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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G06F
管理番号 1371593
審判番号 不服2020-839  
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-01-22 
確定日 2021-03-23 
事件の表示 特願2018- 50572「制御プログラム、制御方法及び情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成30年 6月14日出願公開、特開2018- 92681、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成28年10月17日に出願した特願2016-203954号の一部を平成30年3月19日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成30年11月28日付け:拒絶理由通知書
平成31年 2月 1日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年 5月23日付け:拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
令和 元年 7月24日 :意見書、手続補正書の提出
令和 元年10月21日付け:補正の却下の決定、拒絶査定
令和 2年 1月22日 :拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提


第2 原査定の概要
原査定(令和元年10月21日付け拒絶査定)は、この出願については、令和元年5月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものである、とするものである。
そして、令和元年5月23日付け拒絶理由通知書に記載した理由1の概要は、次のとおりである。
この出願の請求項1?13に係る発明は、以下の引用文献1?11に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1 特開2015-49539号公報
2 特開2008-181523号公報
3 特開2011-53770号公報
4 特開2010-157192号公報
5 特開2016-024517号公報
6 特開2010-176329号公報
7 特開2016-122225号公報
8 特開2015-158759号公報
9 特開平08-287272号公報
10 特開2000-172391号公報
11 国際公開第2010/073329号

第3 本願発明
本願請求項1?13に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明13」という。)は、令和2年1月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定される、以下のとおりの発明である(下線は補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
制御部と入力操作が可能な表示部とを備えた情報処理装置を制御するプログラムであって、
前記制御部に、
前記表示部でのタッチ位置に応じた第1座標を特定し、
前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定し、
前記第1座標を特定するためのタッチ操作を解除するタッチオフが検知された後に入力された第2座標からの軌跡に応じて前記第1座標に位置する前記第1オブジェクトから描画された第2オブジェクトを生成すること、を実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項2】
前記表示部に表示されたオブジェクトの操作を検知した場合、前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定し、
前記第1座標を特定するためのタッチ操作を解除するタッチオフが検知された後に入力された第2座標からの軌跡に応じて前記第1オブジェクトの操作を行うことを、前記制御部に実行させる請求項1に記載の制御プログラム。
【請求項3】
前記表示部に表示されたオブジェクトの消去指示を検知した場合、前記表示部での入力位置に応じた第1座標を取得し、
前記第1座標を特定するためのタッチ操作を解除するタッチオフが検知された後に入力された第2座標からの軌跡に応じて前記第1座標から前記オブジェクトの消去を行なうことを、前記制御部に実行させる請求項1又は2に記載の制御プログラム。
【請求項4】
前記表示部に表示されたオブジェクトの選択を検知した場合、前記オブジェクトの配置位置を特定し、
前記第1座標を特定するためのタッチ操作を解除するタッチオフが検知された後に入力された第2座標からの軌跡に応じて、前記オブジェクトの配置を決定することを、前記制御部に実行させる請求項1?3のいずれか1項に記載の制御プログラム。
【請求項5】
前記オブジェクトの配置に対して、複数の操作エリアが設定されており、各操作エリアの選択に応じて、前記オブジェクトに対して異なる操作を実行することを、前記制御部に実行させる請求項4に記載の制御プログラム。
【請求項6】
前記オブジェクト内の基準位置に対して、前記第2座標からの軌跡の広がり角度を算出し、前記広がり角度に基づいて、前記オブジェクトの回転操作を実行することを、前記制御部に実行させる請求項4又は5に記載の制御プログラム。
【請求項7】
前記表示部において操作された操作位置のオブジェクトの属性を特定し、属性表示領域に表示し、
操作オフの検知時に、前記属性を描画時の属性として設定することを、前記制御部に実行させる請求項1?6の何れか一項に記載の制御プログラム。
【請求項8】
前記操作位置の周囲に属性候補を出力し、
操作オフの方向に応じて、前記属性候補の中から描画時に用いる属性を決定することを、前記制御部に実行させる請求項7に記載の制御プログラム。
【請求項9】
始点と終点とが設定されたオブジェクトが選択された場合、
前記表示部の操作位置に前記始点を設定し、
スライド操作された操作位置に前記終点を設定して、前記オブジェクトを前記表示部に出力し、
操作オフ時に前記オブジェクトの形状を決定することを、前記制御部に実行させる請求項1?8の何れか一項に記載の制御プログラム。
【請求項10】
前記第1座標及び前記第2座標に基づき、前記第2座標からの軌跡を前記第2オブジェクトに補正するための補正ベクトルを算出し、
前記補正ベクトルを、前記タッチ位置の面積に応じて変更することを、前記制御部に実行させる請求項1?9のいずれか1項に記載の制御プログラム。
【請求項11】
前記第1座標及び前記第2座標に基づき、前記第2座標からの軌跡を前記第2オブジェクトに補正するための補正ベクトルを算出し、
前記補正ベクトルを、前記第2座標からの軌跡の修正履歴に基づき変更することを、前記制御部に実行させる請求項1?10のいずれか1項に記載の制御プログラム。
【請求項12】
制御部と入力操作が可能な表示部とを備えた情報処理装置を制御する制御方法であって、
前記制御部が、
前記表示部でのタッチ位置に応じた第1座標を特定し、
前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定し、
前記第1座標を特定するためのタッチ操作を解除するタッチオフが検知された後に入力された第2座標からの軌跡に応じて前記第1座標に位置する前記第1オブジェクトから描画された第2オブジェクトを生成することを特徴とする制御方法。
【請求項13】
制御部と入力操作が可能な表示部とを備えた情報処理装置であって、
前記制御部が、
前記表示部でのタッチ位置に応じた第1座標を特定し、
前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定し、
前記第1座標を特定するためのタッチ操作を解除するタッチオフが検知された後に入力された第2座標からの軌跡に応じて前記第1座標に位置する前記第1オブジェクトから描画された第2オブジェクトを生成することを特徴とする情報処理装置。」

