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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
審判 査定不服 特123条1項5号 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1371387
審判番号 不服2019-10195  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-08-02 
確定日 2021-03-09 
事件の表示 特願2016-520148「統合型多感覚フィードバックを備える圧力応答式タッチインターフェース」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月16日国際公開、WO2015/054362、平成28年11月24日国内公表、特表2016-536671、請求項の数(20)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2014年(平成26年)10月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年(平成25年)10月8日 米国 2013年(平成25年)10月15日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年 6月29日付け:拒絶理由通知書
平成30年11月 6日 :意見書、手続補正書の提出
平成31年 4月 1日付け:拒絶査定
令和 元年 8月 2日 :拒絶査定不服審判の請求
令和 2年 8月31日付け:拒絶理由通知書
令和 2年11月27日 :意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成31年4月1日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
この出願の請求項1?13,15?20に係る発明は、以下の引用文献A?Hに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
A 特開2007-122501号公報
B 特開2012-64210号公報
C 特開2011-213343号公報
D 国際公開第2012/169229号
E 特開2012-68836号公報
F 国際公開第2011/155474号
G 特開2003-272463号公報
H 国際公開第2012/161061号

第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和2年8月31日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は、次のとおりである。
1 理由1(明確性)
この出願は、特許請求の範囲の請求項1?20の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
請求項1に「音響アクチュエータ」が「前記タッチプレートの第2表面の中央部近傍に配置され」ることが記載されているが、「第2表面の中央部近傍」が、「第2表面」が形成する面に対して垂直方向に「第2表面の中央部」と「近傍」、かつ、「第2表面」が形成する面に対して水平方向に「第2表面の中央部」と「近傍」であることを特定しているのか、あるいは、それらのいずれか一方のみを特定しているのか不明である。そして、後者の場合は、垂直方向、水平方向のいずれを特定しているのか不明である。
請求項8,15にも同様の記載がある。
請求項15に「一つまたは複数の地面係合装置」と記載され、更に「一つまたは複数の地面係合装置に結合し、リム部及びハブ部を備え、前記リム部が、運転者が握るよう構成される操縦インターフェース」と記載されているが、「地面係合装置」とは「地面」に「係合」する「装置」であることは理解できるものの、明細書(例えば段落【0010】)及び図面を参酌しても、「車両」に関する技術常識を参酌しても如何なる装置であるのか不明であり、同様に、「ハブ部」が如何なる部分であるかも不明である。
請求項2?7,9?14,16?20は請求項1,8,15のいずれかを引用している。

2 理由2(原文新規事項)
この出願は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項が、以下の点で国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないから、特許法第49条第6号に該当する。
請求項15及び本願明細書の段落【0010】に、「地面係合装置」と記載されているが、当該記載は、外国語書面に記載した事項の範囲内であるとはいえない。
上記記載の外国語書面における表記は「ground-engaging devices」であるが、「係合」という訳語が「engaging」の本来の意味を反映していると認めることはできない。

3 理由3(サポート要件)
この出願は、特許請求の範囲の請求項1?20の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
請求項1に「力センサ」が「各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に比例する電気信号を発する」ことが記載されているが、この記載に対応する事項が、発明の詳細な説明に記載又は示唆されているとは認められない。
請求項8,15にも請求項1と同様の記載がある。
請求項2に「前記音響アクチュエータは、該タッチ面の前記第2表面に固定されるオーディオスピーカーを備え」と記載されているが、この記載に対応する事項が、発明の詳細な説明に記載又は示唆されているとは認められない。
請求項9,16にも請求項2と同様の記載がある。
請求項7に「前記触覚型出力または前記聴覚型出力の少なくとも一つの量が、該タッチ面に加えられる力の量に比例する」と記載されているが、この記載に対応する事項が、発明の詳細な説明に記載又は示唆されているとは認められない。
請求項14,20にも請求項7と同様の記載がある。
請求項3?6,10?13,17?19は請求項1,2,7?9,14?16のいずれかを引用している。

4 理由4(進歩性)
この出願の請求項1?20に係る発明は、以下の引用文献1?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1 特開2003-272463号公報(拒絶査定時の引用文献G)
2 特開2007-122501号公報(拒絶査定時の引用文献A)
3 特開2012-68836号公報(拒絶査定時の引用文献E)
4 国際公開第2011/155474号(拒絶査定時の引用文献F)
5 特開2011-213343号公報(拒絶査定時の引用文献C)
6 国際公開第2012/169229号(拒絶査定時の引用文献D)

