)をスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚13μmの塗膜を形成した。その後、この塗膜をラムダテクノロジー社製Microcure2100を用い、マイクロ波出力450W、マイクロ波周波数5.9?7.0GHz、温度200℃、2時間で脱水閉環し、膜厚約10μmのポリオキサゾール膜を得た。この基板について、銅配線やポリオキサゾール膜の状態を光学顕微鏡で観察した。また、配線間の絶縁性も確認した。その結果を下記表4に示す。

(中略)

【0090】
【表4】

【0091】
実施例7?8では、図2および図3に示すような櫛形銅配線基板上に形成した本発明の感光性樹脂組成物をマイクロ波の周波数を変化させながらパルス状に照射してポリアミドの脱水閉環を行った。マイクロ波照射後に基板の顕微鏡観察を行ったところ、ポリオキサゾール膜や基板へのダメージはないことを確認した。さらに銅配線間の絶縁も保たれていることがわかった。いっぽう、比較例7?8ではマイクロ波を一定の周波数で照射してポリアミドの脱水閉環を行った。マイクロ波照射後に基板の顕微鏡観察を行ったところ、膜の一部が黒変していることが確認された。また、銅配線間で導通していることも確認された。」

(2)引用文献に記載された発明
引用文献2の記載事項ウに基づけば、引用文献2には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていたと認められる。
「感光性樹脂組成物の溶液をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱して塗膜を形成し、その後、上記塗膜を、マイクロ波出力450W、マイクロ波周波数5.9?7.0GHz、温度200℃、2時間で脱水閉環し、ポリオキサゾール膜を得る方法。」

5 対比
本件発明と引用発明とを対比する。

(1)堆積させる工程
引用発明の「感光性樹脂組成物」は、技術的にみて、本件発明の「フォトポリマー」に相当する。そして、引用発明の「感光性樹脂組成物の溶液をシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱して塗膜を形成」する工程は、本件発明の「選択された基板上にフォトポリマー膜を堆積させる」工程に相当する。

(2)硬化させる工程
引用発明の「塗膜を、マイクロ波出力450W、マイクロ波周波数5.9?7.0GHz、温度200℃、2時間で脱水閉環し、ポリオキサゾール膜を得る」工程は、技術的にみて、マイクロ波加熱によって、脱水閉環が生じることにより感光性樹脂組成物が硬化した膜である「ポリオキサゾール膜」が得られる工程であるといえる。そうすると、引用発明の「塗膜を、マイクロ波出力450W、マイクロ波周波数5.9?7.0GHz、温度200℃、2時間で脱水閉環し、ポリオキサゾール膜を得る」工程は、本件発明の「前記フォトポリマー膜」を、「マイクロ波加熱によって硬化させる」工程に相当する。
また、引用発明の上記「ポリオキサゾール膜を得る」工程は、「温度200℃」、「2時間」行われるものである。そうすると、引用発明の上記「ポリオキサゾール膜を得る」工程は、本件発明の「選択された時間」及び「セ氏200?340度の選択された温度」とする要件を満たしている。

(3)フォトポリマー膜を硬化させる方法
引用発明は、「ポリオキサゾール膜を得る方法」であって、「ポリオキサゾール膜」は、技術的にみて、感光性樹脂組成物が硬化した膜である。そうすると、引用発明は、本件発明の「フォトポリマー膜を硬化させる方法」であるとする要件を満たしている。

(4)一致点及び相違点
以上より、本件発明と引用発明とは、
「フォトポリマー膜を硬化させる方法であって、
選択された基板上にフォトポリマー膜を堆積させること、および
前記フォトポリマー膜を、選択された時間の、セ氏200?340度の選択された温度でのマイクロ波加熱によって硬化させること
を含む方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]マイクロ波加熱によって硬化させる工程が、本件発明は、「20?200,000ppmの範囲の酸素濃度を含む選択された雰囲気中」で行われ、その酸素濃度が「既知の量の酸素ガス(O_(2))を前記雰囲気に与えるか、又は、前記雰囲気の圧力を調節するかの少なくとも一方によって維持される」とされるのに対し、引用発明は、「20?200,000ppmの範囲の酸素濃度を含む選択された雰囲気中」で行われるかが明らかでなく、また、酸素濃度も、「既知の量の酸素ガス(O_(2))を前記雰囲気に与えるか、又は、前記雰囲気の圧力を調節するかの少なくとも一方によって維持される」か明らかでない点。

6 判断
(1)相違点について
引用文献2には、記載事項イに、「脱水閉環の雰囲気は大気中、または窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することができる。」(段落【0067】)と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明においては、脱水閉環の雰囲気を考慮すべきことが理解できる。そして、得られる製品の品質を均一なものとするため、各処理工程においてその条件を一定に保つこと、とりわけ、酸素等の成分が調整されたガスを用いることや、雰囲気の圧力を調整することは、例示するまでもなく、周知慣用技術である。
そうすると、引用発明における「ポリオキサゾール膜を得る」工程の処理条件を一定とするために、酸素濃度が、大気中(約20%すなわち200,000ppm)から不活性雰囲気(20ppmといった微量)までの間で、一定となるように調整されたガスを用いるか、又は、雰囲気の圧力を調整することは、当業者が適宜なし得たことである。

