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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01Q
管理番号 1371266
審判番号 不服2020-834  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-22 
確定日 2021-03-09 
事件の表示 特願2018-539999「装着用途のためのNFCアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成29年 8月10日国際公開、WO2017/133543、平成31年 4月18日国内公表、特表2019-511152、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)1月23日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年2月1日 アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成30年 8月21日 手続補正書
令和 元年 7月 8日付け 拒絶理由通知書
8月 5日 意見書・手続補正書
9月12日付け 拒絶査定
令和 2年 1月22日 審判請求書・手続補正書
3月 6日付け 前置報告書
6月10日 上申書
7月14日付け 拒絶理由通知書
10月21日 意見書・手続補正書

第2 本願発明
本願の請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」といい、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和2年10月21日の手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載される以下のとおりのものであると認める。

「 【請求項1】
近距離通信のための処理部を含むエレクトロニクス・ブロックと、
2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形であって、前記2つの長辺の長さを調整することができるストラップであり、着用者によって身に付けられるときに、前記ストラップは、前記2つの短辺が対向するように略円筒形状に丸められ、前記エレクトロニクス・ブロックが前記2つの短辺の間で保持されるようにする、前記ストラップと
を有し、
前記ストラップは、
少なくとも1つの巻きを有するコイルを形成するよう接続され、該コイルの巻き間のギャップを満たすよう構成される非導電性材料によって分離される導電性材料
を含み、
前記コイルの巻きの夫々は、前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って1つの巻きを形成するように前記外周縁に隣接して設けられ、
前記コイルは、前記エレクトロニクス・ブロックへ電気的に接続され、NFCプロトコル通信のために構成された近距離通信(NFC)アンテナを有する、
装着型モバイル通信装置。
【請求項2】
前記コイルは、13.56MHzアンテナである、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項3】
前記コイルは、アクティブ・モード、パッシブ・モード、及びピア・ツー・ピア・モードにおけるNFCアンテナ動作をサポートする、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項4】
前記非導電性材料は、フェライト材を含む、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項5】
前記非導電性材料は、誘電材料を含む、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項6】
前記ストラップは、金属を含む、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項7】
前記ストラップの前記2つの短辺の一方の少なくとも一部は、前記エレクトロニクス・ブロックの中にある、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項8】
前記ストラップの前記2つの短辺の両方の少なくとも一部は、前記エレクトロニクス・ブロックの中にある、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項9】
前記ストラップのどの部分も前記エレクトロニクス・ブロックの中になく、前記ストラップは、前記エレクトロニクス・ブロックへ接続されたヒンジを通じて給電構造へ接続される、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項10】
前記エレクトロニクス・ブロックは、表示部を含む、
請求項1に記載の装着型モバイル通信装置。
【請求項11】
装着型通信装置のためのストラップであり、
2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形である基体部分であり、前記ストラップが着用者によって身に付けられるときに、前記基体部分は、前記2つの短辺が対向するように略円筒形状に丸められ、前記装着型通信装置が前記2つの短辺の間で保持されるようにする、前記基体部分と、
少なくとも1つの巻きを有し、該巻きの夫々が、前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記基体部分の外周に沿って1つの巻きを形成するように前記外周に隣接して設けられる、コイルと
を有し、
前記コイルは、前記装着型通信装置へ電気的に接続され、NFCプロトコル通信のために構成された近距離通信(NFC)アンテナを有する、
ストラップ。
【請求項12】
当該ストラップの長さは、前記コイルの部分どうしの間の導電接続を中断することなしに当該ストラップの断片を除去又は追加することによって調整可能である、
請求項11に記載のストラップ。
【請求項13】
当該ストラップを着用者に留めるための保持機構であり、更には、該保持機構によって結合される前記基体部分の断片上の前記コイルの部分どうしの間に導電接続を形成するための前記保持機構を更に有する、
請求項11に記載のストラップ。
【請求項14】
当該ストラップの前記2つの短辺の一方の少なくとも一部は、前記装着型通信装置のエレクトロニクス・ブロックの中にある、
請求項11に記載のストラップ。
【請求項15】
前記コイルは、前記装着型通信装置の前記エレクトロニクス・ブロックへの接続を用いて給電される、
請求項14に記載のストラップ。
【請求項16】
当該ストラップのどの部分も前記装着型通信装置のエレクトロニクス・ブロックの中になく、当該ストラップは、前記エレクトロニクス・ブロックへ接続されたヒンジを通じて給電構造へ接続される、
請求項11に記載のストラップ。
【請求項17】
エレクトロニクス・ブロックを保持するよう構成されるストラップを設けることであり、該ストラップは、2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形であって、前記2つの長辺の長さを調整することができる基体と、少なくとも1つの巻きを有し、該巻きの夫々が、前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記基体の外周に沿って1つの巻きを形成するように前記外周に隣接して設けられる、コイルとを有し、前記ストラップが着用者によって身に付けられるときに、前記基体は、前記2つの短辺が対向するように略円筒形状に丸められ、前記エレクトロニクス・ブロックが前記2つの短辺の間で保持されるようにする、前記設けることと、
前記コイルを前記エレクトロニクス・ブロックへ電気的に接続することと
を有し、
前記コイルは、NFCプロトコル通信のために構成された近距離通信(NFC)アンテナの一部を有する、
方法。
【請求項18】
前記ストラップにおいて前記コイルを成形することを有する、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記ストラップの中にある前記NFCアンテナの前記一部を、前記エレクトロニクス・ブロックの中にある前記NFCアンテナの第2部分へ接続することを有する、
請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記コイルを前記エレクトロニクス・ブロックへ電気的に接続することを有する、
請求項17に記載の方法。」

