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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B
管理番号 1371225
審判番号 不服2019-16514  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-06 
確定日 2021-02-10 
事件の表示 特願2016-558172「ハイブリッド式血管内圧測定装置並びに関連するシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年10月 1日国際公開、WO2015/148382、平成29年 4月20日国内公表、特表2017-511178〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年(平成27年)3月23日(パリ条約による優先権主張 2014年3月26日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成31年1月9日付けで拒絶理由が通知され、同年3月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、令和元年8月7日付けで拒絶査定されたところ、同年12月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正について
(1)本件補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおり補正された(下線は補正箇所を示す。)。

「 【請求項1】
血管内圧測定装置であって、当該血管内圧測定装置は、
基端部、基端部分、先端部、及び先端部分を含む可撓性の細長い部材であって、該可撓性の細長い部材は、前記可撓性の細長い部材の前記基端部から前記先端部に延びる管腔を有しており、該管腔は、前記管腔の内部をガイドワイヤが通過するのを可能にするようにサイズ決め及び成形される、可撓性の細長い部材と、
前記可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁内に配置される圧力センサであって、該圧力センサは、前記可撓性の細長い部材の前記第1の先端部分の前記壁に形成された開口部を介して前記管腔内の圧力を測定するように構成される、圧力センサと、
前記可撓性の細長い部材の前記基端部分から前記第1の先端部分の途中まで該壁を貫通して延びる補助管腔であって、前記圧力センサは、前記補助管腔の先端部分に位置付けされる、補助管腔と、を備えており、
前記可撓性の細長い部材の前記先端部分は、
第1の外径を有する前記第1の先端部分と、
前記第1の外径よりも小さい第2の外径を有する第2の先端部分であって、該第2の先端部分の基端部は、前記第1の先端部分の先端部に結合される、第2の先端部分と、を有する、
血管内圧測定装置。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
血管内圧測定装置であって、当該血管内圧測定装置は、
基端部分及び先端部分を有する可撓性の細長い部材であって、該可撓性の細長い部材は、前記可撓性の細長い部材の内部を通って延びる管腔を有しており、該管腔は、前記管腔の内部をガイドワイヤが通過するのを可能にするようにサイズ決め及び成形される、可撓性の細長い部材と、
前記可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁内に配置される圧力センサであって、該圧力センサは、前記管腔内の圧力を測定するように構成される、圧力センサと、
前記可撓性の細長い部材の前記壁の途中まで該壁を貫通して延びる補助管腔であって、前記圧力センサは、前記補助管腔の先端部分に位置付けされる、補助管腔と、を備えており、
前記可撓性の細長い部材の前記先端部分は、
第1の外径を有する前記第1の先端部分と、
前記第1の外径よりも小さい第2の外径を有する第2の先端部分であって、該第2の先端部分の基端部は、前記第1の先端部分の先端部に結合される、第2の先端部分と、を有する、
血管内圧測定装置。」

2 補正の適否
本件補正は、補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「基端部分及び先端部分を有する可撓性の細長い部材」について、「基端部、基端部分、先端部、及び先端部分を含む可撓性の細長い部材」と、「基端部」及び「先端部」を付加し、
さらに「前記可撓性の細長い部材の内部を通って延びる管腔を有しており」について、「内部を通って延びる」を「前記基端部から前記先端部に延びる」と管腔の延びる範囲を限定し、
さらに、「圧力センサは、前記管腔内の圧力を測定するように構成される」ことについて、「圧力センサは、前記可撓性の細長い部材の前記第1の先端部分の前記壁に形成された開口部を介して前記管腔内の圧力を測定するように構成される」と、「圧力センサ」の「前記管腔内の圧力」の測定形態を限定し、
さらに、「前記可撓性の細長い部材の前記壁の途中まで該壁を貫通して延びる補助管腔」について、「前記可撓性の細長い部材の前記基端部分から前記第1の先端部分の途中まで該壁を貫通して延びる補助管腔」と、補助管腔が形成される範囲を限定したものである。

したがって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項について、上記のとおり限定を付加するものであって、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法17条の2第5項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下に検討する。

3 引用文献及びその記載事項
(1) 本願の優先権主張日前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり、原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第2014/025255号(以下、「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。(ファミリー文献である特表2015-529498号を翻訳文として用いている。)
なお、以下の摘記において、イ(イ)の引用発明の認定に関連する箇所に下線を付与した。

