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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B08B
管理番号 1371433
審判番号 不服2020-9471  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-06 
確定日 2021-03-16 
事件の表示 特願2016-127407号「塗装前処理設備」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 1月11日出願公開、特開2018- 1058号、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成28年6月28日の出願であって、平成30年12月11日に手続補正書が提出され、令和2年1月24日付けで拒絶理由が通知され、同年3月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月30日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、同年7月6日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


・請求項1、2
引用文献1
・請求項3、4
引用文献1、2
<刊行物等一覧>
引用文献1.特開平8-291395号公報
引用文献2.登録実用新案第3047357号公報

第3 本願発明
本願請求項1?4に係る発明(以下「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和2年3月2日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「 【請求項1】
塗装前の被塗物を予備洗浄水により予備洗浄する予備洗浄部と、
この予備洗浄部で予備洗浄した前記被塗物を脱脂液により化学的に脱脂処理する脱脂部と、
この脱脂部で脱脂処理した前記被塗物を洗浄水により洗浄する水洗部とを備える塗装前処理設備であって、
前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水を、前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水として、前記予備洗浄部に供給する予備洗浄水供給路を設け、
前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水にマイクロバブルを含ませるマイクロバブル発生装置を設け、
前記予備洗浄部は、予備洗浄用の装置と回収槽と配水槽とを備え、
前記予備洗浄用の装置は、前記予備洗浄水により前記被塗物を予備洗浄し、
前記回収槽は、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水を回収し、
前記配水槽には、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水が前記回収槽に回収されるのに伴って、前記回収槽に回収した前記予備洗浄水が導水路を通じて導かれるとともに、前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水が前記予備洗浄水として前記予備洗浄水供給路を通じて供給され、
前記予備洗浄用の装置には、前記配水槽における前記予備洗浄水が給水路を通じて供給され、
前記配水槽には循環路が装備されて、
前記回収槽?前記導水路?前記配水槽?前記給水路?前記予備洗浄用の装置の順に前記予備洗浄水が循環するのに併行して、前記配水槽から取り出された前記予備洗浄水が前記循環路を通じて短絡的に前記配水槽に戻され、
前記マイクロバブル発生装置は、前記循環路に介装されて、前記循環路を通過する前記予備洗浄水に前記マイクロバブルを含ませる、塗装前処理設備。
【請求項2】
前記脱脂部には、脱脂槽内の脱脂液に前記被塗物を浸漬させるディップ式の本脱脂部のみを設け、
このディップ式の本脱脂部での脱脂処理に先立って、前記被塗物を前記脱脂液により予備脱脂処理する予備脱脂部は省略してある請求項1記載の塗装前処理設備。
【請求項3】
前記導水路には鉄粉除去装置が介装され、
前記鉄粉除去装置は、前記予備洗浄部で前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水に含まれる鉄粉を、予備洗浄水と鉄粉との比重差により前記予備洗浄水から分離し、
この鉄粉除去装置に送る前記予備洗浄水から、その予備洗浄水に含まれる気泡を除去するガス抜き手段が設けられ、
前記ガス抜き手段として空気逃がし弁が、前記予備洗浄水の流れ方向において前記鉄粉除去装置よりも上流側で、前記導水路に装備されている、請求項1又は2記載の塗装前処理設備。
【請求項4】
前記予備洗浄部には、前記予備洗浄用の装置として、前記被塗物に対して前記予備洗浄水を噴流状態で吹き付ける予備洗浄用の吐水装置と、前記被塗物に対して前記予備洗浄水をスプレーする予備洗浄用のスプレー装置とが装備され、
前記吐水装置には、前記マイクロバブルを含む前記予備洗浄水が前記配水槽から前記給水路を通じて供給され、
前記スプレー装置には、前記マイクロバブルを含む前記予備洗浄水が前記配水槽から前記給水路を通じて供給される請求項1?3のいずれか1項に記載の塗装前処理設備。」

第4 引用文献の記載事項等
1 引用文献1
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a)「【請求項13】 金属成型物を脱脂処理して洗浄するための装置であって、
前記金属成型物を予備洗浄するための予備洗浄液が収容された予備洗浄槽と、
前記予備洗浄後の金属成型物を脱脂処理するための脱脂洗浄液が収容された脱脂洗浄槽と、
前記脱脂処理後の金属成型物を水洗するための水洗槽と、
前記水洗槽からのオーバーフロー水に加圧下で空気を強制溶解するための空気加圧溶解手段と、
前記空気加圧溶解手段によって空気を溶解させた前記オーバーフロー水を前記予備洗浄槽に供給する手段とを備える金属成型物の洗浄装置。」

