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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01L |
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管理番号 | 1371431 |
審判番号 | 不服2019-3237 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-03-07 |
確定日 | 2021-03-16 |
事件の表示 | 特願2016-523735「縁部クリティカルディメンジョンの均一性制御用のプロセスキット」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月31日国際公開、WO2014/209489、平成28年 9月29日国内公表、特表2016-530705、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2014年(平成26年)4月30日(パリ条約による優先権主張 2013年6月28日 米国、2013年9月6日 米国)を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成29年 4月 7日 手続補正書の提出 平成30年 2月26日付け 拒絶理由通知書 平成30年10月31日付け 拒絶査定(以下、「原査定」という。) 平成31年 3月 7日 審判請求書、手続補正書の提出 令和 2年 3月27日付け 拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という 。)通知書 令和 2年 9月30日 意見書、手続補正書の提出 第2 原査定の概要 原査定の概要は次のとおりである。 1.この出願の請求項1-14に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 2.この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 3.この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 <引用文献等一覧> 1.特開2003-257935号公報 2.特開2006-086230号公報(周知技術を示す文献) 3.登録実用新案第3130205号公報(周知技術を示す文献) 4.特開2004-266127号公報(周知技術を示す文献) 5.特開平08-335568号公報 6.特開2011-035026号公報 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概要は次のとおりである。 1.この出願は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 2.この出願の請求項11-14に係る発明は、その優先権主張日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の引用文献に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先権主張日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 <引用文献等一覧> 1.特開2003-257935号公報(拒絶査定時の引用文献1) 第4 本願発明 本願請求項1-10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明10」という。)は、令和2年9月30日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1-10に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1-10は以下のとおりである。 「【請求項1】 露出した上面と、底面とを有する外側石英リングと、 外側石英リングと係合するように構成され、これによってオーバーラップ領域を画定する内側シリコンリングであって、オーバーラップ領域において内側シリコンリングを覆う外側石英リングの面積は調整可能であり、外側石英リングの内径は前記面積を決定するために選択可能であり、内側シリコンリングは、 内面と、 上面と、 内面と上面との間に形成されたノッチとを有し、内面はリングアセンブリの内径を画定し、ノッチは、 内面から延びる内側上面と、 内側上面から上面まで延びる中間面を有し、ノッチは、基板の縁部を受け入れる大きさであり、オーバーラップ領域における外側石英リングの高さは、中間面の長さよりも大きく、 内側シリコンリングの外側部分の外側上面であって、オーバーラップ領域内で、外側石英リングの底面の内側部分の下にあり、接触するように構成された外側上面と、 半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含む内側シリコンリングとを含むリングアセンブリ。 