第4 本願発明
本願請求項1?20に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明20」という。)は、令和2年11月27日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?20に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
第1表面及び第2表面を有し、前記第1表面はタッチ面を備え、前記第2表面は前記第1表面に対向するタッチプレートと;
電気的に接続される複数の力センサを有し、前記タッチプレートの前記第2表面との間に前記力センサが配置された回路基板であって、力センサは各々、前記タッチプレートの該タッチ面に加えられる力に応答して各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に対応する値を示す電気信号を発する、該回路基板と;
前記回路基板に電気的に接続され、前記力センサにより発生させられた前記電気信号に基づいて前記タッチ面に加えられた力の位置を決定するプロセッサと;
前記タッチプレートの第2表面の、水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置され、該タッチ面に加えられる力に応答して、触覚型出力及び聴覚型出力を発する音響アクチュエータであって、該第2表面の中央部は該タッチプレートの外辺部から離隔している、該音響アクチュエータと;
を備えることを特徴とする、圧力応答式触覚型スイッチパネル。
【請求項2】
前記音響アクチュエータは、該タッチ面の前記第2表面に固定されるオーディオスピーカーを備え、前記触覚型出力及び聴覚型出力を前記タッチプレートに発することを特徴とする、請求項1に記載の圧力応答式触覚型スイッチパネル。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記音響アクチュエータが、前記触覚型及び聴覚型出力を発するよう、複数の異なる制御信号を発するよう構成され、触覚型制御信号が各々、該タッチ面に加えられる該当する力値に関連する、請求項1に記載の圧力応答式触覚型スイッチパネル。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記音響アクチュエータが、該タッチ面に加えられる力に応答して、前記触覚型出力及び聴覚型出力を略同時に発するようさらに構成されることを特徴とする、請求項1に記載の圧力応答式触覚型スイッチパネル。
【請求項5】
触覚型制御信号は各々、前記音響アクチュエータが、該当する組み合わせの触覚型振動及び聴覚型出力を発するよう構成されることを特徴とする、請求項3に記載の圧力応答式触覚型スイッチパネル。
【請求項6】
前記音響アクチュエータは、前記第2表面に直接固定されることを特徴とする、請求項1に記載の圧力応答式触覚型スイッチパネル。
【請求項7】
前記触覚型出力または前記聴覚型出力の少なくとも一つの量が、該タッチ面に加えられる力の量に比例することを特徴とする、請求項1に記載の圧力応答式触覚型スイッチパネル。
【請求項8】
圧力応答式触覚型スイッチパネルを、少なくとも一部分内にはめ込まれて備える操作ハンドルであって、前記圧力応答式触覚型スイッチパネルは、
第1表面及び第2表面を有し、前記第1表面はタッチ面を備え、前記第2表面は前記第1表面に対向し、前記第1表面が前記操作ハンドルの表面に略面一であるタッチプレートと;
電気的に接続される複数の力センサを有し、前記タッチプレートの前記第2表面との間に前記力センサが配置された回路基板であって、力センサは各々、前記タッチプレートの該タッチ面に加えられる力に応答して各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に対応する値を示す電気信号を発する、該回路基板と;
前記回路基板に電気的に接続され、前記力センサにより発生させられた前記電気信号に基づいて前記タッチ面に加えられた力の位置を決定するプロセッサと;
前記タッチプレートの第2表面の、水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置され、該タッチ面に加えられる力に応答して、触覚型出力及び聴覚型出力を発する音響アクチュエータであって、該第2表面の中央部は該タッチプレートの外辺部から離隔している、該音響アクチュエータと;
を備えることを特徴とする前記操作ハンドル。
【請求項9】
前記音響アクチュエータは、該タッチ面の前記第2表面に固定されるオーディオスピーカーを備え、前記触覚型出力及び聴覚型出力を前記タッチプレートに発することを特徴とする、請求項8に記載の操作ハンドル。
【請求項10】
前記プロセッサは、前記音響アクチュエータが、前記触覚型及び聴覚型出力を発するよう、複数の異なる制御信号を発するよう構成され、触覚型制御信号が各々、該タッチ面に加えられる該当する力値に関連する、請求項8に記載の操作ハンドル。
【請求項11】
前記プロセッサは、前記音響アクチュエータが、該タッチ面に加えられる力に応答して、前記触覚型出力及び聴覚型出力を略同時に発するようさらに構成されることを特徴とする、請求項8に記載の操作ハンドル。
【請求項12】
触覚型制御信号は各々、前記音響アクチュエータが、該当する組み合わせの触覚型振動及び聴覚型出力を発するよう構成されることを特徴とする、請求項10に記載の操作ハンドル。
【請求項13】
前記音響アクチュエータは、前記第2表面に直接固定されることを特徴とする、請求項8に記載の操作ハンドル。
【請求項14】
前記触覚型出力または前記聴覚型出力の少なくとも一つの量が、該タッチ面に加えられる力の量に比例することを特徴とする、請求項8に記載の操作ハンドル。
【請求項15】
一つまたは複数の車輪と;
一つまたは複数の車輪に結合し、リム部及びハブ部を備え、前記リム部が、運転者が握るよう構成され、前記ハブ部は操作グリップの回転運動を前記車輪に伝動する機械的及び/又は電気的な手段を含む、操縦インターフェースと;
圧力応答式触覚型スイッチパネルと;
を備えており、
該圧力応答式触覚型スイッチパネルは、
第1表面及び第2表面を有し、前記第1表面はタッチ面を備え、前記第2表面は前記第1表面に対向するタッチプレートと;
電気的に接続される複数の力センサを有し、前記タッチプレートの前記第2表面との間に前記力センサが配置された回路基板であって、力センサは各々、前記タッチプレートの該タッチ面に加えられる力に応答して各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に対応する値を示す電気信号を発する、該回路基板と;
前記タッチプレートの第2表面の、水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置され、該タッチ面に加えられる力に応答して、触覚型出力及び聴覚型出力を発する音響アクチュエータであって、該第2表面の中央部は該タッチプレートの外辺部から離隔している、該音響アクチュエータと;
前記音響アクチュエータ及び前記複数の力センサに通信可能に結合され、前記力センサにより発生させられた前記電気信号に基づいて前記タッチ面に加えられた力の位置を決定し、前記音響アクチュエータが、前記触覚型及び聴覚型出力を発するよう、複数の異なる制御信号を発し、触覚型制御信号が各々、該タッチ面に加えられる該当する力値に関連するプロセッサと;
を備えることを特徴とする車両。
【請求項16】
前記音響アクチュエータは、該タッチ面の前記第2表面に固定されるオーディオスピーカーを備え、前記触覚型出力及び聴覚型出力を前記タッチプレートに発することを特徴とする、請求項15に記載の車両。
【請求項17】
前記プロセッサは、前記音響アクチュエータが、該タッチ面に加えられる力に応答して、前記触覚型及び聴覚型出力を略同時に発するようさらに構成されることを特徴とする、請求項16に記載の車両。
【請求項18】
触覚型制御信号は各々、前記音響アクチュエータが、該当する組み合わせの触覚型振動及び聴覚型出力を発するよう構成されることを特徴とする、請求項16に記載の車両。
【請求項19】
前記音響アクチュエータは、前記第2表面に直接固定されることを特徴とする、請求項15に記載の車両。
【請求項20】
前記触覚型出力または前記聴覚型出力の少なくとも一つの量が、該タッチ面に加えられる力の量に比例することを特徴とする、請求項15に記載の車両。」