第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は当審による。以下同様。)。
ア 「【0016】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1に係る描画システムを概念的に表示した概念図である。図中符号1は、本発明の実施の形態1に係る描画システムを示す。本発明の実施の形態1に係る描画システム1は、電子ホワイトボード100と、ペン型入力器200(描画器)とを含むように構成されている。
【0017】
本発明の実施の形態1に係る描画システム1において、電子ホワイトボード100は、ペン型入力器200からの描画に係る指示に応じて、描画の処理を行なう。
【0018】
また、ペン型入力器200は、電子ホワイトボード100と無線通信ができるように構成されている。すなわち、電子ホワイトボード100は、後述するように、ペン型入力器200から描画通知、第1通知及び第2通知を受信できるように構成されている。
【0019】
電子ホワイトボード100は、描画の処理によって、例えば線図の画像が表示される矩形の表示画面101を有する表示部100Aと、後述する方法によって、ペン型入力器200の表示画面101上の位置を検出し、又は表示画面101上の所定位置の位置指定を受け付けるタッチパネル部100Bとを備えている。
【0020】
本発明の実施の形態1のタッチパネル部100Bは、赤外線を発光する発光素子及び赤外線を受光する受光素子を備え、遮光物の位置を検出する、いわゆる赤外線遮断式タッチパネルである。【0021】
図2は本発明の実施の形態1に係る描画システム1の電子ホワイトボード100の要部構成を示す機能ブロック図である。
【0022】
表示部100Aは、例えばLCD又はEL(Electroluminescence)パネル等の表示画面101を備え、ペン型入力器200から送信される描画に係る指示、及び、タッチパネル部100Bによるペン型入力器200の位置の検出の結果に基づいて、文字、線図を表示画面101に表示する。また、タッチパネル部100Bは走査部9を備えている。
【0023】
その他、電子ホワイトボード100は、制御部10と、ROM2と、RAM3、通信部5、記憶部6とを備えており、電子ホワイトボード100は通信部5を介してペン型入力器200から描画に係る指示、前記描画通知、第1通知及び第2通知等の受信を行う。
【0024】
制御部10は、走査部9による走査結果に係る座標に基づき、文字、線図等の描画を表示部100Aに指示し、表示部100Aは該指示に応じて表示画面101に文字、線図等を表示する。
【0025】
ROM2には制御プログラムが予め格納されており、RAM3はデータを一時的に記憶し、記憶順、記憶位置等に関係なく読み出すことが可能である。また、RAM3は、例えば、ROM2から読み出されたプログラム、該プログラムを実行することにより発生する各種データ等を記憶する。
【0026】
制御部10は、ROM2に予め格納されている制御プログラムをRAM3上にロードして実行することによって、バスを介して上述した各種ハードウェアの制御を行い、電子ホワイトボード100を機能させる。」

