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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A61B
管理番号 1371144
審判番号 不服2020-11015  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-07 
確定日 2021-03-02 
事件の表示 特願2016- 82398「トレーニングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月19日出願公開、特開2017-189538、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成28年4月15日の出願であって、平成31年4月1日に審査請求がなされ、令和2年2月5日付けで拒絶理由が通知され、同年4月13日に意見書及び手続補正書が提出され、同年4月27日付けで拒絶査定されたところ、同年8月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に同日付けで提出された手続補正書により手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年4月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし4に係る発明は、以下の引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特表2013-524284号公報
2.特開2011-141402号公報(周知技術を示す文献)
3.特開2015-128474号公報(周知技術を示す文献)
4.特開2005-254024号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正(令和2年8月7日提出の手続補正書による手続補正)について
審判請求時の補正(令和2年8月7日提出の手続補正書による手続補正)、は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。
審判請求時の補正は、特許請求の範囲を補正前の請求項1ないし4から、補正後の請求項1ないし2に補正するものである。
請求項1についての補正は、補正前の請求項1に係る発明における推定手段を「前記プローブ部材が前記腟腔内に挿入されている場合に、取得した情報に基づいて、前記腟腔内における前記プローブ部材の位置及び方向の少なくとも一方を推定する推定手段」から「前記プローブ部材が前記腟腔内に挿入されている場合に、取得した情報に基づいて、前記腟腔内における前記プローブ部材の位置及び方向を推定する推定手段」に限定し、検出装置を「前記検出装置は、前記プローブ部材の加速度及び角速度の少なくとも一方を前記プローブ部材の位置及び方向の少なくとも一方に関する情報として検出する」ものから「前記検出装置は、前記プローブ部材の加速度及び角速度を前記プローブ部材の位置及び方向に関する情報として検出し、推定された前記プローブ部材の位置及び方向に関する情報を提示する提示手段と、前記腟腔内における位置及び方向と、事前に得られた超音波画像と、を対応付けた状態で記憶する記憶手段とをさらに備え、前記提示手段は、前記プローブ部材の位置及び方向が推定された場合に、推定された位置及び方向との間で所定の条件を満たす位置及び方向に対応付けられた超音波画像を提示し、前記所定の条件は、前記対応付けられた超音波画像の位置及び方向と、前記推定された位置及び方向との差が所定値以下であることである」ものに限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
請求項2についての補正は、補正後の請求項1の検出装置を「3軸加速度及び3軸角速度を検出するように構成されてお」るものに限定し、取得手段を「前記検出装置が検出した3軸加速度及び3軸角速度に関する情報を取得する」ものに限定するものであるから、補正後の請求項1をさらに限定しており、よって、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、補正後の請求項1ないし2の発明特定事項のうち、上記審判請求時の補正により限定された事項は、出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「出願当初明細書等」という。)の段落【0032】ないし【0056】段落に開示されているから、審判請求時の補正により限定された事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし2に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1ないし2に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明2」という。)は、令和2年8月7日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりである。(下線は補正箇所を表す。)
「【請求項1】
経腟法による超音波検査のトレーニングシステムであって、
腟腔が形成された生体模型の腟腔内に挿入可能なプローブ部材の先端部又は該先端部との相対的な位置関係が一定に保たれる部分に設けられた検出装置であって、前記プローブ部材の位置及び方向の少なくとも一方に関する情報を検出する検出装置が検出した情報を取得する取得手段と、
前記プローブ部材が前記腟腔内に挿入されている場合に、取得した情報に基づいて、前記腟腔内における前記プローブ部材の位置及び方向を推定する推定手段と、
を備え、
前記検出装置は、前記プローブ部材の加速度及び角速度を前記プローブ部材の位置及び方向に関する情報として検出し、
推定された前記プローブ部材の位置及び方向に関する情報を提示する提示手段と、
前記腟腔内における位置及び方向と、事前に得られた超音波画像と、を対応付けた状態で記憶する記憶手段とをさらに備え、
前記提示手段は、前記プローブ部材の位置及び方向が推定された場合に、推定された位置及び方向との間で所定の条件を満たす位置及び方向に対応付けられた超音波画像を提示し、
前記所定の条件は、前記対応付けられた超音波画像の位置及び方向と、前記推定された位置及び方向との差が所定値以下であることである、トレーニングシステム。」

なお、本願発明2は、本願発明1を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
(1)「【0001】
本発明は、一般的に、医療トレーニングシステムの分野に関し、特に、超音波シミュレーションを使用する、超音波トレーニングシステムに関するものである。」