(1b)「【0002】
【従来の技術】自動車車体等の金属成型物は、鉄、亜鉛、アルミニウム及びそれらの合金材の1種または2種以上を組み合わせて成型されている。従って、これらの成型物には、成型に伴う溶接処理や研削処理がなされるため、金属成型物の表面には加工油及び防錆油とともに、各種金属粉が付着している。自動車車体は、成型後、脱脂洗浄処理がなされ、次いで燐酸亜鉛被膜処理等の化成処理がなされた後、電着塗装が施される。」

(1c)「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の洗浄方法は、金属成型物を洗浄槽内の洗浄液中に浸漬して洗浄する方法であり、洗浄槽に供給される洗浄処理用原水に加圧下で空気を強制溶解し、これを洗浄槽に供給することによって洗浄槽内の洗浄液に気泡を発生させ、金属成型物の表面に付着した金属粉に気泡を付着させて金属成型物から金属粉を脱離し除去することを特徴としている。
【0009】本発明において、洗浄液中に発生させる気泡の大きさとしては、0.1?200μmが好ましく、さらに好ましくは10?100μmである。気泡の粒径が小さすぎると、金属粉に付着しても、金属粉を金属成型物の表面から脱離し除去する効果が小さくなる。また気泡の粒径が大きすぎると、金属粉への吸着能力が小さくなり、金属成型物表面からの金属粉の脱離除去の効果が小さくなる。」

(1d)「【0035】気泡発生浸漬処理槽気泡を発生させる浸漬処理槽としては、図1に示すような装置を用いた。洗浄処理用原水は、原水槽3に蓄えられており、原水槽3からの原水を加圧タンク2に送り、空気圧縮機4によって3kg/cm^(3 )に加圧した空気を、洗浄処理用原水3に強制溶解させる。このようにして空気を強制溶解した洗浄処理用原水を浸漬処理槽1に供給する。浸漬処理槽1では、流量調整弁から空気を強制溶解した洗浄処理用原水が供給され、ここで大気圧に減圧されるので気泡が発生する。このようにして気泡を発生する浸漬処理槽1を用いて本発明に従う洗浄処理を行う。浸漬処理槽1からオーバーフローした洗浄水は、洗浄処理用原水として原水槽3に戻される。」

(1e)「【0036】実施例1?3
図1に示すような気泡発生浸漬処理槽を用い、表1に示す洗浄液を用いて、上記2種類の被験材を表1に示す条件で洗浄処理した。」

(1f)「【0070】図13は、このようなリンス工程の洗浄後の洗浄水をフィードバックするシステムの一例を示す構成図である。図13に示すように、前段洗浄工程である予備洗浄工程を行うための予備洗浄槽51、後段洗浄工程である脱脂洗浄工程を行うための脱脂洗浄槽53、脱脂処理後のリンス工程を行うための第1水洗槽55及び第2水洗槽57がそれぞれ設けられている。予備洗浄槽51には予備洗浄液52が収容され、脱脂洗浄槽53には脱脂洗浄液54が収容され、第1水洗槽55及び第2水洗槽57には、それぞれ水洗液56及び58が収容されている。本システムでは、第2水洗槽57のオーバーフロー水が第1水洗槽55に送られ、第1水洗槽55のオーバーフロー水が加圧タンク59に送られている。加圧タンク59には、図1に示すような空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されており、この加圧タンク59で、オーバーフロー水に強制的に空気を加圧溶解している。空気を加圧溶解したオーバーフロー水は、次に減圧弁60及び流量調整弁61を通り、予備洗浄槽51内に供給される。予備洗浄槽51内に供給されたオーバーフロー水は大気圧に減圧されるため、気泡が発生し、発生した気泡により金属粉の脱離除去処理が行われる。」

(1g)【図1】は次のとおりである。




(1h)【図13】は次のとおりである。



(2) 認定事項
ア 「発明の属する技術分野」を説明する摘示(1b)の記載からみて、請求項13における「金属成形物」は「電着塗装前」のものであることは明らかであるから、「電着塗装前の金属成型物を脱脂処理して洗浄するための金属成型物の洗浄装置」が認定できる。