ア 引用文献1について
(1-ア)
「The invention relates to a pressure sensor catheter. This type of catheter is used for measuring pressures inside a body lumen. These measurements can for example be used to calculate the fractional flow reserve (FFR)」(1頁3?7行)
(当審訳:【0001】
本発明は、圧力センサカテーテルに関する。この種のカテーテルは、体腔内の圧力を測定するために用いられている。これらの測定値は、例えば、冠血流予備量比(FFR)を計算するために用いることができる。)

(1-イ)
「 Preferably, the body lumen is a blood vessel.」(2頁28行)
(当審訳:【0007】
好ましくは、体腔は、血管である。)

(1-ウ)
「 The pressure sensor catheter can be introduced into the body lumen and positioned close to the flow constriction either through a guide catheter or over a guidewire or both. In particular in the case no guidewire is used to introduce the pressure sensor catheter into the body, it preferably comprises a soft atraumatic tip yet be firm enough to be passed through the guide catheter and cross a flow constriction. For example, the catheter comprises a flexible metal tube. If the pressure transfer tube is strong enough it may constitute the backbone of substantially the whole catheter, i.e. the catheter body and pressure transfer tube may be formed by a single flexible metal tube.」(5頁5?17行)
(当審訳:【0018】
圧力センサカテーテルは、ガイドカテーテルまたはガイドワイヤのいずれかまたは両方に沿って、体腔内に導入され、流れ妨害物の近くに配置されるようになっている。具体的には、圧力センサカテーテルを体内に導入するためにガイドワイヤが用いられない場合、圧力センサカテーテルは、好ましくは、ガイドカテーテルを通って流れ妨害物を横断するのに十分頑丈な軟質無傷チップを備えている。例えば、カテーテルは、柔軟な金属チューブから構成されている。もし圧力伝達チューブが十分に強靭であるなら、該圧力伝達チューブは、実質的にカテーテルの全体の背骨部を構成するようになっていてもよい。すなわち、この場合、カテーテル本体および圧力伝達チューブは、単一の柔軟金属チューブから形成されていてもよい。)

(1-エ)
「 According to the invention, various types of pressure sensors can be provided for measuring the pressure transferred via the pressure transfer tube. For example, an optical pressure sensor comprising an optical fibre can be provided. As another example, a piezo resistive or a piezo electric pressure sensor is provided. Furthermore, an absolute pressure sensor or a differential pressure sensor may be provided.」(5頁29行?6頁3行)
(当審訳:【0020】
本発明によれば、圧力伝達チューブを介して伝達される圧力を測定するための種々の形式の圧力センサを設けることができる。例えば、光ファイバを備える光学式圧力センサを設けることができる。他の例として、ピエゾ抵抗圧力センサまたはピエゾ電気圧力センサが設けられてもよい。さらに、絶対圧センサまたは差圧センサが設けられてもよい。)

(1-オ)
「 Catheter 1002 (figure 12A-12C) has a pressure transfer tube 1006 which extends distally from a catheter body 1024. For example, the tube 1006 extends 50-300 mm beyond the sensor. On the proximal side of sensor 1028 the pressure transfer tube continues as part 1006'. The catheter body 1024 houses the sensor 1028. The lower side of sensor 1028 is exposed to the liquid in tube 1006. The pressure transfer tube 1006 has a feed through opening 1042 located at a distance of 150-250 mm from sensor 1028. A guidewire 1016 can be fed through the tube 1006, 1006' (fig. 12B) , for insertion of catheter 1002 into the body lumen. The wires 1040 for transporting the signals from sensor 1028 are fed through an auxiliary tube 1025. This can be a (balloon) hypertube . Tube 1025 is for example 500-1200 mm in length.

During measurement the guidewire 1016 is withdrawn to a position proximal of the sensor (figure 12C) . The guidewire is not completely withdrawn from the tube 1006, 1006' and therefore is positioned in the tube from the feed through opening 1042 to approximately the sensor 1028.

