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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1371501
審判番号 不服2019-14032  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-10-22 
確定日 2021-02-25 
事件の表示 特願2018-64612号「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月28日出願公開、特開2018-99596号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月29日の出願であって、同年11月9日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年1月15日に意見書及び手続補正書が提出され、同年3月11日付けで最後の拒絶の理由が通知され、令和1年5月14日に意見書及び手続補正書が提出されたところ、同年7月9日付け(送達日:同年同月23日)で同年5月14日付け手続補正が却下されるとともに拒絶査定がなされ、それに対して、同年10月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされ、これに対し、当審において、令和2年4月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月13日に意見書及び手続補正書が提出され、これに対し、当審において、同年9月15日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 令和2年11月18日付けの手続補正についての補正の却下の決定

[補正の却下の決定の結論]

令和2年11月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 補正の内容

本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲、すなわち令和2年7月13日になされた手続補正(以下、「審理時補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載を、以下のとおり、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のものに補正するものである(下線は補正箇所を示す。なお、本件補正後のAないしOの符号は合議体により付与されたものである。)。

本件補正前
「【請求項1】
複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
前記第1の表示演出は、大当たりを識別するための第1の識別図柄を有する第1の装飾図柄と、大当たりを識別するための第2の識別図柄を有する第2の装飾図柄とを含む複数の装飾図柄を第1の態様で表示する演出であり、
前記第2の表示演出は、前記複数の装飾図柄を前記第1の態様とは異なる第2の態様で表示する演出であり、
前記複数の第1の態様の装飾図柄は、前記識別図柄とは異なる第1の特定要素を含み、
前記第1の態様の第1の装飾図柄と前記第1の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第1の特定要素の種類が異なり、
前記複数の第2の態様の装飾図柄は、前記第1の態様の装飾図柄に含まれる前記第1の特定要素と、前記第1の態様に含まれない新たな第2の特定要素とを含み、
前記第2の特定要素は、少なくとも文字を含む要素で構成され、
前記第2の態様の第1の装飾図柄と前記第2の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第2の特定要素の種類が異なり、
前記第3の表示演出は、装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出をおこなう演出であり、
前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記第3の表示演出がおこなわれる、
ことを特徴とする遊技機。」

本件補正後
「【請求項1】
A 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
B 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
C 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
D 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
E 前記第1の表示演出は、大当たりを識別するための第1の識別図柄を有する第1の装飾図柄と、大当たりを識別するための第2の識別図柄を有する第2の装飾図柄とを含む複数の装飾図柄を第1の態様で表示する演出であり、
F 前記第2の表示演出は、前記複数の装飾図柄を前記第1の態様とは異なる第2の態様で表示する演出であり、
G 前記複数の第1の態様の装飾図柄は、前記識別図柄とは異なる第1の特定要素を含み、
H 前記第1の態様の第1の装飾図柄と前記第1の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第1の特定要素の種類が異なり、
I 前記複数の第2の態様の装飾図柄は、前記第1の態様の装飾図柄に含まれる前記第1の特定要素と、前記第1の態様に含まれない新たな第2の特定要素とを含み、
J 前記第2の特定要素は、少なくとも文字を含む要素で構成され、
K 前記第2の態様の第1の装飾図柄と前記第2の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第2の特定要素の種類が異なり、
L 前記第3の表示演出は、装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出をおこなう演出であり、
M 前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
N 前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記第3の表示演出がおこなわれ、
O 前記第3の表示演出では、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する、
A ことを特徴とする遊技機。」
(以下、本件補正後の請求項1に記載された事項によって特定される発明を、「本件補正発明」という。)

2 補正の適否

(1) 補正の目的

本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「第3の表示演出」に関して、「前記第3の表示演出では、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」との事項を限定することを含むものである。
そして、本件補正発明は、補正前の請求項1に係る発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についてする補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とする補正に該当する。

(2) 新規事項について

ア 本件補正により限定された構成

本件補正により、補正前の請求項1に係る発明における第3の表示演出について、「前記第3の表示演出では、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」ことが限定された。
そこで、上記した「第3の表示演出」について限定されたされた事項が、本願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、これらを「当初明細書等」という。)に記載された事項の範囲内であるか否かについて検討する。

イ 当初明細書等の記載事項

当初明細書等には、以下の記載がある(下線は、合議体により付与されたものである。)。

本-ア
「【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
前記第1の表示演出は、装飾図柄を第1の態様で表示する演出であり、
前記第2の表示演出は、前記装飾図柄を前記第1の態様とは異なる前記第2の態様で表示する演出であり、
前記第1の態様の装飾図柄は、1つ以上の要素を含み、
前記第2の態様の装飾図柄は、前記第1の態様の装飾図柄に含まれる要素に加えて、前記第1の態様の装飾図柄にはない新たな要素を含む、
ことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
請求項1に記載の遊技機であって、
前記第1の表示演出と前記第2の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれる、
ことを特徴とする遊技機。
【請求項3】
請求項2に記載の遊技機であって、
前記第1の表示演出と前記第2の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれる、
ことを特徴とする遊技機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3までのいずれか一項に記載の遊技機であって、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
前記第3の表示演出は、前記第2の態様の前記装飾図柄に含まれる要素を含む画像とを用いておこなう演出である、
ことを特徴とする遊技機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4までのいずれか一項に記載の遊技機であって、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第4の表示演出をおこなう場合があり、
前記第4の表示演出は、前記装飾図柄を前記第2の態様とは異なる第3の態様で表示する演出であり、
前記第3の態様の装飾図柄は、前記第2の態様の装飾図柄に含まれる要素に加えて、前記第2の態様の装飾図柄にはない新たな要素を含み、
前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第4の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、前記第2の表示演出の後に、前記第4の表示演出がおこなわれる、
ことを特徴とする遊技機。」

本-イ
「【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1実施形態>
1.遊技機の構造
図1は、本発明の一実施形態としての遊技機1の正面図である。以下では、遊技機1の左右方向を、遊技機1に対面する遊技者から見た左右方向に一致させて説明する。また、遊技機1の前方向は、遊技機1から遊技者に向かう方向として説明し、遊技機1の後方向は、遊技者から遊技機1に向かう方向として説明する。
【0016】
遊技機1は、遊技者の発射操作に基づいて遊技球を発射させ、特定の入賞装置に遊技球が入賞すると、その入賞に基づいて所定数の遊技球を遊技者に払い出すパチンコ遊技機である。遊技機1は、遊技機枠50と、遊技盤2とを備え、遊技機枠50の内側に遊技盤2が取り付けられている。
・・・。
【0018】
遊技盤2は、遊技領域3と、レール部材4と、盤ランプ5と、画像表示装置7と、センター装飾体10と、固定入賞装置(ヘソ)19と、普通可変入賞装置(電チュー)22と、ゲート(スルーチャッカー)28と、第1大入賞装置(第1アタッカー)31と、第2大入賞装置(第2アタッカー)36と、普通入賞口27と、アウト口16と、表示器類40と、を備えている。
・・・
【0020】
画像表示装置7は、遊技領域3の中央付近に設けられ、表示画面7aを備えている。・・・。画像表示装置7の表示画面7aは、演出図柄(装飾図柄)8L、8C、8Rが可変表示(変動表示ともいう)される演出図柄表示領域と、保留画像9A、9Bが表示される保留画像表示領域と、保留消化画像9Cが表示される保留消化画像表示領域と、を有している。保留画像9A、9Bは、保留を表す画像であり、第1保留アイコン9A,9Bとも呼ぶ。保留消化画像9Cは、当該保留を表す画像であり、第2保留アイコン9Cとも呼ぶ。第1保留アイコンと第2保留アイコンとを総称して、単に保留アイコンとも呼ぶ。」

