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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F17C
管理番号 1371573
審判番号 不服2020-9819  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-07-13 
確定日 2021-03-23 
事件の表示 特願2016-180630「圧縮気体供給システム」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 3月22日出願公開、特開2018- 44630、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年 9月15日の出願であって、令和 2年 1月20日付けで拒絶理由通知がされ、同年 3月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年 6月 3日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、同年 7月13日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。

この出願の請求項1?3に係る発明は、以下の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された技術的事項に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.米国特許出願公開第2015/0090226号明細書
2.特開2004-084540号公報
3.特開2012-154252号公報(周知技術を示す文献)

第3 本件補正について
1.補正の適否について
令和 2年 7月13日に提出した手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)によって、請求項1に「複数の前記圧縮機の全てから前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止され稼働している前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、」なる発明特定事項が追加された。

本件補正により請求項1に追加された事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「当初明細書等」という。)の段落【0041】及び【0042】に記載されているから、本件補正は、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものであり、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。

また、本件補正は、制御部が切り替える圧縮空気の供給状態を請求項1に追加するものであるから、同条第5項第2号に規定する特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものである。

そこで、補正後の請求項1?請求項3に係る発明(以下「本件補正発明1」?「本件補正発明3」という。)が同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。

2.本件補正発明
本件補正発明1?本件補正発明3は、令和 2年 7月13日提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?請求項3に記載された事項により特定される以下のとおりである。

「【請求項1】
気体を圧縮して圧縮気体を生成する複数の圧縮機と、
圧縮気体を貯蔵する容器本体と、前記容器本体の内部に設けられ、前記容器本体の内部の圧縮気体を吸着する吸着材と、を備える圧縮気体貯蔵容器と、
消費機器による圧縮気体の需要量を検出する圧縮気体需要量検出部と、
前記圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の残量を検出する圧縮気体残量検出部と、
前記圧縮気体需要量検出部の検出結果に基づいて、前記圧縮機及び前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止され稼働している前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、前記圧縮機が停止して前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止されると共に稼働している前記圧縮機のみから前記消費機器に圧縮空気が供給される状態と、前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵される状態と、に切り替える制御部と、
を備える圧縮気体供給システム。
【請求項2】
前記容器本体から吐出される圧縮気体について予め規定された圧力の最低値を最低利用圧力とした場合に、
前記吸着材は、前記容器本体の内部の圧縮気体の圧力が前記最低利用圧力以上で前記圧縮気体の吸着量が急増する材料で形成されている、
請求項1に記載の圧縮気体供給システム。
【請求項3】
前記圧縮気体は、圧縮空気であり、
前記吸着材を形成する材料は、多孔質材、ゼオライト、及び、金属錯体のいずれかである、
請求項2に記載の圧縮気体供給システム。」

3.引用文献に記載された事項
(1)引用文献1に記載された事項及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア「[0036] As depicted in FIG. 1, one embodiment is directed to an adsorbed gas fuel system (10) including an outlet (11) that may be fluidly connected to an internal combustion engine, an adsorbed gas container (12) containing adsorption particles and being fluidly connected to the internal combustion, and a compressor (13) fluidly connected to the internal combustion engine and the adsorbed gas container (12). The compressor (13) may be adapted remove gas from the adsorbed gas container (12). A control system (14) may be communicatively coupled to the compressor (13) to modulate an engine supply pressure, Pe, to the internal combustion engine. In some embodiments, the controller (14) may be connected to a pressure sensor (18) adapted to measure the engine supply pressure, Pe. The controller (14) may also be connected to a pressure sensor (17) for measuring a storage system pressure, Ps, and connected to a temperature sensor (16) for measuring a temperature of the storage system, Ts. In some embodiments, more or less sensors may be included as would be appreciated by one of ordinary skill in the art. The system may also include an inlet (15) that fluidly connects a gas fill line to the adsorbed gas container and the compressor.
[0037] In one embodiment, the compressor can modulate the pressure of the adsorbed gas container during filling. In another embodiment, the system includes an additional compressor for modulating the pressure of the adsorbed gas container during filling. The additional compressor can be on board a vehicle or external to a vehicle.」
(当審訳)
「[0036] 図1に示されるように、実施形態は、内燃機関に流体的に接続され得る出口(11)と吸着粒子を内蔵し内燃機関に流体的に接続され得る吸着ガス容器(12)を含む吸着ガス燃料システム(10)、および内燃機関と吸着ガス容器(12)に流体接続された圧縮機(13)に関する。圧縮機(13)は、吸着ガス容器(12)からガスを除去するように適合され得る。制御システム(14)は、圧縮機(13)に通信可能に結合されて、内燃機関へのエンジン供給圧力Peを調整することができる。いくつかの実施形態では、コントローラ(14)は、エンジン供給圧力Peを測定するように適合された圧力センサ(18)に接続され得る。コントローラ(14)はまた、貯蔵システムの圧力Psを測定するための圧力センサ(17)に接続され得、貯蔵システムの温度Tsを測定するための温度センサ(16)に接続され得る。いくつかの実施形態では、当業者によって理解されるように、多かれ少なかれセンサーが含まれ得る。システムはまた、ガス充填ラインを吸着ガス容器および圧縮機に流体的に接続する入口(15)を含み得る。
[0037]一実施形態では、圧縮機は、充填中に吸着ガス容器の圧力を調整することができる。別の実施形態では、システムは、充填中に吸着ガス容器の圧力を調整するための追加の圧縮機を含む。追加の圧縮機は、車両に搭載することも、車両の外部に配置することもできる。」