(2)「【0007】
従って、本発明の第1の態様によれば、超音波検査又は超音波ガイド処置におけるシミュレーション・トレーニング用のシミュレータトレーニングシステムであって、
使用者によって操作される可動のシミュレータ入力装置と
超音波走査ビューイメージ又はそのファクシミリイメージであって前記シミュレータ入力装置の位置及び/又は向きに対して可変であってこれらに関連づけられた超音波走査ビューイメージを表示する手段とから成り、
a)前記システムは、更に、前記超音波走査ビューイメージに関連する人体構造の解剖的図形表示である第2のイメージを表示する手段を含み、前記超音波走査ビューイメージと前記第2のイメージとは、前記シミュレータ入力装置の位置及び/又は向きが変化するにつれて対等の状態で変化するようにリンクされ、及び/又は
b)前記システムは、使用者の実行の評価又は測定を可能にしつつ前記使用者の前記システムとの相互作用の態様を電子的に記録する手段を更に含み、及び/又は
c)前記超音波走査ビューイメージは、異なるソース(source)から得られて併合された走査ビューイメージデータから成る合成イメージであり、及び/又は
d)前記超音波走査ビューイメージは、二次元超音波走査又はイメージを変換して三次元走査ボリュームを形成することによって得られる三次元 (3D)走査ボリュームである走査ボリュームから生成するものである
シミュレータトレーニングシステムを提供するものである。」

(3)「【0009】
使用者(即ち、学生、訓練生、又は継続的な専門的活動を試みる訓練された専門家)は、シミュレータ入力装置を操作したり、向き替えしたり、さもなければ、移動する。好ましくは、シミュレータ入力装置は、使用者が入力装置に入力した位置及び/又は向き(オリエンテーション)及び/又は力の程度に関連して入力装置を介して使用者にフィードバックされる力を供給するように構成される。学生の経験のリアリズムを促進するために、制御装置に加えられた力に関連するデータは、学生にフィードバックされることが好ましい。このフィードバックは、制御装置自体を介して行われる。シミュレータ入力装置は、従来の超音波マシンのものに模した「レプリカインテリジェント」のプローブとすることができる。このプローブは、触覚型装置の如きインテリジェントプローブとすることができるが、他のタイプの制御装置を使用してもよい。」

(4)「【0037】
図1を見ると、医療用超音波トレーニングシミュレータが提供され、このシミュレータは、次の構成部分を含む。
・使用者に提示された学習経験を監視又は管理する学習管理システム(LMS)5。
・使用者の評価コンポーネント7。これは、使用者の実行(パフォーマンス)の判断又は分析を形成することができる。
・ 従来の超音波マシンの重要な特徴を模写するように構成された超音波シミュレーションコンポーネント2。これは「仮想超音波マシン」と称することができる。
・レプリカの「インテリジェント」超音波プローブ6であり、これは、使用者によって操作され、システムへ電子的入力を供給する入力装置である。この入力装置6は、例えば、システムのシミュレータ・コンポーネントとコミュニケーションする触覚型の装置である。
・本発明のソフトウェア・コンポーネントを運転するためのコンピューター及び他の関連するハードウェア。
・ 使用者12に情報を表示し提示するための高解像度スクリーン13。これはタッチ・スクリーンとすることができる。」

(5)「【0043】
従って、使用者がLMSインターフェースを経て割り当てを選択すると、適切なシミュレータ・デフィニション(定義)10がシミュレータ7に負荷されてトレーニングセッションが開始する。このトレーニングセッション中、使用者は、触覚型入力装置6(即ち「インテリジェントプローブ」)の操作により、選択された割り当て又はタスクを終える。使用者は、物理的な入力装置6を操作して仮想患者の解剖学的構造のまわりに仮想超音波プローブ14をナビゲートする。これは、再発生する超音波走査ビューイメージ2及び/又は仮想超プローブ14の面や動きに相応するシミュレートされた超音波ビームとしてスクリーン1に現われる。インテリジェントなレプリカプローブ6が移動されるにつれて、ディスプレイ1は、患者の解剖学的構造のシミュレーションにおけるビームの進行を示す。」

(6)「【0045】
セッション中、このシステムは、図2に示されるように、使用者のスクリーン上の個別のウインドーで示される2つの横並びの図で超音波ボリュームと仮想解剖学的構造とを示す。:
1.リアル・タイムの走査中発生した再創出の超音波走査ビューイメージ2。従って、仮想超音波マシン2は、プローブ入力装置の現在位置に基づいた走査ビューイメージを示すシミュレートされた超音波マシンのプレゼンテーションを可能にする。これは、図2のスクリーン2に示されている。使用者が触覚型入力装置を移動するにつれて、もし使用者が「本物の」超音波マシンを操作していれば生じるであろう、走査ビューイメージ2の斜視図は、それに応じて変化する。
2. 仮想患者1の解剖学的構造におけるシミュレートされた走査ビーム21の進行の図。図2のスクリーン1は、グラフィックアーティスト(このプロセスは、以下の詳細に述べる)によって作成されるような解剖学的構造の図形を示す。この解剖学的構造の図形は、仮想プローブ14のパースペクティブから示される。この仮想プローブ及びそのオリエンテーション(向き)は、仮想プローブ14の位置に起因する走査面21と共に示されている。解剖学的構造の「スライス・スルー」は、仮想プローブ14の面21に基づいて示されている。使用者が触覚装置を移動するにつれて、仮想プローブ14がその移動を反映し、スクリーン2上で移動するのが見られる。従って、解剖学的構造の透視図は、シミュレートされた走査面21にその変化を反映するように変更される(例えば、回転する)。」