本-ウ
「【図1】



本-エ
「【0268】
[保留対応演出B]
図60は、保留対応演出Bを説明するための図である。
まず、保留対応演出Bでは、図60(A)に示すように、保留表示演出が実行される。この保留表示演出では、保留表示領域C41と、キャラクタCRAとが表示される。保留表示領域C41には、保留アイコンを表示するための表示領域であり、第1保留アイコン9Aと第2保留アイコン9Cとが表示される。保留表示領域C41は、4つの第1保留アイコン9Aと1つの第2保留アイコン9Cとを格納可能に5つに区分されている。なお、保留表示演出では、装飾図柄8L、8C、8Rが変動中である。なお、この保留表示演出では、第1保留アイコン9A、第2保留アイコン9Cの色は、白色となっている。
【0269】
次に、図60(B)に示すように、対応領域表示演出が実行される。この対応領域表示演出では、保留表示領域C41に対応する保留対応領域C42が表示される。保留対応領域C42は、保留表示領域C41に隣接して設けられ、詳しくは、保留表示領域C41の上部に接続して設けられる。保留対応領域C42は、保留表示領域C41において第1保留アイコン9Aを格納する4つの区画にそれぞれ対応する4つの領域を備えている。
【0270】
次に、図60(C)に示すように、対応領域選択演出が実行される。この対応領域選択演出では、保留対応領域C42の4つの領域のうちのいずれかにおいて、複数の演出の選択肢が変動表示される。この選択肢には、保留変化を示唆する表示、今後に発展するリーチ演出を示唆する表示、「激アツ」や「チャンス」などのチャンスアップを示唆する表示、大当たりを示唆する表示などを含んでいる。
【0271】
次に、図60(D)に示すように、リーチ示唆演出が実行される。このリーチ示唆演出では、保留対応領域C42において対応領域選択演出で変動していた選択肢が停止して、今後に展開するリーチ演出を示唆する表示が行われる。図60(D)の例では、リーチ演出を示唆する表示は、「スーパーリーチA」と表されており、すなわち、今後に展開するリーチ演出がスーパーリーチ演出であり、スーパーリーチ演出の中のスーパーリーチAであることが表されている。
【0272】
次に、図60(E)に示すように、スーパーリーチ演出が実行される。このスーパーリーチ演出では、味方キャラクタCRAと敵キャラクタCRBとが戦う演出が行われる。このスーパーリーチ演出は、図60(D)のリーチ示唆演出が行われた変動とは異なる変動で行われ、具体的には、リーチ示唆演出において、保留対応領域C42のリーチ演出を示唆する表示が行われた領域に対応する保留表示領域C41の区画にある第1保留アイコン9Aが当該保留となった変動で行われる。」

本-オ
「【図60】



本-カ
「【0395】
以下に図74?図76を用いて特殊図柄変動演出について説明する。この特殊図柄変動演出は、例えば、特別図柄の変動表示の開始時などに実行され得る。
【0396】
[特殊図柄変動演出A]
・・・。
【0400】
[特殊図柄変動演出B]
図75は、特殊図柄変動演出Bを説明するための図である。
まず、特殊図柄変動演出Bでは、図75(A)に示すように、第1図柄変動演出が実行される。この第1図柄変動演出では、第1特殊装飾図柄8L,8C,8Rを用いて変動演出が実行される。
【0401】
次に、図75(B)に示すように、第1図柄擬似連演出が実行される。この第1図柄擬似連演出は、装飾図柄8Lと装飾図柄8Rが停止した状態で、装飾図柄8Cが擬似連示唆図柄で停止される演出である。装飾図柄8Lと装飾図柄8Rとは、数字図柄の数字が一つ違う状態となっている。
【0402】
次に、図75(C)に示すように、第2図柄変動演出が実行される。この第2図柄変動演出では、数字図柄に見方キャラクタ画像D41が付加された第1特殊装飾図柄にさらに見方キャラクタの名前画像D42が付加された装飾図柄8L,8C,8Rを用いて変動演出が実行される。この第1特殊装飾図柄にさらに見方キャラクタの名前画像D42が付加された装飾図柄8L,8C,8Rを、第2特殊装飾図柄8L,8C,8Rとも呼ぶ。図75(C)の名前画像D42は、「OARO」と表されている。第特殊装飾図柄8L,8C,8Rでは、数字図柄が異なっていてもすべての図柄に名前画像D42が付加された状態である。
【0403】
次に、図75(D)に示すように、第2図柄擬似連演出が実行される。この第2図柄擬似連演出は、第2特殊装飾図柄8Lと第2特殊装飾図柄8Rが停止した状態で、装飾図柄8Cが擬似連示唆図柄で停止される演出である。第2特殊装飾図柄8Lと第2特殊装飾図柄8Rとは、数字図柄の数字が一つ違う状態となっている。
なお、図75(A)?(D)は、同じ変動の演出である。
【0404】
[特殊図柄変動演出C]
図76は、特殊図柄変動演出Cを説明するための図である。
まず、特殊図柄変動演出Cでは、図76(A)に示すように、第1図柄変動演出が実行される。この第1図柄変動演出では、第3特殊装飾図柄8L,8C,8Rを用いて変動演出が実行される状態となっている。この第3特殊装飾図柄8L,8C,8Rは、数字図柄とキャラクタ画像とが付加され、数字図柄ごとに付加されるキャラクタが異なる構成となっている。例えば、数字図柄が7の装飾図柄には、見方キャラクタ画像D41が付加され、数字図柄が6の装飾図柄には、敵キャラクタD43が付加される。
【0405】
次に、図76(B)に示すように、第1図柄擬似連演出が実行される。この第1図柄擬似連演出は、第3特殊装飾図柄8Lと第3特殊装飾図柄8Rが停止した状態で、装飾図柄8Cが擬似連示唆図柄で停止される演出である。装飾図柄8Lと装飾図柄8Rとは、数字図柄の数字が一つ違う状態となっている。
【0406】
次に、図76(C)に示すように、第2図柄変動演出が実行される。この第2図柄変動演出では、第4特殊装飾図柄8L,8C,8Rを用いて変動演出が実行される。この第4特殊装飾図柄8L,8C,8Rは、数字図柄とキャラクタ画像と名前画像とが付加され、数字図柄ごとに付加されるキャラクタおよび名前画像とが異なる構成となっている。例えば、数字図柄が7の装飾図柄には、見方キャラクタ画像D41と名前画像D42が付加され、数字図柄が6の装飾図柄には、敵キャラクタD43と名前画像D44が付加される。名前画像D44は、「OORO」と表されている。
【0407】
次に、図76(D)に示すように、第2図柄擬似連演出が実行される。この第2図柄擬似連演出は、第4特殊装飾図柄8Lと第4特殊装飾図柄8Rが停止した状態で、装飾図柄8Cが擬似連示唆図柄で停止される演出である。第4特殊装飾図柄8Lと第4特殊装飾図柄8Rとは、数字図柄の数字が一つ違う状態となっている。
なお、図76(A)?(D)は、同じ変動の演出である。」

本-キ
「【図76】



本-ク
「【0415】
[変形例3]
上記実施形態の遊技機1では、特殊図柄変動演出A?Cにおいて、装飾図柄8L,8C,8Rに含まれる要素を含む画像を用いて所定の演出(例えば、リーチ演出、擬似連演出、チャンスアップ演出、先読み演出、大当たり示唆演出)を行うようにしてもよい。例えば、特殊図柄変動演出Aの第2図柄変動演出の装飾図柄8L,8C,8Rが含む見方キャラクタ画像D41を用いて、チャンスアップ演出を行うようにしてもよい。この場合、見方キャラクタ画像D41を用いたチャンスアップ演出を第2図柄変動演出の後に行うようにしてもよい。」

