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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1371378
審判番号 不服2019-14445  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-30 
確定日 2021-03-09 
事件の表示 特願2015-128499「サセプタ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 2月18日出願公開,特開2016- 27636,請求項の数(6)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成27年6月26日(優先権主張平成26年6月27日)の出願であって,その手続の経緯は,概略,以下のとおりである。
令和 元年 5月14日付け:拒絶理由通知書
令和 元年 6月28日 :意見書
令和 元年 6月28日 :手続補正書
令和 元年 7月22日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。)
令和 元年10月30日 :審判請求書
令和 元年10月30日 :手続補正書
令和 2年 7月29日 :拒絶理由通知書(以下「当審拒絶理由通知書」という。)
令和 2年10月 5日 :意見書
令和 2年10月 5日 :手続補正書

第2 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は,令和2年10月5日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
基板を保持するために成膜装置に用いられるサセプタであって,
該基板を保持する基板保持部と,該基板保持部を支持する支持部とが,一体にまたは別体で備えられており,基板側表面の外周形状が略半円状であり,前記成膜装置が,ミストを用いており,さらに,前記成膜装置が,管状炉を備えており,前記サセプタが該管状炉内の前記基板を保持するために用いられるものであり,且つ,前記支持部が前記基板を傾斜姿勢で支持し,前記サセプタが,前記ミストを前記基板まで加速上昇させることができるように構成されていることを特徴とするサセプタ。」

なお,本願発明2ないし6は,本願発明1を減縮した発明である。

第3 引用文献,引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2006-70342号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審で付加した。以下,同じ。)
「【請求項1】
処理容器と,
前記処理容器の内部に配置され,基板を保持するためのサセプタと,
前記サセプタを誘導加熱するための磁界を形成する,中心軸を中心に巻き形状となっているコイルとを備え,
前記コイルの中心軸の延びる方向に対して,前記サセプタにおいて前記基板を保持する表面の延びる方向が交差している,気相成膜装置。」

「【請求項3】
前記処理容器の内部に反応ガスを流通させるための反応ガス供給部材をさらに備え,
前記基板の平面形状は円形状であり,
前記サセプタの平面形状は,
前記処理容器の内部を流通する反応ガスの流れの上流側に位置する端部であって直線状の上流側壁部と,
前記上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部と,
前記反応ガスの流れの下流側に位置する端部である円弧状部分と,
前記円弧状部分の両端部と前記上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部とをそれぞれつなぐ側壁部とからなり,
前記円弧状部分の中心点より上流側に,前記基板の中心点が位置するように前記基板は配置される,請求項1または2に記載の気相成膜装置。」

「【技術分野】
【0001】
この発明は,気相成膜装置,サセプタおよび気相成膜方法に関し,より特定的には,成膜条件の均一性を向上させることが可能な気相成膜装置,サセプタおよび気相成膜方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来,エピタキシャル薄膜などを形成するための装置としてCVD(Chemical vapor deposition)装置などの気相成膜装置が知られている。また,そのような気相成膜装置においては,膜を形成する対象物である基板などを保持するためのサセプタが用いられる(たとえば,特許文献1参照)。」