【請求項2】 外側石英リングの底面の内側部分の下にある内側シリコンリングのオーバーラップ領域の下にある中間石英リングを含む、請求項1記載のリングアセンブリ。 【請求項3】 オーバーラップ領域は、中間面のノッチから30mmまで内側シリコンリングに沿って延びる、請求項1記載のリングアセンブリ。 【請求項4】 傾斜面は、内側シリコンリングの上面に対して45度で配向される、請求項1記載のリングアセンブリ。 【請求項5】 チャンバ本体と、 チャンバ本体内に配置され、カソード電極が内部に配置された基板支持台座と、 基板支持台座上に配置されたリングアセンブリを含み、リングアセンブリは、 露出した上面と、底面とを有する外側石英リングと、 外側石英リングと係合するように構成され、これによってオーバーラップ領域を画定する内側シリコンリングであって、オーバーラップ領域において内側シリコンリングを覆う外側石英リングの面積は調整可能であり、外側石英リングの内径は前記面積を決定するために選択可能であり、内側シリコンリングは、 内面と、 実質的に平坦な上面と、 内面と上面との間に形成されたノッチとを有し、内面はリングアセンブリの内径を画定し、ノッチは、 内面から延びる内側上面と、 内側上面から上面まで延びる中間面を有し、ノッチは、基板の縁部を受け入れる大きさであり、オーバーラップ領域における外側石英リングの高さは、中間面の長さよりも大きく、 内側シリコンリングの外側上面であって、オーバーラップ領域内で、外側石英リングの底面の内側部分の下にあり、接触するように構成され、オーバーラップ領域は、カソード電極の上に配置される外側上面と、 半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含む内側シリコンリングとを含む、プラズマ処理チャンバ。 【請求項6】 カソード電極は、内側シリコンリングを越えて延びている、請求項5記載のプラズマ処理チャンバ。 【請求項7】 外側石英リングの底面の内側部分の下にある内側シリコンリングのオーバーラップ領域の下にある中間石英リングを含む、請求項5記載のプラズマ処理チャンバ。 【請求項8】 オーバーラップ領域は、0mmより大きく、30mmまでの半径方向の寸法を有する、請求項5記載のプラズマ処理チャンバ。 【請求項9】 オーバーラップ領域は、中間面のノッチから30mmまで内側シリコンリングに沿って延びる、請求項5記載のプラズマ処理チャンバ。 【請求項10】 傾斜面は、内側シリコンリングの上面に対して45度で配向される、請求項5記載のプラズマ処理チャンバ。」 第5 引用文献、引用発明等 1 引用文献1について 原査定の拒絶の理由及び当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体ウエハ等の基板に対してプラズマにより例えばエッチングを行う装置に関する。」 「【0016】支持体40の周囲には、例えば石英よりなる環状のベース体5が、支持体40と上面の高さ位置が揃えられるように設けられており、前記下部電極4の上面(詳しくは静電チャック41の上面)のウエハWの周囲には、支持体40とベース体5との両方に跨って、導電体例えばシリコン(Si)により形成された、環状の第1のリング(内側リング)6が設けられている。この第1のリング6は、ウエハWの周縁及びその近傍の濃いプラズマを拡散させ、プラズマの均一性を高めるためのものであり、これにより第1のリング6としては電気伝導性に優れる例えば2Ωのシリコンなどにより構成されることが望ましいが、導電性に限らず半導電性のものにより構成してもよい。 【0017】この第1のリング6の周囲には、当該第1のリング6を取り囲むようにベース体5の上面に第2のリング7が設けられており、これら第1のリング6及び第2のリング7は、各々例えば下部電極4に載置されたウエハWと同心円状に配設されている。 【0018】第2のリング7は、第1のリング6を下部電極4及びベース体5に押さえ付けるカバーリングとしての役割を持つ他、第1のリング6により拡散されたプラズマを少し内側に寄せることによりウエハ周縁から第1のリング6の上方までのプラズマの均一性を高め、結果としてウエハWの周縁部領域のプラズマの均一性をより高める役割を持っている。更に第2のリングは、後述するように処理容器2内のガスの流れを調整する役割と、第2のリング7が石英により構成されている場合には、後述するように石英がエッチングされることにより発生する酸素ラジカルによりウエハのエッチングを助けるという役割と、を有している。」 