第3 引用文献
1 引用文献1の記載事項
令和2年7月14日付け拒絶理由通知書(以下、「当審拒絶理由通知書」という。)で引用された国際公開第93/09576号(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「〔第2実施例)
第7図は本発明の第2実施例に係る腕装着型無線機(腕装着型無線機用アンテナ装置)の横断面図であり、第8図はその縦断面図である。
これらの図において、本例の腕装着型無線機20は、内部に無線用回路ブロック26が収納されたケース体21(無線機本体)と、その側部に接続された皮革,シリコン樹脂形成体やウレタン樹脂成形体などからなる第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bを備える腕装着用バンド22とを有し、これらの第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bの内部には、ケース体21の内部を横切った状態に配置された導電体板23が一体的に成形、固定された状態にある。この導電体板23には、その長さ方向に溝23aが形成されており、この溝23aを有する導電体板23によって 腕装着型無線機20のアンテナ体24が構成されている。ここで、導電体板23は、縫い合わせたシート状の絶?性の成形体や貼り合わせたシート状の絶縁性の成形体などの第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bの内部に設けてもよい。」(12頁19行?13頁10行)
(当審注:上記「無線用回路ブロック26」は、「無線機用回路ブロック26」の誤記と認める。)

(2)「また、第2のバンド体22aの端部には金属性の中留め具221が取り付けられており、第1のバンド体22bの側には中留め具221が機構的に連結可能な止め穴222が複数個形成されている。このため、腕装着型無線機20は腕装着用バンド22を介して腕に装着可であるが、中留め具221は導電体板23からは絶縁分離された構造にあるため、中留め具221と止め穴222とを係合しても導電体23はループ状の電気経路を構成しない。」(13頁19行?14頁1行)
(当審注:上記「第2のバンド体22a」及び「第1のバンド体22b」は、それぞれ「第2のバンド体22b」及び「第1のバンド体22a」の誤記と認める。)

(3)「さらに、第9図にケース体21の内部の構造を拡大して断面図で示すように、そのケース体21の内部において、回路ケース266はその内部に無線機用回路基板267を有し、無線機用回路基板267の上面側にはアンテナ同調周波数調整用の可変容量コンデンサ269を備える一方、その下面側には無線機用回路プロック26に対する電源部たる電池264を有する。さらに、その下方側たる裏蓋29の側には、それに絶?板268を介して導電体板23が配置された状態にあり、この導電体板23と無線機用回路基板267とは導電性端子263によって配線接続されている。」(14頁2?10行)

(4)「また、本例の腕装着型無線機20においては、導電体板23の長さ方向の略全域にわたって溝23aが形成されているため、溝23aは腕装着用バンド22の外周方向の略全体に向けて開口している。このため、腕装着型無線機10を装着した腕を垂れ下げた状態においては、水平面のいずれの方向に対しても溝23aが開口する状態にあるため、その指向特性はほぼ無指向性であり、ヌルポイントがないので、携帯用に適している。」(15頁6?12行)