(7)「【0049】
使用者とシミュレータ2との間の相互作用は、インターフェース9によって管理され、このインターフェースは、データを触覚入力装置6(例えば仮想解剖学的構造内の位置)から得て触覚入力装置にフィードバック(即ち力のフィードバック)することができる。従って、触覚装置6は、プローブを介して加えられる力と組織又は他の物体が与えている抵抗に関して使用者にフィードバックする。
【0050】
実施例の中には、支持フレーム20の周辺限定の孔17の如きハードウェア拘束物を用いて触覚型入力プローブ6の動きを制限し、それによって患者の身体によって抑制される実際のプローブの動きの範囲を複製することができるものがある。このシステムは、また、仮想体の開口部、例えば口、膣、肛門又は動作のエントリー・ポイント、例えば、仮想解剖学的構造の正確な位置にあるというような腹腔鏡のポートからのプローブの出口ポイントを人為的に抑制することができる。このようにすると、プローブの位置又は角度の測定のミスマッチがあった場合に、正しくない可視化が回避される。例えば、このような場合、さもないと、プローブは、仮想解剖学的構造の脚体又は他の身体部分を経て不正確に出る。しかし、このシステムの他の実施例は、ハードウェア拘束物の使用を必要としないものとすることができる。
【0051】
従って、相互作用の精巧なレベルは、臨床トレーニングセッションで得られた経験を模倣するシステムで得られる。器官に対して押し付ける際の圧力及びプローブが解剖学的に不可能な位置へ移動するのを防ぐことの両方によって、使用者には走査作業の現実的な感覚が提供される。
【0052】
シミュレーション中に、既知の技術を用いて、仮装解剖学的構造を変形して、例えば、膣の穴の如き空洞内又は身体の外面にプローブの効果をシミュレートする。また、他の技術を用いて、超音波マシンの重要な機能性の幾つかをシミュレートして、それにより、学生の経験のリアリズムを増強する。これらは、スクリーン4の領域を経てトレーニングセッション中に学生によって提示されコントロールされることができる。これらの特徴は、以下のものを含むことができる。
・明るさ、コントラスト及び時間利得補償(TGC)の制御
・イメージ注解(ラべリング及びテキスト注解)
・イメージ・オリエンテーションの変更
・フリージング及び分割スクリーン機能性
・イメージの拡大及びズーミング
・距離又は領域の測定又は一連の測定からのボリュームの計算」

(8)「【0063】
使用に先立って、解剖学的構造の少なくとも1つ(典型的に1以上)の3D超音波ボリュームがトレーニング・システムでの使用のために作成される。
【0064】
所要のボリュームを作成するために、2D超音波走査ビューイメージは、「従来の」超音波マシンを使用して捕捉される。この捕捉された2D超音波は、後の使用や再生のために超音波マシン自体の内部又はDVDに保存される。
【0065】
本発明では3D超音波ボリュームが使用されるので、2D超音波イメージは、必要な3Dフォーマットに変換又は変成されなければならない。従って、位置と向き(オリエンテーション)に関する追跡センサー・データが2D超音波走査と組み合わせなければならない。このプロセスは、追跡装置の空間と時間とのキャリブレーションを必要とする。」