【0019】ここで図2を参照しながらウエハW、第1のリング6及び第2のリング7に関連する寸法について記載しておくと、ウエハWは例えば8インチサイズであり、その直径a1は200mmである。また第1のリング6の外径a2はこの実施の形態において重要な点であり、ウエハWの周縁部領域のエッチング速度の面内均一性を高くしかつその均一性が圧力変動に左右されにくくするために当該外径a2は245mm?260mmに設定される。ここでいう第1のリング6の外径a2とは、プラズマ処理空間に晒されている空間、つまり既述のようにウエハWの周縁付近のプラズマを拡散させる役割を果たす部分の領域の外径を指すものであり、カバーリング7で覆われている部分は含まれない。 【0020】このように本実施の形態においては、ウエハWの周縁から第1のリング6の外周縁までの距離a3が22.5mm?30mmであることが必要である。そして第1のリング6はウエハWに近接して設けられるものであり、それらの距離つまりウエハWの周縁と第1のリング6の内周縁との距離bは例えば0?2mm例えば1mmである。従ってこの例では、第1のリング6のリング幅cは、21.5mm?29mmに設定されることになる。なお第2のリング7のリング幅dは例えば10mmに設定される。このリング幅dとは、第2のリング7において、プラズマを内側に寄せる役割を持つ部位例えば平坦な上面の部位の幅を指す。」 「【0027】この実施の形態は、ウエハWの周縁部領域、例えばウエハWの周縁から内側10mmに至るまでの領域のレジストのエッチング速度、及び当該エッチング速度のプロセス圧力による影響が、ウエハWの周縁から第1のリング6の外周縁までの距離a3に依存していることを見い出したことに基づいており、その好ましい値として22.5mm?30mmに設定している。このように距離a3を設定することにより、後述の実験結果から明らかなように、ウエハWの周縁部領域とそれよりも内側の領域との間でレジストのエッチング速度が揃い、このためレジストの開口部の大きさが面内で均一になるから、面内にてパターンの線幅が揃った均一性の高いエッチング処理を行うことができる。またプロセス圧力が変化しても、前記周縁部領域におけるエッチング速度の圧力による変化と内側領域におけるエッチング速度の圧力による変化との差異が小さくなるので、エッチング速度の面内均一性に対する圧力の影響が小さくなる。従ってプロセス圧力のマージンを大きくとれるので、例えばプロセス中に圧力のみを変化させて、レジストマスクと被エッチング膜とのエッチング速度の選択比を調整することが容易になる。」 「【0029】 【実施例】次に本発明の効果を裏付けるためのデータについて述べる。 (実施例1) A.実験条件 図1に示した装置を用い、第1のリング6の外径a2を215mm、235mm、245mm、250mm、260mm、280mmの6通りに設定し、各条件毎に、圧力を15mTorr、25mTorr、35mTorr、50mTorrの4通りに設定した。また第1のリング6の外周縁よりも内側の領域における単位面積当たりのバイアス電力を一定にするために、上記の各外径a2に対応してバイアス電力は、夫々1400W、1550W、1585W、1650W、1800W、1950Wに設定した。 B.実験結果 各条件において、ウエハWの周縁から10mm以内の領域において16点のエッチング速度を調べると共に当該領域よりも内側の領域において21点のエッチング速度を調べ、エッチング速度(エッチレート)の均一性を調べた。この均一性とは、(最大値-最小値)×100/平均値の式で表される。第1のリング6の外径a2とエッチング速度の均一性との関係は、図3に示す通りである。図3において黒菱形は15mTorr、白四角は25mTorr、黒三角は35mTorr、白丸は50mTorrに夫々対応するプロットである。エッチング速度の均一性の+側は、ウエハWの周縁部領域の方が内側の領域よりもエッチング速度が大きいことを示しており、エッチング速度の均一性の-側は、ウエハWの周縁部領域の方が内側の領域よりもエッチング速度が小さいことを示している。 C.考察 第1のリング6の外径a2が215mm、235mmの場合には、前記均一性がいずれの圧力においても+10%を越えており、また前記外径a2が280mmの場合には、前記均一性が-10%よりも悪くなっている。これに対して、圧力が245mm、250mm、260mmの場合には、前記均一性が圧力によっては10%よりも悪いものもあるが、全体として0%に寄っており、しかも圧力に対する前記均一性のばらつきが小さくなっている。従って前記外径a2が245mm?260mmの範囲が好適であり、250mm?260mmの範囲がより一層好適であることが理解される。 (実施例2)次にウエハW面内における電束密度のモデルを設定し、このモデルに基づいて上記の図3に示す実験結果が得られた理由について検討する。」 【図1】 【図2】 【図3】 図2から、第1のリング6は、上面と、静電チャック41に面する面である内面を有し、内面から延びる内側上面と、内側上面から上面まで延びる中間面を有し、また、中間面で確定される領域は、ウエハWを受け入れる大きさであることが見てとれる。 さらに、図2から、第1のリング6と第2のリング7が係合しており、また、係合する部分により、オーバーラップする領域を備えていることが見てとれる。 また、図2から、第2のリングは、上面及び底面を有し、上面は露出していることが見てとれる。 そして、オーラップする領域について、第1のリング6は、上面の外側に、第2のリング7の底面に接触する外側上面を備えていることが見てとれる。 さらに、第1のリング及び第2のリングにより、リング状の部品を成していると認められる。 したがって、上記引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「ウエハWに対してプラズマによりエッチング処理を行う装置のリング状の部品であって、 ウエハWの周囲に、支持体40とベース体5との両方に跨って、シリコンにより形成された、環状の第1のリング6を設け、 第1のリング6は、上面と、内面を有し、さらに、内面から延びる内側上面と、内側上面から上面まで延びる中間面を有し、また、中間面で確定される領域は、ウエハWを受け入れる大きさであり、 第1のリング6の周囲には、当該第1のリング6を取り囲むようにベース体5の上面に第2のリング7を設け、 第1のリング6と第2のリングは係合しており、また、係合する部分により、オーバーラップする領域を備え、 第2のリング7は、石英から構成され、 第2のリング7は、底面と、露出した上面を有し、 オーバーラップする領域について、第1のリング6は、上面の外側に、第2のリング7の底面に接触する外側上面を備えている、 ウエハWに対してプラズマによりエッチング処理を行う装置のリング状の部品。」 2 引用文献2について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は半導体製造装置に係り、特に基板を載置する基板載置台を改善したものに関する。」 「【0077】 具体的には、図8に示すように、上面カバー18は、ウェハ載置面12、及びウェハ載置面12の外側であってウェハ載置面12と連続する凹所周辺部上面12aの略全面に嵌装される。ウェハ載置面12と対応する上面カバー18の対応領域上面にウェハ200が 載置される。 【0078】 上面カバー18には、その周辺部寄りに、ウェハ200の外周を囲むリング状の凸条部18aを設ける。その凸条部18aの厚さは、上面カバー18上に載置するウェハ200の厚さと略同一に形成する。ウェハ200の端面と凸条部18aの内周端面との間に、前述したようにウェハ搬送を許容する隙間Gを設ける。 【0079】 上面カバー18とは別体で構成された逆L字状の周辺カバー17は、その上端部17aを、凸条部18aの外周端面と突合せて、凸条部18aの外側の上面カバー18の周辺部と重なるように配置させて嵌装する。この嵌装でも、周辺カバー17は上面カバー18とは溶接することなく、その断面逆L字状の上端部17aをサセプタ11の周縁部に引っ掛けて垂下させるだけである。上面カバー18は、周辺カバー17と同様に、例えば石英で構成される。 【0080】 このように第3の実施の形態によれば、ウェハ載置面12を含むサセプタ上面をウェハ200とは別の上面カバー18で覆い、その上面カバー18の周辺部及びサセプタ11の周辺部上面13を周辺カバー17で覆うようにしたので、サセプタ11の外表面にサセプタ11の構成材料であるAlN材が剥き出しになることがなく、プラズマによるサセプタ11の外表面からの金属汚染の発生を抑制することができる。 【0081】 また、上面カバー18に凸条部18aを設けてカバーリングの機能を持たせるようにしたので、ウェハ外周部での処理均一性(膜厚均一性)を改善できる。」 【図8】 3 引用文献3について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 考案の分野 [0001]本考案の実施形態は、一般的には、半導体基板等において、高アスペクト比特徴部をエッチングするための真空処理チャンバに関する。更に詳細には、高アスペクト比特徴部をエッチングするための真空処理チャンバ内で用いるのに適している基板支持体に関する。」 「【0085】 [0096]本体1102の上面1104は、一般的には、内部領域1110と外部領域1108を含んでいる。内部領域1110は、外部領域1108に相対して隆起している。