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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01B
管理番号 1371567
審判番号 不服2020-6974  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-05-22 
確定日 2021-03-25 
事件の表示 特願2018-510023「送電ケーブルの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月12日国際公開、WO2017/175270、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年4月4日を国際出願日とする出願であって、平成29年11月29日に国内書面が提出され、令和1年11月29日付けで拒絶理由が通知され、それに対して令和2年2月7日付けで手続補正がなされたが、同年2月19日付けで拒絶査定がなされ、それに対して同年5月22日に拒絶査定不服の審判請求がされ、その審判の請求と同時に手続補正がされたものである。

第2 原査定の理由の概要
原査定(令和2年2月19日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)
・請求項 1-7
・引用文献等 1-4

<引用文献等一覧>
1.特表昭62-501201号公報
2.特開2005-310664号公報
3.特開昭61-133505号公報
4.高分子大辞典,丸善株式会社,1986年 9月20日,p.3-p.5

第3 本願発明
本願の請求項1?7に係る発明は、令和2年5月22日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載された事項により特定される発明であり、本願の請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、以下のとおりの発明である。

「【請求項1】
導体と、前記導体の外周に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の外周に設けられた外部半導電層とを備えた送電ケーブルの製造方法において、
前記導体の外周に、前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物及び前記外部半導電層用の半導電性樹脂組成物を同時に押出して、前記絶縁層及び前記外部半導電層を形成する工程と、
該工程の後、前記絶縁層及び前記外部半導電層をともに架橋する架橋工程とを含み、
前記絶縁層及び前記外部半導電層を形成する工程において、
前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物は、ベース樹脂であるエチレンプロピレンゴムに対して、架橋剤として過酸化物を添加した絶縁性樹脂組成物からなり、
前記外部半導電層用の半導電性樹脂組成物は、ベース樹脂である前記エチレンプロピレンゴムとは極性が異なる樹脂に対して、前記過酸化物とは架橋系が異なる架橋剤を添加した半導電性樹脂組成物からなる
送電ケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記過酸化物とは架橋系が異なる前記架橋剤は、アミンである請求項1に記載の送電ケーブルの製造方法。
【請求項3】
前記半導電性樹脂組成物に含有される前記エチレンプロピレンゴムとは極性が異なる前記樹脂は、エチレンアクリルゴムである請求項1又は請求項2に記載の送電ケーブルの製造方法。
【請求項4】
導体と、前記導体の外周に設けられた内部半導電層と、前記内部半導電層の外周に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の外周に設けられた外部半導電層とを備えた送電ケーブルの製造方法において、
前記導体の外周に、前記内部半導電層用の半導電性樹脂組成物、前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物及び前記外部半導電層用の半導電性樹脂組成物を同時に押出して、前記内部半導電層、前記絶縁層及び前記外部半導電層を形成する工程と、
該工程の後、前記内部半導電層、前記絶縁層及び前記外部半導電層をともに架橋する架橋工程とを含み、
前記内部半導電層、前記絶縁層及び前記外部半導電層を形成する工程において、
前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物は、ベース樹脂であるエチレンプロピレンゴムに対して、架橋剤として過酸化物を添加した絶縁性樹脂組成物からなり、
前記外部半導電層用の半導電性樹脂組成物は、ベース樹脂である前記エチレンプロピレンゴムとは極性が異なる樹脂に対して、前記過酸化物とは架橋系が異なる架橋剤を添加した半導電性樹脂組成物からなる
送電ケーブルの製造方法。
【請求項5】
前記内部半導電層は、エチレンプロピレンゴムをベース樹脂として含有する半導電性樹脂組成物からなる請求項4に記載の送電ケーブルの製造方法。
【請求項6】
前記過酸化物とは架橋系が異なる前記架橋剤は、アミンである請求項4又は請求項5に記載の送電ケーブルの製造方法。
【請求項7】
前記半導電性樹脂組成物に含有される前記エチレンプロピレンゴムとは極性が異なる前記樹脂は、エチレンアクリルゴムである請求項4乃至請求項6のいずれかに記載の送電ケーブルの製造方法。」

第4 引用文献
1.引用文献1・引用発明
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。(下線は当審により付与した。以下、同様)