(5)第7図

第7図によれば、第1のバンド体22a及び第2のバンド体22bは、略長方形であることが見て取れる。

(6)第9図

第9図によれば、無線機用回路ブロック26が回路ケース266、無線機用回路基板267及び可変容量コンデンサ269を含むことが見て取れる。

(7)引用発明
前記(1)?(6)によれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「携帯用に適した腕装着型無線機20であって(前記(1)、(4))、
内部に無線機用回路ブロック26が収納されたケース体21(無線機本体)と、その側部に接続された皮革,シリコン樹脂形成体やウレタン樹脂成形体などからなる第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bを備える腕装着用バンド22とを有し(前記(1))、
これらの第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bの内部には、ケース体21の内部を横切った状態に配置された導電体板23が一体的に成形、固定された状態にあり(前記(1))、
この導電体板23には、その長さ方向に溝23aが形成されており、この溝23aを有する導電体板23によって腕装着型無線機20のアンテナ体24が構成されており(前記(1))、
導電体板23は、縫い合わせたシート状の絶?性の成形体や貼り合わせたシート状の絶縁性の成形体などの第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bの内部に設けてもよく(前記(1))、
第1のバンド体22a及び第2のバンド体22bは、略長方形であり(前記(5))、
第2のバンド体22bの端部には金属性の中留め具221が取り付けられており(前記(2))、
第1のバンド体22aの側には中留め具221が機構的に連結可能な止め穴222が複数個形成され(前記(2))、
中留め具221は導電体板23からは絶縁分離された構造にあり(前記(2))、
無線機用回路ブロック26が回路ケース266、無線機用回路基板267及び可変容量コンデンサ269を含み(前記(6))、
ケース体21の内部において、回路ケース266はその内部に無線機用回路基板267を有し、無線機用回路基板267の上面側には可変容量コンデンサ269を備え(前記(3))、
導電体板23と無線機用回路基板267とは導電性端子263によって配線接続され(前記(3))、
導電体板23の長さ方向の略全域にわたって溝23aが形成されているため、溝23aは腕装着用バンド22の外周方向の略全体に向けて開口しており、このため、腕装着型無線機10を装着した腕を垂れ下げた状態においては、水平面のいずれの方向に対しても溝23aが開口する状態にある(前記(4))
腕装着型無線機20。」

2 引用文献2の記載事項
拒絶査定及び当審拒絶理由通知書で周知技術を示すために引用された特開2015-99991号公報(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0018】
被装着部11は、ユーザーHの身体の一部に装着されていればよく、被装着部11が装着される部位は、ユーザーHの身体のうち、手首、指、首、腕、および、足首などのいずれであってもよい。被装着部11は、ユーザーHの身体におけるいずれの部位に装着される場合であっても、各部位の周方向における全体、あるいは、各部位の周方向における一部を囲む環形状を有していればよい。なお、図1は、通信端末装置10の一例として、ユーザーHの手首に装着される腕時計型の通信端末装置10を示している。
【0019】
通信端末装置10は、好ましくは表示部12を有し、表示部12は、被装着部11の外表面に位置し、好ましくは、被装着部11におけるユーザーHと接触しない面に位置している。表示部12は、例えば、ユーザーHによる通信端末装置10の操作に応じて各種の文字情報や図形情報を表示する。」

(2)「【0028】
[通信端末装置の電気的構成]
図3を参照して通信端末装置10の電気的構成を説明する。なお、以下では、通信端末装置10が、近距離無線通信の1つであるNFC(Near Field Communication )におけるパッシブ型のNFCタグである例を詳しく説明する。」

(3)「【0034】
図4が示すように、被装着部11が非装着状態であるとき、被装着部11は、1つの方向である延設方向に沿って延びる帯形状を有している。被装着部11は、延設方向に沿って延びる帯形状を有する樹脂フィルム11cと、樹脂フィルム11cの2つの側面を覆うカバー11dとを備えている。
【0035】
樹脂フィルム11cの1つの側面には、アンテナ21と、アンテナ21に接続するRFチップ22とが位置している。アンテナ21は、第1線部材41、第2線部材42、第3線部材43、および、第4線部材44を有し、各線部材は、延設方向に沿って延びている。各線部材の2つの端部のうち、被装着部11の第1装着端部11aに近い端部が基端であり、第2装着端部11bに近い端部が先端である。」

(4)図1、図4

図1及び図4を併せ読めば、第1線部材41、第2線部材42、第3線部材43及び第4線部材44は、被装着部11の2つの長辺近傍及び両長辺の中央部分に沿って延びている。

(5)以上(1)?(4)によれば、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「文献2記載事項」という。)が記載されている。

「ユーザーHの手首に装着される腕時計型の通信端末装置10であって(【0018】)、
表示部12は、被装着部11の外表面に位置し(【0019】)、
通信端末装置10が、近距離無線通信の1つであるNFC(Near Field Communication )におけるパッシブ型のNFCタグであり(【0028】)、
被装着部11が非装着状態であるとき、被装着部11は、1つの方向である延設方向に沿って延びる帯形状を有し、被装着部11は、延設方向に沿って延びる帯形状を有する樹脂フィルム11cと、樹脂フィルム11cの2つの側面を覆うカバー11dとを備え(【0034】)、
樹脂フィルム11cの1つの側面には、アンテナ21と、アンテナ21に接続するRFチップ22とが位置しており、アンテナ21は、第1線部材41、第2線部材42、第3線部材43、および、第4線部材44を有し、各線部材は、延設方向に沿って延び(【0035】)、
第1線部材41、第2線部材42、第3線部材43及び第4線部材44は、被装着部11の2つの長辺近傍及び両長辺の中央部分に沿って延びている(図1、図4)、
通信端末装置10。」

