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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G01N
管理番号 1371417
審判番号 不服2020-12031  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-08-27 
確定日 2021-03-16 
事件の表示 特願2019- 1779「被検物質検出方法、及び、蛍光検出方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 7月 4日出願公開、特開2019-109241、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願(以下「本願」と記す。)は、平成26年9月11日(優先権主張 平成25年10月10日)に出願した特願2014-184832号の一部を平成31年1月9日に新たな特許出願としたものであって、同年1月25日に審査請求がなされると同時に手続補正書が提出され、令和元年11月8日付けで拒絶理由が通知され、令和2年1月10日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月27日付けで拒絶査定されたところ、同年8月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に同日付けで提出された手続補正書により手続補正がなされたものである。

第2 原査定の概要
原査定(令和2年5月27日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願の請求項1ないし19に係る発明は、以下の引用文献1ないし7に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.国際公開第2013/146843号
2.特開2013-057037号公報
3.国際公開第2007/008864号
4.特開2007-163186号公報
5.国際公開第2010/148252号
6.特表2004-505245号公報
7.特開2010-66011号公報(周知技術を示す文献)

第3 審判請求時の補正(令和2年8月27日提出の手続補正書による手続補正)について
審判請求時の補正(令和2年8月27日提出の手続補正書による手続補正)、は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。 審判請求時の補正は、特許請求の範囲を補正前の請求項1ないし19から、補正後の請求項1ないし19に補正するものである。
審判請求時の補正によって請求項1、17,19における「第1ピーク波長の光を照射する工程」を「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する蛍光物質と被検物質とを含む複合体に、前記第1ピーク波長の光を照射する工程」から「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と被検物質とを含む第1複合体と、前記第1ピーク波長の光が照射されると前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光を発する第2蛍光物質と被検物質とを含む第2複合体と、を含む試料に、前記第1ピーク波長の光を照射する工程」に限定し、「蛍光像の画像を得る工程」を「光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光を検出し、蛍光像の画像を得る工程」から「光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、を検出し、蛍光像の画像を得る工程」に限定し、「光検出器」が検出する複数色の光を「前記第2ピーク波長の光と、前記第4ピーク波長の光」に限定する補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
また、請求項4及び14の「蛍光物質」を「第1蛍光物質及び」「第2蛍光物質」とする補正は、請求項1の上記補正により蛍光物質が第1蛍光物質と第2蛍光物質の2種類存在するという限定に対応して補正されたものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そして、補正後の請求項1ないし19の発明特定事項のうち、上記審判請求時の補正により限定された事項は、出願当初の特許請求の範囲、明細書及び図面(以下「出願当初明細書等」という。)の段落【0110】ないし段落【0119】と、【図17】ないし【図19】に開示されているから、審判請求時の補正により限定された事項は、当初明細書等に記載された事項であり、新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1-19に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明
本願請求項1ないし19に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)は、令和2年8月27日提出の手続補正書により手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1ないし19は以下のとおりである。(下線は補正箇所を表す。)
「【請求項1】
生体試料に含まれる被検物質を検出する被検物質検出方法であって、
240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と被検物質とを含む第1複合体と、前記第1ピーク波長の光が照射されると前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光を発する第2蛍光物質と被検物質とを含む第2複合体と、を含む試料に、前記第1ピーク波長の光を照射する工程と、
光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、を検出し、蛍光像の画像を得る工程と、
前記第1ピーク波長とは異なる第3ピーク波長の光を前記複合体に照射する工程と、 前記光検出器により、前記第3ピーク波長の光が照射された前記被検物質の明視野像の画像を得る工程と、を備え、
前記光検出器は、450nm以上900nm以下のピーク波長の全域における量子効率が、前記第1ピーク波長における量子効率の2倍以上であり、
前記光検出器が、450nm以上900nm以下の範囲にピーク波長を有する複数色の光として、前記第2ピーク波長の光と、前記第4ピーク波長の光と、を検出する、
被検物質検出方法。
【請求項2】
前記第3ピーク波長は、前記第1ピーク波長より波長が長い、
請求項1に記載の被検物質検出方法。
【請求項3】
前記光検出器が、450nm以上900nm以下の範囲にピーク波長を有する複数色の光を識別して検出する、
請求項1または請求項2に記載の被検物質検出方法。
【請求項4】
前記光検出器が、光を受ける受光部と、前記受光部と前記第1蛍光物質及び前記第2蛍光物質との間に配置され、前記第1蛍光物質及び前記第2蛍光物質から発せられる光の一部を透過するフィルタとを備える、
請求項3に記載の被検物質検出方法。
【請求項5】
前記フィルタが、第1の範囲の波長の光を透過する第1フィルタと、前記第1の範囲とは異なる第2の範囲の波長の光を透過する第2フィルタと、前記第1及び第2の範囲とは異なる第3の範囲の波長の光を透過する第3フィルタとを含む、
請求項4に記載の被検物質検出方法。
【請求項6】
前記第1フィルタが青色の波長の光を透過し、前記第2フィルタが緑色の波長の光を透過し、前記第3フィルタが赤色の光の波長を透過する、
請求項5に記載の被検物質検出方法。
【請求項7】
前記フィルタが、吸収フィルタである、
請求項4?請求項6のいずれか1項に記載の被検物質検出方法。
【請求項8】
前記光検出器は、前記第1ピーク波長における量子効率が10%未満である、
請求項1?請求項7のいずれか1項に記載の被検物質検出方法。
【請求項9】
前記光検出器は、前記第1ピーク波長における量子効率が5%未満である、
請求項8に記載の被検物質検出方法。
【請求項10】
前記光検出器は、シリコン基板を用いた光電変換素子を含む、
請求項1?請求項9のいずれか1項に記載の被検物質検出方法。
【請求項11】
前記光検出器は、microPMT、PiNフォトダイオード、APD、MPCC、EMCCD、CCDイメージセンサ、CMOSイメージセンサ、或いは、NMOSイメージセンサである、
請求項10に記載の被検物質検出方法。
【請求項12】
前記光検出器は、microPMTまたはCMOSイメージセンサである、
請求項11に記載の被検物質検出方法。
【請求項13】
前記蛍光物質は、量子ドット又は有機系色素である、
請求項1?請求項12のいずれか1項に記載の被検物質検出方法。
【請求項14】
前記光検出器は、前記第1ピーク波長の光が照射される際、前記第1ピーク波長の光が照射される方向に、前記第1蛍光物質及び前記第2蛍光物質、前記光検出器の順となるよう配置されている、
請求項1?請求項13のいずれか1項に記載の被検物質検出方法。
【請求項15】
前記被検物質は、核酸、タンパク質、またはペプチドである、
請求項1?請求項14のいずれか1項に記載の被検物質検出方法。
【請求項16】
前記蛍光物質と前記被検物質とを結合させることで、前記複合体を形成する工程をさらに含む、
請求項1?請求項15のいずれか1項に記載の被検物質検出方法。
【請求項17】
生体試料に含まれる被検物質を検出する被検物質検出方法であって、 前記被検物質と酵素とを含む第1複合体中の酵素と基質との反応により生じ且つ240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と、前記被検物質と酵素とを含む第2複体中の酵素と基質との反応により生じ、且つ、240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると、前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光を発する第2蛍光物質と、を含む試料に、前記第1ピーク波長の光を照射する工程と、
光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、を検出し、蛍光像の画像を得る工程と、
前記第1ピーク波長とは異なる第3ピーク波長の光を前記複合体に照射する工程と、
前記光検出器により、前記第3ピーク波長の光が照射された前記被検物質の明視野像の画像を得る工程と、を備え、
前記光検出器は、450nm以上900nm以下のピーク波長の全域における量子効率が、前記第1ピーク波長における量子効率の2倍以上であり、
前記光検出器が、450nm以上900nm以下の範囲にピーク波長を有する複数色の光として、前記第2ピーク波長の光と、前記第4ピーク波長の光と、を検出する、
被検物質検出方法。
【請求項18】
前記酵素は、ペルオキシダーゼまたはアルカリフォスファターゼである、
請求項17に記載の被検物質検出方法。
【請求項19】
240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と、前記第1ピーク波長の光が照射されると前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光を発する第2蛍光物質と、を含む試料に、前記第1ピーク波長の光を照射する工程と、 光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、を検出し、蛍光像の画像を得る工程と、 前記第1ピーク波長とは異なる第3ピーク波長の光を前記蛍光物質に照射する工程と、
前記光検出器により、前記第3ピーク波長の光が照射された前記蛍光物質の明視野像を得る工程と、を備え、
前記光検出器は、450nm以上900nm以下のピーク波長の全域における量子効率が、前記第1ピーク波長における量子効率の2倍以上であり、
前記蛍光像の画像を得る工程は、前記光検出器により、450nm以上900nm以下の範囲にピーク波長を有する複数色の光として、前記第2ピーク波長の光と、前記第4ピーク波長の光と、を検出する、
蛍光検出方法。」