「1.ポリマーベース材料の少なくとも3つの押出し層(3,4,5)で構成される積層構造物において、第1層(3)と第2層(5)の間の中間層(4)は第1層(3)に対しては剥離しうるように結合されそして第2層(5)に対しては完全に結合されるので第2層は実質的に総ての中間層(4)と共に第1層(3)から容易に剥離しうる積層構造物。
2.電気心導体(1)の回りに押出される請求の範囲第1項に記載する積層構造物で構成される絶縁ケーブルにおいて、押出される層(3,4,5)が電気導体(1)の回りに実質的に同軸的に配置され;第1層(3)が絶縁材料の内部層であり中間層(4)が絶縁材料かまたは半導体防護材料でありそして第2層(5)が半導体防護材料の外側層である絶縁ケーブル。
・・・中略・・・
9.電気導体(1)の回りに少なくとも3層の硬化しうるポリマーベース材料(3,4,5)を押出しそして次にケーブルを硬化させるので中間層(4)が第2層(5)と完全に結合するようになりそして第1層(3)に剥離しうるように結合することで構成する請求の範囲第2項に記載の絶縁ケーブルを製造する方法。
10.電気導体(1)の回りに少なくとも3層のポリマーベース材料(3,4,5)を押出し第1層(3)および第2層(5)は過酸化物交叉結合剤を含有し、中間層は過酸化物交叉結合剤を含有せずそして次にケーブルを硬化させるので中間層が第1層(3)および/または第2層(5)からの過酸化物交叉結合剤の拡散によつて硬化して第2層(5)と完全に結合するようになりそして第1層(3)に剥離しうるように結合することで構成する請求の範囲第2項に記載する絶縁ケーブルの製造方法。」(【特許請求の範囲】)