(9)「【図2】



(10)「【図3】



上記引用文献1の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

「超音波検査又は超音波ガイド処置におけるシミュレーション・トレーニング用のシミュレータトレーニングシステムであって、
使用者によって操作される可動のシミュレータ入力装置と、
超音波走査ビューイメージ又はそのファクシミリイメージであって前記シミュレータ入力装置の位置及び/又は向きに対して可変であってこれらに関連づけられた超音波走査ビューイメージを表示する手段とから成り、
a)前記システムは、更に、前記超音波走査ビューイメージに関連する人体構造の解剖的図形表示である第2のイメージを表示する手段を含み、前記超音波走査ビューイメージと前記第2のイメージとは、前記シミュレータ入力装置の位置及び/又は向きが変化するにつれて対等の状態で変化するようにリンクされ、及び/又は
b)前記システムは、使用者の実行の評価又は測定を可能にしつつ前記使用者の前記システムとの相互作用の態様を電子的に記録する手段を更に含み、及び/又は
c)前記超音波走査ビューイメージは、異なるソース(source)から得られて併合された走査ビューイメージデータから成る合成イメージであり、及び/又は
d)前記超音波走査ビューイメージは、二次元超音波走査又はイメージを変換して三次元走査ボリュームを形成することによって得られる三次元 (3D)走査ボリュームである走査ボリュームから生成するものである
シミュレータトレーニングシステムであり、
シミュレータ入力装置は、従来の超音波マシンのものに模した「レプリカインテリジェント」の超音波プローブ6であり、これは、使用者によって操作され、システムへ電子的入力を供給する入力装置であり、システムのシミュレータ・コンポーネントとコミュニケーションする触覚型の装置であり、
使用者が、物理的な入力装置6を操作して仮想患者の解剖学的構造のまわりに仮想超音波プローブ14をナビゲートすると、再発生する超音波走査ビューイメージ2及び/又は仮想超プローブ14の面や動きに相応するシミュレートされた超音波ビームとしてスクリーン1に現われ、インテリジェントなレプリカプローブ6が移動されるにつれて、ディスプレイ1は、患者の解剖学的構造のシミュレーションにおけるビームの進行を示し、
この仮想プローブ及びそのオリエンテーション(向き)は、仮想プローブ14の位置に起因する走査面21と共に示され、解剖学的構造の「スライス・スルー」は、仮想プローブ14の面21に基づいて示され、
使用者が触覚装置を移動するにつれて、仮想プローブ14がその移動を反映し、スクリーン2上で移動するのが見られ、解剖学的構造の透視図は、シミュレートされた走査面21にその変化を反映するように変更され、
使用者とシミュレータ2との間の相互作用は、インターフェース9によって管理され、このインターフェースは、データを触覚入力装置6(例えば仮想解剖学的構造内の位置)から得て触覚入力装置にフィードバック(即ち力のフィードバック)することができ、
支持フレーム20の周辺限定の孔17の如きハードウェア拘束物を用いて触覚型入力プローブ6の動きを制限し、
シミュレーション中に、既知の技術を用いて、仮想解剖学的構造を変形して、例えば、膣の穴の如き空洞内又は身体の外面にプローブの効果をシミュレートし、
使用に先立って、解剖学的構造の少なくとも1つ(典型的に1以上)の3D超音波ボリュームがトレーニング・システムでの使用のために作成され、所要のボリュームを作成するために、2D超音波走査ビューイメージは、「従来の」超音波マシンを使用して捕捉され、この捕捉された2D超音波は、後の使用や再生のために超音波マシン自体の内部又はDVDに保存され、2D超音波イメージは、必要な3Dフォーマットに変換又は変成されて3D超音波ボリュームとして使用される、
シミュレータトレーニングシステム。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0018】
超音波診断教育用シミュレーション装置1は、主に、人体模型10、擬似プローブ30およびパーソナル・コンピュータ50から構成されている。
【0019】
人体模型10は、頭部を含む上半身を模し、内部が空洞の筐体となっていて、弾力性を有する合成樹脂製で形成されている。そして、人体模型10の筐体内には、複数の磁気センサ11、人体模型側発光部13、および制御部15が設置されている。
【0020】
磁気センサ11は、擬似プローブ30に内蔵される磁石31の磁気を検出する位置センサであって、超音波診断をするときに実際に実超音波プローブを押し当てる所定の位置のそれぞれに配置されて、人体模型10の胸部や腹部に相当する筐体壁の内面に固着されている。そして、磁気センサ11が磁石31の磁気感知情報を後述する演算部53に送付することにより、演算部53は、人体模型10に対する擬似プローブ30の平面上の位置であるX軸およびY軸を座標軸とする座標上の位置(x、y)を取得する。
【0021】
人体模型側発光部13は、人体模型10の下顎部に設置され、胸部方向に向けて38kHzに変調され拡散した赤外線が発せられるようになっていて、発光源には、赤外線LEDが使用されている。なお、人体模型側発光部13の設置位置は、後述するプローブ側受光部37が発した光を受光することができる位置であれば良く、たとえば、仰臥位で使用する場合には肩口近傍に設置すると良い。
【0022】
そして、制御部15は、磁気センサ11、感圧センサ33、ジャイロセンサ35、プローブ側受光部37および3軸センサ39から送られる各データを各センサ毎の情報に区分けして、演算部53に送る役割を担っている。
【0023】
擬似プローブ30は、実際の超音波プローブの形状を模したものであって、先端に感圧センサ33および磁石31を具え、ジャイロセンサ35、フォトセンサの一方であるプローブ側受光部37および3軸センサ39を内蔵している。
【0024】
感圧センサ33は、擬似プローブ30の先端にあって、人体模型10に押し当てられると、擬似プローブ30の中心軸方向の押圧力(Pz)を検出する。そして、ジャイロセンサ35は、擬似プローブ30の相対的な回転角度を検出し、プローブ側受光部37は、人体模型側発光部13から発せられた赤外線を感知することにより、人体模型10に対する擬似プローブ30の基準となる回転角度を検出する。また、3軸センサ39は擬似プローブ30の傾斜角度、すなわち、X軸に対する傾き(Gx)、Y軸に対する傾き(Gy)およびZ軸に対する傾き(Gz)を検出する。
なお、受光部を人体模型10に設置して人体模型側受光部とし、発光部を擬似プローブ30側に設置してプローブ側発光部としても良く、この場合における人体模型側受光部の役割はプローブ側受光部37と同一であり、プローブ側発光部の役割は人体模型側発光部と同一である。
【0025】
そして、感圧センサ33、ジャイロセンサ35、プローブ側受光部37および3軸センサ39のそれぞれにより検出された押圧力(Pz)、相対的な回転角度、基準となる回転角度、X軸に対する傾き(Gx)、Y軸に対する傾き(Gy)およびZ軸に対する傾き(Gz)のデータは、制御回路41を介して制御部15に送られる。
【0026】
パーソナル・コンピュータ50は、表示部51、演算部53および記憶部55を具えている。
そして、記憶部55には、検体上で実超音波プローブの走査により撮像した心エコー画像および/または腹部エコー画像の実画像データであって、実超音波プローブの位置のデータ(x、y)、回転角のデータ(Jθ)、およびX軸、Y軸、Z軸に対する傾きのデータ(Gx、Gy、Gz)と対応させて収納されている。また、演算部53は、人体模型10および擬似プローブ30に設置される各センサから送られる擬似プローブ30の位置データ(x、y)、相対的な回転角度と基準となる回転角度とから算出される絶対的な回転角度(Jθ)、および各軸に対する傾き(Gx、Gy、Gz)のデータから、対応する平面画像データである実画像データを記憶部55から選択し、当該平面画像データを表示部52に送付し平面画像として表示させる。
【0027】
なお、平面画像データの表示に際しては、この平面画像に対応し、擬似プローブ30の各データを伴ったシェーマを表示することとしている。そして、このシェーマもまた記憶部55に収納されている。」