「【0004】
しかし,上記のような従来の気相成膜装置では,コイルとサセプタとの構成や配置が決定すると,サセプタでの発熱密度分布が決定されるため,成膜に用いる反応ガスの流速の変化といったプロセス条件(より具体的にはサセプタの周囲の熱的条件)が変化することによりサセプタでの放熱特性が変化すると,このような放熱特性の変化に対応してサセプタでの発熱密度分布の修正を行なうことが困難であった。このため,プロセス条件の変化などが発生した場合,適切な基板の温度条件を実現することが難しかった。
【0005】
この発明は,上記のような課題を解決するために成されたものであり,この発明の目的は,プロセス条件の変化が起きた場合であっても,基板の温度条件を最適化することが可能な気相成膜装置,サセプタおよび気相成膜方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に従った気相成膜装置は,処理容器と,サセプタと,コイルとを備える。サセプタは,処理容器の内部に配置され,基板を保持するためのものである。コイルは,サセプタを誘導加熱するための磁界を形成する。当該コイルは中心軸を中心に巻き形状となっている。コイルの中心軸の延びる方向に対して,サセプタにおいて基板を保持する表面の延びる方向は交差している。
【0007】
この場合,コイルの中心軸の延びる方向に対して,サセプタにおいて基板を保持する表面の延びる方向を交差させる(つまり,コイルの中心軸に対してサセプタを傾ける)と,サセプタにおける誘導加熱による発熱密度の分布が変化する。このため,コイルの中心軸の延びる方向に対して,サセプタにおいて基板を保持する表面の延びる方向のなす角度θを変化させることにより,サセプタにおける発熱と放熱とのバランスを最適化することができる。この結果,サセプタに搭載された基板の温度分布(とくにコイルの中心軸の延びる方向における温度分布)を均一化することができる。
【0008】
上記気相成膜装置は,コイルの中心軸の延びる方向に対して,サセプタにおいて基板を保持する表面の延びる方向が交差するように,サセプタを保持する架台をさらに備えていてもよい。この場合,架台にサセプタを搭載するという簡単な方法で,コイルの中心軸の延びる方向に対して,サセプタにおいて基板を保持する表面の延びる方向が交差するようにサセプタを傾けた状態に保持できる。また,サセプタを搭載する部分の傾き角度を変えた複数種類の架台を準備しておき,それらの複数種類の架台のうちのいずれかを選択して使用することで,角度θを容易に変更することができる。
【0009】
上記気相成膜装置は,処理容器の内部に反応ガスを流通させるための反応ガス供給部材をさらに備えていてもよい。また,基板の平面形状は円形状であってもよい。サセプタの平面形状は,処理容器の内部を流通する反応ガスの流れの上流側に位置する端部であって直線状の上流側壁部と,上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部と,反応ガスの流れの下流側に位置する端部である円弧状部分と,円弧状部分の両端部と上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部とをそれぞれつなぐ側壁部とからなっていてもよい。円弧状部分の中心点より上流側に,基板の中心点が位置するように基板は配置されることが好ましい。また,反応ガスの流れ方向に垂直な方向における,上流側壁部および円弧状の角部の合計幅(上流側幅)は,円弧状部分の幅(下流側幅)より大きいことが好ましい。
【0010】
この場合,サセプタの平面形状において尖った角部ではなく円弧状の角部を形成しているので,尖った角部が形成された場合よりサセプタの角部からの放熱の程度を小さくできる。このため,サセプタの中心部と角部などの外周部との温度の差を小さくできる(サセプタにおける温度の均一性を向上させることができる)。
【0011】
また,サセプタを傾けて配置することにより,サセプタの上流側壁部近傍での誘導加熱による発熱密度が高まる。そして,このうような発熱密度が高まった領域側(上流側壁部の方向)に基板をずらして配置すれば,上記のような発熱密度が高まった部分の存在に起因するサセプタの温度均一領域を有効に利用できる。この結果,基板温度の均一化を図ることができる。また,上記のような円弧状部分を形成すれば,サセプタの下流側での放熱特性を,中心軸に対して垂直な方向(サセプタの幅方向)においてより均一化することができる。
【0012】
また,サセプタの上流側幅が下流側幅より大きくなっているので,サセプタの側壁部に面する領域での反応ガスの流れに乱流が発生する。この結果,サセプタの下流側において反応ガスの(流れに対する)幅方向での拡散が起こるため,サセプタの下流側に位置する基板上に十分な反応ガスを供給することができる。このため,下流側に位置する基板上においても十分な成膜速度で膜を形成することができる。
【0013】
また,基板の中心からサセプタの上流側壁部までの距離は,基板の中心からサセプタの円弧状部分までの距離より大きくなっていてもよい。この場合,基板より上流側に位置するサセプタからの放熱により,基板に流れてくる反応ガスを十分加熱することができる。この結果,基板上での成膜速度を十分大きくすることができる。」