内部領域1110は、上面1104の外部領域1108と平行の位置にあってもよい。図11に示された実施形態においては、傾斜領域1112は、上面1104の内部と外部の領域1110、1108の間の変わり目を画成している。」 【図11】 4 引用文献4について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献4には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、半導体集積回路等の半導体装置を製造するためのプラズマ処理技術に係り、特にドライエッチングを行うプラズマ処理装置の石英治具、およびその再生方法、その再生使用方法、そのような石英治具を備えたプラズマ処理装置、およびそのようなプラズマ処理装置を用いた半導体装置の製造方法に関する。」 「【0024】 次に本発明に係るフォーカスリング20について説明する。図2(a)は本発明に係るフォーカスリング20の平面図であり、図2(b)は図2(a)のフォーカスリング20を、図2(a)中のC-C´線を通る平面で切断した断面を示した縦断面図であり、図2(c)はフォーカスリング20の断面を部分的に拡大した図である。フォーカスリング20は、まず全体的には、内周縁を有し、この内周縁から外側に広がる平板状の形状を有している。そして、図2(b)に示すように、フォーカスリング20の主面である上面は、内周縁(中心)側に、上方に突出した凸部を有している。 【0025】 より詳細には、図2(c)に示すように、内周縁側には、凸部に対応する、平坦な表面を主面に有する第1の領域A1が形成され、その外側に隣接して、やはり平坦な表面を主面に有する第2の領域A2が形成されている。第2の領域A2の表面の高さは第1の領域の表面の高さよりも低く、その間の境界には段差d1が形成されている。この段差d1の大きさは、所定枚数のウエハWの処理、例えばプラズマエッチング処理に晒されて消耗しても、後述する再生操作で容易に再生することができる大きさであり、かつ、ウエハW処理時に電極間に供給される処理ガスの流れを乱すことのない大きさである。」 【図2】 5 引用文献5について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献5には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、被処理基板、例えば半導体ウエハの絶縁膜をエッチングするためのエッチング装置に関するものである。」 「【0014】 【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に基づき説明すると、図1は本実施例にかかるエッチング装置1の断面を模式的に示しており、このエッチング装置1における処理室2は、気密に閉塞自在な酸化アルマイト処理されたアルミニウムなどからなる円筒形状の処理容器3内に形成され、当該処理容器3自体は接地線4を介して接地されている。前記処理室2内の底部にはセラミックなどの絶縁支持板5が設けられており、この絶縁支持板5の上部に、被処理基板例えば直径8インチの半導体ウエハ(以下、「ウエハ」という)Wを載置するための下部電極を構成する略円柱状のサセプタ6が、上下動自在に収容されている。 【0015】前記サセプタ6は、前記絶縁支持板5及び処理容器3の底部を遊貫する昇降軸7によって支持されており、この昇降軸7は、処理容器3外部に設置されている駆動モータ8によって上下動自在となっている。従って、この駆動モータ8の作動により、前記サセプタ6は、図1中の往復矢印に示したように、上下動自在となっている。なお処理室2の気密性を確保するため、前記サセプタ6と絶縁支持板5との間には、前記昇降軸7の外方を囲むように伸縮自在な気密部材、例えばベローズ9が設けられている。 【0016】前記サセプタ6は、表面が酸化処理されたアルミニウムからなり、その内部には、温度調節手段、例えばセラミックヒータなどの加熱手段(図示せず)や、外部の冷媒源(図示せず)との間で冷媒を循環させるための冷媒循環路(図示せず)が設けられており、サセプタ6上のウエハWを所定温度に維持することが可能なように構成されている。またかかる温度は、温度センサ(図示せず)、温度制御機構(図示せず)によって自動的に制御される構成となっている。 【0017】また前記サセプタ6上には、ウエハWを吸着保持するための静電チャック11が設けられている。この静電チャック11は、図2にその詳細を示したように、例えば導電性の薄膜12をポリイミド系の樹脂13によって上下から挟持した構成を有し、処理容器3の外部に設置されている高圧直流電源14からの電圧が前記薄膜12に印加されると、そのクーロン力によってウエハWは、静電チャック11の上面に吸着保持されるようになっている。