イ 「【0070】
図6は本発明の実施の形態1に係る描画システム1における、電子ホワイトボード100にて行なわれる描画の処理を説明するフローチャートである。図7は本発明の実施の形態1に係る描画システム1において行なわれるカーソルの制御を説明する説明図であり、図8は本発明の実施の形態1に係る描画システム1において行なわれる描画の処理を説明する説明図である。
【0071】
ユーザが、例えば、電子ホワイトボード100の表示画面101上であって、近い何れかの隅にペン型入力器200の先端をタッチした場合、タッチパネル部100Bの走査部9の走査結果に基づいて、座標検出部12が斯かるタッチ位置の座標を検出する(ステップS101)。座標検出部12による座標検出については既に説明しており、詳しい説明を省略する。検出された座標は一時的にRAM3に記憶される。
(・・・中略・・・)
【0075】
また、判定部17は、ペン型入力器200から前記描画通知を受信したと判定した場合(ステップS102:YES)、すなわち、ペン型入力器200から前記描画通知が受信され、座標検出部12により表示画面101上でのペン型入力器200の座標が検出された場合、表示制御部15は、表示画面101上でのペン型入力器200の位置を除く他の位置にカーソルCを表示する(図7(A)及び図8(A)参照)。また、これに限るものでなく、カーソルCの表示位置をユーザが設定できるように構成しても良い。
(・・・中略・・・)
【0078】
一方、カーソルCの移動軌跡に応じて線図の描画を行うことのみを望んでいる場合、ユーザは第2ボタン202を押したまま、ペン型入力器200の先を表示画面101にタッチする。この際、前記第2通知がペン型入力器200から受信され、その旨のフラグが記憶部6に記録される。」

ウ 「【0095】
次いで、CPU11は、座標検出部12の座標検出の結果に基づき、ペン型入力器200が移動しているか否かを判定する(ステップS109)。CPU11は、ペン型入力器200が移動していないと判定した場合(ステップS109:NO)、ペン型入力器200が移動するまで、斯かる判定を繰り返す。
【0096】
一方、CPU11により、ペン型入力器200が移動していると判定された場合(ステップS109:YES)、ペン型入力器200の移動に応じて記憶部6に記憶されている、ペン型入力器200の移動に係る座標履歴に基づいて、移動制御部16が、表示画面101に表示されているカーソルCを移動させ、また、カーソルCの斯かる移動軌跡に沿って、描画部14が表示画面101に線画の描画を行なう(ステップS110)。
【0097】
すなわち、図8(B)にて示しているように、ユーザが第2ボタン202を押したまま、ペン型入力器200を最初のタッチ位置から図面視右方向に所定距離移動させる操作を行なった場合、移動制御部16は、ペン型入力器200の移動に沿って、カーソルCを最初の位置から右方向に所定距離移動させる。
【0098】
この際、描画部14がカーソルCの移動軌跡に沿って、表示画面101に、線画の描画を行ない、その結果、水平直線が表示される。
【0099】
一方、このような描画操作の後、ユーザがペン型入力器200を表示画面101から一旦離した後、再び描画を行なうために、ペン型入力器200を移動させる場合が想定できる。
【0100】
このような場合は、再び、ユーザがペン型入力器200の第2ボタン202を押しながら、ペン型入力器200の先端を表示画面101にタッチする操作を行ない、上述したような、ステップS101からステップS103までの処理が行われる(図8(C)参照)。
【0101】
続いて、例えば、図8(D)にて示しているように、ユーザが第2ボタン202を押したまま、ペン型入力器200を最初のタッチ位置から図面視下方向に所定距離移動させる操作を行なう。この際、移動制御部16は、ペン型入力器200の移動に沿って、カーソルCをその際の現在の表示位置から下方向に所定距離移動させる。また、描画部14は、この際のカーソルCの移動軌跡に沿って、表示画面101に、線画の描画を行なう。」