イ「As depicted in FIG. 2, the fuel system may also include a control system (20) to modulate the supply pressure to the internal combustion engine based on one or more of storage system pressure (Ps), storage system temperature (Ts), engine supply pressure (Pe), additional parameters, or combinations thereof. In some embodiments, the control system (20) may be the same or similar to the controller (14) described with respect to FIG. 1.」
(当審訳)
「図2に示されるように、燃料システムはまた、貯蔵システム圧力(Ps)、貯蔵システム温度(Ts)、エンジン供給圧力(Pe)、追加のパラメータ、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上に基づいて内燃機関への供給圧力を調整する制御システム(20)を含み得る。いくつかの実施形態では、制御システム(20)は、図1に関して説明されたコントローラ(14)と同じまたは類似であり得る。」

ウ「[0047] As depicted in FIG. 3, certain embodiments are directed to a fuel system (30) including an internal combustion engine (31), an adsorbed gas container (32) fluidly connected to the internal combustion engine, the adsorbed gas container containing an adsorbent; a gasoline container (33) fluidly connected to the internal combustion engine and the adsorbed gas container; and a compressor (34) capable of extracting gasoline vapor from the gasoline container and depositing the gasoline vapor into the adsorbed gas container. In some embodiments, one or more additional adsorbed gas containers may be fluidly connected between the compressor (34) and the engine (31).」
(当審訳)
「[0047]図3に示されるように、特定の実施形態は、内燃機関(31)と、内燃機関に流体接続された吸着ガス容器(32)と、吸着剤を内蔵した吸着ガス容器を含む燃料システム(30);内燃機関および吸着ガス容器に流体接続されたガソリン容器(33);ガソリン容器からガソリン蒸気を抽出し、吸着ガス容器にガソリン蒸気を堆積させることができる圧縮機(34)、に関する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の追加の吸着ガス容器を、圧縮機(34)とエンジン(31)との間に流体的に接続することができる。」

エ 「



オ「



カ 摘記事項ア、ウ、オから、圧縮機(34)から内燃機関(31)にガソリン蒸気を供給すると同時に吸着ガス容器(32)にもガソリン蒸気が供給されており、圧縮機(34)から内燃機関(31)に吸着ガス容器(32)に堆積されたガソリン蒸気が供給されているものである。

上記摘記事項ア?オ、認定事項カから、引用文献1には次の発明が記載されている(以下、「引用発明」という。)

(引用発明)
吸着ガス容器(12)にガソリン蒸気を堆積させることができる圧縮機(13)と、吸着粒子を内蔵した吸着ガス容器(12)と、
内燃機関(11)によるガソリン蒸気のエンジン供給圧力Peを測定する圧力センサ(18)と、
吸着ガス容器(12)の圧力Psを測定するための圧力センサ(17)と、
貯蔵システム圧力(Ps)、貯蔵システム温度(Ts)、エンジン供給圧力(Pe)、追加のパラメータ、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上に基づいて内燃機関へのエンジン供給圧力(Pe)を調整するコントローラ(14)とを備え、
圧縮機(13)から内燃機関(11)にガソリン蒸気を供給すると同時に吸着ガス容器(12)にもガソリン蒸気を堆積させており、吸着ガス容器(12)に堆積されたガソリン蒸気が圧縮機(13)から内燃機関(11)に供給されている、
燃料システム。