なお、本願発明2ないし16は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明18は本願発明17を減縮した発明である。

第5 引用文献、引用発明等
1.引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同じ。)
(1)「【0019】<病理診断支援システム100の構成>
図1に、本実施の形態における病理診断支援システム100の全体構成例を示す。病理診断支援システム100は、所定の染色試薬で染色された人体の組織切片の顕微鏡画像を取得し、取得された顕微鏡画像を解析することにより、観察対象の組織切片における特定の生体物質の発現を定量的に表す特徴量を出力するシステムである。
【0020】 図1に示すように、病理診断支援システム100は、顕微鏡画像取得装置1Aと、画像処理装置2Aと、がケーブル3A等のインターフェースを介してデータ送受信可能に接続されて構成されている。なお、顕微鏡画像取得装置1Aと画像処理装置2Aとの接続方式は特に限定されない。例えば、顕微鏡画像取得装置1Aと画像処理装置2AはLAN(Local Area Network)により接続されることとしてもよいし、無線により接続される構成としてもよい。
【0021】 顕微鏡画像取得装置1Aは、公知のカメラ付き光学顕微鏡であり、スライド固定ステージ上に載置されたスライド上の組織切片の顕微鏡画像を取得し、画像処理装置2Aに送信するものである。
顕微鏡画像取得装置1Aは、照射手段、結像手段、撮像手段、通信I/F等を備えて構成されている。照射手段は、光源、フィルター等により構成され、スライド固定ステージに載置されたスライド上の組織切片に光を照射する。結像手段は、接眼レンズ、対物レンズ等により構成され、照射した光によりスライド上の組織切片から発せられる透過光、反射光、又は蛍光を結像する。撮像手段は、CCD(Charge Coupled Device)センサー等を備え、結像手段により結像面に結像される像を撮像して顕微鏡画像のデジタル画像データ(R、G、Bの画像データ)を生成する顕微鏡設置カメラである。通信I/Fは、生成された顕微鏡画像の画像データを画像処理装置2Aに送信する。本実施の形態において、顕微鏡画像取得装置1Aは、明視野観察に適した照射手段及び結像手段を組み合わせた明視野ユニット、蛍光観察に適した照射手段及び結像手段を組み合わせた蛍光ユニットが備えられており、ユニットを切り替えることにより明視野/蛍光を切り替えることが可能である。」

(2)「【0084】<病理診断支援システム100の動作>
以下、病理診断支援システム100において、上記説明した蛍光画像及び明視野画像を取得して解析を行う動作について説明する。ここでは、特定のタンパク質(ここでは、乳癌組織におけるHER2タンパクとする。以下、特定タンパクと呼ぶ。)を認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子を含む染色試薬を用いて染色された組織切片を観察対象とする場合例にとり説明するが、これに限定されるものではない。
【0085】 まず、顕微鏡画像取得装置1Aにおいて、(a1)?(a5)の手順により明視野画像及び蛍光画像が取得される。
(a1)操作者は、特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子を蛍光標識材料とした染色試薬、及びHE試薬により染色された組織切片を載置したスライドを顕微鏡画像取得装置1Aのスライド固定ステージに載置する。
(a2)明視野ユニットに設定し、撮影倍率、ピントの調整を行い、組織上の観察対象の領域を視野に納める。
(a3)撮像手段で撮影を行って明視野画像の画像データを生成し、画像処理装置2Aに画像データを送信する。
(a4)ユニットを蛍光ユニットに変更する。
(a5)視野及び撮影倍率を変えずに撮像手段で撮影を行って蛍光画像の画像データを生成し、画像処理装置2Aに画像データを送信する。
このように、顕微鏡画像取得装置1Aにおいては、同一の組織切片のスライドから同一の撮影倍率で同一範囲(同一視野)の明視野画像及び蛍光画像を取得するので、明視野画像と蛍光画像の同一座標位置は組織切片の同一位置を示していることになり、両画像の位置合わせは不要である。
【0086】 なお、本願発明者等の検討によれば、HE染色と蛍光物質内包ナノ粒子による染色を同時に行う場合、組織の自家蛍光とエオジンの発光(バックグラウンド)に対し、10%(1.1倍)以上の発光量差を蛍光物質内包ナノ粒子の蛍光輝点が有していれば、8ビット(0?255階調)、12ビット(0?4095階調)の何れの処理系においても、顕微鏡画像(蛍光画像)から蛍光輝点の自動検出処理が可能であった。蛍光物質内包ナノ粒子による染色のみの場合においては、組織の自家蛍光に対し、10%(1.1倍)以上の発光量差を蛍光物質内包ナノ粒子が有していれば、8ビット(0?255階調)、12ビット(0?4095階調)の何れの処理系においても蛍光輝点の自動検出処理が可能であった。そのため、蛍光ユニットにおける励起光波長としては560?630nmの範囲のものを選択し、前記蛍光物質としては当該励起光により580?690nmの範囲、より好ましくは600?630nmの範囲にピークを有する蛍光を発するものを用いることが好ましい。この範囲にピークを有する蛍光物質であれば、上記範囲の励起光を選択したときに、エオジンの発光を含む組織の自家蛍光と蛍光物質内包ナノ粒子からの蛍光の発光差を確保して両者を区別して認識可能とする(両者の光量差10%(1.1倍)以上)を確保できるからである。
なお、HE染色を同時に行わない場合においては、組織の自家蛍光が微弱なため励起光の波長の範囲は、一般的な200nm?700nmの範囲で特に限定せずとも自家蛍光と蛍光物質内包ナノ粒子からの蛍光の発光差を確保して両者を区別して認識可能とする(両者の光量差10%(1.1倍)以上)を確保することができる。
【0087】 画像処理装置2Aにおいては、明視野画像及び蛍光画像に基づき画像解析処理が実行される。
図10に、画像処理装置2Aにおける画像解析処理のフローチャートを示す。図10に示す画像解析処理は、制御部21と記憶部25に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0088】 まず、通信I/F24により顕微鏡画像取得装置1Aからの明視野画像が入力されると(ステップS1)、明視野画像から細胞核の領域の抽出が行われる(ステップS2)。
図11に、ステップS2における処理の詳細フローを示す。ステップS2の処理は、制御部21と記憶部25に記憶されているプログラムとの協働により実行される。
【0089】 ステップS2においては、まず、明視野画像のモノクロ画像への変換が行われる(ステプS201)。
次いで、モノクロ画像に対し予め定められた閾値を用いて閾値処理が施され、各画素の値が2値化される(ステップS202)。図12に、閾値処理後の二値画像の一例を示す。」

