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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B66B |
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管理番号 | 1371577 |
審判番号 | 不服2020-3870 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2020-03-23 |
確定日 | 2021-03-23 |
事件の表示 | 特願2019-540126「エレベーター装置及び監視装置」拒絶査定不服審判事件〔令和2年9月24日国際公開、WO2020/188662、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2019年(平成31年)3月15日を国際出願日とする出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 令和1年 7月24日 :手続補正書の提出 令和1年10月15日付け:拒絶理由通知書 令和1年11月29日 :意見書の提出 令和2年 2月 6日付け:拒絶査定(原査定) 令和2年 3月23日 :審判請求書の提出 第2 原査定の概要 原査定(令和2年2月6日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。 本願請求項1?4に係る発明は、以下の引用文献1、2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 引用文献等一覧 1.特許第6455641号公報 2.特開平11-199152号公報 第3 本願発明 本願請求項1?4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明4」という。)は、令和1年7月24日に提出の手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1?4は以下のとおりの発明である。 「[本願発明1] エレベーターのかごと、 前記かごを制御する制御装置と、 前記制御装置に接続され、外部と通信するための監視装置と、 前記監視装置に電力を供給することが可能な二次電池と、 を備え、 前記監視装置は、 前記二次電池を充電するための充電手段と、 前記二次電池の取替周期を演算するための複数の演算式が記憶された記憶手段と、 前記監視装置に対する電源のオンオフ回数を検出する第3検出手段と、 前記第3検出手段が検出したオンオフ回数に基づいて、前記監視装置に対する電源のオンオフ情報を前記記憶手段に登録する登録手段と、 前記登録手段が前記記憶手段に登録した電源のオンオフ情報に基づいて、前記複数の演算式の中から1つを選択する選択手段と、 前記二次電池の温度を検出する第1検出手段と、 前記選択手段が選択した演算式及び前記第1検出手段が検出した温度に基づいて、前記二次電池の取替周期を演算する演算手段と、 前記二次電池の稼働時間を検出する第2検出手段と、 前記演算手段が演算した取替周期及び前記第2検出手段が検出した稼働時間に基づいて、前記二次電池の残り寿命に応じた信号を送信する通信手段と、 を備えたエレベーター装置。 [本願発明2] エレベーターのかごと、 前記かごを制御する制御装置と、 前記制御装置に接続され、外部と通信するための監視装置と、 前記監視装置に電力を供給することが可能な二次電池と、 を備え、 前記監視装置は、 前記二次電池を充電するための充電手段と、 前記二次電池の取替周期を演算するための演算式が記憶された記憶手段と、 前記監視装置に対する電源のオンオフ回数を検出する第3検出手段と、 前記第3検出手段が検出したオンオフ回数に基づいて、前記監視装置に対する電源のオンオフ情報を前記記憶手段に登録する登録手段と、 前記二次電池の温度を検出する第1検出手段と、 前記登録手段が前記記憶手段に登録した電源のオンオフ情報及び前記第1検出手段が検出した温度に基づいて、前記演算式から前記二次電池の取替周期を演算する演算手段と、 前記二次電池の稼働時間を検出する第2検出手段と、 前記演算手段が演算した取替周期及び前記第2検出手段が検出した稼働時間に基づいて、前記二次電池の残り寿命に応じた信号を送信する通信手段と、 を備えたエレベーター装置。 [本願発明3] エレベーターの制御装置に接続される監視装置であって、 二次電池を充電するための充電手段と、 前記二次電池の取替周期を演算するための複数の演算式が記憶された記憶手段と、 電源のオンオフ回数を検出する第3検出手段と、 前記第3検出手段が検出したオンオフ回数に基づいて、電源のオンオフ情報を前記記憶手段に登録する登録手段と、 前記登録手段が前記記憶手段に登録した電源のオンオフ情報に基づいて、前記複数の演算式の中から1つを選択する選択手段と、 前記二次電池の温度を検出する第1検出手段と、 前記選択手段が選択した演算式及び前記第1検出手段が検出した温度に基づいて、前記二次電池の取替周期を演算する演算手段と、 前記二次電池の稼働時間を検出する第2検出手段と、 前記演算手段が演算した取替周期及び前記第2検出手段が検出した稼働時間に基づいて、前記二次電池の残り寿命に応じた信号を送信する通信手段と、 を備えた監視装置。 [本願発明4] エレベーターの制御装置に接続される監視装置であって、 二次電池を充電するための充電手段と、 前記二次電池の取替周期を演算するための演算式が記憶された記憶手段と、 電源のオンオフ回数を検出する第3検出手段と、 前記第3検出手段が検出したオンオフ回数に基づいて、電源のオンオフ情報を前記記憶手段に登録する登録手段と、 前記二次電池の温度を検出する第1検出手段と、 前記登録手段が前記記憶手段に登録した電源のオンオフ情報及び前記第1検出手段が検出した温度に基づいて、前記演算式から前記二次電池の取替周期を演算する演算手段と、 前記二次電池の稼働時間を検出する第2検出手段と、 前記演算手段が演算した取替周期及び前記第2検出手段が検出した稼働時間に基づいて、前記二次電池の残り寿命に応じた信号を送信する通信手段と、 を備えた監視装置。」 第4 引用文献に記載の事項等 1 引用文献1 (1)引用文献1に記載の事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同様。)。 「【0001】 この発明は、エレベーターのバッテリー診断装置に関する。」 「【0013】 制御装置9は、機械室2の内部に設けられる。監視装置10は、機械室2の内部に設けられる。監視装置10は、制御装置9に電気的に接続される。バッテリー11は、機械室2の内部に設けられる。例えば、バッテリー11は、監視装置10の内部に設けられてもよい。バッテリー11は、監視装置10に電気的に接続される。バッテリー11は、監視装置10のバックアップ用の電源として設けられる。例えば、バッテリー11は、ニッケル水素電池である。」 「【0016】 監視装置10は、エレベーターの状態を監視する。例えば、エレベーターの運転モードが通常モードの際にエレベーターの異常が発生した場合、監視装置10は、当該異常を示す情報を情報センター装置12に送信する。例えば、監視装置10への電源が停電等により遮断された場合、監視装置10は、当該電源が遮断されたことを示す情報を情報センター装置12に送信する。この際、監視装置10は、バッテリー11からの電力を利用して動作する。」 「【0021】 測定部15は、バッテリー11の特性を測定し得るように設けられる。例えば、測定部15は、バッテリー11に0Hzから数MHzの周波数の交流電圧を印加してバッテリー11のインピーダンスを測定する。 【0022】 記憶部16は、測定部15の測定結果を示す情報を記憶し得るように設けられる。例えば、測定部15がバッテリー11の特性を測定した際に、記憶部16は、当該特性の測定日時の情報と当該特性の情報とを対応付けて記憶する。 【0023】 判定部17は、測定部15の測定結果に基づいてバッテリー11の状態を判定し得るように設けられる。例えば、判定部17は、測定部15の測定結果と記憶部16に記憶された基準との比較結果に基づいてバッテリー11の状態を判定する。判定部17は、例えば測定日時から3ヶ月経過するとバッテリー11の劣化が見込まれると判断される場合にバッテリー11が劣化状態であると判定する。」 「【0031】 ステップS3でバッテリー11が劣化状態にある場合、監視装置10は、ステップS5の動作を行う。ステップS5では、監視装置10は、バッテリー11が劣化状態にあることを示す情報を外部に送信する。その後、監視装置10は、ステップS1の動作を行う。」 「【0033】 また、バッテリー11が劣化状態にある場合、バッテリー11が劣化状態にあることを示す信号が外部に送信される。このため、バッテリー11を寿命に即した適切なタイミングで忘れずにバッテリー11を交換することができる。その結果、バッテリー11の保守作業の時間を短くすることができる。さらに、バッテリー11を交換するためのコストを下げることができる。 【0034】 また、バッテリー11の状態は、バッテリー11の特性に基づいて判定される。このため、バッテリー11の劣化状態をより正確に判定することができる。 【0035】 なお、バッテリー11に負荷をかけた際の放電曲線をバッテリー11の特性としてもよい。