「本発明の好ましい具体化において第1層の絶縁材料は一般に、例えば、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、EPRまたはEPDM、これは好ましくは交叉結合している、を含む周知の主要絶縁材料から選ばれる。
好ましい具体化において半導体防護の外側層を構成する層(即ち第2層)は好ましくは交叉結合しそして中間層に完全に結合することができる何れの好適なポリマー組成物からも加工できる。第2層をつくるのに使用するための好適なポリマーの実例が低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、高密度ポリエチレン、EPDMおよびこれら材料の配合物である。
前に示したように、第1層の絶縁材料および第2層の半導体防護材料は好ましくは交叉結合性材料からつくられる。従って、第1および/または第2層として用いるためにつくられるポリマーベース材料は、例えばベースポリマーと過酸化物交叉結合剤で構成される過酸化物交叉結合性組成物である。第1および/または第2層用に好適なポリマーにはまたシリル変性ポリマーを含みこれは水/シラノール縮合触媒による処理によって交叉結合することができる。シリル変性ポリマーには、例えば、エチレンと不飽和シラン化合物とのコポリマー;不飽和加水分解性シラン化合物をポリエチレンまたはその他の好適なポリマーにグラフト結合させてつくられるグラフトポリマー;またはエステル交換によってその中に導入された加水分解性基を有するポリマーを含む。第1および/または第2層を加工するのに使用するポリマー組成物がシリル変性ポリマーを含む場合には、組成物は好ましくは好適な量のシラノール縮合触媒を含む。シリル変性ポリマーを使用することを望むときは、これは、例えば、ベースポリマーを過酸化物グラフト結合開始剤、加水分解性不飽和シランおよびシラノール縮合触媒で構成される組成物と共に押出し機に供給する周知のモノシル(Monosil)法を使用して現場で生じさせることができる。
好ましくは、単に1つの交叉結合段階が要求されるように各層に対して同一の交叉結合方法が使われる、例えば、総ての層が過酸物交叉結合されるまたは総てがシラン交叉結合される。
第2層に対する組成物を半導体性にするには組成物中に導電性材料を含めることが必要である。半導体防護組成物中にカーボンブラックを用いることはこの技術では周知でありそしてファーネスブラックおよびアセチレンブラックを含めて何れのそのようなカーボンブラックの何れの好適な形のものも本発明に使うことができる。
本発明中に使用する中間層は半導体層または絶縁層の何れでもよい。中間層の材料は第2層とは完全に結合するが第1層とは剥離しうる結合を形成することができるように選ばれることが本発明に不可欠の特徴である。従って中間層に対する好適な材料の選択は主として第1および第2層の性質、および少ない程度にケーブルが加工される方法によって決まる。
中間層の加工に適した望ましい剥離性特性を有するポリマー組成物は、例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、アクリロニトリルゴム、上に言及したポリマーのアロイまたはこれらのコポリマーと低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンとの配合物である。
中間層として使用するために特に好適であることが判明した組成物はエチレン/酢酸ビニルおよびアクリロニトリルゴムで構成される配合物である。好ましくはそのような組成物の酢酸ビニル含量はエチレン/酢酸ビニルコポリマーおよびアクリロニトリルゴムの全重量を基にして少なくとも28重量%そして好ましくは30から45重量%までである。もしも中間層が半導体であることを必要とするならば、組成物中に、例えば、カーボンブラックのような導電性材料を含めることが必要である。そのような半導体組成物は市場で入手できる、例えばBPケミカルズによってBPH310ESおよびBPH315ESの商品名によって販売されるものである。しかし、電気ケーブル中の絶縁層に剥離しうるように結合される層は半導体である必要はないというのが本発明の特徴である。半導体でなく中間層としての使用に好適な組成物もまた市場で入手できる、例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマーであり;ICI/ATOによって販売されるエバテーン(EVATENE)、バイエル アンド カンパニー(Bayer&Co.)によって販売されるレバプレン(LEVAPREN)、ATOによって販売されるオレバク(OREVAC)およびエッソ ケミカルズ(Esso Chemicals)によって販売されるエスコレン(ESCORENE)がある。エバテーン、レバプレン、オレバクおよびエスコレンは商標である。中間層として使われるポリマーベース材料は交叉結合させることができる。
種々の層に対する材料は与えれたような既知の材料から容易に選ぶことができる、しかし選ばれる材料が何れの個々の適用に対しても要求される接着力を与えることを確実にするために試行錯誤実験が要求されるであろう。
好ましくは諸層を形成するポリマー組成物は、ケーブルに加工した後に(何れの交叉結合段階も含めて)第2層を実質的に総ての中間層と一緒にして第1層から剥離するのに要する力がエレクトリシテ ド フランス(Electricite de France)(EdF)からのフランス標準HN33-S-23によって測定して1cmストリップにつき0.5から8kgまでの範囲に存在するように選ばれる。
第2層の厚さ対中間層の厚さの比は好ましくは10:1から1:1までの範囲である。一般目的の中間および高電圧ケーブルに対しては、中間層の絶対厚さは一般に0.01から2.0mmまで、好ましくは0.1から0.5mmまでの範囲に存在するであろう。上に示したように、中間層は好ましくは交叉結合される。しかし、本発明において好まれるような比較的薄層のポリマーベース材料はその層が過酸化物交叉結合剤を含有し「スコーチ」、即ち早期交叉結合をする傾向がある。本発明の具体化においては、第1および2層は過酸化物交叉結合剤を含有し、中間層として使われるポリマーベース材料はそれ自身は過酸物交叉結合剤を含まない、しかし第1および第2層からの交叉結合剤の拡散によって交叉結合される。
絶縁層および半導体層は通例の手段によって、例えばタンデム押出しまたは同時押出し技法によってケーブルに対し適用することができる。好ましくは第1、中間および第2層は同時に同時押出しされる。好ましくはケーブルは好ましい具体化に従えば金属の芯導体が追加の半導体防護層によって囲まれこの追加の半導体層に対して第1、中間および第2層が同時に同時押出しされて構成される。
電導体および絶縁材料の第1層の間の好ましい追加の半導体防護材料の層は通例の材料が可能である。好都合なのは、好ましい追加の半導体防護材料の層は外側の層(即ち、第2層)の半導体防護層と同一組成を有する。
本発明に従った絶縁ケーブルは例えば中性導体、外装した被覆および天候防護覆いのようなその他の通例の層を有してもよい。」(第3頁左上欄第25行-第4頁左下欄第4行)

上記記載事項から、請求項10に記載された「絶縁ケーブルを製造する方法」について次のことがいえる。
(1)第1層(3)の絶縁材料は、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、エチレンプロピレンゴム、EPDMゴムおよびそれらの配合物から選ばれる。
(2)中間層の加工に適した望ましい剥離性特性を有するポリマー組成物は、例えば、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、アクリロニトリルゴム、これらのポリマーのアロイまたはこれらのコポリマーと低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンとの配合物である。
(3)好ましくは第1、中間および第2層は同時に同時押出しされる。