上記引用文献1の記載事項を総合勘案すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「所定の染色試薬で染色された人体の組織切片の顕微鏡画像を取得し、取得された顕微鏡画像を解析することにより、観察対象の組織切片における特定の生体物質の発現を定量的に表す特徴量を出力する病理診断支援システム100において、
病理診断支援システム100は、顕微鏡画像取得装置1Aと、画像処理装置2Aと、がケーブル3A等のインターフェースを介してデータ送受信可能に接続されて構成され、
顕微鏡画像取得装置1Aは、照射手段、結像手段、撮像手段、通信I/F等を備えて構成され、
照射手段は、光源、フィルター等により構成され、スライド固定ステージに載置されたスライド上の組織切片に光を照射し、
結像手段は、接眼レンズ、対物レンズ等により構成され、照射した光によりスライド上の組織切片から発せられる透過光、反射光、又は蛍光を結像し、
撮像手段は、CCD(Charge Coupled Device)センサー等を備え、結像手段により結像面に結像される像を撮像して顕微鏡画像のデジタル画像データ(R、G、Bの画像データ)を生成する顕微鏡設置カメラであり、
通信I/Fは、生成された顕微鏡画像の画像データを画像処理装置2Aに送信するものであり、
顕微鏡画像取得装置1Aは、明視野観察に適した照射手段及び結像手段を組み合わせた明視野ユニット、蛍光観察に適した照射手段及び結像手段を組み合わせた蛍光ユニットが備えられており、ユニットを切り替えることにより明視野/蛍光を切り替えることが可能であり、
顕微鏡画像取得装置1Aにおいて、以下の(a1)?(a5)の手順により明視野画像及び蛍光画像が取得されるものであり、
(a1)操作者は、特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子を蛍光標識材料とした染色試薬、及びHE試薬により染色された組織切片を載置したスライドを顕微鏡画像取得装置1Aのスライド固定ステージに載置する。
(a2)明視野ユニットに設定し、撮影倍率、ピントの調整を行い、組織上の観察対象の領域を視野に納める。
(a3)撮像手段で撮影を行って明視野画像の画像データを生成し、画像処理装置2Aに画像データを送信する。
(a4)ユニットを蛍光ユニットに変更する。
(a5)視野及び撮影倍率を変えずに撮像手段で撮影を行って蛍光画像の画像データを生成し、画像処理装置2Aに画像データを送信する。
蛍光ユニットにおける励起光の波長の範囲は、200nm?700nmの範囲であり、
前記蛍光物質としては当該励起光により580?690nmの範囲、より好ましくは600?630nmの範囲にピークを有する蛍光を発するものを用いる、
蛍光画像及び明視野画像を取得して解析を行う方法。」

2.引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
(1)「【0001】
本発明は、励起/発光特性の異なる複数の蛍光物質を内包した蛍光物質内包ナノ粒子、
およびこれを用いた生体物質の検出方法に関する。」

(2)「【0009】
そこで、本発明は、このような問題に対し、病理診断用蛍光標識剤として用いられたときに、高い精度で組織中の生体物質の検出を可能とするような蛍光物質内包ナノ粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、異なる励起/発光特性を有する複数の蛍光物質を内包する蛍光物質内包ナノ粒子を用いることにより、上記の課題を解決しうることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、下記[1]?[31]に示される。」

(3)「【0032】
以下、第1の蛍光物質及び/または第2の蛍光物質となり得る蛍光物質の具体例を示す。
・有機蛍光色素
本発明において、有機色素を蛍光物質として用いることができる。ここで、有機蛍光色素は、芳香環、複素環など共役π電子系の存在により蛍光を発光する有機化合物をいい、その例として、生化学の分野において広く用いられる蛍光標識剤が挙げられる。
【0033】
有機蛍光色素としては、フルオレセイン系色素分子、ローダミン系色素分子、Alexa Fluor(インビトロジェン社製)系色素分子、BODIPY(インビトロジェン社製)系色素分子、カスケード系色素分子、クマリン系色素分子、エオジン系色素分子、NBD系色素分子、ピレン系色素分子、Texas Red系色素分子、シアニン系色素分子等を挙げることができる。
【0034】
具体的には、5-カルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-フルオレセイン、5,6-ジカルボキシ-フルオレセイン、6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-2’,4,7,7’-テトラクロロフルオレセイン、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン、ナフトフルオレセイン、5-カルボキシ-ローダミン、6-カルボキシ-ローダミン、5,6-ジカルボキシ-ローダミン、ローダミン 6G、テトラメチルローダミン、X-ローダミン、及びAlexa Fluor 350,Alexa Fluor 405、Alexa Fluor 430、Alexa Fluor 488、Alexa Fluor 500、Alexa Fluor 514、Alexa Fluor 532、Alexa Fluor 546、Alexa Fluor 555、Alexa Fluor 568、Alexa Fluor 594、Alexa Fluor 610、Alexa Fluor 633、Alexa Fluor 635、Ale
xa Fluor 647、Alexa Fluor 660、Alexa Fluor 680、Alexa Fluor 700、Alexa Fluor 750、BODIPY FL,BODIPY TMR、BODIPY 493/503、BODIPY 530/550、BODIPY 558/568、BODIPY 564/570、BODIPY 576/589、BODIPY 581/591、BODIPY 630/650、BODIPY 650/665(以上インビトロジェン社製)、メトキシクマリン、エオジン、NBD、ピレン、Cy5、Cy5.5、Cy7等を挙げることができる。
【0035】
これらの有機蛍光色素は、1種単独で用いてもよく、あるいは複数種を組み合わせて用いてもよい。
本発明で用いられる有機蛍光色素は、多くの場合、可視領域、具体的には400nm以上700nm以下の範囲内の波長を有する励起光により励起されたときに、可視?近赤外領域、具体的には400nm以上900nm以下の範囲内の波長を有する蛍光を発光する蛍光物質であり、紫外領域に励起スペクトルを有さない。したがって、有機蛍光色素は、通常「第1の蛍光物質」として用いられる。」