第5 当審拒絶理由の理由1について
請求項1において、補正前の「前記タッチプレートの第2表面の中央部近傍に配置され」との記載が、「前記タッチプレートの第2表面の、水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置され」との記載に補正され(令和2年11月27日提出の手続補正書でした補正。以下同様。)、請求項8,15においても同様に補正された。
この補正は、補正前の記載について、「第2表面の中央部近傍」が、「第2表面」が形成する面に対して垂直方向に「第2表面の中央部」と「近傍」、かつ、「第2表面」が形成する面に対して水平方向に「第2表面の中央部」と「近傍」であることを特定しているのか否か、等が不明である旨の当審拒絶理由の指摘を受けてなされたものであることを踏まえると、補正後の記載は、「水平方向」かつ「鉛直方向」(垂直方向)に「第2表面の中央部」と「近傍」であることを意味するものと理解でき、明確であるといえる。
また、同じく、請求項15において、補正前の「地面係合装置」との記載が「車輪」との記載に補正されるとともに、補正前の「ハブ部」との記載について、「前記ハブ部は操作グリップの回転運動を前記車輪に伝動する機械的及び/又は電気的な手段を含む」との記載が付加された。
そして、車両の「車輪」は、それ自体明確であり、上記記載の付加により「ハブ部」の「車輪」に対する機能的な関係が明確化されたといえる。
以上のことから、当審拒絶理由の理由1は解消した。