ウ 本件補正発明の各構成と当初明細書等の記載との関係

(ア) 本件補正発明の構成Aについて
本件補正発明の構成Aの「表示手段」は、【0020】、図1等に記載された「画像表示装置7」が対応し、「画像表示装置7」は「表示画面7aを備えて」おり、「演出図柄(装飾図柄)8L、8C、8Rが可変表示(変動表示ともいう)される演出図柄表示領域と、保留画像9A、9Bが表示される保留画像表示領域と、保留消化画像9Cが表示される保留消化画像表示領域と、を有している」ものであるから、「複数種類の表示演出を実行可能」なものである。
してみると、本件補正発明の構成Aは、当初明細書等に記載されたものである。

(イ) 本件補正発明の構成B及び構成Eについて
本件補正発明の構成Eの「大当たりを識別するための第1の識別図柄」、大当たりを識別するための第2の識別図柄」は、それぞれ、【0404】、【0405】、及び、図76(A)、(B)に記載された「7の数字図柄」、「6の数字図柄」に対応し、本件補正発明の構成Eの「大当たりを識別するための第1の識別図柄を有する第1の装飾図柄」、「大当たりを識別するための第2の識別図柄を有する第2の装飾図柄」は、それぞれ、【0404】、【0405】、及び、図76(A)、(B)に記載された「見方キャラクタ画像D41が付加され」た「数字図柄が7の装飾図柄」、「敵キャラクタD43が付加され」た「数字図柄が6の装飾図柄」に対応する。
また、本件補正発明の構成Eの「第1の表示演出」は、「装飾図柄を第1の態様で表示する」ことであり、ここにおける「第1の態様で表示」された「装飾図柄」は、【0404】、【0405】、及び、図76(A)、(B)に記載された「数字図柄」に「キャラクタ」が付加された態様である「第3特殊装飾図柄8L,8C,8R」が対応する。
よって、本件補正発明の構成Eの「大当たりを識別するための第1の識別図柄を有する第1の装飾図柄と、大当たりを識別するための第2の識別図柄を有する第2の装飾図柄とを含む複数の装飾図柄を第1の態様で表示する演出であ」る「第1の演出」は、【0404】、【0405】、及び、図76(A)、(B)に記載された、「第3特殊装飾図柄8L,8C,8R」である「見方キャラクタ画像D41が付加され」た「数字図柄が7の装飾図柄」と、「敵キャラクタD43が付加され」た「数字図柄が6の装飾図柄」を表示する演出に対応する。
また、本件補正発明の構成Bに関して、図76に図示された7aは、【0020】、図1を参照すると、「画像表示装置7の表示画面7a」であるから、上記「第1の表示演出」は、「画像表示装置7の表示画面7a」で行われていると認められる。
してみると、本件補正発明の構成B及び構成Eは、当初明細書等に記載されたものである。

(ウ) 本件補正発明の構成C、構成FないしKについて
本件補正発明の構成Gの「複数の第1の態様の装飾図柄」が「含」む「識別図柄とは異なる第1の特定要素」は、【0404】、【0405】、及び、図76(A)、(B)に記載された「数字図柄」に「付加され」た「キャラクタ画像」に対応する。
本件補正発明の構成Hの「前記第1の態様の第1の装飾図柄と前記第1の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第1の特定要素の種類が異な」ることは、【0404】、【0405】、及び、図76(A)、(B)に記載された「第3特殊装飾図柄8L,8C,8R」の「数字図柄が7の装飾図柄」に「付加され」た「見方キャラクタ画像D41」と、「数字図柄が6の装飾図柄」に「付加され」た「敵キャラクタD43」とが異なることに対応する。
本件補正発明の構成I及び構成Jの「第1の態様に含まれない」「少なくとも文字を含む要素で構成され」る「第2の特定要素」は、【0406】、【0407】、及び、図76(C)、(D)に記載された「名前画像」に対応し、本件補正発明の構成Iの「前記第1の態様の装飾図柄に含まれる前記第1の特定要素」は、【0406】、【0407】、及び、図76(C)、(D)に記載された「キャラクタ画像」に対応する。
そして、本件補正発明の構成Fにおける「第2の表示演出」は「複数の装飾図柄を前記第1の態様とは異なる第2の態様で表示する演出であり」、ここにおいて、「第2の態様の装飾図柄」は、本件補正発明の構成I、構成J及び構成Kにおいて特定された、「装飾図柄」が「前記第1の態様の装飾図柄に含まれる前記第1の特定要素と、前記第1の態様に含まれない新たな第2の特定要素とを含み、」「前記第2の特定要素は、少なくとも文字を含む要素で構成され」、「第1の装飾図柄と前記第2の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第2の特定要素の種類が異な」るものであるから、「第2の態様の装飾図柄」は、【0406】、【0407】、及び、図76(C)、(D)に記載された、「数字図柄とキャラクタ画像と名前画像とが付加され、数字図柄ごとに付加されるキャラクタおよび名前画像とが異なる」「第4特殊装飾図柄8L,8C,8R」に対応し、「第2の表示演出」は、前記「第4特殊装飾図柄8L,8C,8R」を表示する演出に対応する。
また、本件補正発明の構成Cに関して、図76に図示された7aは、【0020】、図1を参照すると、「画像表示装置7の表示画面7a」であるから、上記「第2の表示演出」は、「画像表示装置7の表示画面7a」で行われていると認められる。
してみると、本件補正発明の構成C及び構成FないしKは、当初明細書等に記載されたものである。

(エ) 本件補正発明の構成D及び構成Lについて
本件補正発明の構成Lにおける「第3の表示演出」は、「装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出をおこなう演出」であるが、当初明細書等には、「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像」を含む「装飾図柄」を用いて「リーチ状態」を形成する場合の演出について、直接的な記載はされてはいないものの、【0415】に「上記実施形態の遊技機1では、特殊図柄変動演出A?Cにおいて、装飾図柄8L,8C,8Rに含まれる要素を含む画像を用いて所定の演出(例えば、リーチ演出、擬似連演出、チャンスアップ演出、先読み演出、大当たり示唆演出)を行うようにしてもよい。」との記載があり、【0415】において「装飾図柄8L,8C,8Rに含まれる要素を含む画像」という場合には、上記(ウ)においてすでに検討した「特殊図柄変動演出C」(【0404】参照)に関する記載である、「数字図柄とキャラクタ画像と名前画像とが付加され、数字図柄ごとに付加されるキャラクタおよび名前画像とが異なる」「第4特殊装飾図柄8L,8C,8R」(【0406】、【0407】、及び、図76(C)、(D))の記載から、本件補正発明の構成Lにおける「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像」も含まれると認められる。
そして、本件補正発明の構成Lにおいて「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出」という場合、単純に第2の特定要素に含まれる文字を含む画像が付加された複数の装飾図柄がリーチ状態を形成して表示される演出も想定され、そのような演出は、当初明細書等に直接的な記載が無かったとしても、当初明細書等の【0404】ないし【0407】、【0415】、図76等の記載から自明の範囲内のものといえる。
また、本件補正発明の構成Dに関して、「第3の表示演出」も「画像表示装置7の表示画面7a」において行われることは明らかであるから、本件補正発明の構成Dも、当初明細書等の記載から自明の範囲内のものといえる。
よって、本件補正発明の構成D及び構成Lは、当初明細書等の記載から自明の範囲内のものといえる。