上記引用文献2の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献2には、
「超音波診断教育用シミュレーション装置1は、主に、人体模型10、擬似プローブ30およびパーソナル・コンピュータ50から構成されており、
擬似プローブ30は、実際の超音波プローブの形状を模したものであって、先端に感圧センサ33および磁石31を具え、ジャイロセンサ35、フォトセンサの一方であるプローブ側受光部37および3軸センサ39を内蔵しており、
ジャイロセンサ35は、擬似プローブ30の相対的な回転角度を検出し、プローブ側受光部37は、人体模型側発光部13から発せられた赤外線を感知することにより、人体模型10に対する擬似プローブ30の基準となる回転角度を検出し、また、3軸センサ39は擬似プローブ30の傾斜角度、すなわち、X軸に対する傾き(Gx)、Y軸に対する傾き(Gy)およびZ軸に対する傾き(Gz)を検出し、
感圧センサ33、ジャイロセンサ35、プローブ側受光部37および3軸センサ39のそれぞれにより検出された押圧力(Pz)、相対的な回転角度、基準となる回転角度、X軸に対する傾き(Gx)、Y軸に対する傾き(Gy)およびZ軸に対する傾き(Gz)のデータは、制御回路41を介して制御部15に送られ、
パーソナル・コンピュータ50は、表示部51、演算部53および記憶部55を具えており、
記憶部55には、検体上で実超音波プローブの走査により撮像した心エコー画像および/または腹部エコー画像の実画像データであって、実超音波プローブの位置のデータ(x、y)、回転角のデータ(Jθ)、およびX軸、Y軸、Z軸に対する傾きのデータ(Gx、Gy、Gz)と対応させて収納されており、
演算部53は、人体模型10および擬似プローブ30に設置される各センサから送られる擬似プローブ30の位置データ(x、y)、相対的な回転角度と基準となる回転角度とから算出される絶対的な回転角度(Jθ)、および各軸に対する傾き(Gx、Gy、Gz)のデータから、対応する平面画像データである実画像データを記憶部55から選択し、当該平面画像データを表示部52に送付し平面画像として表示させる、
超音波診断教育用シミュレーション装置。」(以下「引用発明2」という。)
が記載されていると認められるから、引用文献2には
「パーソナル・コンピュータ50は、表示部51、演算部53および記憶部55を具えており、記憶部55には、検体上で実超音波プローブの走査により撮像した心エコー画像および/または腹部エコー画像の実画像データであって、実超音波プローブの位置のデータ(x、y)、回転角のデータ(Jθ)、およびX軸、Y軸、Z軸に対する傾きのデータ(Gx、Gy、Gz)と対応させて収納されており、 演算部53は、人体模型10および擬似プローブ30に設置される各センサから送られる擬似プローブ30の位置データ(x、y)、相対的な回転角度と基準となる回転角度とから算出される絶対的な回転角度(Jθ)、および各軸に対する傾き(Gx、Gy、Gz)のデータから、対応する平面画像データである実画像データを記憶部55から選択し、当該平面画像データを表示部52に送付し平面画像として表示させる技術」(以下「引用文献2開示技術」という。)が開示されているといえる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0020】
以下、本発明に係る超音波診断装置の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は、本実施形態に係る超音波診断装置の構成概略図である。超音波診断装置は、一般に、病院等の医療機関に設置される医療上の機器である。
【0022】
プローブ10は、被検体表面に当接され超音波の送受波を行う超音波探触子である。プローブ10は、超音波振動子を備えたプローブヘッド、そこから引き出されたケーブル、及び、ケーブルの端に設けられたコネクタ、により構成される。そのコネクタは、装置本体側のコネクタに着脱可能に接続される。なお、以下の説明においては、便宜上、プローブヘッドをプローブ10と表現することにする。
【0023】
プローブ10は、ケーブルを介して超音波診断装置本体に接続されている。それが無線によって接続されてもよい。無線によって接続される場合、超音波プローブ側及び装置本体側にそれぞれ無線通信用の送受信器が設けられる。プローブ10は、いずれの種類のプローブであってもよい。例えば、セクタ型、コンベックス型、リニア型のプローブであってもよいし、経膣プローブ等の特殊プローブであってもよい。また、2D画像用プローブであってもよいし、3D画像用プローブであってもよい。1台の超音波診断装置に対して、1又は複数のプローブ10が接続される。複数種類のプローブ10が接続される場合、科目、用途、目的等に応じて、使用するプローブが選択される。
【0024】
プローブ10は、例えば、複数の振動素子からなるアレイ振動子を有しており、そのアレイ振動子によって超音波ビームBが形成される。また、超音波ビームBを電子走査することにより走査面Sが形成される。電子走査方式としては、プローブ10の種類に応じて、例えば電子セクタ走査方式や電子リニア走査方式等であってよい。プローブ10は、超音波の送受波により画像形成用データを出力する。
【0025】
プローブ10の運動及び姿勢を示す情報であるプローブ状態情報を取得する手段としての加速度センサ12は、プローブ10に設けられている。加速度センサ12は、例えば機械式変位測定方式を採用したものであって良く、ばね等の弾性体に繋がれた錘の位置変化を捉えることでプローブ10に加わった加速度を計測し出力する。加速度センサ12は3軸加速度センサであり、互いに直交するx軸、y軸、z軸それぞれの成分の加速度を計測する。なお、プローブ状態情報取得手段として、加速度センサ12に代えて、磁気センサを用いても良い。磁気センサはプローブ10に取り付けられ、所定の位置に固定的に設置された磁場発生器から発せられる磁場の強度を計測することで、プローブ10の運動及び姿勢を計測する。
【0026】
プローブ10の状態情報のうちの姿勢情報を得るためには、加速度センサ12に代えてジャイロセンサを設けてもよい。ジャイロセンサは、例えば振動型ジャイロセンサであって良く、振動子に加わるコリオリの力からプローブの角速度を計測し、取得した順(時系列順)に出力する。加速度センサ12同様、ジャイロセンサも3軸ジャイロセンサであり、互いに直交するx軸、y軸、z軸それぞれの成分の角速度を計測するのが好ましい。」