(2)効果について
本願の明細書には、本件発明に効果について明示された記載はない。
ただし、発明が解決しようとする課題について記載された段落【0010】の記載に基づけば、本件発明の効果は、「製造時のエネルギーの節約につながるより低い熱収支・・・を可能にするプロセスを提供すること」、「前の処理ステップまたは後続の処理ステップをより低い温度で実行することを可能にするプロセスを提供すること」、「温度に敏感な・・・成分または材料を保護する方法を提供すること」、及び「応力と温度の間の正比例関係を有する材料中の応力を低減させる方法を提供すること」と善解できる。
一方、引用文献2には、記載事項アに「本発明のマイクロ波硬化用ポジ型感光性樹脂組成物は、基板上に設けられた感光性樹脂膜層を露光・現像後に周波数を変えながらマイクロ波をパルス状に照射する工程において、より低温で、具体的には250℃未満で効率的にポリアミドのフェノール性水酸基含有ポリアミド構造が脱水反応を起こして環化する。したがって、上記組成物からなる感光性樹脂膜に対して周波数を変えながらマイクロ波をパルス状に照射することにより、感度、解像度、接着性に優れ、さらに低温硬化プロセスでも耐熱性に優れ、吸水率の低い、良好な形状のパターンが得られる。さらには低温プロセスで硬化できることにより、デバイスへのダメージが避けられ、信頼性が高い。また、デバイスへのダメージが少ないことから、歩留まりも高い。」と記載されている。当該記載に基づけば、引用発明も、「250℃未満で効率的」に、製造時のエネルギーの節約につながる低い熱収支で、かつ、前後の処理も低い温度で実行できるものであり、「デバイスへのダメージが避けられ」ることから、温度に敏感な成分又は材料を保護でき、材料中の応力を低減できるものである。
したがって、本件発明の効果は、引用文献2の記載事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものということができない。

7 請求人の主張
請求人は、審判請求書の請求の理由において、「(2)・・・引用文献1から3のいずれも、膜を硬化させる雰囲気において、酸素濃度を維持することについて何ら教示しておらず、まして、そうするための方法について何ら開示するものではありません。特に、引用文献1から3は、膜の硬化を実現する雰囲気に対して既知の量の酸素ガス(O_(2))を与えることや、前記雰囲気の圧力を調節することについて何ら教示しておりません。」及び「(3)・・・明細書の段落[0017]に記載されるように、この低温VFM硬化と酸素補助の驚くべき組合せは、現在のところマイクロエレクトロニクス産業において最も一般的に使用されているポリマー誘電体材料である感光性ポリイミド膜を、非常に低い温度で完全に硬化させる実際的な方法を初めて利用可能にするものであります。この完全な硬化はアクリレートの除去を含むものであります。これらの温度で(空気中のまたは酸素流による)酸素を追加することには、膜に対する負の影響はありません。低温硬化は、温度に敏感な材料および処理ステップを保護すること、ならびに膜により低い応力が加わることを含む、上に挙げた利点を可能にするものであります。」と主張している。
しかしながら、前記6(1)に記載したとおり、引用文献1には、脱水閉環する工程の雰囲気を考慮すべきことが示唆されており、また、得られる製品の品質を均一なものとするため、酸素等が調整されたガスを用いることや雰囲気の圧力を調整することも、周知慣用技術である。
さらに、前記6(2)に記載したとおり、引用発明は、「デバイスへのダメージが避けられ」ることから、温度に敏感な成分又は材料を保護でき、材料中の応力を低減できるものである。本件発明の効果は、引用文献2の記載事項から、当業者が予測できる範囲内のものであって、格別顕著なものということができない。なお、「ポリマー誘電体材料である感光性ポリイミド膜を、非常に低い温度で完全に硬化させる実際的な方法」は、例えば、引用文献2の段落【0010】に記載されている背景技術から理解できるように、従来より知られている。また、「アクリレートの除去」が本件発明の効果であると理解することができない。
以上のとおりであるから、請求人の上記主張は採用できない。

8 むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、その他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。

 
別掲
 
審理終結日 2020-09-09 
結審通知日 2020-09-10 
審決日 2020-09-29 
出願番号 特願2016-563899(P2016-563899)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03F)
P 1 8・ 113- Z (G03F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 純平  
特許庁審判長 樋口 信宏
特許庁審判官 神尾 寧
宮澤 浩
発明の名称 感光性ポリイミドをマイクロ波処理する方法  
代理人 須田 洋之  
代理人 大塚 文昭  
代理人 西島 孝喜  
代理人 鈴木 信彦  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 近藤 直樹  
代理人 上杉 浩  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