(2)引用文献2
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は圧縮空気を利用する者に有料で圧縮空気を供給する圧縮空気供給システムに関し、特に圧縮空気利用者は、圧縮空気設備機器の選定や運転管理に関し手を煩わせることなく、圧縮空気を利用することのできる環境を提供するものである。」

イ「【0010】
本発明の更に他の目的は、設備を運転する上で必要なエネルギ源の使用に関し省エネルギ化への取り組みがし易い圧縮空気供給システムを得ることにある。」

ウ「【0017】
図1に本発明の具体的実施例を示す。
圧縮空気供給設備1は、建屋31内に設けられた空気圧縮機2、ドライヤ3、空気槽4等から構成されている。各空気圧縮機2にはそれぞれドライヤ3が配管接続されて1組となっており、本実施例では3組設けられ、それらの吐出配管は集合されて1つの空気槽4の入口に接続されている。空気槽4にはそこに貯められた圧縮空気の圧力を検出する圧力検出器6が設けられている。空気槽4から2組の供給配管が接続されており、各供給配管には各々直列に流量検出器7aと供給弁16aが設けられている。各供給配管は圧縮空気利用者が管理する建屋33まで延長され、受弁21を経て利用者の配管22に接続される。利用者配管22にはエアスプレー23、エアガン24、エアシリンダ25など多くの圧縮空気を利用する空圧機器が多数接続され、供給された圧縮空気を利用する。他方の供給弁16bの側も同様に別の利用者の設備に配管接続され、同様の構成となっている。
【0018】
圧力検出器6は空気槽4内圧を検出し電気信号に変換、送信する機能を有し、一般に圧力変換器などに代表されるもので構成される。また、圧力検出器6は圧力検出機能に加え、圧力を目視で確認できる表示機能も備えている。流量検出器7(7a,7b)は絞り式や容積式などのもので構成され、流路を通過する圧縮空気の体積流量を検出し、その値を電気信号に変換し送信する機能を併せ持っている。」

エ「【0027】
空気圧縮機2が吸い込んだ空気を圧縮して製造された圧縮空気はドライヤ3で除湿され、空気槽4に一旦蓄えられる。空気槽4における圧力を供給圧力として圧力検出手段6で検出し、圧縮空気は流量検出手段7を経て供給弁16と受弁21を通り利用者の配管22に送り出される。供給圧力は一定範囲にあることが省エネルギ並びに使い勝手のよさから望ましく、個々の空気圧縮機2は容量制御機能を備え、供給圧力を自動制御する。その上で、圧力検出器6で検知された圧力は情報管理装置8で常に利用者の指示圧力と比較され、特開平11-343986号公報に記載されているような、省エネルギに適した圧縮機の運転台数や容量制御機能が選択実行される。」

(3)引用文献3に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0044】
図3に示すように、車両消費電流Icは、電動燃料ポンプ16で消費されるポンプ消費電流Ipと、その他の車載機器50で消費される車載機器消費電流Iqとの合算値に等しい。
【0045】
この車両消費電流Icに比べて発電電流Igが大きいとき、この発電電流Igの余剰分の電流Ibiは、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibを超えない範囲内でバッテリ42に充電される。このとき、仮に電動燃料ポンプ16の駆動を停止させれば、その分だけ車両消費電流Icを小さくすることができるため、より大きな電流Ibiをバッテリ42に充電することができる。
【0046】
一方、車両消費電流Icに比べて発電電流Igが小さいとき、発電電流Igのみでは電動燃料ポンプ及び車載機器50へ十分に電力を供給できないため、この不足分を補う電流Iboがバッテリ42から放電される。このときも、同様に、仮に電動燃料ポンプ16の駆動を停止させれば、その分だけ車両消費電流Icを小さくすることができるため、バッテリ42からの放電電流Iboを小さくすることができる。」