「【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下,図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお,以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0036】
図1は,本発明による気相成長装置の処理部を示す断面模式図である。図2は,図1に示した処理部を含む本発明による気相成長装置の構成を示すブロック図である。図3は,図1に示した気相成長装置において用いられる,本発明によるサセプタを示す平面模式図である。図4は,図3に示した線分IV-IVにおける断面模式図である。図1?図4を参照して,本発明による気相成長装置およびサセプタを説明する。
【0037】
図1に示すように,本発明による気相成長装置の処理部3は,処理容器2と,この処理容器2の外周を囲むように配置された,中心軸を中心に巻き形状となっているコイルとしての高周波コイル4と,処理容器2の内部に配置されたサセプタ10と,このサセプタ10を高周波コイル4のコイル軸(中心軸)の方向(矢印13によって示される方向)に対して傾き角度θ1だけ傾斜した状態で保持するための架台11とを含む。なお,ここで傾き角度θ1は,コイルの中心軸としてのコイル軸の方向(矢印13により示される方向)と,サセプタ10において基板12を保持する上部表面との成す角度であるが,図示したサセプタは上部表面と底壁とが平行になっているため,当該傾き角度θ1は矢印13に示したコイル軸の方向と底壁との成す角度として示されている。
【0038】
サセプタ10の上部表面には,平面形状が円形状である基板12を保持するための凹部18(図4参照)が形成されている。架台11は,石英からなり,底壁22と,底壁に連なり凸部23を構成する前方部と,この凸部23に連なり矢印13で示したコイル軸の方向(底壁22が延びる方向)に対して角度θ1だけ傾斜した上壁21とからなる。サセプタ10は,この上壁21上に配置されている。また,処理容器2内部には,所定の反応ガスが矢印15に示す方向から供給される。当該反応ガスは,処理容器2の内部を矢印15に示す方向に流通する。
【0039】
図1に示した処理部3を備える気相成長装置1は,図2に示すように,処理部3と,この処理部3へ反応ガスを供給するための反応ガス供給部材としてのガス供給部5と,処理部3からガスを排出するためのガス排出部6と,処理部3を構成する高周波コイル4へ所定の電源を供給するための電源部7と,ガス供給部5,ガス排出部6および電源部7を制御するための制御部8とを備える。なお,気相成長装置1の構成は,図2に示したような構成に限られるものではなく,処理部3において基板12の表面上に成膜することが可能であれば他の構成を採用してもよい。
【0040】
次に,図3および図4を参照しながら,図1および図2に示した気相成長装置において用いられる本発明によるサセプタを説明する。
【0041】
図3および図4に示したように,本発明によるサセプタ10の平面形状は,矢印15で示した反応ガスの流れる方向の上流側と下流側とで非対称な形状となっている。サセプタ10については,サセプタ10の平面形状が正方形であって当該正方形の中央に基板12が保持されるとともにサセプタ10において基板12を保持する表面の延びる方向が矢印13で示すコイル軸と平行な場合での基板12の温度分布より,コイル軸に対して,サセプタ10において基板12を保持する上部表面の延びる方向が交差(傾斜)した状態で用いられる場合における基板12の温度分布が均一化するように,サセプタ10の形状およびサセプタ10の上部表面上での基板12の配置が決定されている。
【0042】
具体的には,基板12の中心30から,矢印15で示したガスの流れ方向の上流側に距離Wだけ離れた位置に,一方壁部としての幅Dの直線状である上流側壁部25が形成されている。そして,この直線状の上流側壁部25の両側には,半径R2の円弧状の角部26が形成されている。また,サセプタ10の矢印15で示した反応ガスの流れ方向における下流側では,基板12の中心30から下流側にδだけ離れた位置31を中心として,半径R3の半円状の円弧状部分27が形成されている。そして,この下流側の円弧状部分27の端部と,反応ガスの流れ方向での上流側における半径R2の円弧状の角部26とは,それぞれ直線状の側壁部28により繋がれている。円弧状部分27の中心点である位置31より上流側に,基板12の中心点である中心30が位置するように基板12はサセプタ10上に配置される。図3からもわかるように,上流側壁部25および円弧状の角部26の幅W1は,サセプタ10の下流側での半径R3の円弧状部分27の幅W2よりも大きくなっている。
【0043】
この場合,サセプタ10の平面形状において尖った角部ではなく円弧状の角部26を形成しているので,尖った角部が形成された場合よりサセプタ10の角部26からの放熱の程度を小さくできる。このため,サセプタ10の中心部と角部26などの外周部との温度の差を小さくできる。また,サセプタ10を矢印13で示すコイル軸に対して傾き角度θ1だけ傾けて配置することにより,サセプタ10の上流側壁部25近傍での誘導加熱による発熱密度が高まる。そして,このうような発熱密度が高まった上流側壁部25側に基板12をずらして配置すれば,上記のような発熱密度が高まった部分の存在に起因するサセプタ10の温度均一領域を有効に利用できる。この結果,基板12の温度の均一化を図ることができる。
【0044】
また,上記のような円弧状部分27を形成すれば,サセプタ10の下流側での放熱特性を,サセプタ10の幅方向(矢印13に対して垂直な水平方向)においてより均一化することができる。また,サセプタ10の上流側幅である幅W1が下流側幅である幅W2より大きくなっているので,サセプタ10の側壁部28に面する領域での反応ガスの流れに乱流が発生する。この結果,サセプタ10の下流側においてサセプタ10の幅方向での反応ガスの拡散が起こるため,サセプタ10の下流側に位置する基板12上に十分な反応ガスを供給することができる。このため,下流側に位置する基板12上においても十分な成膜速度で膜を形成することができる。」