(4)「【0042】
・長残光蛍光体
本発明において、上記「有機蛍光色素」および「半導体ナノ粒子」のほかに、長残光蛍光体も蛍光物質として用いることができる。ここで、本明細書において「長残光」とは、励起光の照射を終了してから1ミリ秒経過後においても、蛍光が励起時の1/10以上の発光強度を維持することをいう。なお、上述した「有機蛍光色素」や「半導体ナノ粒子」は、一般に、励起光の照射を終了してから1ミリ秒経過する前に消光することから、長残光蛍光体ではない蛍光物質に該当する。
【0043】
ここで、長残光蛍光体は、その組成に特に制限はなく、公知の種々の組成を適用することができるが、安定性の点から、無機化合物からなる蛍光体、例えば無機酸化物蛍光体、無機ハロゲン化物蛍光体であると好ましい。
【0044】
本発明で好適に用いることのできる長残光蛍光体として、母体と賦活剤とからなる賦活型蛍光体が挙げられる。ここで、母体として、Y_(2)O_(3)、Zn_(2)SiO_(4)等に代表される金属酸化物、Ca_(5)(PO_(4))_(3)Cl等に代表されるリン酸塩及びZnS、SrS、CaS 等に代表される硫化物が挙げられ、その好ましい例としては、例えば、ZnS、Y_(2)O_(2)S、(Y,Gd)_(3)Al_(5)O_(12)、YAlO_(3)、BaAl_(2)Si_(2)O_(8)、Y_(3)Al_(5)O_(12)、Y_(2)SiO_(3)、Zn_(2)SiO_(4)、Y_(2)O_(3)、BaMgAl_(10)O_(17)、BaAl_(12)O_(19)、(Ba,Sr,Mg)O・aAl_(2)O_(3)、(Y,Gd)BO_(3)、YO_(3)、(Zn,Cd)S、SrGa_(2)S_(4)、SrS、SnO_(2)、Ca_(10)(PO_(4))_(6)(F,Cl)_(2)、(Ba,Sr)(Mg,Mn)Al_(10)O_(17)、(Sr,Ca,Ba,Mg)_(10)(PO_(4))_(6)Cl_(2)、(La,Ce)PO_(4)、CeMgAl_(11)O_(19)、GdMgB_(5)O_(10)、Sr_(2)P_(2)O_(7)、Sr_(4)Al_(14)O_(25)、BaMgAl_(14)O_(23)、Ba_(2)Mg_(2)Al_(12)O_(22)、Ba_(2)Mg_(4)Al_(8)O_(18)、Ba_(3)Mg_(5)Al_(18)O_(35)、(Ba,Sr,Ca)(Mg,Zn,Mn)Al_(10)O_(17)を挙げることができる。これらのうち、発光強度の点から、Y_(2)O_(3)、Zn_(2)SiO_(4)が好ましく用いられる。
【0045】
また、賦活剤として、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb等の希土類金属のイオンやAg、Al、Mn、Sb等の金属のイオンが挙げられ、発光波長と発光寿命の点から、特にMn^(2+),Eu^(3+)が好ましく用いられる。
【0046】
以上の母体及び賦活剤は、元素組成には特に制限はなく、同族の元素と一部置き換えることもでき、得られた無機蛍光体は紫外線を吸収して可視光を発するものが好ましい。
以下に、本発明で長残光蛍光体として使用される蛍光体の具体的な化合物を示すが、これに限定されるものではない:
Zn_(2)GeO_(4):Mn,Y_(2)O_(2)S:Eu^(3+),
(Ba,Mg)_(2)SiO_(4):Eu^(3+),
Ca_(2)Y_(8)(SiO_(4))_(6)O_(2):Eu^(3+),
LiY_(9)(SiO_(4))_(6)O_(2):Eu^(3+),
(Ba,Mg)Al_(16)O_(27):Eu^(3+),
(Ba,Ca,Mg)_(5)(PO_(4))_(3)Cl:Eu^(3+),
YVO_(4):Eu^(3+), YVO_(4):Eu^(3+),Bi^(3+),
CaS:Eu^(3+),
Y_(2)O_(3):Eu^(3+),
YAlO_(3):Eu^(3+),
YBO_(3):Eu^(3+),
(Y,Gd)BO_(3):Eu^(3+)。
【0047】
本発明で用いられる長残光蛍光体の製造方法として、公知の方法を用いることができ、例えば、固相法、液相法、水熱法、燃焼法等を用いることができる。例えば、母体を構成する上記の化合物と賦活剤を構成する上記の化合物を混合し、焼成することにより、長寿命蛍光体を無機粒子の形で得ることができる。このような無機粒子を内包する蛍光物質内包ナノ粒子が、ナノサイズの大きさを有するよう、この無機粒子の体積平均粒径は、5nm以上500nm以下であることが好ましく、5nm以上300nm以下であることがより好ましい。
【0048】
以上の長残光蛍光体は、上述の「有機蛍光色素」および「半導体ナノ粒子」と比べて蛍光寿命が長いことから、本発明においては「第2の蛍光物質」として用いられることができ、「有機蛍光色素」または「半導体ナノ粒子」を「第1の蛍光物質」として組み合わせることができる。」