この場合も、バッテリー11の劣化状態をより正確に判定することができる。 【0036】 また、バッテリー11の特性の測定日時の情報と当該特性の情報とが対応付けて記憶される。このため、バッテリー11の特性の時間的な変化を把握することができる。その結果、バッテリー11の寿命および交換時期を推定することができる。」 (2)引用文献1に記載の発明 上記(1)より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明1」及び「引用発明2」という。)が記載されているといえる。 [引用発明1] 「エレベーターの制御装置9に接続される監視装置10であって、 ニッケル水素電池からなるバッテリー11と、 前記バッテリー11のインピーダンス特性を測定する測定部15と、 前記バッテリー11の交換時期を推定するために前記バッテリー11の特性と測定日時の情報が記憶される記憶部16と、 前記測定部15の測定結果と記憶部16に記憶された基準との比較結果に基づいて前記バッテリー11の状態を判定する判定部17と、 前記判定部17において前記バッテリー11が劣化状態にあると判定した場合に該劣化状態にあることを示す情報を外部に送信する手段と、 を備えた監視装置10。」 [引用発明2] 「エレベーターのかご7と、 前記かご7を制御する制御装置9と、 前記制御装置9に接続され、外部と通信するための監視装置10と、 前記監視装置10に電力を供給することが可能なニッケル水素電池からなるバッテリー11と、 を備え、 前記監視装置10は、 前記バッテリー11のインピーダンス特性を測定する測定部15と、 前記バッテリー11の交換時期を推定するために前記バッテリー11の特性と測定日時の情報が記憶される記憶部16と、 前記測定部15の測定結果と記憶部16に記憶された基準との比較結果に基づいて前記バッテリー11の状態が劣化状態にあるか否かを判定する判定部17と、 前記判定部17において前記バッテリー11が劣化状態にあると判定した場合に該劣化状態にあることを示す情報を外部に送信する手段と、 を備えたエレベーター装置。」 2 引用文献2 (1)引用文献2に記載の事項 原査定の拒絶の理由に引用された上記引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、エレベータの運転中に停電となった場合に、かご内の乗客を救出するためのエレベータの停電時救出運転装置に関する。」 「【0004】このように構成された従来の停電時救出運転装置では、停電時、エレベータは最寄階まで低速運転を行い、着床後に戸開して乗客を降ろし戸閉して救出運転を終了する。バッテリ電源3としては、その救出運転が確実に行えるだけの電力を充電しておく必要がある。」 「【0023】いま、停電になったとすると、エレベータ制御装置1はインバータ回路2を起動し救出運転を開始する。その際に、エレベータ制御装置1はバッテリ監視装置8からのバッテリ状況信号Kに基づいて、バッテリ電源3の電力供給能力を把握し、その電力供給能力に応じた停電時救出運転を行う。すなわち、直流のバッテリ電源3から平滑コンデンサ5を介してインバータ回路2で交流電源に変換し、誘導電動機6に交流電源を供給し、エレベータを駆動し救出運転を行う。」 「【0028】エレベータ制御装置1は、このバッテリ状況信号Kに応じて、バッテリ電源3の放電電気量が少ない時は最寄階を越えた階床まで運転する。また、バッテリ出力電圧が大きく低下し、バッテリ電源3の放電量が限界値に到達した時は救出運転を停止して、バッテリ電源3の放電を中止する。そして、通常電源が復帰してから、バッテリ電源3の充電を開始し、充電完了後に救出運転を行うことができるようにする。」 「【0045】次に、本発明の第4の実施の形態を説明する。図9は、本発明の第4の実施の形態に係わるエレベータの停電時救出運転装置の構成図である。この第4の実施の形態は、図6に示した第3の実施の形態に対し、バッテリ交換時期を保守員に知らせるための表示装置16を設け、エレベータ制御装置1は、バッテリ監視装置8からのバッテリ状況信号に基づいてバッテリ電源3の交換時期を判別し、その結果を表示装置16に出力するようにしたものである。 【0046】図9において、温度検出器15はバッテリ電源3の温度を検出するものであり、この温度検出器15で検出された温度Tはバッテリ監視装置8に入力される。一方、電圧検出器7は平滑コンデンサ5の両端の電圧を検出することによってバッテリ電源3の出力電圧を検出し、その検出した出力電圧Vはバッテリ監視装置8に入力される。バッテリ監視装置8は、電圧検出器7の出力信号に基づいてバッテリ電源3の放電電気量を推定する。その際にバッテリ電源3の温度Tにより補正を加える。