Thereby, the guidewire 1016 effectively seals the opening 1042. Therefore, no separate seal has to be provided. Tube 1006, 1006' has an outer diameter of 0.45 mm and an inner diameter of 0.38 mm. Housing 1024 has an outer diameter of 1.25 mm.」(25頁13行?26頁3行)
(当審訳:(【0105】
カテーテル1002(図12A-12C)は、カテーテル本体1024から遠位側に延在する圧力伝達チューブ1006を有している。例えば、チューブ1006は、センサを超えて50-300mmにわたって延在している。センサ1028の近位側において、圧力伝達チューブは、部分1006’として連続的に延在している。カテーテル本体1024は、センサ1028を収容している。センサ1028の下側は、チューブ1006内の液体に晒されている。圧力伝達チューブ1006は、センサ1028から150-200mm離れて位置する貫通送給開口1042を有している。カテーテル1002を体腔内に挿入するために、ガイドワイヤ1016をチューブ1006,1006’(図12B)を通して送給することができるようになっている。センサ1028からの信号を伝達するためのワイヤ1040が補助チューブ1025を通って送給されている。これは、(バルーン)ハイパーチューブであってもよい。チューブ1025は、例えば、500-1200mmの長さを有している。
【0106】
測定中、ガイドワイヤ1016は、センサの近位側の位置に引き込まれるようになっている(図12C)。ガイドワイヤは、チューブ1006,1006’から完全に引き出されることなく、チューブ内において、貫通接続開口1042から略センサ1028にわたって位置するようになっている。これによって、ガイドワイヤ1016は、開口1042を効果的に密封することになる。従って、別のシールを設ける必要がない。
【0107】
チューブ1006,1006’は、0.45mmの外径および0.38mmの内径を有している。ハウジング1024は、1.25mmの外径を有している。)

(1-カ)
FIG.12



イ 引用発明について
(ア)記載事項の整理
a 図12Aと、上記摘記(1-ア)?(1-カ)より、血管内の圧力を測定するために用いられている圧力センサカテーテル1002の血管内挿入領域は、カテーテル本体1024と、一本のカテーテルであって、それぞれ、カテーテル本体1024中を延在する圧力伝達チューブ1006′とカテーテル本体1024から遠位側に延在する圧力伝達チューブ1006を備えているといえる(以下、「血管内挿入領域」という。)。

b そして、上記「血管内挿入領域」は、カテーテル本体1024のカテーテル本体1024の手元側基端から圧力伝達チューブ1006の先端まで延在することが見てとれる。
そして、カテーテル本体1024の先端側端部と圧力伝達チューブ1006の手元側基端は、結合していることは明らかである。

c また、センサ1028は、カテーテル本体1024の先端側端部に位置していることが見てとれる。

d さらに、補助チューブ1025の一端部がカテーテル本体1024の手元側基端に位置しているといえる。

e 圧力伝達チューブ1006’の開口に接する圧力センサ1028が見てとれる。

f 圧力センサ1028からの信号を伝達するためのワイヤ1040がカテーテル本体1024と圧力伝達チューブ1006′との隙間を通ってカテーテル本体1024の手元側基端まで延在することが見てとれる。

(イ)引用発明
上記(ア)を踏まえると、上記ア(1-ア)?(1-カ)から、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、参考のため、引用発明の認定に使用した引用文献等の段落番号等を、括弧内に付記してある。

「(a)柔軟な金属チューブから構成されている血管内の圧力を測定するために用いられている圧力センサカテーテル1002であって、血管内挿入領域は、カテーテル本体1024と、一本のカテーテルであって、それぞれ、カテーテル本体1024中を延在する圧力伝達チューブ1006′とカテーテル本体1024から遠位側に延在する圧力伝達チューブ1006を備え、(【0018】、(ア)a)
(b)上記血管内挿入領域は、カテーテル本体1024の手元側基端から圧力伝達チューブ1006の先端まで延在し、カテーテル本体1024の先端側端部と圧力伝達チューブ1006の手元側基端は、結合し、((ア)b)
(c)圧力伝達チューブ1006,1006’は、圧力センサカテーテル1002を体腔内に挿入するために、ガイドワイヤ1016を、それを通して送給することができるようになっており、(【0105】)
(d)センサ1028は、カテーテル本体1024の先端側端部に位置し、((ア)c)
(e)カテーテル本体1024は、下側が、圧力伝達チューブ1006内の液体に晒されている圧力センサ1028であって、圧力伝達チューブ1006’の開口に接する圧力センサ1028と、(【0105】、(ア)e)
(f)圧力センサ1028からの信号を伝達するためのワイヤ1040が、カテーテル本体1024と圧力伝達チューブ1006′との隙間を通ってカテーテル本体1024の手元側基端に位置している補助チューブ1025の一端部まで延在し、(【0105】、(ア)df)
(g)圧力伝達チューブチューブ1006,1006’は、0.45mmの外径を有し、カテーテル本体1024は、1.25mmの外径を有している、(【0107】)
(h)圧力センサカテーテル1002。」