3 引用文献3の記載事項
拒絶査定で引用された特開平3-197196号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「この発明の実施例であるブレスレット型非接触記録媒体の外観および内部構造を第1図および第2図に示す。
第1図において符号1は内部に制御回路が組み込まれた本体であり、その上面に表示部12が設けられ、側面に押しボタンスイッチ13a,13bなどの入力部が設けられている。また、符号2a,2bは本体1にそれぞれ取り付けられたベルトであり、その内部にそれぞれコイル4a,4bが設けられている。
」(2頁右下欄5?14行)

(2)「送信回路10および受信回路11はコイル4を介して外部装置との間で非接触によりデータ通信を行う。」(3頁右上欄1?3行)

(3)「次に、コイル構成の異なる他の実施例を第6図および第7図に示す。
第6図および第7図はブレスレット型非接触記録媒体の外観および内部構造を表し、両図において符号1は、内部に制御回路が組み込まれた本体、2は本体1に取り付けられたスプリング式のベルトである。このベルト2の内部にはループ状のコイル4が内蔵されている。」(3頁右下欄8?15行)

(4)第1図、第2図

第1図によれば、コイル4a及び4bはそれぞれベルト2a及び2bの本体1側の短辺近傍に設けられていることが見て取れる。

(5)第6図、第7図

第6図によれば、コイル4はベルト2の2つの長辺の近傍に長辺に沿って設けられていることが見て取れる。

(8)以上、(1)?(5)によれば、引用文献3には、以下のア及びイに示す技術事項(以下、それぞれ「文献3記載事項1」及び「文献3記載事項2」という。)が記載されている。

ア「ブレスレット型非接触記録媒体であって(前記(1))、
符号1は内部に制御回路が組み込まれた本体であり(前記(1))、
符号2a,2bは本体1にそれぞれ取り付けられたベルトであり、その内部にそれぞれコイル4a,4bが設けられており(前記(1))、
コイル4を介して外部装置との間で非接触によりデータ通信を行い(前記(2))、
コイル4a及び4bはそれぞれベルト2a及び2bの本体1側の短辺近傍に設けられている(第1図)
ブレスレット型非接触記録媒体。」

イ「ブレスレット型非接触記録媒体であって(前記(3))、
符号1は、内部に制御回路が組み込まれた本体であり(前記(3))、
符号2は本体1に取り付けられたスプリング式のベルトであり(前記(3))、
このベルト2の内部にはループ状のコイル4が内蔵されており(前記(3))、
コイル4を介して外部装置との間で非接触によりデータ通信を行い(前記(2))、
コイル4はベルト2の2つの長辺の近傍に長辺に沿って設けられている(第6図)
ブレスレット型非接触記録媒体。」

4 引用文献4の記載事項
拒絶査定及び前置報告書で周知技術を示すために引用された特許第3635544号公報(以下、「引用文献4」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、携帯無線機器用アンテナを適用した腕時計型無線機器を一実施例として、図面を参照して説明する。」

(2)「【0021】
B.第1実施例
(1)携帯無線機器の構成
図1は、本発明の第1実施例による携帯無線機器用アンテナを適用した腕時計型無線機器の構成を示す斜視図である。また、図2(a),(b)は、本第1実施例による携帯無線機器用アンテナを適用した腕時計型無線機器の構成を示す正面図および断面図である。図において、腕時計型無線機器は、大きく分けて、時計機能、無線機能等の電子部品が格納されている本体部1、該本体部1を腕に固定するためのバンド部2a,2b、およびバンド部2a,2bを腕に係止するためのバックル部4から構成されている。本体部1には、特に、本発明に係わる部品として、無線回路部6が内蔵されている。」

(3)「【0036】
D.第3実施例
次に、図12(a),(b)は、各々、本発明の第3実施例による携帯無線機器用アンテナを適用した腕時計型無線機器の構成を示す正面図および断面図である。また、図13(a),(b)は、各々、本第3実施例のループアンテナの概略構成を示す概念図および等価回路を示す回路図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第3実施例では、腕の外周を周回させずに、バンド部2aにのみ、単回巻きの導電体からなるアンテナ素子40を配設し、平面状のループアンテナを構成している。この場合、前述した第1実施例のループアンテナに対して、90度異なる指向性を有する。アンテナ素子40は、樹脂等の絶縁体材質を用いたバンド部に、金属板、金属薄膜、あるいはプリント配線による金属薄膜等により形成される。したがって、型抜きや、金属プリントなどの容易な方法で、各種の形状の平面アンテナをバンド部に内蔵または一体成形して製造できる。また、本第3実施例の等価回路は、図13(a),(b)に示すように、直列接続されたインダクタンスLと抵抗Rと、並列接続されたコンデンサCとから構成される。」