上記(1)-(3)によれば、引用文献1には、請求項10に記載された「絶縁ケーブルを製造する方法」について、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「電気導体(1)の回りに少なくとも3層のポリマーベース材料(3,4,5)を同時に押出し、第1層(3)が絶縁材料の内部層であり、絶縁材料は、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、EPRまたはEPDMを含む周知の主要絶縁材料から選ばれ、中間層(4)が絶縁材料かまたは半導体防護材料であり、中間層(4)の加工に適した望ましい剥離性特性を有するポリマー組成物は、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、アクリロニトリルゴム、これらのポリマーのアロイまたはこれらのコポリマーと低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンとの配合物であり、そして第2層(5)が半導体防護材料の外側層であって、第1層(3)および第2層(5)は過酸化物交叉結合剤を含有し、中間層(4)は過酸化物交叉結合剤を含有せずそして次にケーブルを硬化させるので中間層が第1層(3)および/または第2層(5)からの過酸化物交叉結合剤の拡散によって硬化して第2層(5)と完全に結合するようになりそして第1層(3)に剥離しうるように結合することで構成する絶縁ケーブルの製造方法。」

2.引用文献2
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【技術分野】
【0001】
本発明は、電線とその製造方法に関するものである。特に、端末処理時に半導電層と絶縁層とを容易に剥離することができる電線とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から自動車のワイヤハーネス用電線として、図3に記載のものが知られている。これは中心側から順に導体10、絶縁層30、シールド層50、シース60を具えている(例えば特許文献1参照)。このような電線は、通常の内燃機関を用いた自動車は勿論、電気自動車やハイブリッド車などにも利用されている。
【0003】
特に、電気自動車やハイブリッド車などに利用される電線では、一層の耐高圧化が求められている。例えば、高圧化に伴う部分放電の抑制策として、絶縁層の内側および外側の少なくとも一方に半導電層を設けることが考えられる。
【0004】
この半導電層は、部分放電抑制の観点からは、ボイドがなく絶縁層と密着していることが必要であるが、端末処理時には、電線の被覆層を段剥ぎする必要上、半導電層が絶縁層から容易に剥離できることが好ましい。
【0005】
一般の電力ケーブルなどにおける半導電層は絶縁層と共に押出被覆され、1回の架橋工程にて絶縁層と半導電層とを架橋する手法がとられている。
・・・中略・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記の半導電層の形成技術では、絶縁層と半導電層との高い密着力が得られるものの、端末処理時に半導電層を絶縁層から剥離することが難しいという問題があった。
【0008】
絶縁層と半導電層を同時押出して、両層を1回の架橋工程で架橋すると、両層間も架橋されるため密着力が高まり、互いの層を端末処理時に容易に剥離することができなくなる。
【0009】
従って、本発明の主目的は、端末処理時に各被覆層の剥離を容易にできる電線を提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、端末処理時に各被覆層の剥離を容易にできる電線の製造方法を提供することにある。」