(5)「【0102】
[合成例2-1:InP/ZnS QDの合成]
下記工程の方法により、「無機蛍光体ナノ粒子a」を作製した。
ミリスチン酸インジウム 0.1mmol、
ステアリン酸0.1mmol、
トリメチルシリルフォスフィン 0.1mmmol、
ドデカンチオール 0.1mmol、
ウンデシレン酸亜鉛 0.1mmol
を、オクタデセン8mlとともに三口フラスコに入れ、窒素雰囲気下で還流を行いながら300℃1時間加熱した。室温に下げた後、メルカプトプロピオン酸0.01gを添加して2時間撹拌したところ、無機蛍光体ナノ粒子aとして、発光ピーク波長670nm、濃度3.0 InPMのInP/ZnS半導体ナノ粒子溶液を得た。
【0103】
[合成例2-2:CdSe/ZnS QDの合成]
下記工程の方法により、「無機蛍光体ナノ粒子b」を作製した。
Se粉末(0.7896g)を、トリオクチルホスフィン(TOP、7.4g)へ添加し、混合物を150℃まで加熱して(窒素気流下)、TOP-Seストック溶液を作成した。
【0104】
別途、CdO(0.450g)及びステアリン酸(8g)をアルゴン雰囲気下、三口フラスコ中で150℃まで加熱した。CdOが溶解した後、溶液を室温まで冷却した。前記溶液に、トリオクチルホスフィンオキサイド(TOPO、8g)、及び1-ヘプタデシル-オクタデシルアミン(HDA、12g)を添加し、混合物を再び150℃まで加熱し、ここで、TOP-ストック溶液を素早く添加する。そののちチャンバーの温度を220℃まで加熱し、さらに一定の速度で、120分かけて250℃まで上昇させた。その後、温度を100℃まで下げ、酢酸亜鉛二水和物を添加撹拌し溶解させたのち、ヘキサメチルジシリルチアンのトリオクチルフォスフィン溶液を滴下し、数時間撹拌を続けて反応を終了した。室温に下げた後、メルカプトプロピオン酸0.01gを添加して1時間20撹拌したのち、洗浄し、純水中に再分散したところ、無機蛍光体ナノ粒子bとして、発光ピーク波長670nm、濃度3.0 CdMのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子溶液を得た。」

(6)「【0108】
[合成例3-1:(Y,Gd)BO_(3):Eu^(3+)内包ナノ粒子合成]
まず、下記の組成を有するA?D液を調製した:
A液:低分子ゼラチン15%溶液1000cc;
B液:水500ccに硝酸イットリウム6水和物0.156mol、硝酸ガドリニウム0.90molを溶解した液;
C液:硝酸ユーロピウム0.0065molを水50ccに溶解した液;
D液:水500ccにほう酸0.123molを溶解した液。
【0109】
上記A液を60℃で激しく攪拌させ、その中に同じく60℃に保ったB,C,D液を4分間かけて同時に各々等速で添加を行なった。A液中に形成した白色沈殿をろ過、乾燥の後、1400℃大気中で2時間焼成したところ、ナノ粒子dを得た。」

(7)「【0115】
[合成例5-1:蛍光有機色素、無機蛍光体ナノ粒子内包シリカナノ粒子合成]
下記工程(1)?(3)の方法により、「ナノ粒子A7」を作製した。
工程(1):Cy5のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)1mg(0.00126mmol)、エタノールに分散させたナノ粒子d 0.00126μmol、およびテトラエトキシシラン 400μL(1.796mmol)とを混合した。
工程(2):エタノール40mLと14%アンモニア水10mLとの混合液を室温下撹拌しているところに、工程(1)で調製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(3):反応混合物を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を一回ずつ行った。
得られたシリカナノ粒子A7の走査型電子顕微鏡(SEM;日立社製S-800型)観察を行ったところ、平均粒径は110nm、変動係数は12%であった。
【0116】
[合成例5-2:蛍光有機色素、無機蛍光体ナノ粒子内包ポリスチレンナノ粒子合成]
下記工程(1)?(3)の方法により、「ナノ粒子A8」を作製した。
工程(1):Cy5のN-ヒドロキシスクシンイミドエステル誘導体(GEヘルスケア社製)1mg(0.00126mmol)、および、エタノールに分散させた無機蛍光体ナノ粒子b0.00126μmol、ジクロロメタン60μL、エタノール120μLに溶解させた
工程(2):表面官能基アミノ基で粒径100nmポリスチレンナノ粒子水分散液(micromod社製)1.5mLを激しく撹拌しているところに、工程(1)で作製した混合液を添加した。添加開始から12時間撹拌を行った。
工程(3):反応混合物を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行った。
得られたポリスチレンナノ粒子A8のSEM観察を行ったところ、平均粒径は100nm、変動係数は6%であった。
【0117】
[合成例5-3:蛍光有機色素、無機蛍光体メラミンナノ粒子]
下記工程の方法により、「ナノ粒子A9」を作製した。
450gの水とCy5(GEヘルスケア社製)1mg(0.00126mmol)、無機蛍光ナノ粒子a0.00126μmolを70℃に温める。樹脂(15mgのMadurit SMW818)を50gの水中において攪拌し、70℃にて添加する。溶液は澄明なままである。温度を再び70℃に上げ、2μlの98?100%ギ酸を添加し、混合物の攪拌をこの温度にてさらに20分間行う。約1分の後、バッチは僅かな濁りを示した。その後、限外濾過(30キロダルトンのメンブラン)による精製を行ったところ、メラミンナノ粒子A6が得られた。生成の後に得られた粒子群の平均粒子径は約46nmであることが、走査電子顕微鏡による測定により確認された。
【0118】
[実施例1:ナノ粒子への抗体の結合]
ナノ粒子A1?A9に対して以下の手順により抗体結合を行った。
詳しくは、工程(1)?(12)の操作をおこなって抗体を結合し「抗体結合粒子1?9」を作成した。
工程(1):1mgのナノ粒子A1?A9を純水5mLに分散させた。アミノプロピルトリエトキシシラン水分散液100μLを添加し、室温で12時間撹拌した。
工程(2):反応混合物を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(3):エタノールを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順でエタノールと純水による洗浄を1回ずつ行ったところ、ナノ粒子A1?A9にそれぞれ対応するアミノ基修飾ナノ粒子B1?B9がそれぞれ得られた。得られたナノ粒子B1?B9のFT-IR測定を行ったところ、アミノ基に由来する吸収が観測でき、アミノ基修飾できたことを確認できた。
工程(4):工程(3)で得られたアミノ基修飾ナノ粒子B1?B9を、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を2mM含有したPBS(リン酸緩衝液生理的食塩水)を用いて3nMに調整した。
工程(5):工程(4)で調整した溶液に最終濃度10mMとなるようSM(PEG)12(サーモサイエンティフィック社製、succinimidyl-[(N-maleomidopropionamid)-dodecaethyleneglycol]ester)を混合し、1時間反応させた。
工程(6):反応混合液を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した。
工程(7):EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLPBSを用い再分散させた。
工程(8):100μgの抗HER2抗体を100μLのPBSに溶解させたところに1Mジチオスレイトール(DTT)を添加し、30分反応させた。
工程(9):反応混合物についてゲルろ過カラムにより過剰のDTTを除去し、還元化抗HER2抗体溶液を得た。
工程(10):工程(7)で得られた各粒子分散液と工程(9)で得られた還元化抗HER2抗体溶液とをPBS中で混合し、1時間反応させた。
工程(11):10mMメルカプトエタノール4μLを添加し、反応を停止させた。
工程(12):反応混合物を10000Gで60分遠心分離を行い、上澄みを除去した後EDTAを2mM含有したPBSを加え、沈降物を分散させ、再度遠心分離を行った。同様の手順による洗浄を3回行った。最後に500μLのPBSを用い再分散させたところ、ナノ粒子A1?A9にそれぞれ対応する、抗体結合粒子1?9がそれぞれ得られた。」