上記引用文献3の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「超音波診断装置において、
プローブ10は、ケーブルを介して超音波診断装置本体に接続されており、
プローブ10の運動及び姿勢を示す情報であるプローブ状態情報を取得する手段としての3軸加速度センサ12または磁気センサまたは角速度を計測する3軸ジャイロセンサが、プローブ10に設けられている、
超音波診断装置。」

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項2】
超音波振動子を設け、挿入軸方向に対して垂直な方向に超音波を送受させることにより第1の超音波断層像を得る超音波内視鏡と、空間に磁場を張る磁気ソースと、この磁気ソースの磁場を検出する磁気センサと、前記磁気センサ又は前記磁気ソースの少なくとも何れか一方が位置検出手段として前記超音波振動子の近傍に配置された超音波診断装置において、
受信して得られたエコーデータが前記垂直な方向の放射面のうちの特定の角度からのエコーデータである場合、前記磁気センサからの位置信号に基づき、特定の方向のエコーデータから第2の超音波断層像を構成する断層像構成手段と、
を備え、
前記第1の超音波断層像と第2の超音波断層像とを同時に表示装置に表示するようにしたことを特徴とする超音波診断装置。」

上記引用文献4の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「超音波振動子を設け、挿入軸方向に対して垂直な方向に超音波を送受させることにより第1の超音波断層像を得る超音波内視鏡と、空間に磁場を張る磁気ソースと、この磁気ソースの磁場を検出する磁気センサと、前記磁気センサが位置検出手段として前記超音波振動子の近傍に配置された超音波診断装置。」

5.特開2008-194108号公報について
当審で新たに発見した、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2008-194108号公報(以下「引用文献5」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、生物体の表面および内部の特性を3次元空間上の特性値として測定し、測定データを演算部において演算処理し、2次元または3次元の画面または印刷物に表示する3次元上特性測定・表示装置に関する。3次元上特性測定・表示装置に具体的な例としては、X線CT装置・MRI装置・2?3次元超音波画像診断装置・PET装置・SPECT装置・光CT装置および光コヒーレンストモグラフィー装置が含まれるが、特に1回あたりの計測範囲の小さい光コヒーレンストモグラフィー装置や近接磁場を用いたMRI装置・3次元超音波診断装置には特に有用である。また3次元空間上の2次元表面の可視光学的撮像装置であるビデオカメラも近接した場合には撮像範囲が狭いので有用となる。これらの中で、被写体を固定し3次元空間上で自由に位置方向付け可能なプローブを使用する様な医療機器、特に歯科領域である口腔内の軟硬組織の2?3次元上の特性をプローブを口腔内に挿入して測定する様な用途に好適である。また、超音波画像診断装置は通常2次元の断面を計測するものであるが、これを断面に垂直な方向に動かす場合等には特に有用である。また、光コヒーレンストモグラフィー装置は計測範囲が数mm?十数mm範囲と狭く、これを歯科に適用する様な用途にも特に有用である。」