(2)本願の優先権主張日前に頒布され、原査定に引用された米国特許第4484585号明細書(以下、「引用文献5」という。)には、尿道内圧を測定するためのカテーテルに関する事項が記載されている。

(3)本願の優先権主張日前に頒布され、原査定に引用された欧州特許出願公開第0694284号明細書(以下、「引用文献6」という。)には、食道や胃の様々な場所で測定できる圧力センサを備えたカテーテルに関する事項が記載されている。

(4)本願の優先権主張日前に頒布され、原査定に引用された特開2006-255422号公報(以下、「引用文献7」という。)には、患者の脳内圧力の正確な測定に有効な圧力センサ付きカテーテルに関する事項が記載されている。

4 引用発明との対比
(1)血管内圧測定装置について
ア 引用発明の「(a)」「圧力センサカテーテル1002」は、血管内の圧力を測定するために用いられているので、補正発明の「血管内圧測定装置」に相当する。

(2)可撓性の細長い部材について1
ア 引用発明の「(a)」「血管内の圧力を測定するために用いられている圧力センサカテーテル1002」は「柔軟な金属チューブから構成されて」おり「圧力伝達チューブ1006」及び「圧力伝達チューブ1006′」は管腔を有しているから、「カテーテル本体1024と一本のカテーテルであって、それぞれ、カテーテル本体1024中を延在する圧力伝達チューブ1006′とカテーテル本体1024から遠位側に延在する圧力伝達チューブ1006を備え」る「血管内挿入領域」は、可撓性の細長い部材であり、管腔を有するものである。

イ さらに、引用発明の「(b)上記血管内挿入領域は、カテーテル本体1024の手元側基端から圧力伝達チューブ1006の先端まで延在」するものである。

ウ そして、引用発明の「(c)圧力伝達チューブ1006,1006’は、圧力センサカテーテル1002を体腔内に挿入するために、ガイドワイヤ1016を、それを通して送給することができるようになって」いることから、圧力伝達チューブ1006,1006’の前記管腔は、前記管腔の内部をガイドワイヤ1016がカテーテル本体1024の手元側基端から圧力伝達チューブ1006の先端まで通過するのを可能にするようにサイズ決め及び成形されるガイドワイヤ用の管腔といえる。

エ したがって、引用発明の「(a)」「血管内挿入領域」は、補正発明の「可撓性の細長い部材であって、該可撓性の細長い部材は、前記可撓性の細長い部材の前記基端部から前記先端部に延びる管腔を有しており、該管腔は、前記管腔の内部をガイドワイヤが通過するのを可能にするようにサイズ決め及び成形される、可撓性の細長い部材」に相当する。

オ そして、引用発明の「血管内挿入領域」のうち「(b)」「カテーテル本体1024の手元側基端」及び「圧力伝達チューブ1006の先端」は、それぞれ、補正発明の「可撓性の細長い部材」の「基端部」及び「先端部」に相当し、引用発明の「血管内挿入領域」のうち「カテーテル本体1024の手元側基端」を含む領域は、補正発明の「可撓性の細長い部材」の「基端部分」に相当する。

カ 引用発明の「(g)圧力伝達チューブチューブ1006,1006’は、0.45mmの外径を有し、カテーテル本体1024は、1.25mmの外径を有し」ていることから、圧力伝達チューブチューブ1006の外径は、カテーテル本体1024の外径より小さい。

キ そうすると、引用発明の「(b)」「血管内挿入領域」のうち「圧力伝達チューブ1006’」を含めた「カテーテル本体1024」であって「カテーテル本体1024の先端側端部」を含む領域は、補正発明の「第1の外径を有する第1の先端部分」に相当し、引用発明の「血管内挿入領域」のうち「カテーテル本体1024から遠位側に延在する圧力伝達チューブ1006」は、補正発明の「前記第1の外径よりも小さい第2の外径を有する第2の先端部分」に相当する。