イ 【図13】の実施例の「予備洗浄層51」は「予備洗浄槽51内に供給されたオーバーフロー水は大気圧に減圧されるため、気泡が発生し、発生した気泡により金属粉の脱離除去処理が行われる」(摘示(1f))のであるから、洗浄方法は「金属成型物を洗浄槽内の洗浄液中に浸漬して洗浄する」(摘示(1c)の段落【0008】)と同様のものであることは明らかであるので、「予備洗浄液中52に浸漬して洗浄する予備洗浄槽51」が認定できる。

ウ 【図13】の実施例の「予備洗浄液52」に発生する「気泡」においても、「洗浄液中に発生させる気泡の大きさとしては、・・・さらに好ましくは10?100μmである」(摘示(1c)の段落【0009】)ことと同様のことがいえるので、「予備洗浄液52中に発生させる気泡の大きさとしては、10?100μmである」ことが認定できる。

(3) 引用発明
上記(1)、(2)より、引用文献1には、主として請求項13ないし【図13】に係る実施例に対応する次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「電着塗装前の金属成型物を脱脂処理して洗浄するための金属成型物の洗浄装置であって、
前記金属成型物を予備洗浄するための予備洗浄液52が収容され、予備洗浄液中52に浸漬して洗浄する予備洗浄槽51と、
前記予備洗浄後の金属成型物を脱脂処理するための脱脂洗浄液54が収容された脱脂洗浄槽53と、
前記脱脂処理後の金属成型物を水洗するための第1水洗槽55及び第2水洗槽57と、を備え、
第1水洗槽55及び第2水洗槽57には、それぞれ水洗液56及び58が収容され、
第2水洗槽57のオーバーフロー水が第1水洗槽55に送られ、第1水洗槽55のオーバーフロー水が加圧タンク59に送られ、
加圧タンク59には、空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されており、
加圧タンク59で、第1水洗槽55のオーバーフロー水に強制的に空気を加圧溶解し、
空気を加圧溶解した第1水洗槽55のオーバーフロー水は、減圧弁60及び流量調整弁61を通り、予備洗浄槽51内に供給され、予備洗浄槽51内に供給された第1水洗槽55のオーバーフロー水は大気圧に減圧されるため、気泡が発生し、発生した気泡により金属粉の脱離除去処理が行われ、
洗浄液中に発生させる気泡の大きさとしては、10?100μmである、
金属成型物の洗浄装置。」

2 引用文献2
(1)記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a)「【請求項1】 被処理物への処理液の噴射が行われるスプレーブースと、スプレーブースから回収された処理液を貯留する少なくとも3つのサブタンクとを備え、スプレーブースから回収された処理液が第1のサブタンクへ流入し、第1のサブタンクからオーバーフローした処理液が第2のサブタンクへ流入し、以降順次サブタンクからオーバーフローした処理液が後続のサブタンクヘ流入し、最後尾のサブタンク内の処理液がポンプを介してスプレーブースへ還流すること特徴とする前処理装置。
【請求項2】 ディップ式処理槽と、ディップ式処理槽からオーバーフローした処理液を貯留する少なくとも3つのサブタンクとを備え、ディップ式処理槽からオーバーフローした処理液が第1のサブタンクへ流入し、第1のサブタンクからオーバーフローした処理液が第2のサブタンクへ流入し、以降順次サブタンクからオーバーフローした処理液が後続のサブタンクヘ流入し、最後尾のサブタンク内の処理液がポンプを介してデップ式処理槽へ還流すること特徴とする前処理装置。
【請求項3】 下縁がサブタンクの底壁から間隔を隔てて配設され上方へ延在する仕切壁がサブタンクに取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の前処理装置。
【請求項4】 サブタンク側壁の処理液がオーバーフローする部位に磁石が取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の前処理装置。」