(8)「[実施例2:病理染色実験]
評価実験:(1)抗体結合粒子1?9を用いた組織染色
上記実施例1で作製した抗体結合粒子1?9を用いてヒト乳房組織の免疫染色を行った。
【0120】
染色切片はコスモバイオ社製の組織アレイスライド(CB-A712)を用いた。あらかじめDAB染色によりHER2染色濃度を観察し、(1)HER2発現量が高いロットと、(2)HER2発現量が低いロットとの2種のロットを用意し、これらのロットの組織スライドについて、抗体結合粒子を用いてそれぞれ染色を行った。ここで、このような組織染色を、抗体結合粒子1?9のそれぞれについて行った。
【0121】
ここで、抗体結合粒子ごとに、HER2発現量が高いロットの組織アレイスライド(以下、「スライド1」)とHER2発現量が低いロットの組織アレイスライド(以下、「スライド2」)のそれぞれについて、下記(1)?(10)に記載の操作を行った。
【0122】
(1):キシレンを入れた容器に病理切片を30分浸漬させた。途中3回キシレンを交換した。
(2):エタノールを入れた容器に病理切片を30分浸漬させた。途中3回エタノールを交換した。
(3):水を入れた容器に、病理切片を30分浸漬させた。途中3回水を交換した。
(4):10mMクエン酸緩衝液(pH6.0)に病理切片を30分浸漬させた。
(5):121℃で10分オートクレーブ処理を行った。
(6):PBSを入れた容器に、オートクレーブ処理後の切片を30分浸漬させた。
(7):1%BSA含有PBSを組織に載せて、1時間放置した。
(8):1%BSA含有PBSで0.05nMに希釈した抗体結合粒子10μLとを混合し、組織に載せて3時間放置した。
(9):PBSを入れた容器に、染色後の切片をそれぞれ30分浸漬させた。
(10):Merck Chemicals社製Aquatexを滴下後、カバーガラスを載せ封入した。
【0123】
評価実験:(2)抗体結合粒子1?6を用いて染色した組織の輝点計測
上記評価実験(1)により染色した組織切片に励起光を照射して蛍光発光させ、その組織切片からオリンパス社製DSU共焦点顕微鏡を用いて画像を取得した。励起波長は633nmと、365nmを切り替えて励起し、検出波長660nmとした。
ジーオンオングストロング社製輝点計測ソフト、G-countを用いて輝点数および発光輝度を計測した。計測方法は以下の2つの方法で実施した。
【0124】
・計測方法1
上記抗体結合粒子1?6で染色した組織について、励起波長を633nm、検出波長を660nmにそれぞれ設定して観察を行った。
【0125】
輝点数は、組織アレイスライド中の8スポットについて各30細胞の輝点を計測し、その平均値を求めた。発光輝度は、8スポットそれぞれについて視野全体の蛍光強度を合算し、その平均値を求めた。」

(9)「【0132】
・計測方法3
上記抗体結合粒子1?3及び7?9について、励起波長を254nm、検出波長を、粒子1,3,7,9については510?540nmに、粒子2,8については600?700nmの範囲にそれぞれ設定して観察を行った。試料に励起光照射ののち、励起光照射を終了後1msec後に観察画像を取得した。
【0133】
輝点数は、同一視野で、励起波長の異なる2種の画像を重ね合わせ、同時に2つの画像で輝点となっているピクセル値を輝点とし、輝点の発光強度を足し合わせた。そうでない場合には、輝点としてカウントしないという処理を行った。
【0134】
組織アレイスライド中の8スポットについて各30細胞の輝点を計測し、その平均値を求めた。発光輝度は、8スポットそれぞれについて視野全体の蛍光強度を合算し、その平
均値を求めた。
【0135】
上記計測方法3により得られた結果を、上記計測方法1による結果と対比して下記表2に示す。ここで、表2において、抗体結合粒子1?3および7?9を、それぞれ粒子1?3および7?9と表している。
【0136】
【表2ー1】

【0137】
【表2ー2】

以上のように、本発明の抗体結合粒子は7?9は、紫外励起残光画像の観察を行わない計測方法1を用いたときには、長残光蛍光体を含まない抗体結合粒子1?3と同等の輝度及びS/N比を示すに留まったものの、紫外励起残光画像の観察を行った計測方法3を用いたときには、抗体結合粒子1?3と比べて輝度が高く、輝点観察のS/N比も著しく改善された。」

(10)上記「(3)」ないし「(7)」より、「抗体結合粒子7は、長残光蛍光体である(Y,Gd)BO_(3):Eu^(3+)内包ナノ粒子と、有機蛍光色素であるCy5を含む粒子」であり、「抗体結合粒子8は、長残光蛍光体である発光ピーク波長670nm、濃度3.0 CdMのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子と、有機蛍光色素であるCy5を含む粒子」であり、「抗体結合粒子9は、長残光蛍光体である発光ピーク波長670nm、濃度3.0 InPMのInP/ZnS半導体ナノ粒子と、有機蛍光色素であるCy5を含む粒子」であることが読み取れる。

上記引用文献2の記載事項及び表を総合勘案すると、引用文献2には、
「病理診断用蛍光標識剤として用いられたときに、高い精度で組織中の生体物質の検出を可能とするような蛍光物質内包ナノ粒子、及びこれを用いた生体物質の検出方法において、
抗体結合粒子7は、長残光蛍光体である(Y,Gd)BO_(3):Eu^(3+)内包ナノ粒子と、有機蛍光色素であるCy5を含む粒子であり、
抗体結合粒子8は、長残光蛍光体である発光ピーク波長670nm、濃度3.0 CdMのCdSe/ZnS半導体ナノ粒子と、有機蛍光色素であるCy5を含む粒子であり、
抗体結合粒子9は、長残光蛍光体である発光ピーク波長670nm、濃度3.0 InPMのInP/ZnS半導体ナノ粒子と、有機蛍光色素であるCy5を含む粒子であり、
有機蛍光色素は、可視領域、具体的には400nm以上700nm以下の範囲内の波長を有する励起光により励起されたときに、可視?近赤外領域、具体的には400nm以上900nm以下の範囲内の波長を有する蛍光を発光する蛍光物質であり、紫外領域に励起スペクトルを有さないものであり、
抗体結合粒子7?9を用いてヒト乳房組織の免疫染色を行い、染色した組織切片に励起光を照射して蛍光発光させ、その組織切片から画像を取得し、
抗体結合粒子7?9について、励起波長を254nm、検出波長を、粒子7,9については510?540nmに、粒子2,8については600?700nmの範囲にそれぞれ設定して、励起光照射ののち、励起光照射を終了後1msec後に観察画像を取得する、生体物質の検出方法。」(以下「引用発明2」という。)
が記載されていると認められる。