ク そして、引用発明の「血管内挿入領域」のうち「(b)」「圧力伝達チューブ1006の手元側基端」と「結合」する「カテーテル本体1024の先端側端部」を含む領域と、「(a)」「カテーテル本体1024から遠位側に延在する圧力伝達チューブ1006」とは、それぞれ、補正発明の「前記可撓性の細長い部材の前記先端部分」であって「第1の外径を有する前記第1の先端部分」と、「前記第1の外径よりも小さい第2の外径を有する第2の先端部分であって、該第2の先端部分の基端部は、前記第1の先端部分の先端部に結合される、第2の先端部分」に相当する。
さらに、引用発明の「圧力伝達チューブ1006の手元側基端」及び「カテーテル本体1024の先端側端部」は、それぞれ、補正発明の「第2の先端部分の基端部」及び「第1の先端部分の先端部」に相当する。

ケ 以上より、引用発明の「(a)柔軟な金属チューブから構成されている血管内の圧力を測定するために用いられている圧力センサカテーテル1002であって、血管内挿入領域は、カテーテル本体1024と、一本のカテーテルであって、それぞれ、カテーテル本体1024中を延在する圧力伝達チューブ1006′とカテーテル本体1024から遠位側に延在する圧力伝達チューブ1006を備え、(b)上記血管内挿入領域は、カテーテル本体1024の手元側基端から圧力伝達チューブ1006の先端まで延在し」、「(c)圧力伝達チューブ1006,1006’は、圧力センサカテーテル1002を体腔内に挿入するために、ガイドワイヤ1016を、それを通して送給することができるようになっており」「(g)圧力伝達チューブチューブ1006,1006’は、0.45mmの外径を有し、カテーテル本体1024は、1.25mmの外径を有している」いる「血管内挿入領域」は、補正発明の「基端部、基端部分、先端部、及び先端部分を含む可撓性の細長い部材であって、該可撓性の細長い部材は、前記可撓性の細長い部材の前記基端部から前記先端部に延びる管腔を有しており、該管腔は、前記管腔の内部をガイドワイヤが通過するのを可能にするようにサイズ決め及び成形される、可撓性の細長い部材」であって、
「前記可撓性の細長い部材の前記先端部分は、第1の外径を有する前記第1の先端部分と、前記第1の外径よりも小さい第2の外径を有する第2の先端部分であって、該第2の先端部分の基端部は、前記第1の先端部分の先端部に結合される、第2の先端部分と、を有する」ものに相当する。

(3)圧力センサについて
ア 引用発明の「圧力センサ1028」は、補正発明の「圧力センサ」に相当する。

イ 引用発明の「(d)」「圧力センサ1028は、カテーテル本体1024の先端側端部に位置している」。

ウ そして、上記(2)キから、引用発明の「(b)」「血管内挿入領域」のうち「圧力伝達チューブ1006’」を含めた「カテーテル本体1024」であって「カテーテル本体1024の先端側端部」を含む領域は、補正発明の「第1の外径を有する第1の先端部分」に相当する。

エ さらに、圧力伝達チューブは圧力センサ1028の前後で1006、1006’と区別されているが、圧力センサ1028が、圧力伝達チューブ1006、1006’内と通じその内部の圧力を測定するように構成されているものであり、「カテーテル本体1024」、「圧力伝達チューブ1006」、「圧力伝達チューブ1006’」は全体として細長い部材といえるので、全体として「壁」から構成されているといえる。

オ そうすると、引用発明の「(d)」「カテーテル本体1024の先端側端部に位置している」「「圧力センサ1028」は、補正発明の「前記可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁内に配置される圧力センサであって、該圧力センサは、前記可撓性の細長い部材の前記第1の先端部分の前記壁に形成された開口部を介して前記管腔内の圧力を測定するように構成される、圧力センサ」に相当する。

カ したがって、引用発明の「(d)」「カテーテル本体1024の先端側端部に位置している」「「圧力センサ1028」であって「(e)カテーテル本体1024」が備えている、「下側が、圧力伝達チューブ1006内の液体に晒されている圧力センサ1028であって、圧力伝達チューブ1006’の開口に接する圧力センサ1028」は、上記オを踏まえると、補正発明の「前記可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁内に配置される圧力センサであって、該圧力センサは、前記可撓性の細長い部材の前記第1の先端部分の前記壁に形成された開口部を介して前記管腔内の圧力を測定するように構成される、圧力センサ」に相当する。