(オ) 本件補正発明の構成M及び構成Nについて
本件補正発明の構成M及び構成Nにおける「第1の表示演出」、「第2の表示演出」は、それぞれ、当初明細書等の【0404】、【0405】及び図76(A)、(B)、同【0406】、【0407】及び図76(C)、(D)にそれぞれ記載されていると認められ、「第1の表示演出」に続いて「第2の表示演出」が行われることも、同【0404】ないし【0407】、【0415】及び図76に記載されている。
また、上記(エ)において指摘したように、「第3の表示演出」は当初明細書等に直接的には記載されていないが、リーチ状態が、装飾図柄の変動表示における最終局面において行われることは、当業者にとって明らかな事項であることから、「装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合」の演出である「第3の表示演出」が、「第2の表示演出」の後に続くものであることは、当初明細書等の記載から自明の範囲内のものといえる。
よって、本件補正発明の構成M及び構成Nは、当初明細書等の記載から自明の範囲内のものといえる。

(カ) 本件補正発明の構成Oについて
本件補正発明の構成Oについて検討すると、上記(エ)において検討したように「第3の表示演出」は、当初明細書等に直接的に記載はされていないが、【0415】に「装飾図柄8L,8C,8Rに含まれる要素を含む画像を用いて所定の演出(例えば、リーチ演出、擬似連演出、チャンスアップ演出、先読み演出、大当たり示唆演出)を行うようにしてもよい。」と記載されていることから、リーチ演出として、「前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像」を表示する演出を行う点までは当初明細書等の記載から自明の範囲内であるといえる。
しかしながら、本件補正発明の構成Oにおける「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、」「リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」点は、【0404】ないし【0407】、図76には記載されておらず、また、【0415】の記載においても、「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、」「リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」点は示唆されていない。
さらに、当初明細書等の他の段落及び図面においても、第1の表示演出、第2の表示演出に続いておこなわれる第3の表示演出において、名前画像である「文字を含む画像を、」「リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」構成は記載されておらず、その構成が、当初明細書等の記載から自明の範囲内であるという根拠も見いだせない。
してみると、本件補正発明の構成Oは当初明細書等に記載されたものではなく、当初明細書等の記載から自明の範囲内のものということもできず、新たな技術的事項を導入するものでないとはいえない。

エ 本件補正についての判断

上記イの(ア)ないし(カ)の検討事項を総合すると、上記(カ)で検討した本件補正発明の構成Oは、当初明細書等に記載されたものではなく、当初明細書等の記載から自明の範囲内のものということもできない。
してみると、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものでないとはいえない。

オ 審判請求人が主張する本件補正の根拠について

(ア) 審判請求人による本件補正の根拠についての主張
審判請求人は、令和2年11月18日に提出された意見書において、本件補正に関して、以下の主張を行っている。
「(1)請求項1の補正について
「前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記第3の表示演出がおこなわれ、前記第3の表示演出では、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」点については、例えば、出願当初の明細書の段落0272、0400?0407、0415、図60(E)、図76等の記載に基づいております。
例えば、本願では、図76に示す特殊図柄変動演出Cでは、図76(A)、(B)において、数字図柄とキャラクタ画像とが付加され、数字図柄ごとに付加されるキャラクタが異なる構成である第3特殊装飾図柄8L,8C,8Rが表示されます(段落0404?0405)。この場合、例えば、数字図柄が7であり、味方キャラクタ画像D41が付加された装飾図柄が請求項における第1の態様の第1の装飾図柄に相当し、数字図柄6であり、敵キャラクタD43が付加された装飾図柄が請求項における第1の態様の第2の装飾図柄に相当致します。
また、図76(C)において、数字図柄とキャラクタ画像と名前画像とが付加され、数字図柄ごとに付加されるキャラクタおよび名前画像とが異なる構成である第4特殊装飾図柄8L,8C,8Rが表示されます(段落0406)。この場合、例えば、数字図柄が7であり、味方キャラクタ画像D41と名前画像D42とが付加された装飾図柄が請求項における第2の態様の第1の装飾図柄に相当し、数字図柄が6であり、敵キャラクタ画像D43と名前画像D44とが付加された装飾図柄が請求項における第2の態様の第2の装飾図柄に相当致します。
段落0415には、特殊図柄変動演出Cにおいて、装飾図柄8L,8C,8Rに含まれる要素を含む画像を用いて所定の演出(リーチ演出を含む)をおこなうようにしてもよいこと、当該所定の演出を第2図柄変動演出(図76(C)の演出)の後におこなうようにしてもよいことが記載されております。
また、「リーチ演出」が「リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域」でおこなわれることについては、後述の「本願発明が特許されるべき理由」で詳細を示すように、本願の段落0272、図60(E)等に記載されております。
その結果、本願の段落0272、0415、図60(E)の記載を総合すれば、本願の主要構成部である「前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」ことについては、出願当初の本願明細書、図面に記載されていると思料致します。
(本願明細書:段落0272、0400?0407、0415、図60(E)、図76)。」

(イ) 審判請求人の主張に対する反論
上記意見書の記載に基づくと、審判請求人は、本件補正発明の構成Oである「前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」ことは、【0272】、【0400】ないし【0407】、【0415】、図60(E)及び図76の記載を総合することにより導き出されるものであると主張しているものと認められる。
そこで、本-エに摘記した【0268】ないし【0272】の記載、本-オに摘記した図60の記載を検討するに、それらの記載は、そもそも保留対応演出を説明するためのものであり、特殊図柄変動演出Cの説明のための記載である【0400】ないし【0407】及び図76の記載との関係が不明なものであるから、両者に記載された技術的事項を総合すること自体に無理があることは明らかである。
そして、図60の記載を検討すると、装飾図柄8L,8C,8Rがどのような態様であるのかが全く不明であり、また、【0272】の記載に基づくと、図60(E)はスーパーリーチ演出である旨は記載されているものの、装飾図柄8L,8C,8Rがリーチ状態になっているとはいえないことから、図60(E)に記載された態様が、本件補正発明の構成Lにおいて特定されている「第3の表示演出」が、「装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、」「おこなう演出」に関連する記載であるとは到底いえず、さらに、図60のいずれの図面にも、「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像」は記載されていない。
したがって、【0400】ないし【0407】、【0415】及び図76の記載、【0272】及び図60(E)の記載から、本件補正発明の構成Oは導き出せない。
よって、審判請求人による本件補正の根拠についての主張を参酌しても、本件補正が、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではないとする根拠を見いだすことはできない。

カ むすび

以上のことから、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえない。

3 補正の却下の決定のむすび

したがって、本件補正は、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものであるとはいえないことから、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてしたものとはいえず、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていないものであるから、本件補正は、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、前記[補正の却下の決定の結論]のとおり決定する。

第3 本願発明について

1 本願発明

本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、審理時補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものであり、分説してAないしN及びO’の符号を付与すると、以下のとおりである(以下、それぞれの発明を、「本願発明1」、「本願発明2」という。)。

「【請求項1】
A 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
B 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
C 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
D 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
E 前記第1の表示演出は、大当たりを識別するための第1の識別図柄を有する第1の装飾図柄と、大当たりを識別するための第2の識別図柄を有する第2の装飾図柄とを含む複数の装飾図柄を第1の態様で表示する演出であり、
F 前記第2の表示演出は、前記複数の装飾図柄を前記第1の態様とは異なる第2の態様で表示する演出であり、
G 前記複数の第1の態様の装飾図柄は、前記識別図柄とは異なる第1の特定要素を含み、
H 前記第1の態様の第1の装飾図柄と前記第1の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第1の特定要素の種類が異なり、
I 前記複数の第2の態様の装飾図柄は、前記第1の態様の装飾図柄に含まれる前記第1の特定要素と、前記第1の態様に含まれない新たな第2の特定要素とを含み、
J 前記第2の特定要素は、少なくとも文字を含む要素で構成され、
K 前記第2の態様の第1の装飾図柄と前記第2の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第2の特定要素の種類が異なり、
L 前記第3の表示演出は、装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出をおこなう演出であり、
M 前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
N 前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記第3の表示演出がおこなわれる、
A ことを特徴とする遊技機。」