「【0058】
このような矢印13に示したコイル軸に対してサセプタ10を交差するように傾けて配置する場合,図1に示したようにサセプタ10の(反応ガスの流れに対する)上流側が下流側よりも下がった状態となるような方向にサセプタを傾けるのみでなく,図7に示したように,サセプタ10の上流側が下流側よりも上がった状態となるような方向にサセプタ10を傾けてもよい。図7は,本発明による気相成長装置の変形例を示す断面模式図である。図7を参照して,本発明による気相成長装置の変形例を説明する。」





上記の図1から,架台11の,底壁22に連なる凸部23を構成する前方部は,前記底壁22の前方の端部から垂直上方に立ち上がる前方壁と,前記前方壁の上方の端部から後方に延びる,反応ガスの流れに対して,下流側が上流側よりも上がった状態となるように傾斜した前方部上壁を備えることを見て取ることができる。






したがって,上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「エピタキシャル薄膜などを形成するための装置として用いられるCVD(Chemical vapor deposition)装置などの気相成膜装置で使用される,サセプタと架台とからなる構造体であって,
前記気相成長装置は,
処理容器と,
前記処理容器の内部に配置され,基板を保持するための前記サセプタと,
前記サセプタを誘導加熱するための磁界を形成する,中心軸を中心に巻き形状となっているコイルと,
前記コイルの中心軸の延びる方向に対して,前記サセプタにおいて前記基板を保持する表面の延びる方向が交差するように保持する架台と,
前記処理容器の内部に反応ガスを流通させるための反応ガス供給部材と,を備え,
前記基板の平面形状は円形状であり,
前記サセプタの平面形状は,
前記処理容器の内部を流通する反応ガスの流れの上流側に位置する端部であって直線状の上流側壁部と,
前記上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部と,
前記反応ガスの流れの下流側に位置する端部である円弧状部分と,
前記円弧状部分の両端部と前記上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部とをそれぞれつなぐ側壁部とからなり,
前記円弧状部分の中心点より上流側に,前記基板の中心点が位置するように前記基板は配置され,
前記サセプタの上部表面には,平面形状が円形状である基板を保持するための凹部が形成されており,
前記架台は,
底壁22と,
底壁に連なり凸部23を構成する前方部と,
前記凸部23に連なり,前記反応ガスが前記処理容器の内部を流通する方向であるコイル軸の方向(底壁22が延びる方向)に対して角度θ1だけ傾斜した,サセプタを(反応ガスの流れに対する)上流側が下流側よりも下がった状態となるように傾けて保持する上壁21とからなり,
前記底壁に連なり凸部23を構成する前方部は,前記底壁22の前方の端部から垂直上方に立ち上がる前方壁と,前記前方壁の上方の端部から後方に延びる,反応ガスの流れに対して,下流側が上流側よりも上がった状態となるように傾斜した前方部上壁を備えるものである,
サセプタと架台とからなる構造体。」