「【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、端末処理時に剥離したい2層の架橋度を異ならせることで上記の目的を達成する。
【0012】
すなわち、本発明電線は、導体と、導体の外方に互いに隣接して配されると共に架橋可能な材料で形成される第一被覆層と第二被覆層とを有する電線であって、第一被覆層と第二被覆層の架橋度が異なることを特徴とする。
【0013】
この電線は、代表的には、中心から外周側に向かって順に、導体、内部半導電層、絶縁層、外部半導電層、シールド層、シースからなる。このうち、内部半導電層または外部半導電層のいずれかを省略しても良い。そして、例えば、絶縁層を第一被覆層、外部半導電層を第二被覆層とする。
【0014】
本発明電線の導体は、必要な送電容量が確保できるものであればよく、特に材質・構成が限定されるわけではない。材質としては、銅線、錫めっき銅線、アルミ線、アルミ合金線、鋼心アルミ線、カッパーフライ線、ニッケルめっき銅線、銀めっき銅線、銅覆アルミ線などが挙げられる。導体の構成としては、単線とより線が考えられるが、一般に複数の素線をより合せたより線構造が好適である。
【0015】
絶縁層は電線の電圧に応じた耐電圧性を具える構成とする。絶縁層の材質としては、架橋可能な材料で構成する。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルが好適である。この絶縁層は押出して形成すれば良い。
【0016】
半導電層、つまり内部半導電層と外部半導電層は、ベース樹脂と導電性フィラーとの混合物で構成することが好ましい。導電性フィラーの混合により、所定の導電率を半導電層に付与することができる。ベース樹脂は架橋可能な材料、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどが望ましい。フィラーはカーボンブラックが好適に利用できる。
【0017】
絶縁層や半導電層のベース樹脂がポリエチレンの場合、架橋剤としては、例えばジクミルパーオキサイド、1,3-ビス(ターシャリブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(P-14)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ターシャリブチルパーオキシ)ヘキシン-3(カヤヘキサYD)等が挙げられる。これらの架橋剤は一種または二種以上の混合物として使用してもよい。この架橋剤の配合量は、得られる絶縁体の使用目的等によって適宜決められ、特に限定されない。好ましい配合量としては、ポリエチレン100重量部に対し1.5?2.5重量部程度である。
【0018】
この場合の架橋助剤としては、例えばトリアリルイソシアヌレート、N,N’-メタフェニレンジマレイミド、トリアリルシアネート、ジアリルフタレート等が挙げられる。これらは一種または二種以上の混合物として使用することができる。この架橋助剤の配合量は、ポリエチレン100重量部に対し0.2?3.0重量部程度が好ましい。
【0019】
ベース樹脂がポリプロピレンの場合、架橋剤としては、例えばt-ブチルクミルパーオキサイド、2,5ジメチル-2,5ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などが好ましい。これらの架橋剤は一種または二種以上の混合物として使用してもよい。この架橋剤の配合量は、ポリプロピレンの合計量に対して0.2?5重量部が好ましい。
【0020】
この場合の架橋助剤としては、キノンジオキシム、トリアリルトリメリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレートなどが利用できる。これらの架橋助剤の添加割合は、樹脂成分の合計量100重量部に対して0.2?5重量部程度が好ましい。
【0021】
ベース樹脂がポリ塩化ビニルの場合、架橋剤としては、イソシアネート化合物が利用できる。イソシアネート化合物としては、イソシアネートモノマーや、ポリイソシアネート等を主体とする化合物を挙げることができる。
【0022】
この場合の架橋助剤は、金属塩を主体とする化合物が利用できる。具体例としては、例えばラウリン酸、ステアリン酸、ナフテン酸、リシノレイン酸、オクチル酸、バリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、鉛、スズ、カドミウム、亜鉛等の金属塩を挙げることができる。」

「【0027】
一方、本発明電線の製造方法は、導体の外方に架橋可能な材料からなる第一被覆層と第二被覆層とを互いに隣接して形成する電線の製造方法である。このような製造方法において、架橋方法に応じて異なる手法を採用することで、第一被覆層と第二被覆層の架橋度を異ならせることを特徴とする。
【0028】
架橋度を各被覆層で異ならせるには、架橋方式が放射線架橋方式の場合、放射線の照射量を変えることで、架橋方式が化学架橋方式の場合、架橋剤の種類および含有量、架橋助剤の種類および含有量の一つ以上を異ならせることで実現できる。もちろん、これら両手法を併用することで、両被覆層の架橋度を異ならせても良い。なお、化学架橋方式の場合、蒸気架橋、熱線架橋、水架橋など種々の架橋方式が利用できる。
【0029】
まず、放射線架橋方式の場合、照射する放射線、例えば電子線やγ線の照射量を第一被覆層と第二被覆層で変える。この放射線架橋方式を行う場合、第一被覆層と第二被覆層とは独立して押出して形成し、各押出ごとに放射線の照射を行なえば良い。例えば、絶縁層上に外部半導電層を形成する場合、まず押出で絶縁層を形成し、この絶縁層に放射線を照射して架橋させ、架橋された絶縁層上に押出で外部半導電層を形成して、さらに外部半導電層に放射線を照射して架橋させる。その際、絶縁層と外部半導電層とで放射線の照射量を変えることにより、両層の架橋度を変えればよい。
【0030】
次に、化学架橋方式の場合、架橋される被覆材料に応じて種々の種類の架橋剤や架橋助剤が利用されるため、各種架橋剤、架橋助剤の種類、含有量の少なくとも一つを調整して各被覆層の架橋度を変えればよい。」