(4)引用文献4に記載された事項
上記引用文献2の段落【0027】で引用する特開平11-343986号公報(以下、「引用文献4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、駆動電動機の回転数を変化させて圧縮機の容量を調整する圧縮機を複数台組み合わせる場合の制御方法に関する。」

イ「【0004】
【課題を解決するための手段】上記従来技術の課題を解決するため、圧縮機製造装置の出口圧力を検出する手段と制御手段を複数の回転数制御機構を有する圧縮機に付加することで、容量制御を行う圧縮機を1台だけに設定できるようにした。
【0005】本発明では、複数台の圧縮機を並列運転する場合、変動する付加に応じて全負荷運転を行う圧縮機と回転数制御により容量制御を行う圧縮機を1台に限定し他の圧縮機は停止または全負荷運転で容量を制御することで、使用空気の容量と消費動力がほぼ直線的に変化する理想的な圧縮空気製造設備を提供できる。」

ウ「【0007】本実施例では5台の圧縮機を使用した圧縮空気製造装置の例を示す。5台の圧縮機(1から5)はそれぞれインバータとPID機能を有し回転数を変化できるもので、其々の圧縮空気出口は集合されて空気槽6に接続され、圧縮空気使用ラインへと供給される。
【0008】空気槽6には圧力センサー7が取り付けられており、この信号は制御装置8に取り込まれる。制御装置にはあらかじめ制御上限圧力Hと制御下限圧力Lを設定しておき、圧力センサーで検知される圧力と常に比較を行わせる。
【0009】また制御装置には容量制御を行わせる圧縮機の順序をあらかじめ設定しておく。例えば本例では1から5の数字の大きい順に容量制御を行わせる。以降1を圧縮機No.1,2を圧縮機No.2と5まで順次圧縮機No.で呼ぶ。
【0010】本制御装置8は圧縮機の運転中に空気槽の圧力がLより高く、H未満であれば、No.5圧縮機5のみを回転数制御し、その他のNo.1からNo.4の圧縮機(1,2,3,4)は容量制御を行わせずに全負荷で運転させる。
【0011】空気槽の圧力がH以上になったときは、これを圧力センサー7で検出し、制御装置8からNo.5の圧縮機を停止させる信号を発すると同時に、回転数制御を行う圧縮機をNo.4圧縮機4に切り替える。装置から吐出される空気量より、消費量が減少して圧力がHに到達する毎に、この動作を繰り返させ順次圧縮機を停止させていく。
【0012】逆に圧力がL以下になったことを圧力センサー7が検出すると、制御装置から、停止したのと逆の順序で圧縮機を起動し、起動した圧縮機にのみ回転数制御による容量制御を行わせる。
【0013】容量制御を行う圧縮機は圧力が一定になるように回転数を変化させる運転を行うが、この制御圧力は前記LとHの間の任意の圧力に設定する。この圧力の検出は個々の圧縮機の出口に内蔵された圧力センサーで検出して個々のPID機能とインバータで制御する。あるいは、空気槽6に設置された圧力センサー7で圧力を検出し、これを個々の圧縮機のPID回路へ送り込んで回転数制御してもよい。」

エ「



4 対比・判断
(1)本件補正発明1について
本件補正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「吸着ガス容器(12)」が本件補正発明1の「圧縮気体貯蔵容器」に相当し、以下それぞれ、引用発明の「ガソリン蒸気」、「吸着粒子」、「内燃機関」、「燃料システム」が本件補正発明1の「気体」、「吸着材」、「消費機器」、「圧縮気体供給システム」に相当する。

引用発明は、圧縮機が吸着ガス容器(12)にガソリン蒸気を堆積させることができるものであり、吸着ガス容器(12)に堆積させたガソリン蒸気が貯蔵システム圧力(Ps)を有するものであるから、引用発明の「圧縮機(13)」は、「気体を圧縮して圧縮気体を生成する」限りにおいて、本件補正発明1の「圧縮機」に一致する。

引用発明は、吸着ガス容器(12)の内部に吸着粒子を内蔵するものであるから。ガスを収容する容器と吸着粒子から構成されているものと認められるので、引用発明の「吸着ガス容器」は、本件補正発明1の「圧縮気体を貯蔵する容器本体と、前記容器本体の内部に設けられ、前記容器本体の内部の圧縮気体を吸着する吸着材と、を備える圧縮気体貯蔵容器」と一致する。