「【請求項2】 請求項1に記載の遊技機であって、
O’ 前記組み合わせ演出の前記第3の表示演出において、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する、
ことを特徴とする遊技機。」

2 令和2年9月15日付け拒絶理由通知における拒絶の理由

令和2年9月15日付け拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)における拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

理由1:
審理時補正において、特許請求の範囲に、上記の請求項2を追加する補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、審理時補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

理由2:
本願発明1は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用例1ないし4に記載された事項に基づいて、本願の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例1:特開2016-7365号公報
引用例2:「CR闘牌伝説アカギ」,パチンコ必勝ガイド パチンコ年鑑2009,株式会社白夜書房,平成21年1月25日,第21巻,第3号,p.96
引用例3:「CRジュラシックパークMAX」,パチンコ必勝ガイド パチンコ年鑑2009,株式会社白夜書房,平成21年1月25日,第21巻,第3号,p.104
引用例4:特開2009-183382号公報

3 当審拒絶理由通知についての検討

(1) 理由1について

本願発明2は、審理時補正により、新たに追加された発明であり、以下に示す審理時補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される発明(以下「審理時補正前発明」という。)が審理時補正により補正された本願発明1の構成に、上記構成O’が付加されたものである。

審理時補正前発明
「複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
前記第1の表示演出は、装飾図柄を第1の態様で表示する演出であり、
前記第2の表示演出は、前記装飾図柄を前記第1の態様とは異なる前記第2の態様で表示する演出であり、
前記第1の態様の装飾図柄は、大当たりを識別するための識別図柄と前記識別図柄とは異なる第1の特定要素とで少なくとも構成され、
前記第2の態様の装飾図柄は、前記第1の態様の装飾図柄に含まれる前記第1の特定要素と、前記第1の特定要素とは異なる第2の特定要素とで少なくとも構成され、
前記第2の特定要素は、少なくとも文字を含む要素で構成され、
前記第3の表示演出は、装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出をおこなう演出であり、
前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記第3の表示演出がおこなわれる、
ことを特徴とする遊技機。」

そして、本願発明2の構成O’のうち、「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を、」「リーチ状態を形成する装飾図柄が表示される表示領域とは異なる領域に表示する」点は、上記「第2」「[理由]」「2 補正の適否」「(2) 新規事項について」「ウ」「(カ)」において検討したように、当初明細書等に記載されたものではなく、当初明細書等の記載から自明な範囲内のものということもできず、当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものである。
したがって、審理時補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしておらず、本願は拒絶されるべきものである。

(2) 理由2について

ア 引用例1とそれに記載された事項

(ア)記載事項
当審拒絶理由通知において、引用例1として引用された特開2016-7365号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。

引1-ア
「【0001】
本発明は、識別図柄に対応する付随図柄が設定された遊技機に関する。」

引1-イ
「【0020】
まず、図1を参照して遊技機1の全体構成について簡単に説明する。遊技機1は遊技盤90を備える。遊技盤90は、ほぼ正方形の合板により成形されており、発射装置の操作によって発射された遊技球を遊技領域902に案内する金属製の薄板からなる帯状のガイドレール903が略円弧形状となるように設けられている。
【0021】
遊技領域902には、第一始動入賞口904、第二始動入賞口905、大入賞口906、アウト口907などが設けられている。遊技盤90に形成された開口901を通じて表示画面が視認可能である表示装置10は、例えば液晶表示装置が用いられる。本実施形態では、表示装置10を用いて当否判定結果の報知や、種々の演出が実行される。当該演出の一つとして、詳細を後述する付随図柄ステップアップ演出が実行される。」

引1-ウ
「【0024】
以下、表示装置10を用いて実行される付随図柄ステップアップ演出について説明する。なお、以下で説明する付随図柄ステップアップ演出を実行することが可能なものであれば、その演出を制御するものの構造(演出(表示装置10)を制御する基板の構造や種類等)や、演出の決定(抽選)方法等はどのようなものであってもよいため、かかる点についての説明は省略する(公知の演出を決定する手法、演出を制御する手法を用いることができる)。
【0025】
当否判定手段による当否判定結果(遊技者に有利な遊技を実行するか否か)は、識別図柄20の組み合わせによって報知される。図2に示すように、本実施形態における識別図柄20は、「1」?「5」の数字が付された図柄である(図では、丸の中に数字が付された図柄を識別図柄20として示す)。また、本実施形態では、「1」?「5」の識別図柄20を含む識別図柄20群は三つ設定されており、当否判定結果が報知される際に変動表示される。なお、識別図柄20の数は適宜変更可能である。最終的に停止した識別図柄20組(各識別図柄20群から一つずつ選択されて停止した三つの識別図柄20)が所定の組み合わせとなったとき(例えば同じ識別図柄の三つ揃い)には大当たりとなり、それ以外の場合にははずれとなる。
【0026】
図2に示すように、各識別図柄20には、付随する付随図柄30が設定されている。ここで、「付随」とは、識別図柄20とともに変動する、という意味である。本実施形態では、「1」の識別図柄20に付随する付随図柄30は、「1」の識別図柄20を離れて変動すること(他の識別図柄20に付随すること)はないが、仮に識別図柄20と付随図柄30が離れて変動しても、付随図柄30がある特定の識別図柄20に付随することが理解できれば離れて変動してもよい。
【0027】
本実施形態では、各識別図柄20に対応する付随図柄30として複数の形態の付随図柄30が段階的に設定されている。具体的には、ある一の識別図柄20に対応する付随図柄30として、レベルの異なる三つの形態の付随図柄30(レベル1?レベル3)が設定されている。本実施形態における付随図柄30は、キャラクタ図柄31および土台図柄32を含む。キャラクタ図柄31は、各付随図柄30が他の付随図柄30と異なるものであることを容易に認識することが可能であれば、どのような態様のものであってもよい。土台図柄32は、キャラクタ図柄31を支持するものとして表示される図柄である。具体的には、土台図柄32の上面321(キャラクタが支持されている面)にキャラクタ図柄31が乗った(載置された)状態で表示される。
【0028】
レベル1の付随図柄30の形態は、各付随図柄30の基本的な形態である。レベル1の図柄は、遊技者がキャラクタ図柄31および土台図柄32を真正面から見たような(アングル正面)態様である。したがって、土台図柄32はその側面しか見えてないような形態で表示され(四角形状となる)、その上側の面にキャラクタ図柄31が乗った付随図柄30の態様となる。
【0029】
レベル2およびレベル3の付随図柄30の形態は、レベル1の形態に対して遊技者から見た図柄のアングル(視点)があたかも変化したかのような(映像上変化する)ものである。具体的には、遊技者が上方からレベル1の付随図柄30を見たかような形態がレベル2の付随図柄30であり、さらに上方からレベル2の付随図柄30を見たかのような形態がレベル3の付随図柄30である。なお、本実施形態では、「アングル変化」だけでなく、キャラクタ図柄31の態様自体も若干変化する。例えば、識別図柄20「1」に付随する付随図柄30は、レベル1のキャラクタ図柄31は「剣」を持っていないのに対し、レベル2、3のキャラクタ図柄31は「剣」持っている。また、レベル2のキャラクタ図柄31の「剣」を持つ態様と、レベル3のキャラクタ図柄31の「剣」を持つ態様は異なる。このような「アングル変化」以外の変化の有無は問わないが、「アングル変化」以外の変化があった方が、付随図柄30(キャラクタ図柄31)が変化したことを容易に認識できるという点で好ましい。
【0030】
また、レベルが上昇すると、土台図柄32も遊技者が上方から見たような形態に変形していく。つまり、土台図柄32のキャラクタ図柄31が乗っている上面321の見える領域が大きくなっていく。レベル1の土台図柄32では全く見えなかった上面321が、レベル2、レベル3の土台図柄32でははっきりと見える。レベル2よりもレベル3の方が上方から見たような形態であるから、土台図柄32の上面321はレベル2よりもレベル3の方が大きくなるように表示される。
【0031】
このような付随図柄30を用いて付随図柄ステップアップ演出が実行される。本実施形態における付随図柄ステップアップ演出は、いわゆる擬似連続演出と合わせて実行される。したがって、いわゆる擬似連続演出が決定された場合には、付随図柄ステップアップ演出の内容を決定する処理を行う。擬似連続演出は、ある一つの当否判定結果を報知するに際し、変動する識別図柄20および付随図柄30を一または複数回仮停止(擬似停止)させて、その回数(連続回数;以下、仮停止が発生しないときには連続回数1回、仮停止が1回発生するときには連続回数2回・・・というように設定されているものとする)によって大当たりとなる蓋然性(いわゆる期待度)を示すものである。」