3.引用文献3
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「本発明の難燃性電気絶縁物は、ハロゲン元素を含まないモノオレフィン共重合体ゴムとハロゲン元素を含まないポリオレフィン系樹脂とのブレンド物を動的に部分架橋した熱可塑性ブレンド100重量部に対して、金属加水酸化物を50重量部以上含有する樹脂組成物により構成したものである。
本発明において、ハロゲン元素を含まないモノオレフィン共重合体ゴムは、2種以上のモノオレフィンあるいはそれにさらに共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた本質的に無定形でランダムな弾性共重合体である。
2種のモノオレフィンを用いるのが普通であるが、3種以上用いることもありうる。
通常モノオレフィンの一方はエチレンであり、他方はプロピレンであることが好ましく、エチレン/プロピレンの重量比が80/20ないし20/80であることが多い。
しかし、他のα-モノオレフィンも使用でき、式CH2=CHR(ただし、Rはたとえば1?12個の炭素原子を有するアルキル基である)で表されるα-モノオレフィン(たとえば、ブテン-1,ペンテン-1,ヘキセン-1,1,4-メチルペンテン-1,5-メチルヘキセン-1など)も含まれる。
モノオレフィン共重合ゴムは、エチレン-プロピレン二成分共重合体ゴム(EPM)のような飽和物であってもよいが、共重合体中に少量(たとえば2?20重量%)の少なくとも1種の共重合しうるポリエンを含有して共重合体に不飽和性を付与することが通常好ましく、実用上は1,4-ヘキサジエン,ジシクロペンタジエン,エチリデンノルベルネン等を用いるのが普通である。
ポリエンは、二重結合を2個もつものに限定されるものではなく、3個以上もつものも含まれる。不飽和三成分共重合体ゴム(EPDM)を基としたブレンド物が最も好ましい。
モノオレフィン共重合体ゴムとブレンドされるヒロゲンを含まないポリオレフィン系樹脂としては、エチレン,プロピレン,ブテン-1,ペンテン-1,1,4-メチルペンテン-1等のオレフィンを常法で重合して得たものである。したがって、ポリエチレン(低密度,中密度,高密度のいずれでもよい)、ポリプロピレン,エチレンとプロピレンの結晶性ブロック共重合体等があげられる。
本発明においては、モノオレフィン共重合体ゴムとポリオレフィン系樹脂とのブレンド割合は広く変えることができ、モノオレフィン共重合体ゴム/ポリオレフィン系樹脂のブレンド重量比は、50?90(好ましくは60?80)/50?10(好ましくは40?20)が適当であり、ブレンド物の特性によって変化させうる。
本発明の重要な点は、モノオレフィン共重合体ゴムとポリオレフィン系樹脂のブレンド物を素練りしながら、すなわち剪断しながら部分架橋させて熱可塑性ブレンド物を得ることである。
部分架橋させるための架橋剤としては、パーオキサイドのようなフリーラジカル発生剤が一般に使用され、ジクミルパーオキサイド,2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン,芳香族ジアシルパーオキサイド,脂肪族ジアシルパーオキサイド,二塩基性酸パーオキサイド,ケトンパーオキサイド,アルキルパーオキシエステル,アルキルハイドロパーオキサイド等があげられる。
その他の架橋剤としては、α-エチル-βプロピルアクロレイン-アニリン等のアルデヒド-アミン反応生成物,ジフェニルグアニジン等のグアニジン類,亜鉛キサンテート等のキサンテート類,銅ジクチルジチオカーバメート等のジチオカーバメート類,2-メルカプトベンゾチアゾー等のイミダゾール類,N-シクロヘキシルベンゾチアゾール類,N-シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド類,テトラメチルチウラムジサルファイド等のチウラムジサルファイド類、またパラキノンジオキシム,ジベンゾパラキノンジオキシム等,ならびに硫黄等があげられる。
パーオキサイド架橋剤は単独で用いても良く、あるいは硫黄,ビスマレイン酸イミジ類をも含むマレイン酸イミド類,ポリ不飽和化合物(たとえばシアヌレート),アクリル酸エステル(たとえばトリメチロールプロパントリメタクリレート)等と併用してもよい。
硫黄を架橋剤として用いる場合には(元素上硫黄そのものであれ、硫黄供与体の形の硫黄であれ)、通常行われているように、硫黄加硫の促進剤および活性化剤(たとえば金属塩あるいは金属酸化物)を含有することが好ましい。
所望ならば、混合パーオキサイド型あるいは混合硫黄型架橋、たとえばジクミルパーオキサイド+2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)2,5-ジメチルヘキサンとか、硫黄+テトラメチルチウラムダイサルファイドを用いてもよい。
架橋剤の量ならびに架橋条件は部分架橋を生ずるにとどまるように選ぶ必要かあり、完全に架橋するに要する架橋剤の量の2/3以下、あるいは1/2以下、場合によっては1/4以下使用すれば、ブレンド物中に所望の程度の部分架橋を生ずる。」(第2欄第18行-第7欄第18行)