第6 当審拒絶理由の理由2について
請求項15において、上記第5のとおり、補正前の「地面係合装置」との記載が「車輪」との記載に補正されたところ、「車輪」については、外国語書面において、本願明細書の段落【0015】に対応する箇所に記載されている。
また、上記補正を踏まえると、本願明細書の段落【0010】の「地面係合装置」との記載は、外国語書面における「ground-engaging devices」とともに、「車輪」を意味するものと理解できるから、外国語書面に記載した事項の範囲内のものである。
以上のことから、当審拒絶理由の理由2は解消した。

第7 当審拒絶理由の理由3について
請求項1において、補正前の「各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に比例する電気信号を発する」との記載が、補正後において「各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に対応する値を示す電気信号を発する」との記載に補正され、請求項8,15においても同様に補正された。そして、当該補正後の記載に対応する事項は発明の詳細な説明の段落【0037】に記載されている。
また、発明の詳細な説明の段落【0035】、【0045】の記載が補正され、その結果、それぞれ請求項2,7の各発明特定事項が当該段落の記載と整合するものとなった。
以上のことから、当審拒絶理由の理由3は解消した。

第8 引用文献の記載、引用発明等
1 引用文献1について
(1)当審拒絶理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
ア 「【0006】本発明は、上記の問題点に着目して成されたものであって、その目的とするところは、車載機器のスイッチ操作を実行したときの指に伝わる感覚をより多く得ることが可能になり、操作性の向上につながるスイッチ装置を提供することにある。」

イ 「【0036】図5は本発明に係るスイッチ装置の実施の形態2としてのタッチパネル式のスイッチ装置の構成説明図である。
【0037】本発明に係るスイッチ装置の実施の形態2はタッチパネル式のスイッチ装置である。すなわち、圧力センサ2はタッチパネル7の裏面側の4か所に1個づつ設置してあり、タッチパネル7の裏面側の中央部に振動子4を構成する振動モーターが配置してある。振動子4は、接触(タッチ)した場所と関係なくタッチパネル7の面全体を振動させればよい。
【0038】制御部5は4個の庄カセンサ2のそれぞれのセンサ出力の平均値を算出し、これをセンサ出力信号とする。他の構成は、上記した本実施の形態1の構成と同じである。
【0039】操作者がスイッチ1のタッチパネル7を押した場合に、4個の圧力センサ2に圧力が加わり、この圧力センサ2の圧力検出部3におけるセンサ出力が変化する。これらのセンサ出力信号を制御部5が取り込み、4個の圧カセンサ2のそれぞれのセンサ出力の平均値を算出し、これをセンサ出力として振動子4である振動モーターの入力電圧に変換する。」

ウ 「【図5】



(2)上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「車載機器のスイッチ操作を実行したときの指に伝わる感覚をより多く得ることが可能になり、操作性の向上につながるスイッチ装置であって、
圧力センサ2はタッチパネル7の裏面側の4か所に1個づつ設置してあり、タッチパネル7の裏面側の中央部に振動子4を構成する振動モーターが配置してあり、振動子4は、接触(タッチ)した場所と関係なくタッチパネル7の面全体を振動させればよく、
操作者がスイッチ1のタッチパネル7を押した場合に、4個の圧力センサ2に圧力が加わり、この圧力センサ2のセンサ出力が変化し、
4個の圧カセンサ2のそれぞれのセンサ出力の平均値を算出し、これをセンサ出力として振動子4である振動モーターの入力電圧に変換する、
スイッチ装置。」

