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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1371529
審判番号 不服2019-16860  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2019-12-13 
確定日 2021-03-05 
事件の表示 特願2016-548669「コンピュータデバイスのユーザインタフェースの制御」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 6日国際公開、WO2015/114117、平成29年 4月13日国内公表、特表2017-510321〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2015年1月30日(パリ条約による優先権主張2014年1月31日英国、2014年2月19日米国、2014年6月26日米国)を国際出願日とする出願であって、平成30年11月26日付けで拒絶の理由が通知され、平成31年3月11日に意見書及び手続補正書が提出され、令和1年8月1日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がされ、令和2年1月14日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1乃至31に係る発明は、平成31年3月11日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至31に記載された事項により特定されるものであり、そのうち請求項31に係る発明は、次のとおりのものである。
「ユーザゲーム要素を表示し、ユーザがゲーム要素を操作した場合にユーザ入力を検出するように構成されたユーザインタフェースと、
検出されたユーザ入力を受信し、ゲーム状態を検出すると1つ以上のゲーム要素のグラフィカル表現を提供するように前記ユーザインタフェースを制御するように構成されたプロセッサと
を有し、
前記ユーザインタフェースは、ゲームボードを前記ゲーム要素に関連付けられたタイルの選択可能な物理特性の異なる2つのセクションに分割表示するものであり、
1つ以上の前記ゲーム要素の移動が、その移動の方向を制御する選択可能な前記物理特性によって制御される、コンピュータデバイス。」(以下「本願発明」という。)


第3 原査定の拒絶の理由
拒絶査定の理由である、平成30年11月26日付けの拒絶理由通知の理由は、次のとおりのものである。

(進歩性)この出願の請求項1?30に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記1の発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.Trism : Upcoming iPhone Game by Demiforce、YouTube[Online]、2008年2月26日、インターネットURL<https://www.youtube.com/watch?v=hy0ptZisr70>、2018年11月22日検索