4.引用文献4
原査定の拒絶理由に引用された上記引用文献4には、次の事項が記載されている。
「アクリルエラストマー
Acrylic Elastomers
概 観 Survey
アクリルエラストマーのASTM命名法では、エチルアクリレートや他のアクリレートのポリマーは、ACM、エチルまたは他のアクリレートとアクリロニトリル(acrylonitorile)の共重合体はANMである。いずれの場合も、Mはポリメチレン型の飽和鎖をもつポリマーを示す。・・・
・・・中略・・・

添加剤

加 硫(vulcanization) 架橋サイトモノマーのタイプや組成はアクリルエラストマーの製品ごとに異なるので、特定のタイプに応じて異なった硬化(curing)系が開発されている。米国で製造されるアクリルエラストマーに主として用いられる最も一般的な硬化系は、セッケン-尿素,活性化チオール,鉛-チオ尿素,セッケン-硫黄(または硫黄ドナー),ジアミン,トリチオシアヌル酸である。代表的なセッケンはステアリン酸ナトリウムとカリウムであり、後者はより高い活性を有する。アクリル硬化系の大部分は性質として塩基性である。従って、酸によって阻害され、塩基によて加速される。」(アクリルエラストマー 3、4 アクリルエラストマー アクリルエラストマーの欄)

第5 対比・判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「電気導体(1)」は、本願発明1の「導体」に相当する。
(イ)引用発明の「第1層(3)」は、電気導体(1)の外周に形成され、絶縁材料の内部層であるから、本願発明1の「前記導体の外周に設けられた絶縁層」に相当するといえる。
(ウ)引用発明の「中間層(4)」は、絶縁材料の内部層である第1層(3)の外周に形成され、半導体防護材料でよいから、本願発明1の「前記絶縁層の外周に設けられた外部半導電層」と「前記絶縁層の外周に設けられた半導電層」である点では共通するといえる。
(エ)引用発明の「電気導体(1)の回りに少なくとも3層のポリマーベース材料(3,4,5)を同時に押出し」する構成は、本願発明1の「前記導体の外周に、前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物及び前記外部半導電層用の半導電性樹脂組成物を同時に押出して、前記絶縁層及び前記外部半導電層を形成する工程」と「前記導体の外周に、前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物及び前記半導電層用の半導電性樹脂組成物を同時に押出して、前記絶縁層及び前記半導電層を形成する工程」である点では共通するといえる。
(オ)引用発明の「電気導体(1)の回りに少なくとも3層のポリマーベース材料(3,4,5)を同時に押出し」、「次にケーブルを硬化させ」る構成は、「中間層(4)が第1層(3)および/または第2層(5)からの過酸化物交叉結合剤の拡散によって硬化」しており、第1層(3)も過酸化物交叉結合剤によって硬化することは明らかであるから、本願発明1の「該工程の後、前記絶縁層及び前記外部半導電層をともに架橋する架橋工程」と「前記工程の後、前記絶縁層及び前記半導電層をともに架橋する架橋工程」である点では共通するといえる。
(カ)引用発明の「第1層(3)が絶縁材料の内部層であり、絶縁材料は、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、EPRまたはEPDMを含む周知の主要絶縁材料から選ばれ、」「過酸化物交叉結合剤を含有」する構成は、本願発明1の「前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物は、ベース樹脂であるエチレンプロピレンゴムに対して、架橋剤として過酸化物を添加した絶縁性樹脂組成物」からなる構成と「前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物は、ベース樹脂に対して、架橋剤として過酸化物を添加した絶縁性樹脂組成物」からなる点では共通するといえる。
(キ)引用発明の「中間層の加工に適した望ましい剥離性特性を有するポリマー組成物は、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、アクリロニトリルゴム、これらのポリマーのアロイまたはこれらのコポリマーと低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンとの配合物」である構成は、本願発明1の「前記外部半導電層用の半導電性樹脂組成物は、ベース樹脂である前記エチレンプロピレンゴムとは極性が異なる樹脂に対して、前記過酸化物とは架橋系が異なる架橋剤を添加した半導電性樹脂組成物」からなる構成と「前記半導電層用の半導電性樹脂組成物は、前記ベース樹脂とは異なる樹脂の半導電性樹脂組成物」からなる点では共通するといえる。
(ク)引用発明の「絶縁ケーブルの製造方法」は、本願発明1の後述する相違点を除き、本願発明1の「送電ケーブルの製造方法」に一致するといえる。