引1-エ
「【0036】
以下、図5および図6を参照して擬似連続演出とともに実行される付随図柄ステップアップ演出の具体例を説明する。仮に、上記図柄レベル決定処理において、最終的な付随図柄30のレベルがLv3となることが決定されたとする。つまり、擬似連続演出の連続回数が3回に決定されたとする。
【0037】
ある当否判定結果を報知するに際し、識別図柄20およびそれに付随する付随図柄30が変動を開始する(図5(a)参照)。このときの付随図柄30のレベルはLv1である。また、このときの識別図柄20および付随図柄30の変動方向は、上から下に向かうもの(下スクロール)である。
【0038】
所定時間変動した後、識別図柄20および付随図柄30が仮停止(仮停止(擬似停止)一回目)する(図5(b)参照)。なお、本実施形態における仮停止は、識別図柄20および付随図柄30の少なくともいずれか一方が、微妙に揺動する態様の停止である。停止したかのように見せて識別図柄20および付随図柄30の少なくともいずれか一方が微妙に動いている態様のものであれば仮停止はどのような態様であってもよい。また、本実施形態では、いわゆる中リールの識別図柄20および付随図柄30が継続図柄40に置き換わることにより、演出が継続することが遊技者に示される。ただし、これはあくまで例示である。例えば、演出を継続させる場合には、複数の識別図柄20のうちの一部(例えば「5」の識別図柄20)が中リールに仮停止した場合に、演出が継続するように設定されていてもよい。
【0039】
仮停止した時点またはその直前または直後に、付随図柄30のレベルが上がる(Lv2となる)。つまり、あたかも遊技者からのアングルが変化したかのようにキャラクタ図柄31および土台図柄32の形態が変化する。そして、当該形態が変化した付随図柄30(Lv2の付随図柄30)が識別図柄20とともに変動を開始する(図5(c)参照)。このときの識別図柄20および付随図柄30の変動方向は、下から上に向かうもの(上スクロール)に変化する。つまり、仮停止前の付随図柄30がLv1であったときの変動態様と、付随図柄30がLv2であるときの変動態様は異なるものとなる。
【0040】
所定時間変動した後、識別図柄20および付随図柄30が仮停止(仮停止(擬似停止)二回目)する(図6(a)参照)。そして、当該仮停止した時点またはその直前または直後に、付随図柄30のレベルが上がる(Lv3となる)。つまり、あたかも遊技者からのアングルが変化したかのようにキャラクタ図柄31および土台図柄32の形態がさらに変化する。そして、当該形態が変化した付随図柄30(Lv3の付随図柄30)が識別図柄20とともに変動を開始する(図6(b)参照)。このときの識別図柄20および付随図柄30の変動方向は、各図柄が回転するような態様に変化する。つまり、付随図柄30がLv1やLv2であったときの変動態様と、付随図柄30がLv3であるときの変動態様は異なるものとなる。
【0041】
変動を開始したLv3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したいわゆるリーチ状態で停止し(図6(c)参照)、演出を決定する手段で選択されたリーチ演出等に移行する。大当たりである場合には最終的に三つの識別図柄20および付随図柄30が全て同じとなり(図6(d)参照)、はずれである場合には中リールに左リールの図柄と右リールの図柄とは異なる識別図柄20および付随図柄30が停止する。」

引1-オ
「【図1】



引1-カ
「【図2】



引1-キ
「【図5】



引1-ク
「【図6】



(イ)認定事項
a 引用例1の【0024】には、「以下、表示装置10を用いて実行される付随図柄ステップアップ演出について説明する。」と記載され、同【0025】には、「当否判定手段による当否判定結果(遊技者に有利な遊技を実行するか否か)は、識別図柄20の組み合わせによって報知される。図2に示すように、本実施形態における識別図柄20は、「1」?「5」の数字が付された図柄である(図では、丸の中に数字が付された図柄を識別図柄20として示す)。また、本実施形態では、「1」?「5」の識別図柄20を含む識別図柄20群は三つ設定されており、当否判定結果が報知される際に変動表示される。」と記載され、同【0026】には、「各識別図柄20には、付随する付随図柄30が設定されている。ここで、「付随」とは、識別図柄20とともに変動する、という意味である。」と記載され、同【0027】には、「レベルの異なる三つの形態の付随図柄30(レベル1?レベル3)が設定されている」点が記載されていることから、「付随図柄ステップアップ演出は、「1」から「5」の数字が付された図柄である識別図柄20に、レベルの異なる三つの形態の付随図柄30が付随されて変動されるもの」であることが認定できる。

b 引用例1の【0037】、【0040】、図5及び図6を参照すると、「表示装置10にレベル1の付随図柄30と識別図柄20が表示され(図5(a))、変動後レベル3の付随図柄30と識別図柄20が表示され(図6(b))、その後変動され」る構成が導き出せる。

イ 引用発明
上記ア(ア)における摘記事項、及び、(イ)おける認定事項を総合すると、引用例1には以下の発明が記載されていると認められる。aないしnの符号は、本願発明1の構成AないしNに対応させて合議体により付与したものである。

「a 種々の演出が実行される表示装置10を有する遊技機1であって(【0020】、【0021】、図1)、
b,c,d,e,f,g,h,i 前記遊技機1は(【0020】)、前記表示装置10において付随図柄ステップアップ演出を実行するものであり(【0021】)、
前記付随図柄ステップアップ演出は、「1」から「5」の数字が付された図柄である識別図柄20に、レベルの異なる三つの形態の付随図柄30(レベル1?レベル3)が付随されて変動されるものであり(認定事項a)、付随図柄30(レベル1?レベル3)は、各識別図柄20に対応したキャラクタ図柄31と土台図柄32からなり(【0027】)、レベル1の付随図柄30は土台図柄32を真正面から見た態様であり、レベル3の付随図柄30は土台図柄32の上面321が見える態様であり(【0027】-【0030】、図2、図5、図6)、
l,m,n 前記付随図柄ステップアップ演出は、疑似連続演出と合わせて実行され(【0031】)、前記疑似連続演出は、一つの当否判定結果を報知するに際し、変動する識別図柄20および付随図柄30を一または複数回仮停止させるものであり(【0031】)、
前記表示装置10にレベル1の付随図柄30と識別図柄20が表示され、変動を開始し、変動後レベル3の付随図柄30と識別図柄20が表示され、その後変動され(認定事項b)、
レベル3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したリーチ状態で停止し、リーチ演出に移行する(【0041】、図6)
a 遊技機1。」