2 引用文献2
(1)当審拒絶理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0033】
次いで、本発明の具体例としての電子機器について説明する。図4は、電子機器1の分解斜視図である。電子機器1は、筐体2と、表示部3と、表示部3の周囲を囲うシャーシ4と、筐体2の上部を覆う位置検出部5とから構成される。
【0034】
位置検出部5は、接触を検出するタッチパネル6と、タッチパネル6の周囲を囲う外枠7とから構成される。タッチパネル6は、表示部3に重ねて配置される。タッチパネル6は、透過性があるため、表示部3の表示画像はタッチパネル6上から見ることができる。ユーザは、表示画像を見ながら、タッチパネル6の所望の位置に触れる。タッチパネル6は、ユーザが触れた位置を検出し、検出した位置情報をCPU(Central Processing Unit)に出力する。
【0035】
シャーシ4は、表示部3の周囲を囲む四角形のフレームである。シャーシ4は、位置検出部5の外枠7の裏面に着接されている。シャーシ4の四方に設けられた力検出手段8a?8dは、位置検出部5に掛かる圧力を検出する。
【0036】
シャーシ4の側面には、圧電アクチュエータ9a,9bが組み込まれている。圧電アクチュエータ9a,9bの突起部10a,10bは、位置検出部5の外枠7の裏面に着接されている。突起部10は、位置検出部5の外枠7を振動させる。」

イ 「【0045】
また、音声振動の周波数帯と触覚振動の周波数帯とはずれているため、人間は、音声振動を振動として感じず、逆に、触覚振動を音として聞くことはない。本実施の形態における電子機器1は、音声振動と触覚振動の周波数帯のずれを利用して、圧電アクチュエータ9に音声振動と触覚振動の両方を発生させる。本実施形態における電子機器1は、圧電アクチュエータ9が音声振動を出力することにより、スピーカやブザーなどの音声出力に必要な部材を省略することができる。」

ウ 「【図4】



(2)上記(1)から、引用文献2には次の発明が記載されていると認められる。
「筐体2と、表示部3と、表示部3の周囲を囲うシャーシ4と、筐体2の上部を覆う位置検出部5とから構成された電子機器1であって、
位置検出部5は、接触を検出するタッチパネル6と、タッチパネル6の周囲を囲う外枠7とから構成され、タッチパネル6は、表示部3に重ねて配置され、
ユーザは、表示画像を見ながら、タッチパネル6の所望の位置に触れ、タッチパネル6は、ユーザが触れた位置を検出し、
シャーシ4の四方に設けられた力検出手段8a?8dは、位置検出部5に掛かる圧力を検出し、
シャーシ4の側面に圧電アクチュエータ9a,9bが組み込まれ、圧電アクチュエータ9a,9bの突起部10a,10bは、位置検出部5の外枠7の裏面に着接され、突起部10は、位置検出部5の外枠7を振動させ、
圧電アクチュエータ9に音声振動と触覚振動の両方を発生させる、
電子機器1。」

第9 当審拒絶理由の理由4について(引用発明との対比・判断)
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明の「タッチパネル7」は、本願発明1の「タッチプレート」に相当する。

(イ)引用発明の「タッチパネル7」の「裏面側」は、表面側に「対向する」、「裏面側」であることが明らかであって、ここで、表面側は本願発明1の「第1表面」に相当し、「裏面側」は本願発明1の「第2表面」に相当する。

(ウ)引用発明の、「操作者がスイッチ1のタッチパネル7を押した場合に、4個の圧力センサ2に圧力が加わ」ることに関し、図5(上記第8の1(1)ウ、以下同様。)から見て取れる「タッチパネル7」と「圧力センサ2」との配置の関係も踏まえると、「タッチパネル7を押」すこと、すなわち「タッチパネル7」への「タッチ」は、上記(イ)の表面側に対して行われるといえる。したがって、「タッチパネル7」の当該表面側は「タッチ面を備え」るものである。

(エ)引用発明の「圧力センサ2」は、本願発明1の「力センサ」に相当し、引用発明の「圧力センサ2」が「4個」であることは、「複数」であることに含まれる。
また、引用発明の「4個の圧力センサ2」は、「操作者がスイッチ1のタッチパネル7を押した場合に」、「圧力が加わり、この圧力センサ2のセンサ出力が変化」することに関し、「圧力」は、「タッチパネル7」の表面側(上記(ウ))に「加えられる力」であるとともに「圧力センサ2」によって「受け取られる力」であり、「センサ出力」は、当該「加えられる力」に「応答して」、当該「受け取られる力」の「該当する部分の量に対応する値を示す」信号であるといえる。
そして、この点について上記(ウ)も踏まえると、引用発明の「操作者がスイッチ1のタッチパネル7を押した場合に」、「圧力が加わり、この圧力センサ2のセンサ出力が変化」する「4個の圧力センサ2」の各々と、本願発明1の「各々、前記タッチプレートの該タッチ面に加えられる力に応答して各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に対応する値を示す電気信号を発する」、「力センサ」とは、「各々、前記タッチプレートの該タッチ面に加えられる力に応答して各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に対応する値を示す信号を発する」、「力センサ」である点で共通している。