(2b)「【0014】
本考案の好ましい態様においては、下縁がサブタンクの底壁から間隔を隔てて配設され上方へ延在する仕切壁がサブタンクに取り付けられている。
下縁がサブタンクの底壁から間隔を隔てて配設され上方へ延在する仕切壁をサブタンクに取り付けることにより、処理液を仕切壁で仕切られた2つの区画の一方へ流入させ、該一方の区画内を下降させ、仕切壁下縁とサブタンク底壁との間の隙間を通して他方の区画へ流入させ、該他方の区画内を上昇させ、該他方の区画の側壁上縁から後続のサブタンクへ向けてオーバーフローさせることができる。処理液に連行されて固形粒子が前記一方の区画内を下降し、仕切壁下縁とサブタンク底壁との間の隙間を通過する際に、浮力や液流の乱れによって生ずる慣性力等を受けて、固形粒子の表面に付着した気泡が固形粒子から分離除去され、浮力を失った固形粒子がサブタンク底壁上に沈殿する。この結果、固形粒子の除去率が向上する。」

(2c)【図1】は次のとおりである。




(2d)【図2】は次のとおりである。



第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 後者の「電着塗装前の金属成型物」は前者の「塗装前の被塗物」に相当し、以下同様に、「予備洗浄液52」は「予備洗浄水」に、「脱脂洗浄液54」が「脱脂液」に、「水洗液56及び58」は「洗浄水」に、それぞれ相当する。
また、上記の相当関係を踏まえると、後者の「金属成型物の洗浄装置」は前者の「塗装前処理設備」に相当する。

イ 後者の「予備洗浄槽51」を設けた部分は前者の「予備洗浄部」に相当するといえ、同様に、「脱脂洗浄槽53」を設けた部分は「脱脂部」に、「第1水洗槽55及び第2水洗槽57」を設けた部分は「水洗部」にそれぞれ相当するといえる。

ウ 後者の「第1水洗槽55のオーバーフロー水」は、「予備洗浄槽51に供給され」るものであるから、その供給のための流路は、前者の「予備洗浄水供給路」に相当するといえる。

エ 後者の「気泡」は「大きさとしては、10?100μmである」から、「マイクロバブル」といえるものである。
そして、当該「気泡」は「加圧タンク59で、第1水洗槽55のオーバーフロー水に強制的に空気を加圧溶解し」「空気を加圧溶解した第1水洗槽55のオーバーフロー水は、減圧弁60及び流量調整弁61を通り、予備洗浄槽51内に供給され、予備洗浄槽51内に供給された第1水洗槽55のオーバーフロー水は大気圧に減圧されるため、気泡が発生」するものであるから、後者の「空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されて」いる「加圧タンク59」と「減圧弁60及び流量調整弁61」と「予備洗浄槽51」とを併せたものが、前者の「マイクロバブル発生装置」に相当するといえる。

オ 上記エに加え、後者の「予備洗浄槽51」は、「金属成型物を予備洗浄するための予備洗浄液52が収容され、予備洗浄液中52に浸漬して洗浄する」ものであるから、前者の「予備洗浄用の装置」にも相当するといえる。

カ 上記ア?ウを踏まえると、後者の
「電着塗装前の金属成型物を脱脂処理して洗浄するための金属成型物の洗浄装置であって、
前記金属成型物を予備洗浄するための予備洗浄液52が収容され、予備洗浄液中52に浸漬して洗浄する予備洗浄槽51と、
前記予備洗浄後の金属成型物を脱脂処理するための脱脂洗浄液54が収容された脱脂洗浄槽53と、
前記脱脂処理後の金属成型物を水洗するための第1水洗槽55及び第2水洗槽57と、を備え、
第1水洗槽55及び第2水洗槽57には、それぞれ水洗液56及び58が収容され、
前記第2水洗槽57のオーバーフロー水が第1水洗槽55に送られ、第1水洗槽55のオーバーフロー水が加圧タンク59に送られ、」
「空気を加圧溶解した第1水洗槽55のオーバーフロー水は、減圧弁60及び流量調整弁61を通り、予備洗浄槽51内に供給され」
るということは、前者の
「塗装前の被塗物を予備洗浄水により予備洗浄する予備洗浄部と、
この予備洗浄部で予備洗浄した前記被塗物を脱脂液により化学的に脱脂処理する脱脂部と、
この脱脂部で脱脂処理した前記被塗物を洗浄水により洗浄する水洗部とを備える塗装前処理設備であって、
前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水を、前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水として、前記予備洗浄部に供給する予備洗浄水供給路を設け」
ていることに相当するといえる。