(4)「【0040】
F.第5実施例
次に、図16(a),(b)は、本発明の第5実施例による携帯無線機器用アンテナを適用した腕時計型無線機器の構成を示す正面図および断面図である。また、図17(a),(b)は、本第5実施例のループアンテナの概略構成を示す概念図および等価回路を示す回路図である。なお、図1に対応する部分には同一の符号を付けて説明を省略する。本第5実施例では、腕の外周を周回させずに、バンド部2aにのみ、複数回巻きのスパイラル(渦巻)状の導電体からなるアンテナ素子42を配設し、平面状のループアンテナを構成している。但し、無線回路部6からの給電を可能にするために、アンテナ素子42は、絶縁層43を介した積層構造とし、接続線路44によって無線回路部6に接続している。この場合も、前述した第1実施例のループアンテナに対して、90度異なる指向性を有する。また、本第5実施例の等価回路は、図17(a),(b)に示すように、巻回数nに応じた段数(実施例では、3段)の、直列接続されたインダクタンスLと抵抗Rと、並列接続されたコンデンサCとから構成される。」

(5)図12、図16


(6)以上(1)?(5)によれば、引用文献4には以下の技術事項(以下、「文献4記載事項」という。)が記載されている。

「携帯無線機器用アンテナを適用した腕時計型無線機器であって(【0014】)、
本体部1、該本体部1を腕に固定するためのバンド部2a,2b、およびバンド部2a,2bを腕に係止するためのバックル部4から構成され(【0021】)、
バンド部2aにのみ、単回巻き又は複数回巻きの導電体からなるアンテナ素子40を配設し、平面状のループアンテナを構成している(【0036】、【0040】)
腕時計型無線機器。」

5 引用文献5の記載事項
前置報告書で周知技術を示すために引用された米国特許出願公開第2005/0012671号明細書(以下、「引用文献5」という。)には、以下の事項が記載されている。

(1)「[0001] The present invention concerns a portable electronic device including a wristband, a case and an electronic circuit for receiving radiobroadcast signals comprising an antenna disposed in said wristband.」
(当審訳:本発明は、携帯用電子機器に関し、該携帯用電子機器はリストバンド、ケース及び電子回路を含み、該電子回路は、ラジオ放送信号を受信するためのものであって、前記リストバンドに配置されるアンテナを含む。)

(2)「[0021] FIG. 1 is a general elevation view of an antenna 1 comprising a single coil 2, according to a main embodiment of the present invention, showing the specific shape of said spiral wound coil. It will also be noted that coil 2, preferably made of copper and having a low thickness of the order of several micrometers, is arranged on the front face 3 of a substrate 4.」
(当審訳:図1はアンテナ1の一般的な姿図であり、アンテナ1は単一のコイル2を含み、本発明の主実施形態によれば、該巻きコイルの特定の形状を示している。コイル2は、好ましくは銅製で、数マイクロメーター台の薄さであり、基板4の前面に配置されている。)

(3)「[0030] FIG. 2 shows a see through view of portable electronic device 15 according to the invention, incorporating antenna 1 which has just been described in a strand 16 of the wristband. It will be noted in this Figure that the dimensions of antenna 1 according to the invention advantageously allow portable device 15 to be fitted with a wristband having the usual dimensions.」
(当審訳:図2は本発明による携帯用電子機器15の透視図を示し、組み込みアンテナ1が該リストバンドのストランド16の中に描写されている。この図では、本発明によるアンテナ1の寸法によれば、携帯機器15が通常の寸法のリストバンドに有利に合致し得ることに注目するだろう。)

(4)「[0034] It is also apparent from this Figure that extension 7 of substrate 4 carrying rectangular connectors 6 and 8 extends inside case 18 of portable electronic device 15, to the contact of a printed circuit board 19.」
(当審訳:この図から明らかであるが、矩形コネクター6及び8を備える基板4の延長部7は、携帯用電子機器15のケース18の内部に、プリント回路基板19の接点へと延長している。)

(5)図1


(6)図2

図2によれば、基板4は、リストバンドのケース18側の端部から他の端部に向かってリストバンドの中程を超える位置までを占めていることが読み取れる。

(7)以上(1)?(6)によれば、引用文献5には以下の技術事項(以下、「文献5記載事項」という。)が記載されている。

「携帯用電子機器であって([0001])、
リストバンド、ケース18及び電子回路を含み([0001]、[0034])、
該電子回路は、ラジオ放送信号を受信するためのものであって、前記リストバンドに配置されるアンテナを含み([0001])、
アンテナ1は単一の巻きコイル2を含み([0021])、
コイル2は基板4の前面に配置されており([0021])、
基板4は、リストバンドのケース18側の端部から他の端部に向かってリストバンドの中程を超える位置までを占める(図2)
携帯用電子機器。」