引用発明は、圧力センサ(18)によって「内燃機関(11)によるガソリン蒸気のエンジン供給圧力Peを測定」し、「貯蔵システム圧力(Ps)、貯蔵システム温度(Ts)、エンジン供給圧力(Pe)、・・・に基づいて内燃機関へのエンジン供給圧力(Pe)を調整する」ものであり、内燃機関へのガソリン蒸気の供給圧力は、内燃機関の運転に必要なガソリン蒸気の量により決定されるものであることを勘案すると、引用発明の「内燃機関(11)によるガソリン蒸気のエンジン供給圧力Peを測定する圧力センサ(18)」は、本件補正発明1の「消費機器による圧縮気体の需要量を検出する圧縮気体需要量検出部」と一致する。

そして、引用発明の「吸着ガス容器(12)の圧力Psを測定するための圧力センサ(17)」は、本件補正発明1の「前記圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の残量を検出する圧縮気体残量検出部」に相当する。

してみると、本件補正発明1と引用発明とは、両者が
「気体を圧縮して圧縮気体を生成する圧縮機と、
圧縮気体を貯蔵する容器本体と、前記容器本体の内部に設けられ、前記容器本体の内部の圧縮気体を吸着する吸着材と、を備える圧縮気体貯蔵容器と、
消費機器による圧縮気体の需要量を検出する圧縮気体需要量検出部と、
前記圧縮気体貯蔵容器における圧縮気体の残量を検出する圧縮気体残量検出部と、を備える圧縮気体供給システム。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点1)
本件補正発明1では、圧縮機が「複数」であるのに対して、引用発明では圧縮機が一つである点。

(相違点2)
本件補正発明1では、「前記圧縮気体需要量検出部の検出結果に基づいて、
前記圧縮機及び前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止され稼働している前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、前記圧縮機が停止して前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止されると共に稼働している前記圧縮機のみから前記消費機器に圧縮空気が供給される状態と、前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵される状態と、に切り替える制御部」を備えるのに対して、引用発明では「貯蔵システム圧力(Ps)、貯蔵システム温度(Ts)、エンジン供給圧力(Pe)、追加のパラメータ、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上に基づいて内燃機関へのエンジン供給圧力(Pe)を調整するコントローラ(14)とを備え」るものであるが、「圧縮機(34)から内燃機関(31)にガソリン蒸気を供給すると同時に吸着ガス容器(32)にもガソリン蒸気を供給されており、吸着ガス容器(32)に堆積されたガソリン蒸気が圧縮機(34)から内燃機関(31)に供給されている」のみであり、コントローラにより供給される状態を切り替えるものではない点。

上記相違点1について検討すると、3.(2)で示したとおり、引用文献2には、圧縮空気供給システムに関し、並列した3組の空気圧縮機2に配管接続されたドライヤ3、ドライヤ3から吐出配管は集合されて1つの空気槽4の入口に接続され、空気槽4にはそこに貯められた圧縮空気の圧力を検出する圧力検出器6が設けられ、空気槽4から2組の供給配管が接続されており、各供給配管には各々直列に流量検出器7aと供給弁16aが設けられた技術事項が記載されている。

引用発明と引用文献2に記載された技術事項とは、ともに圧縮された気体の供給に係る技術であって、システムの運用効率の向上は、引用発明及び引用文献2に記載された技術事項に共通する自明の課題であるから、引用発明において引用文献2に記載された技術事項を適用して、引用発明の圧縮機を並列した3組の圧縮機に置き換えることは、当業者が容易になし得たことといえる。

次に相違点2について検討する。
引用文献3には、「車両消費電流Icに比べて発電電流Igが大きいとき、この発電電流Igの余剰分の電流Ibiは、バッテリ42で受け入れ可能な電流Ibを超えない範囲内でバッテリ42に充電」し、「車両消費電流Icに比べて発電電流Igが小さいとき、発電電流Igのみでは電動燃料ポンプ及び車載機器50へ十分に電力を供給できないため、この不足分を補う電流Iboがバッテリ42から放電」する技術事項が記載されている。