キ 【図13】に係る例について、「加圧タンク59には、図1に示すような空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されており」(摘示(1f))との記載があるが、【図1】に係る「気泡発生浸漬処理槽」の「原水槽3」に相当するものを有することについての明示はなく、【図13】にも「予備洗浄槽52」からの「オーバーフロー」の流路の記載があるものの、その先がどのようになっているのかは記載されていない(なお、摘示(1e)のように実施例1?3は、【図1】に係る「気泡発生浸漬処理槽」を用いることが示されているが、【図13】に係る例について、摘示(1f)には、「気泡発生浸漬処理槽」全体ではなく、「空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されて」いることしか示されていない。)。
そうすると、上記ア?オを踏まえると、後者の
「前記第2水洗槽57のオーバーフロー水が第1水洗槽55に送られ、第1水洗槽55のオーバーフロー水が加圧タンク59に送られ、
加圧タンク59には、空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されており、
加圧タンク59で、第1水洗槽55のオーバーフロー水に強制的に空気を加圧溶解し、
空気を加圧溶解した第1水洗槽55のオーバーフロー水は、減圧弁60及び流量調整弁61を通り、予備洗浄槽51内に供給され、予備洗浄槽51内に供給された第1水洗槽55のオーバーフロー水は大気圧に減圧されるため、気泡が発生し、発生した気泡により金属粉の脱離除去処理が行われ、
洗浄液中に発生させる気泡の大きさとしては、10?100μmである」
ということと、前者の
「前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水にマイクロバブルを含ませるマイクロバブル発生装置を設け、
前記予備洗浄部は、予備洗浄用の装置と回収槽と配水槽とを備え、
前記予備洗浄用の装置は、前記予備洗浄水により前記被塗物を予備洗浄し、
前記回収槽は、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水を回収し、
前記配水槽には、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水が前記回収槽に回収されるのに伴って、前記回収槽に回収した前記予備洗浄水が導水路を通じて導かれるとともに、前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水が前記予備洗浄水として前記予備洗浄水供給路を通じて供給され、
前記予備洗浄用の装置には、前記配水槽における前記予備洗浄水が給水路を通じて供給され、
前記配水槽には循環路が装備されて、
前記回収槽?前記導水路?前記配水槽?前記給水路?前記予備洗浄用の装置の順に前記予備洗浄水が循環するのに併行して、前記配水槽から取り出された前記予備洗浄水が前記循環路を通じて短絡的に前記配水槽に戻され、
前記マイクロバブル発生装置は、前記循環路に介装されて、前記循環路を通過する前記予備洗浄水に前記マイクロバブルを含ませる」
ということとは、
「前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水にマイクロバブルを含ませるマイクロバブル発生装置を設け、
前記予備洗浄部は、予備洗浄用の装置を備え、
前記予備洗浄用の装置は、前記予備洗浄水により前記被塗物を予備洗浄し、
前記マイクロバブル発生装置は、前記予備洗浄水に前記マイクロバブルを含ませる」
ということにおいて共通するといえる。

ク 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点、相違点は次のとおりと認める。
〔一致点〕
「塗装前の被塗物を予備洗浄水により予備洗浄する予備洗浄部と、
この予備洗浄部で予備洗浄した前記被塗物を脱脂液により化学的に脱脂処理する脱脂部と、
この脱脂部で脱脂処理した前記被塗物を洗浄水により洗浄する水洗部とを備える塗装前処理設備であって、
前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水を、前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水として、前記予備洗浄部に供給する予備洗浄水供給路を設け、
前記予備洗浄部での前記被塗物の予備洗浄に用いる前記予備洗浄水にマイクロバブルを含ませるマイクロバブル発生装置を設け、
前記予備洗浄部は、予備洗浄用の装置を備え、
前記予備洗浄用の装置は、前記予備洗浄水により前記被塗物を予備洗浄し、
前記マイクロバブル発生装置は、前記予備洗浄水に前記マイクロバブルを含ませる、塗装前処理設備。」