(4)補助管腔について
ア 引用発明の「(d)」「圧力センサ1028は、カテーテル本体1024先端側端部に位置し」、「(e)カテーテル本体1024は、」「(f)圧力センサ1028からの信号を伝達するためのワイヤ1040がカテーテル本体1024と圧力伝達チューブ1006′との隙間を通ってカテーテル本体1024の手元側基端まで延在し」ている。
そうすると、引用発明の「圧力センサ1028からの信号を伝達するためのワイヤ1040」が「通る」「カテーテル本体1024と圧力伝達チューブ1006′との隙間」は、補正発明の「補助管腔」に相当する。

イ したがって、上記(2)キを踏まえれば、引用発明の「(d)」「圧力センサ1028は、カテーテル本体1024先端側端部に位置」し、「(e)カテーテル本体1024は、」「f)圧力センサ1028からの信号を伝達するためのワイヤ1040がカテーテル本体1024と圧力伝達チューブ1006′との隙間を通ってカテーテル本体1024の手元側基端まで延在し」ているその隙間と、
補正発明の「前記可撓性の細長い部材の前記基端部分から前記第1の先端部分の途中まで該壁を貫通して延びる補助管腔であって、前記圧力センサは、前記補助管腔の先端部分に位置付けされる、補助管腔」とは、
「前記可撓性の細長い部材の前記基端部分から前記第1の先端部分の途中まで延びる補助管腔であって、前記圧力センサは、前記補助管腔の先端部分に位置付けされる、補助管腔」で共通する。

(5)よって、補正発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、相違点で相違する。

(一致点)
「血管内圧測定装置であって、当該血管内圧測定装置は、
基端部、基端部分、先端部、及び先端部分を含む可撓性の細長い部材であって、該可撓性の細長い部材は、前記可撓性の細長い部材の前記基端部から前記先端部に延びる管腔を有しており、該管腔は、前記管腔の内部をガイドワイヤが通過するのを可能にするようにサイズ決め及び成形される、可撓性の細長い部材と、
前記可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁内に配置される圧力センサであって、該圧力センサは、前記可撓性の細長い部材の前記第1の先端部分の前記壁に形成された開口部を介して前記管腔内の圧力を測定するように構成される、圧力センサと、
前記可撓性の細長い部材の前記基端部分から前記第1の先端部分の途中まで補助管腔であって、前記圧力センサは、前記補助管腔の先端部分に位置付けされる、補助管腔と、を備えており、
前記可撓性の細長い部材の前記先端部分は、
第1の外径を有する前記第1の先端部分と、
前記第1の外径よりも小さい第2の外径を有する第2の先端部分であって、該第2の先端部分の基端部は、前記第1の先端部分の先端部に結合される、第2の先端部分と、を有する、
血管内圧測定装置。」

(相違点)
補助管腔について、補正発明では、壁を貫通して延びるのに対して、引用発明では、そのような特定がない点。

5 判断
(1)相違点についての検討
引用発明の圧力センサ1028の配置される「血管内挿入領域」のうち「圧力伝達チューブ1006’」を含めた「カテーテル本体1024」であって「カテーテル本体1024の先端側端部」を含む領域は、補正発明の「第1の外径を有する第1の先端部分」に相当するが、細長い可撓性の部材であるから、「カテーテル本体1024」及び「圧力伝達チューブ1006′」は全体として、「壁」を形成しているといえる。
そして、圧力センサ1028からの信号を伝達するためのワイヤ1040がカテーテル本体1024の基端領域を通って補助チューブ1025としてカテーテル1024の外側へ延びているのであるから、ワイヤ1040を取り囲む空間はカテーテル本体1024及び圧力伝達チューブ1006′の壁部を貫通しているといえる。
したがって、上記相違点は実質的な相違点ではない。
仮に上記相違点が、実質的な相違点であったとしても、引用発明のワイヤ1040を取り囲む空間を構成する壁部をカテーテル本体1024の壁部を貫通するように構成し、相違点に係る補正発明の構成とすることは、当業者が容易に想到するものである。