第4 本願発明1と引用発明との対比
1 引用発明の「腕装着型無線機20」は「携帯用に適し」たものであるから、本願発明1の「装着型モバイル通信装置」に対応する。

2 引用発明の「無線機用回路ブロック26」は、腕装着型無線機20において無線通信のための何らかの処理を行う回路ブロックであると認められるから、本願発明1の「近距離通信のための処理部」と引用発明の「無線機用回路ブロック26」とは「通信のための処理部」である点で共通する。
引用発明の「ケース体21」は、「無線機本体」であって、「無線機用回路ブロック26が収納され」ているから、エレクトロニクスに関する部分であると認められる。そうすると、本願発明1の「エレクトロニクス・ブロック」と引用発明1の「ケース体21」とは「通信のための処理部を含むエレクトロニクス・ブロック」である点で共通する。

3 引用発明の「腕装着用バンド22」は、「腕装着型無線機20」を腕に装着するためのものであるから、本願発明1の「ストラップ」に対応する。

(1)引用発明の「腕装着バンド22」は「第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bを備え」ており、「第1のバンド体22a及び第2のバンド体22bは、略長方形であ」るから、「第2のバンド体22b」の端部に取り付けられた「中留め具221」と「第1のバンド体22a」に形成された「止め穴222」とが機構的に連結された場合、「腕装着バンド22」は、全体として略長方形を成すと認められる。このように連結されて略長方形を成した「腕装着バンド22」は、2つの短辺(第1及び第2のバンド体22a及び22bのそれぞれケース体21側の短辺)及び2つの長辺を有することは明らかである。

(2)引用発明の「中留め具221」及び「止め穴222」は前記2つの長辺の長さを調整するための部材であると認められる。したがって、本願発明1の「ストラップ」と引用発明の「腕装着バンド22」とは「2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形であって、前記2つの長辺の長さを調整することができるストラップ」である点で共通する。

(3)引用発明の「腕装着用バンド22」は、着用時に「中留め具221」を「止め穴222」に機構的に連結し、その時、「腕装着用バンド22」は略円筒形状に丸められることが明らかである。したがって、本願発明1の「ストラップ」と引用発明の「腕装着バンド22」とは「着用者によって身に付けられるときに、前記ストラップは、略円筒形状に丸められ」る点で共通する。

(4)引用発明の「腕装着用バンド22」は、前記2つの短辺(前記(1)の短辺についての説明を参照。)により、「ケース体21」を保持しているから、本願発明1の「ストラップ」と引用発明の「腕装着バンド22」とは「前記エレクトロニクス・ブロックが前記2つの短辺の間で保持されるようにする」点で共通する。

4 引用発明の「導電体板23」は明らかに導電性材料であり、「導電体板23」に形成された「溝23a」は開口であるため、「導電体板23」は1巻きのコイルを形成しているといえる。よって、本願発明1の「導電性材料」と引用発明の「導電体板23」とは「少なくとも1つの巻きを有するコイルを形成するよう接続された導電性材料」である点で共通する。
また、引用発明の「導電体板23」は、「縫い合わせたシート状の絶?性の成形体や貼り合わせたシート状の絶縁性の成形体などの第1のバンド体22aおよび第2のバンド体22bの内部に設けてもよ」いため、「腕装着用バンド22」に含まれるといえる。よって、本願発明1と引用発明とは「前記ストラップは、導電性材料を含」む点で共通する。
そして、引用発明の「絶縁性の成形体」は、明らかに非導電性材料であり、該「絶縁性の成形体」によって「導電体板23」は「中留め具221」から絶縁分離されているから、本願発明1の「導電性材料」と引用発明の「導電体板23」とは「非導電性材料によって分離される」点で共通する。

5 引用発明の「導電体板23」は、第7図によれば、「腕装着用バンド22」の外周縁を構成する2つの長辺に隣接しており、この部分において外周縁に沿って1つの巻きを形成しているといえる。よって、本願発明1と引用発明とは「前記コイルの巻きの夫々は、前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って1つの巻きを形成するように前記外周縁に隣接して設けられ」ている点で共通する。

6 引用発明では「導電体板23と無線機用回路基板267とは導電性端子263によって配線接続され」ているから、「導電体板23」によるコイルと「無線機用回路基板267」を収納する「ケース体21」とは電気的に接続されているといえる。よって、本願発明1と引用発明とは「前記コイルは、前記エレクトロニクス・ブロックへ電気的に接続され」ている点で一致する。

7 引用発明では「導電体板23によって腕装着型無線機20のアンテナ体24が構成されて」いるから、本願発明1と引用発明とは「通信のために構成されたアンテナを有する」点で共通する。

8 前記1?7によれば、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

〈一致点〉
「通信のための処理部を含むエレクトロニクス・ブロックと、
2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形であって、前記2つの長辺の長さを調整することができるストラップであり、着用者によって身に付けられるときに、前記ストラップは、略円筒形状に丸められ、前記エレクトロニクス・ブロックが前記2つの短辺の間で保持されるようにする、前記ストラップと
を有し、
前記ストラップは、
少なくとも1つの巻きを有するコイルを形成するよう接続され、非導電性材料によって分離される導電性材料
を含み、
前記コイルの巻きの夫々は、前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って1つの巻きを形成するように前記外周縁に隣接して設けられ、
前記コイルは、前記エレクトロニクス・ブロックへ電気的に接続され、通信のために構成されたアンテナを有する、
装着型モバイル通信装置。」である点。