エ 「【図8】



(2)上記(1)から、引用文献1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「描画の処理によって、例えば線図の画像が表示される矩形の表示画面101を有する表示部100Aと、ペン型入力器200の表示画面101上の位置を検出し、又は表示画面101上の所定位置の位置指定を受け付けるタッチパネル部100Bとを備える電子ホワイトボード100であって、
その他、電子ホワイトボード100は、制御部10と、ROM2と、RAM3、通信部5、記憶部6とを備えており、
制御部10は、制御プログラムをRAM3上にロードして実行することによって電子ホワイトボード100を機能させ、
ユーザが、例えば、電子ホワイトボード100の表示画面101上であって、近い何れかの隅にペン型入力器200の先端をタッチした場合、タッチパネル部100Bの走査部9の走査結果に基づいて、座標検出部12が斯かるタッチ位置の座標を検出し、
座標検出部12により表示画面101上でのペン型入力器200の座標が検出された場合、表示制御部15は、表示画面101上でのペン型入力器200の位置を除く他の位置にカーソルCを表示し、
カーソルCの移動軌跡に応じて線図の描画を行うことのみを望んでいる場合、ユーザは第2ボタン202を押したまま、ペン型入力器200の先を表示画面101にタッチし、
CPU11は、座標検出部12の座標検出の結果に基づき、ペン型入力器200が移動しているか否かを判定し、
ペン型入力器200が移動していると判定された場合、移動制御部16が、表示画面101に表示されているカーソルCを移動させ、また、カーソルCの斯かる移動軌跡に沿って、描画部14が表示画面101に線画の描画を行い、
描画操作の後、ユーザがペン型入力器200を表示画面101から一旦離した後、再び描画を行なうために、ペン型入力器200を移動させる場合、移動制御部16は、ペン型入力器200の移動に沿って、カーソルCをその際の現在の表示位置から移動させ、また、描画部14は、この際のカーソルCの移動軌跡に沿って、表示画面101に、線画の描画を行なう、
電子ホワイトボード100。」

2 引用文献2について
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア 「【0041】
図3Aないし図3Bは本発明の実施形態によるユーザの第1タッチ過程を図示した図面である。図3Aは位置基盤サービス機器310の画面320に地図がディスプレされており、ユーザは地図でみようとする特定地点321に指330を使用してタッチしようとすることが図示されている。
【0042】
図3Bは図3Aに図示された特定地点321をユーザが指330でタッチした、すなわち第1タッチの接触位置321を図示している。この時、タッチ感知部201は上述した第1タッチを感知し、第1タッチの接触位置321を把握する。
【0043】
図3Cは本発明の実施形態によるポインタ設定を図示した図面である。ポインタ設定部202はタッチ感知部201で把握された第1タッチの接触位置321にポインタ322を設定する。
【0044】
参考として、図3Cでみるようにユーザの指330は第1タッチの接触位置321で分離されていることが分かる。
【0045】
ポインタ設定部202でポインタ322を設定する、すなわち第1タッチの接触位置321にポインタ322を位置させる時点は、ユーザが第1タッチ後第1タッチの接触位置321から接触を解除したり、ユーザが第1タッチ後所定の距離ほど第1タッチの接触位置321を移動させる時、ポインタ設定部202は第1タッチの最初の接触位置321にポインタを設定する。」

イ 「【図3C】



(2)上記(1)から、引用文献2には次の発明が記載されていると認められる。
「特定地点321をユーザが指330でタッチした、第1タッチの接触位置321を把握し、
タッチ感知部201で把握された第1タッチの接触位置321にポインタ322を設定し、
ポインタ設定部202でポインタ322を設定する、すなわち第1タッチの接触位置321にポインタ322を位置させる時点は、ユーザが第1タッチ後第1タッチの接触位置321から接触を解除したり、ユーザが第1タッチ後所定の距離ほど第1タッチの接触位置321を移動させる時である、
位置基盤サービス機器310。」

第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
ア 本願発明1と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明の「制御部10」、「電子ホワイトボード100」、「制御プログラム」は、それぞれ本願発明1の「制御部」、「情報処理装置」、「(制御)プログラム」に相当する。