そして、温度補正を加えた放電電気量をバッテリ状況信号Kとしてエレベータ制御装置1に出力する。 【0047】エレベータ制御装置1には、温度検出器15からのバッテリ電源3の温度Tも入力されており、エレベータ制御装置1はバッテリ状況信号Kおよびバッテリ電源3の温度Tに基づいて、バッテリ電源3の寿命を判定し、その判定結果を表示装置16に出力する。一方、エレベータ制御装置1は、通常電源が停止したときは、インバータ回路2を起動し救出運転を開始する。その際には、バッテリ監視装置8からのバッテリ状況信号Kに基づいて、バッテリ電源3の電力供給能力を把握し、その電力供給能力に応じた停電時救出運転を行う。」 「【0049】エレベータ制御装置1は、予め図10(a)の寿命特性および図10(b)の寿命特性を記憶しておく。そして、救出運転時のバッテリ状況信号Kより、バッテリ電源3の放電電気量を判別し記憶し、また、救出運転回数、バッテリ使用年数も記憶する。そして、これらによりバッテリ電源3の寿命を推定する。 【0050】また、図11は、エレベータ制御装置1でバッテリ電源の寿命を判定する際に使用するバッテリ寿命の温度特性図である。エレベータ制御装置1には、この図11の温度特性も予め記憶させておく。そして、温度検出器15からのバッテリ電源3の温度Tを入力し、バッテリ電源3の寿命について温度補正する。 【0051】すなわち、図11に示すように、バッテリ電源3の寿命は温度にも依存するので、バッテリ電源3の温度検出信号Tをエレベータ制御装置1に入力することにより、温度による寿命の変化を補正する。これにより、より正確な寿命を推定することができる。 【0052】この第4の実施の形態によれば、バッテリ電源3の寿命をエレベータ制御装置1により推定することにより、バッテリ電源3の交換時期を表示装置16に表示して保守員に知らせることができる。」 (2)引用文献2に記載の技術的事項 (1)より、引用文献2には、次の技術的事項(以下、「引用文献2の技術的事項」という。)が記載されているといえる。 「エレベータの停電時救出運転装置であって、 停電時にバッテリ電源3をインバータ回路2により、交流電源に変換して誘導電動機6に供給し、エレベータを駆動し救出運転を行うものであり、 通常時には、バッテリ電源3の充電をするものであり、 バッテリ電源3の放電電気量、救出運転回数、バッテリ使用年数を記憶するエレベータ制御装置1と、 前記バッテリ電源3の温度Tを検出する温度検出器15を有し、 前記エレベータ制御装置1が、放電電気量の大きさ、放電回数によりバッテリ電源3の寿命を推定するものであって、前記バッテリ電源3の前記温度Tにより寿命を温度補正する手段を有するものであって、 前記バッテリ電源3の寿命を前記エレベータ制御装置1により推定することにより、前記バッテリ電源3の交換時期を表示装置16に表示して保守員に知らせるエレベータの停電時救出運転装置。」 第5 当審の判断 1 本願発明4について (1)対比 本願発明4と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「エレベーターの制御装置9」は、本願発明4の「エレベーターの制御装置」に相当する。 引用発明1の「監視装置10」は、本願発明4の「監視装置」に相当する。 引用発明1の「ニッケル水素電池からなるバッテリー11」は、本願発明4の「二次電池」に相当する。 引用発明1の「前記バッテリー11の特性と測定日時の情報が記憶される記憶部16」は、測定した時点までの稼働時間が検出されているものと言えるから、本願発明4の「前記二次電池の稼働時間を検出する第2検出手段」に相当する。 引用発明1の「前記測定部15の測定結果と記憶部16に記憶された基準との比較結果に基づいて前記バッテリー11の状態が劣化状態にあるか否かを判定する判定部17」は、「前記判定部17において前記バッテリー11が劣化状態にあると判定した場合に該劣化状態にあることを示す情報を外部に送信する」ことで、バッテリー11の交換を行うためのものであるから、本願発明4の「前記登録手段が前記記憶手段に登録した電源のオンオフ情報及び前記第1検出手段が検出した温度に基づいて、前記演算式から前記二次電池の取替周期を演算する演算手段」との関係において、「前記二次電池の取替周期を演算する演算手段」である限りにおいて共通する。 引用発明1の「前記判定部17において前記バッテリー11が劣化状態にあると判定した場合に該劣化状態にあることを示す情報を外部に送信する手段」は、判定部17の判定結果を用い、該判定はバッテリー11の特性を測定した日時の情報をもとに行われているものであるから、本願発明4の「前記演算手段が演算した取替周期及び前記第2検出手段が検出した稼働時間に基づいて、前記二次電池の残り寿命に応じた信号を送信する通信手段」に相当すると言える。 