〈相違点1〉
本願発明1は「近距離通信のための処理部」及び「NFCプロトコル通信のために構成された近距離通信(NFC)アンテナ」を備えるのに対し、引用発明は単なる「無線機用回路ブロック26」及び「アンテナ体24」を備えるにとどまり、これらがNFCプロトコル通信による近距離通信のためのものであるとは特定されていない点。

〈相違点2〉
本願発明1の「ストラップ」は、非装着時においても一体であるため「2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形」であるのに対し、引用発明の「腕装着用バンド22」は、非装着時において「第1のバンド体22a」及び「第2のバンド体22b」に分離しているため「2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形」を成しているとはいえず、これに伴い、本願発明1の「ストラップ」は装着時に「前記2つの短辺が対向するように略円筒形状に丸められ」、「コイルの巻き」は「前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って」いるのに対し、引用発明の「腕装着用バンド22」は、装着時に、前記3(1)でいう短辺ではなく、「中留め具221」側の短辺及び「止め穴222」側の短辺が対向するように略円筒形状に丸められ、引用発明の「導電体板23」は、前記3(1)でいう短辺に沿っていない点。

〈相違点3〉
本願発明1の「非導電性材料」は「コイルの巻き間のギャップを満たすように構成され」ているのに対し、引用発明の「絶縁性の成形体」は「導電体板23」の巻きのギャップを満たすとは特定されていない点。

第5 相違点についての判断
事案に鑑み、相違点2について検討する。

1 文献2記載事項について
(1)文献2記載事項の「被装着部11」は、単一の部材であり、「帯形状」すなわち略長方形の形状をしているが、「被装着部11」に備わる「アンテナ21」は、第1?第4線部材41?44からなり、これらの線部材41?44は、本願発明1のように「前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って1つの巻きを形成するように前記外周縁に隣接して設けられ」てはいない。
したがって、引用発明の「腕装着用バンド22」を文献2記載事項の「被装着部11」に置換しても、本願発明1のように「前記コイルの巻きの夫々は、前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って1つの巻きを形成するように前記外周縁に隣接して設けられ」ることにはならない。

(2)仮に、引用発明の「導電体板23」は置換せず、それを覆う「腕装着用バンド22」のみを文献2記載事項の「被装着部11」に置換できたとしても、文献2記載事項の「被装着部11」は、装着状態においても非装着状態においても、2つの短辺によらずに表示部12を保持しているのであって、本願発明1のように「着用者によって身に付けられるときに、前記ストラップは、前記2つの短辺が対向するように略円筒形状に丸められ、前記エレクトロニクス・ブロックが前記2つの短辺の間で保持されるようにする」ことはない。

(3)以上(1)及び(2)によれば、仮に、引用発明に文献2記載事項を組み合わせることができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至ることはない。

2 文献3記載事項1について
文献3記載事項1の「ベルト2a」及び「ベルト2b」は、引用発明の「第1のバンド体22a」及び「第2のバンド体22b」と同様に分離したものであるから、例え、引用発明の「腕装着用バンド22」を文献3記載事項1の「ベルト2a」及び「ベルト2b」に置換したとしても、本願発明1の「ストラップ」のように一体の「2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形」の形状には至らない。
したがって、仮に、引用発明に文献3記載事項1を組み合わせることができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至ることはない。

3 文献3記載事項2について
文献3記載事項2の「ベルト2」は、「スプリング式のベルト」であるから、装着する時にはベルトの長さが伸びて径が広がるものだと認められる。これは、引用文献3の「コイル構成の異なる他の実施例」においてベルトを開閉する構造が何ら示されていないこととも整合する。そうすると、文献3記載事項2の「ベルト2」は、装着時及び被装着時のいずれにおいても輪の形状であり、これを略直方形と称するには無理がある。
そうすると、例え、引用発明の「腕装着用バンド22」を文献3記載事項2の「ベルト2」に置換したとしても、本願発明1のように「2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形」の形状には至らない。
したがって、仮に、引用発明に文献3記載事項2を組み合わせることができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至ることはない。

4 文献4記載事項について
文献4記載事項の「バンド部2a」及び「バンド部2b」は、引用発明の「第1のバンド体22a」及び「第2のバンド体22b」と同様に分離したものであるから、仮に、引用発明の「腕装着用バンド22」を文献4記載事項の「バンド部2a」及び「バンド部2b」に置換したとしても、本願発明1の「ストラップ」のように一体の「2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形」の形状には至らない。
したがって、仮に、引用発明に文献4記載事項を組み合わせることができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至ることはない。