(2)「【0017】
本発明を決するための基本的な手段は、プローブまたは被計測体に配した特定部位の位置・方向のいずれかまたは双方を計測する位置方向計測手段を備えるか、または被計測体に対して前記プローブの位置方向が一定の軌跡で動きながら計測を行ない、3次元上特性測定・表示装置、特に光コヒーレンストモグラフィー装置による被計測体表面および内部の1?3次元反射特性データと前記位置方向計測手段計測データとを時間的に同期させて計測するかまたはプローブを一定の軌跡で動かして計測することにより、被計測体と前記プローブの相対的1?3次元位置方向データを生成し、被計測体表面および内部の1?3次元反射特性データを時空間的に同期配置させることにより、被計測体の2?3次元的な構造情報または組成情報または材質変化情報またはこれらの運動情報を得て、これらの断面を主とした断層像を表示または印刷することである。
さらに、前記位置方向計測手段として、単数または複数の角速度センサまたは加速度センサを構成し用いることである。
・・・」

(3)「【0021】
・・・
(2番目の実施の形態)
位置方向計測手段が、3個の加速度センサと3個の角速度センサである例を図4に示す。図4は図2の構成に対して3方向の加速度センサと3方向の角速度センサがプローブに固定され、さらに被計測体は地球に対して静止または等速度運動している(地球の自転等の天体運動は無視可能である)ことが前提である。この様な構成においてプローブを動かしながら角速度センサと加速度センサの出力と光コヒーレンストモグラフィーの出力データを同期取得する。適当な初期値を定めておき、加速度センサの出力を時間的に2回積分し角速度センサの出力を時間的に1回積分することでプローブと被計測体の相対的位置方向を算出することで、時間的に同期して取得した光コヒーレンストモグラフィーの各データを被計測体の座標系上に配置するものである。
リニアゲージあるいは角度ゲージについては、被計測体に固定した装着部とプローブの間にリニアゲージと角度ゲージを装着するものであり、これらの出力からプローブと被計測体の相対的位置方向を算出する。
さらにプローブの機械的走査については、静止した被計測体に対してプローブの初期位置を定めて、一定の軌跡でプローブを動かし、これに同期して光コヒーレンストモグラフィーのデータを取得するものであり、プローブと被計測体の相対的位置方向はあらかじめ決まっている。
いずれの方法にしても、プローブと被計測体の相対的位置方向を知ることで、光コヒーレンストモグラフィーのデータを被計測体の座標系上に再配置することが可能である。」

上記引用文献5の記載事項及び図面を総合勘案すると、引用文献5には、
「2?3次元超音波画像診断装置において、
プローブに配した特定部位の位置・方向のいずれかまたは双方を計測する位置方向計測手段を備え、
位置方向計測手段が、3個の加速度センサと3個の角速度センサである、
装置。」(以下「引用発明5」という。)
が記載されていると認められるから、引用文献5には
「超音波診断装置におけるプローブに、3個の加速度センサと3個の角速度センサを備えてプローブの位置及び方向を推定する技術」(以下「引用文献5開示技術」という。)が開示されているといえる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
ア 引用発明1の「支持フレーム20の周辺限定の孔17の如きハードウェア拘束物を用いて触覚型入力プローブ6の動きを制限し、」「シミュレーション中に、既知の技術を用いて、仮想解剖学的構造を変形して、」「膣の穴の如き空洞内又は身体の外面にプローブの効果をシミュレート」する「超音波検査又は超音波ガイド処置におけるシミュレーション・トレーニング用のシミュレータトレーニングシステム」は、本願発明1における「経腟法による超音波検査のトレーニングシステム」に相当する。
イ 引用発明1における「触覚型入力プローブ6の動きを制限」する「支持フレーム20の周辺限定の孔17の如きハードウェア拘束物」は、本願発明1における「腟腔が形成された生体模型」に相当する。
ウ 引用発明1におけるは、「支持フレーム20の周辺限定の孔17の如きハードウェア拘束物を用いて」「動きを制限」されている「従来の超音波マシンのものに模した「レプリカインテリジェント」の超音波プローブ6」は、本願発明1における「腟腔が形成された生体模型の腟腔内に挿入可能なプローブ部材」に相当する。
エ 引用発明1における「使用者とシミュレータ2との間の相互作用」を「管理」し「データを触覚入力装置6(例えば仮想解剖学的構造内の位置)から得て触覚入力装置にフィードバック(即ち力のフィードバック)することができ」る「インターフェース9」は、本願発明1における「プローブ部材の」「先端部との相対的な位置関係が一定に保たれる部分に設けられ」、「前記プローブ部材の位置及び方向」「に関する情報を検出」し、「検出した情報を取得する取得手段」を備えた「検出装置」に相当する。
オ 引用発明1の「シミュレータトレーニングシステム」は、「使用者が、物理的な入力装置6を操作して仮想患者の解剖学的構造のまわりに仮想超音波プローブ14をナビゲートすると、再発生する超音波走査ビューイメージ2及び/又は仮想超プローブ14の面や動きに相応するシミュレートされた超音波ビームとしてスクリーン1に現われ、インテリジェントなレプリカプローブ6が移動されるにつれて、ディスプレイ1は、患者の解剖学的構造のシミュレーションにおけるビームの進行を示し、この仮想プローブ及びそのオリエンテーション(向き)は、仮想プローブ14の位置に起因する走査面21と共に示され、解剖学的構造の「スライス・スルー」は、仮想プローブ14の面21に基づいて示され、使用者が触覚装置を移動するにつれて、仮想プローブ14がその移動を反映し、スクリーン2上で移動するのが見られ、解剖学的構造の透視図は、シミュレートされた走査面21にその変化を反映するように変更され」るものであるから、本願発明1とは「前記プローブ部材が前記腟腔内に挿入されている場合に、取得した情報に基づいて、前記腟腔内における前記プローブ部材の位置及び方向を推定する推定手段」と「推定された前記プローブ部材の位置及び方向に関する情報を提示する提示手段」とを備え、「前記提示手段は、前記プローブ部材の位置及び方向が推定された場合に、推定された位置及び方向」「に対応付けられた超音波画像を提示」する点で共通する。

すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「経腟法による超音波検査のトレーニングシステムであって、
腟腔が形成された生体模型の腟腔内に挿入可能なプローブ部材の先端部との相対的な位置関係が一定に保たれる部分に設けられた検出装置であって、前記プローブ部材の位置及び方向の少なくとも一方に関する情報を検出する検出装置が検出した情報を取得する取得手段と、
前記プローブ部材が前記腟腔内に挿入されている場合に、取得した情報に基づいて、前記腟腔内における前記プローブ部材の位置及び方向を推定する推定手段と、
を備え、
推定された前記プローブ部材の位置及び方向に関する情報を提示する提示手段と、
をさらに備え、
前記提示手段は、前記プローブ部材の位置及び方向が推定された場合に、推定された位置及び方向に対応付けられた超音波画像を提示する、
トレーニングシステム。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
前記プローブ部材の位置及び方向に関する情報として、本願発明1は、「検出装置」が、「プローブ部材の加速度及び角速度」を検出しているのに対し、引用発明1は、「インターフェース9」において、「触覚入力装置6である超音波プローブ6」の位置及び方向に関する情報を得ているが、加速度及び角速度を検出しているか不明な点。

<相違点2>
本願発明1では、「前記腟腔内における位置及び方向と、事前に得られた超音波画像と、を対応付けた状態で記憶する記憶手段とをさらに備え、」「推定された」「前記プローブ部材の位置及び方向が」「前記対応付けられた超音波画像の位置及び方向と、」その「差が所定値以下である」という「所定の条件を満たす」「超音波画像を提示」するのに対し、引用発明1では、「従来の超音波マシンを使用して捕捉され」た「2D超音波イメージ」を「3Dフォーマットに変換又は変成されて3D超音波ボリュームとし」て「形成することによって得られる三次元 (3D)走査ボリュームである走査ボリュームから」「シミュレータ入力装置の位置及び/又は向きに対して可変であってこれらに関連づけられた」「超音波走査ビューイメージ」を「生成」して「表示する」点。

(2)判断
上記相違点1について検討する。
ア 引用発明1では、触覚入力装置6である超音波プローブ6の位置及び方向は、超音波プローブ6に物理的に接続されているインターフェース9により取得している。このインターフェース9は位置及び方向のデータを触覚入力装置6から得て触覚入力装置にフィードバック(即ち力のフィードバック)することができる機能を備えている。
イ 一方、超音波診断という分野で引用発明1と同一の技術分野に属する引用文献5には、上記「第5 5.」で述べたように、超音波診断装置におけるプローブに、3個の加速度センサと3個の角速度センサを備えてプローブの位置及び方向を推定する技術(引用文献5開示技術)が開示されている。
ウ ここで、引用発明1に上記引用文献5開示技術を適用する動機付けについて検討すると、すでに引用発明1ではプローブの位置及び方向を推定する機能は実現されており、引用発明5開示技術を適用することは同じ機能のものをさらに適用することとなり、その動機付けは生じない。
エ また、引用発明1におけるインターフェース9を引用文献5開示技術の加速度センサ及び角速度センサで置換する動機付けについて検討すると、引用発明1におけるインターフェース9は、触覚入力装置である超音波プローブ6にフィードバック(即ち力のフィードバック)することができる機能を備えており、インターフェース9を引用発明5の加速度センサ及び角速度センサで置換すると、上記フィードバックすることができる機能が失われることとなるため、その動機付けも生じない。
オ したがって、引用発明1に引用文献5開示技術を適用する動機付けはない。
カ そして、引用発明2には、超音波プローブにジャイロセンサ(角速度センサ)を備える技術が開示され、引用発明3には超音波プローブに3軸加速度センサを備える技術が開示されているが、これら個々の技術を引用発明1に適用する動機付けは、上記「ウないしエ」と同様の理由で動機付けは生じない。
キ 以上のことから、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1ないし5から当業者が導き出すことはできない。

(3)小括
したがって、本願発明1は、相違点2について検討するまでもなく、当業者であっても、引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

2.本願発明2について
本願発明2も、本願発明1の上記相違点1ないし2に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1ないし5に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。

第7 原査定について
上記「第6」で検討したように、本願発明1ないし2は、引用発明1ないし5から当業者が容易に発明できたものとはいえないから、拒絶査定において引用された引用文献1ないし4に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-02-10 
出願番号 特願2016-82398(P2016-82398)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A61B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 森口 正治  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 森 竜介
伊藤 幸仙
発明の名称 トレーニングシステム  
代理人 早川 裕司  
代理人 村雨 圭介  

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