ウ 対比
(ア) 本願発明1の構成Aに関して
引用発明の構成aにおける「種々の演出が実行される表示装置10を有する遊技機1」は、本願発明1の構成Aにおける「複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成Aに相当する構成を有する。

(イ) 本願発明1の構成Eに関して
引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「「1」から「5」の数字が付された図柄である識別図柄20」は、本願発明1の構成Eにおける「大当たりを識別するための第1の識別図柄」又は「大当たりを識別するための第2の識別図柄」に相当し、引用発明1の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「識別図柄20」と「付随図柄30(レベル1?レベル3)」を合わせたものは、本願発明1の構成Eにおける「識別図柄」「を有する」「装飾図柄」に相当し、引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「識別図柄20」に「レベル1の付随図柄30」を付随させた図柄を表示することは、本願発明1の構成Eにおける「装飾図柄を第1の態様で表示する演出」に相当し、また、「第1の表示演出」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成Eに相当する構成を有する。

(ウ) 本願発明1の構成Fに関して
引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「識別図柄20」に「レベル3の付随図柄30」を付随させた図柄を表示することは、本願発明1の構成Fにおける「装飾図柄を前記第1の態様とは異なる第2の態様で表示する演出」に相当し、また、「第2の表示演出」に相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成Fに相当する構成を有する。

(エ) 本願発明1の構成Gに関して
引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「キャラクタ図柄31」は、本願発明1の構成Gにおける「識別図柄とは異なる第1の特定要素」に相当し、引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「レベル1の付随図柄30」が「各識別図柄20に対応したキャラクタ図柄31と土台図柄32からな」ることは、本願発明1の構成Gにおける「第1の態様の装飾図柄は、」「識別図柄とは異なる第1の特定要素を含」むことに相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成Gに相当する構成を有する。

(オ) 本願発明1の構成Hに関して
引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「キャラクタ図柄31」が「各識別図柄20に対応した」ものであることは、「キャラクタ図柄31」が「識別図柄20」に応じて異なるものであるから、本願発明1の構成Hにおける「前記第1の態様の第1の装飾図柄と前記第1の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第1の特定要素の種類が異な」ることに相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成Hに相当する構成を有する。

(カ) 本願発明1の構成Iに関して
引用発明のb,c,d,e,f,g,h,iにおける「レベル3の付随図柄30」の「土台図柄32の上面321」は、本願発明1の「前記第1の特定要素とは異なる第2の特定要素」に相当し、引用発明の「付随図柄30は、各識別図柄20に対応したキャラクタ図柄31と土台図柄32からなり、」「レベル3の付随図柄30は土台図柄32の上面321が見える態様であ」ることは、本願発明1の「第2の態様の装飾図柄は、」「第1の態様の装飾図柄に含まれる」「第1の特定要素と、前記第1の態様に含まれない新たな第2の特定要素とを含」むことに相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成Iに相当する構成を有する。

(キ) 本願発明1の構成Lに関して
引用発明のl,m,nにおける「レベル3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したリーチ状態で停止し、リーチ演出に移行する」演出において、レベル3の付随図柄30は、構成b,c,d,e,f,g,h,iにおいて特定されるように「土台図柄32の上面321が見える態様であ」るから、「レベル3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したリーチ状態で停止し、リーチ演出に移行する」演出と、本願発明1の構成Lの「装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出をおこなう演出であ」る「第3の表示演出」とは、「装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素」「を用いた演出をおこなう」「演出」である点で一致し、当該演出は、「第1の表示演出」及び「第2の表示演出」とは異なるものであるから、「第3の表示演出」といえる点においても一致する。
よって、本願発明1の構成Lと引用発明は、「第3の表示演出」が「装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素」「を含む画像を用いた演出をおこなう演出であ」る点で一致する。

(ク) 本願発明1の構成B、構成C、及び、構成Dに関して
上記(イ)において検討したように、引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「識別図柄20」に「レベル1の付随図柄30」を付随させた図柄を表示する演出は、本願発明1の「第1の表示演出」に相当し、上記(ウ)において検討したように、引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「識別図柄20」に「レベル3の付随図柄30」を付随させた図柄を表示する演出は、本願発明1の「第2の表示演出」に相当し、上記(キ)において検討したように、引用発明のl,m,nにおける「レベル3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したリーチ状態で停止し、リーチ演出に移行する」演出は、本願発明1の「第3の表示演出」に相当する。
してみると、引用発明の構成l,m,nにおける「表示装置10にレベル1の付随図柄30と識別図柄20が表示され、変動を開始し、変動後レベル3の付随図柄30と識別図柄20が表示され、その後変動され」、「レベル3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したリーチ状態で停止し、リーチ演出に移行する」ことは、本願発明1の構成B、構成C及び構成Dの「前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり」、「前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり」、「前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があ」ることに相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成B、構成C、及び、構成Dに相当する構成を有する。

(ケ) 本願発明1の構成M及び構成Nに関して
引用発明の構成b,c,d,e,f,g,h,iにおける「付随図柄ステップアップ演出」は、引用発明の構成l,m,nにおける「表示装置10にレベル1の付随図柄30と識別図柄20が表示され、変動を開始し、変動後レベル3の付随図柄30と識別図柄20が表示され、その後変動され」、「レベル3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したリーチ状態で停止し、リーチ演出に移行する」演出であり、上記(ク)においても検討したように、引用発明における「識別図柄20」に「レベル1の付随図柄30」を付随させた図柄を表示する演出は、本願発明1の「第1の表示演出」に相当し、引用発明における「識別図柄20」に「レベル3の付随図柄30」を付随させた図柄を表示する演出は、本願発明1の「第2の表示演出」に相当し、引用発明における「レベル3の付随図柄30と識別図柄20のうち、左リールの図柄と右リールの図柄は互いに一致したリーチ状態で停止し、リーチ演出に移行する」演出は、本願発明1の「第3の表示演出」に相当することから、上記「付随図柄ステップアップ演出」は、本願発明1の構成Mにおける「前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出」に相当する。
また、引用発明の構成l,m,nにおける「付随図柄ステップアップ演出」が「疑似連続演出と合わせて実行され」「、前記疑似連続演出は、一つの当否判定結果を報知するに際し、変動する識別図柄20および付随図柄30を一または複数回仮停止させる」ことは、「付随図柄ステップアップ演出」も「一つの当否判定結果を報知する」間に行われるものと認められることから、本願発明1の構成の構成Nにおける「前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記第3の表示演出がおこなわれ」ることに相当する。
よって、引用発明は、本願発明1の構成M及び構成Nに相当する構成を有する。

以上のことから、本願発明1と引用発明は、以下の点で一致する。

<一致点>
A 複数種類の表示演出を実行可能な表示手段を備える遊技機であって、
B 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第1の表示演出をおこなう場合があり、
C 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第2の表示演出をおこなう場合があり、
D 前記複数の表示演出のうちの一つの演出として、第3の表示演出をおこなう場合があり、
E 前記第1の表示演出は、大当たりを識別するための第1の識別図柄を有する第1の装飾図柄と、大当たりを識別するための第2の識別図柄を有する第2の装飾図柄とを含む複数の装飾図柄を第1の態様で表示する演出であり、
F 前記第2の表示演出は、前記複数の装飾図柄を前記第1の態様とは異なる第2の態様で表示する演出であり、
G 前記複数の第1の態様の装飾図柄は、前記識別図柄とは異なる第1の特定要素を含み、
H 前記第1の態様の第1の装飾図柄と前記第1の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる前記第1の特定要素の種類が異なり、
I 前記複数の第2の態様の装飾図柄は、前記第1の態様の装飾図柄に含まれる前記第1の特定要素と、前記第1の態様に含まれない新たな第2の特定要素とを含み、
L’ 前記第3の表示演出は、装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が前記第2の態様のときにおける前記第2の特定要素を含む画像を用いた演出をおこなう演出であり、
M 前記第1の表示演出と前記第2の表示演出と前記第3の表示演出とを含む組み合わせ演出がおこなわれる場合があり、
N 前記組み合わせ演出では、同一変動において、前記第1の表示演出の後に、前記第2の表示演出がおこなわれ、その後、前記第3の表示演出がおこなわれる
A 遊技機。」