(イ)引用発明の「表示部100A」は「表示画面101を有」し、「タッチパネル部100B」は「ペン型入力器200の表示画面101上の位置を検出し、又は表示画面101上の所定位置の位置指定を受け付ける」ものであるから、「表示部100A」及び「タッチパネル部100B」からなる構成は、全体として「入力操作が可能」であり、本願発明1の「表示部」に相当する。

(ウ)引用発明は、「電子ホワイトボード100の表示画面101上であって、近い何れかの隅にペン型入力器200の先端をタッチした場合、タッチパネル部100Bの走査部9の走査結果に基づいて、座標検出部12が斯かるタッチ位置の座標を検出し」、「座標検出部12により表示画面101上でのペン型入力器200の座標が検出された場合、表示制御部15は、表示画面101上でのペン型入力器200の位置を除く他の位置にカーソルCを表示」するものであり、ここで、「表示画面101上でのペン型入力器200の位置を除く他の位置」は、「検出し」た「タッチ位置」に「応じた」ものであるといえ、本願発明1の「第1座標」に相当する。
また、「カーソルCを表示」するために当該「他の位置」が「特定」されることが明らかである。

(エ)引用発明は、「カーソルCの移動軌跡に応じて線図の描画を行うことのみを望んでいる場合、ユーザは第2ボタン202を押したまま、ペン型入力器200の先を表示画面101にタッチ」するものであるところ、ここでの「タッチ」は、「他の位置にカーソルCを表示」するための「タッチ」とは異なる新たな「タッチ」である、すなわち、「他の位置にカーソルCを表示」するための「タッチ操作」を「解除するタッチオフが検知された後に入力された」ものであると理解でき、当該新たな「タッチ」がなされた「表示画面101」上の座標は、本願発明1の「第2座標」に相当する。

(オ)引用発明は、「ペン型入力器200が移動していると判定された場合、移動制御部16が、表示画面101に表示されているカーソルCを移動させ、また、カーソルCの斯かる移動軌跡に沿って、描画部14が表示画面101に線画の描画を行」うものであるところ、ここでの「移動軌跡」は、「他の位置」を出発点とすることが明らかであり、本願発明1の「軌跡」に相当する。
また、「線画」の「描画」は、上記「移動軌跡」に「応じた」ものであるといえ、本願発明1の「第2オブジェクト」を「生成する」ことに相当する。

(カ)引用発明では、「制御部10は、制御プログラムをRAM3上にロードして実行することによって電子ホワイトボード100を機能させ」ることが行われるところ、「制御プログラム」は、「電子ホワイトボード100を機能させ」る具体的な処理として、「座標を検出」することや「線画の描画」を「制御部10」に「実行させる」ことが明らかであって、本願発明1の「(制御)プログラム」に相当する。

(キ)本願明細書の段落【0045】の
「完成した線画241に対して、新たな線画を生成する場合には、再度、描画開始位置の設定処理(ステップS1-2)から繰り返す。 例えば、図6に示すように、最初の線画241に接続した新たな線画を描く場合には、接続位置をタップすることにより、描画開始位置242を設定する。そして、再度、描画エリア220のいずれかの場所をタッチし、この操作開始位置を始点とするスライド軌跡243で指をスライドさせる。この場合、新たな線画244が生成される。」
との記載によれば、「接続位置をタップする」操作を行う時点で、既に「最初の線画241」は表示された状態である。この点を踏まえると、本願発明1の「前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定」するとは、既に「第1座標に位置する」「第1オブジェクト」、すなわち表示済みの「第1オブジェクト」を「特定」することであるものと解される。
これに対し、引用発明において、「表示画面101上でのペン型入力器200の位置を除く他の位置にカーソルCを表示」することは、「カーソルC」を新たに「表示」することであって、表示済みのものに対する操作ではないから、本願発明1の「前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定」することに相当するとはいえない。
また、引用発明において、「描画部14が表示画面101に線画の描画を行」うことは、「カーソルC」の「移動軌跡に沿って」行われるものであって、「描画」後に「カーソルC」が「線画」の終点に移動するから、「線画」の「描画」は、前記「他の位置」に位置する前記「カーソルC」から行われるものであるとはいえない。