もちろんそのような静電チャックに拠らず、機械的クランプによってウエハWの周縁部を押圧するようにして、サセプタ6上にウエハWを保持する構成としてもよい。 【0018】前記サセプタ6上の周辺には、静電チャック11を囲むようにして、第1の環状体を構成する、平面が略環状の内側フォーカスリング21が設けられている。この内側フォーカスリング21は導電性のシリコンからなり、その内周側と外周側の上面に、夫々一段下がった段部21a、21bが形成されており、内周側の段部21aの上面は、前記静電チャック11の上面と面一となるように設定され、この段部21aの上面は、静電チャック11に保持されたウエハWの周縁部下面が載置される。この内側フォーカスリング21は、プラズマ中のイオンを効果的にウエハWに入射させる機能を有している。 【0019】前記内側フォーカスリング21の外周には、平面が略環状の外側フォーカスリング22が設けられている。この外側フォーカスリング22は絶縁性の石英からなり、その内周部22aは、前記内側フォーカスリング21の段部21bの上に載置されるようにして設けられている。従って、内側フォーカスリング21の外周辺と外側フォーカスリング22の内周辺とは、前記各段部21bと内周部22aとの部分で重合している。なお内側フォーカスリング21の中央部21cと、この外側フォーカスリング22の上面とは面一になるように設定されている。また外側フォーカスリング22の外周上縁部22bは、外側に凸の湾曲形状に成形され、ガスが澱まず円滑に排出されるようになっている。この外側フォーカスリング22は、後述のシールドリング42と共に、プラズマの拡散防止機能を有している。」 【図1】 【図2】 6 引用文献6について 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【要約】 【課題】リングの材料がシリコンであることから、半導体ウエハーと同様にリングもエッチングされてしまう。このため、被エッチング面積が増加してエッチングレートが低下してしまうという問題があった。 【解決手段】処理室内にウエハーWFが置かれ、導入される反応ガスをプラズマ化してウエハーWFにエッチング処理を施すドライエッチング装置であって、ウエハーWFを取り囲むように外側に配置され、導電性材料からなる環状の第1リング110と、第1リング110を取り囲むように外側に配置され、絶縁性材料からなる環状の第2リング120と、を備えた。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、ドライエッチング装置、このドライエッチング装置を用いた半導体装置の製造方法、およびこのドライエッチング装置における反応ガスの制御リングに関する。」 「【0049】 (第5変形例) 上記実施例では、図3(b)に示すように、第1リング110および第2リング120の幅、つまりウエハーWFのエッチング面と沿う方向における寸法は、凡そ同じであるものとしているが、特にこれに限るものでないことは勿論である。本変形例の制御リング100の一例を図7に示した。図7は、図3(b)に対応する図で、カソード電極12に設置された本変形例の制御リング100を示した断面図である。 【0050】 まず図7(a)に示したように、ウエハーWFの端部から第1リング110の外周までの幅H1が、第2リング120の幅H2よりも広くなるように制御リング100が形成されていることとしてもよい。こうすれば、制御リング100は、図示しないプラズマをウエハーWFの領域よりも大きな広がりで形成するので、チルトの発生の抑制効果が大きくなることが期待できる。一方、図7(b)に示したように、第2リング120の幅H2が、ウエハーWFの端部から第1リング110の外周までの幅H1よりも広くなるように制御リング100が形成されていることとしてもよい。こうすれば、制御リング100は、図示しないプラズマをウエハーWFの領域に多く存在するように形成するので、エッチングレートの低下の抑制効果が大きくなることが期待できる。 【0051】 もとより、本変形例では、実際に生じているエッチングレートの低下およびチルトの発生に応じて、ウエハーWFの端部から第1リング110の外周までの幅H1と第2リング120の幅H2について、それぞれの寸法を適切に設定することが好ましい。」 【図7】 第6 対比・判断 1 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。 ア 引用発明の石英から構成され、底面と、露出した上面を有する「第2のリング7」と、本願発明1の「露出した上面と、底面とを有する外側石英リング」は、「底面と、露出した上面とを有する外側石英リング」である点で共通する。 