第4 当審の判断
1 引用例
原査定の拒絶の理由において引用され、本願の優先日前の2008年2月26日に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった「Trism : Upcoming iPhone Game by Demiforce、YouTube[Online]、2008年2月26日、インターネットURL<https://www.youtube.com/watch?v=hy0ptZisr70>、2018年11月22日検索」(以下「引用例」という。)には,以下の事項が記録されていると認定することができる。
なお、画面の左下部に表示される「○:○○/3:42」は、「再生開始からの経過時間(分秒)/総再生時間(3分42秒)」を表示したものであることは明らかであるところ、以下、各認定事項は、再生開始からの経過時間(分秒)の各時点での静止画に基づき認定する。
また、表示される画像中の絵柄や文字は、ある一定時間表示されるものもあるが、この審決の認定において、必ずしも最初に表示された時点での経過時間に対応させて認定しているものではなく、このゲームの内容を表現するにあたり、当審で適切であると認定した時点に対応させて認定したものである。
さらに、認定した事項は、瞬間的な画像の表示内容以外にも、画像の表示内容の変化(時系列を伴うもの)も含まれる。
(1)「Trism : Upcoming iPhone Game by Demiforce」(タイトル)
(2)「0:04/3:42
四角い黒いデバイスの画面には、複数のアイコンが表示されている。」
(3)「0:09/3:42?0:22/3:42
ユーザの指で画面のtrismとの文字が下に表示されたアイコンをタッチすると、アイコンが全面に表示され、さらに、画面の右下をタッチすると、ブロックが表示された画面が表示される。
ブロックが画面に表示された画面は、赤・黄・橙・緑・青・紫の6色の三角形ブロックが、上向き三角形ブロック5個と下向き三角形ブロック4個とが互い違いに9個横に並んだ列と、下向き三角形ブロック5個と上向き三角形ブロック4個とが互い違いに9個横に並んだ列とが、上下方向に互い違いに8列並んで構成される。」
(4)「0:32/3:42?0:40/3:42
ユーザが赤い三角形ブロックにタッチし、該赤い三角形ブロックの左斜辺の方向(右上から左下方向)にスライドすると、該赤い三角形ブロックを含む該赤い三角形ブロック左斜辺の方向の複数の三角形ブロックがスライド方向と同方向に移動する。」
(5)「0:40/3:42?0:42/3:42
複数の三角形ブロックの移動の結果、3個の赤い三角形ブロックが並ぶと、該3個の赤い三角形ブロックが消え、該消えた赤い三角形ブロックのうちの2個分のスペースに左上から三角形ブロックの右斜辺の方向に複数の三角形ブロックがスライドして移動する。」
(6)「0:49/3:42?0:58/3:42
ユーザが四角い黒いデバイスの左上角より右上角が上になるように回転させ、青い三角形ブロックを青い三角形ブロックの右斜辺方向にスライドさせ、該青い三角形ブロックを含む該青い三角形ブロック右斜辺の方向の複数の三角形ブロックがスライド方向と同方向に移動し、3個の青い三角形ブロックが並ぶと、該3個の青い三角形ブロックが消え、該消えた青い三角形ブロックのうちの2個分のスペースに右上から三角形ブロックの左斜辺の方向の複数の三角形ブロックがスライドして移動する。」
(7)「1:05/3:42?1:15/3:42
ユーザが四角い黒いデバイスの右辺が上になるように回転させ、青い三角形ブロックを鉛直方向にスライドさせ、3個の青い三角形ブロックが並ぶと、該3個の青い三角形ブロックが消え、該消えた青い三角形ブロックのうちの2個分のスペースに鉛直方向上から複数の三角形ブロックがスライドして移動する。」
(8)上記(3)乃至(6)より、タイトルにあるゲーム「Trism」は、四角い黒いデバイス上で動作するものと認められる。
(9)四角い黒いデバイスの画面に表示されているのは、ゲーム「Trism」のゲーム空間であるといえる。
(10)上記(6)より、3個の同色三角形ブロックが並ぶと、該3個の同色三角形ブロックは消え、該3個の同色三角形ブロックが消えた3個のスペースには、四角い黒いデバイスの鉛直方向に沿った、三角形ブロックの斜辺方向に複数の三角形ブロックがスライドして移動するものと認められる。
(11)上記(6)及び(7)より、消えたスペースへの三角形ブロックの移動は、四角い黒いデバイスの回転方向に依らず、鉛直方向に沿った、三角形ブロックの斜辺方向であると認められる。
(12)上記(3)乃至(11)より、ゲーム「Trism」のゲーム内容は、
赤・黄・橙・緑・青・紫の6色の三角形ブロックが、上向き三角形ブロック5個と下向き三角形ブロック4個とが互い違いに9個横に並んだ列と、下向き三角形ブロック5個と上向き三角形ブロック4個とが互い違いに9個横に並んだ列とが、上下方向に互い違いに8列並んだゲーム空間が画面に表示され、
画面上で、ユーザが三角形ブロックにタッチし、該三角形ブロックの斜辺の方向にスライドすると、該三角形ブロックを含む該三角形ブロック斜辺の方向の複数の三角形ブロックがスライド方向と同方向に移動し、
画面上で、3個の同色三角形ブロックが並ぶと、該3個の同色三角形ブロックは消え、該3個の同色三角形ブロックが消えた3個のスペースには、四角い黒いデバイスの回転方向に依らず、鉛直方向に沿った、三角形ブロックの斜辺方向に複数の三角形ブロックがスライドして移動するものと認められる。

そうすると、上記(1)乃至(12)の認定事項から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)を把握することができる。
「ゲーム『Trism』が動作する四角い黒いデバイスであって、
ゲーム『Trism』は、
赤・黄・橙・緑・青・紫の6色の三角形ブロックが、上向き三角形ブロック5個と下向き三角形ブロック4個とが互い違いに9個横に並んだ列と、下向き三角形ブロック5個と上向き三角形ブロック4個とが互い違いに9個横に並んだ列とが、上下方向に互い違いに8列並んだゲーム空間が画面に表示され、
画面上で、ユーザが三角形ブロックにタッチし、該三角形ブロックの斜辺の方向にスライドすると、該三角形ブロックを含む該三角形ブロック斜辺の方向の複数の三角形ブロックがスライド方向と同方向に移動し、
画面上で、3個の同色三角形ブロックが並ぶと、該3個の同色三角形ブロックは消え、該3個の同色三角形ブロックが消えた3個のスペースには、四角い黒いデバイスの回転方向に依らず、鉛直方向に沿った、三角形ブロックの斜辺方向に複数の三角形ブロックがスライドして移動するものである、
四角い黒いデバイス。」