(ク)なお、引用発明は、「描画操作の後、ユーザがペン型入力器200を表示画面101から一旦離した後、再び描画を行なうために、ペン型入力器200を移動させる場合、移動制御部16は、ペン型入力器200の移動に沿って、カーソルCをその際の現在の表示位置から移動させ、また、描画部14は、この際のカーソルCの移動軌跡に沿って、表示画面101に、線画の描画を行なう」ものであるところ、上記(オ)とは別に、「描画操作の後」に「再び描画を行なう」ことで「線画の描画を行なう」ことが、本願発明1の「第2オブジェクト」を「生成する」ことに相当する、とみることもでき、その場合は、「再び描画を行なう」前の最初の「描画操作」による「線画」が、本願発明1の「第1オブジェクト」に相当することとなる。
しかしながら、上記(キ)の本願明細書の記載を踏まえると、結局、上記最初の「描画操作」による「線画」の表示は、本願発明1の「前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定」することに相当するとはいえない。

イ 上記ア(ア)?(キ)によれば、本願発明1と引用発明とは以下の点で一致する。
(一致点)
「制御部と入力操作が可能な表示部とを備えた情報処理装置を制御するプログラムであって、
前記制御部に、
前記表示部でのタッチ位置に応じた第1座標を特定し、
前記第1座標を特定するためのタッチ操作を解除するタッチオフが検知された後に入力された第2座標からの軌跡に応じて描画された第2オブジェクトを生成すること、を実行させることを特徴とする制御プログラム。」

ウ また、本願発明1と引用発明とは以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、「前記制御部」に「実行させる」処理が「前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定」することを含むのに対し、引用発明では、「制御部10」がそのような処理が実行するものではない点。

(相違点2)
本願発明1では、「第2オブジェクト」が、「前記第1座標に位置する前記第1オブジェクトから描画された」ものであるのに対し、引用発明では、「カーソルCの移動軌跡に沿って、表示画面101に、線画の描画を行なう」ことについて、「前記第1座標に位置する前記第1オブジェクトから」であるとの特定がない点。

(2)判断
そこで、まず相違点1について検討する。
引用発明は、「カーソルC」の「移動軌跡に沿って」、「線画の描画を行」うものであって、その「描画」を開始するにあたり、既に「描画」されて表示済みとなっている「線画」が位置する座標を「特定」すべきことについて、何ら示唆するものではない。実際、引用文献1には、当該座標を「特定」することの必要性については記載も示唆もされていない。
したがって、仮に、表示済みの「オブジェクト」を「特定」することが本願の出願日前に公知の技術であったとしても、当該技術の構成を引用発明に適用する動機付けはない。
そして、この点は、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2?11の各記載事項とは無関係である。なお、引用文献2については、上記第5の2(2)の発明が記載されていると認められるが、当該発明における「ポインタ設定部202でポインタ322を設定する、すなわち第1タッチの接触位置321にポインタ322を位置させる」ことは、「第1タッチの接触位置321」に「ポインタ322」を新たに表示することであって、表示済みのものに対する操作ではないから、上記(1)ア(キ)と同様に、本願発明1の「前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定」することに相当するとはいえない。
よって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても引用文献1?11に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

2 本願発明2?13について
本願発明2?11は、本願発明1を減縮した発明である。
また、本願発明12,13は、いずれも本願発明1と発明のカテゴリが相違するのみである。
よって、本願発明2?13も、本願発明1と同様の理由により、当業者であっても引用文献1?11に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

第6 原査定について
本願発明1?13は、相違点1に係る「前記第1座標に位置する第1オブジェクトを特定」するとの構成を有している。
そして、本願発明1?13が当業者であっても引用文献1?11に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえないことは、上記第5のとおりである。
したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2021-03-04 
出願番号 特願2018-50572(P2018-50572)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G06F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 星野 裕  
特許庁審判長 稲葉 和生
特許庁審判官 富澤 哲生
太田 龍一
発明の名称 制御プログラム、制御方法及び情報処理装置  
代理人 恩田 博宣  
代理人 恩田 誠  

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