また、引用文献4には、「圧縮機の運転中に空気槽の圧力がLより高く、H未満であれば、No.5圧縮機5のみを回転数制御し、その他のNo.1からNo.4の圧縮機(1,2,3,4)は容量制御を行わせずに全負荷で運転させ」、「空気槽の圧力がH以上になったときは、これを圧力センサー7で検出し、制御装置8からNo.5の圧縮機を停止させる信号を発すると同時に、回転数制御を行う圧縮機をNo.4圧縮機4に切り替え」、「装置から吐出される空気量より、消費量が減少して圧力がHに到達する毎に、この動作を繰り返させ順次圧縮機を停止」させるとともに、「逆に圧力がL以下になったことを圧力センサー7が検出すると、制御装置から、停止したのと逆の順序で圧縮機を起動し、起動した圧縮機にのみ回転数制御による容量制御を行わせる」ことが技術事項として記載されている。

しかしながら、そもそも引用発明は、上記のとおり「圧縮機(34)から内燃機関(31)にガソリン蒸気を供給すると同時に吸着ガス容器(32)にもガソリン蒸気を供給されており、吸着ガス容器(32)に堆積されたガソリン蒸気が圧縮機(34)から内燃機関(31)に供給されている」のみであり、コントローラにより供給される状態を切り替えるものではない。

そこで、引用発明において圧縮機を複数並列に配置し、内燃機関の運転に必要なエンジン供給圧力(Pe)に応じて、引用文献3、4に記載された技術事項から把握される周知技術を適用して、圧縮機の一部の運転を中止したり全ての圧縮機を運転するよう切り替える制御を行ったとしても、引用発明の吸着ガス容器(32)は、直接、内燃機関(31)にガソリン蒸気を供給するものではないから、本件補正発明1のように、「前記圧縮機及び前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止され稼働している前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、前記圧縮機が停止して前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態」は、取り得ることができない。

なお、引用文献2及び引用文献4には、複数の圧縮機から一つの空気槽に圧縮空気を貯留して、空気槽に貯留した圧縮空気を消費機器に提供する技術も記載されているが、引用発明は、上述のとおり圧縮機によって「内燃機関へのエンジン供給圧力(Pe)を調整する」ものであって「圧縮機(13)から内燃機関(11)にガソリン蒸気を供給すると同時に吸着ガス容器(12)にもガソリン蒸気を堆積させており、吸着ガス容器(12)に堆積されたガソリン蒸気が圧縮機(13)から内燃機関(11)に供給」するものであるから、圧縮機を介さずに、吸着ガス容器に堆積したガソリン蒸気を内燃機関に供給することは、阻害要因があるというべきである。

してみると、本件補正発明1は、引用発明、引用文献2に記載された技術事項、引用文献3、4に記載された技術事項から把握される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができた発明ということはできない。

(2)本件補正発明2、3について
本件補正発明2、3も、本件補正発明1の上記相違点2に係る構成と同一の構成を備えるものであるから、本件補正発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3、4に記載された技術事項から把握される周知技術に基いて容易に発明できたものとはいえない。

(3)小括
以上のとおりであるから、本件補正発明1?3は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ではないから、本件補正は、同法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。

第4 原査定について
本件補正により、本件補正発明1?3は「前記圧縮気体需要量検出部の検出結果に基づいて、
前記圧縮機及び前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止され稼働している前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵されると共に前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、前記圧縮機が停止して前記圧縮気体貯蔵容器から前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の全てから前記消費機器に圧縮気体が供給される状態と、複数の前記圧縮機の一部は停止されると共に稼働している前記圧縮機のみから前記消費機器に圧縮空気が供給される状態と、前記圧縮機から前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が供給されて前記圧縮気体貯蔵容器に圧縮気体が貯蔵される状態と、に切り替える制御部」という事項を有するものとなっており、当業者であっても、拒絶査定において引用された引用発明、引用文献2に記載された技術事項及び引用文献3に記載された技術事項から把握される周知技術に基いて、容易に発明できたものとはいえない。したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2021-03-02 
出願番号 特願2016-180630(P2016-180630)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (F17C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 加藤 信秀  
特許庁審判長 井上 茂夫
特許庁審判官 間中 耕治
村山 達也
発明の名称 圧縮気体供給システム  
代理人 特許業務法人太陽国際特許事務所  

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