〔相違点〕
本願発明1の「予備洗浄部」が、予備洗浄用の装置の他に「回収槽と配水槽」とを備え、
「前記回収槽は、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水を回収し、
前記配水槽には、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水が前記回収槽に回収されるのに伴って、前記回収槽に回収した前記予備洗浄水が導水路を通じて導かれるとともに、前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水が前記予備洗浄水として前記予備洗浄水供給路を通じて供給され、前記予備洗浄用の装置には、前記配水槽における前記予備洗浄水が給水路を通じて供給され、
前記配水槽には循環路が装備されて、
前記回収槽?前記導水路?前記配水槽?前記給水路?前記予備洗浄用の装置の順に前記予備洗浄水が循環するのに併行して、前記配水槽から取り出された前記予備洗浄水が前記循環路を通じて短絡的に前記配水槽に戻され」るという事項を有し、「マイクロバブル発生装置」が、「前記循環路に介装されて、前記循環路を通過する」予備洗浄水にマイクロバブルを含ませるのに対し、
引用発明の「予備洗浄部」に相当するもの(上記(1)イ参照。)は、上記の「回収槽」、「配水槽」、「給水路」、「導水路」、「循環路」に係る事項を有しておらず、「マイクロバブル発生装置」に相当する、「空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されて」いる「加圧タンク59」と「減圧弁60及び流量調整弁61」と「予備洗浄槽51」とを併せたもの(上記(1)エ参照。)は、当然上記の「循環路」に「介装」されるものではない点。

(2)判断
上記相違点について検討する。
引用文献1の「加圧タンク59には、図1に示すような空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されており」(摘示(1f))との記載を参考にして、引用発明において、【図1】に係る気泡発生浸漬処理槽のような「原水槽」を新たに設け、当該【図1】に係る説明文である「浸漬処理槽1からオーバーフローした洗浄水は、洗浄処理用原水として原水槽3に戻される」(摘示(1d))という記載から、【図13】に示される「予備洗浄槽51」からオーバーフローした「予備洗浄水52」を当該「原水槽」に戻す構成が一応は想定できる。
しかしながら、その場合、当該「原水槽」は、本願発明1の「前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水を回収」する「回収槽」と、「予備洗浄用装置」に「予備洗浄水」を供給する「配水槽」とを兼ねたものとなるため、上記相違点に係る本願発明1の「前記配水槽には、前記被塗物の予備洗浄に用いた前記予備洗浄水が前記回収槽に回収されるのに伴って、前記回収槽に回収した前記予備洗浄水が導水路を通じて導かれるとともに、前記水洗部で前記被塗物の洗浄に用いた前記洗浄水が前記予備洗浄水として前記予備洗浄水供給路を通じて供給され、前記予備洗浄用の装置には、前記配水槽における前記予備洗浄水が給水路を通じて供給され、前記配水槽には循環路が装備されて、前記回収槽?前記導水路?前記配水槽?前記給水路?前記予備洗浄用の装置の順に前記予備洗浄水が循環するのに併行して、前記配水槽から取り出された前記予備洗浄水が前記循環路を通じて短絡的に前記配水槽に戻され」るという事項を有するものには至らない。
また、引用発明の「マイクロバブル発生装置」に相当する「空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されて」いる「加圧タンク59」と「減圧弁60及び流量調整弁61」と「予備洗浄槽51」とを併せたものについて検討すると、そのうちの「空気圧縮機及び圧力センサー等が接続されて」いる「加圧タンク59」と「減圧弁60及び流量調整弁61」は、本願発明1の「予備洗浄水供給路」に相当するもの(上記(1)ウ参照。)に配置されているものであって、本願発明1とは配置の前提構成が大幅に異なる上、さらに、「予備洗浄槽51内に供給された第1水洗槽55のオーバーフロー水は大気圧に減圧されるため、気泡が発生」するというものであり、換言すれば「気泡」(「マイクロバブル」に相当。)は「予備洗浄槽51」(「予備洗浄用の装置」にも相当。)内において発生するものであるから、引用発明の当該「マイクロバブル発生装置」に相当するものを「前記循環路に介装されて、前記循環路を通過する」予備洗浄水にマイクロバブルを含ませるような構成はとり得ない。

また、原査定において本願発明3、4に対して引用した引用文献2にも、上記「第4 2(1)」のとおり、上記相違点に係る本願発明1の事項の開示はされていない。

したがって、本願発明1は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 本願発明2?4について
本願発明2?4は、本願発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加えたものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用発明に基いて、または、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明1?4は、引用発明に基いて、または、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-02-25 
出願番号 特願2016-127407(P2016-127407)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B08B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 西田 彩乃國方 康伸  
特許庁審判長 藤井 昇
特許庁審判官 氏原 康宏
一ノ瀬 覚
発明の名称 塗装前処理設備  
代理人 特許業務法人R&C  

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