以上のとおりであるから、本願発明4と引用発明1との一致点及び相違点は次のとおりとなる。 [一致点] 「エレベーターの制御装置に接続される監視装置であって、 二次電池と、 前記二次電池の取替周期を演算する演算手段と、 前記二次電池の稼働時間を検出する第2検出手段と、 前記演算手段が演算した取替周期及び前記第2検出手段が検出した稼働時間に基づいて、前記二次電池の残り寿命に応じた信号を送信する通信手段と、 を備えた監視装置。」 [相違点1] 本願発明4は、「二次電池を充電するための充電手段」を備えているのに対し、引用発明1は該構成を備えていない点。 [相違点2] 本願発明4は、「前記二次電池の取替周期を演算するための演算式が記憶された記憶手段」を備えているのに対し、引用発明1の記憶部16は、該演算式を記憶したものではない点。 [相違点3] 本願発明4は、「電源のオンオフ回数を検出する第3検出手段と、前記第3検出手段が検出したオンオフ回数に基づいて、電源のオンオフ情報を前記記憶手段に登録する登録手段」を備えているのに対し、引用発明1は該構成を備えていない点。 [相違点4] 本願発明4は、「前記二次電池の温度を検出する第1検出手段」を備えているのに対し、引用発明1は該構成を備えていない点。 [相違点5] 本願発明4は、「前記登録手段が前記記憶手段に登録した電源のオンオフ情報及び前記第1検出手段が検出した温度に基づいて、前記演算式から前記二次電池の取替周期を演算する演算手段」を備えているのに対し、引用発明1の判定部17は該構成を備えていない点。 (2)判断 相違点3について検討する。 引用文献2には、上記「第4 2(2)」に記載のとおりの技術的事項が記載されている。 ここで、引用文献2に記載の救出運転とは、停電時におこなわれるものであり、いわゆる定期的な点検のための電源オンオフ時におこなわれるものではないといえる(段落【0001】参照。)。 これに対し、本願発明4の監視装置における「電源のオンオフ回数」とは、本願の当初明細書の段落【0025】において「一部のエレベータ装置では、定期的に或いは不定期で電源が落とされる。」と記載されていることから、不定期である停電時以外にも定期的な点検等による電源のオンオフ回数を含むものと理解すべきである。 そうすると、引用文献2に記載の「救出運転回数」と、上記相違点3に係る本願発明4の監視装置における「電源のオンオフ回数」とはその技術的意義が異なるものと言うべきである。そして、当該相違点3に係る本願発明4の構成は、当業者といえども、引用発明1及び引用文献2に記載された技術的事項から、容易に想到し得たものと言うことはできない。 なお、引用文献2に記載の「救出運転回数」が二次電池の充放電回数を示すものであり、該救出運転回数から二次電池の寿命を推定するものであるから、「電源のオンオフ回数」に基づく寿命推定が可能であると言えるとしても、本願発明4の充放電の回数である「オンオフ回数」と引用文献2の「救出運転回数」との技術的意義が異なることは先に述べたとおりであるから、直ちに、引用文献2に記載の技術的事項から、引用発明をして電源のオンオフ回数と寿命との対応を推定するものとすることが当業者にとって容易であるということはできない。 したがって、上記相違点1、2、4及び5について判断するまでもなく、本願発明4は、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 2 本願発明1?3について 本願発明1?3も、上記相違点3に係る本願発明4の構成を備えるものであるから、本願発明4と同様の理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6 むすび 以上のとおり、本願発明1?4は、当業者が引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された技術的事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2021-03-05 |
出願番号 | 特願2019-540126(P2019-540126) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B66B)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 今野 聖一 |
特許庁審判長 |
田村 嘉章 |
特許庁審判官 |
内田 博之 杉山 健一 |
発明の名称 | エレベーター装置及び監視装置 |
代理人 | 小澤 次郎 |
代理人 | 高田 守 |
代理人 | 高橋 英樹 |