イ 引用発明の「第1のリング6」は、シリコンにより形成され、さらに、「第1のリング6」の周囲には「第2のリング7」が「第1のリング6」を取り囲むように設けられ、また、「第1のリング6」と「第2のリング」は係合しており、加えて、係合する部分により、オーバーラップする領域を備えているから、引用発明の「第1のリング6」は、本願発明1の「外側石英リングと係合するように構成され、これによってオーバーラップ領域を画定する内側シリコンリング」に相当する。 ウ また、引用発明の「第1のリング6」の「上面」、「内面」、「内側上面」、「中間面」は、本願発明1の「内側シリコン」の「上面」、「内面」、「内側上面」、「中間面」に相当する。 そして、引用発明の「上面」、「内面」、「内側上面」、「中間面」は、本願発明1の「上面」、「内面」、「内側上面」、「中間面」と同様の関係を有しているから、引用発明も本願発明1の「内面と上面との間に形成されたノッチ」と同様の構成を有していると認められる。 さらに、引用発明の「中間面」は、上記ノッチを構成するものであり、また、「中間面で確定される領域は、ウエハWを受け入れる大きさであ」ることから、このことは、本願発明1の「ノッチは、基板の縁部を受け入れる大きさであ」ることに相当する。 加えて、引用発明の「内面」は、リング状の部品の内径を画定しているといえるから、本願発明1の「内面はリングアセンブリの内径を画定し」ていることと、同様の関係を備えていると認められる。 エ 加えて、引用発明は、「オーラップする領域について、第1のリング6は、上面の外側に、第2のリング7の底面に接触する外側上面を備えている」から、この「外側上面」は、本願発明1の「内側シリコンリングの外側部分の外側上面であって、オーバーラップ領域内で、外側石英リングの底面の内側部分の下にあり、接触するように構成された外側上面」に相当する。 オ そして、引用発明の「ウエハWに対してプラズマによりエッチング処理を行う装置のリング状の部品」は、本願発明1の「リングアセンブリ」に対応する。 カ そうすると、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。 [一致点] 「底面と、露出した上面とを有する外側石英リングと、 外側石英リングと係合するように構成され、これによってオーバーラップ領域を画定する内側シリコンリングであって、内側シリコンリングは、 内面と、 上面と、 内面と上面との間に形成されたノッチとを有し、内面はリングアセンブリの内径を画定し、ノッチは、 内面から延びる内側上面と、 内側上面から上面まで延びる中間面を有し、ノッチは、基板の縁部を受け入れる大きさであり、 内側シリコンリングの外側部分の外側上面であって、オーバーラップ領域内で、外側石英リングの底面の内側部分の下にあり、接触するように構成された外側上面と、 を含むリングアセンブリ。」 [相違点1] 「底面と、露出した上面とを有する外側石英リング」について、本願発明1は「露出した上面と、底面とを有する外側石英リング」であるのに対して、引用発明の「第2のリング7」は、「上面」は露出しているものの、「底面」は露出していない点。 [相違点2] 本願発明1は「オーバーラップ領域において内側シリコンリングを覆う外側石英リングの面積は調整可能であり、外側石英リングの内径は前記面積を決定するために選択可能であ」るのに対して、引用発明の「第2のリング7」は、オーバーラップする領域の調整を行っていない点。 [相違点3] 本願発明1は、「オーバーラップ領域における外側石英リングの高さは、中間面の長さよりも大き」いのに対して、引用発明はそのようになっていない点。 [相違点4] 本願発明1は、「内側シリコンリング」が「半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含」んでいるのに対して、引用発明は対応する構成を備えていない点。 (2)相違点についての判断 事案に鑑み、相違点4について先に検討すると、相違点4に係る「内側シリコンリング」が「半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含」んでいるという構成は、上記引用文献2-6に記載されておらず、本願優先権主張日前に周知であったともいえない。 したがって、他の相違点について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 2 本願発明2-4について 本願発明2-4も、本願発明1の「内側シリコンリング」が「半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含」んでいるという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 3 本願発明5-10について 本願発明5-10は、本願発明1の「リングアセンブリ」と同様の構成を含む「プラズマ処理チャンバ」であり、本願発明1の「内側シリコンリング」が「半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含」んでいるという構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2-6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものであるとはいえない。 