(2)対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、
後者の「ユーザ」は、前者の「ユーザ」に相当する。
後者の「三角形ブロック」は、ゲーム「Trism」の画面に表示され、ユーザのタッチとスライド操作で移動するものであって、ユーザが操作するものといえるから、前者の「『ユーザゲーム要素』及び『ゲーム要素』」に相当する。
後者の「画面」には、三角形ブロックが表示され、ユーザは、「画面」に対して、表示された三角形ブロックに対するスライド操作を行い、「画面」に表示された三角形ブロックはスライド移動するものであるから、後者の「画面」は、前者の「ユーザ入力を検出するように構成されたユーザインターフェース」に相当する。
後者の「3個の同色三角形ブロックが並ぶ」とは、ユーザが三角形ブロックにタッチしスライドさせて生じるゲーム場面の状態といえるから、前者の「検出されたユーザ入力を受信」した「ゲーム状態」に相当する。
後者のゲーム「Trism」は、「3個の同色三角形ブロックが並ぶと、該3個の同色三角形ブロックは消え」るものであって、画面に「3個の同色三角形ブロックは消え」る画像を表示するものであるから、前者の「ゲーム状態を検出すると1つ以上のゲーム要素のグラフィカル表現を提供する」に相当する。
後者の「四角い黒いデバイス」は、ゲーム「Trism」が動作するものであるから、前者の「コンピュータデバイス」に相応する。
後者の「四角い黒いデバイス」の画面上では、ユーザのタッチ及びスライドに応じて、三角形ブロックが移動し、3個の同色三角形ブロックが並ぶと、該3個の同色三角形ブロックは消えるのであるから、前者の「コンピュータデバイス」と後者の「四角い黒いデバイス」とは、ユーザインターフェースを制御するように構成されたプロセッサを有している点で共通する。
後者の「ゲーム空間」は、画面に表示されるものであるから、前者の「ゲームボード」と後者の「ゲーム画面」とは、ユーザインタフェースに表示されるものとの概念で共通する。
後者の「スペース」には、三角形ブロックがスライド移動するものであることから、後者の「スペース」は前者の「ゲーム要素に関連付けられたタイル」に相当する。
後者の「三角形ブロック」は、四角い黒いデバイスの鉛直方向に沿った、三角形ブロックの斜辺方向に複数の三角形ブロックがスライドして移動するものであり、また、後者の三角形ブロックが消えたスペースへの三角形ブロックの移動は、四角い黒いデバイスの回転方向に依らず、鉛直方向に沿って移動するものであるところ、四角い黒いデバイスを回転することにより、画面上での移動方向を選択的に制御し得るものであるから、前者の「1つ以上のゲーム要素」と後者の「三角形ブロック」とは、「その移動の方向を制御する選択可能な物理特性によって制御される」との概念で共通する。

したがって、両者は、
「ユーザゲーム要素を表示し、ユーザがゲーム要素を操作した場合にユーザ入力を検出するように構成されたユーザインタフェースと、
検出されたユーザ入力を受信し、ゲーム状態を検出すると1つ以上のゲーム要素のグラフィカル表現を提供するように前記ユーザインタフェースを制御するように構成されたプロセッサと
を有し、
前記ユーザインタフェースは、ゲームボードを表示するものであり、
1つ以上の前記ゲーム要素の移動が、その移動の方向を制御する選択可能な前記物理特性によって制御される、コンピュータデバイス。」
の点で一致し、以下の点で、一応、相違する。