(一致点)
「導体と、前記導体の外周に設けられた絶縁層と、前記絶縁層の外周に設けられた半導電層とを備えた送電ケーブルの製造方法において、
前記導体の外周に、前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物及び前記半導電層用の半導電性樹脂組成物を同時に押出して、前記絶縁層及び前記半導電層を形成する工程と、
該工程の後、前記絶縁層及び前記半導電層をともに架橋する架橋工程とを含み、
前記絶縁層及び前記半導電層を形成する工程において、
前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物は、ベース樹脂に対して、架橋剤として過酸化物を添加した絶縁性樹脂組成物からなり、
前記半導電層用の半導電性樹脂組成物は、前記ベース樹脂とは異なる樹脂の半導電性樹脂組成物からなる
送電ケーブルの製造方法。」

(相違点1)
半導電層について、本願発明1では「外部半導電層」であるのに対し、引用発明では、「中間層(4)」である点。

(相違点2)
本願発明1は、「前記絶縁層用の絶縁性樹脂組成物は、ベース樹脂であるエチレンプロピレンゴムに対して、架橋剤として過酸化物を添加した絶縁性樹脂組成物」からなるのに対し、引用発明は、「第1層(3)」の「絶縁材料は、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、EPRまたはEPDMを含む周知の主要絶縁材料から選ばれ、」それに対して、架橋剤として過酸化物を含有している点。

(相違点3)
半導電層用の半導電性樹脂組成物について、本願発明1では、「ベース樹脂である前記エチレンプロピレンゴムとは極性が異なる樹脂に対して、前記過酸化物とは架橋系が異なる架橋剤を添加した半導電性樹脂組成物」であるのに対し、引用発明では、「ポリマー組成物は、エチレン/酢酸ビニルコポリマー、エチレン/アクリル酸エチルコポリマー、アクリロニトリルゴム、これらのポリマーのアロイまたはこれらのコポリマーと低密度ポリエチレンまたは線状低密度ポリエチレンとの配合物」であり、「交叉結合剤を含有」していない点。

(2)判断
事案に鑑みて、先ず相違点2、3をまとめて検討する。
上記引用文献2には、「導体の外方に架橋可能な材料からなる第一被覆層と第二被覆層とを互いに隣接して形成する電線の製造方法において、架橋方式が化学架橋方式の場合、架橋剤の種類および含有量、架橋助剤の種類および含有量の一つ以上を異ならせることで第一被覆層と第二被覆層の架橋度を異ならせることにより第一被覆層と第二被覆層の剥離を容易にできる」という技術事項が記載されている。
しかしながら、引用発明は、「第1層(3)および第2層(5)は過酸化物交叉結合剤を含有し、中間層(4)は過酸化物交叉結合剤を含有せずそして次にケーブルを硬化させるので中間層が第1層(3)および/または第2層(5)からの過酸化物交叉結合剤の拡散によって硬化して第2層(5)と完全に結合するようになりそして第1層(3)に剥離しうるように結合する」ものであるから、引用発明において、上記引用文献2に示されている「第一被覆層と第二被覆層とを互いに隣接して形成する電線の製造方法において、第一被覆層と第二被覆層とで架橋剤の種類を異ならせる」という技術事項を適用する動機付けは認められない。
さらに、引用文献2には、絶縁層のベース樹脂が「エチレンプロピレンゴム」であり、かつ、架橋剤が「過酸化物」であること、及び半導電層のベース樹脂が「エチレンプロピレンゴムとは極性が異なる樹脂」であり、かつ、架橋剤が「前記過酸化物とは架橋系が異なる」ことは記載されておらず、仮に、引用発明に引用文献2記載の技術事項を適用できたとしても上記相違点2、3に係る本願発明1の構成には至らない。

引用文献3、4にも、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成は記載されておらず、示唆されてもいない。

また、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成が、本願出願前に周知技術であったとはいえない。

したがって、上記相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明および引用文献2-4記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

2.本願発明2-7について
本願発明2-7は、上記相違点2、3に係る本願発明1の構成と同様の構成を備えるものであるから、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても、引用発明および引用文献2-4記載の技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-11 
出願番号 特願2018-510023(P2018-510023)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 和田 財太  
特許庁審判長 加藤 浩一
特許庁審判官 辻本 泰隆
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 送電ケーブルの製造方法  

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