2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2(特開平9-167763号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【請求項1】 半導体基板の一主面以外の下端部を保持する溝と,該一主面が上になるように鉛直線方向に対して該半導体基板を傾けた状態で,他の主面の基板重心よりも上方位置で該半導体基板を支持する支持枠と,を備えた基板支持治具。
【請求項2】 請求項1記載の基板支持治具は,絶縁膜形成装置内で前記半導体基板を支持する治具であって,前記半導体基板の一主面は絶縁膜形成面で有る基板支持治具。
【請求項3】 請求項2記載の基板支持治具において,基板支持治具あるいは絶縁膜形成装置自体を鉛直線方向に対して傾けることで,前記半導体基板を鉛直線方向に対して傾けた基板支持治具。
【請求項4】 請求項1又は請求項2記載の基板支持治具において,前記支持枠を鉛直線方向に対して傾けることで,前記半導体基板を鉛直線方向に対して傾けた基板支持治具。
【請求項5】 請求項1?請求項4のいずれかの請求項に記載の基板支持治具において,複数の半導体基板を支持可能に複数の溝と支持枠が設けられ,半導体基板が鉛直線方向に対して傾けられた状態で,各半導体基板が隣接する支持枠あるいは基板の上端部の鉛直落下位置から離れて配置されるように,前記複数の溝が形成されている基板支持治具。」

「【0020】
以下本発明の実施形態を図面を用いて説明する。なお,本発明の基板支持治具は特に用途が限定されるものではないが,絶縁膜を介して接合する積層構造の半導体装置を作製する場合には,接合面の鏡面状態を損なう事無く絶縁膜を形成することが望まれるので,このような用途に特に好適に用いられるものである。
(実施形態1)
図1は本発明の絶縁膜形成装置の基板支持治具の第1の実施形態の断面図であり,図2はその側面図である。
【0021】
ウェーハ1は基板支持治具であるところの石英製ボート2aの溝3に挿入するが溝とウェーハの接合面が接触しないように溝3は従来(図6のような)のウェーハを溝だけで支持する石英製ボードではウェハーを自立させることができないないような大きなテーパ4として加工する。この為,石英製ボート2aではウェーハ1の接合面とならない裏面(一般的にはプライムウェーハの研削除去面,或いはハンドルウェーハの接合裏面)を溝3の鉛直位置からウェーハ1の接合裏面側に後退した位置に設置した石英製ボートの枠5で支持することでウェーハ1を接合面を上にして傾いた状態(角度θ)で石英製ボートで支持する。
【0022】
複数のウェーハを支持,処理する場合は,図3の断面図に示したように隣接するウェーハ1aの接合裏面と石英製ボートの枠5aが接触,摩耗することによるゴミの発生,及び隣接するウェーハ1bの接合面への落下,付着の問題を回避する為に石英製ボートの枠5aの上端部からの鉛直落下点から隣接する溝3bをある距離(t)だけ離して設け,隣接するウェーハ1bの接合面最下部へのゴミの落下,付着を回避することが望ましい。
【0023】
石英製ボート2aの枠5の位置は,傾けて支持したウェーハ1の重心よりも上方に設定することでウェーハ1が背面に転倒することを防止する。石英製ボート2aと枠5は一体に成形されたものである。」