第7 原査定についての判断 1 特許法第29条第2項について 令和2年9月30日付けの補正により、本願発明1-10は、「内側シリコンリング」が「半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含」んでいるという技術的事項を有するものとなった。当該「内側シリコンリング」が「半径方向内方かつ上方に傾斜し、外側上面と上面を結合する傾斜面を含」むことは、原査定における引用文献1-6には記載されておらず、本願優先権主張日前における周知技術でもないので、本願発明1-10は、当業者であっても、原査定における引用文献1-6に基づいて容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。 2 特許法第36条第6項第1号について 原査定では、請求項3、9の「外側セラミックスリングは、ノッチから約30mmまで内側シリコンリングに沿って延びる」という点は、発明の詳細な説明に記載されていないとしているが、令和2年9月30日付けの補正において、請求項3、9の対応する記載は「オーバーラップ領域は、中間面のノッチから30mmまで内側シリコンリングに沿って延びる」としており、この記載は発明の詳細な説明の段落【0044】に記載されているから、この拒絶の理由は解消した。 3 特許法第36条第6項第2号について (1)原査定では、請求項8の「オーバーラップ領域は、約0?約30mmの間の半径方向の寸法を有する」という記載は「オーバーラップ領域」が0mmの場合を含み、請求項5の「内側シリコンリングの外側上面であって、オーバーラップ領域内で、外側セラミックスリングの底面の内側部分の下にあり」という記載と矛盾しており、請求項8に記載された発明が明確でないとしているが、令和2年9月30日付けの補正において、請求項8の対応する記載は「オーバーラップ領域は、0mmより大きく、30mmまでの半径方向の寸法を有する」としているから、この拒絶の理由は解消した。 (2)原査定では、請求項3、4、8-10の数値限定について、数値限定の数値の前に「約」なる語句が記載されており、数値限定の数値の範囲が明確でないから、請求項3、4、8-10に記載された発明が明確でないとしているが、令和2年9月30日付けの補正において、請求項3、4、8-10の数値限定の数値の前の「約」なる語句は削除されているから、この拒絶の理由は解消した。 第8 当審拒絶理由についての判断 1 特許法第36条第6項第1号について (1)当審では、請求項1、2、5、7の「外側セラミックスリング」という構成は、発明の詳細な説明に記載されていないという拒絶の理由を通知しているが、令和2年9月30日付けの補正において、「外側石英リング」と補正された結果、この拒絶の理由は解消した。 (2)当審では、請求項11-14の記載は、本願発明の課題解決手段が反映されておらず、本願明細書の発明の詳細な説明の記載及び本願の優先権主張日当時の技術常識に照らして、当業者が本願明細書に記載された発明の課題を解決できると認識できる範囲を超えているという拒絶の理由を通知しているが、令和2年9月30日付けの補正において、請求項11-14は削除された結果、この拒絶の理由は解消した。 2 特許法第29条第2項について 当審では、請求項11-14について、上記引用文献1に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないという拒絶の理由を通知しているが、令和2年9月30日付けの補正において、請求項11-14は削除された結果、この拒絶の理由は解消した。 第9 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-02-24 |
出願番号 | 特願2016-523735(P2016-523735) |
審決分類 |
P
1
8・
537-
WY
(H01L)
P 1 8・ 121- WY (H01L) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 直也 |
特許庁審判長 |
辻本 泰隆 |
特許庁審判官 |
井上 和俊 小田 浩 |
発明の名称 | 縁部クリティカルディメンジョンの均一性制御用のプロセスキット |
代理人 | 安齋 嘉章 |