(2)そして、補正発明の作用効果は、引用文献1の記載事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎず、格別顕著なものともいえない。

(3)したがって、補正発明は、引用発明であり特許法第29条第1項第3号に該当し、または、補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)請求人の主張について
請求人は、審判請求書の「3-4.本願発明と引用発明との対比」において「引用文献1は、“センサ1028は、圧力伝達チューブ1006の壁に形成された開口部を介して圧力伝達チューブ1006内の圧力を測定する”ことを示すものの、「可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁内に配置される圧力センサであって、圧力センサは、可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁に形成された開口部を介して管腔内の圧力を測定するように構成される、圧力センサ」という本願の請求項1に係る特徴的構成について何ら開示乃至示唆していない。
つまり、引用文献1では、圧力伝達チューブ1006がカテーテル1002とは別設されているため、たとえカテーテル1002の壁に開口部を設けたとしても、この開口部は外部環境と連通状態にするためのものであり、センサ1028は、圧力伝達チューブ1006内の圧力を測定することが出来ない。従って、引用文献1では、圧力伝達チューブ1006に開口部を設けて、センサ1028が、圧力伝達チューブ1006内の圧力を測定出来るようにしている。これに対して、本願の請求項1に係る発明は、管腔及び補助管腔が共に可撓性の細長い部材内に形成されており、補助管腔の先端部分に位置付けされた圧力センサは、管腔と補助管腔との間の可撓性の細長い部材の(第1の先端部分の)壁に形成された開口部を介して管腔内の圧力を測定している。」と主張する。

しかしながら、圧力伝達チューブは圧力センサ1028の前後で1006、1006’と区別されているが、圧力センサ1028が、圧力伝達チューブ1006、1006’内と通じその内部の圧力を測定するように構成されているものであり、「カテーテル本体1024」、「圧力伝達チューブ1006」、「圧力伝達チューブ1006’」は全体として細長い部材と認定すると、「カテーテル本体1024」と「圧力伝達チューブ1006’」とが補正発明の「壁」に相当するから、センサ1028上にある圧力伝達チューブの開口部分は、補正発明の「可撓性の細長い部材の第1の先端部分の壁に形成された開口部」に相当する。
よって、請求人の上記主張は採用できない。

6 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により、却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は平成31年3月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されたものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記「第2[理由] 1(2)」に記載したとおりのものである。
2 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は以下のとおりである。
1.(進歩性)この出願の請求項1に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献5?7に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1.国際公開第2014/025255号
引用文献5.米国特許第4484585号明細書
引用文献6.欧州特許出願公開第0694284号明細書
引用文献7.特開2006-255422号公報

3 引用文献及びその記載事項
本願の優先権主張日前に頒布された引用文献1、5?7の記載事項及び引用発明は、上記「第2[理由] 3」に記載したとおりである。

4 当審の判断
本願発明は、補正発明を特定するために必要な事項である「可撓性の細長い部材」について、「基端部、基端部分、先端部、及び先端部分を含む可撓性の細長い部材」から、「基端部」及び「先端部」を削除し、「基端部分及び先端部分を有する可撓性の細長い部材」とし、
さらに、「前記基端部から前記先端部に延びる」から、管腔の延びる範囲の限定を省いて、「内部を通って延びる」とし、
さらに、「圧力センサ」について、「圧力センサは、前記可撓性の細長い部材の前記第1の先端部分の前記壁に形成された開口部を介して前記管腔内の圧力を測定するように構成される」から、「圧力センサ」の「前記管腔内の圧力」の測定形態の限定を削除し、「圧力センサは、前記管腔内の圧力を測定するように構成される」としたものである。

そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の事項を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2[理由]4、5」に記載したとおり、引用発明である、または、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、引用発明である、または、引用発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 まとめ
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、または、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、引用文献2?4及びその他の請求項について言及するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-08-26 
結審通知日 2020-09-01 
審決日 2020-09-23 
出願番号 特願2016-558172(P2016-558172)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61B)
P 1 8・ 575- Z (A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山口 裕之  
特許庁審判長 福島 浩司
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
信田 昌男
発明の名称 ハイブリッド式血管内圧測定装置並びに関連するシステム及び方法  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  
代理人 伊東 忠彦  

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