[相違点]
本願発明は、前記ユーザインタフェースは、ゲームボードを「前記ゲーム要素に関連付けられたタイルの選択可能な物理特性の異なる2つのセクションに分割」表示するものであるのに対し、引用発明の画面は分割表示されるものではない点。

(3)判断
上記相違点について、以下、検討する。
「落ちものゲーム」において、ゲーム画面に表示されるプレイエリアを、ブロックが落ちる方向が異なる2つのプレイエリアに分割表示するものは、本願の優先日前に周知のものである(例えば、「インターネットで手に入れる Windowsオンラインソフトの世界 落ちものゲームをさらに進化させたパズルアクションゲーム AntiGravity 1.3、PC USER 第10巻 第4号、ソフトバンクパブリッシング株式会社、2003年3月8日、第10巻第4号、p.94」(以下「周知技術」という。))
ここで、引用発明も、前記周知技術も、ゲーム分野における「落ちものゲーム」に属するゲームである点で共通する。
そして、ユーザのゲーム没頭性を向上させることは、ゲーム分野において、自明の課題といえるものであって、引用発明も前記周知技術も、内在するものといえるから、引用発明に、前記周知技術を適用することは、当業者であれば、容易になし得るものである。
そして、引用発明の画面に表示された複数の三角形ブロックが表示された「ゲーム画面」に、前記周知技術を適用すると、引用発明の「ゲーム画面」は、三角形ブロックが移動する方向が異なるゲーム画面が分割表示されることとなる。
ここで、本願発明の「タイルの選択可能な物理特性」について、その意味するところが定かでないところ、願書に添付した明細書の【0036】を参酌すると、タイルの物理特性はタイルが位置するセクションの物理特性に依存するものであって、位置するセクションに基づいて物理特性が異なるとの意味に留まるものであると認められる。
してみると、前記周知技術のプレイエリアは、プレイエリア毎にブロックの落ちる方向が異なる、すなわち、プレイエリアの物理特性が異なる2つのプレイエリアを分割表示するものであるのだから、引用発明に前記周知技術を適用したゲーム画面は、物理特性の異なる2つのゲーム画面が分割表示されることとなり、各ゲーム画面の各スペースの物理特性は、各スペースが位置するゲーム画面の物理特性に依存することとなる。
してみると、上記相違点は、当業者であれば容易になし得るものといえる。

請求人は、ゲーム要素を提供する態様のグラフィカル表現は、物理特性を有するタイルによって選択的に規定される、旨主張する。
しかし、上記のとおり、引用発明の「各スペース」が本願発明の「タイル」に相当するところ、前記周知技術を適用すれば、「各スペース」の物理特性は、各スペースが位置するゲーム画面に物理特性に依存すること、すなわち、選択可能な物理特性を有するものとなるから、請求人の主張は採用できない。
また、請求人は、引用発明に、前記周知技術を適用すると、プレイすることが困難になる、旨出する。
しかし、上記周知技術は、ブロックが落ちる方向が異なる2つのプレイエリアに分割表示するものであるから、引用発明に、適用した際、引用発明の一方のゲーム画面は、重力方向に三角形ブロックがスライドするものの、他方のゲーム画面は、落ちる方向が異なる、すなわち、重力方向とは反対方向に三角形ブロックがスライドすることとなるから、プレイすることが困難になるものではない。
よって、請求人の主張は採用できない。

そして、本願発明の発明特定事項によって奏される効果も、引用発明及び上記周知技術から、当業者が予測し得る範囲内のものである。
したがって、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲
 
審理終結日 2020-09-29 
結審通知日 2020-10-02 
審決日 2020-10-19 
出願番号 特願2016-548669(P2016-548669)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 彦田 克文  
特許庁審判長 藤田 年彦
特許庁審判官 藤本 義仁
河内 悠
発明の名称 コンピュータデバイスのユーザインタフェースの制御  
代理人 小川 護晃  
代理人 奥山 尚一  
代理人 松島 鉄男  
代理人 有原 幸一  
代理人 西山 春之  
代理人 関谷 充司  

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