上記の図2から,石英製ボートを側面から観察した場合に,外周に,円弧状である箇所を有することを見て取ることができる。

したがって,上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「半導体基板の一主面以外の下端部を保持する溝と,該一主面が上になるように鉛直線方向に対して該半導体基板を傾けた状態で,他の主面の基板重心よりも上方位置で該半導体基板を支持する支持枠と,を備えた
絶縁膜形成装置で使用される基板支持治具であって,
前記基板支持治具の前記溝は,石英製ボードに,前記溝と前記半導体基板の接合面が接触しないように,当該溝だけではウェハーを自立させることができないないような大きなテーパとして加工されたものであり,
さらに,前記石英製ボートは,前記半導体基板の接合面とならない裏面を前記溝の鉛直位置から前記半導体基板の接合裏面側に後退した位置で支持する枠を備え,
前記枠で支持することで前記半導体基板を接合面を上にして傾いた状態(角度θ)で支持し,
前記石英製ボートは,側面から観察した場合に,外周に,円弧状である箇所を有するものである,
基板支持治具。」

3 引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3(実願昭58-107806号(実開昭60-16535号公報)のマイクロフィルム)には,以下の図面が記載されている。








4 引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4(特開平6-204175号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0012】
次に,図2に示すように,シランカップリング剤を含んだ蒸気やミストを反応管1の内部に送り込み,第1のサセプタ3に固定したウェハ2両面にシランカップリング剤を塗布し,数時間ベーキングを行った後自然乾燥させて,数百オングストロームの膜厚のガラス状の鎖状ポリシロキセンの薄膜を形成する(ステップ105)。すなわち,シランカップリング剤をベーキングした後乾燥させると,各分子が互いに架橋して[-(OSiR)-O-(OSiR)-]という構造を有する鎖状ポリシロキセンを形成して表面を安定化する。」





5 引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5(特許第5397794号公報)には,図面とともに次の事項が記載されている。
「【0034】
1.実験1
1-1.ミストCVD装置
まず,図2を用いて,本実施例で用いたミストCVD装置19を説明する。ミストCVD装置19は,下地基板等の被成膜試料20を載置する試料台21と,キャリアガスを供給するキャリアガス源22と,キャリアガス源22から送り出されるキャリアガスの流量を調節するための流量調節弁23と,原料溶液24aが収容されるミスト発生源24と,水25aが入れられる容器25と,容器25の底面に取り付けられた超音波振動子26と,内径40mmの石英管からなる成膜室27と,成膜室27の周辺部に設置されたヒータ28を備えている。試料台21は,石英からなり,被成膜試料20を載置する面が水平面から45度に傾斜している。成膜室27と試料台21をどちらも石英で作製することにより,被成膜試料20上に形成される薄膜内に装置由来の不純物が混入することを抑制している。」





第4 対比・判断
1 本願発明1について
(1)引用文献1を主引例とした検討
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。
(ア)引用発明1における「エピタキシャル薄膜などを形成するための装置として用いられるCVD(Chemical vapor deposition)装置などの気相成膜装置」は,本願発明1における「成膜装置」に相当する。

(イ)引用発明1における「サセプタ」,「架台」は,それぞれ,本願発明1における「基板を保持する基板保持部」,「基板保持部を支持する支持部」に相当する。
したがって,引用発明1の「サセプタと架台とからなる構造体」は,本願発明1の「サセプタ」に相当する。

(ウ)引用発明1の「前記サセプタの平面形状は,前記処理容器の内部を流通する反応ガスの流れの上流側に位置する端部であって直線状の上流側壁部と,前記上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部と,前記反応ガスの流れの下流側に位置する端部である円弧状部分と,前記円弧状部分の両端部と前記上流側壁部の両端に連なる円弧状の角部とをそれぞれつなぐ側壁部とからなり,前記円弧状部分の中心点より上流側に,前記基板の中心点が位置するように前記基板は配置され,前記サセプタの上部表面には,平面形状が円形状である基板を保持するための凹部が形成されており」という構成は,本願発明1の「基板側表面の外周形状が略半円状であり」という構成に相当する。