3.引用文献3について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献3の段落[001]-[002]、段落[0036]、段落[0044]の記載からみて、当該引用文献3には、「生物学材料の光学的測定にCMOSイメージセンサやCCDカメラを利用する」という技術的事項が記載されていると認められる。

4.引用文献4について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献4の段落【0059】の記載からみて、当該引用文献4には、「CCDでカラー画像を獲得する際に、CCD素子の上に、青色成分、赤色成分、緑色成分を認識する各色成分のフィルターをベイヤー配列する」という技術的事項が記載されていると認められる。

5.引用文献5について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献5の段落[0040]-[0043]、段落[0057]-[0059]及びFigure 1、Figure 6A-6Bの記載からみて、当該引用文献5には、「量子マイクロイメージングにおいて、励起光源、バンドパスフィルタ、試料チップ、イメージセンサの具体的配置例」という技術的事項が記載されていると認められる。

6.引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献6の段落【0030】-【0037】、【0044】-【0045】、【0127】、【0176】-【0179】の記載からみて、当該引用文献6には、「蛍光を用いた生体物質の検出において、ペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼを用いた酵素増幅を用いて検出を行う」という技術的事項が記載されていると認められる。

7.引用文献7について
原査定の拒絶の理由に周知技術を示す文献として引用された上記引用文献7の段落【0019】及び【図8】の記載からみて、当該引用文献7には、「CCD検出器の量子効率について、波長450nm以上900nm以下の範囲の量子効率が、波長240nm以上300nmの量子効率の2倍以上である」という技術的事項が記載されていると認められる。

第6 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1を、引用発明1と比較する。
ア 引用発明1の「所定の染色試薬で染色された人体の組織切片」は、本願発明1における「生体試料」に相当する。
イ 引用発明1の「観察対象の組織切片における特定の生体物質」は、本願発明1における「被検物質」に相当する。
ウ 引用発明1の「所定の染色試薬で染色された人体の組織切片の顕微鏡画像を取得し、取得された顕微鏡画像を解析することにより、観察対象の組織切片における特定の生体物質の発現を定量的に表す特徴量を出力する病理診断支援システム100において、」「病理診断支援システム100は、顕微鏡画像取得装置1Aと、画像処理装置2Aと、がケーブル3A等のインターフェースを介してデータ送受信可能に接続されて構成され、」「顕微鏡画像取得装置1Aにおいて、以下の(a1)?(a5)の手順により明視野画像及び蛍光画像が取得され」「蛍光画像及び明視野画像を取得して解析を行う方法」は、その方法により特定の生体物質の発現を定量的に表す特徴量を得られることから、本願発明1における「生体試料に含まれる被検物質を検出する被検物質検出方法」に相当する。
エ 引用発明1の「波長の範囲は、200nm?700nmの範囲」である「蛍光ユニットにおける励起光」は、本願発明1の「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光」と、波長の範囲が「240nm以上300nm以下」という範囲で重複する。
オ 引用発明1の「特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子」は、「励起光により580?690nmの範囲、より好ましくは600?630nmの範囲にピークを有する蛍光を発するもの」を「蛍光物質」として用いることから、本願発明1の「光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質」に相当する。
カ 引用発明1の「特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子を蛍光標識材料とした染色試薬、及びHE試薬により染色された組織切片を載置したスライド」では、染色試薬中の蛍光物質内包ナノ粒子と、組織切片中の特定タンパクが反応して結合することから、本願発明1の「第1蛍光物質と被検物質とを含む第1複合体」と同等のものが生成していると認められる。
キ 引用発明1の「CCD(Charge Coupled Device)センサー等を備え、結像手段により結像面に結像される像を撮像して顕微鏡画像のデジタル画像データ(R、G、Bの画像データ)を生成する顕微鏡設置カメラ」である「撮像手段」は、本願発明1の「光検出器」に相当する。
ク 引用発明1では、「特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子を蛍光標識材料とした染色試薬、及びHE試薬により染色された組織切片を載置したスライドを顕微鏡画像取得装置1Aのスライド固定ステージに載置」し「蛍光ユニット」に変更して「撮像手段で撮影を行って蛍光画像の画像データを生成」することから、本願発明1の「光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と被検物質とを含む第1複合体」「を含む試料に、前記」「光を照射する工程」と、「光検出器により、」「光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光」「を検出し、蛍光像の画像を得る工程と、」を備えている。
ケ 引用発明1の「明視野ユニットに設定し、撮影倍率、ピントの調整を行い、組織上の観察対象の領域を視野に納め」、「撮像手段で撮影を行って明視野画像の画像データを生成し、画像処理装置2Aに画像データを送信する」ことは、本願発明1の「光を前記複合体に照射する工程と、前記光検出器により、」「光が照射された前記被検物質の明視野像の画像を得る工程」に相当する。

すると、本願発明1と、引用発明1とは、次の点で一致する。
<一致点>
「生体試料に含まれる被検物質を検出する被検物質検出方法であって、
波長の範囲が240nm以上300nm以下の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と被検物質とを含む第1複合体を含む試料に、前記光を照射する工程と、
光検出器により、前記光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光を検出し、蛍光像の画像を得る工程と、
光を前記複合体に照射する工程と、
前記光検出器により、光が照射された前記被検物質の明視野像の画像を得る工程と、を備える、
被検物質検出方法。」

一方で、両者は、次の点で相違する。
<相違点1>
試料に光を照射する工程と、蛍光像の画像を得る工程が、本願発明1では、240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と被検物質とを含む第1複合体「と、前記第1ピーク波長の光が照射されると前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光を発する第2蛍光物質と被検物質とを含む第2複合体と、を含む試料」に、前記第1ピーク波長の光を照射する工程と、光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光「と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、」を検出し、蛍光像の画像を得る工程であり、蛍光像の画像を得る工程において「前記光検出器が、450nm以上900nm以下の範囲にピーク波長を有する複数色の光として、前記第2ピーク波長の光と、前記第4ピーク波長の光と、を検出する」のに対し、引用発明1では「励起光の波長の範囲は、200nm?700nmの範囲」の「当該励起光により580?690nmの範囲、より好ましくは600?630nmの範囲にピークを有する蛍光を発する」「蛍光物質」を用いた「特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子を蛍光標識材料とした染色試薬、及びHE試薬により染色された組織切片を載置したスライドを顕微鏡画像取得装置1Aのスライド固定ステージに載置」し「蛍光ユニット」に変更して「撮像手段で撮影を行って蛍光画像の画像データを生成」する工程は備えているものの、蛍光物質が2種類あり、1つの光を当てるとその2種類の蛍光物質からそれぞれ異なる波長の光が発せられ、それぞれ異なる波長の光を複数色の光として検出することは開示していない点。
<相違点2>
本願発明1では、蛍光像の画像を得る際に照射する第1ピーク波長の光と明視野像の画像を得る際に照射する第3ピーク波長の光とは波長が異なる光であるのに対し、引用発明1では、蛍光像撮影の励起光の波長の範囲は200nm?700nmの範囲であるが明視野画像取得時に明視野ユニットで照射する光の波長は明記が無い点。
<相違点3>
光検出器が、本願発明1では「450nm以上900nm以下のピーク波長の全域における量子効率が、前記第1ピーク波長における量子効率の2倍以上であるのに対し、引用発明1では「CCD(Charge Coupled Device)センサー等を備え、結像手段により結像面に結像される像を撮像して顕微鏡画像のデジタル画像データ(R、G、Bの画像データ)を生成する顕微鏡設置カメラ」であるが、波長ごとの量子効率が明記されていない点。