(オ)引用発明の「振動子4を構成する振動モーター」は、「入力電圧」により「振動」を発するものであり、また、それにより「車載機器のスイッチ操作を実行したときの指に伝わる感覚をより多く得ることが可能」となるものであるから、「振動子4を構成する振動モーター」が発する「振動」は「触覚型出力」であるといえる。また、「モーター」はアクチュエータの一種である。
そうすると、引用発明の「振動子4を構成する振動モーター」と、本願発明1の「触覚型出力及び聴覚型出力を発する音響アクチュエータ」とは、「触覚型出力を発するアクチュエータ」である点で共通している。

(カ)引用発明は、「操作者がスイッチ1のタッチパネル7を押した場合に、4個の圧力センサ2に圧力が加わり、この圧力センサ2のセンサ出力が変化し、4個の圧カセンサ2のそれぞれのセンサ出力の平均値を算出し、これをセンサ出力として振動子4である振動モーターの入力電圧に変換する」ものであるから、「振動子4を構成する振動モーター」は、「タッチパネル7」に「加えられる力に応答して」、上記(オ)の「振動」を発するものである。

(キ)引用発明において、「タッチパネル7の裏面側の中央部に振動子4を構成する振動モーターが配置してあ」るとは、図5から見て取れる「タッチパネル7」と「振動子4」との配置の関係も踏まえると、「中央部」が「タッチパネル7」の「外辺部から離隔している」ことを前提に、「タッチパネル7の裏面側」の概ね「中央部」、すなわち、丁度「中央部」又は「中央部」に対して「水平方向における」「近傍」に、「振動子4を構成する振動モーター」を「配置」することを意味することが明らかである。
また、同図からは、「振動子4」が「タッチパネル7の裏面側」に接している、つまり、「タッチパネル7の裏面側」と「振動子4」がなす面との間の、「タッチパネル7の裏面側」に対して鉛直方向の距離がゼロであることも見て取れるから、引用発明は、少なくとも、「タッチパネル7の裏面側」の「中央部」に対して「鉛直方向における」「近傍」に、「振動子4を構成する振動モーター」を「配置」するものといえる。
以上のことから、引用発明は、「タッチパネル7の裏面側」の、「水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置され」た、「振動子4を構成する振動モーター」であって、該「タッチパネル7の裏面側」の「中央部」は「タッチパネル7」の「外辺部から離隔している」、「振動子4を構成する振動モーター」との構成を備えるものである。

(ク)上記(オ)、(カ)を踏まえると、引用発明の「スイッチ装置」は、後述する相違点に係る構成を除いて本願発明1の「圧力応答式触覚型スイッチパネル」に相当する。

イ したがって、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。
(一致点)
「第1表面及び第2表面を有し、前記第1表面はタッチ面を備え、前記第2表面は前記第1表面に対向するタッチプレートと;
複数の力センサであって、力センサは各々、前記タッチプレートの該タッチ面に加えられる力に応答して各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量に対応する値を示す信号を発する、該力センサと;
前記タッチプレートの第2表面の、水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置され、該タッチ面に加えられる力に応答して、触覚型出力を発するアクチュエータであって、該第2表面の中央部は該タッチプレートの外辺部から離隔している、該アクチュエータと;
を備える、圧力応答式触覚型スイッチパネル。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。
(相違点1)本願発明1は、「回路基板」を備え、「力センサ」が当該「回路基板」と「前記タッチプレートの前記第2表面との間」に配置されているのに対し、引用発明は、「回路基板」を備えるとの特定がなく、「圧力センサ2」の配置が「回路基板」との関係で特定されるものでもない点。