(エ)引用発明1の「処理容器」と,本願発明1の「管状炉」とは,「処理容器」である点で一致する。

したがって,本願発明1と引用発明との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「基板を保持するために成膜装置に用いられるサセプタであって,
該基板を保持する基板保持部と,該基板保持部を支持する支持部とが,一体にまたは別体で備えられており,基板側表面の外周形状が略半円状であり,さらに,前記成膜装置が,処理容器を備えており,前記サセプタが該管状炉内の前記基板を保持するために用いられるものであり,且つ,前記支持部が前記基板を傾斜姿勢で支持するサセプタ。」

(相違点)
(相違点1)本願発明1の成膜装置が「ミストを用いており」,「前記サセプタが,前記ミストを前記基板まで加速上昇させることができるように構成されている」という構成を備えるのに対し,引用発明1は,そのような構成を備えていない点。

(相違点2)本願発明1の成膜装置が「管状炉」を備えるのに対し,引用発明1は,そのような構成が特定されていない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点1について検討すると,相違点1に係る本願発明1の成膜装置において「ミストを用い」ることは,上記「第3」4及び5に記載されているとおり,本願の優先日前において周知技術であったといえる。
しかしながら,成膜装置において「ミストを用い」ることが周知技術であるとしても,引用発明1において,反応ガスとして,「ミストを用い」た場合に,引用発明1の「サセプタと架台とからなる構造体」が,「ミストを基板まで加速上昇させることができる」ものであるとまでは,引用文献1の記載からは認めることはできない。
すなわち,本願発明1の「前記サセプタが,前記ミストを前記基板まで加速上昇させることができるように構成されている」という構成は,サセプタを用いない場合のミストの速度と,サセプタを用いた場合の当該サセプタに保持された基板の上流側の端部にミストが達した時点での速度とを対比して,「加速上昇」していることを要するものと理解されるところ,引用文献1には,処理容器の内部において反応ガスの流速がどのように変化するかについては記載されていない。
そして,上記「第3」1のとおり,引用文献1に「サセプタの上流側幅が下流側幅より大きくなっているので,サセプタの側壁部に面する領域での反応ガスの流れに乱流が発生する。」(【0012】),「また,サセプタ10の上流側幅である幅W1が下流側幅である幅W2より大きくなっているので,サセプタ10の側壁部28に面する領域での反応ガスの流れに乱流が発生する。」(【0044】)と記載されていること,及び,引用文献1の図1の記載から見て取れる,架台11の,底壁22に連なる凸部23を構成する前方部が,前記底壁22の前方の端部から垂直上方に立ち上がる前方壁を備えることによって,反応ガスの流れが乱れるものと認められることから,乱流を伴う反応ガスの流速の変化を,引用文献1の記載と技術常識に基づいて一義的に特定することができるとも認められない。
したがって,引用発明1の「サセプタと架台とからなる構造体」が,「ミストを基板まで加速上昇させることができる」ものであると認めることはできない。
そして,引用文献1ないし5の記載を参酌しても,引用発明1において,「サセプタと架台とからなる構造体」を,「ミストを基板まで加速上昇させることができる」ものとする動機付けを見いだすことができないから,引用発明1において,相違点1に係る本願発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明1,引用文献1ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

(2)引用文献2を主引例とした検討
ア 対比
本願発明1と引用発明2とを対比すると,次のことがいえる。
(ア)引用発明2の「半導体基板」,「絶縁膜形成装置」は,それぞれ,本願発明1の「基板」,「成膜装置」に相当する。

(イ)引用発明2の「『基板支持治具』である『石英製ボート』」と,本願発明1の「サセプタ」は,「基板支持治具」である点で一致する。

したがって,本願発明1と引用発明2との間には,次の一致点,相違点があるといえる。

(一致点)
「基板を保持するために成膜装置に用いられる基板支持治具であって,
基板側表面の外周形状が略半円状であり,前記基板支持治具が前記基板を保持するために用いられるものであり,且つ,前記支持部が前記基板を傾斜姿勢で支持する基板支持治具。」

(相違点)
(相違点3)基板支持治具が,本願発明1では「該基板を保持する基板保持部と,該基板保持部を支持する支持部とが,一体にまたは別体で備えられて」いる「サセプタ」であるのに対して,引用発明2では「前記半導体基板の接合面とならない裏面を前記溝の鉛直位置から前記半導体基板の接合裏面側に後退した位置で支持する枠を備え」た「石英製ボート」である点。