(2)判断
上記「(1)」で記載した各相違点について判断する。
ア 相違点1について
(ア)生体物質の検出方法という分野で引用発明1と同一の技術分野に属する引用文献2には、上記「第5 2.」で述べたように、引用発明2が開示されている。その引用発明2では、抗体結合粒子7?9が、400nm以上700nm以下の範囲内の波長を有する励起光により励起されたときに、可視?近赤外領域、具体的には400nm以上900nm以下の範囲内の波長を有する蛍光を発光する蛍光物質である有機蛍光色素と、長残光蛍光体と、を備えた粒子であり、その抗体結合粒子7?9を用いてヒト乳房組織の免疫染色を行い、染色した組織切片に励起光を照射して蛍光発光させ、その組織切片から画像を取得する際に、励起波長を254nmとしたときに検出波長を、粒子7,9については510?540nmに、粒子8については600?700nmの範囲にそれぞれ設定して、画像を取得する技術(以下「引用発明2技術」が開示されている。
(イ)ここで、上記引用発明2技術と、上記「(1)」の相違点1に係る本願発明1の発明特定事項とを対比すると、引用発明2技術における「抗体結合粒子7?9」の「長残光蛍光体」は、「励起波長を254nmとしたときに検出波長を、粒子7,9については510?540nmに、粒子8については600?700nmの範囲にそれぞれ設定して、画像を取得」していることから、本願発明1の「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると」「450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光を発する第2蛍光物質」に相当する。しかしながら、「抗体結合粒子7?9」に「長残光蛍光体」と共に含まれる「有機蛍光色素」は、「400nm以上700nm以下の範囲内の波長を有する励起光により励起されたときに、可視?近赤外領域、具体的には400nm以上900nm以下の範囲内の波長を有する蛍光を発光する蛍光物質である」ことから、本願発明1における「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質」とは異なる。ゆえに、引用発明2は、相違点1に係る本願発明1の発明特定事項である「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光を発する第1蛍光物質と被検物質とを含む第1複合体と、前記第1ピーク波長の光が照射されると前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光を発する第2蛍光物質と被検物質とを含む第2複合体と、を含む試料に、前記第1ピーク波長の光を照射する工程と、光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、を検出し、蛍光像の画像を得る工程」は開示していない。
(ウ)また、上記引用発明2技術の「抗体結合粒子7?9」を引用発明1の「特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子」として採用したとしても、「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると」「450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光」と「前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光」が同時に発生することはないので、「光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、を検出し、蛍光像の画像を得る」ことはできない。
(エ)さらに、上記引用発明2技術の「長残光蛍光体」を引用発明1の「特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子」の蛍光物質として採用したとしても、「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると」「450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光」と「前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光」が同時に発生することはないので、「光検出器により、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第1蛍光物質から発せられる前記第2ピーク波長の光と、前記第1ピーク波長の光が照射された前記第2蛍光物質から発せられる前記第4ピーク波長の光と、を検出し、蛍光像の画像を得る」ことはできない。
(オ)そして、引用発明2は「励起/発光特性の異なる複数の蛍光物質を内包した蛍光物質内包ナノ粒子」という技術思想を示す(上記「第5 2.(1)」参照。)ものの、「長残光蛍光体」とともに使用される「有機蛍光色素」は「紫外領域に励起スペクトルを有さないものであ」ることから、励起スペクトルが紫外領域ではない「有機蛍光色素」と励起スペクトルが紫外領域である「長残光蛍光体」の2つの蛍光物質を内包する技術を開示するものであり、引用発明1の「特定タンパクを認識する生体物質認識部位が結合した蛍光物質内包ナノ粒子」に引用発明2技術を採用したとしても、「240nm以上300nm以下の第1ピーク波長の光が照射されると」「450nm以上900nm以下の第2ピーク波長の光」と「前記第2ピーク波長とは異なる波長であり、且つ、450nm以上900nm以下の第4ピーク波長の光」が同時に発生する蛍光物質内包ナノ粒子となることはない。
(カ)したがって、引用発明1ないし2から上記相違点1に係る発明特定事項を当業者が導き出すことはできない。
(キ)そして、上記「第5 2.(3)ないし(7)」に記載された引用文献3ないし7に開示された技術を引用発明1に適用したとしても、上記相違点1に係る発明特定事項を当業者が導き出すことはできない。
(ク)以上のことから、上記相違点1に係る発明特定事項を引用発明1、引用発明2及び引用文献3ないし7に開示された技術から当業者が導き出すことはできない。

イ 小括
したがって、上記相違点2ないし3について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明1、引用発明2及び引用文献3ないし7に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

2.本願発明2ないし16について
本願発明2ないし16は、本願発明1を引用する発明であり、本願発明1の上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用文献3ないし7に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

3.本願発明17について
本願発明17は、本願発明1の上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用文献3ないし7に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

4.本願発明18について
本願発明18は、本願発明17を引用する発明であり、本願発明1の上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用文献3ないし7に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

5.本願発明19について
本願発明19は、本願発明1の上記相違点1ないし3に係る発明特定事項を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1、引用発明2及び引用文献3ないし7に記載された技術的事項に基いて容易に発明できたものであるとはいえない。

第7 原査定について
上記「第6」で検討したように、本願発明1ないし19は、引用発明1、引用発明2及び引用文献3ないし7に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明できたものとはいえないから、拒絶査定において引用された引用文献1ないし7に基づいて当業者が容易に発明できたものとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-02-24 
出願番号 特願2019-1779(P2019-1779)
審決分類 P 1 8・ 575- WY (G01N)
P 1 8・ 121- WY (G01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 三崎 仁
特許庁審判官 ▲高▼見 重雄
伊藤 幸仙
発明の名称 被検物質検出方法、及び、蛍光検出方法  
代理人 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所  
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