(相違点2)本願発明1の「力センサ」は、「電気的に接続される」ものであり、「各力センサによって受け取られる力の該当する部分の量」に「比例する電気信号」を発するものであるのに対し、引用発明の「圧力センサ2」は、「電気的に接続される」ものであるとの特定がなく、その出力は、単に「各圧力センサによって受け取られる力の該当する部分の量」に応じた「センサ出力」である点。

(相違点3)本願発明1は、「前記回路基板に電気的に接続され、前記力センサにより発生させられた前記電気信号に基づいて前記タッチ面に加えられた力の位置を決定するプロセッサ」を備えるのに対し、引用発明はそのような構成を備えるものではない点。

(相違点4)本願発明1では、アクチュエータが「触覚型出力及び聴覚型出力を発する音響アクチュエータ」であって、「触覚型出力」に加えて「聴覚型出力」を発するものであるのに対し、引用発明では、アクチュエータが「振動子4を構成する振動モーター」であって、「振動」すなわち「触覚型出力」を発するものの、「聴覚型出力」を発する「音響アクチュエータ」を兼ねていると特定されるものではない点。

(2)判断
事案に鑑みて、相違点3について先に検討する。
引用発明は、「振動子4は、接触(タッチ)した場所と関係なくタッチパネル7の面全体を振動させればよ」いものであり、「4個の圧カセンサ2のそれぞれのセンサ出力の平均値を算出し、これをセンサ出力として振動子4である振動モーターの入力電圧に変換する」ものであることからすると、「4個の圧カセンサ2のそれぞれのセンサ出力」に基づいて「力の位置を決定する」ことについて示唆するものではない。
また、そもそも、引用発明の「スイッチ装置」は「車載機器のスイッチ操作」のためのものであるところ、スイッチは、通常、その操作によりオン、オフの切り替えを行うものであって、「タッチ面に加えられた力の位置を決定する」ことが必要なものではない。
そうすると、仮に、力センサにより発生させられた電気信号に基づいてタッチ面に加えられた力の位置を決定することが本願の優先日前に公知の技術であったとしても、当該技術の構成を引用発明に適用する動機付けはない。
そして、この点は、当審拒絶理由で引用された引用文献2?6の各記載事項によって左右されるものではない。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本願発明1について、当審拒絶理由の理由4は解消した。

2 本願発明2?20について
本願発明8,15は、いずれも、「前記力センサにより発生させられた前記電気信号に基づいて前記タッチ面に加えられた力の位置を決定」する「プロセッサ」についての発明特定事項を含むことから、各発明を引用発明と対比したときの相違点には、相違点3が含まれる。
また、本願発明2?7、本願発明9?14、本願発明16?20は、それぞれ、本願発明1、本願発明8、本願発明15を減縮した発明である。
そうすると、本願発明2?20も本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?6に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、本願発明2?20について、当審拒絶理由の理由4は解消した。

第10 原査定についての判断
原査定で引用された引用文献Aは、当審拒絶理由で引用された引用文献2と同じであるところ、引用文献2には、上記第8の2(2)のとおりの発明が記載されていることが認められる。
そして、引用文献2に記載された発明は、「シャーシ4の側面に圧電アクチュエータ9a,9bが組み込まれ」ていることから、少なくともこの点において、「音響アクチュエータ」が「前記タッチプレートの第2表面の、水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置され」ている本願発明1と相違する。
しかしながら、引用文献2に記載された発明は、「タッチパネル6は、表示部3に重ねて配置され」ているとの構成を有することから、「圧電アクチュエータ」を「タッチパネル6」の「水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置」することができないものである。そうすると、仮に、音響アクチュエータをタッチプレートの表面の水平方向及び鉛直方向における中央部近傍に配置することが本願の優先日前に公知の技術であったとしても、当該技術の構成を引用文献2に記載された発明に適用することには阻害要因があるといえる。
そして、この点は、原査定で引用された引用文献B?Hの各記載事項によって左右されるものではない。
以上のことは、本願発明2?20についても同様である。
よって、本願発明1?20は、当業者であっても引用文献A?Hに記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。

第11 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-02-16 
出願番号 特願2016-520148(P2016-520148)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G06F)
P 1 8・ 121- WY (G06F)
P 1 8・ 54- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩橋 龍太郎  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
林 毅
発明の名称 統合型多感覚フィードバックを備える圧力応答式タッチインターフェース  
代理人 三崎 正輝  
代理人 村井 康司  

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