(相違点4)本願発明1の成膜装置が「ミストを用いており」,「前記サセプタが,前記ミストを前記基板まで加速上昇させることができるように構成されている」という構成を備えるのに対し,引用発明2は,そのような構成を備えていない点。

(相違点5)本願発明1の成膜装置が「管状炉」を備えるのに対し,引用発明2は,そのような構成が特定されていない点。

イ 相違点についての判断
上記相違点4について検討すると,相違点4に係る本願発明1の成膜装置において「ミストを用い」ることは,上記「第3」4及び5に記載されているとおり,本願の優先日前において周知技術であったといえる。
しかしながら,成膜装置において「ミストを用い」ることが周知技術であるとしても,引用発明2において,反応ガスとして,「ミストを用い」た場合に,引用発明2の「『基板支持治具』である『石英製ボート』」が,「ミストを基板まで加速上昇させることができる」ものであるとまでは,引用文献2の記載からは認めることはできない。
そして,引用文献1ないし5の記載を参酌しても,引用発明2において,「『基板支持治具』である『石英製ボート』」を,「ミストを基板まで加速上昇させることができる」ものとする動機付けを見いだすことができないから,引用発明2において,相違点4に係る本願発明1の構成を採用することは,当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
したがって,他の相違点について検討するまでもなく,本願発明1は,当業者であっても引用発明2,引用文献1ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6も,本願発明1の成膜装置が「ミストを用いており」,「前記サセプタが,前記ミストを前記基板まで加速上昇させることができるように構成されている」という構成と同一の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用発明1又は引用発明2と,引用文献1ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は,請求項1ないし6について,上記引用文献1ないし5に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。しかしながら,令和2年10月5日付け手続補正により補正された請求項1ないし6は,それぞれ,「管状炉を備えており,前記サセプタが該管状炉内の前記基板を保持するために用いられるものであり,且つ,前記支持部が前記基板を傾斜姿勢で支持し,前記サセプタが,前記ミストを前記基板まで加速上昇させることができるように構成されている」という構成を有するものとなっており,上記のとおり,本願発明1ないし6は,上記引用文献1又は引用文献2に記載された発明及び上記引用文献1ないし5に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではない。したがって,原査定を維持することはできない。

第6 当審拒絶理由について
1 特許法第36条第6項第1号について
当審では,本願の特許請求の範囲の請求項1-6の記載は,本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の出願当時の技術常識に照らして,当業者が本願明細書に記載された本願発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えており,サポート要件に適合しないものというべきであるとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年10月5日付けの補正において,各請求項に「前記成膜装置が,管状炉を備えており,前記サセプタが該管状炉内の前記基板を保持するために用いられるものであり,且つ,前記支持部が前記基板を傾斜姿勢で支持し,」との構成が特定され,さらに,同日付けの意見書で説明がされた結果,この拒絶の理由は解消した。

2 特許法第29条第2項について
当審では,請求項1ないし6について,上記引用文献1,4,5,3に基づいて,当業者が容易に発明できたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとの拒絶の理由を通知しているが,令和2年10月5日付け手続補正により補正された請求項1ないし6は,それぞれ,「前記成膜装置が,管状炉を備えており,前記サセプタが該管状炉内の前記基板を保持するために用いられるものであり,且つ,前記支持部が前記基板を傾斜姿勢で支持し,」との構成を有するものとなり,上記のとおり,本願発明1ないし6は,上記引用文献1に記載された発明及び上記引用文献1ないし5に記載された技術的事項に基づいて,当業者が容易に発明できたものではないから,この拒絶の理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり,本願発明1ないし6は,当業者が引用発明1又は引用発明2と引用文献1ないし5に記載された技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-02-17 
出願番号 特願2015-128499(P2015-128499)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
P 1 8・ 537- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 鈴木 智之鈴木 聡一郎  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 小田 浩
加藤 浩一
発明の名称 サセプタ  
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