そして、両者は、以下の点で相違する。

<相違点1>(構成J、Kに関して)
第2の特定要素に関して、
本願発明1は、第2の特定要素が、少なくとも文字を含む要素で構成され、第2の態様の第1の装飾図柄と第2の態様の第2の装飾図柄では、それぞれ、含まれる第2の特定要素の種類が異なるのに対して、
引用発明は、第2の特定要素に相当する「土台図柄32の上面」には、文字が含まれておらず、さらに、文字が含まれていないことから、「レベル3の付随図柄30と識別図柄20」における「識別図柄20」の図柄の数字に応じて、「土台図柄32の上面」(第2の特定要素)の種類が異なるものではない点。

<相違点2>(構成Lに関して)
装飾図柄を用いたリーチ状態が形成されている場合に、第3の表示演出を行うにあたって、
本願発明1は、前記リーチ状態を形成する装飾図柄が第2の態様のときにおける第2の特定要素に含まれる文字を含む画像を用いた演出を行うことによって第3の表示演出を行うのに対して、
引用発明は、「土台図柄32の上面」(第2の特定要素)には、文字が含まれていないことから、文字を含む画像を用いた演出を行うものではない点。

エ 検討

(ア) 相違点1について
当審拒絶理由通知において、引用例2として引用された「「CR闘牌伝説アカギ」,パチンコ必勝ガイド パチンコ年鑑2009,株式会社白夜書房,平成21年1月25日,第21巻,第3号」には、p.96に以下の図面(以下、「引用例2の図面」という。)が掲載されている。



また、同じく引用例3として引用された「「CRジュラシックパークMAX」,パチンコ必勝ガイド パチンコ年鑑2009,株式会社白夜書房,平成21年1月25日,第21巻,第3号」には、p.104に以下の図面(以下、「引用例3の図面」という。)が掲載されている。



上記した引用例2の図面には、「確変図柄」を示す「1」ないし「9」の数字を含む図柄には、「平山」、「赤木」など、各々異なるキャラクタの名前が漢字で付されている態様が記載されており、上記した引用例3の図面には、「確変図柄」を示す「1」ないし「8」の数字を含む図柄には、「BRACHIO」、「T-REX」など、各々異なるキャラクタの名前がアルファベットで付されていることから、遊技機において、装飾図柄に付加される文字を、装飾図柄の数字に対応させて異ならせること(装飾図柄の態様により、それぞれ含まれる「文字を含む要素」の種類を異なるものとすること)は、本願出願前周知の事項である。
したがって、引用発明において、上記本願出願前周知の事項を適用し、「土台図柄32の上面」の表示に加えて、数字に対応した「キャラクタの名前」を表示することにより、本願発明の上記相違点1に係る構成を成すことは、当業者が容易に想到し得る程度のことである。

(イ) 相違点2について
当審拒絶理由通知において、引用例4として引用された特開2009-183382号公報(以下、「引用例4」という。)には、以下の記載がある。

引4-ア
「【0001】
本発明は、パチンコ機やパチスロ機などの遊技機に係り、特に、これらの遊技機による遊技が行われていないときに所定のデモンストレーションを報知する機能を備えた遊技機に関するものである。」

引4-イ
「【0061】
図10は、これら3つの画面モードのうち、通常状態時に選択される画面モード(通常モード)の一例を示したものであり、1回の抽選ごとに一定の背景上を3つの演出図柄がそれぞれ上下方向に変動し、所定の変動パターンによって演出図柄が順に停止することでその抽選結果が「当り」か「ハズレ」であることを表示するようになっている。
なお、このように画面モードが変化した場合は、その画面モードの種類に合わせてBGMなどの効果音や表示ランプの点滅パターンなども変化するようになっており、遊技者は、視覚のみならず聴覚などを通じてその状態が把握できるようになっている。
【0062】
一方、「(D)確変小当り(時短機能なし)」および「(E)通常(非確変)小当り(時短機能なし)」のいずれかに当選した場合は、前述したようにその「小当り」の種類によってその後の遊技状態が大きく異なるにも拘わらず、いずれの場合もその画面モードは「チャンスモード」と称される第4の画面モードに移行するようになっている。
この「チャンスモード」なる画面モードは、例えば図11に示すように、前記図10に示した「通常状態」の画面モードや「高確率状態」の画面モードなどとは、明らかに異なるデザインやキャラクターからなる演出図柄が採用されており、原則として遊技者は、その画面モードからでは、その「小当り」が、遊技者にとって有利な「(D)確変小当り」に当選したことにより移行したものなのか、あるいは「(E)通常(非確変)小当り」に当選したことにより移行したものなのかの判別がし難い画像(演出図柄)から構成されている。」

引4-ウ
「【図10】



引4-エ
「【図11】



上記した段落【0061】、【0062】の記載より、引用例4には、遊技機における演出図柄として、通常モードの演出図柄と、チャンスモードの演出図柄が設定されており、図10に示した通常モードの演出図柄、図11に示したチャンスモードの演出図柄において、それぞれの演出図柄は、数字を表す図柄と、キャラクターを表す図柄を含む点が読み取れ、さらに、図11に示したチャンスモードの演出図柄には、数字を表す図柄と、キャラクターを表す図柄のほかに「SENGOKU OTOME」の文字の図柄が付加されている点が読み取れる。
したがって、引用例4には、
「数字を表す図柄とキャラクターを表す図柄を含む通常モードの演出図柄と、数字を表す図柄とキャラクターを表す図柄と「SENGOKU OTOME」の文字の図柄を含むチャンスモードの演出図柄が表示される遊技機」
(以下、「引用例4記載事項」という。)
が記載されていると認められる。
そして、引用例4記載事項と本願発明1の上記相違点2に係る構成とを対比すると、引用例4記載事項の「キャラクターを表す図柄と「SENGOKU OTOME」の文字の図柄」、「「SENGOKU OTOME」の文字の図柄」は、それぞれ、本願発明1の上記相違点2に係る構成の「少なくとも文字を含む要素で構成され」た「第2の特定要素」、「第2の特定要素に含まれる文字を含む画像」に相当する。

ここにおいて、引用発明、引用例4記載事項は、いずれも、識別図柄に付随図柄を付随させて変動表示を行う遊技機という共通の技術分野に属するものであるから、引用発明において、引用例4記載事項を適用し、リーチ演出に移行する演出において、文字を含む画像を用いた演出が行われるようにし、本願発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

さらに、本願発明1の作用効果は、引用発明、引用例4記載事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が予測できる範囲のものであり、格別なものではない。

オ 理由2についてのむすび
したがって、本願発明1は、引用発明1、引用例4記載事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4 むすび

以上のことから、本願において、審理時補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、当該補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。
また、本願発明1は、引用発明1、引用例4記載事項、及び、本願出願前周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2020-12-15 
結審通知日 2020-12-22 
審決日 2021-01-05 
出願番号 特願2018-64612(P2018-64612)
審決分類 P 1 8・ 55- WZ (A63F)
P 1 8・ 121- WZ (A63F)
P 1 8・ 561- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大浜 康夫  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
澤田 真治
発明の名称 遊技機  
代理人 田邊 淳也  

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