5 文献5記載事項について
引用文献5の特に図2から、文献5記載事項の「リストバンド」も、文献3記載事項1及び文献4記載事項と同様に、分離したものであると推測される。そうすると、前記2及び4と同様に、仮に、引用発明に文献5記載事項を組み合わせることができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至ることはない。
加えて、文献5記載事項の「アンテナ1」の「巻きコイル2」が配置される「基板4」は、「リストバンド」の「ケース18」側の端部には接しているものの、それに対向する端部には到達していない。したがって、仮に、引用発明の「腕装着用バンド22」を文献5記載事項の「リストバンド」に置換したとしても、その「アンテナ1」の「巻きコイル2」が、本願発明1のように「前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って1つの巻きを形成するように前記外周縁に隣接して設けられ」ることはない。
したがって、仮に、引用発明に文献5記載事項を組み合わせることができたとしても、相違点2に係る本願発明1の構成に至ることはない。

6 周知技術について
文献2記載事項?文献5記載事項のいずれにも、相違点2に係る本願発明1の構成は開示されていないから、該構成は周知技術であるとは認められず、当業者が容易に想到し得るものではない。
また、相違点2に係る本願発明1の構成が技術常識であるとも認められない。

7 本願発明1の容易想到性についての結論
以上によれば、本願発明1は、引用発明、文献2記載事項ないし文献5記載事項及び周知技術から容易になし得るものではない。

第6 本願発明2?20についての判断
本願発明2?10は、いずれも本願発明1の従属発明であり、本願発明1の発明特定事項を全て含む。そうすると、本願発明2?10と引用発明との相違点には、前記第4、8に示した相違点2が含まれる。
相違点2についての判断は前記第5のとおりであるから、本願発明2?10は、本願発明1と同様に、引用発明、文献2記載事項ないし文献5記載事項及び周知技術から容易になし得るものではない。
本願発明11については、「2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形である基体部分であり、前記ストラップが着用者によって身に付けられるときに、前記基体部分は、前記2つの短辺が対向するように略円筒形状に丸められ、前記装着型通信装置が前記2つの短辺の間で保持されるようにする、前記基体部分」及び「該巻きの夫々が、前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記基体部分の外周に沿って1つの巻きを形成するように前記外周に隣接して設けられる、コイル」という、本願発明1の相違点2に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、前記第5と同様である。
本願発明11の従属発明である本願発明12ないし16についても同様である。
本願発明17については、「該ストラップは、2つの短辺及び2つの長辺を有する略長方形であって、前記2つの長辺の長さを調整することができる基体」及び「該巻きの夫々が、前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記基体の外周に沿って1つの巻きを形成するように前記外周に隣接して設けられる、コイル」という、本願発明1の相違点2に係る構成と同様の構成を備えるものであるから、前記第5と同様である。
本願発明17の従属発明である本願発明18ないし20についても同様である。

第7 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定では、請求項1?20に係る発明は、前記引用文献3に記載された発明、前記引用文献2に示される周知技術及び前記引用文献4に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、と判断した。
しかしながら、前記第4及び第5に示されるとおり、本願発明1の「着用者によって身に付けられるときに、前記ストラップは、前記2つの短辺が対向するように略円筒形状に丸められ、前記エレクトロニクス・ブロックが前記2つの短辺の間で保持されるように」し、かつ、「前記コイルの巻きの夫々は、前記2つの短辺及び前記2つの長辺から成る前記ストラップの外周縁に沿って1つの巻きを形成するように前記外周縁に隣接して設けられ」る構成は、前記引用文献のいずれにも記載も示唆もされていない。
上記は本願発明11及び本願発明17についても同様であり、本願発明1、11又は17の従属発明である本願発明2?10、12?16及び18?20についても同様である。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 当審拒絶理由について
当審拒絶理由通知書で通知した拒絶理由の概要は、(I)本願発明は明確ではないから、本願は特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない、(II)本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明1?10、12、13及び17?20の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない、(III)本願発明1?12及び14?20は、引用発明及び引用文献2に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
しかしながら、前記(I)及び(II)の理由は、令和2年10月21日の手続補正書による補正で解消した。
そして、前記(III)の理由については、前記第4?第6のとおりである。
したがって、前記(I)?(III)のいずれについても、理由がない。

第9 むすび
前記第5及び第6のとおり、本願発明は、当業者が引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
前記第7のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
前記第8のとおり、本願発明には、当審が通知した拒絶の理由がない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-02-18 
出願番号 特願2018-539999(P2018-539999)
審決分類 P 1 8・ 536- WY (H01Q)
P 1 8・ 537- WY (H01Q)
P 1 8・ 121- WY (H01Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 新田 亮  
特許庁審判長 北岡 浩
特許庁審判官 丸山 高政
衣鳩 文彦
発明の名称 装着用途のためのNFCアンテナ  
代理人 伊東 忠重  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠彦  

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